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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111592
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/01 20060101AFI20220725BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220725BHJP
   G05F 3/30 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01K7/01 C
H01L27/04 B
H01L27/04 V
G05F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007123
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 隆幸
【テーマコード(参考)】
2F056
5F038
5H420
【Fターム(参考)】
2F056JT01
2F056JT08
5F038AV17
5F038AV18
5F038AZ08
5F038BB02
5F038BB05
5F038BB08
5F038CD02
5F038DF03
5F038DF05
5F038EZ20
5H420NA12
5H420NA15
5H420NA24
5H420NB03
5H420NB16
5H420NB22
5H420NB25
5H420NB36
5H420NC02
5H420NC12
5H420NC23
5H420NC26
5H420NE23
5H420NE28
(57)【要約】
【課題】 幅広い動作温度範囲において、高精度の温度検出を可能にすると共にPSRRを向上させる。
【解決手段】 実施形態の半導体集積回路は、第1及び第2バンドギャップ素子及びカレントミラー回路を含み温度依存性を有する第1電圧及び温度に依存しない基準電圧を発生するバンドギャップリファレンス回路と、前記基準電圧を用いて前記第1電圧を出力コードに変換して温度情報として出力するアナログデジタル変換器と、前記温度情報に基づいて前記バンドギャップリファレンス回路の設定を変更する設定制御回路とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2バンドギャップ素子及びカレントミラー回路を含み温度依存性を有する第1電圧及び温度に依存しない基準電圧を発生するバンドギャップリファレンス回路と、
前記基準電圧を用いて前記第1電圧を出力コードに変換して温度情報として出力するアナログデジタル変換器と、
前記温度情報に基づいて前記バンドギャップリファレンス回路の設定を変更する設定制御回路と
を具備する半導体集積回路。
【請求項2】
前記アナログデジタル変換器は、逐次比較型であり、
前記設定制御回路は、前記アナログデジタル変換器による前記出力コードへの変換途中の温度情報を用いて前記バンドギャップリファレンス回路の設定を変更する
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記設定制御回路は、逐次比較型の前記アナログデジタル変換器により前記出力コードの各ビットが求められる毎に前記温度情報を用いて前記設定を変更する
請求項2に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記設定制御回路は、前記出力コードの各ビットのうち1つ以上の所定ビットが求められる毎に前記温度情報を用いて前記設定を変更する
請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記設定制御回路は、前記温度情報を用いて前記設定を変更した結果、前記基準電圧と規定の電圧との差が所定の閾値以内となった場合には、前記設定の変更を停止する
請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記バンドギャップリファレンス回路は、前記第1バンドギャップ素子に電流を流す第1電流経路と、前記第2バンドギャップ素子に電流を流す第2電流経路と、前記カレントミラー回路を構成し前記第1電流経路に電流を流す第1トランジスタと、前記カレントミラー回路を構成し前記第2電流経路に電流を流す第2トランジスタと、前記カレントミラー回路を構成し第3電流経路に電流を流す第3トランジスタと、前記第3電流経路上に設けられ前記基準電圧を発生する抵抗と、前記第3電流経路上に設けられ前記第3トランジスタの端子電圧を設定する抵抗回路とを具備し、
前記設定制御回路は、前記温度情報に基づいて、前記抵抗回路の抵抗値を変更する
請求項1又は2に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記設定制御回路は、前記第3トランジスタの端子電圧を前記第1及び第2トランジスタの端子電圧に一致させるように前記抵抗回路の抵抗値を変更する
請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記設定制御回路は、前記第3トランジスタの端子電圧を前記第1及び第2トランジスタの端子電圧に一致させるように前記抵抗回路の抵抗値を変更した結果、前記基準電圧と規定の電圧との差が所定の閾値以内となった場合には、前記設定の変更を停止する
請求項7に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記設定制御回路は、1回目の温度計測時において前記設定の変更を省略し、2回目の温度計測時において前記1回目の温度計測時に求められた前記温度情報に基づいて前記設定の変更を行う
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記カレントミラー回路は、1段構成又はカスコード接続されたトランジスタを有する
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項11】
前記バンドギャップリファレンス回路に電源電圧を供給するレギュレータを更に具備し、
前記設定制御回路は、前記温度情報に基づいて前記レギュレータの設定を変更する
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項12】
前記アナログデジタル変換器は、逐次比較型であり、
前記設定制御回路は、前記アナログデジタル変換器からの変換途中の温度情報を用いて前記レギュレータの設定を変更する
請求項11に記載の半導体集積回路。
【請求項13】
バンドギャップ素子及びカレントミラー回路を含み温度依存性を有する第1電圧及び温度に依存しない基準電圧を発生するバンドギャップリファレンス回路と、
前記基準電圧を用いて前記第1電圧をコードに変換して温度情報として出力するアナログデジタル変換器と、
前記バンドギャップリファレンス回路に電源電圧を供給するレギュレータと、
前記温度情報に基づいて前記レギュレータの設定を変更する設定制御回路と
を具備する半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Band Gap Referenece(BGR)回路を利用して温度を検出する温度検出回路が採用されることがある。このような温度検出回路として、アナログBGR回路とADC(アナログデジタル変換器)とを備えたものがある。アナログBGR回路は、バンドギャップ電圧を利用して温度を検出し温度比例電圧を出力すると共に基準電圧を発生してADC(アナログデジタル変換器)に与える。ADCは、アナログBGR回路からの基準電圧を用いて、温度比例電圧をデジタル信号に変換して出力する。アナログBGR及びADCには、レギュレータから電源電圧VDDAが供給される。
