IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 金井電器産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-キーボード 図1
  • 特開-キーボード 図2
  • 特開-キーボード 図3
  • 特開-キーボード 図4
  • 特開-キーボード 図5
  • 特開-キーボード 図6
  • 特開-キーボード 図7
  • 特開-キーボード 図8
  • 特開-キーボード 図9
  • 特開-キーボード 図10
  • 特開-キーボード 図11
  • 特開-キーボード 図12
  • 特開-キーボード 図13
  • 特開-キーボード 図14
  • 特開-キーボード 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111628
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】キーボード
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/02 20060101AFI20220725BHJP
   H01H 13/06 20060101ALI20220725BHJP
   H01H 13/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G06F3/02 400
H01H13/06 A
H01H13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007189
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】509334217
【氏名又は名称】金井電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089093
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 健治
(72)【発明者】
【氏名】関根 良太
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝司
(72)【発明者】
【氏名】立花 貞夫
【テーマコード(参考)】
5B020
5G206
【Fターム(参考)】
5B020DD02
5G206AS17H
5G206AS17J
5G206AS17N
5G206AS38H
5G206AS38J
5G206AS38N
5G206CS04J
5G206CS04N
5G206CS05N
5G206DS05N
5G206GS05
5G206HS16
5G206HU15
5G206HW14
5G206KS07
5G206KS57
5G206NS02
5G206NS04
5G206NS05
(57)【要約】
【課題】キースイッチから発生する打鍵音及び振動を抑制するとともに塵埃等による影響を抑制するキーボードを提供すること。
【解決手段】複数のキースイッチ101が押下可能に配置され、選択されたキースイッチ101の押下により下降するキーレバー8を検知するキーボード1において、キーレバー8の下端85及び可動電極9を取り囲むスイッチハウジング7と、スイッチハウジング7を挿着する取付孔112からスイッチハウジング7を下方に延在させる平面状のスイッチ取付部材11と、キーレバー8の下端85及び可動電極9が当接するプリント基板13と、スイッチ取付部材11とプリント基板13の間でかつスイッチハウジング7の周囲に密着して設けた制振スポンジ12とを有すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキースイッチが押下可能に配置され、選択された前記キースイッチの押下により下降するキーレバーを検知するキーボードにおいて、
前記キーレバーの下端を取り囲むスイッチハウジングと、
前記スイッチハウジングを挿着する取付孔を有し、前記取付孔から前記スイッチハウジングを下方に延在させる平面状のスイッチ取付部材と、
前記スイッチ取付部材の下方に設けられ、前記キーレバーの下端が当接するプリント基板と、
前記スイッチ取付部材と前記プリント基板の間で、かつ前記スイッチハウジングの周囲に設けた第1の制振部材とを有することを特徴とするキーボード。
【請求項2】
前記スイッチハウジングは、前記スイッチハウジングが取り囲んだ前記キーレバーの下端を取巻く内部空間と、前記第1の制振部材とを繋げる通気口を有することを特徴とする請求項1記載のキーボード。
【請求項3】
前記キーレバーの下端は、電極支持手段により支持される弾性を有する可動電極と、下部緩衝材支持手段により支持される下部緩衝材とを有し、
前記プリント基板は、前記可動電極に対向して設けられる固定電極と、前記下部緩衝材が当接する上面を有することを特徴とする請求項1記載のキーボード。
【請求項4】
