(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111435
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220725BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20220725BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20220725BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20220725BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20220725BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220725BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04228
H01M8/04858
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006854
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】古橋 資丈
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】仲曽根 歩
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AA08
5H127AB14
5H127AB29
5H127BA01
5H127BA03
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB44
5H127DA11
5H127DB02
5H127DB53
5H127DB63
5H127DB99
5H127DC02
5H127DC42
5H127DC96
(57)【要約】
【課題】外部に出力される電力の安定化が可能な燃料電池システムを提供すること。
【解決手段】燃料電池システム1は、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体を有し、アノード電極に液体燃料が供給され且つカソード電極に酸化剤が供給されて電力を発電する燃料電池10と、燃料電池10から出力される電力の一部を充電することによって回収すると共に充電した電力を放電可能なキャパシタ30と、燃料電池10及びキャパシタ30の作動を制御する制御装置20と、を備え、制御装置20の制御により、燃料電池10への液体燃料の供給が停止された状態において、キャパシタ30は、燃料電池10が既に供給された液体燃料を用いて発電した停止後電力を充電して回収し、燃料電池10は、キャパシタ30によって停止後電力が回収された後に電極構造体における電極反応が停止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体を有し、前記アノード電極に液体燃料が供給され且つ前記カソード電極に酸化剤が供給されて電力を発電する燃料電池と、
前記燃料電池から出力される電力の一部を充電することによって回収すると共に充電した電力を放電可能な電力回収装置と、
前記燃料電池及び前記電力回収装置の作動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置の制御により、
前記燃料電池への前記液体燃料の供給が停止された状態において、
前記電力回収装置は、前記燃料電池が既に供給された前記液体燃料を用いて発電した停止後電力を充電して回収し、
前記燃料電池は、前記電力回収装置によって前記停止後電力が回収された後に前記電極構造体における電極反応が停止され、
前記制御装置の制御により、
前記燃料電池へ前記液体燃料が供給される状態において、
前記電力回収装置は、前記燃料電池から出力される電力に加えて回収した前記停止後電力を外部の負荷に放電して供給する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記停止後電力の出力電圧が、前記電力回収装置を充電するための最小電圧以下となった場合、前記燃料電池を短絡させる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池の前記アノード電極に水を供給する水供給装置を備え、
前記制御装置は、
前記電力回収装置の充電状態を表す充電電圧が前記電力回収装置の満充電を表す満充電電圧になった場合、又は、前記停止後電力の出力電圧が前記電力回収装置を充電するための最小電圧以下となった場合、前記水供給装置から前記アノード電極に水を供給する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記燃料電池から出力される電流が予め設定された最小出力電流以下になった場合、前記燃料電池への前記液体燃料の供給を再開する、請求項1-3の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記電力回収装置は、
充電状態を表す充電電圧が満充電状態の満充電電圧よりも小さな電圧に設定された充電準備電圧以下の場合に、前記停止後電力を充電する、請求項1-4の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記電力回収装置は、
前記燃料電池の出力電圧よりも昇圧された前記停止後電力を充電する、請求項1-5の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記電力回収装置は、
前記燃料電池の出力電圧が所定の要求出力電圧以下の場合、又は、前記燃料電池の出力電流が前記負荷の要求出力電流以下の場合に、前記停止後電力を外部に放電して供給する、請求項1-6の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記電力回収装置の充電状態を表す充電電圧が、前記燃料電池の前記出力電圧以下となった場合に、外部への放電を停止する、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記電力回収装置は、キャパシタを含む、請求項1-8の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記電力回収装置は、