【0003】
しかしながら、基準電圧及び温度比例電圧を発生するアナログBGR回路を用いた温度検出回路は、高精度の温度検出が可能な温度範囲が比較的狭い。また、温度検出回路の低電圧化に伴い、検出精度が低下すると共に、PSRR(Power Supply Rejection Ratio)が悪化しやすいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-215129号公報
【特許文献2】特開2009-217809号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0149526号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態は、幅広い動作温度範囲において、高精度の温度検出を可能にすると共にPSRRを向上させることができる半導体集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体集積回路は、第1及び第2バンドギャップ素子及びカレントミラー回路を含み温度依存性を有する第1電圧及び温度に依存しない基準電圧を発生するバンドギャップリファレンス回路と、前記基準電圧を用いて前記第1電圧を出力コードに変換して温度情報として出力するアナログデジタル変換器と、前記温度情報に基づいて前記バンドギャップリファレンス回路の設定を変更する設定制御回路とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態に係る半導体集積回路を構成する温度検出回路を示すブロック図。
図2図1の温度検出回路を含むメモリシステムを示すブロック図。
図3A図1の具体的な構成の一例を示すブロック図。
図3B図3A中の抵抗回路22の具体的な構成の一例を示す回路図。
図4A図3A中のアナログBGR回路の具体的な構成を示す回路図。
図4B図4A中の抵抗回路33の具体的な構成の一例を示す回路図。
図5】温度検出回路の比較例を示すブロック図。
図6図5の具体的な構成の一例を示すブロック図。
図7図6中のアナログBGR回路の具体的な構成の一例を示す回路図。
図8図6中のSARADCの具体的な構成の一例を示すブロック図。
図9】横軸に温度をとり縦軸に電圧をとって、温度変化に対する電圧DACTOPと温度比例電圧Vtの理想的な変化を示すグラフ。
図10】横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、SARADC4による出力コードの決定の仕方を説明するための説明図。
図11】横軸に温度をとり縦軸に電圧をとって、温度変化に対する電圧DACTOP、温度比例電圧Vt、電圧VCC,VDDAの変化を示すグラフ。
図12】横軸に温度をとり縦軸に電圧をとって、温度変化に対する電圧DACTOP、温度比例電圧Vt、電圧VCC,VDDAの変化を示すグラフ。
図13】横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、温度検出時における電圧DACTOPの制御を説明するための説明図。
図14】横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、温度検出時における電圧DACTOPの他の制御例を説明するための説明図。
図15図11の例において、レギュレータ2に対する制御を加えた場合の例を示すグラフ。
図16】第2の実施の形態において採用される制御を説明するための説明図。
図17】第2の実施の形態において採用される制御を説明するための説明図。
図18】第3の実施の形態において採用される制御を説明するためのフローチャート。
図19】BGR回路の変形例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施の形態)
図1は本実施の形態に係る半導体集積回路を構成する温度検出回路を示すブロック図である。図2図1の温度検出回路を含むメモリシステムを示すブロック図である。また、図3A図1の具体的な構成の一例を示すブロック図であり、図4A図3A中のアナログBGR回路の具体的な構成を示す回路図である。
【0010】
本実施の形態は、全動作温度範囲中の検出温度に応じて温度検出回路の設定を適正化することで、高精度の温度検出を可能にすると共にPSRRを向上させるものである。また、本実施の形態は、温度検出回路による温度検出の途中結果を利用して設定の適正化を図るように構成されていてもよく、温度検出の確実な高精度化を図ることもできる。
【0011】
本実施の形態は、不揮発性の半導体記憶装置であるNANDフラッシュメモリを制御するメモリコントローラに適用する例を説明するが、各種電子機器に適用可能である。
【0012】
図2のメモリシステムにおいて、ホスト61とメモリコントローラ62とは、所定のインタフェースを介して接続される。例えば、このインタフェースとしては、eMMC(embedded Multi Media Card)のパラレルインタフェース、PCIe(Peripheral Component Interconnect-Express)のシリアル拡張インタフェース、M-PHYの高速シリアルインタフェース等の各種インタフェースが採用される。なお、ホスト61及びメモリコントローラ62には、これらの各種インタフェースを採用したインタフェース回路が内蔵されている。
【0013】
メモリコントローラ62とNAND型フラッシュメモリ64とは、それぞれNANDインタフェース(I/F)回路63A,63Bを内蔵しており、I/F回路63A,63Bを介して相互に接続される。NANDI/F回路63A,63Bは、例えば、トグル・ダブルデータレート(ToggleDDR)等の高速データ転送モードやオープンNANDフラッシュインタフェース(ONFI)等の各種インタフェースを採用しており、メモリコントローラ62とNAND型フラッシュメモリ64との間でデータの転送を行う。
【0014】
ホスト61は、メモリコントローラ62に対して、書き込みや読み出しのリクエストを発生する。メモリコントローラ62は、ホストからのリクエストに従ってNAND型フラッシュメモリ64へのデータの書き込み及びNAND型フラッシュメモリ64からのデータの読み出しを制御する。
【0015】
メモリコントローラ62は、温度検出回路1を有している。温度検出回路1は、メモリコントローラ62内の温度を検出して検出結果をメモリコントローラ62内の図示しないCPU(Central Processing Unit)等に出力するようになっている。
【0016】
メモリコントローラ62とNAND型フラッシュメモリ64とは、NANDI/F回路63A,63Bを介して、例えば、データを含む各信号の送受信を行うための信号DQ<7:0>、データストローブ信号DQS、/DQS、チップイネーブル信号CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号WP等の各種信号の伝送を行う。
【0017】
なお、本実施の形態における温度検出回路1と同一構成の温度検出回路が、メモリコントローラ62内だけでなく、ホスト61,NAND型フラッシュメモリ64に内蔵されていてもよい。
【0018】
(比較例)
図5は温度検出回路の比較例を示すブロック図であり、図6図5の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図7図6中のアナログBGR回路の具体的な構成の一例を示す回路図である。図8図6中のSARADCの具体的な構成の一例を示すブロック図である。なお、第1の実施の形態を示す図1図3A及び図4Aと比較例を示す図5から図7において同一の構成要素には同一符号を付し、同一構成については重複する説明を省略するものとする。