前記スイッチハウジングの周囲に密接して設けた前記第1の制振部材は、全体が一体化していることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載のキーボード。
【請求項5】
隣接する複数の前記スイッチハウジングの周囲に設けた前記第1の制振部材が、一体化していることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一記載のキーボード。
【請求項6】
前記第1の制振部材は、連続気泡タイプのポリウレタンフォームであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一記載のキーボード。
【請求項7】
更に、前記プリント基板の下方にロワーケースを有し、前記プリント基板と前記ロワーケースの間に第2の制振部材を有することを特徴とする請求項1乃至6いずれか一記載のキーボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に情報を入力する入力装置として用いられるキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キーボードを構成するキースイッチは、キートップを介して操作者による押下力を受ける。このキートップの打鍵操作時の打鍵音が周囲に伝わることを防止する技術がある。特許文献1(特開2011-60601号)は、キートップを昇降可能に支持するスイッチパネルとメンブレンシートの間に弾性堤防部材を備えるものである。この弾性堤防部材は、キートップの輪郭に沿って環状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-60601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のキーボード及びキースイッチは、指がキートップに触れた時、キートップが下動する時、ハウジング摺動部との間での擦れる時及び指を離してキースイッチが元の位置に復帰してストッパに衝突する時などの全ての打鍵音を低減できない。更に、高速タイピングされる場合に、キースイッチの支持部材を介して、カバー及び設置面に反響する操作音の発生を防ぐことはできないという問題があった。更にまた、ハウジング摺動部又はキースイッチの接点等に発生する塵埃等がキースイッチの動作に悪影響を与えるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に着目したものであって、キースイッチの操作により発生する打鍵音及び振動を抑制するとともに塵埃等による影響を抑制するキーボードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために、複数のキースイッチが押下可能に配置され、選択された前記キースイッチの押下により下降するキーレバーを検知するキーボードにおいて、前記キーレバーの下端を取り囲むスイッチハウジングと、前記スイッチハウジングを挿着する取付孔を有し、前記取付孔から前記スイッチハウジングを下方に延在させる平面状のスイッチ取付部材と、前記スイッチ取付部材の下方に設けられ、前記キーレバーの下端が当接するプリント基板と、前記スイッチ取付部材と前記プリント基板の間で、かつ前記スイッチハウジングの周囲に設けた第1の制振部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上記のようにスイッチ取付部材とプリント基板の間で、かつキーレバーの下端を取り囲むスイッチハウジングの周囲に第1の制振部材を設けたので、キースイッチの操作に基づいてキーレバーの下端から生じる打鍵音及び振動を第1の制振スポンジにより抑制可能とするとともに塵埃等による影響を抑制可能なキーボードを得ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に関わるキースイッチ及びその周辺の断面図である。
図2】第1の実施の形態に関わるキーボードの外観図である。
図3】第1の実施の形態に関わるキーボードの分解斜視図である。
図4】第1の実施の形態に関わるキースイッチ部の分解斜視図である。
図5】第1の実施の形態に関わるキースイッチと第1の制振スポンジの関係を示す説明図である。
図6】第1の実施の形態に関わるキーボード内における第1の制振スポンジの位置関係を示す説明図である。
図7】第1の実施の形態に関わるキースイッチの分解斜視図である。
図8】第1の実施の形態に関わるキーレバーの説明図である
図9】第1の実施の形態に関わるキーレバーと可動電極の関係図である。
図10】第1の実施の形態に関わるキースイッチの動作説明図である。
図11】第1の実施の形態に関わるキーボードの空気の流れを示す概念図である。
図12】第2の実施の形態に関わるキーボードの分解斜視図である。
図13】第2の実施の形態に関わるキーボード内における第1及び第2の制振スポンジの位置関係を示す説明図である。
