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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111496
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】プログラムおよび情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20220725BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220725BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220725BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G09B29/00 A
G09B29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006948
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】599126800
【氏名又は名称】株式会社エムティーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 太
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HC08
2C032HD07
2C032HD16
2C032HD21
2F129AA02
2F129AA03
2F129AA05
2F129AA08
2F129AA11
2F129AA14
2F129BB03
2F129CC15
2F129CC16
2F129DD46
2F129DD47
2F129DD49
2F129DD62
2F129EE02
2F129EE45
2F129EE52
2F129EE57
2F129EE90
2F129FF02
2F129FF41
2F129FF59
2F129HH02
2F129HH12
5H181AA01
5H181AA06
5H181AA21
5H181AA25
5H181AA26
5H181BB04
5H181CC12
5H181EE02
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF32
5H181FF40
5H181MB03
(57)【要約】
【課題】計算に係る負荷を軽減できる情報処理装置、またはプログラム
【解決手段】
移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地の座標である目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶するデータベースから、前記出発地を選定する処理と、前記データベースから、前記選定された前記出発地にそれぞれが関連付けられた前記目的地及び前記コスト消費量を取得する取得処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶するデータベースから、前記出発地を選定する処理と、
前記データベースから、前記選定された前記出発地にそれぞれ関連付けられた前記目的地及び前記コスト消費量を取得する取得処理と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
許容できるコスト量と前記コスト消費量とに基づいて、前記移動体が前記目的地に到達可能か判断する処理を、さらにコンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記移動体の性能に基づいて、前記取得された前記コスト消費量を補正する処理を、さらにコンピュータに実行させる請求項1または2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記移動体の状況及び前記移動体の周辺の状況の少なくとも1つに基づいて、前記取得された前記コスト消費量を補正する処理を、さらにコンピュータに実行させる、請求項1から3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶するデータベースから、前記コスト消費量、前記出発地、及び前記目的地のうち、いずれか1つの値を選定する処理と、
前記データベースから、前記値に関連付けられた値を取得する処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項6】
前記データベースは、