【0019】
図5に示す温度検出回路11は、レギュレータ12、アナログBGR回路13及びSAR(Successive Approximation Register)式AD変換器(SARADC)4により構成されている。レギュレータ12には電源電圧VCCが供給され、レギュレータ12は、電源電圧VDDAを発生する。この電源電圧VDDAがアナログBGR回路13及びSARADC4に供給される。
【0020】
図6において、レギュレータ12はアンプ(AMP)21、出力PMOSトランジスタDRV及び抵抗R9,R10を有する。トランジスタDRVは、ソースが電源端子T1に接続され、ゲートにアンプ21の出力が印加され、ドレインは抵抗R9の一端に接続される。抵抗R9の他端は抵抗R10の一端に接続され、抵抗R10の他端は電源端子T2に接続される。電源端子T1には電圧VCCが供給され、電源端子T2には電圧VSSCが供給される。また、制御端子T3には、電圧VDDAの設定のための設定電圧VREFが供給される。
【0021】
トランジスタDRVは、アンプ21の出力に応じた出力電圧VDDAをドレインに発生して、温度センサ本体であるBGRセンサ部16に供給する。トランジスタDRVのドレインに現れる電圧VDDAは抵抗R9,R10により分圧される。抵抗R9と抵抗R10の接続点から電圧VDDAに応じた電圧(フィードバック電圧)がアンプ21の正極性入力端にフィードバックされる。アンプ21の負極性入力端には、制御端子T3からの設定電圧VREFが与えられる。アンプ21は、設定電圧VREFとフィードバック電圧との比較に応じたレベルの出力をトランジスタDRVのゲートに与える。アンプ21は、電圧VREFとフィードバック電圧とを一致させるように動作する。この結果、トランジスタDRVのドレインには、設定電圧VREFに対応した出力電圧VDDAが発生する。
【0022】
BGRセンサ部16は、アナログBGR回路13及びSARADC4により構成される。アナログBGR回路13は、電圧VDDAが与えられて動作し、温度に比例した温度比例電圧(温度検出電圧)Vt及び温度に依存しない電圧である基準電圧(電圧DAC)とを発生してSARADC4に出力する。SARADC4は、基準電圧DACを用いて温度比例電圧Vtをデジタル信号に変換する。SARADC4は、変換後のデジタル信号(出力コード)を温度情報として出力する。
【0023】
図7において、アナログBGR回路13は、アンプ31、トランジスタQ1~Q8を含むカレントミラー回路32及び抵抗R1~R3,R6,R7により構成される。電圧VDDAが供給される電源ラインと電圧VSSCが供給される電源ライン(以下、基準電位点ともいう)との間には、カレントミラー回路32からノードINN及びバイポーラトランジスタQ1に電流を流す電流経路が設けられる。また、電圧VDDAが供給される電源ラインと基準電位点との間には、カレントミラー回路32からノードINP、抵抗R1及びバイポーラトランジスタQ2に電流を流す電流経路が設けられる。バンドギャップ素子であるPNPトランジスタQ1とPNPトランジスタQ2は相互に異なるエミッタ領域を有し、コレクタ電流比が1:mに設定される。これらのトランジスタQ1,Q2により、バンドギャップを利用した温度測定が可能となる。
【0024】
トランジスタQ3~Q8は、カレントミラー回路32を構成する。電圧VDDAが供給される電源ラインとノードINNとの間にはPMOSトランジスタQ3のドレイン・ソース路及びPMOSトランジスタQ4のドレイン・ソース路が直列に接続され、ノードINNと基準電点との間には、PNPトランジスタQ1のエミッタ・コレクタ路が接続される。トランジスタQ1は、エミッタがノードINNに接続され、コレクタ及びベースは基準電位点に接続される。
【0025】
電源ラインとノードINPとの間にはPMOSトランジスタQ5のドレイン・ソース路及びPMOSトランジスタQ6のドレイン・ソース路が直列に接続され、ノードINPと基準電点との間には、抵抗R1及びトランジスタQ2のエミッタ・コレクタ路が直列に接続される。トランジスタQ2は、エミッタが抵抗R1を介してノードINPに接続され、コレクタ及びベースは基準電位点に接続される。
【0026】
また、電源ラインと基準電位点との間には、PMOSトランジスタQ7のドレイン・ソース路及びPMOSトランジスタQ8のドレイン・ソース路、抵抗R3,R2が直列に接続される。
【0027】
アンプ31は、負極性入力端がノードINNに接続され、正極性入力端がノードINPに接続され、出力端はトランジスタQ3,Q5,Q7のゲートに接続される。トランジスタQ4,Q6,Q8のゲートにはバイアス電圧VBPが印加される。
【0028】
ノードINNと基準電位点との間には、トランジスタQ1のエミッタ・コレクタ路に並列に抵抗R6が接続され、ノードINPと基準電位点との間には、トランジスタQ2のエミッタ・コレクタ路に並列に抵抗R7が接続される。
【0029】
次に、比較例において、基準電圧DAC及び温度比例電圧Vtを得る動作について説明する。いま、説明を簡略化するために、抵抗R6,R7が無い回路を想定する。
【0030】
トランジスタQ1,Q2は、いずれも、ベースとコレクタとが基準電位点に接続されたダイオード接続である。この場合に、トランジスタ毎に定まる飽和電流をIsとし、順方向電圧をVFとして、熱電圧をVT(=kT/q)とすると、エミッタ・コレクタ路に流れる電流IFは、下記(1)式で表される。なお、Tは絶対温度、kはボルツマン定数、qは電子の電荷量である。
IF=Is(exp(VF/VT)-1)≒Is(exp(VF/VT)) (1)
従って、下記(2)式が得られる。
VF=VT・Ln(IF/Is) (2)
ここで、ノードINN及びトランジスタQ1のエミッタ・コレクタ路に流れる電流をIaとし、ノードINP及びトランジスタQ2のエミッタ・コレクタ路に流れる電流をIbとする。トランジスタQ1,Q2のコレクタ電流比はmである。アンプ31は、ノードINN,INPの電位差が0となるように動作するので、(2)式から下記(3)式が得られる。なお、抵抗R1の抵抗値をR1とする。
VT・Ln(Ia/Is)=VT・Ln{(Ib/m)・(1/Is)}+IbR1 …(3)
変形すると、
Ib=VT/R1{Ln(Ia/Is)・(mIs/Ib)} (4)
カレントミラー回路32においては、トランジスタQ1,Q2のエミッタ・コレクタ路に流れる電流とトランジスタQ3,Q4のドレイン・ソース路に流れる電流とは、例えば一致するので、Ia=Ib=Iとすると、下記(5)式が得られる。
I=VT/R1・Ln(m) (5)
上記(5)式は、電流IがR1とVT(即ち、温度)に依存することを示している。即ち、抵抗R6,R7がないものとすると、電流Iは、温度上昇に比例して増加し、温度下降に比例して減少する特性(以下、正の温度特性という)を有する。
電流Iが正の温度特性を有することから、抵抗R1の両端に生じる電圧も、温度に比例した正の温度特性を有する。この抵抗R1の両端に生じる電圧が、温度の検出電圧である温度比例電圧Vtとして出力される。
【0031】
図7においては、ノードINNは抵抗R6を介して基準電位点に接続されている。従って、抵抗R6に流れる電流とトランジスタQ1のドレイン・ソース路に流れる電流との和電流がノードINNを流れる。同様に、抵抗R7は、ノードINPと基準電位点との間に接続されており、抵抗R7に流れる電流とトランジスタQ2のドレイン・ソース路に流れる電流との和電流がノードINPを流れる。
【0032】
抵抗R6,R7に流れる電流は、温度上昇に対して減少し、温度下降に対して増加する特性(以下、負の温度特性という)を有する。従って、抵抗R1,R6,R7の抵抗値を適宜設定することにより、温度の変化に対して変動しない電流IをノードINN,INPに流すことが可能となる。