前記制御装置の制御によって前記燃料電池へ前記液体燃料が供給される状態で、前記電力回収装置の充電状態を表す充電電圧が所定の基礎電圧未満の場合に、前記燃料電池から出力される電力を充電する、請求項1-9の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記燃料電池は、
電気的に並列に接続された複数の燃料電池スタックを有する、請求項1-10の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記液体燃料は、ギ酸(HCOOH)である、請求項1-11の何れか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムを主に構築する燃料電池、特に、固体高分子型の燃料電池は、一般に、電解質膜の一面側に形成されたアノード電極と、他面側に形成されたカソード電極とからなる電極構造体を備えている。そして、固体高分子型の燃料電池においては、アノード電極に燃料が供給され且つカソード電極に酸化剤が外部から供給されることにより、電極構造体にて電極反応が生じて発電される。
【0003】
近年、アノード電極に供給される燃料として、メタノールやギ酸等の液体燃料を直接用いる直接型の燃料電池が開発されている。液体燃料を用いる場合、水素ガス等の気体を燃料として用いる場合に比べて、取り扱いが容易であり、単位体積当たりエネルギー密度が高く、極めて有用である。
【0004】
このような直接型の燃料電池においては、連続して発電稼働する状況で徐々に発電による出力電力が低下する現象が生じる場合がある。出力電力の低下を抑制して出力電力を維持するために、直接型の燃料電池では、定期的に電極反応を停止させるリフレッシュ制御が実行される。リフレッシュ制御が実行される場合、直接型の燃料電池においては一時的に電極反応が停止、即ち、発電が停止されるため、出力電力が不安定になる。
【0005】
このため、従来から、例えば、特許文献1には、燃料電池が発電した電力を充電する補助電源を備えた燃料電池システムの技術が開示されている。従来の燃料電池システムでは、燃料電池が電力を外部に出力すると共に補助電源に充電しておき、燃料電池の出力電力が低下する状況で補助電源に充電(蓄電)された電力を放電することにより、外部に出力される電力を安定させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、直接型の液体燃料電池を備える燃料電池システムにおいて、燃料電池にリフレッシュ制御を実行する場合、通常、燃料電池のアノード電極への液体燃料の供給を停止する。この場合、電極構造体においては、既に供給された液体燃料を用いた電極反応による発電を継続した後に、電極反応が停止する。
【0008】
このため、既に供給された液体燃料が電極構造体における電極反応によって消費されるまでに時間を要する場合には、リフレッシュ制御の実行に伴って燃料電池が外部に電力を出力するための発電を停止している時間が長くなる。その結果、補助電源に充電された電力を供給しても、外部に出力される電力が不安定になってしまう。従って、外部に出力される電力の安定化を図る観点からは、リフレッシュ制御に伴う燃料電池の発電停止時間は短時間であることが望ましい。
【0009】
又、通常、リフレッシュ制御に伴い、既に供給された液体燃料が消費されるまで継続して燃料電池から出力される電力は、アースされて放電することによって浪費される。従って、外部に出力される電力の安定化を図る観点からは、リフレッシュ制御を短時間に行うことに加え、リフレッシュ制御に伴って浪費される電力を回収し、回収した電力を燃料電池から外部に出力される電力に加えて利用できることが望ましい。
【0010】
本発明は、外部に出力される電力の安定化が可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
燃料電池システムは、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体を有し、アノード電極に液体燃料が供給され且つカソード電極に酸化剤が供給されて電力を発電する燃料電池と、燃料電池から出力される電力の一部を充電することによって回収すると共に充電した電力を放電可能な電力回収装置と、燃料電池及び電力回収装置の作動を制御する制御装置と、を備え、制御装置の制御により、燃料電池への液体燃料の供給が停止された状態において、電力回収装置は、燃料電池が既に供給された液体燃料を用いて発電した停止後電力を充電して回収し、燃料電池は、電力回収装置によって停止後電力が回収された後に電極構造体における電極反応が停止され、制御装置の制御により、燃料電池へ液体燃料が供給される状態において、電力回収装置は、燃料電池から出力される電力に加えて回収した停止後電力を外部の負荷に放電して供給する。
【0012】
これによれば、燃料電池システムは、制御装置の制御により、燃料電池への液体燃料の供給が停止された状態において、電力回収装置は停止後電力を充電して回収することができ、その後、燃料電池は電極反応を停止することができる。そして、燃料電池システムは、制御装置の制御により、燃料電池へ液体燃料が供給される状態において、燃料電池から出力される電力に加えて、電力回収装置が回収した停止後電力を放電して外部の負荷に電力を供給することができる。
【0013】
これにより、燃料電池システムは、電力回収装置が停止後電力を回収した後に速やかに電極反応を停止することができるため、リフレッシュ制御に伴う発電停止時間を短縮することができる。又、電力回収装置が無駄に浪費される停止後電力を回収し停止後電力を放電することによって利用することができる。従って、燃料電池システムは、燃料電池から外部の負荷に供給される電力の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1の燃料電池の構成を説明するための図である。
【
図3】
図1の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】通常発電モードにおける燃料電池システムの作動を説明するための図である。
【
図5】リフレッシュ制御モードにおける燃料電池システムの作動を説明するための図である。
【
図6】キャパシタ放電モードにおける燃料電池システムの作動を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1.燃料電池システム1の概要)
本例の燃料電池システム1は、
