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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111483
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】ICタグ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/077 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006931
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】山田 武司
(57)【要約】
【課題】ICタグの耐荷重性及び耐屈曲性を向上させる。
【解決手段】ICタグ10は、柔軟性を有する基板100と、基板100上に配置されたICチップ200と、基板100上に配置され、ICチップ200を覆う弾性体の被覆部300と、を備え、被覆部300は、基準面302と、基準面302に対して窪み、基板100に垂直な方向からの平面視において、ICチップ200の中心CTを含む部分に形成された凹部340と、基準面302から突出し、平面視において、凹部340の開口部346を囲むように配置されたリブ360と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性を有する基板と、
前記基板上に配置されたICチップと、
前記基板上に配置され、前記ICチップを覆う弾性体の被覆部と、
を備え、
前記被覆部は、
基準面と、
前記基準面に対して窪み、前記基板に垂直な方向からの平面視において、前記ICチップの中心を含む部分に形成された凹部と、
前記基準面から突出し、前記平面視において、前記凹部の開口部を囲むように配置された突出部と、
を有する、
ことを特徴とするICタグ。
【請求項2】
前記突出部は、
前記平面視において、第1方向に延在し、前記開口部から離れた位置に前記開口部を挟むように配置された第1突出部分及び第2突出部分と、
前記平面視において、前記第1方向に交差する第2方向に延在し、前記開口部から離れた位置に前記開口部を挟むように配置された第3突出部分及び第4突出部分と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項3】
前記被覆部は、
前記基準面から突出し、前記開口部が形成される高台部をさらに有し、
前記突出部は、
前記平面視において、第1方向に延在し、前記高台部を挟むように配置された第1突出部分及び第2突出部分と、
前記平面視において、第1方向に交差する第2方向に延在し、前記高台部を挟むように配置された第3突出部分及び第4突出部分と、
を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項4】
前記突出部は、前記開口部が形成される高台部である、
ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【請求項5】
柔軟性を有する基板と、
前記基板上に配置されたICチップと、
前記基板上に配置され、前記ICチップを覆う弾性体の被覆部と、
を備え、
前記被覆部は、
基準面と、
前記基板に垂直な方向からの平面視において、前記ICチップの中心を含む部分に形成された凹部と、
前記基準面から突出し、前記平面視において、前記凹部の開口部が形成される高台部と、
前記基準面から突出し、前記平面視において、前記高台部の外側に配置され、少なくとも一部が前記高台部から離れた位置に形成された突出部と、
を有する、
ことを特徴とするICタグ。
【請求項6】
前記突出部は、
前記平面視において、第1方向に延在し、前記高台部を挟むように配置された第1突出部分及び第2突出部分と、
前記平面視において、第1方向に交差する第2方向に延在し、前記高台部を挟むように配置された第3突出部分及び第4突出部分と、
を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載のICタグ。
【請求項7】
前記凹部は、前記平面視において円形状である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のICタグ。
【請求項8】
前記凹部は、前記平面視において円形状であり、
前記突出部は、前記平面視において前記開口部を囲む円環形状であり、
前記突出部の内周縁は、前記平面視において前記開口部の縁から離れている、
ことを特徴とする請求項1に記載のICタグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、例えば、近距離無線通信によって情報を送受信するIC(Integrated Circuit)チップを含み、生産管理等に用いられる。例えば、特許文献1には、シーツ等のリネン製品に取り付けられることを想定したICタグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-222409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ICタグが取り付けられる製品には、製造から出荷までの工程、及び、製品の運用時に、荷重及び曲げ等の物理的な負荷がかかる場合がある。このため、ICタグの耐荷重性及び耐屈曲性の向上が望まれる。
【0005】
以上の事情を考慮して、本発明は、ICタグの耐荷重性及び耐屈曲性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係るICタグは、柔軟性を有する基板と、前記基板上に配置されたICチップと、前記基板上に配置され、前記ICチップを覆う弾性体の被覆部と、を備え、前記被覆部は、基準面と、前記基準面に対して窪み、前記基板に垂直な方向からの平面視において、前記ICチップの中心を含む部分に形成された凹部と、前記基準面から突出し、前記平面視において、前記凹部の開口部を囲むように配置された突出部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るICタグを説明するための説明図である。
図2図1に示したICタグの断面図である。
図3】ICチップにかかる応力の解析に用いたICタグの要部の寸法を説明するための説明図である。
図4】第2実施形態に係るICタグを説明するための説明図である。
図5図4に示したICタグの断面図である。
図6】ICチップにかかる応力の解析に用いたICタグの要部の寸法を説明するための説明図である。
図7】第3実施形態に係るICタグを説明するための説明図である。
図8図7に示したICタグの断面図である。
図9】第2変形例に係るICタグを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0009】
[1.第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を説明する。先ず、図1から図3を参照しながら、第1実施形態に係るICタグ10の概要の一例について説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るICタグ10を説明するための説明図である。なお、図1は、基板100に垂直な方向から平面視したICタグ10を示している。
【0011】
本実施形態では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を有する3軸の直交座標系を導入する。以下では、X軸の矢印の指す方向は+X方向と称され、+X方向の反対方向は-X方向と称される。Y軸の矢印の指す方向は+Y方向と称され、+Y方向の反対方向は-Y方向と称される。また、Z軸の矢印の指す方向は+Z方向と称され、+Z方向の反対方向は-Z方向と称される。以下では、+Y方向及び-Y方向を特に区別することなく、Y方向と称し、+X方向及び-X方向を、特に区別することなく、X方向と称する場合がある。また、+Z方向及び-Z方向を、特に区別することなく、Z方向と称する場合がある。
