(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111514
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】センサ、およびセンサノード
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220725BHJP
G01H 11/08 20060101ALI20220725BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220725BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G01H11/08 Z
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021006975
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593093858
【氏名又は名称】西日本高速道路エンジニアリング関西株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋上 智彦
(72)【発明者】
【氏名】黒田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀志
(72)【発明者】
【氏名】河田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】須山 夏樹
【テーマコード(参考)】
2D059
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2D059GG39
2G024AD34
2G024BA12
2G024BA22
2G024BA27
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA05
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】橋梁モニタリングに用いるセンサの個数を抑えることができる技術を提供することにある。
【解決手段】増幅部は、移動体が通行する橋梁の橋桁に取り付けられ、橋梁の振動にかかる物理量を計測するセンサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を増幅する第1増幅機能と、前記センサ素子の出力における第1の周波数帯域と重なっていない、第2の周波数帯域の成分を増幅する第2増幅機能と、を有する。切替部は、外部機器から入力された切替信号に応じて、増幅部の第1増幅機能、または第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が通行する橋梁の橋桁に取り付けられ、前記橋梁の振動にかかる物理量を計測するセンサ素子と、
前記センサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を増幅する第1増幅機能と、前記センサ素子の出力における前記第1の周波数帯域と重なっていない、第2の周波数帯域の成分を増幅する第2増幅機能と、を有する増幅部と、
外部機器から入力された切替信号に応じて、前記増幅部の前記第1増幅機能、または前記第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行う切替部と、を備えたセンサ。
【請求項2】
前記第1増幅機能は、前記センサ素子の出力における前記第1の周波数帯域の成分を増幅する第1増幅回路であり、
前記第2増幅機能は、前記センサ素子の出力における前記第2の周波数帯域の成分を増幅する第2増幅回路であり、
前記切替部は、外部機器から入力された前記切替信号に応じて、前記センサ素子を前記第1増幅回路に接続し、前記第2増幅回路に接続していない第1状態と、前記センサ素子を前記第2増幅回路に接続し、前記第1増幅回路に接続していない第2状態との間で切り替える、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記センサ素子は、前記橋梁の振動にかかる物理量として、前記橋桁のひずみを計測する、請求項1、または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記橋桁は、緊張材が埋設されたプレストレストコンクリート構造物であり、
前記第1増幅機能は、前記移動体の通行にともなう前記橋梁の振動にかかる成分を増幅し、
前記第2増幅機能は、前記緊張材の破断にともなう前記橋梁の振動にかかる成分を増幅する、請求項1~3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のセンサに対して、前記増幅部の前記第1増幅機能、または前記第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行わせる信号を出力する切替信号出力部を備えた、センサノード。
【請求項6】
請求項4に記載のセンサに対して、前記増幅部の前記第1増幅機能、または前記第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行わせる信号を出力する切替信号出力部と、
