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特開2022-111623筆記判定システム、筆記判定方法、筆記判定プログラムおよび筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111623
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】筆記判定システム、筆記判定方法、筆記判定プログラムおよび筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 29/08 20060101AFI20220725BHJP
   G06F 3/0487 20130101ALI20220725BHJP
   G06F 3/03 20060101ALI20220725BHJP
   G06F 3/04883 20220101ALI20220725BHJP
【FI】
B43K29/08 Z
G06F3/0487
G06F3/03 400A
G06F3/0488 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007178
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】岩間 卓吾
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC19
5E555CA03
5E555CB59
5E555DA13
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】好適な筆記動作を筆記者に適切に促すこと。
【解決手段】一実施形態に係る筆記判定システムは、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出する算出部と、対象統計値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、対象統計値が閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、
前記複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出する算出部と、
前記対象統計値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記対象統計値が前記閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、
を備える筆記判定システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記対象統計値が前記閾値を超えた累積時間が基準時間以上であるか否かを判定し、
前記出力部は、前記累積時間が前記基準時間以上であると判定された場合に、前記フィードバック情報を出力する、
請求項1に記載の筆記判定システム。
【請求項3】
前記出力部は、前記累積時間が前記基準時間以上であると判定された時点以降において前記対象圧力値が出力下限値を超えている場合に、前記フィードバック情報を出力する、
請求項2に記載の筆記判定システム。
【請求項4】
前記取得部は、前記閾値を設定するための複数の参照圧力値を取得し、
前記算出部は、前記複数の参照圧力値の統計値である参照統計値を算出し、該参照統計値を前記閾値として設定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の筆記判定システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記取得部が取得した前記複数の対象圧力値のうち算出下限値を超える1以上の対象圧力値を用いて前記対象統計値を算出する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の筆記判定システム。
【請求項6】
前記取得部は、前記筆記具に生じる筆圧値を前記対象圧力値として取得する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の筆記判定システム。
【請求項7】
前記取得部は、前記筆記具に生じる把持圧値を前記対象圧力値として取得する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の筆記判定システム。
【請求項8】
前記算出部は、前記複数の対象圧力値の平均値を前記対象統計値として算出する、
請求項1~7のいずれか一項に記載の筆記判定システム。
【請求項9】
プロセッサを備える筆記判定システムにより実行される筆記判定方法であって、
所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得するステップと、
前記複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出するステップと、
前記対象統計値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、
前記対象統計値が前記閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力するステップと、
を含む筆記判定方法。
【請求項10】
所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得するステップと、
前記複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出するステップと、
前記対象統計値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、
前記対象統計値が前記閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力するステップと、
をコンピュータに実行させる筆記判定プログラム。
【請求項11】
所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、
前記複数の対象圧力値を用いて算出された対象統計値が閾値を超えたと判定部によって判定された場合に、該判定の結果に応じた情報を出力する出力部と、
を備える筆記具。
【請求項12】
筆記具に生じる対象圧力値を取得する取得部と、
前記対象圧力値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前回の出力から所定時間を経過している場合に、前記判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、
を備える筆記判定システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は筆記判定システム、筆記判定方法、筆記判定プログラムおよび筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
筆記者に好適な筆記動作をさせるための仕組みが知られている。例えば特許文献1には、筆記者の筆記動作を測定する筆記動作測定システムが記載されている。この筆記動作測定システムは、筆記動作に関する所定の検出値を含む筆記情報を取得する取得部と、所定の検出値に関しての目標値を含む目標情報を記憶している目標情報記憶部と、筆記情報と目標情報とを比較する比較部と、比較部における比較結果を示す結果情報を出力する出力部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6630707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
好適な筆記動作を筆記者に適切に促す手法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る筆記判定システムは、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出する算出部と、対象統計値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、対象統計値が閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、を備える。
【0006】