図14】第2の実施の形態に関わるキースイッチ及びその周辺の断面図である。
図15】第2の実施の形態に関わる第2の制振スポンジの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施の形態)
図2は第1の実施の形態に関わるキーボードの外観図である。キーボード1はパーソナルコンピュータ等の電子機器に情報を入力する入力装置であって、本実施の形態では静電容量式キーボードとする。キーボード1は、次に図3に示すように複数のキースイッチ101が押下可能に配置されるキースイッチユニットとしてのキースイッチ部10を収容する。キーボード1は、任意のキースイッチ101の押下に連動して下降する後述する可動電極9を検知することにより入力が行われる。
【0010】
図3は第1の実施の形態に関わるキーボードの分解斜視図である。キーボード1は上方からアッパーケース2、キースイッチ部10及びロワーケース3を配設する。アッパーケース2は略長方形の枠体であり、枠体を除く中央部は開口部21を形成する。この開口部21はアッパーケース2の略全域に亘って設けられ、アッパーケース2は枠体によりキースイッチ部10の周囲を取り囲む。キースイッチユニットとしてのキースイッチ部10は、左右方向としての矢印Xで示す方向及び前後方向としての矢印Yで示す方向に複数のキースイッチ101が配設される。複数のキースイッチ101は、略同一平面上に配列してある。各キースイッチ101は上下方向としての矢印Zで示す方向に移動可能である。
【0011】
ロワーケース3は略平面状の底板を有し、アッパーケース2及びキースイッチ部10を搭載する。ロワーケース3の搭載面としての底板の上面は、2個の横リブ311及び2個の縦リブ312が交差して形成されている。(以下、2個の横リブ311及び2個の縦リブ312を総称するときはリブ31と称する。)
更に、上面に形成されたリブ31の略中央部は、キースイッチ部10を位置決めするために垂設したリブ付きの位置決めボス部32が2箇所に形成される。ロワーケース3の上面は、矢印Xで示す方向の端部にキースイッチ部10を固定するための固定ボス部33が垂設されている。固定ボス部33の中心は貫通孔としてある。これらの位置決めボス部32及び固定ボス部33は、段付形状としてある。
【0012】
キーボード1の組み立ては、まずキースイッチ部10が、ロワーケース3の周囲に設けた垂直部34により形成されるロワーケース3の上部に載置される。ロワーケース3の位置決めボス部32の先端部がキースイッチ部10の貫通孔133(図4参照)に挿入され、キースイッチ部10がロワーケース3に位置決めされる。続けて、ロワーケース3の底面側より固定ネジ4が上方向としての矢印Aで示す方向に挿入され、アッパーケース2の矢印Xで示す方向の端部に設けた図示しないネジ孔を介してロワーケース3はアッパーケース2に螺着される。またアッパーケース2は図示しない爪部を有し、これによりアッパーケース2及びロワーケース3は、ネジ止め及び爪部によりキースイッチ部10を上下より覆うように組み立てる。なお、破線40はロワーケース3の位置決めボス部32とキースイッチ部10の貫通孔133(図4参照)との対応位置を示し、破線41はロワーケース3の固定ボス部33とキースイッチ部10の貫通孔111との対応位置を示す。
【0013】
図4は第1の実施の形態に関わるキースイッチ部の分解斜視図である。キースイッチユニットとしてのキースイッチ部10は、キースイッチ群100、平面状のスイッチ取付部材としてのスイッチ取付プレート11、第1の制振部材としての第1の制振スポンジ12及びプリント基板13を積層状態として構成する。キースイッチ群100は複数個のキースイッチ101の集合体であり、図示するように一体化したものではない。図4は左右方向としての矢印Xで示す方向及び前後方向としての矢印Yで示す方向に沿った複数個のキースイッチ101であることを示す。
【0014】
スイッチ取付プレート11は平面状の金属板で製作され、キースイッチ群100の各キースイッチ101が配置される位置に、キースイッチ101を取り付けるための取付孔としての取付用角孔112を複数有する。スイッチ取付プレート11の取付用角孔112はそれぞれ所定の間隔で形成され、キースイッチ101の外壁を構成するスイッチハウジング7(図7参照)が挿着される。スイッチ取付プレート11は、前述した貫通孔111が穿設される。こうして、スイッチ取付プレート11は、各キースイッチ101を水平方向に位置決めし、更に上下方向の固定を行う。
【0015】