図1に示すように、燃料電池10、制御装置20、電力回収装置としてのキャパシタ30を主に備える。本例の燃料電池10は、固体高分子型を例示することができる。固体高分子型の燃料電池10は、電解質膜の一面側にアノード電極が形成され、電解質膜の他面側にカソード電極が形成される。ここで、電解質膜、アノード電極及びカソード電極は、電極構造体であるMEA(Membrane-Electrode-Assembly:膜―電極接合体)を形成する。尚、アノード電極及びカソード電極は、例えば、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等の金属触媒及びこれら金属触媒が付加されたカーボンがコーティングされて形成される。又、燃料拡散層が触媒膜と電極間に存在する。
【0016】
固体高分子型の燃料電池10のアノード電極に対して供給される燃料としては、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等の液体燃料を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池10においては、供給される液体燃料として、ギ酸を直接用いる場合を例示する。即ち、燃料電池10は、直接ギ酸型燃料電池(DFAFC)である場合を例示する。又、燃料電池10のカソード電極に対して供給される酸化剤(酸化剤ガス)としては、酸素(O2)ガス、空気等を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池10においては、供給される気体の酸化剤即ち酸化剤ガスとして、空気を用いる場合を例示する。
【0017】
本例の燃料電池システム1においては、制御装置20による制御により、燃料電池10によって発電された電力が外部の負荷Cに供給される場合と、燃料電池10によって発電された電力(停止後電力を含む)がキャパシタ30に充電(蓄電)される場合と、キャパシタ30に充電(蓄電)された電力(停止後電力を含む)が外部の負荷Cに供給される場合とを切り替えることができる。即ち、本例の燃料電池システム1においては、制御装置20は、制御部21が制御回路22を制御することにより、燃料電池10が発電した電力を負荷Cに供給する、及び、燃料電池10が発電した電力の一部をキャパシタ30に充電する通常発電モードを実行することができる。
【0018】
又、本例の燃料電池システム1においては、制御装置20は、制御部21が制御回路22を制御することにより、リフレッシュ制御に伴って燃料電池10が発電した停止後電力をキャパシタ30に充電(蓄電)する、換言すれば、停止後電力を回収すると共に、MEAにおける電極反応を速やかに停止させるリフレッシュ制御モードを実行することができる。更に、本例の燃料電池システム1においては、制御装置20は、制御部21が制御回路22を制御することにより、キャパシタ30に充電(蓄電)した、換言すれば、キャパシタ30に回収した停止後電力を、キャパシタ30から放電(好ましくは、急速放電)させて負荷Cに供給するキャパシタ放電モードを実行することができる。
【0019】
(2.燃料電池10の構成)
以下、本例の固体高分子型の燃料電池10の構成について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。本例の燃料電池10は、液体燃料であるギ酸がアノード電極に直接供給される直接型の燃料電池である。
【0020】
本例の燃料電池10は、
図1に示すように、電気的に並列に接続された第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12を備える。第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12は、MEA(図示省略)、MEAのアノード電極に液体燃料を供給するアノード側セパレータ(図示省略)及びMEAのカソード電極に酸化剤(酸化剤ガス)を供給するカソード側セパレータ(図示省略)、燃料拡散層(図示省略)を含む単セルUが複数積層されることによって形成される。
【0021】
第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12は、
図2に示すように、複数の単セルUが積層された状態とされ、積層された複数の単セルUがホルダH及びボルトBによって保持される。第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の各々には、供給タンク13に貯留された液体燃料であるギ酸を加圧して供給する第一ポンプ14が配管を介して接続部K1に接続される。又、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の各々には、酸化剤(酸化剤ガス)として空気を加圧して供給するブロア15(加圧ポンプ)が配管を介して接続部K2に接続される。ここで、第一ポンプ14及びブロア15は、制御装置20により制御される(
図1を参照)。
【0022】
更に、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12は、
図2に示すように、供給タンク16に貯留された水(例えば、生成水)を加圧して供給する水供給装置としての第二ポンプ17が配管を介して接続部K1に接続される。第二ポンプ17は、制御装置20により制御される(
図1を参照)。
【0023】
ここで、第一ポンプ14によって加圧されたギ酸と第二ポンプ17によって加圧された水(生成水)とは、図示省略の切替バルブを介して、アノード電極に供給される。つまり、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が電力を発電する場合には切替バルブの切り替えによってアノード電極にギ酸が供給され、リフレッシュ制御が行われる場合、即ち、MEAにおける電極反応を停止させる場合にはギ酸の供給が停止される。更に、切替バルブの切り替えによってアノード電極に水(生成水)が供給される。尚、切替バルブは、接続部K1に設けることが可能である。
【0024】
(3.制御装置20の構成の詳細)
制御装置20は、
図1及び
図3に示すように、制御部21と制御回路22とを主に備える。制御部21は、CPU、ROM,RAM、インターフェースを主要構成部品とするマイクロコンピュータである。
【0025】
制御回路22は、制御部21によって制御される電気回路である。制御回路22は、
図1に示すように、電気的に並列に接続された第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12と外部の負荷Cとを電気的に接続する。又、制御回路22は、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12とキャパシタ30とを電気的に接続すると共に、キャパシタ30と外部の負荷Cとを電気的に接続する。これにより、制御回路22は、制御部21の制御により、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力を、外部の負荷Cに供給する場合、キャパシタ30に充電(蓄電)する場合、及び、キャパシタ30に充電(蓄電)された電力を負荷Cに供給する場合の各々を実現する。