このような側面においては、筆記具に生じる対象圧力値の統計値(対象統計値)が閾値を超えた場合に、フィードバック情報が出力される。瞬間的な圧力ではなく、ある時間幅における圧力の統計値に基づいてフィードバック情報が出力されるので、短時間のうちに大きな圧力が筆記具に繰り返し加えられた場合であっても、フィードバック情報の頻繁な出力が生じづらい。これにより、好適な筆記動作を筆記者に適切に促すことができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、好適な筆記動作を筆記者に適切に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る筆記判定システムの適用の一例を示す図である。
図2】第1実施形態に係る筆記判定システムに関連するハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る筆記具の構成の一例を示す模式図である。
図4】第1実施形態に係る筆記判定システムに関連する機能構成の一例を示す図である。
図5】第1実施形態に係る筆記判定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る筆記判定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る筆記判定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図8】対象圧力値および対象統計値の変動の一例を示すグラフである。
図9】第2実施形態に係る筆記判定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、添付図面を参照しながら本開示での第1実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
[システムの概要]
第1実施形態に係る筆記判定システムは、筆記具に生じる複数の圧力値の統計値が閾値を超えたか否かを判定し、判定の結果に基づくフィードバック情報を筆記者に向けて出力することによって該筆記者に好適な筆記動作を促すシステムである。筆記具とは、文字、記号およびイラストなどの筆記に使用される道具のことをいう。筆記具は、例えばボールペン、万年筆、マーカーおよびシャープペンシルといったインクまたは黒鉛を用いて筆記できるペンであってもよいし、スタイラスペンといったポインティングデバイスであってもよい。筆記者とは、筆記具を用いて筆記を行う者のことをいう。
【0011】
筆記具に生じる圧力値とは、筆記者が筆記具を使用した際に該筆記具にかかる圧力の大きさを示す数値のことをいう。筆記判定システムは、所定の時間幅において筆記具に生じる圧力値を連続的にまたは離散的に取得する。筆記具にかかる圧力は例えば、筆記具を紙などの媒体に押し付けることにより生じる筆圧でもよいし、筆記具を筆記者が把持することにより生じる把持圧でもよい。本開示においては、筆記判定システムは筆圧の大きさを筆記具に生じる圧力値として取得する。筆記判定システムは、筆記具に生じる圧力値を検出する圧力センサ、または、筆記具に生じる荷重値を検出する荷重センサを用いて圧力値を取得してもよい。荷重センサを用いる場合、筆記判定システムは検出した荷重値を、荷重が生じる面積の大きさで割ることにより圧力値を取得してもよい。例えば筆記判定システムは、ペン先に生じる荷重値を荷重センサによって検出し、検出した荷重値をペン先の面積で割ることにより圧力値を取得してもよい。
【0012】
筆記判定システムは、取得した複数の圧力値の統計値を算出し、予め設定された閾値を該統計値が超えているか否かを判定する。ここで圧力値の統計値とは、複数の圧力値を統計処理することにより算出される値のことをいう。判定の基準となる閾値は、例えば筆記判定システム、または筆記判定システムの提供者もしくは筆記者により予め設定されてもよい。
【0013】
筆記判定システムは、算出した統計値が閾値を超えたか否かの判定を行い、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する。フィードバック情報とは、筆記具に生じた圧力に関する情報である。例えば、筆記者が筆記具を強く押さえつけるように筆記を行い、筆記具に生じた圧力値の統計値が閾値を超えた場合には、筆記判定システムは、筆記具に生じた圧力値の統計値が閾値を超えたことを示すフィードバック情報を出力してもよい。一例では、フィードバック情報の出力は、そのフィードバック情報を筆記者に報知する処理に関連する。筆記判定システムは、フィードバック情報を筆記者に認識させることにより、適切な筆記動作を筆記者に促す。例えば、筆記具に生じた圧力値の統計値が閾値を超えたことを示すフィードバック情報が報知された場合、フィードバック情報を認識した筆記者は筆記具を押さえる力を弱めるなどして筆圧を低下させるという好適な筆記動作をとることが可能となる。
【0014】
本開示に係る筆記具の利用目的および利用場面は限定されない。本実施形態では筆記具は、筆記を伴う学習の場面において利用される。筆記を伴う学習は、例えば保育園、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院、専門学校、予備校およびオンライン学校などの各種の学校、または自宅において行われる学習であってもよいし、学校または自宅以外の場所または場面において行われる学習であってもよい。筆記具は、学習の場面に限らず、イラストまたは図表の作成の場面において利用されてもよい。本開示に係る筆記判定システムは、上述した場面に限られず、筆記具を利用する種々の場面に適用可能である。
【0015】
[システムの構成]
図1は、第1実施形態に係る筆記判定システム1の適用の一例を示す図である。本実施形態では、筆記判定システム1は、筆記者端末10、筆記具20およびデータベース30を備える。筆記者端末10は、筆記者によって用いられるコンピュータである。筆記者端末10の種類は限定されず、例えば高機能携帯電話機(スマートフォン)、タブレット端末、ウェアラブル端末(例えば、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、スマートグラス、またはスマートウォッチ)、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、携帯電話機などの携帯端末でもよい。あるいは、筆記者端末10はデスクトップ型パーソナルコンピュータなどの据置型端末でもよい。筆記者端末10は、通信ネットワークNを介してデータベース30と接続されている。通信ネットワークNの構成は限定されない。通信ネットワークNは、例えばインターネットを含んで構成されてもよいし、イントラネットを含んで構成されてもよい。
【0016】
筆記具20は、近距離無線通信により筆記者端末10と接続されている。近距離無線通信の構成は限定されない。近距離無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)などの通信方式であってもよい。本実施形態においては、一つの筆記具20が筆記者端末10と通信を行うが、筆記具20の個数は限定されない。例えば、二つ以上の筆記具20が一つの筆記者端末10と通信を行ってもよい。
【0017】
データベース30は、筆記判定システム1によって用いられる各種のデータを記憶する非一時的な記憶装置である。本実施形態では、データベース30は、後述する閾値データ、参照圧力値データ、参照統計値データ、対象圧力値データ、対象統計値データおよび累積時間データを記憶する。一例では、データベース30は複数の筆記者についてのそれらのデータを記憶する。データベース30は単一のデータベースとして構築されてもよいし、複数のデータベースの集合であってもよい。
【0018】
図2は、筆記判定システム1に関連するハードウェア構成の一例を示す図である。図2は、筆記者端末10として機能する端末コンピュータ100を示す。
【0019】
一例として、端末コンピュータ100はハードウェア構成要素として、プロセッサ101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、入力インタフェース105および出力インタフェース106を備える。
【0020】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサ101は例えばCPUまたはGPUであり得るが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。
【0021】
主記憶部102は、筆記者端末10を実現させるためのプログラム、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶部102は、例えばROMおよびRAMのうちの少なくとも一つにより構成される。