仮想空間内において前記領域をモデル化し、
前記モデル化された前記領域において、前記出発地に相当する第1地点と前記目的地に相当する第2地点とを選定し、
前記移動体をモデル化した仮想移動体を、前記第1地点から前記第2地点まで移動させ、
前記仮想移動体が消費したコストを前記コスト消費量として取得することによって作成される、請求項1から5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量と、を相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶する記憶部と、
前記記憶部と通信可能な制御部とを備え、
前記制御部は、
前記記憶部から前記出発地を選定する処理と、
前記記憶部から、前記選定された前記出発地にそれぞれ関連付けられた前記目的地及び前記コスト消費量を取得する取得処理と、
を実行可能な情報処理装置。
【請求項8】
表示部をさらに備え、
前記制御部は、
許容できるコスト量と前記コスト消費量とに基づいて、前記目的地に前記移動体が到達可能か判断する判断処理と、
前記判断処理の結果を前記表示部に表示させる処理と、をさらに実行可能な請求項7に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムおよび情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、その車両の走行可能距離を道路地図上に表示する装置が従来技術として知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3177806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置において走行可能距離を継続的に表示する場合、刻々と変化する車両の状況に対応するため、走行可能距離の計算を常に反復し続ける必要がある。そのため装置に大きな負荷がかかり、計算時間の遅れが生じたり、不正確な表示がなされたりなどの不具合が発生する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一態様として、移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地の座標である目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶するデータベースから、前記出発地を選定する処理と、前記データベースから、前記選定された前記出発地にそれぞれ関連付けられた前記目的地及び前記コスト消費量を取得する取得処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【0006】
本発明は、一態様として、移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶するデータベースから、前記コスト消費量、前記出発地、及び前記目的地のうち、いずれか1つの値を選定する処理と、前記データベースから、前記値に関連付けられた値を取得する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【0007】
また本発明は、一態様として、移動体が移動する領域における出発地と、前記領域における目的地と、前記出発地から前記目的地に移動するために前記移動体が消費するコスト消費量とを相互に関連付けた組み合わせを複数個記憶する記憶部と、前記記憶部と通信可能な制御部とを備え、前記制御部は、前記記憶部から前記出発地を選定する処理と、前記記憶部から、前記選定された前記出発地にそれぞれ関連付けられた前記目的地及び前記コスト消費量を取得する取得処理と、を実行可能な情報処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、計算に係る負荷を軽減できる情報処理装置、またはプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る経路案内装置及び電気自動車の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係るデータベースを示す図である。
図3】仮想自動車及び仮想空間を示す図である。
図4】第1実施形態に係る到達可能範囲表示処理のフローチャートである。
図5】表示部に表示される地図及び到達可能範囲を示す。
図6】第1実施形態に係る電力消費量表示処理のフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る到達可能範囲表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
