(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111634
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】導電性ペースト、高熱伝導性材料および半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20220725BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220725BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220725BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220725BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H01L21/52 E
H01L21/52 B
C09J9/02
C09J163/00
C09J4/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007195
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】日下 慶一
(72)【発明者】
【氏名】高本 真
【テーマコード(参考)】
4J040
5F047
【Fターム(参考)】
4J040EC061
4J040FA082
4J040HA066
4J040HB38
4J040JA02
4J040JB02
4J040KA12
4J040KA16
4J040LA09
4J040MA04
4J040MA10
4J040MB05
4J040MB09
4J040NA20
5F047AA11
5F047BA34
5F047BA53
5F047BB11
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の濡れ広がり性に優れており熱伝導性や接続性に優れるとともに、半導体素子の直下領域からのはみ出しが抑制され低汚染性に優れた導電性ペーストを提供する。
【解決手段】本発明の導電性ペーストは、BF型粘度計を用い、回転数0.5rpmで測定された粘度(25℃)が、100Pa・s以上であり、回転数5rpmで測定された粘度(25℃)が、21Pa・s以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BF型粘度計を用い、回転数0.5rpmで測定された粘度(25℃)が、100Pa・s以上であり、
回転数5rpmで測定された粘度(25℃)が、21Pa・s以下である、導電性ペースト。
【請求項2】
下記試験条件で測定されたダイシェア強度が15N以上である、請求項1に記載の導電性ペースト。
(試験条件)
Auめっきした銅フレーム上に、前記導電性ペーストを、塗布厚みが25±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ2.0mm×幅2.0mm×厚さ350±5μmのAuめっきしたシリコンチップを当該導電性ペースト上に配置して、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、200℃で2時間さらに175℃で4時間熱処理することで硬化体を得て、該硬化体について、上記Auめっきした銅フレームと、上記シリコンチップとの260℃におけるダイシェア強度を測定する。
【請求項3】
硬化物の熱伝導率が9W/mK以上である、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
下記試験条件で測定された下記フィレット長さが130μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト。
(試験条件)
銅フレーム上に、前記導電性ペーストを、塗布厚みが15±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ1.3mm×幅1.2mm×厚さ350±5μmのシリコンチップを当該導電性ペースト上に荷重50gfで載置し、当該導電性ペーストを銅フレームとシリコンチップとの間に濡れ広げた場合において、当該導電性ペーストが前記シリコンチップの直下領域から拡展した距離(フィレット長さ)を測定する。
【請求項5】
前記試験条件で測定された、前記シリコンチップ面積100%に対する前記導電性ペーストの濡れ広がり面積が90%以上である、請求項4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
導電性充填剤を含む、請求項1~5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記導電性充填剤は、フレーク状銀粒子と球状銀粒子とを含む、請求項6に記載の導電性ペースト
【請求項8】
さらに熱硬化性樹脂を含む、請求項6または7のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含む、請求項8に記載の導電性ペースト。
【請求項10】
さらに(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項6~9のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項11】
さらに硬化剤を含む、請求項6~10のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の導電性ペーストを硬化して得られる高熱伝導性材料。
【請求項13】