【0022】
補助記憶部103は、一般に主記憶部102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶部103は、例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶部103は、端末コンピュータ100を筆記者端末10として機能させるためのクライアントプログラムP1と各種のデータとを記憶する。
【0023】
通信部104は、通信ネットワークNを介して他のコンピュータとの間でデータ通信を実行する装置である。通信部104は、例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0024】
入力インタフェース105は、ユーザの操作または動作に基づいてデータを受け付ける装置である。例えば、入力インタフェース105は、キーボード、操作ボタン、ポインティングデバイス、マイクロフォン、センサ、およびカメラのうちの少なくとも一つによって構成される。キーボードおよび操作ボタンはタッチパネル上に表示されてもよい。入力インタフェース105の種類が限定されないことに対応して、入力されるデータは限定されない。例えば、入力インタフェース105はキーボード、操作ボタン、またはポインティングデバイスによって入力または選択されたデータを受け付けてもよい。あるいは、入力インタフェース105は、マイクロフォンにより入力された音声データを受け付けてもよい。あるいは、入力インタフェース105はカメラによって撮影された画像データ(例えば、映像データまたは静止画データ)を受け付けてもよい。
【0025】
出力インタフェース106は、端末コンピュータ100で処理されたデータを出力する装置である。例えば、出力インタフェース106はモニタ、タッチパネル、HMDおよびスピーカのうちの少なくとも一つによって構成される。モニタ、タッチパネル、HMDなどの表示装置は、処理されたデータを画面上に表示する。スピーカは、処理された音声データで示される音声を出力する。
【0026】
筆記者端末10の各機能要素は、筆記判定プログラムの一例であるクライアントプログラムP1をプロセッサ101または主記憶部102に読み込ませて、プロセッサ101にそのプログラムを実行させることで実現される。クライアントプログラムP1は、筆記者端末10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101は、クライアントプログラムP1に従って通信部104、入力インタフェース105または出力インタフェース106を動作させ、主記憶部102または補助記憶部103におけるデータの読み出しおよび書き込みを行う。この処理により筆記者端末10の各機能要素が実現される。
【0027】
クライアントプログラムP1は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に非一時的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、クライアントプログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0028】
図3は、筆記具20の構成の一例を示す模式図である。図3は、筆記具20を軸A方向に沿う面において切断した際の断面を示している。本実施形態においては、筆記具20がボールペンであるとする。図3に示すように、筆記具20は、筒部201、リフィル204、センサ207、基板208およびライト209を有する。
【0029】
筒部201は、筆記具20の軸A方向に沿って延びる略円筒状の部材である。リフィル204は、内部にインクが充填された略円筒状の部材である。リフィル204は、筒部201の内径よりも小さい外径を有しており筒部201に収容可能となっている。リフィル204が筒部201に収容された状態では、リフィル204の先端部205は筒部201の一端に設けられた開口202から露出する。筆記者が筒部201を把持し、リフィル204の先端部205を媒体に押し当てることにより、リフィル204内部のインクが先端部205からにじみ出る。筆記者は媒体に先端部205を押し当てたまま筆記具20を動かすことで筆記を行うことができる。
【0030】
軸A方向において先端部205とは反対に位置するリフィル204の基端部206側には、センサ207が設けられている。センサ207は、筆記具20に生じる筆圧を検出する圧力センサである。本実施形態においてセンサ207は、筆記の際に先端部205から基端部206へと伝達される圧力を筆圧として検出する。センサ207は、例えばリフィル204の基端部206と対向する検出面を有してもよい。センサ207は、筆記の際に基端部206によって検出面が押されることにより筆圧を検出してもよい。
【0031】
基板208は、筒部201の内部に収容されるフレキシブル基板である。基板208には、センサ207によって検出される筆圧に関するデータなどを処理するプロセッサ(不図示)、および筆記者端末10と近距離無線通信を行うための通信部(不図示)が搭載されている。
【0032】
ライト209は光を発する部品である。本実施形態において筆記判定システム1は、ライト209を点灯することによりフィードバック情報を筆記者に報知する。例えば、筆記判定システム1は、筆記具20に生じる圧力値の統計値が閾値を超えた場合にライト209を点灯してもよい。ライト209は、例えばLED(Light Emitting Diode)などの発光素子を用いて構成されてもよい。本実施形態においては、筆記具20の端部にライト209が設けられているが、ライト209が設けられる位置は限定されない。
【0033】
図4は、筆記判定システム1に関連する機能構成の一例を示す図である。筆記者端末10は、機能要素として算出部11、判定部12、フィードバック部13、計測部14および通信部15を備える。算出部11は、筆記具20によって取得された複数の圧力値の統計値を算出する機能要素である。判定部12は、算出部11によって算出された統計値が閾値を超えているか否かといった各種の判定処理を行う機能要素である。フィードバック部13は、判定部12による判定の結果に基づいてフィードバック情報を生成する機能要素である。計測部14は、時間を計測する機能要素である。通信部15は、筆記具20との間およびデータベース30との間において、各種のデータまたは情報の送受信を行う機能要素である。本実施形態では、通信部15はフィードバック情報を筆記具20に送信(出力)して、筆記具20にフィードバック情報を報知させる。したがって、通信部15は出力部として機能する。
【0034】
筆記具20は、機能要素として取得部21、報知部22および通信部23を備える。取得部21は、センサ207を用いて筆記具20に生じる圧力値を取得する機能要素である。報知部22は、フィードバック情報を報知する機能要素である。通信部23は、筆記者端末10との間において、各種のデータまたは情報の送受信を行う機能要素である。
【0035】
[システムの動作]
図5は、筆記判定システム1の動作を処理フローS1として示すフローチャートである。図5を参照して、筆記判定システム1による処理の全体像を説明する。筆記判定システム1による処理は、閾値を設定する閾値設定処理(ステップS11)と、フィードバック情報を報知するか否かを判定する判定処理(ステップS12)と、フィードバック情報を報知する報知処理(ステップS13)とに大別される。判定処理は、閾値設定処理が終了した後にある程度の時間間隔をあけて実行されてもよいし(すなわち、連続して実行されなくてもよいし)、閾値設定処理後に連続して実行されてもよい。報知処理は、判定処理終了後に連続して実行されるのが通常であるが、必ずしも判定処理後に連続して実行されなくてもよい。
【0036】
ステップS11では、筆記判定システム1が後の判定処理において用いる閾値を設定する。設定された閾値は、判定処理において対象統計値との比較に使用される。具体的には、まず取得部21が筆記具20に生じる複数の圧力値をセンサ207によって取得する。その後、算出部11が複数の圧力値の統計値を算出し、該統計値を閾値として設定する。ここで閾値として設定される統計値を参照統計値といい、参照統計値の算出に用いられる圧力値を参照圧力値という。参照圧力値が取得部21によって取得される期間を準備期間という。準備期間は、筆記者が好適な筆記動作を行いやすい状況下で設定されてもよく、例えば、筆記具20に過度な筆圧が生じにくい学習以外の場面で設定されてもよい。閾値設定処理の詳細については、図6を参照して後述する。