情報処理装置の第1実施形態である経路案内装置1について、図1図6を参照しつつ以下に説明する。経路案内装置1は、移動体2に装着された装置であり、地図、目的地までの経路、および移動体の到達可能範囲を表示する機能を有する。経路案内装置1は、通信部10、表示部20、操作部30及び制御ユニット40を備える。移動体2は、本発明における移動体の一例である。
【0011】
移動体2は、車輪を駆動するモータ2Bと、モータ2Bに電力を供給するバッテリ2Aとを備える。さらに、移動体2は、モータ2B、バッテリ2A、及び移動体2の内部機器と通信可能に接続される通信部2Cを備える。通信部2Cは、バッテリ2Aの残電力量や、モータ2Bの稼働状況、電費などの情報を取得する。なお、残電力量とは、バッテリ2Aに残存するエネルギ量である。すなわちバッテリ2Aが保有するエネルギ量に相当する。
なお、本実施形態では移動体2として電動自動車を想定しているが、本発明はこのような構成に限定されない。本発明における移動体として、車の他、ドローン、バス、電車、飛行機、船舶、人間、動物など各種想定される。また、移動体は公共交通機関であってもよい。移動体の動力源についても限定は無く、内燃機関など、各種想定される。
【0012】
通信部10は、移動体2の通信部2Cと通信可能に接続し、移動体2の電費(内燃機関車における燃費に相当する)や、バッテリ2Aの残電力量、残り時間などの情報を受信できる。残り時間は、人為的または機械的な条件から、移動体2の移動に際して許容できる時間を示すものである。残り時間は、ユーザの入力や、残電力量と電費からの算出など、様々な方法により設定され、通信部10によって受信される。
【0013】
また通信部10は、電波などを介してGPS(Global Positioning System)情報などの位置情報、VICS(登録商標)からの交通情報、および周辺地域の天気や気温の情報を含む天気情報を受け取ることができる。位置情報は、現在時刻などの時刻及び車両位置の座標(緯度、経度)等の属性を各々関連付けした状態で備えており、交通情報は、送信時刻などの時刻及び車両周囲の渋滞道路等の属性を、各々関連付けした状態で備える。
【0014】
表示部20は、液晶ディスプレイを備え、地図(図5を参照)、位置情報、交通情報などの各種情報を、移動体2の搭乗者に対して表示する機能を備える。
【0015】
操作部30は、外部からの入力を受け付け、制御ユニット40に送信する機能を備える。操作部30は、ボタン類などの操作機器、および表示部20の液晶ディスプレイに装備されたタッチパネルを含む。
【0016】
制御ユニット40は、図1に示すように、通信部10、表示部20、及び操作部30と通信可能に接続され、それらを制御する。制御ユニット40は、記憶部41と、CPU42とを主に備える。記憶部41及びCPU42は、互いに接続され、通信可能である。
【0017】
記憶部41は、例えばROMやRAM等により構成され、各種のデータやプログラムを記憶するとともに、データの一時的な記憶領域として利用される。記憶部41に記憶されるプログラムとしては、オペレーティングシステム(以下、「OS」という)やアプリケーションプログラム(以下、「アプリケーション」という)等がある。本実施形態では、記憶部41に記憶されるアプリケーションに、到達可能な距離などを計算するためのアプリケーション(以下、「到達範囲アプリケーションAP」という)が含まれる。
【0018】
記憶部41には、移動体2が移動可能な範囲における地図及び地形の情報が、地図データとして保存されている。また、記憶部41には、移動体2の状況情報が保存されている。状況情報とは、移動体2自体の状況または移動体2周辺の状況に関する情報である。詳細には、状況情報には、移動体2のカタログ電費、ドライバの運転の特徴、移動体2の車種、実走行電費、空調等のエネルギ消費状況、渋滞や事故等による車線規制・通行止め等の交通情報、店舗情報(店舗の業種または業態、営業時間、定休日等)、医療機関情報(受付時間、病院の休診日や薬局等の定休日、診療科情報等)及び天気情報が含まれる。状況情報の一部は、通信部10より取得される。電費は、一般的に、単位走行距離あたりの電力消費量、または、単位電力消費量あたりの走行距離として定義される。ドライバの運転の特徴には、例えば、発進時、停止時の平均的な加速度や、アクセルの踏み込み方などが含まれる。
【0019】
さらに、記憶部41には、グリッドGRの形状、及びデータベース140、150が保存されている。データベース150は、図2(b)に示すように、グリッドGRを特定する番号と、グリッドGRの略中心部の位置座標COとを、互いに関連付けた状態で備えている。グリッドGRの詳細は後述する。