前記移動体の通行にともなう前記橋梁の振動を計測する計測時間帯を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶している前記移動体の通行にともなう前記橋梁の振動を計測する計測時間帯であるとき、前記切替信号出力部から出力される前記切替信号を、前記増幅部の前記第1増幅機能を有効にし、前記第2増幅機能を無効にする信号に制御し、前記記憶部に記憶している前記移動体の通行にともなう前記橋梁の振動を計測する計測時間帯でないとき、前記切替信号出力部から出力される前記切替信号を、前記増幅部の前記第1増幅機能を無効にし、前記第2増幅機能を有効にする信号に制御する制御部と、を備えたセンサノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両等の移動体が通行する橋梁の振動にかかる物理量を、この橋梁に取り付けたセンサで計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行する橋梁にセンサを取り付け、この橋梁の振動にかかる物理量を計測することによって、橋梁の状態を診断し、管理することが行われている。ここでは、橋梁の状態を診断し、管理することを、橋梁モニタリングと言う。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の走行による活荷重によって生じた橋梁の振動にかかる物理量をひずみセンサで計測する構成が記載されている。また、特許文献2には、プレストレストコンクリート構造物(橋桁等)に埋設されている緊張材の破断にともなう振動をAE(Acoustic Emission)センサで検出する(緊張材の破断を検出する)構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3896465号公報
【特許文献2】特許第4227353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、橋梁モニタリングにおいては、例えば、特許文献1に記載された橋梁の振動の計測、およびプレストレストコンクリート構造物に埋設されている緊張材の破断の検出を行うには、ひずみセンサ、およびAEセンサの2種類のセンサを用いなければならなかった。その結果、橋梁に取り付けるセンサの総数が増加し、センサの保守管理にかかる人手、およびコストが嵩むという問題があった。特に、橋桁に取り付けられたセンサの交換作業は高所作業になる。このことから、橋梁モニタリングに用いるセンサの総数を抑え、センサの破損による交換作業の頻度を抑えたいという要望がある。
【0006】
この発明の目的は、橋梁モニタリングに用いるセンサの総数を抑えることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のセンサは、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0008】
増幅部は、移動体が通行する橋梁の橋桁に取り付けられ、橋梁の振動にかかる物理量を計測するセンサ素子の出力を増幅する第1増幅機能、および第2増幅機能を有している。第1増幅機能は、センサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を増幅する。また、第2増幅機能は、センサ素子の出力における第2の周波数帯域の成分を増幅する。第1の周波数帯域と、第2の周波数帯域とは重なっていない。例えば、第1の周波数帯域は、数Hz~数十Hzの間に設定された周波数帯域であり、橋梁の低周波振動にかかる周波数帯域である。橋梁の低周波振動は、例えば、橋桁を通行する移動体によって加えられた活荷重による橋梁の振動である。第2の周波数帯域は、数百Hz~数kHzの間に設定された周波数帯域であり、橋梁の高周波振動にかかる周波数帯域である。橋梁の高周波振動は、例えば、プレストレストコンクリート構造物に埋設されている緊張材の破断にともなう橋梁の振動である。
【0009】
切替部は、外部機器から入力された切替信号に応じて、増幅部の第1増幅機能、または第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行う。
【0010】
このため、第1増幅機能は、センサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を、第2増幅機能の影響を受けることなく増幅できる。また、第2増幅機能は、センサ素子の出力における第2の周波数帯域の成分を、第1増幅機能の影響を受けることなく増幅できる。したがって、この構成によれば、橋梁の低周波振動にかかる物理量の計測、および橋梁の高周波振動にかかる物理量の計測が適正に行える。
【0011】
また、例えば、第1増幅機能を、センサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を増幅する第1増幅回路とし、第2増幅機能を、センサ素子の出力における第2の周波数帯域の成分を増幅する第2増幅回路とする。そして、切替部を、外部機器から入力された切替信号に応じて、センサ素子を第1増幅回路に接続し、第2増幅回路に接続していない第1状態と、センサ素子を第2増幅回路に接続し、第1増幅回路に接続していない第2状態との間で切り替える構成にする。このように構成すれば、確実に第1増幅機能は、センサ素子の出力における第1の周波数帯域の成分を、第2増幅機能の影響を受けることなく増幅できる。また、第2増幅機能は、センサ素子の出力における第2の周波数帯域の成分を、第1増幅機能の影響を受けることなく増幅できる。
【0012】
センサ素子は、橋梁の振動にかかる物理量として、橋桁のひずみを計測するひずみセンサ(例えば、ピエゾ素子を用いたひずみセンサ)であってもよいし、橋桁の振動の加速度を計測する加速度センサ(例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)型加速度センサ)であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、橋梁モニタリングに用いるセンサの総数を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この例にかかる橋梁モニタリングシステムの構成を示す概略図である。