【0037】
ステップS12では、筆記判定システム1がフィードバック情報を報知するか否かを判定する。具体的には、まず取得部21が筆記具20に生じる複数の圧力値をセンサ207によって取得する。その後、算出部11が複数の圧力値の統計値を算出し、判定部12が該統計値に基づいてフィードバック情報を報知するか否かを判定する。フィードバック情報を報知するか否かの判定に使用される統計値を対象統計値といい、対象統計値の算出に用いられる圧力値を対象圧力値という。対象圧力値が取得部21によって取得される期間を判定期間という。判定期間は、一般的に筆記者が好適な筆記動作を行いづらいとされる状況下で設定されてもよく、例えば、筆記具20に過度な筆圧が生じやすいとされる学習の場面で設定されてもよい。
【0038】
判定部12は、上述したように対象統計値に基づいてフィードバック情報を出力するか否かを判定する。例えば判定部12は、対象統計値が閾値を超えた場合にフィードバック情報を出力すると判定してもよいし、対象統計値が閾値を超えている時間の累積時間(以下、単に累積時間という)が基準時間以上になった場合にフィードバック情報を出力すると判定してもよい。判定処理の詳細については、図7を参照して後述する。
【0039】
ステップS13では、筆記判定システム1がステップS12における判定処理の結果に基づいてフィードバック情報を出力する。具体的には、判定部12がステップS12においてフィードバック情報を出力すると判定した場合に、フィードバック部13がフィードバック情報を生成し、そのフィードバック情報を通信部15が筆記具20に送信する。その後、報知部22がそのフィードバック情報を報知する。例えば、報知部22は、累積時間が基準時間以上となったことを示すフィードバック情報を、ライト209を点灯させることにより報知してもよい。報知部22は、フィードバック情報の内容によって報知の態様を変更してもよい。例えば、累積時間が基準時間を僅かに超えた場合と、大幅に超えた場合とでライト209の点灯色または光度を変更してもよい。筆記具20が他の報知手段(例えばスピーカ、ディスプレイまたはバイブレータ)を備える場合には、報知部22はこれらの報知手段に対応する方法(例えば音声の出力、文字列の表示または振動の発生)によってフィードバック情報を報知してもよい。
【0040】
図6は、筆記判定システム1(より具体的には筆記者端末10)が行う閾値設定処理を処理フローS2として示すフローチャートである。図6を参照して閾値設定処理について説明する。図6に示す閾値設定処理は、図5におけるステップS11の処理をより具体化したものである。
【0041】
ステップS21では、筆記者端末10の通信部15が参照圧力値を筆記具20の通信部23から受信する。通信部15によって受信される参照圧力値は、取得部21によって取得される。ここで、ステップS21の前提となる参照圧力値の取得方法の一例を説明する。取得部21は、準備期間において筆記具20に生じる圧力値を参照圧力値としてセンサ207により取得する。準備期間は、筆記者による筆記者端末10または筆記具20への所定の操作をトリガとして開始されてもよい。取得部21は、準備期間において所定の時間間隔(例えば0.01秒間隔)ごとに参照圧力値を取得してもよいし、連続して参照圧力値を取得してもよい。
【0042】
取得部21によって取得された参照圧力値は、筆記具20の通信部23によって筆記者端末10の通信部15に送信される。通信部23は、取得部21によって参照圧力値の取得が行われるごとに参照圧力値を通信部15に送信してもよいし、所定の時間間隔(例えば0.1秒間隔)ごとに複数の参照圧力値をまとめて通信部15に送信してもよい。通信部15は、受信した参照圧力値を参照圧力値データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などのような記憶装置に格納する。
【0043】
ステップS22では、算出部11が複数の参照圧力値に基づいて参照統計値を算出する。具体的には、算出部11は記憶装置から参照圧力値データを読み出し、複数の参照圧力値に対して統計処理を行うことにより参照統計値を算出する。算出部11は、例えば複数の参照圧力値の平均値、中央値または最頻値を参照統計値として算出してもよい。平均値は、例えば複数の参照圧力値の算術平均値または加重平均値であってもよい。参照統計値は、参照圧力値の移動平均値に基づいて算出されてもよい。移動平均値は、例えば単純移動平均値、加重移動平均値および指数移動平均値であってもよい。
【0044】
ここで、参照圧力値の移動平均値を算出する方法について説明する。まず算出部11は、取得部21によって取得された複数の参照圧力値のうち、所定の時間幅を有する期間(以下、注目期間という)において取得された複数の参照圧力値の平均値を算出する。このとき、算出部11は注目期間における複数の参照圧力値のうち下限値(例えば0gf/mm)を超える参照圧力値のみを用いて平均値を算出してもよい。1gf/mmは、0.00980665N/mmとして換算される。注目期間の時間幅および下限値は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定可能であってもよい。
【0045】
その後、算出部11は、時間幅の大きさを保ったまま注目期間の始点および終点の位置をシフトさせ(すなわち注目期間の時間をずらし)、シフト後の注目期間において取得された複数の参照圧力値の平均値を算出する。このとき、算出部11は例えば取得部21が参照圧力値を取得する時間間隔(例えば0.01秒)だけ注目期間をシフトさせてもよい。算出部11は、注目期間の時間的なシフトと、シフト後の注目期間において取得された参照圧力値の平均値の算出とを繰り返し、複数の平均値を算出する。このように注目期間をシフトさせつつ算出される各平均値を移動平均値という。算出部11は、算出した複数の移動平均値を更に統計処理することにより参照統計値を算出してもよい。算出部11は、参照統計値を参照統計値データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などの記憶装置に格納する。
【0046】
ステップS23では、算出部11が算出した参照統計値を閾値として設定する。具体的には、算出部11はステップS22において算出した参照統計値を閾値データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などの記憶装置に格納する。本開示においては、筆記判定システム1が参照圧力値に基づいて閾値を設定するが、筆記判定システム1の提供者または筆記者が閾値を設定する場合には、上述した閾値設定処理は省略されてもよい。
【0047】
図7は、筆記判定システム1(より具体的には筆記者端末10)が行う判定処理を処理フローS3として示すフローチャートである。図7を参照して判定処理について説明する。図7に示す判定処理は、図5におけるステップS12の処理をより具体化したものである。
【0048】
ステップS31では、筆記者端末10の通信部15が対象圧力値を筆記具20の通信部23から受信する。通信部15によって受信される対象圧力値は、取得部21によって取得される。ここで、ステップS31の前提となる対象圧力値の取得方法の一例を説明する。取得部21は、判定期間において筆記具20に生じる圧力値を対象圧力値としてセンサ207により取得する。判定期間は、筆記者による筆記者端末10または筆記具20への所定の操作をトリガとして開始されてもよい。取得部21は、判定期間において例えば所定の時間間隔で対象圧力値を取得してもよいし、連続して対象圧力値を取得してもよい。以下本実施形態においては、取得部21は0.01秒間隔で対象圧力値を取得する。
【0049】
筆記具20の通信部23は、取得部21が取得した対象圧力値を筆記者端末10の通信部15に送信する。通信部23は、取得部21によって対象圧力値の取得が行われるごとに対象圧力値を通信部15に送信してもよいし、所定の時間間隔(例えば0.1秒間隔)ごとに複数の対象圧力値をまとめて通信部15に送信してもよい。通信部15は、受信した対象圧力値を対象圧力値データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などの記憶装置に格納する。
【0050】
ステップS32では、算出部11が複数の対象圧力値に基づいて対象統計値を算出する。具体的には、算出部11は記憶装置から対象圧力値データを読み出し、複数の対象圧力値に対して統計処理を行うことにより対象統計値を算出する。算出部11は、例えば複数の対象圧力値の平均値、中央値または最頻値を対象統計値として算出してもよい。平均値は、例えば複数の対象圧力値の算術平均値または加重平均値であってもよい。対象統計値は、対象圧力値の移動平均値であってもよい。移動平均値は、例えば単純移動平均値、加重移動平均値および指数移動平均値であってもよい。