本実施の形態に関わる第1の制振スポンジ12は、スイッチ取付プレート11の下方で、かつ後述するプリント基板13との間に配置され、絶縁性を有する連続気泡タイプの軟質ポリウレタンフォームで形成する。連続気泡とは、スポンジ内部の気泡が繋がっている状態で、気体又は液体が通過することができる構造をいう。第1の制振スポンジ12は平面状に形成され、キースイッチ101を構成するスイッチハウジング7(図7参照)が嵌通される囲い孔121が形成される。囲い孔121はスイッチ取付プレート11の取付用角孔112に対応する位置に形成される。囲い孔121の大きさは、スイッチハウジング7の下部ケース73(図7参照)の外形と同等以下である。囲い孔121にスイッチハウジング7の下部ケース73が嵌通されると、下部ケース73は軟質ポリウレタンフォームからなる第1の制振スポンジ12に四方が囲まれることになる。第1の制振スポンジ12は、前述した位置決めボス部32用のボス逃げ孔123及び固定ボス部33用のボス逃げ部122が形成される。
【0016】
ここで第1の制振スポンジ12によるキースイッチ101を囲んだ状態の説明を行う。図5は第1の実施の形態に関わるキースイッチと第1の制振スポンジの関係を示す説明図である。図5は、図4に示すスイッチ取付プレート11の取付用角孔112にキースイッチ101を挿着し、更に第1の制振スポンジ12を介在させた状態を底面側から見た図を示す。従って図5図4に対して左右反転して示す。また、第1の制振スポンジ12はキースイッチ101の部分を除いて、即ちスイッチハウジング7の周囲に密接して設け、全体が一体化することを示すため斜線で図示する。キースイッチ101は、一体化した第1の制振スポンジ12で囲まれる。なお、第1の制振スポンジ12は、スイッチ取付プレート11の裏面に貼り付けて形成される。
【0017】
このように第1の制振スポンジ12を配置することによりキースイッチ101から生じる打鍵音及び振動を抑制することができる。詳述すると、第1の制振スポンジ12の有する吸音効果及び制振効果が作用することになる。ここで吸音効果は、音がスポンジの気泡の内部を通過する過程で振動エネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、反射音が小さくなることである。更に、制振効果は、スポンジに伝搬した振動の振動エネルギーが熱エネルギーに変換・発散させられて減衰し、振動音や共鳴音が軽減されることである。
【0018】
図4に戻り説明を続ける。プリント基板13はスイッチ取付プレート11の下方の第1の制振スポンジ12の更に下方に配置され、キースイッチ101の後述する可動電極9に対応して一対の固定電極131が複数配設される。固定電極131は可動電極9の接近を検知することによりキースイッチ101の押下を検知する。固定電極131はON/OFF信号を図示しない上位装置に対し送信する。固定電極131はプリント配線されており、図示しないプリントパターン及び電子部品を経て上位装置と電気的に接続される。キーボード1の上位装置は図示しない制御手段を有し、当該制御手段は固定電極131に接近及び当接する可動電極9による静電容量の変化を検出し、キー押下有効としての入力判定を行う。
【0019】
プリント基板13は、前述したロワーケース3の固定ボス部33に対応するボス嵌合孔132及び位置決めボス部32(図3参照)に対応する貫通孔133が穿設される。なお、プリント基板13の上面135は、キースイッチ101の下降時、後述するキーレバー8の下端に支持された下部緩衝材85(図8参照)が当接することになる。以上の構成要素は、図4における破線40、41及び42により位置合わせが行われる。
【0020】
図6は第1の実施の形態に関わるキーボード内における第1の制振スポンジの位置関係を示す説明図である。なお、図6は第1の制振スポンジ12の位置関係を概念的に示すものであり、キースイッチ101の断面は図示を省略する。キーボード1のキースイッチ101は、スイッチ取付プレート11に挿着される。スイッチ取付プレート11とプリント基板13との間に、図示斜線で示す第1の制振スポンジ12が挟持される。スイッチ取付プレート11とプリント基板13との間隔は、第1の制振スポンジ12が密着する程度の潰し量とするが、素材が軟質ポリウレタンフォームであるので、プリント基板13に過大な負荷(反り)を与えない。また、空間15はプリント基板13とロワーケース3との隙間領域であり、一部の領域に図示しない電子部品が介在する。
【0021】
次にキースイッチ101の説明を行う。図7は第1の実施の形態に関わるキースイッチの分解斜視図である。なお、図7においてスイッチ取付プレート11、第1の制振スポンジ12及びプリント基板13を説明の便宜上方形に切断して示す。キースイッチ101は、上部の押下面51に操作者の指からの押下力を受け上下動するキートップ5、キートップ5の下部に連動して上下動するキーレバー8及びキーレバー8の下端の電極把持部84に把持されて上下動する可動電極9を有する。更に、キースイッチ101はキーレバー8を保持するスイッチハウジング7、操作者からの押下力に抗してキートップ5を初期位置に戻すためのリセットスプリング6により構成される。
【0022】