【0033】
カレントミラー回路32においては、トランジスタQ3,Q4のドレイン・ソース路(トランジスタQ5,Q6のドレイン・ソース路)に流れる電流と同じ電流がトランジスタQ7,Q8のドレイン・ソース路にも流れる。即ち、トランジスタQ7,Q8のドレイン・ソース路に流れる電流Ioutは、温度の変化に対して変動しない。従って、抵抗R3,R2に流れる電流(ミラー電流Iout)は、温度の変化に拘わらず、一定である。抵抗R2,R3の接続点に現れる電圧DAC(基準電圧)は、電流Iout×R2であり一定電圧となる。
一方、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧VBEは負の温度特性を有する。従って、ノードINN,INPの電圧も負の温度特性を有する。即ち、ノードINN,INPの電圧(以下、電圧INという)は、温度に応じて変化する電圧である。
【0034】
アナログBGR回路13からの電圧DACは、基準電圧としてSARADC4に供給され、抵抗R1の両端に生じる電圧が温度比例電圧VtとしてSARADC4に供給される。
図8の例では、SARADC4は、サンプルホールド回路41、比較回路42、ロジック回路43及びリファレンス電圧生成回路44により構成される。サンプルホールド回路41は入力された温度比例電圧Vtをクロックタイミングでサンプリングしてホールドし、比較回路42に出力する。比較回路42は、クロックタイミングで、温度比例電圧Vtをリファレンス電圧生成回路44からのリファレンス電圧と比較し、比較結果をロジック回路43に出力する。ロジック回路43は比較結果に基づいて出力コードを決定すると共に、比較結果に基づくリファレンス電圧が生成されるようにリファレンス電圧生成回路44を制御する。リファレンス電圧生成回路44は、電圧DACが与えられており(図示省略)、ロジック回路43に制御されて電圧DACに基づくリファレンス電圧を生成し比較回路42に出力する。
【0035】
SARADC4は、入力された基準電圧(電圧DAC)と、温度比例電圧Vtとの関係によって、温度を求める。例えば、SARADC4は、変換する電圧範囲を最上位ビット(MSB)から最下位ビット(LSB)までのコードに割り当てる。SARADC4のリファレンス電圧生成回路44は、電圧DACを用いて、変換する電圧範囲の1/2の電圧のリファレンス電圧を生成する。この場合のリファレンス電圧は、出力コードのMSBに相当する。比較回路42は、このリファレンス電圧と入力された温度比例電圧Vtとの比較を行い比較結果をロジック回路43に出力する。ロジック回路43は、温度比例電圧Vtがリファレンス電圧よりも大きいか否かによって、MSBの値を決定する。即ち、温度比例電圧Vtがリファレンス電圧以上の場合にはMSBを“1”とし、リファレンス電圧よりも低い場合にはMSBを“0”とする。
【0036】
次に、ロジック回路43は、MSBが“1”であるか“0”であるかに応じて、MSBの1ビット下位の下位ビットに対応するリファレンス電圧を設定する。ロジック回路43は、この場合のリファレンス電圧として、最初に設定したリファレンス電圧の1/2の電圧を最初に設定したリファレンス電圧に足した値(MSBが“1”の場合)又は引いた値(MSBが“0”の場合)を設定する。リファレンス電圧生成回路44は、このリファレンス電圧を生成して比較回路42に与える。比較回路42は、設定されたリファレンス電圧と温度比例電圧Vtとの比較によって、MSBの1ビット下位のビット値を決定する。以後同様にして、順次下位ビットの値が求められ、最終的にMSBからLSBまでのコード値が決定される。SARADC4は、求めた出力コードを温度情報として出力する。
【0037】
(比較例の課題)
次に、図9及び図10を参照して、比較例における課題について説明する。図9は横軸に温度をとり縦軸に電圧をとって、温度変化に対する電圧DACTOPの理想的な変化を示すグラフである。なお、電圧DACTOPは、トランジスタQ8のドレインと抵抗R3との接続点の電圧であり、トランジスタQ7,Q8のドレイン・ソース間電圧VDSの和電圧に相当する。また、図10は横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、SARADC4による出力コードの決定の仕方を説明するための説明図である。
【0038】
(課題)
電圧DACTOPは、電圧DACに対して抵抗R3にミラー電流Ioutが流れることによる電圧降下分だけ高い電圧である。ミラー電流Ioutが温度変化に拘わらず一定であれば、電圧DACTOP及び電圧DACは温度変化に拘わらず一定の電圧となる。ミラー電流IoutがノードINN,INPに流れる電流Iと一致する条件としては、Q3~Q7のゲート電圧を相互に同一にし、Q4~Q8のゲート電圧を相互に同一にするだけでなく、トランジスタQ3,Q4のドレイン・ソース間電圧の和電圧VDS1、トランジスタQ5,Q6のドレイン・ソース間電圧の和電圧VDS2、トランジスタQ7,Q8のドレイン・ソース間電圧の和電圧VDS3(電圧DACTOP)を相互に一致させる必要がある。即ち、電圧DACTOP=電圧INの場合に、電圧DACは温度変化に拘わらず一定の電圧となる。
【0039】
図9は電圧DACTOP(実線)及び電圧IN(破線)と、温度との関係を示している。上述したように、ベース・エミッタ間電圧VBEは負の温度特性を有し、電圧INは温度に応じて図9に示すように変化する。なお、INNノード,INPノードは同電位であり、電圧VDS1,VDS2は相互に同一である。
【0040】
これに対し、電圧DACTOPは、温度に依存しないことから、電圧DACTOPと電圧VDS1(VDS2)とには、温度変化に起因する電圧差が生じる。電圧DACTOPと電圧VDS1(VDS2)とに電圧差が生じると、その差の分だけミラー電流IoutがノードINN(INP)に流れる電流に対して変化する。そうすると、出力コードの判定の基準となる電圧DACも温度に応じて変化することになり、後段のSARADC4の出力コードに誤りが生じる。
また、アナログBGR回路13に供給される電圧VDDAは、レギュレータ12により作成されるが、レギュレータ12の電源VCCが低電圧化されていることから、電圧VDDAも低電圧化されている。トランジスタQ1,Q2のベース・エミッタ間電圧VBEは規定値であり、電圧VDS1(VDS2)は、VDDA-VBEであるので、電圧VDS1(VDS2)及び電圧DACTOPは比較的低い電圧となる。この場合には、VDS1(VDS2)と電圧DACTOPとの差(変動分)が小さいときでも、ミラー電流が比較的大きく変動してしまう。即ち、電圧VDDAが低電圧化された場合には、アナログBGR回路13ではVDS1,VDS2,DATCOPが比較的小さな値となり、温度変化によるVDS1(VDS2)とDACTOPとの差により、ミラー電流Ioutが比較的大きく変動する。この結果、基準電圧DACも比較的大きく変動し、SARADC4からの温度情報の精度が低下してしまう。
図10は、動作温度範囲-25℃~85℃の中間の温度に対応するリファレンス電圧として電圧DACを設定し、MSBからLSBに向かって順次ビットを確定するSARADC4の動作を示している。図10の例はSARADC4の1回目の判定によりMSB“1”が求められた例である。SARADC4は、2回目の判定においてリファレンス電圧をDAC+DAC/2に設定してMLB-1のビットの値を求める。更に、SARADC4は、3回目の判定においてリファレンス電圧をDAC+DAC/2-DAC/4に設定してMLB-2のビットの値を求める。以後同様にして、順次下位ビットを求める。
【0041】