【0012】
図1に示す例では、ICタグ10は、Z方向から平面視した場合、X方向に延在する長方形として把握される。すなわち、図1に示す例では、X方向は、ICタグ10の長手方向に対応し、Y方向は、ICタグ10の短手方向に対応する。なお、平面視におけるICタグ10の形状は、長方形に限定されない。
【0013】
ICタグ10は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)技術を利用したタグであり、近距離無線通信によって情報を送受信するIC(Integrated Circuit)チップ200を有する。RFID技術を利用したタグには、ICタグの他に、RFIDタグ、RFタグ、電子タグ及び非接触タグ等の様々な呼び方があるが、本実施形態では、RFID技術を利用したタグは、「ICタグ」と称される。ICタグ10は、例えば、商品等の「もの」の管理に用いられ、物流分野、生産管理分野、レンタル業、宿泊業及び医療分野等の様々な分野で利用される。
【0014】
ICタグ10は、柔軟性を有する基板100と、基板100上に配置されたICチップ200と、基板100上に配置され、ICチップ200を覆う弾性体の被覆部300とを有する。基板100は、例えば、アンテナ120を含む。例えば、基板100は、アンテナ120を含むフレキシブルプリント基板であってもよい。あるいは、アンテナ120は、基板100上に配置されてもよい。基板100を平面視した場合の基板100の形状は、例えば、X方向に沿って延在する長方形である。基板100のうち、配線及びアンテナ120等の導体が配置される部分(支持体)の材料は、例えば、紙、樹脂及びプラスチック等の柔軟性を有する絶縁体である。なお、図1では、被覆部300に覆われたICチップ200等を破線により示している。
【0015】
ICチップ200は、例えば、識別情報等の情報を近距離無線通信によって送受信するIC回路を有する。識別情報は、例えば、ICタグ10により管理される対象物を識別するための情報である。ICチップ200は、図示しない半田等により基板100に接合される。これにより、ICチップ200は、アンテナ120に電気的に接続される。なお、ICチップ200と基板100との接合方法は、半田接合に限定されない。例えば、ICチップ200は、図示しない半田等によりアンテナ120に接続され、接着剤等により基板100に接合されてもよい。
【0016】
被覆部300は、ICチップ200等を覆うことにより、ICチップ200及び基板100等をモールドする。被覆部300の材料は、例えば、シリコーンゴム等の軟質な弾性材料である。このように、本実施形態では、ICチップ200とアンテナ120との接続部等が軟質な被覆部300によりモールドされるため、ICタグ10の柔軟性が低下することを抑止しつつ、防水性を高めることができる。
【0017】
また、本実施形態では、ICタグ10に対する垂直方向からの荷重及び衝撃等に耐えるために、被覆部300は、ICタグ10の耐荷重性を向上させる形状に形成される。例えば、被覆部300は、ICタグ10の機械的強度に影響するICチップ200等にかかる応力を分散させる形状に形成される。具体的には、被覆部300は、基準面302と、基準面302に対して窪んだ凹部340と、基準面302から突出した複数のリブ360(360a、360b、360c及び360d)とを有する。複数のリブ360は、「突出部」の一例である。
【0018】
なお、図1では、複数のリブ360を互いに区別するために、各リブ360の符号の末尾には、小文字のアルファベット(a、b、c又はd)が付されている。また、各リブ360に含まれる要素の符号の末尾にも、対応するリブ360と同じ小文字のアルファベット(a、b、c又はd)が付されている。各リブ360は、「第1突出部分」、「第2突出部分」、「第3突出部分」及び「第4突出部分」のいずれかに該当する。すなわち、リブ360は、「第1突出部分」、「第2突出部分」、「第3突出部分」及び「第4突出部分」を含む「突出部」に該当する。基準面302は、例えば、被覆部300における凹部340及びリブ360のいずれも形成されていない平坦部分の平面(X-Y平面)に対応する。例えば、基準面302は、一番面積の大きい水平な面(X-Y平面)を指す。
【0019】
先ず、被覆部300が有する凹部340及びリブ360のうち、凹部340について説明する。
【0020】
凹部340は、基板100に垂直なZ方向からの平面視において、ICチップ200の中心CTを含む部分に円形状に形成される。例えば、凹部340は、ICチップ200の真上の部分にICチップ200から+Z方向に間隔を空けて形成された円形の底面342と、基準面302に対して傾斜し、底面342と基準面302とを接続する傾斜面344とを含む。なお、傾斜面344は、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する。底面342の中心は、平面視において、ICチップ200の中心CTと一致又はほぼ一致することが好ましい。図1に示す例では、平面視における凹部340の形状は円形であるが、凹部340の形状は、円形に限定されない。
【0021】
ここで、例えば、ICタグ10に垂直方向(Z方向)から荷重がかかった場合、凹部340にかかる荷重は、凹部340による窪みを埋める方向に応力分散する。すなわち、本実施形態では、ICタグ10に対する垂直方向からの荷重及び衝撃等を、ICチップ200等をモールドする被覆部300により分散することができる。これにより、本実施形態では、ICタグ10の機械的強度に影響するICチップ200等に局所的かつ過大な応力がかかることを抑制できる。この結果、本実施形態では、ICタグ10の耐荷重性を高めることができる。
【0022】
次に、リブ360について説明する。
【0023】
リブ360は、平面視において、凹部340の開口部346を囲むように配置される。図1に示す例では、凹部340の開口部346は、リブ360a、360b、360c及び360dにより、4方向から囲まれる。
【0024】
例えば、リブ360a及び360cは、平面視において、X方向に延在し、開口部346からY方向に離れた位置に、開口部346を挟むように配置される。また、リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、開口部346からX方向に離れた位置に、開口部346を挟むように配置される。すなわち、図1に示す例では、リブ360a及び360cの長手方向は、リブ360b及び360dの長手方向と直交又はほぼ直交する。なお、Y方向は、X方向に交差する方向である。従って、X方向及びY方向の一方は、「第1方向」の一例であり、X方向及びY方向の他方は、「第2方向」の一例である。
【0025】
リブ360a、360b、360c及び360dの各々は、基準面302に対して+Z方向に位置する長方形の上面366と、基準面302に対して傾斜し、上面366と基準面302とを接続する傾斜面364とを含む。例えば、リブ360aは、基準面302に対して+Z方向に位置し、X方向に延在する長方形の上面366aと、基準面302に対して傾斜し、上面366aと基準面302とを接続する4つの傾斜面364aとを含む。また、例えば、リブ360bは、基準面302に対して+Z方向に位置し、Y方向に延在する長方形の上面366bと、基準面302に対して傾斜し、上面366bと基準面302とを接続する4つの傾斜面364bとを含む。
【0026】