【0051】
対象圧力値の移動平均値の算出方法は、上述した参照圧力値の移動平均値の算出方法と同様でもよい。すなわち、算出部11は、所定の時間幅を有する注目期間を定め該注目期間において取得された複数の対象圧力値の平均値を算出する処理と、注目期間を時間的にシフトする処理とを繰り返すことにより、対象圧力値について複数の移動平均値を算出してもよい。注目期間の時間幅は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定可能であってもよい。対象圧力値の移動平均値を算出する場合と参照圧力値の移動平均値を算出する場合とでは、注目期間の時間幅および注目期間をシフトさせる量が異なっていてもよい。
【0052】
以下本実施形態においては、算出部11は対象圧力値の移動平均値を対象統計値として算出する。具体的にはステップS32において、算出部11が注目期間を定め、該注目期間において取得された複数の対象圧力値の平均値を対象統計値として算出する。本実施形態において算出部11は、注目期間において取得された複数の対象圧力値のデータ数が50となるように注目期間の時間幅を設定する。すなわち、算出部11は50個の対象圧力値の平均値を移動平均値として算出する。このとき、算出部11は注目期間の終点を、最新の対象圧力値が取得部21によって取得された時点に設定してもよい。
【0053】
算出部11は、注目期間における複数の対象圧力値のうち算出下限値を超える対象圧力値のみを用いて平均値を算出してもよい。算出下限値は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定可能であってもよく、例えば0gf/mmに設定されてもよい。対象統計値の算出に実際に用いられる対象圧力値の数を有効データ数という。例えば、注目期間における対象圧力値の全データ数が50であり、そのうち算出下限値を超える対象圧力値のデータ数が30であるとする。この場合、対象統計値は算出下限値を超える30個の対象圧力値のみを用いて算出され、有効データ数は30となる。
【0054】
本実施形態においては、算出下限値は0gf/mmに設定され、算出部11は0gf/mmを超える対象圧力値のみを用いて対象統計値を算出する。通常、筆記者による筆記が行われていない状態では筆記具20に筆圧が生じない。そのため、ある対象圧力値の大きさが0gf/mmである場合、該対象圧力値は筆記者による筆記が行われていないときに取得された対象圧力値であると推認される。したがって、算出下限値を0gf/mmに設定することにより、対象統計値の算出に使用される複数の対象圧力値から、筆記が行われていないときに取得された対象圧力値を除外することが可能となる。換言すると、筆記者による筆記が行われているときに取得された対象圧力値のみを用いて算出部11が対象統計値の算出を行うことができる。
【0055】
算出部11は、算出した対象統計値を対象統計値データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などの記憶装置に格納する。筆記者端末10が表示装置を備える場合には、表示装置は算出部11により算出された対象統計値をリアルタイムに表示してもよい。このとき表示装置は、対象統計値の閾値を併せて表示してもよい。
【0056】
ステップS33では、対象統計値が閾値を超えているか否かを判定部12が判定する。具体的には、判定部12は記憶装置から対象統計値データおよび閾値データを読み出し、対象統計値と閾値とを比較することにより判定を行う。例えば、閾値が80gf/mm(約0.78N/mm)に設定されており、算出部11が算出した対象統計値が50gf/mm(約0.49N/mm)である場合には、判定部12は対象統計値が閾値を超えていないと判定する。一方、閾値が80gf/mmに設定されており、算出部11が算出した対象統計値が100gf/mm(約0.98N/mm)である場合には、判定部12は対象統計値が閾値を超えていると判定する。
【0057】
対象統計値が閾値を超えていないと判定部12が判定した場合には処理はステップS31に戻る。再度実行されるステップS31の処理においては、取得部21によって新たに取得された対象圧力値(以下、追加対象圧力値という)を通信部15が受信する。その後、ステップS32の処理に進み、算出部11が追加対象圧力値を考慮して対象統計値を算出する。具体的には、追加対象圧力値が取得された時点が注目期間に含まれるように、算出部11が注目期間をシフトさせる。本実施形態においては、取得部21が対象圧力値を取得する時間間隔が0.01秒であるので、算出部11は注目期間を0.01秒だけシフトする。算出部11は、シフト後の注目期間における複数の対象圧力値(追加圧力値を含む複数の圧力値)を統計処理し新たに対象統計値(移動平均値)を算出する。一方、対象統計値が閾値を超えていると判定部12が判定した場合には処理はステップS34に移る。
【0058】
ステップS34では、対象統計値が閾値を超えた累積時間が基準時間以上であるか否かを判定部12が判定する。累積時間とは、対象統計値が閾値を超えている時間の合計値である。ここで累積時間の計測方法の一例について説明する。
【0059】
まず前提として、図7の処理フローS3によって示す判定処理は、取得部21による対象圧力値の取得とともに繰り返し実行される処理である。すなわち、処理フローS3に含まれるステップS33の処理(対象統計値が閾値を超えているか否かを判定する処理)も同様に繰り返し実行される。計測部14は、ある判定処理のステップS33において対象統計値が閾値を超えていると判定された場合、該判定時からの経過時間の計測を開始する。計測部14は、その後に実行されるいずれかの判定処理のステップS33において対象統計値が閾値を超えていないと判定されるまで経過時間の計測を続ける。計測部14は、上記経過時間の計測を繰り返すことにより、対象統計値が閾値を超えている時間の合計値(すなわち累積時間)を算出する。計測部14は、算出した累積時間を累積時間データとして、主記憶部102、補助記憶部103、データベース30などの記憶装置に格納する。計測部14は、対象統計値が閾値を超えていないと判定部12によって判定された場合、または対象統計値が閾値を超えていないと判定された時間が所定の時間以上継続した場合に累積時間をリセット(すなわち累積時間をゼロに)してもよい。本実施形態においては、対象統計値が閾値を超えていないと判定部12によって判定された時点において、計測部14が累積時間をリセットする。
【0060】
次に、ステップS34の前提となる基準時間の設定方法の一例について説明する。基準時間は、例えば準備期間などにおいて筆記判定システム1によって予め設定されてもよい。具体的には、まず算出部11が取得部21によって取得された複数の参照圧力値の最大値を特定する。次に算出部11が複数の参照圧力値の平均値を算出し、特定した上記最大値に対する平均値の比率を算出する。算出部11は、算出した比率が高いほど(すなわち平均値が大きいほど)基準時間を短く設定し、その比率が小さいほど基準時間を長く設定してもよい。基準時間は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定されてもよい。
【0061】
累積時間が基準時間以上でないと判定部12が判定した場合には処理はステップS31に戻る。ステップS31の処理に戻る場合には上述したように、取得部21によって新たに取得された追加対象圧力値を考慮して新たに対象統計値の算出が行われる。一方、累積時間が基準時間以上であると判定部12が判定した場合には処理はステップS35に移る。
【0062】
ステップS35では、基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上であるか否かを判定部12が判定する。ここで基準対象統計値とは、累積時間が基準時間以上であると判定された時点における対象統計値のことをいう。上述したように、有効データ数とは対象統計値の算出に用いられた対象圧力値のデータ数である。したがって、基準対象統計値の有効データ数とは、基準対象統計値の算出に用いられた対象圧力値のデータ数である。基準最小データ数は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定されてもよい。例えば、基準最小データ数が40に設定されており基準対象統計値の有効データ数が30である場合には、判定部12は基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上でないと判定する。一方、基準最小データ数が40に設定されており基準対象統計値の有効データ数が50である場合には、判定部12は基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上であると判定する。