図10はある温度の温度計測を行う期間を示しており、この期間内では電圧DACが変動していないが、上述したように、温度変化に起因してミラー電流Ioutが変動する結果、電圧DACTOP及び電圧DACは変動する。図10の例では、電圧DACTOPは電圧INとは異なる電圧となっており、電圧DACは本来設定されるべき規定の電圧値とは異なる電圧となっている。この結果、SARADC4は、本来設定されるべきリファレンス電圧とは異なるリファレンス電圧を用いて各ビットを判定することになる。特に、LSB側のビットでは、リファレンス電圧の変動によりビット値の論理が変化することがあり、出力コードの精度が低下する。
【0042】
また、ベース・エミッタ間電圧VBEは、上述したように、負の温度特性を有している。図9の例では最低動作温度-25℃においてベース・エミッタ間電圧VBEが一番大きな値となることを示している。従って、この最低動作温度において、VDS1(VDS2)は最小値となる。つまり、最低動作温度において、温度検出の精度が最も低下することになる。この検出精度の点から、VDS1(VDS2)の最小値は制限を受け、VDS1(VDS2)は、所定の値以上の値に設定される。その結果、電圧VDDAも所定の電圧以上の電圧にする必要がある。これに対し、レギュレータ12に供給される電圧VCCは規定の低電圧となっていることから、ベース・エミッタ間電圧VBEが一番大きくなる最低動作温度においては、電圧VCCと電圧VDDAとの差が最も小さくなる。従って、最低動作温度においては、レギュレータ12のトランジスタDRVのドレイン・ソース間電圧VDSが最も小さくなり、PSRR(電源電圧変動除去比)が悪化する。
【0043】
つまり、アナログBGR回路を利用する限り、温度検出精度及びPSRRの点から、最低動作温度を十分に下げることは困難である。
【0044】
(構成)
本実施の形態においては、正確なミラー電流Ioutが得られるように、VDS1,VDS2,VDS3を相互に一致させる(電圧DACTOPを電圧INに一致させる)制御を行う。これにより、全温度範囲において電圧DACを本来設定すべき規定電圧とすることを可能にして、高精度の温度検出を可能にする。
【0045】
図1の温度検出回路1は、レギュレータ12に代えてレギュレータ2を採用し、アナログBGR回路13に代えてアナログBGR回路3を採用すると共に、設定制御回路5を設けた点が図5の温度検出回路11と異なる。設定制御回路5は、CPU(Central Processing Unit)等を用いたプロセッサによって構成されていてもよく、図示しないメモリに記憶されたプログラムに従って動作して各部を制御するものであってもよいし、ハードウェアの電子回路で機能の一部又は全部を実現するものであってもよい。また、設定制御回路5の機能を、SARADC4内のロジック回路43によって実現するようになっていてもよい。設定制御回路5は、温度情報に基づいてレギュレータ2及びBGR回路3の設定を制御する。
【0046】
図3A図2の温度検出回路1の具体的な構成の一例を示し、図3B図3A中の抵抗回路22の具体的な構成の一例を示す回路図である。また、図4A図3A中のアナログBGR回路3の具体的な構成の一例を示し、図4B図4A中の抵抗回路33の具体的な構成の一例を示す回路図である。
【0047】
図3Aに示すように、温度検出回路1はレギュレータ2とBGRセンサ部6とにより構成される。レギュレータ2は、抵抗R9,R10に代えて抵抗回路22を付加した点が図6のレギュレータ12と異なる。抵抗回路22には、設定制御回路5からの制御信号が与えられる。設定制御回路5は、温度情報に基づいて、レギュレータ2の抵抗回路22の設定を制御することができる。
【0048】
抵抗回路22は、トランジスタDRVのドレインと基準電位点との間の信号経路上に設けられる。抵抗回路22は、電圧VDDAを分圧してアンプ21の正極性端子に与える。
図3Aに示すように、抵抗回路22としては、例えば、トランジスタDRVのドレインと基準電位点との間に直列接続された複数の抵抗による抵抗群Rg1と各抵抗の端部とアンプ21の正極性端子との間に接続された複数のスイッチによるスイッチ群Sg1とによって構成することができる。スイッチ群Sg1の各スイッチは、設定制御回路5の制御信号によって導通が制御される。設定制御回路5は、抵抗回路22の各スイッチのうちの1つのスイッチを温度情報に応じて選択して導通させることで、電圧VDDAを温度情報に応じた電圧に設定することができる。
【0049】
図4Aに示すように、BGRセンサ部6は、アナログBGR回路13に代えてアナログBGR回路3を採用した点が図6と異なる。アナログBGR回路3は、抵抗R3に代えて抵抗回路33を付加した点が図7のアナログBGR回路13と異なる。抵抗回路33は、トランジスタQ8のドレインと抵抗R2との間の電流経路上に設けられる。抵抗回路33には設定制御回路5からの制御信号が供給される。抵抗回路33は、電流経路の抵抗値が設定制御回路5からの制御信号に基づいて変更可能に構成される。
【0050】
図4Bに示すように、例えば、抵抗回路33は、トランジスタQ8のドレインと抵抗R2との間の信号経路上に直列接続された複数の抵抗による抵抗群Rg2と各抵抗をそれぞれ迂回して信号経路に接続可能にする複数のスイッチによるスイッチ群Sg2により構成することができる。スイッチ群Sg2の各スイッチは、設定制御回路5の制御信号によって導通が制御される。設定制御回路5は、温度情報に基づいてスイッチ群Sg2の各スイッチのオン・オフを制御することにより、トランジスタQ8のドレインと抵抗R2との間の電流経路上の抵抗回路33全体の抵抗値を温度情報に応じて変化させる。抵抗回路33は、抵抗回路33を流れる電流、即ち、ミラー電流Ioutと抵抗回路33の抵抗値とに応じた電圧を発生する。
【0051】
本実施の形態においては、ミラー電流Ioutが抵抗R2を流れることにより生じる電圧(電圧DAC)と、ミラー電流Ioutが抵抗回路33を流れることにより生じる電圧との和電圧が電圧DACTOPとなる。ミラー電流Ioutは、温度の変化に拘わらず一定である。従って、電圧DACは温度に拘わらず一定電圧である。一方、電圧DACTOPは、温度情報に応じて変化する。
【0052】
(作用)
次にこのように構成された実施の形態の動作について図11から図15を参照して説明する。図11及び図12は横軸に温度をとり縦軸に電圧をとって、温度変化に対する電圧DACTOP、電圧IN(INP/INN)、電圧VCC,VDDAの変化を示すグラフである。なお、図11は電圧DACTOPの理想的な制御を示している。なお、図11及び図12では、レギュレータ2に対する制御を省略し、アナログBGR回路3に対する制御のみを行った例を示している。図13は横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、温度検出時における電圧DACTOPの制御を説明するための説明図である。図14は横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、温度検出時における電圧DACTOPの他の制御例を説明するための説明図である。図15図11の例において、レギュレータ2に対する制御を加えた場合の例を示すグラフである。
図15では、比較のために、レギュレータ2に対する制御を加えない場合の電圧VDDAを破線にて示し、レギュレータ2に対する制御を加えた場合の電圧VDDAを実線にて示している。
【0053】