操作者によりキー押下の操作が行われると、キーレバー8はキートップ5とともに下動する。キーレバー8は、上方に延在してキートップ5と嵌合する連結筒部81がある。連結筒部81の内周は図示しない嵌合溝が形成され、キートップ5の嵌合方向が決まる。連結筒部81の外周は後述するスイッチハウジング7のキーレバー支持部72の内面側と摺動部87を形成する。キーレバー8は連結筒部81及び緩衝材支持部82から形成される。緩衝材支持部82は、上部緩衝材83及び下部緩衝材85を支持する。連結筒部81及び緩衝材支持部82は樹脂材料であるポリアセタール樹脂(POM)で一体形成されている。キーレバー8の詳細は図8において詳述する。
【0023】
キーレバー8の下端の可動電極9は側面を電極支持手段としての電極把持部84に把持され、プリント基板13に対向して配置される。上下動する可動電極9はプリント基板13の固定電極131に接近し当接した後、圧迫されて変形する。可動電極9は、軟質ポリウレタンフォームからなる弾性部材91と、弾性部材91の上層部に固着された樹脂部材92を有する。樹脂部材92は、薄板状のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)である。また、弾性部材91の下層部はアルミニウムを薄膜状に蒸着させた導電層93を形成する。この樹脂部材92をキーレバー8の電極把持部84に設けた図示しない把持手段により固着する。
【0024】
スイッチハウジング7は上下方向の中間部に四角形の取付座部71が形成され、上部にキーレバー支持部72が形成され、下部は下部ケース73が形成される。キーレバー支持部72は外面側が円筒であり、内面側はキーレバー8の連結筒部81と摺動部87を形成し、滑動可能に支持する形状である。円筒状のキーレバー支持部72はリセットスプリング6が挿着される。取付座部71の下部ケース73は、側面のみ有する箱型である。
取付座部71は、スイッチ取付プレート11に設けた取付用角孔112より面積を大きく形成されている。よって、取付座部71の底面側がスイッチ取付プレート11の上面に当接することにより、スイッチハウジング7はスイッチ取付プレート11の取付用角孔112に取付けられる。
【0025】
下部ケース73の側面は、スイッチハウジング7をスイッチ取付プレート11の取付用角孔112に挿着するための係止突起部74が形成される。また、下部ケース73の対向する一対の側面にはスイッチ取付プレート11に挿着する位置より下側にそれぞれに通気口75が設けられる。この通気口75は、下部ケース73内に囲まれた内部空間77(図10参照)と第1の制振スポンジ12とを繋げる。即ち通気口75は、キーレバー8の下端に設けた可動電極9及び下部緩衝材85を取巻く内部空間77及び下部ケース73の四方を囲む第1の制振スポンジ12の内部の空気とを繋げる。スイッチハウジング7は、樹脂材料であるポリカーボネート樹脂(PC)で一体形成されている。
【0026】
スイッチ取付プレート11は、前述のようにスイッチハウジング7の下部ケース73の挿着を受け入れる取付用角孔112を有する。第1の制振スポンジ12は、スイッチ取付プレート11の下部の設けられ、スイッチハウジング7の下部ケース73の四方の側面を囲む囲い孔121を有する。
リセットスプリング6は、操作者の押下力に抗してキートップ5を初期位置に戻すため、キートップ本体部52(図10参照)とスイッチハウジング7の間に組み込まれる。リセットスプリング6は弾性部材であって圧縮型のコイルスプリングでありバネ用ステンレス材で作成されている。
【0027】
図8は第1の実施の形態に関わるキーレバーの説明図である。キーレバー8は、前述したように上部に設けられた連結筒部81及び下部に設けられた緩衝材支持部82で構成する。緩衝材支持部82は上部緩衝材支持手段としての平面部821及び下部緩衝材支持手段としての2個の腕部822からなる。電極把持部84は緩衝材支持部82と一体化されている。
上部緩衝材支持手段としての平面部821は、連結筒部81の最下部の円周に鍔状に形成され、上面に環状の上部緩衝材83を載置して支持する。上部緩衝材83はウレタンゴム等の弾性体であり、キーレバー8が上昇したとき、スイッチハウジング7の内側に設けられたストッパ部76(図10(b)参照)に当接し、衝撃音を減衰させる。
【0028】
更に、下部緩衝材支持手段としての腕部822は、平面部821の周囲から下方に延びて形成され、下端に下部緩衝材85が設けられる。下部緩衝材85は、キーレバー8が最降下した時に、可動電極9が圧迫されて変形した後、プリント基板13の上面135に当接し、衝撃音を減衰させる。
【0029】
図9は第1の実施の形態に関わるキーレバーと可動電極の関係図である。図9(a)はキーレバー8が可動電極9を把持した状態を示す斜視図であり、図9(b)は、図9(a)の矢印Bで示す方向から見た正面図であり、図9(c)は、図9(a)の矢印Cで示す方向から見た側面図である。
可動電極9は、キーレバー8の緩衝材支持部82の下端に把持される。キーレバー8の緩衝材支持部82の平面部821の四方向の周囲は、下方に延びた複数の電極支持手段としての電極把持部84が設けられ、可動電極9を四方向より把持する。緩衝材支持部82の平面部821の上面は、前述した環状の上部緩衝材83が載置される。