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性ペーストを硬化してなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、高熱伝導性材料および半導体装置に関する。より詳細には、本発明は、半導体素子を金属フレームなどの支持部材上に接着、固定するために用いられる半導体用ダイアタッチペーストとして用いられる導電性ペースト、当該導電性ペーストから得られる高熱伝導性材料、および当該導電性ペーストを用いて製造された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リードフレーム上に半導体素子を搭載し、樹脂によりモールドした形態の半導体装置は広く用いられている。たとえば、IC、LSIなどの半導体素子は、リードフレーム等の金属片にマウントし、ダイアタッチペーストと称される導電性ペーストを用いて固定した後、リードフレームのリード部と半導体素子上の電極とを細線ワイヤ(ボンディングワイヤ)により接続し、次いでこれらをパッケージに収納して半導体製品とされる。また、種々の表示用などに実用化されている発光ダイオード(LED)などを用いた光半導体装置は、リードフレームや樹脂基板上の所定部分に光半導体素子を導電性ペースト等で接合後、透明封止樹脂等で封止して製造される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の製造において、リードフレーム等の金属片上に、ダイボンディング用樹脂ペースト(導電性ペースト)を塗布し、次いで半導体素子を搭載した後、当該導電性ペーストを硬化させて固定される。導電性ペーストの硬化物には、これらの部材間の接合、さらに導電性および放熱性等の特性が要求されることから、導電性ペーストは、これらの部材間に十分に濡れ広がる必要があり、この観点からは粘度が低いことが好ましい。
【0005】
上記の観点からは、半導体素子の直下領域に導電性ペーストからなる層が存在していればよい。しかしながら、
図5に示すように、半導体素子1を、リードフレーム2に塗布された導電性ペースト3上に搭載する際に、半導体素子1の直下領域Aから導電性ペーストが横方向にはみ出し、裾引き3a(フィレット3a)を形成する。当該半導体素子の近傍に別の部材が存在した場合、裾引き3aの部分が、この別の部材を汚染する場合をあることを本発明者は見出した。このような課題は、近年、半導体パッケージのサイズが小さくなり、半導体素子から近い位置に別の部材が存在するようになったことから顕在化したものである。
導電性ペーストのはみ出しを抑制するには、導電性ペーストの濡れ広がり性が低いことが好ましいことから、導電性ペーストの濡れ広がり性と、はみ出しの抑制とはトレードオフの関係にあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の粘度を有する導電性ペーストであれば、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の濡れ広がり性に優れるとともに、半導体素子の直下領域からのはみ出しが抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0007】
本発明によれば、
BF型粘度計を用い、回転数0.5rpmで測定された粘度(25℃)が、100Pa・s以上であり、回転数5rpmで測定された粘度(25℃)が、21Pa・s以下である、導電性ペーストが提供される。
【0008】
本発明によれば、
前記導電性ペーストを硬化して得られる高熱伝導性材料が提供される。
【0009】
本発明によれば、
基材と、
前記基材上に接着層を介して搭載された半導体素子と、を備え、
前記接着層は、請求項1~12のいずれか1項に記載の導電性ペーストを硬化してなる、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の濡れ広がり性に優れており熱伝導性や接続性に優れるとともに、半導体素子の直下領域からのはみ出しが抑制され低汚染性に優れた導電性ペーストを提供することができる。言い換えれば、これらの特性のバランスに優れた導電性ペーストを提供することができる。すなわち、本発明の導電性ペーストを用いて得られる半導体装置は熱伝導性、接続信頼性および汚染性が改善されており製品信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【
図3】実施例2の導電性ペーストを用いて作成した試験片における半導体チップの上面写真である。
【
図4】比較例3の導電性ペーストを用いて作成した試験片における半導体チップの上面写真である。
【
図5】本発明の課題を説明する半導体装置の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0013】
本実施形態の導電性ペーストは、BF型粘度計(ブルックフィールド型粘度計)を用いて測定された下記粘度(1)および下記粘度(2)のいずれも満たす。
本実施形態の導電性ペーストが下記粘度(1)および下記粘度(2)のいずれも満たすことにより、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の濡れ広がり性に優れており熱伝導性や接続性に優れるとともに、半導体素子の直下領域からのはみ出し(裾引き、フィレットの形成)が抑制され低汚染性に優れており、これらの特性のバランスに優れる。すなわち、本発明の導電性ペーストを用いて得られる半導体装置は熱伝導性、接続信頼性および汚染性がバランスよく改善されており、結果として製品信頼性に優れる。
【0014】
(1)回転数0.5rpmで測定された粘度(25℃)は、100Pa・s以上、好ましくは105Pa・s以上、さらに好ましくは110Pa・s以上、特に好ましくは120Pa・s以上である。粘度(1)の上限値は特に限定されないが、濡れ広がり性の観点から、2,000Pa・s以下程度である。
(2)回転数5rpmで測定された粘度(25℃)は、21Pa・s以下、好ましくは20Pa・s以下、さらに好ましくは19Pa・s以下、特に好ましくは18Pa・s以下である。粘度(2)の上限値は特に限定されないが、半導体素子の直下領域からのはみ出し抑制の観点から、1Pa・s以上程度である。
前記粘度(1)および前記粘度(2)の数値範囲は適宜組み合わせることができる。
【0015】
また、本実施形態の導電性ペーストは、回転数0.5rpm粘度(1)および回転数5rpm粘度(2)の粘度比((1)/(2))を、5.0以上、好ましくは5.2以上、より好ましくは5.5以上とすることができる。
導電性ペーストの粘度が上記比の範囲にあれば、チキソトロピー性に優れ、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の濡れ広がり性におり優れるとともに、半導体素子の直下領域からのはみ出しがより抑制されており、これらの特性のバランスにさらに優れる。