【0026】
制御回路22は、
図3に示すように、第一開閉器22a、第二開閉器22b、第一昇圧回路22c、第二昇圧回路22d、キャパシタ出力開閉器22e、DCレギュレータ回路22fを主に備える。第一開閉器22a、第二開閉器22b、第一昇圧回路22c、第二昇圧回路22d、キャパシタ出力開閉器22e及びDCレギュレータ回路22fの各々の作動は、制御部21によって制御される。
【0027】
第一開閉器22aは、2つのnMOSFET(nチャンネルMOSFET)から形成されており、第一燃料電池スタック11と第一昇圧回路22cとの間に配置される。第一開閉器22aは、制御部21の制御によって2つのnMOSFETが同期してオン状態又はオフ状態に切り替わることにより開閉して、第一燃料電池スタック11から第一昇圧回路22cに出力される高電圧の電力の供給又は遮断を行う。
【0028】
尚、以下の説明において、2つのnMOSFETが同期してオン状態になった場合、第一開閉器22aがオン状態(閉状態)であるとし、第一燃料電池スタック11から第一昇圧回路22cへの通電を許可する。一方、2つのnMOSFETが同期してオフ状態になった場合、第一開閉器22aがオフ状態(開状態)であるとし、第一燃料電池スタック11から第一昇圧回路22cへの通電を遮断する。
【0029】
第二開閉器22bは、2つのnMOSFET(nチャンネルMOSFET)から形成されており、第二燃料電池スタック12と第二昇圧回路22dとの間に配置される。第二開閉器22bは、制御部21の制御によって2つのnMOSFETが同期してオン状態又はオフ状態に切り替わることにより開閉して、第二燃料電池スタック12から第二昇圧回路22dに出力される高電圧の電力の供給又は遮断を行う。
【0030】
尚、以下の説明において、2つのnMOSFETが同期してオン状態になった場合、第二開閉器22bがオン状態(閉状態)であるとし、第二燃料電池スタック12から第二昇圧回路22dへの通電を許可する。一方、2つのnMOSFETが同期してオフ状態になった場合、第二開閉器22bがオフ状態(開状態)であるとし、第二燃料電池スタック12から第二昇圧回路22dへの通電を遮断する。
【0031】
第一昇圧回路22cは、周知の構成を有しており、コイル及びダイオードを有すると共にnMOSFET(nチャンネルMOSFET)のスイッチ22c1を有する。第一昇圧回路22cは、制御部21の制御によってスイッチ22c1が周期的に且つ高速でオン状態とオフ状態とに切り替えられることにより、第一燃料電池スタック11から供給された電力(電圧)を昇圧してキャパシタ30に供給する。尚、以下の説明において、スイッチ22c1がオン状態又はスイッチング状態(オン状態とオフ状態の繰り返し)になった場合、第一昇圧回路22cがオン状態であるとする。又、スイッチ22c1がオフ状態になった場合、第一昇圧回路22cがオフ状態であるとする。
【0032】
第二昇圧回路22dは、周知の構成を有しており、コイル及びダイオードを有すると共にnMOSFET(nチャンネルMOSFET)のスイッチ22d1を有する。第二昇圧回路22dは、制御部21の制御によってスイッチ22d1が周期的に且つ高速でオン状態とオフ状態とに切り替えられることにより、第二燃料電池スタック12から供給された電力(電圧)を昇圧してキャパシタ30に供給する。尚、以下の説明において、スイッチ22d1がオン状態又はスイッチング状態(オン状態とオフ状態の繰り返し)になった場合、第二昇圧回路22dがオン状態であるとする。又、スイッチ22d1がオフ状態になった場合、第二昇圧回路22dがオフ状態であるとする。
【0033】
キャパシタ出力開閉器22eは、2つのnMOSFET(nチャンネルMOSFET)から形成されており、キャパシタ30とDCレギュレータ回路22fとの間に配置される。キャパシタ出力開閉器22eは、制御部21の制御によって2つのnMOSFETが同期してオン状態又はオフ状態に切り替わることにより開閉して、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fに出力される高電圧の電力の供給又は遮断を行う。
【0034】
尚、以下の説明において、2つのnMOSFETが同期してオン状態になった場合、キャパシタ出力開閉器22eがオン状態(閉状態)であるとし、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの通電を許可する。又、2つのnMOSFETが同期してオフ状態になった場合、キャパシタ出力開閉器22eがオフ状態(開状態)であるとし、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの通電を遮断する。
【0035】
DCレギュレータ回路22fは、所謂、周知のスイッチングレギュレータであり、第一燃料電池スタック11、第二燃料電池スタック12及びキャパシタ30から供給される電力(電圧)を安定化する回路である。尚、以下の説明において、図示省略のスイッチがオン状態になった場合、DCレギュレータ回路22fがオン状態であるとする。又、図示省略のスイッチがオフ状態になった場合、DCレギュレータ回路22fがオフ状態であるとする。
【0036】
(4.キャパシタ30の詳細)
電力回収装置としてのキャパシタ30は、制御装置20の制御回路22に設けられたキャパシタ出力開閉器22eがオフ状態(開状態)の場合において、制御装置20の制御回路22に設けられた第一昇圧回路22c及び第二昇圧回路22dによって昇圧された高電圧の電力を充電(蓄電)する。又、キャパシタ30は、所定の電圧まで充電(蓄電)した場合において、制御装置20の制御回路22に設けられたキャパシタ出力開閉器22eがオン状態(閉状態)に制御されることによって充電(蓄電)した高電圧の電力をDCレギュレータ回路22fに放電する。
【0037】
キャパシタ30は、
図3に示すように、充電(蓄電)している電力(停止後電力を含む)の大きさを表すキャパシタ電圧Vcapを検出する電圧センサ31を有している。電圧センサ31は、検出したキャパシタ電圧Vcapを制御部21に出力する。
【0038】