なお、傾斜面364は、傾斜面364と上面366との境界が、傾斜面364と基準面302との境界よりも、上面366の中心から平面視において離れた位置になるように、傾斜する。すなわち、傾斜面364は、リブ360の上面366がリブ360の底面より小さくなるように、基準面302に対して傾斜する。
【0027】
図1に示す例では、リブ360a、360b、360c及び360dの各々は、平面視において長方形状に形成されるが、リブ360a、360b、360c及び360dの各々の形状は、長方形に限定されない。
【0028】
ここで、例えば、ICタグ10を屈曲させる場合の各リブ360の断面係数は、各リブ360の厚さが他の部分の厚さより大きいため、リブ360a、360b、360c及び360dにより囲まれた部分の外側の部分の断面係数に比べて大きい。このため、ICタグ10の屈曲は、リブ360a、360b、360c及び360dにより囲まれた部分(すなわち、ICチップ200付近)を避けた位置に、生じる。すなわち、本実施形態では、ICチップ200が配置された部分の耐屈曲性の低下を抑制することができる。
【0029】
このように、本実施形態では、基板100の補強材として、シリコーンゴム等の被覆部300が用いられるため、ICタグ10の柔軟性が低下することを抑止しつつ、ICタグ10の耐荷重性及び耐屈曲性を向上させることができる。なお、耐荷重性の向上(凹部340により得られる効果)及び耐屈曲性の向上(リブ360により得られる効果)の程度は、凹部340の深さ及びリブ360の高さによって、変化する。例えば、凹部340の深さが大きい場合、凹部340の深さが小さい場合に比べて耐荷重性が向上し、リブ360の高さが大きい場合、リブ360の高さが小さい場合に比べて耐屈曲性が向上する。
【0030】
図2は、図1に示したICタグ10の断面図である。なお、図2は、図1に示したA1-A2線に沿うICタグ10の断面を示している。また、図2では、図を見やすくするために、アンテナ120の記載を省略している。図2では、凹部340及びリブ360の寸法等の好適な数値例を説明するが、凹部340及びリブ360の寸法等は、図2において説明する数値例(範囲)に限定されない。
【0031】
例えば、被覆部300の厚さT1は、好ましくは基板100の厚さT0の80%以上1920%以下の範囲であり、より好ましくは基板100の厚さT0の310%以上460%以下の範囲である。なお、被覆部300の厚さT1は、基板100と基準面302とのZ方向における距離に対応する。すなわち、被覆部300の厚さT1は、凹部340及びリブ360のいずれも形成されない平坦部分の被覆部300の厚さに対応する。
【0032】
また、例えば、凹部340の底面342と基準面302とのZ方向における距離D1(Z方向の位置の差)は、好ましくは被覆部300の厚さT1の10%以上90%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の10%以上30%以下の範囲である。また、底面342の直径Φ1は、好ましくは被覆部300の厚さT1の100%以上1000%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の160%以上240%以下の範囲である。
【0033】
また、例えば、各リブ360の上面366と基準面302とのZ方向における距離D2(Z方向の位置の差)は、好ましくは被覆部300の厚さT1の10%以上90%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の10%以上30%以下の範囲である。また、各リブ360の上面366の長手方向の長さL1は、好ましくは被覆部300の厚さT1の100%以上10000%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の200%以上2000%以下の範囲である。
【0034】
また、各リブ360の上面366の短手方向の長さL2は、好ましくは被覆部300の厚さT1の20%以上1000%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の40%以上120%以下の範囲である。また、リブ360a、360b、360c及び360dは、ICチップ200の中心CTを中心とする所定の円の内側に各リブ360の上面366が位置するように、配置される。上述の所定の円の半径は、好ましくは被覆部300の厚さT1の100%以上10000%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300の厚さT1の1000%以上2000%以下の範囲である。
【0035】
また、ICタグ10の長手方向に延在するリブ360a及び360cの上面366(366a及び366c)の長手方向の長さL1は、ICタグ10の長手方向の長さL0の2分の1程度が好ましい。
【0036】
図2に示すように、被覆部300は、ICチップ200の上部の部分に凹部340を有する。これにより、本実施形態では、例えば、ICチップ200の上側(Z方向)からICタグ10に荷重がかかった場合、被覆部300の一部が凹部340に入り込むように荷重が分散されるため、ICチップ200及び被覆部300等にかかる荷重を逃がすことができる。この結果、本実施形態では、軟質な被覆部300によりICチップ200等がモールドされる場合においても、耐荷重性を高めることができる。
【0037】
なお、ICチップ200の上部の部分に凹部340が形成された場合、ICチップ200の上部の被覆部300の厚さが減少するため、ICチップ200が配置された部分の耐屈曲性が低下するおそれがある。このため、本実施形態では、上述したように、凹部340の開口部346から離れた位置、すなわち、ICチップ200から離れた位置に、リブ360を設けることにより、ICチップ200が配置された部分の耐屈曲性の低下を抑制する。
【0038】
例えば、ICタグ10上の任意の直線箇所の断面に着目した場合、単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均が小さい直線箇所の耐屈曲性は、単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均が大きい直線箇所の耐屈曲性に比べて、低い。本実施形態では、単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均の凹部340による低下を、ICチップ200を囲むようにリブ360を設けることにより、補う。これにより、本実施形態では、ICチップ200上を通る直線箇所の単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均を、ICチップ200上を通らない直線箇所の単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均に比べて大きくすることができる。
【0039】
この結果、本実施形態では、ICチップ200付近の耐屈曲性を、リブ360a、360b、360c及び360dにより囲まれた部分の外側の部分の耐屈曲性に比べて、高くすることができる。これにより、例えば、ICタグ10全体に荷重がかかる場合、リブ360a、360b、360c及び360dにより囲まれた部分の外側の部分、すなわち、ICチップ200から離れた位置が、ICチップ200付近に比べて曲がりやすくなる。このように、本実施形態では、屈曲の影響を受けやすいICチップ200付近が屈曲することを避けることができるため、ICタグ10の耐屈曲性を向上させることができる。
【0040】