【0063】
基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上でないと判定部12が判定した場合には処理はステップS31に戻る。ステップS31の処理に戻る場合には上述したように、取得部21によって新たに取得された追加対象圧力値を考慮して新たに対象統計値の算出が行われる。一方、基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上であると判定部12が判定した場合には処理はステップS36に移る。
【0064】
ステップS36では、累積データ数が累積最小データ数以上であるか否かを判定部12が判定する。ここで累積データ数とは、累積時間の間に取得部21によって取得された全ての対象圧力値のうち、算出下限値を超える対象圧力値のデータ数のことをいう。本実施形態においては、算出下限値は0gf/mmに設定されている。この場合、例えば累積時間の間に取得された全ての対象圧力値のデータ数が100であり、そのうち算出下限値を超えない(すなわち0gf/mm)の対象圧力値のデータ数が40であった場合、累積データ数は60となる。累積データ数の算出方法は限定されない。
【0065】
累積最小データ数は、筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定されてもよい。例えば、累積最小データ数が40に設定されており累積データ数が35である場合には、判定部12は累積データ数が累積最小データ数以上でないと判定する。一方、累積最小データ数が40に設定されており累積データ数が80である場合には、判定部12は累積データ数が累積最小データ数以上であると判定する。
【0066】
累積データ数が累積最小データ数以上でないと判定部12が判定した場合には処理はステップS31に戻る。ステップS31の処理に戻る場合には上述したように、取得部21によって新たに取得された追加対象圧力値を考慮して新たに対象統計値の算出が行われる。一方、累積データ数が累積最小データ数以上であると判定部12が判定した場合には処理はステップS36に移る。
【0067】
ステップS37では、出力タイミングにおける対象圧力値が出力下限値を超えているか否かを判定部12が判定する。出力タイミングは、累積時間が基準時間以上であると判定部12によって判定された時点以降の時点に設定されるタイミングである。一例では、出力タイミングは、筆記者に向けてフィードバック情報を報知するタイミング(これを「報知タイミング」ともいう)に対応する。出力タイミングにおいて、筆記者が筆記具20による筆記を行っているか否かの推定(以下、筆記推定という)が行われる。筆記推定は、対象圧力値が出力下限値を超えているか否かの判定結果に基づいて行われる。具体的には、出力タイミングにおける対象圧力値が出力下限値を超えていると判定された場合には、該出力タイミングにおいて筆記が行われていると推定される。すなわち、出力下限値は、筆記者が筆記を行う際に通常生じる圧力値に基づいて設定される。出力下限値は、例えば0gf/mmに設定されてもよい。筆記判定システム1は、出力タイミングにおいて筆記者が筆記具20を用いた筆記を行っていると推定された場合(すなわち、出力タイミングにおける対象圧力値が出力下限値を超えていると判定された場合)にフィードバック情報を報知する。例えば累積時間が基準時間以上であると判定部12によって判定された時点が、出力タイミングとして設定されてもよい。
【0068】
ここで出力タイミングにおいて筆記推定を行う意義について説明する。ステップS34において累積時間が基準時間以上であると判定された場合であっても、該判定の時点において筆記者が筆記を行っていない場合がある。累積時間が基準時間以上であると判定されたことのみをもってフィードバック情報が報知されると、筆記者が筆記を行っていないにも関わらずフィードバック情報が報知されてしまうおそれがある。そこで、出力タイミングにおいて筆記推定を行い、筆記が行われていると推定された場合にフィードバック情報を報知することで、筆記が行われていない時点においてフィードバック情報が報知されることを防止できる。
【0069】
出力タイミングにおける対象圧力値が出力下限値を超えていないと判定部12が判定した場合には処理はステップS31に戻る。ステップS31の処理に戻る場合には上述したように、取得部21によって新たに取得された追加対象圧力値を考慮して新たに対象統計値の算出が行われる。一方、出力タイミングにおける対象圧力値が出力下限値を超えていると判定部12が判定した場合には処理はステップS38に移る。
【0070】
ステップS38では、フィードバック部13がフィードバック情報を生成し、筆記者端末10の通信部15が筆記具20の通信部23へ該フィードバック情報を送信する。フィードバック情報には、報知部22にライト209を点灯させるための指示情報が含まれてもよい。指示情報は、例えばライト209の点灯時間、点灯色または光度に関する情報であってもよい。報知部22がライト209以外の報知手段(例えばスピーカなど)によってフィードバック情報を報知する場合には、フィードバック情報は報知手段に適した指示情報(例えば音量に関する情報)を含んでもよい。報知部22は、通信部23からフィードバック情報を受け取り、該フィードバック情報を報知する。本実施形態においてはフィードバック情報に含まれる指示情報に基づいて報知部22がライト209を点灯させる。
【0071】
図7を参照して説明した処理フローS3のうち特にステップS33からステップS37までの処理については、その順序が適宜変更されてもよい。例えば出力タイミングにおいける対象圧力値が出力下限値を超えているか否かの判定処理(ステップS37)は、基準対象統計値の有効データ数が基準最小データ数以上であるか否かの判定処理(ステップS35)よりも前に実行されてもよい。ステップS33からステップS37までの処理のうち少なくともいずれか一つは省略されてもよい。例えば、ステップS34からステップS37までの処理が省略される場合には、ステップS33において対象統計値が閾値を超えていると判定されると、フィードバック情報を送信するステップS38の処理に移る。
【0072】
処理フローS3においては、判定部12による他の判定処理が適宜追加されてもよい。例えば、筆記判定システム1によるフィードバック情報の出力(報知)が繰り返されている場合、判定部12は前回のフィードバック情報の出力から所定時間を経過しているか否かを判定してもよい。判定部12によって所定時間を経過していないと判定された場合には、報知部22はフィードバック情報の報知を行わなくてもよい。他の例として、判定部12は所定時間におけるフィードバック情報の出力回数が所定回数を超えているか否かを判定してもよい。出力回数が所定回数を超えていると判定された場合には、報知部22はフィードバック情報の報知を行わなくてもよい。
【0073】
図8は、対象圧力値および対象統計値の変動の一例を示すグラフである。図8を参照して報知部22がフィードバック情報の報知を行う場合、およびフィードバック情報の報知を行わない場合の具体例について説明する。以下説明を行う例では、図7を参照して上述したステップS33からステップS37の全ての判定条件を満たした場合に、フィードバック情報の報知が行われるとする。図8において、横軸は時間(単位:秒)を示し、縦軸は筆圧(単位:gf/mm)を示している。
【0074】
図8において破線によって示すグラフは、取得部21によって取得された対象圧力値の一例を示している。図8に示す例では、取得部21は時刻0秒の時点から0.01秒間隔で対象圧力値を取得する。すなわち、取得部21によって1秒間に取得される対象圧力値のデータ数は100である。また実線によって示すグラフは、算出部11によって算出された対象統計値の変動を示している。算出部11は、時刻0.5秒の時点から複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出する。算出部11は、取得部21によって取得された複数の対象圧力値のうち直近に取得された50個の対象圧力値の移動平均値を対象統計値として算出する。すなわち、算出部11は注目期間を0.5秒に設定し、該注目期間に含まれる対象圧力値の平均値を算出する。算出下限値は0gf/mmに設定されている。したがって、算出部11は注目期間における全ての対象圧力値を用いるのではなく、0gf/mmを超える対象圧力値のみを用いて対象統計値の算出を行う。