【0016】
本実施形態の導電性ペーストは、さらに、下記試験条件で測定されたダイシェア強度が15N以上、好ましくは17N以上、より好ましくは19N以上である。上限値は特に限定されないが50N以下程度とすることができる。
【0017】
(試験条件)
Auめっきした銅フレーム上に、本実施形態の導電性ペーストを、塗布厚みが25±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ2.0mm×幅2.0mm×厚さ350±5μmのAuめっきしたシリコンチップを当該導電性ペースト上に配置して、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、200℃で2時間さらに175℃で4時間熱処理することで硬化体を得て、該硬化体について、上記Auめっきした銅フレームと、上記シリコンチップとの260℃におけるダイシェア強度を測定する。
【0018】
ダイシェア強度が上記範囲にあることにより、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間の接合強度に優れた導電性ペーストの指標となる。すなわち、導電性ペーストを調製する際に、ダイシェア強度が上記範囲を満足するように組成を調製することで、接合強度に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【0019】
本実施形態の導電性ペーストは、さらに、その硬化物の熱伝導率が9W/mK以上、好ましくは20W/mK以上、より好ましくは30W/mK以上である。
【0020】
硬化物の熱伝導率が上記範囲にあることにより、半導体素子等の熱の放熱性に優れることから、当該特性に優れた導電性ペーストの指標となる。すなわち、導電性ペーストを調製する際に、熱伝導率が上記範囲を満足するように組成を調製することで、放熱性に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【0021】
本実施形態の導電性ペーストは、さらに、下記試験条件で測定されたフィレット長さが130μm以下、好ましくは105μm以下、より好ましくは90μm以下、特に好ましくは75μm以下である。
【0022】
(試験条件)
銅フレーム上に、前記導電性ペーストを、塗布厚みが15±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ1.3mm×幅1.2mm×厚さ350±5μmのシリコンチップを当該導電性ペースト上に荷重50gfで載置し、当該導電性ペーストを銅フレームとシリコンチップとの間に濡れ広げた場合において、当該導電性ペーストが前記シリコンチップの直下領域から拡展した距離(濡れ広がった距離、裾引き長さ、フィレット長さ)を測定する。
【0023】
フィレット長さが上記範囲にあることにより、汚染抑制に優れた導電性ペーストの指標となる。すなわち、導電性ペーストを調製する際に、フィレット長さが上記範囲を満足するように組成等を調製することで、汚染抑制に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【0024】
本実施形態の導電性ペーストは、さらに、前記フィレット長さの前記試験条件で測定された、前記シリコンチップ直下における、当該シリコンチップ面積100%に対する前記導電性ペーストの濡れ広がり面積が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上である。濡れ広がり面積の上限値は特に限定されないが、製品信頼性の観点から100以上であることが望まれる。
【0025】
濡れ広がり面積が上記範囲にあることにより、リードフレーム等の金属片と半導体素子との間を十分に接合することができ、導電性、熱伝導性および接続性に優れることから製品信頼性に優れるとともに生産安定性に優れた導電性ペーストの指標となる。すなわち、導電性ペーストを調製する際に、濡れ広がり面積が上記範囲を満足するように組成等を調製することで、製品信頼性に優れるとともに生産安定性に優れた導電性ペーストを提供することができる。
【0026】
以下、このような特性を満たす本実施形態の導電性ペーストの組成について説明する。本実施形態の導電性ペーストは、以下に記載の成分の種類や添加量を選択し、製造条件を調整することで、上記の特性を満たすことができる。
【0027】
[導電性充填剤]
本実施形態の導電性ペーストは、導電性充填剤を含むことができる。
導電性充填剤は、導電性ペーストに対して熱処理が施されることにより、凝集して金属粒子連結構造を形成する。すなわち、導電性ペーストを加熱して得られるダイアタッチペースト層において、金属粉同士は互いに凝集して存在する。これにより、導電性や熱伝導性、基材への密着性が発現される。
【0028】
本実施形態の導電性ペーストに用いられる導電性充填剤としては、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉、銅粉、またはニッケル粉、あるいはこれらの合金を用いることができる。導電性および取扱い容易性の観点から銀粉を用いることが好ましい。
【0029】
導電性充填剤の形状は、特に限定されないが、たとえば球状、フレーク状、および鱗片状等を挙げることができる。本実施形態においては、導電性充填剤が球状粒子を含むことがより好ましい。これにより、導電性充填剤の凝集の均一性を向上させることができる。また、コストを低減させる観点からは、導電性充填剤がフレーク状粒子を含む態様を採用することもできる。さらには、コストの低減と凝集均一のバランスを向上させる観点から、導電性充填剤が球状粒子とフレーク状粒子の双方を含んでいてもよい。
【0030】
導電性充填剤の平均粒径(D50)は、たとえば0.1μm以上10μm以下である。導電性充填剤の平均粒径が上記下限値以上であることにより、濡れ広がり性が改善されるとともに、比表面積の過度な増大を抑制し、接触熱抵抗による熱伝導性の低下を抑えることが可能となる。また、導電性充填剤の平均粒径が上記上限値以下であることにより、半導体素子の直下領域からのはみ出しが抑制されるとともに、導電性充填剤間の金属粒子連結構造体の形成性を向上させることが可能となる。また、導電性ペーストのディスペンス性を向上させる観点からは、導電性充填剤の平均粒径(D50)が0.6μm以上2.7μm以下であることがより好ましく、0.6μm以上2.0μm以下であることが特に好ましい。なお、導電性充填剤の平均粒径(D50)は、たとえば市販のレーザー式粒度分布計(たとえば、(株)島津製作所製、SALD-7000等)を用いて測定することができる。