【
図2】この例にかかる橋梁モニタリングシステムを適用した橋梁を示す概略図である。
【
図3】プレストレストコンクリート構造物である橋桁を説明する図である。
【
図5】センサノードの主要部の構成を示すブロック図である。
【
図6】センサノードの動作を示すフローチャートである。
【
図7】変形例のひずみセンサの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0016】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる橋梁モニタリングシステムの構成を示す概略図である。
図2は、この例にかかる橋梁モニタリングシステムを適用した橋梁を示す概略図である。
図3は、プレストレストコンクリート構造物である橋桁を説明する図である。
【0017】
この例にかかる橋梁モニタリングシステム1は、ピエゾ式ひずみセンサ2と、センサノード3と、シンクノード4と、センタ5とを備えている。この例では、ピエゾ式ひずみセンサ2と、センサノード3とを1対1で対応づけている。また、この例にかかる橋梁モニタリングシステム1では、複数のセンサノード3をシンクノード4に対応付けている。シンクノード4は、通信距離が数十mである近距離無線通信(例えば、ブルートゥース(登録商標))により、対応づけられているセンサノード3と無線で通信する。センタ5は、ネットワーク10を介してシンクノード4と接続される。
【0018】
この橋梁モニタリングシステム1では、車両100の走行による活荷重によって生じた橋梁の橋桁6の振動の計測、およびプレストレストコンクリート構造物である橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出を行い、その結果に基づいて、橋梁の状態を診断し、管理する。橋梁は、橋桁6を橋脚7の上に載置した公知の構成である。橋桁6と、橋脚7との間には、支承を配置している。橋桁6には、車両100が走行する路面が形成されている。橋桁6は、緊張材8を埋設した、プレストレストコンクリート構造物である。緊張材8の長さ方向は、橋軸方向(橋梁における車両100の走行方向)である。
【0019】
橋桁6には、複数のピエゾ式ひずみセンサ2(以下、単にひずみセンサ2と言う。)が橋軸方向に並べて取り付けられている。ひずみセンサ2は、フィルム状に形成した圧電フィルム(ピエゾフィルム)の両面に電極を形成したセンサ素子を用いた構成である。ひずみセンサ2は、取付位置における橋桁6のひずみに応じて、圧電フィルムがひずみ、この圧電フィルムのひずみの大きさに応じた電荷を発生する。ひずみセンサ2は、圧電フィルムの両面に形成した電極間に生じた電圧(圧電フィルムにおいて発生した電荷に応じた電圧)を増幅回路で増幅して出力する。
【0020】
この例では、ひずみセンサ2は、略一定間隔で橋軸方向に並べて取り付けられている。隣接するひずみセンサ2間の距離は、数m~十数mである。ひずみセンサ2は、車両100の走行による活荷重によって生じた橋梁の橋桁6の振動の計測、およびプレストレストコンクリート構造物である橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出に用いられる。すなわち、ひずみセンサ2は、2つの事象の観測に用いられるセンサである。
【0021】
センサノード3は、接続されているひずみセンサ2の状態を、このひずみセンサ2で観測する事象に応じて切り替える。センサノード3は、ひずみセンサ2の計測出力を処理し、その処理結果を対応付けられているシンクノード4に送信する。
【0022】
シンクノード4は、センサノード3から受信した処理結果をネットワーク10介してセンタ5に送信する。センタ5は、シンクノード4から受信した処理結果を用いて、橋梁の状態を総合的に診断し、管理する。
【0023】
このように、この例では、ひずみセンサ2を、車両100の走行による活荷重によって生じた橋梁の橋桁6の振動の計測、およびプレストレストコンクリート構造物である橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出に用いる構成にしたので、橋梁モニタリングに用いるセンサの総数を抑えることができる。
【0024】
<2.構成例>
図4は、ひずみセンサの構成を示す概略図である。ひずみセンサ2は、センサ素子21と、第1増幅回路22と、第2増幅回路23と、切替回路24とを有している。
【0025】
センサ素子21は、フィルム状に形成した圧電フィルム(ピエゾフィルム)の両面に電極を形成したものである。
【0026】
第1増幅回路22、および第2増幅回路23は、センサ素子21で発生した電圧(センサ素子21の圧電フィルムで発生した電荷に応じた電圧)を増幅する増幅回路である。第1増幅回路22は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動周波数(数Hz~数十Hz)に応じた帯域の成分を増幅するための増幅回路(低周波数帯域の増幅回路)である。第2増幅回路23は、橋桁6の埋設されている緊張材8の破断にともなう衝撃波による橋桁6の振動周波数(数百Hz~数kHz)に応じた帯域の成分を増幅する増幅回路(高周波数帯域の増幅回路)である。
【0027】
第1増幅回路22、および第2増幅回路23は、