【0030】
図9(b)に示すように可動電極9は、緩衝材支持部82の対向する2個の腕部822の内側で、電極支持手段としての電極把持部84により四方から把持される。前述のように緩衝材支持部82の2個の腕部822は下端に下部緩衝材85が形成される。キースイッチ101の初期状態においては、図9(b)に示すように、可動電極9の下端94は下部緩衝材85より下方に延在して示すが、押下状態(図10(b)参照)のときは可動電極9は押し潰されて変形し、下部緩衝材85がプリント基板13に当接する。下部緩衝材85はプリント基板13に設けた固定電極131には当接しない位置に設ける。図9(c)に示すように下部緩衝材85は小片であり、緩衝材支持部82の腕部822の下端に設けられる。
【0031】
図1は第1の実施の形態に関わるキースイッチ及びその周辺の断面図である。なお、図1におけるキースイッチ101のキーレバー8は、図9(c)に示すF-F断面を示す。キースイッチ101は、スイッチハウジング7の取付座部71がスイッチ取付部材としてのスイッチ取付プレート11の上面に当接し、下部ケース73がスイッチ取付プレート11の取付用角孔112に挿着される。換言すると、スイッチハウジング7の下部ケース73は、取付用角孔112から下方に延在することになる。
更に、下部ケース73は第1の制振スポンジ12の囲い孔121に挿着される。スイッチハウジング7の下部ケース73の下端731はプリント基板13に当接する。これにより可動電極9、固定電極131、下部ケース73の内側732及びプリント基板13により内部空間77が形成される。
【0032】
また、スイッチハウジング7の下部ケース73は、キーレバー8の下端の電極把持部84に把持された可動電極9及び同じくキーレバー8の下端に支持された下部緩衝材85を取巻く内部空間77を取り囲む。換言すると、可動電極9と固定電極131、下部緩衝材85とプリント基板13の上面135及び上部緩衝材83とストッパ部76(図10(b)参照)は、スイッチハウジング7の下部ケース73により形成される内部空間77内に存在する。
【0033】
スイッチハウジング7の下部ケース73は、周囲に第1の制振スポンジ12が位置付けられる。第1の制振スポンジ12は、スイッチハウジング7の下部ケース73の四方を囲んで密着し、かつスイッチ取付プレート11及びプリント基板13の間に配置され両者に密着する。前述のように下部ケース73には通気口75が設けられ、下部ケース73の内部空間77と第1の制振スポンジ12の内部の空気が通気口75により繋がる。通気口75を設ける高さは、プリント基板13の上面からスイッチ取付プレート11の下面までの間であればよい。第1の制振スポンジ12は図4に示すように平面状に形成されるが、その周囲は図6に示すようにロワーケース3の周囲に垂直に設けた垂直部34に接する。なお、ロワーケース3とプリント基板13の間は空間15となる。
【0034】
図10は第1の実施の形態に関わるキースイッチの動作説明図である。図10(a)はキースイッチ101の初期状態を示し、図10(b)は押下状態を示す。なお、図10はロワーケース3を省略して図示する。また、図1と同様、図10におけるキースイッチ101のキーレバー8は、図9(c)に示すF-F断面を示す。
キートップ5は、キートップ本体部52と、押下面51の裏側に形成された裏面511と、裏面511の中央部から下方に延びるように形成される円柱状の嵌合部53が形成される。裏面511は後述するリセットスプリング6の上端が当接される。キートップ5の嵌合部53はキーレバー8の連結筒部81に押し込まれ一体化される。連結筒部81は、キーレバー8を保持するスイッチハウジング7のキーレバー支持部72により昇降可能に支持される。
【0035】
スイッチハウジング7は、スイッチ取付プレート11の取付用角孔112に挿着される。スイッチハウジング7の下部ケース73はスイッチ取付プレート11の取付用角孔112から下方に突出し、下端731がプリント基板13に当接する。スイッチハウジング7の下部ケース73に設けた通気口75の外側は、第1の制振スポンジ12に接する。従って、図10(a)に示すキートップ5の押下面51が矢印Pで示す方向に押し下げられ可動電極9が下降すると、内部空間77の空気は通気口75から矢印Dで示す方向としての第1の制振スポンジ12に流出する。第1の制振スポンジ12は連続気泡タイプのポリウレタンフォームであるので、下部ケース73、可動電極9及びプリント基板13により形成される内部空間77が密閉空域とならず、キートップ5の押下時の空気抵抗にならない。
【0036】
更に、可動電極9の下降が継続すると、キーレバー8の緩衝材支持部82の腕部822の下端に設けられた下部緩衝材85がプリント基板13に衝突したとき、図10(b)に示す押下状態となる。キーボード1の図示しない制御手段は、固定電極131に接近及び当接する可動電極9による固定電極131の静電容量の変化を検出し、キー押下有効としての入力判定を行う。