【0031】
また、導電性充填剤の最大粒径は、特に限定されないが、たとえば1μm以上50μm以下とすることができ、3μm以上30μm以下であることがより好ましく、4μm以上18μm以下であることが特に好ましい。これにより、濡れ広がり性と半導体素子の直下領域からのはみ出し抑制のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。
【0032】
導電性ペースト中における導電性充填剤の含有量は、導電性ペーストの粘度に影響を与え、本発明の効果の観点から、たとえば導電性ペースト全体に対して30質量%以上80質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
[熱硬化性樹脂]
本実施形態の導電性ペーストは、熱硬化性樹脂を含むことができる。
熱硬化性樹脂としては、シアネート樹脂、エポキシ樹脂、ラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂、およびマレイミド樹脂から選択される一種または二種以上を用いることができる。これらの中でも、本発明の効果および熱伝導性ペーストの接着性を向上させる観点からは、エポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。
【0034】
熱硬化性樹脂として用いられるエポキシ樹脂としては、1分子内にグリシジル基を2つ以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態で用いられるエポキシ樹脂としては、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、たとえばグリシジル基を1分子内に2つ以上含む化合物のうちの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノールなどのビスフェノール化合物またはこれらの誘導体、水素添加ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールF、水素添加ビフェノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジエタノールなどの脂環構造を有するジオールまたはこれらの誘導体、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールなどの脂肪族ジオールまたはこれらの誘導体などをエポキシ化した2官能のもの、トリヒドロキシフェニルメタン骨格、アミノフェノール骨格を有する3官能のもの、を用いることも可能である。熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、上記に例示されたものから選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0035】
これらの中でも、本発明の効果の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。また、本実施形態においては、導電性ペーストの塗布作業性をより効果的に向上させる観点からは、室温(25℃)において液状である液状エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0036】
熱硬化性樹脂として用いられるシアネート樹脂は、特に限定されないが、たとえば1,3-ジシアナトベンゼン、1,4-ジシアナトベンゼン、1,3,5-トリシアナトベンゼン、1,3-ジシアナトナフタレン、1,4-ジシアナトナフタレン、1,6-ジシアナトナフタレン、1,8-ジシアナトナフタレン、2,6-ジシアナトナフタレン、2,7-ジシアナトナフタレン、1,3,6-トリシアナトナフタレン、4,4'-ジシアナトビフェニル、ビス(4-シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エーテル、ビス(4-シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4-シアナトフェニル)スルホン、トリス(4-シアナトフェニル)ホスファイト、トリス(4-シアナトフェニル)ホスフェート、ノボラック樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるシアネート類、ならびにこれらの多官能シアネート樹脂のシアネート基を三量化することによって形成されるトリアジン環を有するプレポリマーから選択される一種または二種以上を含むことができる。上記プレポリマーは、上記の多官能シアネート樹脂モノマーを、たとえば鉱酸、ルイス酸などの酸、ナトリウムアルコラート、第三級アミン類などの塩基、または炭酸ナトリウムなどの塩類を触媒として重合させることにより得ることができる。
【0037】
熱硬化性樹脂として用いられるラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂としては、たとえば分子内に(メタ)アクリロイル基を二つ以上有するラジカル重合性のアクリル樹脂を使用することができる。本実施形態においては、上記アクリル樹脂として、分子量が500~10000であるポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリ(メタ)アクリレートであって、(メタ)アクリル基を有する化合物を含むことができる。なお、熱硬化性樹脂としてラジカル重合性の炭素-炭素二重結合を1分子内に2つ以上有する樹脂を用いる場合、熱伝導性ペーストは、たとえば熱ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を含むことができる。
【0038】
熱硬化性樹脂として用いられるマレイミド樹脂は、特に限定されないが、たとえばN,N'-(4,4'-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンなどのビスマレイミド樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0039】