図4に示すように、同様の回路であるが、回路定数が異なっている。具体的には、第1増幅回路22は、抵抗R1が200MΩ、コンデンサC1が0.094μFであり、第2増幅回路23は、抵抗R2が1MΩ、コンデンサC2が3.7nFである。第1増幅回路22は、コンデンサC1の容量を大きくした電荷増幅器であり、これに対して、第2増幅回路23は、コンデンサC2の容量を小さくした電圧増幅器である。また、第1増幅回路22の時定数は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動周波数に応じて定めている。第2増幅回路23の時定数は、橋桁6の埋設されている緊張材8の破断にともなう衝撃波による橋桁6の振動周波数に応じて定めている。
【0028】
なお、図中に示すAmp1、Amp2は、オペアンプである。
【0029】
切替回路24は、センサ素子21を第1増幅回路22に接続し、センサ素子21を第2増幅回路23から切断した第1状態(
図4において実線で示す状態)と、センサ素子21を第1増幅回路22から切断し、センサ素子21を第2増幅回路23に接続した第2状態(
図4において破線で示す状態)と、の切り替えを行う。切替回路24は、第1状態、または第2状態の切り替えを、センサノード3から入力されている切替信号に応じて行う。第1状態は、第1増幅回路22を有効にし、第2増幅回路23を無効にした状態である。また、第2状態は、第1増幅回路22を無効にし、第2増幅回路23を有効にした状態である。
【0030】
また、
図4に示す、out1、out2、in、GNDは、センサノード3と接続される入出力端子である。out1は、第1増幅回路22の出力端子である。out2は、第2増幅回路23の出力端子である。inは、切替信号の入力端子である。GNDは、アース端子である。
【0031】
上記したように、この例のひずみセンサ2は、第1状態であるとき、センサ素子21を第2増幅回路23から切断しているので、第1増幅回路22の出力に対して、第2増幅回路23を構成する回路素子が影響を与えることはない。同様に、ひずみセンサ2は、第2状態であるとき、センサ素子21を第1増幅回路22から切断しているので、第2増幅回路23の出力に対して、第1増幅回路22を構成する回路素子が影響を与えることはない。
【0032】
図5は、センサノードの主要部の構成を示すブロック図である。センサノード3は、制御ユニット31と、切替信号出力部32と、ひずみ信号入力部33と、破断検出信号入力部34と、比較部35と、ピーク検出部36と、無線通信部37と、を備えている。センサノード3は、ひずみセンサ2と有線で接続されている。ここでは、接続されるひずみセンサ2が1つであるセンサノード3を例にして説明するが、センサノード3は、複数のひずみセンサ2が接続される構成であってもよい。
【0033】
制御ユニット31は、センサノード3本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット31は、計測データ生成部31a、閾値設定部31b、タイマ31c、および記憶部31dを有している。計測データ生成部31a、閾値設定部31b、タイマ31c、および記憶部31dについては、後述する。
【0034】
切替信号出力部32は、接続されているひずみセンサ2に対して切替信号を出力する。この例では、切替信号は、ハイレベル、またはローレベルによる2値の信号である。この例では、ひずみセンサ2は、入力されている切替信号がハイレベルであるとき、切替回路24によって第1状態に切り替えられる。また、ひずみセンサ2は、入力されている切替信号がローレベルであるとき、切替回路24によって第2状態に切り替えられる。
【0035】
ひずみ信号入力部33は、ひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力(out1)に接続される。ひずみ信号入力部33には、ひずみセンサ2が第1状態であるとき、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測した物理量の計測信号が入力される。
【0036】
破断検出信号入力部34は、ひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力(out2)に接続される。破断検出信号入力部34には、ひずみセンサ2が第2状態であるとき、橋桁6に埋設されている緊張材8が破断すると、この破断にともなう衝撃波による橋桁6の振動を計測した物理量の計測信号が入力される。
【0037】
比較部35は、公知の比較回路(コンパレータ)である。比較部35は、破断検出信号入力部34に入力された第2増幅回路23の出力電圧と、設定されている閾値電圧とを比較した比較結果を制御ユニット31に出力する。この閾値電圧は、橋桁6に埋設されている緊張材8が破断したかどうかの判定に用いる値である。具体的には、比較部35は、破断検出信号入力部34に入力された第2増幅回路23の出力電圧が、設定されている閾値電圧よりも大きければ、比較結果として、橋桁6に埋設されている緊張材8の破断検出を制御ユニット31に出力する。
【0038】
ピーク検出部36は、公知のピークホールド回路である。ピーク検出部36は、破断検出信号入力部34に入力された第2増幅回路23の出力電圧のピークを検出し、出力する。ピーク検出部36は、検出した第2増幅回路23の出力電圧のピークを制御ユニット31に出力する。
【0039】
なお、検出された第2増幅回路23の出力電圧のピークをA/D変換するA/D変換部は、ピーク検出部36に設けてもよいし、制御ユニット31に設けてもよい。
【0040】
無線通信部37は、対応付けられているシンクノード4との間における近距離無線通信を実行する。
【0041】
次に、制御ユニット31が有する計測データ生成部31a、閾値設定部31b、タイマ31c、および記憶部31dについて説明する。