図3A図4Aに戻って説明を続ける。レギュレータ2は電圧VCCが与えられて、電圧VDDAを発生する。この電圧VDDAは、BGRセンサ部6中のアナログBGR回路3及びSARADC4に供給される。アナログBGR回路3は、発生する電圧DACTOPの電圧値が比較例のアナログBGR回路13と異なる。アナログBGR回路3における温度比例電圧Vt及び基準電圧DACに関する動作はアナログBGR回路13と同様である。即ち、ノードINN,INPの電圧は、アンプ31によって相互に同電圧(電圧IN)となる。また、カレントミラー回路32によって、トランジスタQ3,Q4のドレイン・ソース路及びノードINNを流れる電流とトランジスタQ5,Q6のドレイン・ソース路及びノードINPを流れる電流とは同じ電流Iとなる。
【0054】
トランジスタQ1のエミッタ・コレクタ路に流れる電流及びトランジスタQ2のエミッタ・コレクタ路に流れる電流はいずれも正の温度特性を有する。抵抗R1の両端の電圧が正の温度特性を有する温度比例電圧Vtとして用いられる。一方、抵抗R6に流れる電流及び抵抗R7に流れる電流はいずれも負の温度特性を有する。従って、抵抗R1,R6,R7の抵抗値を適宜設定することにより、ノードINN(INP)を流れる電流Iを温度に依存しない電流とすることができる。
【0055】
カレントミラー回路32は、ノードINN(INP)に流れる電流Iに例えば一致したミラー電流IoutをトランジスタQ7,Q8のドレイン・ソース路に流す。ミラー電流Ioutは、抵抗回路33及び抵抗R2を介して基準電位点に流れる。アナログBGR回路3は、抵抗R2にミラー電流Ioutが流れることにより発生する電圧を基準電圧DACとしてSARADC4に与える。
【0056】
SARADC4は、基準電圧DACを用いて、温度比例電圧Vtに対応した出力コードを生成し、生成した出力コードを温度情報として出力する。
【0057】
この場合において、本実施の形態においては、温度情報に応じて電圧DACTOPを変化させ、電圧DACTOPを電圧INに一致させるように制御する。図11はこの制御を示している。図11に示すように、ノードINN,INPの電圧である電圧IN(破線)は、負の温度特性を有している。SARADC4からの温度情報は、設定制御回路5を介してアナログBGR回路3中の抵抗回路33にフィードバックされる。設定制御回路5は、抵抗回路33の抵抗値を温度情報に応じて変化させる。即ち、設定制御回路5は、抵抗回路33の抵抗値を、温度が高くなるほど低くし、温度が低くなるほど高くする。温度変化に対する抵抗回路33の抵抗値の変化をノードINN(INP)の温度特性に対応した温度特性となるように、抵抗回路33の抵抗値が変化する。
【0058】
電圧DACTOPは、抵抗R2の抵抗値と抵抗回路33の抵抗値の和の抵抗値とミラー電流Ioutとにより求められる。抵抗回路33は、温度情報を用いて抵抗回路33の抵抗値を適宜変化させることで、電圧DACTOPに負の温度特性を付与して、図11の実線に示すように、電圧DACTOPを電圧INに一致させる。
【0059】
電圧DACTOPが電圧INに一致する結果、ミラー電流IoutはノードINN(INP)に流れる電流Iに一致するものとなる。これにより、ミラー電流Ioutは温度に依存しない定電流となり、基準電圧DACも温度に依存しない定電圧となる。この結果、本実施の形態においては、高精度での温度検出が可能となる。
【0060】
なお、図11の制御を可能にするためには、抵抗回路33の抵抗値の分解能を極めて高くする必要があり、実装は容易ではない。そこで、抵抗回路33の分解能を制限することが考えられる。図12はこの場合の電圧DACTOPの制御を示している。この場合には、抵抗回路33の抵抗値の変化を段階的に行うことで、図12に示すように、電圧DACTOPを温度変化に対して段階的に変化させることが可能である。この場合においても、実使用上、十分に高精度の温度検出が可能である。
【0061】
ところで、SARADC4は、温度の計測時において電圧DACを用い、アナログBGR回路3は設定制御回路5からの制御信号に応じて、即ち、温度情報に応じて電圧DACTOPを制御する。従って、SARADC4から最初に出力される出力コードの精度は必ずしも高くない。即ち、SARADC4からの温度情報を用いて電圧DACTOPを制御することにより高精度の温度検出を可能にするためには、複数回の温度検出が必要となる。
【0062】
そこで、本実施の形態においては、SARADC4のA/D変換の途中の計測結果を用いることで、1回の温度検出によって高精度の温度検出結果を得るようになっている。SARADC4が出力する出力コードは、検出温度に比例して値が変化するデジタルコードであり、MSBの値は、動作温度範囲の中間の温度に相当する。SARADC4は、先ず出力コードのMSBの値を求める。図9に示したように、動作温度範囲の中間の温度においては、電圧DACTOPは電圧IN近傍の電圧値となり、動作温度範囲の両端において、電圧DACTOPは電圧INから離間した電圧値となる。従って、SARADC4がMSBの値を求める場合において、温度比例電圧Vtが動作温度範囲の中間の温度近傍の温度に対応する電圧である場合には、電圧DACは本来設定されるべき規定電圧近傍の電圧であるのでSARADC4がMSBの値を誤判定する可能性は極めて低い。また、温度比例電圧Vtが動作温度範囲の両端の温度である場合には、電圧DACが本来設定されるべき電圧から多少変動している場合でも、動作温度範囲の中間の温度に相当するMSBの値を誤判定する可能性は極めて低い。
【0063】
図13の例では、SARADC4の1回目の判定によりMSB“1”が求められる。図13の例における検出温度は動作温度範囲の中間から上限の間の電圧であり、初期状態では電圧DACTOPの方が電圧INよりも高い。SARADC4は、MSBが“1”であることを示す温度検出の途中結果の温度情報を設定制御回路5に与える。設定制御回路5はこの温度情報に基づいてアナログBGR回路3の抵抗回路33を制御する。これにより、抵抗回路33は、供給されたMSBが“1”であることを示す温度情報に応じた抵抗値に低下する。この場合には、図9の動作温度範囲における電圧DACTOPの変化分の例えば1/4の電圧だけ電圧DACTOPが低下するように、抵抗回路33の抵抗値が変化する。これにより、図13に示すように、電圧DACTOPは、電圧INよりも低くなり、その差が比較的小さくなる。従って、ミラー電流Ioutは、ノードINN,INPに流れる電流Iに近づき、電圧DACは、本来設定されるべき電圧に近づく。
【0064】
SARADC4は、電圧DACTOP及び電圧DACが変更された後に次のビットの判定を行う。即ち、SARADC4は、2回目の判定において変更された電圧DACを用いてリファレンス電圧をDAC+DAC/2に設定してMLB-1のビットの値を求める。図13の例では、SARADC4はMSB-1のビットのビット値として“0”を得る。SARADC4は、MSB-1のビットが“0”であることを示す温度検出の途中結果の温度情報を設定制御回路5に与える。設定制御回路5はこの温度情報に基づいてアナログBGR回路3の抵抗回路33を制御する。抵抗回路33は、供給されたMSBが“0”であることを示す温度情報に応じた抵抗値に増加する。この場合には、図9の動作温度範囲における電圧DACTOPの変化分の例えば1/8の電圧だけ電圧DACTOPが増加するように、抵抗回路33の抵抗値が変化する。これにより、図13に示すように、電圧DACTOPは一旦電圧INよりも大きくなる。
【0065】
SARADC4は、3回目の判定において変更された電圧DACを用いてリファレンス電圧をDAC+DAC/2-DAC/4に設定してMLB-2のビットの値を求める。図13の例では、SARADC4はMSB-2のビットのビット値として“1”を得る。SARADC4は、MSB-2のビットが“1”であることを示す温度検出の途中結果の温度情報を設定制御回路5に与える。設定制御回路5はこの温度情報に基づいてアナログBGR回路3の抵抗回路33を制御する。抵抗回路33は、供給されたMSBが“1”であることを示す温度情報に応じた抵抗値に低下する。この場合には、図9の動作温度範囲における電圧DACTOPの変化分の例えば1/16の電圧だけ電圧DACTOPが増加するように、抵抗回路33の抵抗値が変化する。これにより、図13に示すように、電圧DACTOPは略電圧INと同等の電圧となる。