熱硬化性樹脂は、ビフェニル骨格を有する樹脂として、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂)を含むことができる。これにより、導電性ペーストの金属密着性を向上させることができる。
【0040】
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂は、その分子構造内にビフェニル骨格を有し、かつ、エポキシ基を2個以上有するものであれば、その構造は特に限定するものではないが、例えば、ビフェノールまたはその誘導体をエピクロロヒドリンで処理した2官能エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で用いても混合して用いても差し支えない。これらの中でも、特に分子内にエポキシ基が2個のものは、耐熱性の向上が優れたものとなるため好ましい。そのようなエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂などの、ビフェノール誘導体をエピクロロヒドリンで処理した2官能エポキシ樹脂;ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂のうち、エポキシ基が2個であるもの(フェノール核体数が2であると表現されることもある);ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型樹脂のうち、エポキシ基が2個であるもの;などが挙げられる。
【0041】
導電性ペースト中における熱硬化性樹脂の含有量は、本発明の効果の観点から、たとえば導電性ペースト全体に対して、1質量%以上15質量%以下、好ましくは2質量%以上12質量%以下、より好ましくは2.5質量%以上10質量%以下である。
【0042】
(硬化剤)
本実施形態の導電性ペーストは、硬化剤を含むことができる。これにより、導電性ペーストの硬化性を向上させることができる。硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、およびフェノール化合物から選択される一種または二種以上を用いることができる。これらの中でも、ジシアンジアミドおよびフェノール化合物のうちの少なくとも一方を含むことが、製造安定性を向上させる観点から特に好ましい。
【0043】
硬化剤として用いられるジヒドラジド化合物としては、アジピン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ジヒドラジドなどのカルボン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。また、硬化剤として用いられる酸無水物としてはフタル酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水マレイン酸とポリブタジエンの反応物、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられる。
【0044】
硬化剤として用いられるフェノール化合物は、1分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物である。より好ましい1分子内のフェノール性水酸基の数は2~5であり、特に好ましい1分子内のフェノール性水酸基数は2つまたは3つである。これにより、導電性ペーストの塗布作業性をより効果的に向上させることができるとともに、硬化時に架橋構造を形成して導電性ペーストの硬化物特性を優れたものとすることができる。上記フェノール化合物は、たとえばビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラメチルビフェノール、エチリデンビスフェノール、メチルエチリデンビス(メチルフェノール)、シクロへキシリデンビスフェノール、ビフェノールなどのビスフェノール類およびその誘導体、トリ(ヒドロキシフェニル)メタン、トリ(ヒドロキシフェニル)エタンなどの3官能のフェノール類およびその誘導体、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのフェノール類とホルムアルデヒドを反応することで得られる化合物で2核体または3核体がメインのものおよびその誘導体から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、ビスフェノール類を含むことがより好ましく、ビスフェノールFを含むことが特に好ましい。
【0045】
また、本実施形態において、硬化剤としてのビフェニル骨格を有する樹脂としては、ビフェニル骨格を有するフェノール樹脂(フェノール化合物)を用いることができる。これにより、導電性ペーストの導電性および基材に対する密着性を向上させることができる。ビフェニル骨格を有するフェノール樹脂としては、その分子構造内にビフェニル骨格を有し、かつ、フェノール基を2個以上有するものであれば、その構造は特に限定するものではない。
【0046】
導電性ペースト中における硬化剤の含有量は、本発明の効果の観点から、たとえば導電性ペースト全体に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
[(メタ)アクリレート化合物]
本実施形態の導電性ペーストは、(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。(メタ)アクリレート化合物は、導電性ペーストに含まれるバインダー樹脂の架橋反応に関与する反応性基を有する反応性希釈剤として用いられる。
(メタ)アクリレート化合物としては、(メタ)アクリル基を1つのみ有する単官能アクリルモノマー、または(メタ)アクリル基を2つ以上有する多官能アクリルモノマーを用いることができる。
【0048】
単官能アクリルモノマーとしては、例えば、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングルコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級化物、グリシジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2-(メタ)アクロイロキシエチルアシッドホスフェートなどを挙げることができる。単官能アクリルモノマーとしては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