【0042】
この例のセンサノード3は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯(計測開始時刻と、計測終了時刻)が予め設定されている。この例では、車両100の通行量が比較的多い、午前9:00~午前9:05までの5分間と、トレーラ、高速バス等の大型車両の通行量が比較的多い午前0:00~午前0:05までの5分間の2つの計測時間帯をセンサノード3に設定している。記憶部31dが、この計測時間帯を記憶している。また、この例のセンサノード3は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯でないとき、橋桁6に埋設されている緊張材8の破断を検出する処理を行う。
【0043】
制御ユニット31は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯であるとき、切替信号出力部32において、ひずみセンサ2に対して第1の状態を指示する切替信号を出力する。また、制御ユニット31は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯でないとき、切替信号出力部32において、ひずみセンサ2に対して第2の状態を指示する切替信号を出力する。
【0044】
なお、ここで示した計測時間帯は、あくまでも例であり、これに限られるものではない。また、センサノード3に設定される計測時間帯は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0045】
計測データ生成部31aは、設定されている計測時間帯であるときに、予め定めたサンプリング周波数(数百Hz程度)で、ひずみ信号入力部33に入力されている、ひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力を繰り返しサンプリングし、第1増幅回路22の出力を計測時間帯にわたって取得する。
【0046】
計測データ生成部31aは、計測時間帯毎に、計測時間帯にわたって取得した、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動にかかる計測データを記憶部31dに記憶させる。
【0047】
閾値設定部31bは、比較部35に対して、破断検出信号入力部34に入力されている、ひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧と比較する閾値電圧を設定する。
【0048】
タイマ31cは、現在の日時を計時する。
【0049】
記憶部31dは、センサノード3の動作時に用いる設定データ、および動作時に得られた検出データ(例えば、上記の閾値電圧、接続されているひずみセンサ2の識別コード、橋桁6における取付位置、橋桁6の振動にかかる計測データ、緊張材8の破断検出時のピーク等)を記憶するメモリである。
【0050】
センサノード3の制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、インストールされているプログラムを実行したときに、計測データ生成部31a、閾値設定部31b、タイマ31c、および記憶部31dとして動作する。また、メモリ(記憶部31d)は、このプログラムを展開する領域や、このプログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット31は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。
【0051】
センサノード3は、複数のひずみセンサ2を接続できる構成にしてもよい。また、上記したように、この例では、ひずみセンサ2に対して第1状態を指示する切替信号がハイレベルであり、第2状態を指示する切替信号がローレベルである。また、橋梁モニタリングシステム1は、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯は、この例では、1日あたり10分であり、そのほとんどが、橋桁6に埋設されている緊張材8の破断を監視する。したがって、切替信号出力部32において出力される切替信号は、一時的(計測時間帯)にハイレベルになる。すなわち、センサノード3は、ハイレベルの切替信号を出力する時間が短時間であるので、消費電力を低減することができる。
【0052】
シンクノード4は、センサノード3から近距離無線通信で送信されてきた橋桁6の振動にかかる計測データ、緊張材8の破断検出時のピーク等の処理結果を受信すると、これをネットワーク10を介してセンタ5に転送する。すなわち、この例では、シンクノード4は、センサノード3の処理結果をセンタ5に転送する中継器として動作する。また、センタ5は、シンクノード4から受信した処理結果を用いて、橋梁の状態を総合的に診断し、管理する。
【0053】
ここでは、シンクノード4、およびセンタ5については、詳細な説明を省略する。
【0054】
<3.動作例>
次に、この例の橋梁モニタリングシステム1のセンサノード3の動作について説明する。
図6は、センサノードの動作を示すフローチャートである。
【0055】
センサノード3は、切替信号出力部32において、ひずみセンサ2に第2状態を指示する切替信号を出力している状態を初期状態として説明する。すなわち、センサノード3が初期状態であるとき、ひずみセンサ2は、センサ素子21を第1増幅回路22から切断し、センサ素子21を第2増幅回路23に接続した第2状態である。
【0056】