なお、ICタグ10の構成は、図1及び図2に示した例に限定されない。例えば、各リブ360の上面366と基準面302とを接続する各傾斜面364は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。同様に、凹部340の底面342と基準面302とを接続する傾斜面344は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。
【0041】
図3は、ICチップ200にかかる応力の解析に用いたICタグ10の要部の寸法を説明するための説明図である。
【0042】
例えば、ICチップ200にかかる応力の解析に用いたICタグ10の基板100の厚さT0は、0.13mmであり、被覆部300の厚さT1は、0.5mm(厚さT0の約385%)である。
【0043】
また、例えば、被覆部300に形成された凹部340の底面342と基準面302との距離D1は、0.1mm(厚さT1の20%)であり、底面342の直径Φ1は、1mm(厚さT1の200%)である。また、底面342と傾斜面344とのなす角θ10は、7.1°である。底面342と傾斜面344とのなす角θ10は、基準面302と傾斜面344とのなす角に対応する。
【0044】
また、例えば、被覆部300に形成されたリブ360の上面366と基準面302との距離D2は、0.1mm(厚さT1の20%)である。また、リブ360a及び360cの上面366(366a及び366c)の長手方向の長さL1は、8mm(厚さT1の1600%)であり、短手方向の長さL2は、0.4mm(厚さT1の80%)である。また、リブ360b及び360dの上面366(366b及び366d)の長手方向の長さL1は、6mm(厚さT1の1200%)であり、短手方向の長さL2は、0.4mm(厚さT1の80%)である。また、上面366と傾斜面364とのなす角θ20は、7.1°である。上面366と傾斜面364とのなす角θ20は、基準面302と傾斜面364とのなす角に対応する。
【0045】
また、各リブ360の上面366が配置される範囲に対応する所定の円の半径は、10mm(厚さT1の2000%)である。また、基板100とICチップ200との境界面におけるICチップ200の中心CTをXYZ座標系の原点(0、0、0)とした場合、リブ360aの上面366aの座標(x、y、z)は、(0、3.2、0.6)である。リブ360bの上面366bの座標(x、y、z)は、(6.2、0、0.6)であり、リブ360cの上面366cの座標(x、y、z)は、(0、-3.2、0.6)である。そして、リブ360dの上面366dの座標(x、y、z)は、(-6.2、0、0.6)である。
【0046】
6mm×9mmの面積でICチップ200の真上から-Z方向に70Nの荷重をICタグ10の中央部にかけた場合のICチップ200にかかる応力の解析結果を以下に示す。凹部340及びリブ360の寸法等が図3に示した寸法であるICタグ10では、ICチップ200にかかる応力は、43.4Mpaである。また、凹部340及びリブ360が形成されない比較例のICタグ(平らな形状のICタグ)では、ICチップ200にかかる応力は、53.8Mpaである。
【0047】
このように、凹部340及びリブ360が被覆部300に形成されたICタグ10では、凹部340及びリブ360が被覆部300に形成されない比較例のICタグに比べて、ICチップ200にかかる応力を小さくすることができる。
【0048】
以上、本実施形態では、ICタグ10は、柔軟性を有する基板100と、基板100上に配置されたICチップ200と、基板100上に配置され、ICチップ200を覆う弾性体の被覆部300とを有する。被覆部300は、基準面302と、凹部340と、リブ360とを有する。凹部340は、基準面302に対して窪み、基板100に垂直な方向からの平面視において、ICチップ200の中心を含む部分に形成される。リブ360は、基準面302から突出し、平面視において、凹部340の開口部346を囲むように配置される。
【0049】
このように、本実施形態では、ICチップ200の上部の部分に凹部340が形成されるため、ICチップ200の上側(+Z方向)からICタグ10に荷重がかかった場合、被覆部300の一部が凹部340に入り込むように荷重が分散される。すなわち、本実施形態では、ICチップ200及び被覆部300等にかかる荷重を分散することができる。この結果、本実施形態では、軟質な被覆部300によりICチップ200等がモールドされる場合においても、耐荷重性を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、凹部340の開口部346を囲むようにリブ360が配置されるため、リブ360により囲まれた部分の外側の部分、すなわち、ICチップ200から離れた位置が、ICチップ200付近に比べて曲がりやすくなる。すなわち、本実施形態では、屈曲の影響を受けやすいICチップ200付近が屈曲することを避けることができる。このため、本実施形態では、ICタグ10の耐屈曲性を向上させることができる。このように、本実施形態では、ICタグ10の耐荷重性及び耐屈曲性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、リブ360は、リブ360a、360b、360c及び360dを含む。リブ360a及び360cは、平面視において、X方向に延在し、開口部346から離れた位置に開口部346を挟むように配置される。また、リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、開口部346から離れた位置に開口部346を挟むように配置される。このため、本実施形態では、凹部340を通る直線箇所(すなわち、ICチップ200上を通る直線箇所)における単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均の低下を抑制することができる。これにより、本実施形態では、ICチップ200上を通る直線箇所の単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均を、ICチップ200上を通らない直線箇所の単位長さ当たりの被覆部300の厚さの平均に比べて大きくすることができる。この結果、ICチップ200上を通らない直線箇所、例えば、ICチップ200から離れた位置が、ICチップ200付近に比べて曲がりやすくなる。このように、本実施形態では、屈曲の影響を受けやすいICチップ200付近が屈曲することを避けることができるため、ICタグ10の耐屈曲性を向上させることができる。また、本実施形態では、リブ360が開口部346から離れた位置に配置されるため、曲がりやすい部分を、ICチップ200から離れた位置にすることができる。
【0052】
また、本実施形態では、凹部340は、平面視において円形状である。このため、本実施形態では、ICチップ200の上側からICタグ10にかかった荷重を、円形状の凹部340の中心に向かう方向に効率よく分散させることができる。この結果、本実施形態では、ICタグ10の耐荷重性を効率よく向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、凹部340は、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面344を含む形状である。なお、凹部340は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であってもよい。凹部340が、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面344を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状である場合、凹部340を容易に形成することができる。
【0054】
[2.第2実施形態]
次に、図4から図6を参照しながら、第2実施形態に係るICタグ10Aについて説明する。