単官能アクリルモノマーとしては、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材への密着性の観点から、上記具体例のうち、2-フェノキシエチルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0050】
多官能アクリルモノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アタクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールビス(2-メチル(メタ)アクリレート)、4,4'-イソプロピリデンジフェノールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン、1,4-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6-ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、N,N'-ジ(メタ)アクリロイルエチレンジアミン、N,N'-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、又は1,4-ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジンなどが挙げられる。
【0051】
本実施形態において、本発明の効果および得られる導電性ペーストの基材への密着性の観点から、導電性ペースト中における(メタ)アクリレート化合物の含有量は、導電性ペースト全体に対して0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0052】
[有機溶剤]
本実施形態の導電性ペーストは、有機溶剤を含むことができる。有機溶剤は熱可塑性樹脂の架橋反応に関与する反応性基を有していない非反応性溶剤として用いられる。
有機溶剤を含むことにより、得られる導電性ペーストの流動性を調整して、濡れ広がり性やはみ出し抑制を改善することができ、添加剤のブリードアウトを抑制することができる。
【0053】
有機溶剤としては、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α-ターピネオール、β-ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)、2-オクタノン、イソホロン(3、5、5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン)もしくはジイソブチルケトン(2、6-ジメチル-4-ヘプタノン)、γ-ブチロラクトン等のケトン類;
酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2-ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;
テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2-ビス(2-ジエトキシ)エタンもしくは1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;
酢酸2-(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;
2-(2-メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;
トルエン、キシレン、n-パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;
アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;
アセトアミドもしくはN,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;
低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変性シリコンオイル等が挙げられる。
【0054】
本実施形態において、導電性ペーストの粘度を調整する観点から、導電性ペースト中における有機溶剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
(その他の成分)
本実施形態の導電性ペーストは、上述の成分に加え、必要に応じて、当該分野で通常用いられる種々のさらなる成分を含み得る。さらなる成分としては、シランカップリング剤、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤、低応力剤、無機フィラー等が挙げられるが、これらに限定されず、所望の性能に応じて選択することができる。
【0056】
硬化促進剤は、反応性希釈剤として用いられるエポキシモノマーまたはバインダー樹脂として用いられるエポキシ樹脂と、硬化剤との反応を促進させるために用いられる。硬化促進剤としては、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;ジシアンジアミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン等のアミジンや3級アミン;上記アミジンまたは上記3級アミンの4級アンモニウム塩等の窒素原子含有化合物などが挙げられる。
【0057】
ラジカル重合開始剤としては、具体的には、アゾ化合物、過酸化物などを用いることができる。
【0058】
無機フィラーとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ等の溶融シリカ;結晶シリカ、非晶質シリカ等のシリカ;ナノシリカ;二酸化ケイ素;アルミナ;水酸化アルミニウム;窒化珪素;および窒化アルミ等が挙げられる。導電性ペーストのチキソコントロールの観点からナノシリカを用いることが好ましい。
【0059】