センサノード3は、現在時刻が橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する計測時間帯であるかどうかを判定する(s1)。センサノード3は、計測時間帯でなければ、破断検出信号入力部34に入力されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧が設定されている閾値電圧を超えているかどうかを判定する(s2)。
【0057】
計測時間帯は、記憶部31dに記憶されている。s1では、センサノード3は、タイマ31cにおいて計時されている時刻が、記憶部31dに記憶されている計測時間帯であるかどうかを判定している。また、比較部35が、破断検出信号入力部34に接続されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧と、閾値電圧とを比較した比較結果(第2増幅回路23の出力電圧が閾値電圧を超えているかどうかを示す信号)を制御ユニット31に出力している。センサノード3は、制御ユニット31において、接続されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧が閾値電圧を超えているかどうかを、比較部35からの入力によって判定する。
【0058】
センサノード3は、s1、およびs2にかかる判定を繰り返し、s1で計測時間帯であると判定すると、切替信号出力部32において、ひずみセンサ2に第1状態を指示する切替信号を出力する(s3)。これにより、ひずみセンサ2は、センサ素子21を第1増幅回路22に接続し、センサ素子21を第2増幅回路23から切断した第1状態に変化する。
【0059】
センサノード3は、ひずみ信号入力部33に入力されているひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力を、予め定めたサンプリング周波数(数百Hz程度)でサンプリングし、得られたひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力値(ディジタル値)を記憶部31dに蓄積的に記憶する処理を開始する(s4)。そして、センサノード3は、計測終了時刻(午前9:05、または午前0:05)になるのを待つ(s5)。
【0060】
センサノード3は、s4で開始したひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力値の記憶については、s5で計測終了時刻になったと判定するまで、サンプリング周波数に応じた周期で繰り返す。センサノード3は、s5で計測終了時刻になったと判定すると、s4で開始したひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力のサンプリングを終了する(s6)。
【0061】
また、センサノード3は、切替信号出力部32において、ひずみセンサ2に第2状態を指示する切替信号を出力する(s7)。これにより、ひずみセンサ2は、センサ素子21を第1増幅回路22から切断し、センサ素子21を第2増幅回路23に接続した第2状態に変化する。
【0062】
センサノード3は、今回の計測時間帯における計測データを生成する(s8)。s8で生成される計測データは、s4で開始し、s6で終了するまでの期間に、ひずみ信号入力部33に入力されたひずみセンサ2の第1増幅回路22の出力値を時系列に並べたデータである。また、この計測データには、ひずみセンサ2(または、センサノード3)の識別コード、および計測日時が対応づけられている。
【0063】
センサノード3は、無線通信部37を起動し(s9)、今回生成した計測データをシンクノード4に送信する(s10)。センサノード3は、計測データの送信が完了すると、無線通信部37を停止し(s11)、s1に戻る。シンクノード4への計測データの送信は、無線通信部37における近距離無線通信で行われる。
【0064】
このように、センサノード3は、予め設定されている計測時間帯に、ひずみセンサ2を用いて、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動の計測を行う。
【0065】
また、センサノード3は、s2で破断検出信号入力部34に入力されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧が設定されている閾値電圧を超えていると判定すると、ピーク検出部36において、破断検出信号入力部34に入力されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧のピークを検出する(s11)。ピーク検出部36が、破断検出信号入力部34に入力されているひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧のピークを検出し、制御ユニット31に出力している。
【0066】
制御ユニット31は、s11で検出したひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧のピークを記憶部31dに記憶する。言い換えれば、制御ユニット31は、ひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧が閾値電圧を超えていないとき出力電圧のピークを記憶部31dに記憶しない。
【0067】
センサノード3は、緊張材8の破断検出データを生成する(s12)。破断検出データは、ひずみセンサ2の識別コード、橋桁6における取付位置、今回検出したピーク、および検出日時を対応づけたデータである。センサノード3は、無線通信部37を起動し(s13)、今回生成した破断検出データをシンクノード4に送信する(s14)。センサノード3は、破断検出データの送信が完了すると、無線通信部37を停止し(s15)、s1に戻る。シンクノード4への破断検出データの送信は、無線通信部37における近距離無線通信で行われる。