【0055】
図4は、第2実施形態に係るICタグ10Aを説明するための説明図である。なお、図4は、基板100に垂直な方向(+Z方向)から平面視したICタグ10Aを示している。図1から図3において説明した要素と同様の要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0056】
ICタグ10Aは、図1に示した被覆部300の代わりに被覆部300Aを有することを除いて、図1に示したICタグ10と同様である。また、被覆部300Aは、凹部340及びリブ360に加えて高台部320が形成されることを除いて、図1に示した被覆部300と同様である。すなわち、ICタグ10Aでは、高台部320、凹部340及びリブ360が形成された軟質な被覆部300Aにより、ICチップ200等がモールドされる。なお、被覆部300Aの材料は、被覆部300と同様に、例えば、シリコーンゴム等の軟質な弾性材料である。以下では、本実施形態と上述した第1実施形態との主な相違点である高台部320を中心に説明する。
【0057】
高台部320は、基準面302から突出する。また、高台部320には、凹部340の開口部346が形成される。図1に示す例では、高台部320は、+Z方向からの平面視において、中央に開口部346がある円形状として把握される。すなわち、高台部320は、+Z方向からの平面視において、開口部346を囲む円環形状として把握される。高台部320の中心は、平面視において、ICチップ200の中心CTと一致又はほぼ一致することが好ましい。
【0058】
例えば、高台部320は、基準面302に対して+Z方向に位置する円環形状の上面326と、基準面302に対して傾斜し、上面326と基準面302とを接続する傾斜面324とを含む。傾斜面324は、平面視において、傾斜面324と基準面302との境界が傾斜面324と上面326との境界の外側の位置になるように、傾斜する。なお、傾斜面344は、凹部340の底面342と高台部320の上面326とを接続する。
【0059】
図4に示す例では、高台部320の外縁は、平面視において円形状に形成されるが、高台部320の外縁の形状は、円形に限定されない。例えば、凹部340の底面342が多角形である場合、高台部320の外縁及び開口部346の形状は、底面342に合わせた多角形であってもよい。
【0060】
また、リブ360a及び360cは、平面視において、X方向に延在し、開口部346からY方向に離れた位置に、高台部320を挟むように配置される。リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、開口部346からX方向に離れた位置に、高台部320を挟むように配置される。
【0061】
図5は、図4に示したICタグ10Aの断面図である。なお、図5は、図4に示したA1-A2線に沿うICタグ10Aの断面を示している。また、図5では、上述した図2と同様に、アンテナ120の記載を省略している。
【0062】
被覆部300A、凹部340及びリブ360の寸法等の好適な数値例については、図2において説明済みであるため、説明を省略する。なお、被覆部300Aの厚さT1は、図2に示した被覆部300の厚さT1に対応する。図5では、高台部320の寸法等の好適な数値例を説明するが、高台部320の寸法等は、図5において説明する数値例(範囲)に限定されない。
【0063】
例えば、高台部320の上面326と基準面302とのZ方向における距離D3(Z方向の位置の差)は、好ましくは被覆部300Aの厚さT1の10%以上90%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300Aの厚さT1の10%以上30%以下の範囲である。従って、高台部320の上面326と凹部340の底面342とのZ方向における距離D4(Z方向の位置の差)は、好ましくは被覆部300Aの厚さT1の20%以上180%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300Aの厚さT1の20%以上60%以下の範囲である。また、高台部320の上面326の外径Φ2は、好ましくは被覆部300Aの厚さT1の700%以上1200%以下の範囲であり、より好ましくは被覆部300Aの厚さT1の800%以上1000%以下の範囲である。
【0064】
なお、ICタグ10Aの構成は、図4及び図5に示した例に限定されない。例えば、高台部320の上面326と基準面302とを接続する傾斜面324は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。同様に、凹部340の底面342と高台部320の上面326とを接続する傾斜面344は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。また、図5に示した例では、高台部320の上面326と基準面302とのZ方向における距離D3は、リブ360の上面366と基準面302との距離D2と同じであるが、距離D2と異なってもよい。
【0065】
このように、本実施形態では、高台部320に凹部340が形成されるため、凹部340の深さを大きくした場合においても、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さを確保することができる。すなわち、本実施形態では、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さを確保しつつ、凹部340の深さを大きくすることができる。これにより、本実施形態では、図1及び図2に示した構成に比べて、耐荷重性を向上させることができる。
【0066】
また、例えば、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さが小さい場合、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さが大きい場合に比べて、被覆部300Aの成型時の厚さのばらつき等によってICチップ200が露出する不良等が発生する可能性が高い。本実施形態では、上述したように、凹部340の深さを大きくした場合においても、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さを確保することができるため、ICチップ200が露出する不良等の発生を抑制することができる。
【0067】
図6は、ICチップ200にかかる応力の解析に用いたICタグ10Aの要部の寸法を説明するための説明図である。ICタグ10Aの基板100の厚さT0と、被覆部300Aの厚さT1と、リブ360の寸法及び座標とについては、図6に示すように、図3において説明したICタグ10と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
例えば、被覆部300Aに形成された高台部320の上面326と基準面302との距離D3は、0.1mm(厚さT1の20%)であり、上面326の外径Φ2は、4.4mm(厚さT1の880%)である。また、上面326と傾斜面324とのなす角θ30は、7.1°である。上面326と傾斜面324とのなす角θ30は、基準面302と傾斜面324とのなす角に対応する。
【0069】
また、例えば、被覆部300Aに形成された凹部340の底面342と高台部320の上面326との距離D4は、0.2mm(厚さT1の40%)であり、底面342の直径Φ1は、1mm(厚さT1の200%)である。また、底面342と傾斜面344とのなす角θ11は、14.2°である。底面342と傾斜面344とのなす角θ11は、基準面302と傾斜面344とのなす角に対応する。
【0070】
凹部340及びリブ360の寸法等を図6に示した寸法になるように形成したICタグ10Aの中央部に、図3において説明した条件と同じ条件で荷重をかけた場合、ICチップ200にかかる応力は、41.9Mpaである。