キャパシタ30は、後述するように、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が通常発電を行っている場合、キャパシタ電圧Vcapに応じて、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12から供給される電力を充電(蓄電)する。又、キャパシタ30は、第一燃料電池スタック11又は第二燃料電池スタック12がリフレッシュ制御に伴って電力を放電する場合、放電される少なくとも一部の電力を停止後電力として充電(蓄電)する。そして、キャパシタ30は、電気的に並列に接続された第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が発電している電力の電圧が低下した場合、又は、外部の負荷Cが増大した場合に、充電(蓄電)している電力(停止後電力を含む)を急速放電により供給する。
【0039】
このように、キャパシタ30は、リフレッシュ制御によって第一燃料電池スタック11又は第二燃料電池スタック12が放電する電力の少なくとも一部の停止後電力を充電(蓄電)することにより回収することができる。又、キャパシタ30は、回収した停止後電力を、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が発電している電力に加えて、負荷Cに供給することができる。つまり、キャパシタ30は、電力を回収して再度利用することができる。
【0040】
尚、電力回収装置としては、キャパシタ30以外に、例えば、蓄電池等の二次電池を用いることも可能である。しかし、キャパシタ30は、一般に内部抵抗が小さいため、充電(蓄電)時に急速充電が可能であると共に放電時に急速放電が可能である。これに対して、蓄電池等の二次電池は、一般に内部抵抗が大きいため、充電(蓄電)時の急速充電及び放電時の急速放電が困難である。従って、電力回収装置としては、キャパシタ30を用いることが好ましい。
【0041】
(5.燃料電池システム1の作動の詳細)
次に、本例の燃料電池システム1の作動を説明する。本例の燃料電池システム1は、制御装置20(制御部21)の制御により、
図4に示す通常発電モード、
図5に示す発電停止に伴うキャパシタ充電モード及び
図6に示すキャパシタ放電モードの各々の動作モードで作動する。以下、各々の動作モードを順に説明する。
【0042】
(5-1.通常発電モード)
通常発電モードは、
図4に示すように、制御装置20の制御部21によって切替制御される制御回路22の作動状態が電圧センサ31により検出されるキャパシタ30の充電電圧を表すキャパシタ電圧Vcapに応じて切り替えられることによって、2つの動作モードが存在する。具体的に、通常発電モードは、キャパシタ電圧Vcapがキャパシタ30のキャパシタ基礎電圧Vbase未満の場合の「キャパシタ充電モード」と、キャパシタ電圧Vcapがキャパシタ基礎電圧Vbase以上の場合の「通常稼働モード」との2つの動作モードが存在する。
【0043】
尚、通常発電モードにおいては、キャパシタ30の充電状態に拘わらず、
図4に示すように、電気的に並列に配置された第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12即ち燃料電池10は、制御装置20によって共にオン状態に制御されて発電する。そして、通常発電モードにおいては、
図4に示すように、制御回路22のDCレギュレータ回路22fはオン状態に制御され、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力が外部の負荷Cに供給される。
【0044】
(5-1-1.キャパシタ充電モード)
キャパシタ充電モードは、キャパシタ電圧Vcapがキャパシタ基礎電圧Vbase未満に低下しているキャパシタ30に第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の少なくとも一方から電力を供給する動作モードである。尚、本例においては、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の両方がキャパシタ30に電力を供給する場合を例示する。
【0045】
キャパシタ充電モードでは、キャパシタ電圧Vcapがキャパシタ基礎電圧Vbase以上となるまで充電する。尚、キャパシタ充電状態におけるキャパシタ30への充電の上限電圧としては、後述するように、キャパシタ基礎電圧Vbaseよりも大きな所定の電圧値に設定されて発電停止時におけるキャパシタ30への充電の有無を判定するキャパシタ充電準備電圧Vrに設定することができる。
【0046】
キャパシタ充電モードにおいては、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一開閉器22a及び第二開閉器22bをオン状態に切り替えると共に、制御回路22のキャパシタ出力開閉器22eをオフ状態に制御する。そして、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一昇圧回路22cをオン状態とオフ状態とに繰り返し切り替えて昇圧スイッチング制御を行う。同様に、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第二昇圧回路22dをオン状態とオフ状態とに繰り返し切り替えて昇圧スイッチング制御を行う。
【0047】
これにより、キャパシタ充電モードにおいては、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力が第一昇圧回路22c及び第二昇圧回路22dによって昇圧されてキャパシタ30に供給される。ここで、キャパシタ充電モードにおいては、キャパシタ出力開閉器22eがオフ状態に維持されているため、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの電力供給は遮断される。従って、キャパシタ充電モードにおいては、キャパシタ30は、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12から昇圧されて供給される電力により、キャパシタ基礎電圧Vbase以上となるまで充電される。
【0048】
(5-1-2.通常稼働モード)
通常稼働モードは、キャパシタ30のキャパシタ電圧Vcapがキャパシタ基礎電圧Vbase以上であり、キャパシタ30を充電することなく、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が発電した電力を、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに出力する動作モードである。
【0049】