【0020】
データベース140は、3つの項目のデータ値を備えた複数の組み合わせデータを有する。具体的には、データベース140は、図2(a)に示すように、それぞれは、S点の座標と、G点の座標と、所用時間Zという、3つの項目に関するデータ値を備えている。所用時間Zは、移動体2がS点からG点まで移動するために必要な時間である。このように、各組合せデータにおいては、S点の座標と、G点の座標と、所用時間Zの3つの値が、相互に関連付けられた形式で備えられ、番号が順に付されている。なお、以下の説明においては、座標等、必ずしも数値として示されるものではない場合も含め、「データの値」または「データ値」と称する。
【0021】
S点及びG点の座標は、中心座標COと一致するように設定される。また、S点及びG点は、中心座標COの数、すなわちグリッドGRの数だけ用意される。また、所用時間Zは、原則として、全てのS点およびG点のペアに対して用意される。
【0022】
本実施形態では一例として、移動体2が移動可能な範囲を1024km×1024kmの矩形範囲であるとし、これを1km角のグリッドGRで区画する場合を想定している。参考のため、図5には、仮想空間V(後述)内の表示ではあるが、1024km×1024kmの矩形範囲、及び1km角のグリッドGRの区画を示す。
【0023】
ここで、グリッドGRの個数は、図2(b)に示すように1024の2乗個である。したがって、S点およびG点の個数も、それぞれ1024の2乗個である。所用時間Zは、原則として、全てのS点およびG点のペアに対して用意されるため、図2(a)に示すように、1024の4乗個用意され、記憶部41に保存されている。つまり、グリッドGRの数をm個とすると、データベース140には、所用時間Zが少なくともmの2乗個保存されることとなる。
【0024】
なお図2では、位置座標COを、基準とする点からの東西方向及び南北方向の距離(km、キロメートル)で表示しているが、その代わりに緯度及び経度を用いて表示しても良い。また、所用時間Zは、移動体2または仮想移動体2V(後述)が移動に要する時間であり、時間単位(hour)で表示されているが、分、秒などの単位を用いても良い。所用時間Zは、移動体2または仮想移動体2Vのコスト消費量に相当する。
【0025】
CPU42は、記憶部41から読み出したプログラムを実行することにより、経路案内装置1の各部を制御する。具体的には、CPU42は、OS及び到達範囲アプリケーションAPを実行する。これにより、CPU42は、地図データを記憶部41から取得し、地図の画像を表示部20に表示させる処理を実行することができる。CPU42は、制御部またはコンピュータの一例である。
【0026】
以下においては、OSやアプリケーション等のプログラムを起動し、その機能を実行するCPU42を、単にプログラムとして記載する場合が有る。たとえば、処理内容を説明する場合などにおいて、「到達範囲アプリケーションAPを起動したCPU42は、」という記載を、「到達範囲アプリケーションAPは、」と記載する場合が有る。
【0027】
〔電力消費量データの計算〕
所用時間Zは、以下のように、仮想空間Vにおいてシミュレーションを行うことにより予め計算される。したがって所用時間Zは、経路案内装置1の出荷段階において、データベース140の形式で記憶部41に保存された状態となっている。
【0028】
所用時間Zの計算に用いる仮想空間Vを図3に示す。仮想空間Vには、移動体2が移動可能な範囲に相当する、1024km四方の矩形領域Fが、3次元でモデル化されている。領域Fでは、地面の起伏の形状に加え、実際の道路もモデル化されている。領域Fでは、1km角のグリッドGRもモデル化されており、東西方向及び南北方向において1024個ずつに区画されている。
【0029】
仮想空間Vには、移動体2をモデル化した仮想移動体2Vが配置される。仮想移動体2Vは、領域F上を走行することにより、移動体2の走行をシミュレートすることができる。仮想移動体2Vの電費は、実際の移動体2の実走行電費またはカタログ電費を忠実にモデル化することによって設定されている。そのため、仮想移動体2Vの電費は、移動体2と同様、走行している路面の勾配や、平均速度に応じて変化し得る。
【0030】
所用時間Zの計算は、仮想移動体2Vを領域F上でグリッドGR間を走行させることによって実行される。具体的には、領域F上のグリッドGRを2つ選出し、この2つのグリッドGRの位置座標COをそれぞれ、出発地の位置座標であるS点と目的地の位置座標であるG点とする。次に、仮想移動体2VをS点からG点まで走行させ、そのとき消費した所用時間Zを計算する。このようにして、全てのグリッドGRの組み合わせについてS点とG点を設定し、S点からG点まで仮想移動体2Vを走行させることにより、領域F内で考え得る全ての所用時間Zを得ることができる。
