(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111551
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】コンクリート床版の撤去方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20220725BHJP
E01D 24/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D24/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007050
(22)【出願日】2021-01-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】391010183
【氏名又は名称】極東興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】下野 聖也
(72)【発明者】
【氏名】中野 博文
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059AA14
2D059AA17
2D059GG39
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主桁と床版との縁切り作業をより効率的に実施することが可能な手段を提供する。
【解決手段】主桁Aの上方に設け、かつ床版Bの内部に埋設されている接合部材Cの平面視上の位置を、探査装置を用いて特定する工程と、位置を特定した接合部材Cの一部または全部を床版Bとの間で縁切りする工程と、縁切りした床版Bを解体および撤去する工程とを有する。縁切り作業は、コンクリートカッターなどの切断装置21の刃を床版Bの平面方向から床版Bの上方向に向かって所定角度を有するように差し込むことで、接合部材Cを上下方向に分離する方法などがある。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床版の撤去方法であって、
(A)主桁の上方に設け、かつ前記コンクリート床版の内部に埋設されている接合部材の平面視上の位置を、探査装置を用いて特定する工程と、
(B)位置を特定した前記接合部材の一部または全部を、前記コンクリート床版との間で縁切りする工程と、
(C)前記縁切りしたコンクリート床版を解体および撤去する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、
コンクリート床版の撤去方法。
【請求項2】
前記(B)が、
(B1)平面視上の位置を特定した前記接合部材に対し、前記コンクリート床版上から切断装置の刃を、床版の平面方向から床版の上方向に向かって所定角度を有するように差し込んで、当該接合部材を上下方向に分離するように切断して、前記切断した接合部材の頭部と、前記主桁との間を縁切りする工程、であり、
前記(C)が、
(C1)前記切断した接合部材の根元部を前記主桁に残したまま、前記切断した接合部材の頭部を埋設したままの前記コンクリート床版を前記主桁から取り外す工程を含む、ことを特徴とする、
請求項1に記載のコンクリート床版の撤去方法。
【請求項3】
前記コンクリート床版上に、前記切断装置の移動を案内する案内機構を設けたことを特徴とする、
請求項2に記載のコンクリート床版の撤去方法。
【請求項4】
前記案内機構が、さらに前記切断装置の進入角の調整機構を有することを特徴とする、
請求項3に記載のコンクリート床版の撤去方法。
【請求項5】
前記切断装置が、ダイヤモンドディスクソー、またはコンクリートチェーンソーであることを特徴とする、
請求項2乃至4のうち何れか1項に記載のコンクリート床版の撤去方法。
【請求項6】
前記(B)が、
(B2)位置を特定した前記接合部の周囲を削孔装置によって削孔して、前記接合部材と、前記コンクリート床版とを縁切りする工程であり、
前記(C)が、
(C2)前記接合部材から縁切りした前記コンクリート床版を、主桁から取り外す工程を含む、ことを特徴とする、