このため、通常稼働モードにおいては、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一開閉器22a及び第二開閉器22bをオフ状態に切り替えると共に、制御回路22のキャパシタ出力開閉器22eをオフ状態に制御する。又、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一昇圧回路22c及び第二昇圧回路22dをオフ状態に制御する。
【0050】
これにより、通常稼働モードにおいては、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力は、キャパシタ30に供給されない。又、通常稼働モードにおいては、キャパシタ出力開閉器22eがオフ状態に維持されることにより、キャパシタ出力開閉器22eを介してキャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの電力供給が遮断される。従って、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された全ての電力は、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに出力される。
【0051】
(5-2.リフレッシュ制御モード)
リフレッシュ制御モードは、制御装置20の制御により、燃料電池10即ち第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の一方がリフレッシュ制御に伴い発電を停止する際に、キャパシタ30への充電制御、燃料電池スタックの放電制御、燃料電池スタックの停止制御が行われる動作モードである。尚、本例においては、第一燃料電池スタック11がリフレッシュ制御によって発電を停止し、第二燃料電池スタック12が通常発電モード(通常稼働モード)によって発電を継続している場合を例示する。ここで、燃料電池10(本例においては第一燃料電池スタック11)は、後述する発電停止制御が行われた後であっても、既に供給された液体燃料が消費されるまでの間はMEAにおける電極反応が継続するため、電圧低下を伴いながら停止後電力を出力する。
【0052】
リフレッシュ制御モードは、
図5に示すように、制御装置20の制御部21によって切替制御される制御回路22の作動状態が切り替えられることによって、3つの動作モードが存在する。具体的に、リフレッシュ制御モードは、第一燃料電池スタック11(燃料電池10)の発電停止制御後に出力されている停止後電力をキャパシタ30に充電する充電制御モード、充電制御モードの停止後において第一燃料電池スタック11(燃料電池10)から放電する放電制御モード、第一燃料電池スタック11(燃料電池10)の発電停止制御を完了する制御完了モードが存在する。
【0053】
(5-2-1.充電制御モード)
本例の充電制御モードは、キャパシタ30のキャパシタ電圧Vcapがキャパシタ基礎電圧Vbase以上キャパシタ充電準備電圧Vr未満(Vbase≦Vcap<Vr)であり、且つ、第一燃料電池スタック11から出力される出力電圧Vfcが予め設定された下限出力電圧Vlim以下(Vfc≦Vlim)となった場合に実行される。充電制御モードは、制御装置20の制御部21により、第一ポンプ14が停止されることによって第一燃料電池スタック11への液体燃料の供給が停止され、通常稼働モードから切り替えられる。そして、充電制御モードは、制御装置20の制御部21がリフレッシュ制御を実行するために、第一ポンプ14の作動を停止させて第一燃料電池スタック11へのギ酸の供給を停止即ち発電停止制御を行った後において、出力電圧Vfcが低下しながら第一燃料電池スタック11から出力される停止後電力をキャパシタ30に充電する動作モードである。
【0054】
充電制御モードにおいては、
図5に示すように、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一開閉器22aをオン状態に切り替えると共に、制御回路22のキャパシタ出力開閉器22eをオフ状態に制御する。そして、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一昇圧回路22cをオン状態とオフ状態とに繰り返し切り替えて昇圧スイッチング制御を行う。尚、第二燃料電池スタック12に電気的に接続されている制御回路22の第二開閉器22b及び第二昇圧回路22dは、制御部21によってオフ状態に制御されている。
【0055】
これにより、充電制御モードにおいては、第一ポンプ14による液体燃料(ギ酸)の供給が停止される発電停止制御後に第一燃料電池スタック11によって発電された停止後電力が第一昇圧回路22cによって昇圧されてキャパシタ30に供給される。従って、充電制御モードにおいては、キャパシタ30は、キャパシタ電圧Vcapが満充電電圧Vmとなるまで充電される。尚、充電制御モードにおいては、キャパシタ出力開閉器22eがオフ状態に維持されているため、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの電力供給は遮断される。
【0056】
ここで、第一燃料電池スタック11が発電停止制御された後、即ち、液体燃料(ギ酸)の供給が遮断された後に発電した停止後電力の少なくとも一部は、キャパシタ30に充電されて蓄電される。そして、後述するように、キャパシタ30に充電(蓄電)された停止後電力を含む電力は、必要時にDCレギュレータ回路22fを介して外部に供給される。従って、充電制御モードを実行することにより、発電停止制御後に第一燃料電池スタック11が発電した停止後電力は、少なくとも一部がキャパシタ30によって回収されて有効に利用される。これにより、通常のリフレッシュ制御において停止後電力が廃棄される場合に比べて、電気エネルギーの利用効率を向上させることができ、ひいては省エネルギーを実現することができる。
【0057】
(5-2-2.放電制御モード)
本例の放電制御モードは、キャパシタ30のキャパシタ電圧Vcapが満充電電圧Vm以上(Vcap≧Vm)即ちキャパシタ30が満充電、又は、第一燃料電池スタック11の出力電圧Vfcが充電(或いは昇圧)を可能とする最小電圧Vmin以下(Vfc≦Vmin)となった場合に、充電制御モードから切り替えられる。そして、放電制御モードは、MEAにおける電極反応を速やかに停止させるために、優先的に、第一燃料電池スタック11を強制的に放電する動作モードである。又、放電制御モードは、第一燃料電池スタック11の強制的な放電に加え、第一燃料電池スタック11のアノード電極に残存するギ酸を強制的に排出するためにアノード電極に対して水を供給する動作モードである。
【0058】
放電制御モードにおいては、