【0075】
対象統計値の閾値は80gf/mmに設定され、図8においては一点鎖線の横線により示されている。また計測部14は、対象統計値が閾値を超えている時間を累積時間として計測するが、対象統計値が閾値を下回った時点で累積時間をリセットする。基準時間は0.9秒に設定されている。出力タイミングは累積時間が基準時間となった時点(すなわち累積時間が0.9秒となった時点)に設定されている。出力下限値は、0gf/mmに設定されている。基準最小データ数および累積最小データ数は、ともに40に設定されている。
【0076】
まず、時刻t1からt2までの期間、時刻t3からt4までの期間、時刻t5からt6までの期間、および時刻t9からt10までの期間においてフィードバック情報が報知されるか否かを検討する。これらの期間においては対象統計値が閾値(80gf/mm)を超えた状態が継続しているので、いずれの時点においても図7に示すステップS33の条件を満たす。しかしながら、累積時間が基準時間(0.9秒)に到達する前に対象統計値が閾値を下回るので、ステップS34の条件を満たさない。したがって、これらの期間においてフィードバック情報は報知されない。
【0077】
次に、時刻t7からt8までの期間においてフィードバック情報が報知されるか否かを検討する。時刻t7からt8までの期間は1.01秒であり、時刻t7から0.9秒経過した時点を時刻T1とする。時刻t7からt8までの期間においては対象統計値が閾値を超えた状態が継続しているので、いずれの時点においてもステップS33の条件を満たす。計測部14は対象統計値が閾値を下回った時点で累積時間をリセットするので、時刻T1における累積時間は時刻t7からの経過時間(0.9秒)である。したがって、時刻T1において累積時間が基準時間以上となりステップS34の条件を満たす。基準対象統計値(時刻T1における対象統計値)の有効データ数は基準最小データ数以上であるとする。そのため、ステップS35の条件を満たす。時刻t7からT1までの累積データ数は48とする。そのため、時刻T1において累積データ数が累積最小データ数以上となり、ステップS35の条件を満たす。しかしながら、出力タイミング(累積時間が基準時間となる時刻T1)における対象圧力値が0gf/mmであり出力下限値を超えていない。したがって、ステップS37の条件を満たさないので、時刻t7からt8までの期間においてフィードバック情報は報知されない。
【0078】
次に、時刻t11からt12までの期間においてフィードバック情報が報知されるか否かを検討する。時刻t11からt12までの期間は1.03秒であり、時刻t11から0.9秒経過した時点を時刻T2とする。時刻t11からt12までの期間においては対象統計値が閾値を超えた状態が継続しているので、いずれの時点においてもステップS33の条件を満たす。時刻T2における累積時間は時刻t11からの経過時間(0.9秒)である。したがって、時刻T2において累積時間が基準時間以上となりステップS34の条件を満たす。基準対象統計値(時刻T2における対象統計値)の有効データ数は基準最小データ数以上であるとする。そのため、ステップS35の条件を満たす。時刻t11からT2までの累積データ数は65とする。そのため、時刻T2において累積データ数が累積最小データ数以上となり、ステップS35の条件を満たす。さらに出力タイミング(累積時間が基準時間となる時刻T2)における対象圧力値が約80gf/mmであり出力下限値を超えている。したがって、ステップS37の条件を満たす。以上のとおり、ステップS33からステップS37の全ての条件を満たすので、時刻t11からt12までの期間(具体的には時刻T2)においてフィードバック情報が報知される。
【0079】
次に、時刻t13からt14までの期間においてフィードバック情報が報知されるか否かを検討する。時刻t13からt14までの期間は0.92秒であり、時刻t13から0.9秒経過した時点を時刻T3とする。時刻t13からt14までの期間においては対象統計値が閾値を超えた状態が継続しているので、いずれの時点においてもステップS33の条件を満たす。時刻T3における累積時間は時刻t13からの経過時間(0.9秒)である。したがって、時刻T3において累積時間が基準時間以上となりステップS34の条件を満たす。基準対象統計値(時刻T3における対象統計値)の有効データ数は基準最小データ数以上であるとする。そのため、ステップS35の条件を満たす。本例において、時刻t13からT3までの累積データ数は34とする。時刻T3以降における対象圧力値は継続して0gf/mmであり、累積データ数は34のまま増加しない。したがって、累積データ数が累積最小データ数以上とならずステップS36の条件を満たさない。よって、時刻t13からt14までの期間においてフィードバック情報は報知されない。
【0080】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る筆記判定システムは、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出する算出部と、対象統計値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、対象統計値が閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、を備える。
【0081】
本開示の一側面に係る筆記判定方法は、プロセッサを備える筆記判定システムにより実行される。筆記判定方法は、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得するステップと、複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出するステップと、対象統計値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、対象統計値が閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力するステップと、を含む。
【0082】
本開示の一側面に係る筆記判定プログラムは、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得するステップと、複数の対象圧力値を用いて対象統計値を算出するステップと、対象統計値が閾値を超えたか否かを判定するステップと、対象統計値が閾値を超えたと判定された場合に、該判定の結果に基づくフィードバック情報を出力するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0083】
本開示の一側面に係る筆記具は、所定の時間幅において筆記具に生じる複数の対象圧力値を取得する取得部と、複数の対象圧力値を用いて算出された対象統計値が閾値を超えたと判定部によって判定された場合に、該判定の結果に応じた情報を出力する出力部と、を備える。
【0084】
このような側面においては、筆記具に生じる対象圧力値の統計値(対象統計値)が閾値を超えた場合に、フィードバック情報が出力される。瞬間的な圧力ではなく、ある時間幅における圧力の統計値に基づいてフィードバック情報が出力されるので、短時間のうちに大きな圧力が筆記具に繰り返し加えられた場合であっても、フィードバック情報の頻繁な出力が生じづらい。これにより、好適な筆記動作を筆記者に適切に促すことができる。
【0085】
他の側面に係る筆記判定システムでは、判定部は、対象統計値が閾値を超えた累積時間が基準時間以上であるか否かを判定してもよい。出力部は、累積時間が基準時間以上であると判定された場合に、フィードバック情報を出力してもよい。このように対象統計値が閾値を超えた累積時間が基準時間以上であると判定された場合にフィードバック情報が出力されることで、フィードバック情報の頻繁な出力がより生じづらくなる。これにより、好適な筆記動作を筆記者に更に適切に促すことができる。
【0086】
他の側面に係る筆記判定システムでは、出力部は、累積時間が基準時間以上であると判定された時点以降において対象圧力値が出力下限値を超えている場合に、フィードバック情報を出力してもよい。これにより、例えば出力タイミングにおいて筆記者が筆記具による筆記を行っているか否かを対象圧力値に基づいて推定できる。したがって筆記が行われていないにも関わらずフィードバック情報が出力されてしまうことを抑制でき、適切なタイミングにおいてフィードバック情報を出力することができる。