【0031】
その結果、データベース140には、S点およびG点と、上記計算によって得られた全ての所用時間Zとが、たがいに関連付けられて保存される(図2(a))。
【0032】
なお、仮想移動体2VがS点からG点まで走行するときに通過する経路は、原則として経路案内装置1が推奨する経路である。経路案内装置1が推奨する経路が複数ある場合、経路の種類に対応して、所用時間Zを用意してもよい。例えば、経路案内装置1の推奨する経路が、一般道を案内する一般道ルートと、最短距離を案内する最短距離ルートと、最短時間となるルートである最短時間ルートとの3種類がある場合、それらの3種の経路に対応して、3種類の所要時間を用意してもよい。そのため、仮想移動体2Vは、移動体2の消費する時間を正確にシミュレートできる。
【0033】
上述の方法によって得られた所用時間Zは、データベース140として記憶部41に保存される。また記憶部41には、地図データの一部として、グリッドGRの形状、区画も保存される。このように保存された各種データは、到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42によって、以下のように用いられる。
【0034】
〔到達可能範囲表示処理〕
到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42の行う処理のうち、到達可能範囲表示処理について、図4を用いて以下に説明する。この処理では、CPU42は、移動体2の出発地の座標と、残り時間とを設定し、残り時間内に到達可能な範囲を、到達可能範囲として表示する。
【0035】
この処理において、まずCPU42は、通信部10を介して、位置情報より移動体2の現在地の座標を取得し(S1)、記憶部41に保存されるデータベース140、150の参照を開始する(S2)。
【0036】
ステップS3においてCPU42は、データベース150からS点を1つ抽出する。詳細に述べるとCPU42は、データベース150から、移動体2の現在地の座標に最も近い位置座標COを、出発地に相当するS点として選定する。
【0037】
次に、CPU42は、データベース140から、ステップS3で設定されたS点に関連付けされたG点と所用時間Zとを読み出し、取得する(S4)。CPU42は、選定されたS点に関連付けされた全てのG点と所用時間Zとの読み出しが実行されるまで、この処理を繰り返す(S5:NO)。
【0038】
例えばステップS3で選定されたS点の座標が(0,0)であった場合、データベース140を参照すると、S点の座標(0,0)に対応するデータNo.1、2、3、4……が順次抽出、選定され、これに関連付けられたG点及び所用時間Zが読み出されていくこととなる。
【0039】
なお、ステップS4、S5における読み出しにかかる時間を短縮するため、表示部20に表示されている地図の範囲を網羅するグリッドGRの分だけ、G点と所用時間Zとを読み出すこととしても良い。
【0040】
読み出すべき全てのG点及び所用時間Zについて、読み出しが実行された場合(S5:YES)、CPU42は、記憶部41および通信部10から、移動体2のバッテリ2Aの残電力量、及び、移動体2の状況情報を取得する(S6)。
【0041】
CPU42は、状況情報に基づき、残り時間及び所用時間Zのいずれか、または両方の補正を行う(S7)。補正は、様々な方法が考えられる。例えば、移動体2の実走行速度が仮想移動体2Vの速度より20%悪い場合、CPU42は取得した所用時間Zを全て20%増加させる補正を行う。また、CPU42は、例えば天候や気温、交通遅延、または混雑状況に基づいて、残り時間及び所要時間Zを補正する。
【0042】
なお、経路案内装置1が移動体2とは異なる車種の電気自動車に搭載された場合であっても、CPU42は、車種および車の走行性能に基づいて、補正処理を行うことができる。
【0043】
次にCPU42は、移動体2が到達可能な座標及びグリッドGRの抽出を行う(S8)。この抽出処理において、CPU42は、取得した所用時間Zの全てについて残り時間と比較する。所用時間Zが残り時間以下である場合、CPU42は、この所用時間Zに関連付けられたG点を到達可能地点として選定するとともに、データベース150を参照し、このG点を位置座標COとするグリッドGRを到達可能グリッドGR1とする。一方、所用時間Zが残り時間より多い場合、CPU42は、この所用時間Zに関連付けられたG点、およびこのG点を位置座標COとするグリッドGRを、それぞれ到達不能地点および到達不能グリッドGR2とする。