【0071】
このように、高台部320に凹部340が形成されるICタグ10Aでは、高台部320が被覆部300に形成されないICタグ10に比べて、ICチップ200にかかる応力を小さくすることができる。
【0072】
以上、本実施形態では、被覆部300Aは、凹部340と、リブ360(リブ360a、360b、360c及び360d)と、基準面302から突出し、凹部340の開口部346が形成される高台部320とを有する。リブ360a及び360cは、平面視において、X方向に延在し、高台部320を挟むように配置される。また、リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、高台部320を挟むように配置される。
【0073】
本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、ICタグ10の耐荷重性及び耐屈曲性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、凹部340が高台部320に形成されるため、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さを確保しつつ、凹部340の深さを大きくすることができる。これにより、本実施形態では、ICチップ200上の被覆部300Aの厚さを確保しつつ、耐荷重性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態においても、凹部340は、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面344を含む形状である。なお、凹部340は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であってもよい。凹部340が、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面344を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状である場合、凹部340を容易に形成することができる。
【0075】
[3.第3実施形態]
次に、図7及び図8を参照しながら、第3実施形態に係るICタグ10Bについて説明する。
【0076】
図7は、第3実施形態に係るICタグ10Bを説明するための説明図である。なお、図7は、基板100に垂直な方向(+Z方向)から平面視したICタグ10Bを示している。図1から図6において説明した要素と同様の要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0077】
ICタグ10Bは、図1に示した被覆部300の代わりに被覆部300Bを有することを除いて、図1に示したICタグ10と同様である。また、被覆部300Bは、図1に示した凹部340及びリブ360の代わりに凹部350及び凸部370が形成されることを除いて、図1に示した被覆部300と同様である。すなわち、ICタグ10Bでは、凹部350及び凸部370が形成された軟質な被覆部300Bにより、ICチップ200等がモールドされる。なお、被覆部300Bの材料は、被覆部300と同様に、例えば、シリコーンゴム等の軟質な弾性材料である。以下では、本実施形態と上述した第1実施形態との主な相違点である被覆部300Bを中心に説明する。
【0078】
被覆部300Bは、基準面302と、基準面302に対して窪んだ凹部350と、基準面302から突出した凸部370とを有する。凸部370は、「突出部」の一例である。凹部350及び凸部370は、例えば、ICチップ200を中心とする同心円状に配置される。
【0079】
例えば、凹部350は、基板100に垂直な方向(+Z方向)からの平面視において、ICチップ200の中心CTを含む部分に円形状に形成される。例えば、凹部350は、ICチップ200の中心CTを中心とする円形状に形成される。
【0080】
凸部370は、凹部350を間隔を空けて囲む円環形状に形成される。すなわち、凸部370の内周縁は、平面視において凹部350の開口部356の縁から離れている。例えば、凸部370は、基準面302に対して+Z方向に位置し、平面視において凹部350の開口部356を囲むする円環形状の上面376と、基準面302に対して傾斜し、上面376と基準面302とを接続する傾斜面374とを含む。なお、図7では、凸部370の内周側の傾斜面374と外周側の傾斜面374とを互いに区別するために、内周側の傾斜面374の符号の末尾には、アルファベット“i”が付され、外周側の傾斜面374の符号の末尾には、アルファベット“o”が付されている。
【0081】
図7に示す例では、凸部370の内周側の傾斜面374iは、平面視において、傾斜面374iと基準面302との境界が傾斜面374iと上面376との境界の内側の位置になるように、傾斜する。また、傾斜面374iと基準面302との境界(凸部370の内周縁)は、開口部356の縁から離れている。凸部370の外周側の傾斜面374oは、平面視において、傾斜面374oと基準面302との境界が傾斜面374oと上面376との境界の外側の位置になるように、傾斜する。
【0082】
図8は、図7に示したICタグ10Bの断面図である。なお、図8は、図7に示したA1-A2線に沿うICタグ10Bの断面を示している。但し、図8では、上述した図2と同様に、アンテナ120の記載を省略している。また、図8は、凹部350及び凸部370を含む範囲ARを拡大した断面も示している。また、図8では、凹部350及び凸部370の寸法等の好適な数値例を説明するが、凹部350及び凸部370の寸法等は、図8において説明する数値例(範囲)に限定されない。
【0083】
被覆部300Bの厚さT1は、好ましくは0.2mm以上3mm以下の範囲である。
【0084】
凹部350の直径Φ3(開口部356の直径Φ3)は、好ましくは0.8mm以上2.0mm以下の範囲である。また、凹部350の深さD5は、好ましくは、被覆部300Bの厚さT1の15%以上40%以下の範囲で、かつ、0.1mm以上0.5mm以下の範囲である。
【0085】
凹部350の断面形状は、特に限定されないが、底面が開口部356より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であることが好ましい。より好ましくは、凹部350の断面形状は、開口部356の縁CCetから最深部CCdp(凹部350の底面の中心)までの断面形状線354が後述する所定の条件を満たす形状である。所定の条件は、例えば、凹部350の断面形状線354が、開口部356の縁CCetから最深部CCdpまでを直線で結んだ仮想線CCvlと同じ位置、又は、仮想線CCvlより深さ方向(-Z方向)の位置に存在することである。
【0086】
図8に示す例では、凹部350の断面形状は、半円である。なお、凹部350の断面形状は、半円に限定されず、半円を含む円弧形状であってもよいし、台形であってもよい。あるいは、凹部350の断面形状は、正弦波形であってもよいし、正弦波形以外の自由波形であってもよい。
【0087】
また、円環形状の凸部370の径Φ4(上面376の外径)は、好ましくは3mm以上5mm以下の範囲である。また、凸部370の高さD6は、好ましくは、被覆部300Bの厚さT1の15%以上40%以下の範囲で、かつ、0.1mm以上0.5mm以下の範囲である。凸部370の幅W1(凸部370の断面形状における底面の幅W1)は、好ましくは凸部370の高さD6の100%以上180%以下の範囲である。
【0088】