【0066】
以後同様の動作が繰り返される。従って、これ以降、電圧DACは、本来設定されるべき電圧となり、SARADC4は高精度の温度検出結果を出力可能となる。
【0067】
このように、電圧DACTOPは、SARADC4の各ビットのビット値が決定されるごとに、次第に電圧INに収束する。出力コードのLSBの値が決定される時点において、電圧DACTOPが電圧INに一致していれば高い温度検出精度が得られるので、図13の処理を行うことにより、確実に高精度の温度検出が可能となる。
【0068】
なお、電圧DACTOPの制御をLSBのビットまで実施しても良いが、電圧DACTOPと電圧INとの差が所定の閾値以内になった場合、即ち、電圧DACが本来設定すべき規定電圧に対して所定の閾値以内の電圧になった場合には、十分な温度検出精度が得られることが考えられる。そこで、電圧DACTOPと電圧INとの差が所定の閾値以内になった場合には、電圧DACTOPの制御を停止するようになっていてもよい。図13はこの状態を示している。
【0069】
また、図13の例では、検出途中の温度情報の最初のビット(MSB)値の出力から連続して電圧DACTOPの制御を行う例を示したが、このようにSARADC4からビット値が得られる毎に連続して電圧DACTOPを制御してもよく、また、間欠的に電圧DACTOPを制御してもよい。また、検出途中の温度情報の途中のビット値の出力から連続して又は間欠的にあるいは1回のみ電圧DACTOPの制御を行ってもよく、検出途中の温度情報の最後のビット(LSB)の1つ前のビットのビット値のみを用いて電圧DACTOPの制御を行ってもよい。
【0070】
よりLSB側のビット値の出力を用いて電圧DACTOPを制御した方がより高精度の温度検出が可能となる。しかし、よりMSB側のビット値を用いた電圧DACTOP制御を行わない場合には、温度検出結果に比較的大きな誤差が生じる可能性がある。そこで、MSB側のビット値、中間のビット値及びLSBのビット値を用いた複数回の電圧DACTOP制御を実施した方がよく、理想的には図13のように毎回実施した方がよい。また、検出温度の範囲に応じて、電圧DACTOP制御を実施するビットを決定するようにしてもよい。
【0071】
上述したように、電圧DACTOPと電圧INとの差が所定の閾値以内になった場合には十分な温度検出精度が得られる。例えば、出力コードの上位数ビットの判定毎に電圧DACTOPを制御することにより、電圧DACTOPと電圧INとの差が所定の閾値以内になることが考えられる。そこで、例えば上位何ビットまで電圧DACTOPの制御を行うかを予め決定しておき、メモリコントローラ62内のCPUによって、このビット数を設定するようになっていてもよい。メモリコントローラ62のCPUは、自システムに応じて適宜のビット数を設定可能であり、システムに最適な制御が可能となる。
【0072】
図14はMLB-2ビットで電圧DACTOPを制御し、電圧DACTOPと電圧INとの差が所定の閾値以内になったことにより、電圧DACTOPの制御を停止した例を示している。この場合においても、MLBからMBB-2までの判定に誤りが無ければ、高精度の温度検出結果を得ることができる。
【0073】
更に、本実施の形態においては、温度情報を用いて、電圧VDDAについても制御する。上述したように、温度検出精度の制限から、電圧VDDAは、最低動作温度における電圧INとの差が所定の値よりも大きくなるように設定される。この結果、図11及び図12に示すように、電圧VCCと電圧VDDAとの差は比較的小さくなり、PSRRが悪化する。そこで、本実施の形態においては、PSRRの悪化を抑制するために、電圧INの変化に応じて電圧VDDAも変化させる。
【0074】
抵抗回路22には、設定制御回路5から温度情報に基づく制御信号が与えられる。抵抗回路22は、温度情報に応じて抵抗値を変化させ、トランジスタDRVのドレインに現れる電圧VDDAの抵抗分圧により得られるフィードバック電圧を変化させる。即ち、抵抗回路22は、温度情報によって示される温度が高い程抵抗分圧により得られるフィードバック電圧を小さくし、低い程抵抗分圧により得られるフィードバック電圧を大きくする。抵抗回路22は、抵抗分圧によって得た電圧をアンプ21の正極性端子にフィードバックする。
【0075】
これにより、検出温度が低い程、電圧VDDAは高くなり、検出温度が高い程、電圧VDDAは低くなる。こうして、図15に示すように、電圧INとの電圧差が例えば一定の電圧VDDAがレギュレータ2から出力される。図15の例では、電圧VCCと電圧VDDAとの差電圧は、最低動作温度において最も小さく、動作温度が高くなるほど大きくなる。この結果、最低動作温度におけるPSRRの悪化を抑制することはできないが、動作温度が高くなるほど電圧VCCと電圧VDDAとの差を大きくすることができ、低温以外のPSSRを十分に改善することが可能である。システムによるが、高温時に高精度の検知が要求される用途が多く、本実施の形態によるPSSRの改善効果は大きい。
【0076】
なお、電圧VDDAの制御についても、電圧DACTOPの制御と同様に、最終的な温度検出結果を用いて制御を行ってもよく、検出途中の温度情報を用いて制御を行ってもよい。また、検出途中の温度情報の最初のビット(MSB)値の出力から連続して電圧VDDAの制御を行ってもよく、あるいは間欠的に電圧DACTOPを制御してもよい。また、検出途中の温度情報の途中のビット値の出力から連続して又は間欠的にあるいは1回のみ電圧VDDAの制御を行ってもよく、検出途中の温度情報の最後のビット(LSB)の1つ前のビットのビット値のみを用いて電圧VDDAの制御を行ってもよい。電圧VDDAの制御についても、電圧DACTOPの制御と同様に、例えば上位何ビットまで電圧VDDAの制御を行うかを予め決定しておき、メモリコントローラ62内のCPUによって、このビット数を設定するようになっていてもよい。
【0077】
このように本実施の形態においては、温度情報を用いて電圧DACTOPを電圧INに一致させており、ノードINN,INPに流れる電流Iに一致したミラー電流Ioutを発生させる。これにより、温度変化に拘わらず電圧DACを本来設定すべき規定電圧に制御することができ、全動作範囲において高精度の温度検出結果を得ることができる。また、温度情報に基づいて電圧VDDAを制御しており、最低動作温度よりも動作温度が高くなる程PSSRを改善することができる。
【0078】
(第2の実施の形態)
図16及び図17は第2の実施の形態において採用される制御を説明するための説明図である。本実施の形態におけるハードウェア構成は第1の実施の形態と同様である。図16及び図17は横軸に出力コードの各ビットをとり縦軸に温度をとって、SARADC4の各ビットの判定方法を説明するための説明図である。図16は第1の実施の形態におけるSARADC4の判定方法を示し、図17は第2の実施の形態におけるSARADC4の判定方法を示している。
【0079】
第1の実施の形態においては、電圧DACTOPが電圧INに一致するまでの期間、電圧DACは若干変動することになる。例えば図14の例のように、出力コードの途中のビットから電圧DACTOPを制御する場合には、電圧DACTOPの制御前には、電圧DACTOPと電圧INとの差が比較的大きいことが考えられる。この場合には、電圧DACが本来設定すべき電圧から比較的大きくずれてしまい、SARADC4において判定するビット値に誤りが生じる可能性がある。そこで、本実施の形態においては、SARADC4として、冗長性を有する回路を採用する。