【0044】
CPU42は、ステップS9において、表示部20を用いて表示処理を行う。CPU42は、図5に示すように、到達可能グリッドGR1と到達不能グリッドGR2との表示態様を互いに変え、表示部20上で、地図の画像と重ねて表示する。搭乗者は、移動体2が到達可能な領域、すなわち到達可能範囲を、表示部20を介して確認することで、適切な運転計画を立てることができる。
【0045】
またCPU42は、図5のように、表示部20に表示される地図上に充電設備や飲食店などのユーザが行きたい施設の位置表示を行っても良い。搭乗者は、終業後の店舗への到達、遅刻、または電欠(すなわち、エネルギー切れ)の虞のない、適切な行程を計画できる。
【0046】
〔電力消費量表示処理〕
到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42は、図6のフローに示すように、まずS点とG点とを設定し、これらの座標に関連付けられた所用時間Zを取得する処理を実行することもできる。この操作は、例えば、操作部30を介して搭乗者が出発地及び目的地を入力し、この出発地から目的地に到達するまでの所用時間Zを調べる場合に用いられる。
【0047】
ステップS11において出発地及び目的地が入力されると、CPU42は、データベース140、150の参照を開始する(S12)。CPU42は、データベース150より、入力された出発地および目的地に対して最も近い位置座標COを、それぞれ出発地に相当するS点および目的地に相当するG点として選定する(S13)。
【0048】
次に、CPU42は、データベース140より、これらのS点およびG点に関連付けられた所用時間Zを読み出し、取得する(S14)。取得の詳細な手順は種々考えられる。例えば、ステップS13で選定されたS点とG点との両方の座標に一致する組み合わせデータをデータベース140から探し、関連付けられた所用時間Zを読み出すという方法がある。または、ステップS13で選定されたS点を含む組み合わせデータを抽出し、その中からステップS13で選定されたG点と同じ座標を持つものを選び、所用時間Zを読みだすという処理でもよい。いずれも技術的には同等であり、結果として、たがいに関連付けられたS点、G点及び所用時間Zの各値と、それらの組み合わせデータが抽出される。
【0049】
例えば、ステップS13で選定されたS点の座標が(0,0)であり、選定されたG点の座標が(2,0)であるとすると、CPU42は図2(a)のデータベース140を参照し、データNo.3の所用時間Z(すなわち、0.28時間)を取得する。
【0050】
次にCPU42は、残り時間を取得する(S15)。さらにCPU42は、状況情報に基づき、残り時間及び所用時間Zのいずれか、または両方の補正を行う(S16)。補正は、様々な方法が考えられる。例えば、移動体2の実走行速度が仮想移動体2Vの速度より20%悪い場合、CPU42は取得した所用時間Zを20%増加させる補正を行う。また、CPU42は、例えば天候や気温、交通遅延、または混雑状況に基づいて、残り時間を補正する。
【0051】
ステップS17において、CPU42は、取得した所用時間Zとともに、残り時間を表示部20に表示する。このような表示が行われることによって、搭乗者は、目的地まで到達可能かどうか判断することができる。同時に、CPU42は、移動体2が目的地に到達可能かどうか判断し、その結果を表示してもよい。到達可能かどうかの判断は、ステップS8と同様、残り時間および所用時間Zを比較することによって可能である。
【0052】
<第2実施形態>
上記第1実施形態の到達可能範囲表示処理においては、データベース140から所要時間Zを読み出す処理が行われていたが、本発明はこのような実施形態に限定されない。例えば、所要時間Zをまず選定し、組み合わせデータの中から、選定された所要時間Zに関連付けられたS点、またはG点を取得する処理を実行することもできる。
【0053】
図7には、第2実施形態に係る到達可能範囲表示処理のフローチャートを示す。図7のステップS21~S23、S29における処理は、図4におけるステップS1~S3、S9における処理と同じであり、説明を省略する。
【0054】
ステップS24において、CPU42は、記憶部41および通信部10から、移動体2のバッテリ2Aの残電力量に基づく残り時間、及び、移動体2の状況情報を取得する。
【0055】
ステップS25において、CPU42は、状況情報に基づき、残り時間の補正を行う。補正は、様々な方法が考えられる。CPU42は、例えば天候や気温に基づいて、バッテリ2Aの放電等の現象を考慮し、残り時間を補正する。