図5に示すように、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第一開閉器22aをオン状態に維持すると共に、制御回路22の第一昇圧回路22cのスイッチ22c1をオン状態に切り替える。これにより、第一燃料電池スタック11のアノード電極を強制的に短絡させることにより、第一燃料電池スタック11を強制的に放電する。尚、放電制御モードにおいては、制御回路22のキャパシタ出力開閉器22eはオフ状態に維持される。
【0059】
又、制御装置20は、第二ポンプ17を作動させ、例えば、生成水をアノード電極に供給し、アノード電極に残存しているギ酸を排出する。これにより、放電制御モードにおいては、アノード電極に水が供給されるため、MEAにおける電極反応は、強制的に且つ速やかに停止される。即ち、放電制御モードを実行することにより、速やかに後述の制御完了モードに移行することができ、その結果、リフレッシュ制御を速やかに完了することができる。
【0060】
(5-2-3.制御完了モード)
本例の制御完了モードは、発電停止制御された第一燃料電池スタック11から出力される出力電流Ifcが予め設定された下限電流Ilow以下(Ifc≦Ilow)となった場合に、放電制御モードから切り替えられる。この場合、実際には、出力電流Ifcに相関する出力電圧Vfc、及び、下限電流Ilowに相関する電圧値に基づく切替処理が実行される。そして、制御完了モードは、一定時間が経過した後、リフレッシュ制御を完了する動作モードである。
【0061】
制御完了モードにおいては、
図5に示すように、制御装置20の制御部21は、充電制御モード及び放電制御モードでオン状態に維持された第一開閉器22aをオフ状態に切り替える。又、制御完了モードにおいては、制御装置20の制御部21は、放電制御モードでオン状態に切り替えた制御回路22の第一昇圧回路22cのスイッチ22c1をオフ状態に切り替える。更に、制御完了モードにおいては、制御装置20の制御部21は、放電制御モードでアノード電極に供給した水を停止させるために、第二ポンプ17の作動を停止する。これにより、燃料電池10即ち第一燃料電池スタック11に対するリフレッシュ制御が完了する。
【0062】
尚、第二燃料電池スタック12に対するリフレッシュ制御を行う場合には、上述した第一燃料電池スタック11に対するリフレッシュ制御と同様に行われる。即ち、充電制御モードにおいては、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第二開閉器22bをオン状態に切り替えると共に、制御回路22のキャパシタ出力開閉器22eをオフ状態に制御する。そして、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第二昇圧回路22dをオン状態とオフ状態とに繰り返し切り替えて昇圧スイッチング制御を行う。
【0063】
又、放電制御モードにおいては、制御装置20の制御部21は、制御回路22の第二開閉器22bをオン状態に維持すると共に、制御回路22の第二昇圧回路22dのスイッチ22d1をオン状態に切り替える。これにより、第二燃料電池スタック12のアノード電極を強制的に短絡させることにより、第二燃料電池スタック12を強制的に放電する。又、制御装置20の制御部21は、第二ポンプ17を作動させることによって生成水を第二燃料電池スタック12のアノード電極に供給し、アノード電極に残存しているギ酸を排出する。これにより、第二燃料電池スタック12においては、アノード電極に水が供給されるため、MEAにおける電極反応は、強制的に且つ速やかに停止される。
【0064】
そして、制御完了モードにおいては、制御装置20の制御部21は、充電制御モード及び放電制御モードでオン状態に維持された第二開閉器22bをオフ状態に切り替える。又、制御装置20の制御部21は、放電制御モードでオン状態に切り替えた制御回路22の第二昇圧回路22dのスイッチ22d1をオフ状態に切り替える。更に、制御装置20の制御部21は、第二ポンプ17の作動を停止する。これにより、第二燃料電池スタック12に対するリフレッシュ制御が完了する。そして、制御装置20の制御部21は、第一ポンプ14を作動させることにより、第一燃料電池スタック11へのギ酸の供給を再開し、通常発電モードにより第一燃料電池スタック11即ち燃料電池10を作動させる。
【0065】
(5-3.キャパシタ放電モード)
キャパシタ放電モードは、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12が通常発電モード(通常稼働モード)によって電力を発電し、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに電力を供給している状態で、キャパシタ30に充電(蓄電)された停止後電力を含む電力をDCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに供給する動作モードである。尚、キャパシタ放電モードは、後述するように、電気的に並列に接続された第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力が低下した状況、又は、外部の負荷Cが大きくなるように変化した状況において行われる動作モードである。
【0066】
キャパシタ放電モードは、
図6に示すように、制御装置20の制御部21によって切替制御される制御回路22の作動状態が切り替えられることによって、2つの動作モードが存在する。具体的に、キャパシタ放電モードは、キャパシタ30から充電(蓄電)された停止後電力を含む電力を外部に供給する放電制御モード、キャパシタ30からの電力供給を遮断する遮断制御モードが存在する。
【0067】
(5-3-1.放電制御モード)
キャパシタ放電モードにおける放電制御モードは、通常稼働モードにて発電している燃料電池10即ち第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の何れか一方の出力電圧Vfcが要求出力電圧Vd未満(Vfc<Vd)、又は、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに供給される最大出力電流Imaxが負荷Cに要求される要求電流Id未満(Imax<Id)になった場合に、キャパシタ30から停止後電力を含む電力を供給する動作モードである。ここで、要求出力電圧Vdは、例えば、キャパシタ30のキャパシタ基礎電圧Vbase未満の大きさに設定される。尚、放電制御モードにおいては、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12即ち燃料電池10は発電を継続する。
【0068】
放電制御モードにおいては、