この時の打撃音は、可動電極9と固定電極131の間ではほとんどないが、特に下部緩衝材85とプリント基板13の上面135との間で発生する。即ち、打撃音は下部ケース73の内部空間77で発生する。しかしながら、打撃音は第1の制振スポンジ12の連続気泡タイプのポリウレタンフォームの吸音作用によって減衰される。
【0037】
図10(b)に示す押下状態でキートップ5の押下面51から指を離すと、リセットスプリング6によりキートップ5は矢印Rで示す方向に上昇し、図10(a)に示す初期状態の位置に戻される。キーレバー8の緩衝材支持部82に設けた上部緩衝材83が上昇し、スイッチハウジング7のストッパ部76に衝突すると、上昇動作は終了となる。この時、第1の制振スポンジ12からの空気は通気口75を介して、矢印Eで示すように内部空間77に流入する。以上により、内部空間77の空気は、通気口75を介して吸排気される。また、この時の打撃音は、上部緩衝材83とストッパ部76との間で発生する。即ち、打撃音は下部ケース73の内部空間77で発生する。しかしながらこの時の打撃音は、第1の制振スポンジ12の連続気泡タイプのポリウレタンフォームの吸音作用によって減衰される。
【0038】
図11は第1の実施の形態に関わるキーボードの空気の流れを示す概念図である。キーレバー8に把持された可動電極9の昇降動作により、スイッチハウジング7の内部空間77の空気は通気口75を介して矢印Dで示す方向として第1の制振スポンジ12へ流出し、更に第1の制振スポンジ12の内部の空気は通気口75を介して矢印Eで示す方向として内部空間77内へ流入する。
【0039】
これらの空気の移動により、塵埃78は第1の制振スポンジ12内に留まることになる。即ち、内部空間77内に存在する塵埃78は、空気の流出とともに第1の制振スポンジ12内に移動し吸着されることになる。一方、第1の制振スポンジ12内に存在する塵埃78は、スポンジ内に取り残されるため内部空間77内への流入が低減される。これは第1の制振スポンジ12が塵埃フィルターとして機能し、更に可動電極9の繰返し行われる昇降動作に基づく空気抜き作用により、内部空間77内の空気が通気口75を介して吸排気されることによる。このようにして、内部空間77には塵埃78が減少することになり、図示しない制御手段は、接近及び当接する可動電極9による固定電極131の静電容量の変化を正確に検出し、キー押下有効としての入力判定を正確に行うことができる。
【0040】
更に、スイッチハウジング7の下部ケース73に通気口75が設けられ、かつ、下部ケース73の周囲を囲む第1の制振スポンジ12が連続気泡を有するため、空気は容易に出入りすることができる。これによりキーレバー8及びそれに把持される可動電極9の昇降動作に基づく内部空気の吸排気は、通気口75及び第1の制振スポンジ12によって行われ、摺動部87(図10(a)参照)の隙間からは空気の出入りがほとんど起きず、摺動部87への塵埃78の侵入が防げることにより、スムーズな操作が可能となる。
【0041】
以上により第1の実施の形態によれば、スイッチハウジング7の周囲に第1の制振スポンジ12を設けたので、スイッチハウジング7内の打鍵音及び打鍵時の振動の拡散を抑制できる。更に、通気口75及び連続気泡を持つ第1の制振スポンジ12よって空気が容易に出入りできるため、スイッチハウジング7内の内部空間77の空気は、可動電極9の繰返し行われる昇降動作に基づき、通気口75を介して行われる吸排気作用により、内部空間77の塵埃78を第1の制振スポンジ12に吸着させることができる。その結果、内部空間77の塵埃78を少なくすることができ、正確かつ安定した入力動作及びスムーズな操作を行うキーボード1を得ることができる。
なお、第1の実施の形態の説明において、スイッチハウジング7の周囲に設けた第1の制振スポンジ12は、全体が一体化したことを説明した(図5参照)が、これに限らない。即ち、隣接する複数のスイッチハウジング7の周囲に設けた第1の制振スポンジ12が、全体ではなく部分的に一体化したものであってもよい。
【0042】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態のキーボードに対して、更なる防音、制振効果を得るものである。図12は第2の実施の形態に関わるキーボードの分解斜視図である。なお、第1の実施の形態と同一な要素は同一符号とする。
第2の実施の形態が第1の実施の形態と同一である点は、キーボード201が上方からアッパーケース2、キースイッチ部10及びロワーケース3を配設することである。異なる点は、キースイッチ部10及びロワーケース3の間に第2の制振部材としての第2の制振スポンジ62を介在させることである。
【0043】