【0056】
ステップS26においてCPU42は、データベース140から、S25で得られた残り時間よりも少ない所要時間Zを全て選定し、この所要時間Zを含む組合せデータとともに抽出する。次にCPU42は、抽出された組合せデータの中から、ステップS23で選定されたS点に関連付けられたG点を抽出する処理を行う。この処理は、条件に当てはまるG点を全て取得するまで継続される(S27:NO)。
【0057】
このようにして、残り時間よりも少ない所要時間Zと、ステップS23で選定されたS点との両方に関連付けられたG点が取得される。
【0058】
ステップS26、S27で取得されたG点は、移動体2が残り時間内に到達可能な範囲内にある。そのためCPU42は、これらのG点を位置座標COとするグリッドGRを、到達可能グリッドGR1とする(S28)。一方、それ以外のグリッドGRを、CPU42は、到達不能グリッドGR2とする(S28)。
【0059】
<変形例>
上記各実施形態のほか、到達距離アプリケーションAPを起動するCPU42は、目的地に相当するG点を最初に選定する処理を行うことも可能である。この場合、到達距離アプリケーションAPは、データベース140を参照し、このG点を含む組み合わせデータから、このG点に関連付けられた所要時間ZまたはS点を取得する処理を実行できる。
【0060】
すなわち、S点、G点、及び所要時間Zのうち、少なくとも1つの項目のデータ値がまず選定されれば、到達距離アプリケーションAPは、データベース140を参照して、選定されたデータ値を含む組合せデータを抽出し、抽出した組合せデータの中から、選定されたデータ値に関連付けられたデータ値を取得することが可能である。
【0061】
到達距離アプリケーションAPは、このような処理を実行することで、例えば目的地から遡って好適な充電施設を探す場合など、搭乗者の多様な要求に柔軟に対応できる。
【0062】
上記の各到達可能範囲表示処理において、S点は移動体2の現在位置に基づいて設定された。しかし、本発明はそのような態様に限定されない。例えば、搭乗者が設定した任意の地点を出発地とし、これに基づいてS点を設定する態様とすることも可能である。
【0063】
到達範囲アプリケーションAPの構成は、上記に限定されず、経路案内装置1内部の各構成の制御を行うことができる構成としても良い。例えば、到達範囲アプリケーションAPが、OSを用いて表示部20に所定の画面を表示させる指示を送信したり、通信部10や操作部30からデータを取得したりする等の処理を実行可能としても良い。
【0064】
所用時間Zは、移動体の移動に伴って消費されるコストの一例である。コストは、エネルギ量、体力、料金、時間、歩行距離、乗り換え回数、歩数など様々な概念又は形態を包含する。本発明の一例として、所用時間Zの代わりに支払額をS点およびG点と関連付けてデータベース140に保存することが考えられる。残り時間の代わりに許容金額を取得し、支払額と比較することによって、到達可能範囲の計算が可能である。このように、移動に必要なコスト消費量を、許容できるコストと比較することにより、到達可能範囲を計算することが可能となる。また、所要時間Zの代わりに時刻をS点およびG点と関連付けて保存することが考えられる。ユーザが任意に設定した出発時刻およびG点への到着時刻を条件として設定することで、条件を満たすS点を表示することができる。
【0065】
また、経路案内装置1を移動体2とは異なる車種の電気自動車に搭載した場合であっても、ステップS7のように、車種および車のカタログ電費、実走行速度などの状況情報に基づいて取得データの補正を行うことにより、所用時間Z、残り時間、到達可能範囲、到達可能地点または到達可能グリッドGR1の計算を正確に行うことができる。
【0066】
上記各実施形態において、到達距離アプリケーションAP及びデータベース140は、経路案内装置1及び移動体2に搭載されていたが、本発明の範囲はこの形態に限定されない。例えば、到達距離アプリケーションAP及びデータベース140を移動体2及び経路案内装置1の外部に設ける構成とすることも可能である。この場合、到達距離アプリケーションAP及びデータベース140を、電波またはインターネットを介して移動体2または経路案内装置1と通信させることにより、到達距離アプリケーションAP及びデータベース140の各機能を用いることができる。
【0067】