請求項1に記載のコンクリート床版の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設のコンクリート床版(以下単に「床版」ともいう。)の撤去方法に関し、より詳細には、主桁とコンクリート床版とを事前に縁切りしてから、コンクリート床版を解体・撤去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床版の撤去方法には、種々の発明が提案されている。
例えば、以下の特許文献1は、主桁の上面に設けたジベルによって床版が結合された合成桁における床版の撤去方法が開示されている。
具体的には、床版の側部近傍を切断しこの切断面から側方へジベルの配設位置にコア抜き機などで穴を空ける方法(方法1)、または床版の上面から下方へジベルの配設位置にコア抜き機などで穴を空ける方法(方法2)によって、桁と床版との結合状態を解除することで、床版を主桁から取り外し可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の発明では、以下に記載する問題のうち少なくとも何れか1つの問題を有する。
(1)床版に埋設されているジベルの配設位置を正確に特定する具体的な方法について何ら教える記載がない。
(2)方法1の場合には、床版に対し、最大で穴の直径に相当する長さだけジベルを欠損させることになり、単に桁と床版の結合状態を解除(縁切り)するだけの作業であるにも関わらず、作業効率の改善に限界がある。
(3)方法1の場合、推測したジベルの位置と、現実のジベルの位置に誤差があることを想定して、予め穴の径を大きくしておくことで当該誤差を吸収できる場合があるものの、その分、コンクリートの削孔量の増大や、前記(2)で示したジベルの欠損量の増大に繋がり、作業効率が悪くなる。
(4)方法1の場合、鉄筋コンクリート製の床版では、床版内部の鉄筋を巻き込んで切削する可能性があり、作業効率が悪くなる。
(5)方法2の場合、現実のジベルの配設位置とコア抜きの位置がずれていると、コア抜き機の刃がジベルと干渉して作業効率の悪化に繋がる。
【0005】
よって、本発明は、主桁と床版との縁切り作業をより効率的に実施することが可能な手段の提供を目的の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、コンクリート床版の撤去方法であって、(A)主桁の上方に設け、かつ前記コンクリート床版の内部に埋設されている接合部材の平面視上の位置を、探査装置を用いて特定する工程と、(B)位置を特定した前記接合部材の一部または全部を、前記コンクリート床版との間で縁切りする工程と、(C)前記縁切りしたコンクリート床版を解体および撤去する工程と、を少なくとも有することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記(B)が、(B1)平面視上の位置を特定した前記接合部材に対し、前記コンクリート床版上から切断装置の刃を、床版の平面方向から床版の上方向に向かって所定角度を有するように差し込んで、当該接合部材を上下方向に分離するように切断して、前記切断した接合部材の頭部と、前記主桁との間を縁切りする工程、であり、前記(C)が、(C1)前記切断した接合部材の根元部を前記主桁に残したまま、前記切断した接合部材の頭部を埋設したままの前記コンクリート床版を前記主桁から取り外す工程を含む、ことを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第2発明において、前記コンクリート床版上に、前記切断装置の移動を案内する案内機構を設けたことを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第3発明において、前記案内機構が、さらに前記切断装置の進入角の調整機構を有することを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第2発明乃至第4発明のうち何れか1つの発明において、前記切断装置が、ダイヤモンドディスクソー、またはコンクリートチェーンソーであることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、前記第1発明において、前記(B)が、(B2)位置を特定した前記接合部の周囲を削孔装置によって削孔して、前記接合部材と、前記コンクリート床版とを縁切りする工程であり、前記(C)が、(C2)前記接合部材から縁切りした前記コンクリート床版を、主桁から取り外す工程を含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、以下に記載する効果のうち、少なくとも何れか1つの効果を奏する。