また、凸部370の断面形状は、特に限定されないが、上面376が底面より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面374を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であることが好ましい。より好ましくは、凸部370の断面形状は、凸部370の傾斜面374が後述する所定の条件を満たす形状である。所定の条件は、例えば、凸部370の傾斜面374が、傾斜面374と基準面302との境界線に対応する部分CVebから上面376の縁部CVetまでを直線で結んだ仮想線CVvlと同じ位置、又は、仮想線CVvlより高い位置に存在することである。仮想線CVvlより高い位置とは、仮想線CVvlより+Z方向の位置である。図8に示す例では、凸部370の断面形状は、台形である。なお、凸部370の断面形状は、波形形状であってもよい。
【0089】
本実施形態においても、例えば、ICタグ10Bに垂直方向(+Z方向)から荷重がかかった場合、凹部350にかかる荷重は、凹部350による窪みを埋める方向に応力分散する。これにより、本実施形態においても、ICタグ10Bの耐荷重性を高めることができる。また、本実施形態では、ICタグ10Bを屈曲させる場合、凸部370がリブとして働くため、凸部370の断面係数は大きくなる。このため、本実施形態においても、ICタグ10Bの屈曲は、凸部370を避ける位置に生じる。すなわち、本実施形態においても、屈曲の影響を受けやすいICチップ200付近が屈曲することを避けることができるため、ICタグ10Bの耐屈曲性を向上させることができる。
【0090】
ここで、例えば、ICチップ200等をモールドする被覆部の形状が複雑な形状である場合、ICチップ200等をモールドするためのモールド型の製作費の増加、及び、モールド型内の位置による特性差の発生等が懸念される。また、モールド型の繰り返し使用による性能劣化等が生じるおそれがある。
【0091】
なお、本実施形態では、上述したように、ICタグ10Bの耐荷重性及び耐屈曲性の向上を同心円状に配置された単純な形状の凹部350及び凸部370により実現できる。このため、本実施形態では、被覆部300Bを形成するための加工工数を少なくすることができ、ICタグ10Bの製造コストを低減することができる。また、被覆部300Bが単純な形状であるため、被覆部300Bを形成するためのモールド型の経時劣化、及び、モールド型内の位置による特性差は、小さい。このため、本実施形態では、例えば、モールド型の繰り返し使用による性能劣化等を低減することができる。
【0092】
以上、本実施形態では、被覆部300Bは、凹部350及び凸部370を有する。凹部350は、平面視において円形状である。また、凸部370は、平面視において凹部350の開口部356を囲む円環形状であり、凸部370の内周縁は、平面視において凹部350の開口部356の縁から離れている。
【0093】
本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様に、ICタグ10Bの耐荷重性及び耐屈曲性を向上させることができる。さらに、本実施形態では、単純な形状の凹部350及び凸部370によりICタグ10Bの耐荷重性及び耐屈曲性が向上するため、ICタグ10Bの製造コスト、及び、被覆部300Bを形成するためのモールド型の繰り返し使用による性能劣化等を低減することができる。
【0094】
また、本実施形態では、凸部370は、上面376が底面より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面374を含む形状である。なお、凸部370は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であってもよい。凸部370が、上面376が底面より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面374を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状である場合、凸部370を容易に形成することができる。
【0095】
また、本実施形態では、凹部350は、底面が開口部356より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であってもよい。この場合、凹部350を容易に形成することができる。
【0096】
[4.変形例]
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で併合してもよい。
【0097】
[第1変形例]
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、4つのリブ360が、凹部340の開口部346を囲むように配置される場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、凹部340の開口部346を囲む直角三角形を仮定した場合の当該直角三角形の斜辺を除く2辺に、2つのリブ360が配置されてもよい。すなわち、長手方向が互いに直交する2つのリブ360が、凹部340の開口部346を囲むように、L字形状に配置されてもよい。
【0098】
あるいは、3つのリブ360が、凹部340の開口部346を3方向から囲むように、配置されてもよい。すなわち、図1等に示したリブ360a、360b、360c及び360dのうちの1つが省かれてもよい。あるいは、3つのリブ360が、凹部340の開口部346を囲むように、三角形状に配置されてもよい。あるいは、5つ以上のリブ360が、凹部340の開口部346を囲むように配置されてもよい。あるいは、円環形状の1つのリブ360が、凹部340の開口部346を囲むように配置されてもよい。
【0099】
第1変形例においても、上述した第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0100】
[第2変形例]
上述した第2実施形態では、リブ360の上面366が高台部320の上面326から離れている場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、リブ360の上面366は、高台部320の上面326と一体に形成されてもよい。
【0101】
図9は、第2変形例に係るICタグ10Cを説明するための説明図である。なお、図9は、基板100に垂直な方向(+Z方向)から平面視したICタグ10Cを示している。図1から図8において説明した要素と同様の要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図9では、図を見やすくするために、アンテナ120の記載を省略している。さらに、図9では、リブ360の上面366及び高台部320の上面326を見やすくするために、リブ360の上面366及び高台部320の上面326を網掛けにより示している。
【0102】
ICタグ10Cは、図4に示した被覆部300Aの代わりに被覆部300Cを有することを除いて、図4に示したICタグ10Aと同様である。また、被覆部300Cでは、高台部320、凹部340、リブ360a、360b、360c及び360dに加えて、リブ360e及び360fが形成され、リブ360の上面366が、高台部320の上面326と一体に形成される。被覆部300Cのその他の構成は、図4に示した被覆部300Aと同様である。すなわち、ICタグ10Cにおいても、高台部320、凹部340及びリブ360が形成された軟質な被覆部300Cにより、ICチップ200等がモールドされる。なお、被覆部300Cの材料は、被覆部300Aと同様に、例えば、シリコーンゴム等の軟質な弾性材料である。以下では、第2変形例と上述した第2実施形態との主な相違点であるリブ360の配置を中心に説明する。
【0103】