また、上記各実施形態において、移動体2の通信部2Cを介して、移動体2の残り時間や状況情報などの各種情報を受信する構成としていたが、ユーザがこれらの情報を、操作部30などを介して直接入力する構成としてもよい。例えば、ユーザが任意の時間を設定し、設定した時間内に到達可能な範囲を表示してもよい。また、予め登録された店舗情報や医療機関情報等の状況情報を利用し、ユーザが設定した任意の時間内に到達可能な営業中の店舗や受付時間中の医療機関を表示してもよい。
【0068】
<効果>
上記構成では、データベース140は、移動体2の移動領域におけるS点とG点、及び、S点からG点に移動するために移動体2が消費するエネルギ量に相当する所用時間Zを、相互に関連付けして記憶している。到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42は、データベース140から、S点を選定する処理(S3、S13)を実行する。さらに、到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42は、データベース140から、選定されたS点に関連付けられたG点及び所用時間Zを取得する処理(S4、S13、S4、S14)を実行する。
【0069】
上記構成では、出発地及び目的地間における所用時間Zがあらかじめ計算され、記憶されている。そのため、記憶されたデータの読み出しだけで所用時間Zを取得することが可能となる。移動体2等の状況に合わせて所用時間Zを逐次計算する方法と比較し、所用時間Zを素早く取得することが可能となる。また、CPU42にかかる計算負荷を低減することができる。このため、特に到達可能範囲を提示する場合など、広範な範囲に対して目的地を多数設定する必要のあるときにおいても、迅速な処理が可能となる。したがって、計算時間の遅れ、または不正確な結果の表示などの不具合が発生する虞が低減される。
【0070】
また、上記の各実施形態及び変形例に記載したように、到達範囲アプリケーションAPを実行するCPU42は、データベース140の中から、S点、G点、及び所用時間Zのいずれか1つの値を選定する処理を実行することができる。到達範囲アプリケーションAPは、データベース140を参照し、この値を含む組み合わせデータを抽出し、抽出された組み合わせデータの中から、この値に関連付けられた値を取得する(S4、S13、S4、S14、S26)。
【0071】
上記処理を行うことにより、到達範囲アプリケーションAPの機能は、所用時間Zの計算や到達可能距離の計算にとどまらない。例えば、目的地から逆算して好適な充電設備を探したり、残り時間から到達可能地点を探したりするなど、特殊な用途や様々な需要に対し、迅速かつ正確に、対応することができる。
【0072】
到達範囲アプリケーションAPは、所用時間Zと、残り時間(許容できるコスト量に相当する)とに基づいて、移動体2がG点に到達可能か判断する処理(S8、S17)を実行可能である。
【0073】
上記構成では、許容できるコスト量と移動体2が消費するコスト量との比較によって、移動体2の到達可能範囲を迅速に計算することが可能である。
【0074】
到達範囲アプリケーションAPは、移動体2の電費(内燃機関車では燃費であり、本発明における移動体の「性能」に相当する)、もしくは状況情報に基づいて、取得された所用時間を補正する処理(S7、S16)を実行可能である。
【0075】
補正を行うことで、移動体2の電費、天候、または運転の特徴などに基づいた正確な所用時間が得られる。また、移動体2以外の自動車に搭載しても正確な所用時間が得られるため、到達範囲アプリケーションAPを汎用的に用いることが可能となる。
【0076】
データベース140は、仮想空間Vにおいて、移動体2が走行する範囲に相当する領域Fを用意し、この領域FでのS点及びG点を選定し、これらS点からG点まで仮想移動体2Vを走行させ、このときの所用時間Zを取得することによって作成されている。このような方法を用いることで、データベースの迅速な作成が可能である。また、大量のデータを短時間で作成、取得することが可能である。このため、自動車の車種変更や、モデルチェンジなどにも迅速に対応してデータベースを作成することが可能である。
【0077】
また、経路案内装置1は、表示部20を備え、移動体2が目的地に到達可能かの判断結果や、移動体2の到達可能な領域を表示することができる。搭乗者は、表示部20を見ることによって、所望の情報を、容易かつ即時に把握することが可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 経路案内装置
2 移動体
10 受信部
20 表示部
140 データベース
150 データベース
V 仮想空間
2V 仮想移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7