【0087】
他の側面に係る筆記判定システムでは、取得部は、閾値を設定するための複数の参照圧力値を取得してもよい。算出部は、複数の参照圧力値の統計値である参照統計値を算出し、該参照統計値を閾値として設定してもよい。これによりそれぞれの筆記者に適した閾値を設定することが可能となる。例えば、好適な筆記動作を行いやすい状況下での筆記時(例えば学習目的以外での筆記時)において参照圧力値を取得することにより、閾値の設定を適切に行うことができる。
【0088】
他の側面に係る筆記判定システムでは、算出部は、取得部が取得した複数の対象圧力値のうち算出下限値を超える1以上の対象圧力値を用いて対象統計値を算出してもよい。これにより対象統計値の算出に適さない対象圧力値(例えば筆記者が筆記を行っていないときに取得された対象圧力値)を用いることなく、対象統計値の算出を適切に行うことができる。
【0089】
他の側面に係る筆記判定システムでは、取得部は、筆記具に生じる筆圧値を対象圧力値として取得してもよい。これにより筆記圧についてのフィードバック情報を出力することが可能となり、適切な筆記圧での筆記動作を筆記者に促すことができる。
【0090】
他の側面に係る筆記判定システムでは、取得部は、筆記具に生じる把持圧値を対象圧力値として取得してもよい。これにより把持圧についてのフィードバック情報を出力することが可能となり、適切な把持圧での筆記動作を筆記者に促すことができる。
【0091】
他の側面に係る筆記判定システムでは、算出部は、複数の対象圧力値の平均値を対象統計値として算出してもよい。これにより短時間のうちに大きな圧力が筆記具に加えられた場合であっても、対象統計値が急激に変動しにくい。これにより、フィードバック情報の頻繁な出力が生じづらく、好適な筆記動作を筆記者に適切に促すことができる。
【0092】
[第2実施形態]
続いて本開示の第2実施形態について説明する。以下の説明においては、上述した第1実施形態との相違点を主に説明し、共通する点については説明を省略することがある。図9は、第2実施形態に係る筆記判定システム(より具体的には筆記者端末)が行う処理の一例を処理フローS4として示すフローチャートである。第2実施形態に係る筆記判定システムは、第1実施形態に係る筆記判定システム1と同様の機能要素を有する。図9を参照して、第2実施形態に係る判定部12により実行されるフィードバック情報を出力(報知)するか否かの判定処理について説明する。
【0093】
ステップS41では、筆記者端末10の通信部15が対象圧力値を筆記具20の通信部23から受信する。通信部15によって受信される対象圧力値は、取得部21によって取得される。上記第1実施形態において説明したように、取得部21は例えば筆記具20に生じる筆圧値または把持圧値を対象圧力値として取得してもよい。取得部21は、例えば所定の時間間隔で対象圧力値を取得してもよいし、連続して対象圧力値を取得してもよい。本実施形態においては、取得部21は筆記具20に生じる筆圧値をセンサ207により0.01秒間隔で取得する。
【0094】
ステップS42では、対象圧力値が閾値を超えているか否かを判定部12が判定する。閾値は、例えば図9に示す処理フローS4が実行される前の準備期間において取得された参照圧力値に基づいて予め設定されてもよい。具体的には、算出部11が複数の参照圧力値の統計値を算出し、該統計値を閾値として設定してもよい。閾値は筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定可能であってもよい。対象圧力値が閾値を超えていないと判定部12が判定した場合には処理はステップS41に戻る。この場合、再度実行されるステップS41の処理において、取得部21により新たに取得された対象圧力値を通信部15が受信する。一方、対象圧力値が閾値を超えていると判定部12が判定した場合には処理はステップS43に移る。
【0095】
ステップS43では、前回のフィードバック情報の出力(報知)から所定時間を経過しているか否かを判定部12が判定する。所定時間は、例えば筆記判定システム1の提供者または筆記者によって任意に設定可能であってもよい。所定時間は、例えば5秒以上30秒以下に設定されてもよい。前回のフィードバック情報の出力からの経過時間は、計測部14によって計測されてもよい。
【0096】
前回のフィードバック情報の出力から所定時間を経過していないと判定部12が判定した場合には処理はステップS41に戻る。この場合、再度実行されるステップS41の処理において、取得部21により新たに取得された対象圧力値を通信部15が受信する。一方、前回のフィードバック情報の出力から所定時間を経過していると判定部12が判定した場合には処理はステップS44に移る。前回のフィードバック情報の出力が存在しない場合(すなわち初めてのフィードバック情報を報知しようとする場合)には、判定部12が所定時間を経過したと判定し処理はステップS44に移ってもよい。
【0097】
ステップS44では、フィードバック部13がフィードバック情報を生成し、筆記者端末10の通信部15が筆記具20の通信部23へとフィードバック情報を送信する。その後、報知部22が通信部23からフィードバック情報を受け取り、該フィードバック情報を報知する。本実施形態においては、報知部22はフィードバック情報に含まれる指示情報に基づいてライト209を点灯させる。
【0098】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係る筆記判定システムは、筆記具に生じる対象圧力値を取得する取得部と、対象圧力値が閾値を超えたか否かを判定する判定部と、前回の出力から所定時間を経過している場合に、判定の結果に基づくフィードバック情報を出力する出力部と、を備える。
【0099】
このような側面においては、筆記判定システムは筆記具に生じる対象圧力値が単に閾値を超えた場合にフィードバック情報を出力するのではなく、前回の出力から所定時間を経過している場合にフィードバック情報を出力する。そのため、フィードバック情報の頻繁な出力が生じづらく、好適な筆記動作を筆記者に適切に促すことができる。
【0100】
[変形例]
以上、本開示の実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0101】
上記実施形態では、筆記者端末10が算出部11、判定部12、フィードバック部13および計測部14を備えるが、これらの機能要素の少なくともいずれか一つは筆記具20に実装されてもよい。特に、これらの機能要素の全てが筆記具20に実装される場合には、筆記判定システム1は筆記者端末10を用いることなくフィードバック情報の報知を行うことができる。上記実施形態では筆記具20が報知部22を備えるが、この機能要素が筆記者端末10に実装されてもよい。この場合には、筆記者端末10がフィードバック情報を筆記者に向けて報知する。筆記者端末10によるこの報知はフィードバック情報の出力の一例であり、したがって、この変形例でも筆記者端末10は出力部に相当する機能を備える。筆記判定システム1は筆記者端末10とは別にサーバを備えてもよい。この場合、筆記者端末10が備える上記の各機能要素のうち少なくともいずれか一つはサーバに実装されてもよい。
【0102】
上記実施形態では、筆記者端末10またはデータベース30が閾値データなどの各種データを記憶する。しかしながら、筆記具20が記憶装置を備える場合には、該記憶装置が各種データを記憶してもよい。
【0103】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念である。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念である。
【0104】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…筆記判定システム、10…筆記者端末、11…算出部、12…判定部、13…フィードバック部、14…計測部、15…通信部、20…筆記具、21…取得部、22…報知部、23…通信部、30…データベース、100…端末コンピュータ、101…プロセッサ、102…主記憶部、103…補助記憶部、104…通信部、105…入力インタフェース、106…出力インタフェース、201…筒部、202…開口、204…リフィル、205…先端部、206…基端部、207…センサ、208…基板、209…ライト、P1…クライアントプログラム。

図1
図2
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図9