(1)予め接合部材の平面視上の位置を特定した上で作業を行うため、主桁と床版との縁切り作業を確実に行うことができる。
(2)切断装置の刃を斜めに差し込んで、接合部材を上下方向に分離するように切断するため、床版や接合部材の切断量が最低限で済む。
(3)切断装置の刃を斜めに差し込むため、接合部材の平面視上の位置に多少の誤差があっても、差し込む軌跡上に接合部材が位置しやすいため、より確実に接合部材を切断することができる。
(4)切断装置の刃を斜めに差し込む方向に制約が無いため、床版内部の配筋状態に応じて、適宜差し込む方向を変えるなどの柔軟な対応が可能となる。
(5)探査装置によって、接合部材の平面視上の位置だけでなく、床版内部の鉄筋の位置も特定することにより、当該鉄筋を避けながら接合部材のみを切断する作業の計画が立てやすい。
(6)特許文献1の方法1のように、床版の側面を確保する必要がなく、床版を必要以上に小分けにする必要がない。
(7)予め切断長さや削孔長を設定できるため、主桁の損傷を回避できる。
(8)縁切り作業前に、削り作業が行う必要がない。
(9)縁切り装置の数量を増やすことで、所望の進捗速度に対応できる。
(10)場所を変えて、縁切り作業と、解体・撤去作業とを同時並行で実施できるため、作業効率に優れる。
(11)床版の上面で全作業を実施できるため、作業の安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】実施例1に係る切断条件の検討モデル図(1)。
【
図4】実施例1に係る切断条件の検討モデル図(2)。
【
図6】実施例1に係る解体・撤去工程を示す概略図。
【
図7】実施例2に係る切断工程および解体・撤去工程を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず始めに、本発明に係る撤去方法で使用する各装置の詳細について説明する。
【0010】
<1>手順の概要(
図1)
本発明に係る、コンクリート製床版B(以下、単に「床版B」ともいう。)の撤去方法は、主に以下の工程からなる。
(S100)主桁Aの上方に設け、かつコンクリート床版Bの内部に埋設されている接合部材Cの平面視上の位置を、探査装置10を用いて特定する工程。
(S200)探査装置10によって位置を特定した接合部材Cの一部または全部を、コンクリート床版Bとの間で縁切りする工程。
(S300)縁切りしたコンクリート床版Bを解体および撤去する工程。
【0011】
これらの工程は、床版B全体に対して一括で実施してもよいし、床版Bを複数のスパンに分けてスパン毎に実施してもよい。特に、(S100)は、床版B全体に対して一括で実施しておき、(S200)と(S300)とを順次繰り返していくことで作業効率の向上が期待できる。
また本発明では、床版Bを複数のスパンに分けた際において、一方のスパンで(S300)の工程を実施している際に、他方のスパンで(S100)や(S200)の工程を並行実施してもよい。
【0012】
以下、各工程で使用する装置の詳細について説明する。
【0013】
<2>探査装置(
図2)
探査装置10は、少なくとも、床版Bの内部に埋設されている接合部材Cの平面視上の位置を特定するための装置である。
なお、この接合部材Cとは、主桁Aの上面に溶接されたジベルやスタッドジベルなどが含まれ、床版B内に埋設されることで、主桁Aと床版Bとを一体化するための部材である。
探査装置10は、電磁波レーダーを用いるもの、電磁誘導法を用いるもの、超音波レーダーを用いるもの、鉄筋探査機、金属探知機、X線探知機、その他、内部鉄筋の探査用途に利用可能な公知の装置の中から適宜選択して使用する。
探査装置10は床版Bの上面または下面から行うことができ、現場条件に応じて適宜好ましい態様で行うものとする。
【0014】
<3>縁切り装置(
図5,
図7(a))
縁切り装置20は、探査装置10によって位置を特定した接合部材Cの一部または全部を、コンクリート床版Bとの間で縁切りするための装置である。
縁切り装置20を用いた縁切り方法は、主に以下の二種の方法を想定する。