【0068】
このように、センサノード3は、予め設定されている計測時間帯でないとき、ひずみセンサ2を用いて、橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出を行う。
【0069】
シンクノード4は、センサノード3から送信されてきた計測データ、および破断検出データを受信すると、これをセンタ5に転送する。センタ5は、複数のシンクノード4から送信されてきた計測データ、および破断検出データを基に、総合的に橋梁の状態を診断し、管理する。
【0070】
このように、この例の橋梁モニタリングシステム1では、ひずみセンサ2で、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動の計測、および橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出が行える。このため、橋桁6に取り付けるセンサの総数を抑えることができる。したがって、橋梁モニタリングシステム1における、センサの保守管理にかかる人手、およびコストが嵩むのを防止できる。
【0071】
なお、緊張材8が破断したとき、取付位置が破断位置に近いひずみセンサ2ほど、ピーク検出部36で検出されるひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧のピークが大きい。このことから、センタ5では、破断検出データに含まれている、ひずみセンサ2の第2増幅回路23の出力電圧のピークを比較することにより、緊張材8が破断位置を推定できる。
【0072】
<4.変形例>
上記の例では、ひずみセンサ2は、第1増幅回路22、および第2増幅回路23を有しているとしたが、例えば、
図7に示す構成してもよい。
【0073】
図7に示すひずみセンサ2Aは、センサ素子21と、共用増幅回路22Aと、切替回路24Aとを有している。
【0074】
センサ素子21Aは、上記の例と同様に、フィルム状に形成した圧電フィルム(ピエゾフィルム)の両面に電極を形成したものである。
【0075】
共用増幅回路22Aは、センサ素子21Aで発生した電圧を増幅する増幅回路である。共用増幅回路22Aは、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動周波数(数Hz~数十Hz)に応じた帯域の成分を増幅するだけでなく、橋桁6の埋設されている緊張材8の破断にともなう衝撃波による橋桁6の振動周波数(数百Hz~数kHz)に応じた帯域の成分を増幅する。具体的には、切替回路24Aが、共用増幅回路22Aの負帰還容量であるコンデンサCf3、Cf4を選択的に切り替える。より具体的には、ひずみセンサ2Aは、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動を計測する第1状態であるとき、共用増幅回路22Aの負帰還容量としてコンデンサCf3を抵抗R3と並列に接続する。このとき、コンデンサCf4は、共用増幅回路22Aから切断されている。また、ひずみセンサ2Aは、橋桁6に埋設されている緊張材8の破断を検出する第2状態であるとき、共用増幅回路22Aの負帰還容量としてコンデンサCf4を抵抗R3と並列に接続する。このとき、コンデンサCf3は、共用増幅回路22Aから切断されている。
【0076】
この場合、ひずみセンサ2Aのout3端子は、ひずみ信号入力部33、および破断検出信号入力部34に接続される。
【0077】
なお、図中に示すAmp3は、オペアンプである。
【0078】
この
図7に示すひずみセンサ2であっても、橋桁6を走行した車両100によって加えられた活荷重による橋桁6の振動の計測、および橋桁6に埋設されている緊張材8の破断の検出が行える。
【0079】
なお、本願発明は、上記した、ひずみセンサ2に限らず、加速度センサ等の他の種類のセンサにも適用できる。
【0080】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、
図6に示したフローチャートにおける各処理の順番等についても、そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で入れ換えてもよい。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0081】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
移動体(100)が通行する橋梁の橋桁(6)に取り付けられ、前記橋梁の振動にかかる物理量を計測するセンサ素子(21)と、
前記センサ素子(21)の出力における第1の周波数帯域の成分を増幅する第1増幅機能と、前記センサ素子の出力における前記第1の周波数帯域と重なっていない、第2の周波数帯域の成分を増幅する第2増幅機能と、を有する増幅部(22、23)と、
外部機器(3)から入力された切替信号に応じて、前記増幅部(22、23)の前記第1増幅機能、または前記第2増幅機能の一方を有効にし、他方を無効にする切替を行う切替部(24)と、を備えたセンサ(2)。
【符号の説明】
【0082】
1…橋梁モニタリングシステム
2、2A…ピエゾ式ひずみセンサ(ひずみセンサ)
3…センサノード
6…橋桁
7…橋脚
8…緊張材
21、21A…センサ素子
22…第1増幅回路
22A…共用増幅回路
23…第2増幅回路
24、24A…切替回路
31…制御ユニット
31a…計測データ生成部
31b…閾値設定部
31c…タイマ
31d…記憶部
32…切替信号出力部
33…ひずみ信号入力部
34…破断検出信号入力部
35…比較部
36…ピーク検出部
37…無線通信部
100…車両