【0080】
図16及び図17の例では、出力コードのうち上位側のMSBからMSB-4までの判定時の各リファレンス電圧を丸印で示すと共に、括弧により各リファレンス電圧を用いた判定温度範囲を示している。SARADC4は、リファレンス電圧を1/2,1/4,・・にした電圧を、各ビットの判定結果に応じて、前回の判定に用いたリファレンス電圧に加減算したリファレンス電圧を次回の判定に用いる。この場合において、第1の実施の形態のSARADC4は、前回の判定により除外された温度範囲以外の温度範囲を判定する。即ち、SARADC4は、前回の判定における温度検出範囲のうち、前回の判定結果により検出温度から除外された温度範囲を除く温度範囲を判定対象に設定して各ビットのビット値を決定する。
【0081】
しかしながら、前回の判定に誤りがあった場合、例えば、図16において、30℃より低い温度に対してMSBのビット値を“1”と判定した場合には、誤りが確定し、温度検出の誤差が大きい。
【0082】
これに対し、本実施の形態のSARADC4は、前回までの判定により除外された温度範囲のうち、今回の判定温度範囲に隣接する所定の温度範囲を判定温度範囲に含める。従って、例えば、図17において、30℃より低い温度に対してMSBのビット値を“1”と判定した場合でも、次のMSB-1のビットの判定時に検出された温度が判定温度範囲に含まれる可能性があり、MSB-1ビットの判定において、正しい温度が検出される可能性がある。なお、SARADC4は、この場合には、MSBのビットのビット値を“1”から“0”に変更する。
【0083】
このように本実施の形態においては、SARADC4として冗長性を有する回路を採用することにより、SARADC4における温度検出途中の誤りを修正することが可能であり、より高精度の温度検出が可能である。
【0084】
(第3の実施の形態)
図18は第3の実施の形態において採用される制御を説明するためのフローチャートである。本実施の形態におけるハードウェア構成は第1の実施の形態と同様である。
【0085】
上記各実施の形態においては、出力コードの検出途中の温度情報を用いて電圧DACTOPを変更する例を説明した。しかしながら、電圧DACTOPを変更し、新たな電圧DACをSARADC4に供給し、SARADC4において新たな電圧DACに基づくリファレンス電圧を設定する処理には比較的長い時間を要することも考えられる。この場合には、温度検出に要する全体的な時間が長くなってしまう。そこで、本実施の形態においては、1回目に電圧DACTOPを制御せずに温度を低い精度で求め、2回目に求めた温度に対応した電圧DACTOPを最初に設定した状態で、上記実施の形態を適用する。これにより、電圧DACTOPが電圧INに収束する時間を短縮することができ、結果的に温度検出の速度を向上させることができる。なお、図18においては、電圧DACTOPの制御のみについて記載しているが、電圧VDDAの制御についても同様に行ってもよい。
【0086】
図18のステップA1,A2は1回目の温度検出処理を示している。先ず、アナログBGR回路3により温度比例電圧Vt及び電圧DACを検出する。温度比例電圧Vt及び電圧DACはSARADC4に供給され、SARADC4は、電圧DACを用いて、出力コードの各ビットを温度比例電圧Vtに応じて判定する(A2)。即ち、1回の温度検出処理においては、温度情報による電圧DACTOPの制御は行わない。従って、温度の検出精度は比較的低い反面、高速に処理が行われる。
【0087】
次に、1回目の温度検出処理によって得られた温度情報をアナログBGR回路3にフィードバックする(A3)。抵抗回路33は、温度情報に基づいて抵抗値を変化させる(A4)。この結果、電圧DACTOPが変化し、アナログBGR回路3からの電圧DACも変化する。この電圧DACがSARADC4に設定される(A5)。SARADC4は、設定された電圧DACに基づくリファレンス電圧を発生し、2回目の温度判定が終了していなければ(A6のNO)、出力コードの各ビットを求める(A7)。SARADC4は、求めたビット値をフィードバックする必要がある場合(A8のYSE)には、処理をステップA9に移行し、フィードバックする必要がない場合(A8のNO)には、処理をステップA6に移行する。
【0088】
ステップA9において、SARADC4は、求めたビット値(温度情報)を設定制御回路5を介してアナログBGR回路3にフィードバックする。抵抗回路33は、温度情報に基づいて抵抗値を変化させる(A10)。この結果、電圧DACTOPが変化し、アナログBGR回路3からの電圧DACも変化する。この電圧DACがSARADC4に設定される(A11)。SARADC4は、設定された電圧DACに基づくリファレンス電圧を発生し、2回目の温度判定が終了していなければ(A6のNO)、出力コードの次のビットを求める(A7)。以後同様の動作が繰り返され、出力コードのLSBのビット値が求められると(A6のYSE)、処理を終了する。
【0089】
なお、2回目の温度検出時時には、電圧DACTOPは比較的早く電圧INに収束しており、比較的早い段階でステップA8においてフィードバック不要と判定される。この結果、2回目の温度検出処理の時間を著しく短縮できる。
【0090】
このように、本実施の形態においては、1回目に求めた温度情報を用いて、2回目の最初のビット値の算出時における電圧DACTOP及び電圧DACを検出する。2回目の最初のビット値の算出時点において、電圧DACTOPは電圧IN近傍の電圧となっており、電圧DACTOPは電圧INに比較的短時間に収束する。この結果、電圧DACTOPの制御を短時間に終了させることが可能となり、結果的に温度検出に要する時間を短縮することが可能である。
【0091】
なお、第3の実施の形態においては、1回目に電圧DACTOPを制御することなく温度検出を行い、2回目に電圧DACTOPを制御しながら温度検出を行う例を説明したが、予め動作温度がある程度既知である場合には、当該温度情報をメモリに記憶させ、このメモリからの温度情報をアナログBGR回路3に与えることで、1回目の温度検出処理を省略することも可能である。
【0092】
(変形例)
図19はアナログBGR回路の変形例を示す回路図である。本変形例は、カスコード接続されたトランジスタQ3~Q8を用いたカレントミラー回路32に代えて、1段構成のトランジスタQ3,Q5,Q7を用いたカレントミラー回路34を採用した点が図4AのアナログBGR回路3と異なる。
この場合においても、上記各実施の形態と同様の効果が得られる。
【0093】
なお、上記各実施の形態においては、レギュレータ2及びアナログBGR回路3が温度情報である出力コードを利用する対象である例を説明したが、出力コードをこれらの回路以外の回路ブロックにおいて利用することも可能である。例えば、温度センサの回路内で、温度によって特性が変化する回路部分について、出力コードを用いた最適化処理を実施するようにしてもよい。例えば、出力コードを用いてADコンバータのスイッチサイズを最適化することも考えられる。
【0094】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0095】
1 温度検出回路、2 レギュレータ、3 アナログBGR回路、4 SARADC、5 設定制御回路、6 BGRセンサ部、21 アンプ、22 抵抗回路、31 アンプ、32 カレントミラー回路、33 抵抗回路、41 サンプルホールド回路、42 比較回路、43 ロジック回路、44 リファレンス電圧生成回路、Q1~Q8 トランジスタ、R1~R8 抵抗。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19