(方法1)切断装置21を用いて、接合部材Cそのものを物理的に切断することによって、床版B側に残存する接合部材Cの頭部側と主桁A側に残存する接合部材Cの根元部側とを縁切りする方法。
(方法2)削孔装置22を用いて、床版Bにおける接合部材Cの周囲領域とその他の領域とを縁切りする方法。
以下、切断装置21および削孔装置22の詳細について説明する。
【0015】
<3.1>切断装置(
図5)
切断装置21は、接合部材Cを切断するための装置である。
本発明では、切断装置21として、ウォールソーイング工法やカッター工法などに用いるダイヤモンドディスクソーまたはコンクリートチェーンソーなどを用いることができる。
この切断装置21の刃を床版Bの上方から斜めに差し込んで床版Bの切断を開始し、床版Bの内部に位置する接合部材Cの上下を分離するように切断することで、床版B側に残存する接合部材Cの頭部側と主桁A側に残存する接合部材Cの根元部側とを縁切りする。
前記した「斜め」とは、床版の平面方向から床版の上方向に向かって所定角度を有する状態であり、切断装置を差し込む方向は、平面視した際の主桁の長手方向および幅方向にのみに限定されない。
【0016】
<3.2>削孔装置(
図7(a))
削孔装置22は、接合部材Cの周囲領域と、その他の領域とを縁切りするための装置である。
本発明では、削孔装置22として、コアドリル、ハンマードリル、ドリルビットまたはウォータジェットなどを用いることができる。
この削孔装置22を用いて、床版Bの上方から接合部材Cの周囲をリング状に削孔することで接合部材Cの周辺領域を主桁A側に残存させるように、主桁Aと床版Bとを縁切りすることができる。
【0017】
<4>解体装置(
図6)
解体装置30は、前記した縁切り装置20で主桁Aから縁切りした床版Bを、後述する撤去装置で運搬するにあたって適当なサイズとなるように解体するための装置である。
本発明では、解体装置30として、床版剥離機、爪ジャッキ、フォークリフトなどを用いることができる。
【0018】
<5>撤去装置(図示せず)
撤去装置は、前記した解体装置30で解体した床版Bを運搬して撤去するための装置である。
本発明では、撤去装置として、クレーン、フォークリフト、電動チェーンブロックなどを用いることができる。
【0019】
<6>その他(縁切りの確認工程)
その他、本発明では、必要に応じて、前記縁切り装置20による縁切りが確実に行われていることを、縁切り作業中や、縁切り作業後かつ撤去作業前の期間に確認する工程を含めてもよい。
この工程には、例えば以下に示す方法および装置を用いることが考えられる。
【0020】
<6.1>切断長の管理とトルク監視の併用
[1]事前探査で確認した接合部材Cの位置に基づいて、接合部材Cの切断に必要な切断長を算出しておく。
[2]縁切り作業中の切断装置21の切断長をレーザー距離計などで計測し、予め算出しておいて必要な切断長に達した際の切断装置21のカッタートルク負荷の増減を監視して、接合部材Cの切断が行われたことを確認する。
【0021】
<6.2>通電感知とトルク監視の併用
[1]主桁Aと切断装置21との間に通電回路を形成し、切断装置21の刃先が接合部材Cに接触した際に発生する電流を感知する。
[2]接触感知後、切断装置21のカッタートルクの負荷増減を監視して、接合部材Cの切断が行われたことを確認する。
【0022】
<6.3>超音波探傷器による前後比較
[1]接合部材Cの切断作業の前に主桁Aのフランジ下面より超音波端子を当てて、切断前の接合部材Cの状態(接合部材Cの長さ)を把握しておく。
[2]接合部材Cの切断作業の後に、再度主桁Aのランジ下面より超音波端子を当てて、前記した切断前の状態からの変化(計測結果の変化や乱れ)を捉えて、切断が行われたことを確認する。
【0023】
<6.4>テスターによる値の計測
[1]事前探査で確認した接合部材Cの位置に基づいて、接合部材Cの切断に必要な切断長を算出しておく。
[2]切断装置21の切断長をレーザー距離計にて計測し、必要深さまで切断する。
[3]切断後にカッターを一時撤去し、切断溝にテスター端子を挿入して、アンカー切断部の上下にテスター端子を接触させ、抵抗値の大小からアンカー切断の有無を確認する。
【0024】
<6.5>小型カメラによる直接目視
[1]事前探査で確認した接合部材Cの位置に基づいて、接合部材Cの切断に必要な切断長を算出しておく。
[2]切断装置21の切断長をレーザー距離計にて計測し、必要深さまで切断する。