前記ナノシリカとしては、フュームドシリカやコロイダルシリカを挙げることができる。前記ナノシリカの粒子径は、例えば1nm~100nm、好ましくは2nm~50nmである。
【0060】
(導電性ペーストの調製)
導電性ペーストの調製方法は、特に限定されないが、たとえば上述した各成分を予備混合した後、3本ロールを用いて混練を行い、さらに真空脱泡することにより、ペースト状の組成物を得ることができる。この際、たとえば予備混合を減圧下にて行う等、調製条件を適切に調整することによって、導電性ペーストの長期作業性を向上することができる。
【0061】
本実施形態の導電性ペーストは、用途に応じて粘度を調整することができる。導電性ペーストの粘度は、用いるバインダー樹脂の種類、希釈剤の種類、それらの配合量等を調整することにより制御することができる。本実施形態の導電性ペーストの粘度の下限値は、
例えば、10Pa・s以上であり、好ましくは20Pa・s以上であり、より好ましくは30Pa・s以上である。これにより、導電性ペーストの作業性を向上させることができる。一方で、導電性ペーストの粘度の上限値は、例えば、1×103Pa・s以下であり、好ましくは5×102Pa・s以下であり、より好ましくは2×102Pa・s以下である。これにより、塗布性を向上させることができる。
【0062】
(用途)
本実施形態の導電性ペーストの用途について説明する。
本実施形態に係る導電性ペーストは、硬化することにより高熱伝導性材料として用いることができ、例えば、基板と半導体素子とを接着し、高熱伝導性および高導電性を付与するために用いられる。ここで、半導体素子としては、例えば、半導体パッケージ、LEDなどが挙げられる。
本実施形態に係る導電性ペーストは、従来の導電性ペーストと比べて、接続信頼性および汚染性が改善されており、製品信頼性が向上されている。これにより、発熱量が大きい半導体素子を基板に搭載する場合や半導体パッケージのサイズが小さい場合に好適に用いることができる。なお、本実施形態において、LEDとは、発光ダイオード(Light Emitting Diode)を示す。
【0063】
LEDを用いた半導体装置としては、具体的には、砲弾型LED、表面実装型(Surface Mount Device:SMD)LED、COB(Chip On Board)、Power LEDなどが挙げられる。
【0064】
なお、上記半導体パッケージの種類としては、具体的には、CMOSイメージセンサ、中空パッケージ、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FC-BGA(Flip Chip BGA)、MAP-BGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
【0065】
以下に、本実施形態に係る導電性ペーストを用いた半導体装置の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す断面図である。
本実施形態に係る半導体装置100は、基材30と、導電性ペーストの硬化物である接着剤層10を介して基材30上に搭載された半導体素子20とを備える。半導体素子20と基材30は、たとえばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、たとえば封止樹脂50により封止される。
【0066】
ここで、接着剤層10の厚さの下限値は、例えば、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストの硬化物の熱容量を向上し、放熱性を向上できる。また、接着剤層10の厚さの上限値は、例えば、50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。これにより、導電性ペーストが、放熱性を向上した上で好適な密着力を発現できる。
【0067】
図1において、基材30は、例えば、リードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32または基材30上に接着剤層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、例えば、ボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(基材30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、例えば、42アロイ、Cuフレームにより構成される。
【0068】
基材30は、有機基板や、セラミック基板であってもよい。有機基板としては、たとえばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等によって構成されるものが好ましい。なお、基材30の表面は、例えば、銀、金などの金属により被膜されていてもよい。これにより、接着剤層10と、基材30との接着性を向上できる。
【0069】
図2は、
図1の変形例であり、本実施形態に係る半導体装置100の一例を示す断面図である。本変形例に係る半導体装置100において、基材30は、たとえばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0070】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する。
まず、基材30の上に、導電性ペーストを塗工し、次いで、その上に半導体素子20を配置する。すなわち、基材30、導電性ペースト、半導体素子20がこの順で積層される。導電性ペーストを塗工する方法としては限定されないが、具体的には、ディスペンシング、印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
本実施形態の導電性ペーストは、基材30と半導体素子20との間の濡れ広がり性に優れており熱伝導性や接続性に優れるとともに、半導体素子20の直下領域からのはみ出し(フィレットの形成)が抑制されており、これらの特性のバランスに優れる。すなわち、本発明の導電性ペーストを用いて得られる半導体装置は熱伝導性、接続信頼性および汚染性が改善されており、結果として製品信頼性に優れる。
【0071】