図6に示すように、制御装置20の制御部21は、DCレギュレータ回路22fをオン状態に維持した状態で、キャパシタ出力開閉器22eをオフ状態からオン状態に切り替える。又、制御装置20の制御部21は、第一開閉器22a及び第二開閉器22bをオフ状態に維持する。
【0069】
これにより、キャパシタ放電モードの放電制御モードにおいては、キャパシタ30は、DCレギュレータ回路22fに対してキャパシタ出力開閉器22eを介して電気的に接続される。ところで、キャパシタ30は、上述したキャパシタ充電モード又は充電制御モードにより、キャパシタ基礎電圧Vbase以上(例えば、満充電電圧Vm)まで、少なくとも停止後電力を含む電力が充電(蓄電)されている。即ち、放電制御モードが行われる場合には、キャパシタ30のキャパシタ電圧Vcapは、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の出力電圧Vfcよりも大きい状態になっている。
【0070】
このため、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12によって発電された電力に加えて、キャパシタ30は、充電(蓄電)された電力(停止後電力を含む)を放電することにより、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに供給することができる。又、キャパシタ30が放電により電力(停止後電力を含む)を供給することにより、DCレギュレータ回路22fを介して外部の負荷Cに供給される最大出力電流Imaxを大きくすることができ、その結果、外部の負荷Cは、要求電流Idの供給を安定して受けることができる。
【0071】
(5-3-2.遮断制御モード)
遮断制御モードは、放電によりキャパシタ30のキャパシタ電圧Vcapが、第一燃料電池スタック11又は第二燃料電池スタック12の出力電圧Vfc以下(Vcap≦Vfc)になった場合に、キャパシタ30からDCレギュレータ回路22fへの電力の供給を遮断する動作モードである。遮断制御モードにおいては、
図6に示すように、制御装置20の制御部21は、放電制御モードにおいてオン状態に切り替えたキャパシタ出力開閉器22eをオフ状態に切り替える。
【0072】
これにより、キャパシタ30とDCレギュレータ回路22fとの電気的な接続が遮断される。従って、キャパシタ30からの電力の供給、即ち、キャパシタ30の放電が遮断される。
【0073】
以上の説明からも理解できるように、燃料電池システム1によれば、電力回収装置であるキャパシタ30は、リフレッシュ制御モードの実行に伴い、燃料電池10の第一燃料電池スタック11又は第二燃料電池スタック12への液体燃料であるギ酸の供給が停止された後において、充電制御モードの実行によって停止後電力を充電して回収することができる。そして、燃料電池システム1は、キャパシタ放電モードの実行に伴い、燃料電池10の第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12から出力される電力に加えて、放電制御モードの実行によってキャパシタ30が回収した停止後電力を放電することにより、外部の負荷に電力を供給することができる。
【0074】
従って、燃料電池システム1は、電力回収装置が無駄に浪費される停止後電力を回収すると共に停止後電力を放電することによって利用することができる。これにより、燃料電池システム1は、燃料電池10の第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12から外部の負荷Cに供給される電力の安定化を図ることができる。
【0075】
又、燃料電池システム1は、リフレッシュ制御モードの放電制御モードにおいて、リフレッシュ制御によって発電停止制御された(即ち、ギ酸の供給が停止された)第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の一方である第一燃料電池スタック11について、優先的に、カソード電極をアノードへ電気的に短絡放電を行う。更に、燃料電池システム1は、第一燃料電池スタック11のアノード電極に水を供給し、残留しているギ酸を排出する。これにより、第一燃料電池スタック11は速やかに電力を短絡によって放電すると共にMEAにおける電極反応を停止して発電を停止することができる。つまり、燃料電池システム1は、速やかにリフレッシュ制御を完了することができ、制御完了モードの実行後速やかに通常発電モードに移行することができる。
【0076】
従って、燃料電池システム1は、リフレッシュ制御に伴って燃料電池10(第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の一方である第一燃料電池スタック11)が発電を停止する発電停止時間を短縮することができる。その結果、燃料電池10(第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12)から外部の負荷Cに供給される電力が不安定になることを抑制することができ、外部の負荷Cに出力される電力の安定化を図ることができる。
【0077】
更に、燃料電池システム1は、キャパシタ30が、放電により浪費されていた燃料電池10(第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12)から出力される停止後電力を充電(蓄電)することによって回収し、その後、停止後電力を放電することによって外部の負荷Cに出力(供給)することができる。これにより、燃料電池10によって発電された電力の利用効率を向上させることができ、その結果、省エネルギーを実現することが可能となる。
【0078】
尚、上述した本例においては、燃料電池システム1が、第一燃料電池スタック11及び第二燃料電池スタック12の2つの燃料電池スタックを有する場合を例示した。しかし、燃料電池システム1においては、燃料電池スタックの数が2つに限定されるものではなく、3つ以上の燃料電池スタックを有しても良い。燃料電池スタックが3つ以上の場合であっても、上述した本例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0079】
1…燃料電池システム、10…燃料電池、11…第一燃料電池スタック、12…第二燃料電池スタック、13…供給タンク、14…第一ポンプ、15…ブロア、16…供給タンク、17…第二ポンプ、20…制御装置、21…制御部、22…制御回路、22a…第一開閉器、22b…第二開閉器、22c…第一昇圧回路、22d…第二昇圧回路、22e…キャパシタ出力開閉器、22f…DCレギュレータ回路、30…キャパシタ(電力回収装置)、C…負荷、K1,K2…接続部、H…ホルダ、B…ボルト、U…単セル