[3]切断後にカッターを一時撤去し、切断溝に小型のCCDカメラやファイバースコープなどを挿入して、アンカー切断の有無を目視確認する。
【0025】
以下、上記した各装置を用いた本発明に係る解体方法の実施例について説明する。
【実施例0026】
本実施例では、ウォールソーからなる切断装置21を用いた、コンクリート床版Bの撤去方法について説明する。
【0027】
<1>接合部材の探査(
図2)
始めに、接合部材Cの平面視上の位置と、床版B上面からの接合部材Cの深さを割り出す。
接合部材Cの平面視上の位置は、前記した探査装置10で特定する。
また、床版B上面からの接合部材Cの深さは、前記した探査装置10で特定してもよいし、設計図面等から簡易的に割り出してもよい。
これらの探査作業は、全ての接合部材Cに対して行っても良いし、一定間隔で接合部材Cが配置されていることを踏まえて、一部のスパンの接合部材Cに対して行い、当該探査結果から、その余の接合部材Cの平面視上の位置を模擬的に特定してもよい。
【0028】
<2>切断条件の設定(
図3、
図4)
探査工程で得られた結果から、切断装置21の切断開始位置、切断必要長、進入角などの切断条件を設定する。
この切断条件は、各接合部材Cに対して個別に設定してもよいし、全ての接合物材に対して一律に設定してもよく、接合部材Cの設置間隔や床版B内の鉄筋との干渉の恐れの有無などの現場条件によって適宜設定すればよい。
図に、切断条件の設定に関するイメージ図を示す。
【0029】
<2.1>切断必要長(
図3,4)
切断必要長L1は、最大値が切断装置21の性能に依存するため、その範囲で適宜設定することになる。
切断必要長L1を短くできれば、切断量の低減化および作業時間の短縮化に繋がるものの、切断開始位置X1に対する接合部材Cの現実の位置が、探査工程によって特定していた位置からも離れた場所にあった場合には、刃が接合部材Cに届かない場合も考えられるため、これらのバランスを検討しながら設定を行うことになる。
【0030】
<2.2>進入角(
図3)
進入角θは、床版Bの平面方向を0°、床版Bの上下方向を90°、とした場合に、0°<θ<90°の範囲で設定する。
進入角θが小さすぎると、切断開始位置X1から切断終了位置X3までの切断必要長L1が長くなるため好ましくない。
他方、進入角θが大きすぎると、接合部材Cの切断作業に支障がでることが予想されるため、これらのバランスを検討しながら設定を行うことになる。
【0031】
<2.3>切断開始位置(
図3)
切断開始位置X1は、前記した切断必要長L1、接合部材から切断開始位置までの平面距離L2、床版Bの上面から接合部材Cの頭部までの深さD1、接合部材Cの頭部から切断終了位置X3までの深さD2等を考慮して、例えば以下のモデル式に基づいて設定することになる。
[式1]
探査した接合部材Cの平面視上の位置から近い位置に、切断開始位置X1を設定すれば、短い切断長で接合部材Cに到達できるものの、進入角θが大きくなり、前記したとおり接合部材Cの切断に支障がでる場合も考えられるため、これらのバランスを検討しながら設定を行うことになる。
【0032】
<2.4>接合部材の探査誤差の吸収(
図4)
切断必要長L1は、切断装置21の最大切断長より低く設定しておくことが好ましい。
これは、
図4に示すように、探査装置10によって求めた想定上の接合部材C1の位置よりも現実の接合部材C2が離れた位置にある場合に、想定した必要切断長L1よりもより長く切断を行う場合が考えられるためである。
【0033】
<3>接合部材の切断作業(
図5)
前記した切断条件に基づいて、各接合部材Cを切断装置21で切断していく。
切断装置21を複数用意しておけば、同時並行で切断作業を行うことができるため、作業の進捗状況に応じて柔軟な調整が可能となる。
また、急遽作業を中断することになった場合にも、切断装置21を持ち帰ることができるため、切断装置21が床版B上で障害物となることもない。
【0034】
<4>床版の解体・撤去(
図6)
床版剥離機などの解体装置30を用いて、切断した接合部材Cの根元部C2を主桁Aに残したまま、切断した接合部材Cの頭部C1を埋設したままの床版Bを上方に引きあげて、主桁Aから床版Bを取り外す。
その後、図示しないクレーン、フォークリフト、電動チェーンブロックなどの撤去装置でもって床版Bを運搬して撤去する。