次いで、導電性ペーストを前硬化、続いて後硬化することで、導電性ペーストを硬化させる。前硬化および後硬化といった熱処理により、導電性ペースト中の銀粒子が凝集し、複数の銀粒子同士の界面が消失してなる熱伝導層が接着剤層10中に形成される。これにより、接着剤層10を介して、基材30と、半導体素子20とが接着される。次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。これにより半導体装置を製造することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0073】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
実施例および比較例で用いた成分を以下に示す。
(熱硬化性樹脂)
-エポキシ樹脂1:ビスフェノールF・エピクロルヒドリンのジグリシジルエーテル(日本化薬社製、RE-303SL、エポキシ当量160g/eq)
【0075】
(硬化剤)
-硬化剤1:硬化剤1:ビスフェノールF(DIC社製、DIC-BPF)
【0076】
((メタ)アクリレート化合物)
-アクリルモノマー1:2-フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステルPO)
-アクリルモノマー2:ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学社製、NKエステルA-1000)
-アクリルモノマー3:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(共栄社化学社製、ライトエステル1,6HX)
【0077】
(ラジカル開始剤)
-ラジカル開始剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ社製、パーカドックスBC、過酸化物)
(硬化促進剤)
-硬化促進剤1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成社製、キュアゾール2PHZ-PW)
【0078】
(導電性充填剤)
-銀フィラー1:球状銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製、AG-DSB-114、D50:0.7μm)
-銀フィラー2:フレーク状銀粒子(福田金属箔粉工業社製、HKD-16、メジアン径2.0μm)
-銀フィラー3:フレーク状銀粒子(徳力本店社製、TC-765、メジアン径2.1μm)
【0079】
(溶剤)
-溶剤1:トリプロピレングリコールモノn-ブチルエーテル(日本乳化剤社、BFTG)
-溶剤2:γ-ブチロラクトン(和光純薬工業社、GBL)
【0080】
(導電性金属粉)
-銀粉1:フレーク状銀粉(平均粒径:5.0μm、徳力化学株式会社製、TKR-4A)
【0081】
(実施例1~5、比較例1~4)
<ペースト状接着剤組成物の作製>
まず表1の「ワニス組成」に記載の配合量の成分を、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ワニス状混合物を作製した。次いで、得られたワニス状混合物を、表1の「ペースト組成」に記載の配合量で用い、銀粉および溶剤を混合し、常温で、3本ロールミルで混練することにより、ペースト状の組成物(導電性ペースト)を得た。
【0082】
各実施例及び各比較例の導電性ペーストを、以下の項目について評価した。
(粘度)
BF粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて、25℃、回転数0.5rpmにおける粘度aと、25℃、回転数5rpmにおける粘度bを測定した。得られた結果から粘度比(a/b)を算出した。結果を表1に示す。
【0083】
(濡れ広がり性(Coverage))
銅フレーム上に、得られた導電性ペーストを、塗布厚みが15±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ1.3mm×幅1.2mm×厚さ350±5μmのシリコンチップを当該導電性ペースト上に荷重50gfで載置し、当該導電性ペーストを銅フレームとシリコンチップとの間に濡れ広げた。2値化により、シリコンチップの面積100%に対して濡れ広がった面積を算出した。
図3に、実施例2の導電性ペーストを用いて作成した試験片における半導体チップの上面写真を示し、
図4に、比較例3の導電性ペーストを用いて作成した試験片における半導体チップの上面写真を示す。
【0084】
(裾引き(フィレット)長さ)
上記の濡れ広がり性試験と同様に、導電性ペーストを銅フレームとシリコンチップとの間に濡れ広げた。レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK-X1000)により、当該導電性ペーストが前記シリコンチップの端部から拡展した距離(裾引き長さ、フィレット長さ)を測定した。
【0085】
(ダイシェア強度)
Auめっきした銅フレーム上に、得られた導電性ペーストを、塗布厚みが25±5μmとなるように塗布し、次いで、長さ2.0mm×幅2.0mm×厚さ350±5μmのAuめっきしたシリコンチップを当該導電性ペースト上に配置した。次いで、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、200℃で2時間さらに175℃で4時間熱処理することで硬化体を得た。この硬化体について、上記Auめっきした銅フレームと、上記シリコンチップとの260℃におけるダイシェア強度を測定した。
【0086】
(熱伝導率)
得られたペースト状樹脂組成物を、テフロン板上に塗布し、窒素雰囲気下で、30℃から200℃まで60分間かけて昇温し、続けて200℃で120分間熱処理した。これにより、厚さ1mmの、ペースト状樹脂組成物の熱処理体を得た(「テフロン」は、フッ素樹脂に関する登録商標である)。
次いで、レーザーフラッシュ法により、熱処理体の厚み方向の熱拡散係数αを測定した。測定温度は25℃とした。
また、示差走査熱量(Differential scanning calorimetry:DSC)測定により、比熱Cpを測定した。
さらに、JIS K 6911に準拠して、密度ρを測定した。
これらの値を用いて、以下の式に基づいて、熱伝導率λを算出した。
熱伝導率λ[W/(m・K)]=α[m2/sec]×Cp[J/kg・K]×ρ[g/cm3]
【0087】