リブ360aは、平面視において、X方向に延在し、開口部346より+Y方向の位置に配置される。また、リブ360cは、平面視において、X方向に延在し、開口部346より-Y方向の位置に配置される。すなわち、平面視において、X方向に延在するリブ360a及び360cが、高台部320を挟むように配置される。但し、リブ360aの上面366a、及び、リブ360cの上面366cは、高台部320の上面326と一体に形成される。リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、高台部320からX方向に離れた位置に、高台部320を挟むように配置される。
【0104】
このように、高台部320を挟む2つのリブ360の各々の上面366は、例えば、高台部320の上面326と一体に形成されてもよいし、高台部320の上面326から離れた位置に配置されてもよい。すなわち、高台部320を挟む2つのリブ360としては、高台部320と一体に形成され、高台部320を挟む2つのリブ360、及び、高台部320から離れた位置に配置され、高台部320を挟む2つのリブ360の両方が該当する。
【0105】
また、リブ360eは、平面視において、X方向に延在し、開口部346より+X方向の位置に配置される。例えば、リブ360eは、基準面302に対して+Z方向に位置し、X方向に延在する長方形の上面366eと、基準面302に対して傾斜し、上面366eと基準面302とを接続する3つの傾斜面364eとを含む。なお、リブ360eの上面366eは、高台部320の上面326と一体に形成される。
【0106】
また、リブ360fは、平面視において、X方向に延在し、開口部346より-X方向の位置に配置される。例えば、リブ360fは、基準面302に対して+Z方向に位置し、X方向に延在する長方形の上面366fと、基準面302に対して傾斜し、上面366fと基準面302とを接続する3つの傾斜面364fとを含む。なお、リブ360fの上面366fは、高台部320の上面326と一体に形成される。
【0107】
ここで、例えば、リブ360aを高台部320から離した構成では、リブ360aと高台部320との距離が短い場合、被覆部300Cを形成するためのモールド型の凸部分(リブ360aと高台部320のクリアランスを成形する部分)が細くなる。この場合、モールド型の加工性が低下する。なお、モールド型の凸部分を太くした場合、例えば、リブ360aと高台部320とのクリアランスが大きくなるため、ICタグ10Cの耐屈曲性が低下する。
【0108】
これに対し、図9に示す例では、X方向に延在するリブ360の上面366(例えば、リブ360aの上面366a及びリブ360cの上面366c等)が高台部320の上面326と一体に形成される。このため、第2変形例では、ICタグ10Cの耐屈曲性、及び、被覆部300Cを形成するためのモールド型の加工性を向上させることができる。
【0109】
なお、第2変形例においても、Y方向に延在するリブ360b及び360dを高台部320から離れた位置に配置することにより、ICチップ200のエリア外に曲がりやすい部分を意図的に設けることができる。この結果、第2変形例においても、ICチップ200付近が屈曲することを避けることができる。
【0110】
なお、ICタグ10Cの構成は、図9に示した例に限定されない。例えば、各リブ360の上面366と基準面302とを接続する各傾斜面364は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。同様に、高台部320の上面326と基準面302とを接続する傾斜面324は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。また、凹部340の底面342と高台部320の上面326とを接続する傾斜面344は、湾曲していてもよいし、複数の面を含んでもよい。また、例えば、リブ360e及び360fは、省かれてもよい。また、例えば、リブ360b及び360dは、省かれてもよい。
【0111】
第2変形例においても、上述した第1実施形態、第2実施形態及び第1変形例と同様の効果を得ることができる。さらに、第2変形例では、X方向に延在するリブ360の上面366が高台部320の上面326と一体に形成されるため、ICタグ10Cの耐屈曲性、及び、被覆部300Cを形成するためのモールド型の加工性を向上させることができる。
【0112】
[第3変形例]
上述した第2実施形態及び第2変形例では、凹部340が基準面302に対して窪んでいる場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、凹部340の底面342は、Z方向において、基準面302と高台部320の上面326との間に位置してもよい。すなわち、被覆部300A又は300Cが、基準面302、凹部340、高台部320及びリブ360を有する場合、凹部340は、高台部320の上面326に対して窪んでいればよい。この場合においても、リブ360は、図4及び図9に示したように、平面視において、凹部340の開口部346が形成される高台部320の外側に配置され、少なくとも一部が高台部320から離れた位置に形成される。具体的には、上述した第2実施形態及び第2変形例と同様に、リブ360a及び360cは、平面視において、X方向に延在し、高台部320を挟むように配置される。また、リブ360b及び360dは、平面視において、Y方向に延在し、高台部320を挟むように配置される。
【0113】
第3変形例においても、上述した第1実施形態、第2実施形態及び第2変形例と同様の効果を得ることができる。さらに、第3変形例では、凹部340の底面342を基準面302より高くすることができるため、ICチップ200上の被覆部300A又は300Cの厚さを確保しつつ、耐荷重性を向上させることができる。すなわち、第3変形例では、ICチップ200上の被覆部300A又は300Cの厚みをより確保できるため、屈曲に対してICチップ200を保護することができる。
【0114】
[第4変形例]
上述した第2実施形態及び第3変形例では、リブ360が設けられる場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、高台部320の範囲(面積)が大きい場合、高台部320が基板100を補強する役割も兼ねることができるため、リブ360は、省かれてもよい。この場合、高台部320は、「突出部」の一例である。すなわち、被覆部300Aには、凹部340の開口部346が形成される高台部320が、「突出部」として形成される。
【0115】
第4変形例においても、上述した第2実施形態及び第3変形例と同様の効果を得ることができる。また、第4変形例では、被覆部300Aの形状が単純な形状になるため、上述した第3実施形態と同様に、ICタグ10Aの製造コスト、及び、被覆部300Aを形成するためのモールド型の繰り返し使用による性能劣化等を低減することができる。
【0116】
また、第1変形例から第4変形例においても、凹部340は、底面342が開口部346より小さくなるように基準面302に対して傾斜する傾斜面344を含む形状、又は、基準面302に対して直交する壁面を含む形状であってもよい。この場合、凹部340を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0117】
10、10A、10B、10C…ICタグ、100…基板、120…アンテナ、200…ICチップ、300、300A、300B、300C…被覆部、302…基準面、320…高台部、324…傾斜面、326…上面、340…凹部、342…底面、344…傾斜面、346…開口部、350…凹部、360…リブ、364…傾斜面、366…上面、370…凸部、374…傾斜面、376…上面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9