第2の制振スポンジ62は、絶縁性を有する連続気泡タイプの軟質ポリウレタンフォームで形成される。第2の制振スポンジ62の形状は、ロワーケース3の内側形状と略同一であり、ロワーケース3に設けたリブ31及び位置決めボス部32で区切られた11個の空間に対応させてある。第2の制振スポンジ62は図示実線で区切られた11個のパーツに分割される。第2の制振スポンジ62は、位置決めボス部32及び固定ボス部33と対応する位置に逃げ部621及び622を形成する。
【0044】
キーボード201の組み立てにおいては、垂直部34により囲まれるロワーケース3の上部に第2の制振スポンジ62を挿入する。この時は、ロワーケース3に設けたリブ31及び位置決めボス部32等で区切られた空間に対応させて、第2の制振スポンジ62の分割された11個の各パーツを位置づける。続けて、第2の制振スポンジ62の上側にキースイッチ部10を載置する。
キースイッチ部10のプリント基板13とロワーケース3との間に、第2の制振スポンジ62が挟持された状態で固定ネジ4により上方向としての矢印Aで示す方向から螺着される。なお、破線40及び41で各要素の対応位置を示す。
【0045】
図13は第2の実施の形態に関わるキーボードにおける第1及び第2の制振スポンジの位置関係を示す説明図である。なお、図13は第1の制振スポンジ12及び第2の制振スポンジ62の位置関係を概念的に示すものであり、キースイッチ101の断面を示すものではない。第1の制振スポンジ12は、第1の実施の形態と同様にキーボード201のスイッチハウジング7の下部ケース73を四方より囲んで設けられる(図5参照)。ロワーケース3に対しプリント基板13は傾斜して設けられる。即ち、両者の間隔は、矢印Yで示す前方では薄く、後方では厚く形成される。しかしながら、第2の制振スポンジ62はロワーケース3及びプリント基板13に合わせて密着する。
【0046】
ここで、第2の制振スポンジ62は、図12に示すように厚さが一定な板状であるときは、ロワーケース3及びプリント基板13により押し潰される量が場所により異なる。第2の制振スポンジ62は、軟質ポリウレタンフォームであり簡易に変形するので、プリント基板13とロワーケース3との間は、ほほ全域が密着する。更に、第2の制振スポンジ62は、プリント基板13に過大な負荷を与えない発泡(セル)構造を選択してある。
【0047】
図14は第2の実施の形態に関わるキースイッチ及びその周辺の断面図である。なお、図1と同様、図14におけるキースイッチ101のキーレバー8は、図9(c)に示すF-F断面を示す。キースイッチ101は、第1の実施の形態と同様にスイッチ取付プレート11に挿着される。第1の制振スポンジ12は、第1の実施の形態と同様にスイッチハウジング7の下部ケース73を四方より囲んで設けられる。第2の制振スポンジ62はプリント基板13及びロワーケース3の間に密着して設けられる。第2の実施の形態に関わるキースイッチ101は、第1の制振スポンジ12に加え、第2の制振スポンジ62を設けたのでキースイッチ101の操作により矢印Vで示す方向の打鍵音及び打鍵時の振動を減衰する。
【0048】
図15は第2の実施の形態に関わる第2の制振スポンジの変形例を示す説明図である。第2の制振スポンジ62の変形例である第3の制振スポンジ63は、第2の制振スポンジ62における11個に分割したパーツを一体化したものである。ロワーケース3のリブ31に対応する部位は、横リブ311の逃げ溝171及び縦リブ312の逃げ溝172としてあり、拡大図Gに示すような逃げ溝とする。更に、第3の制振スポンジ63の前後方向としての矢印Yで示す方向の厚さは均一ではなく、前方では薄く、後方では厚く、即ちT2>T1とすることもできる。厚さT1及びT2は、図13にて示したキースイッチ部10の傾斜角度に合わせることで、防音、制振効果の均一化を図ることができる。
【0049】
以上のように、本実施の形態によれば、スイッチ取付プレート11に取り付けたキースイッチ101の下部ケース73を第1の制振スポンジ12で四方を囲んだので、キーボード操作時の打鍵音及び振動を第1の抑制することができる。更に、キースイッチ部10とロワーケース3間に第2の制振スポンジ62又は第3の制振スポンジ63を介在させたので、打鍵音及び振動をより減衰させることができる。
【0050】
本実施の形態は、無接点の静電容量式スイッチとしたが、有接点のメンブレン式スイッチ等の任意のスイッチ機構に適用することができる。更に、本実施の形態は標準的なキー配列の汎用キーボードとして説明したが、テンキーパッドにも適用できる。
特に、静寂性を求められる医療機関、放送局、会議室等での使用するキーボードとして有用となる。
【符号の説明】
【0051】
1、201 キーボード 3 ロワーケース
5 キートップ 7 スイッチハウジング
8 キーレバー 10 キースイッチ部
11 スイッチ取付プレート 12 第1の制振スポンジ
13 プリント基板 62 第2の制振スポンジ
73 下部ケース 75 通気口
77 内部空間 100 キースイッチ群
101 キースイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15