(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111664
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】結像光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/04 20060101AFI20220725BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G02B13/04 D
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007243
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健太
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA03
2H087MA07
2H087NA15
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA19
2H087PB12
2H087PB13
2H087QA02
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】小型であり、良好な光学性能を得ることが可能な、ミラーレスカメラに最適な結像光学系を提供する。
【解決手段】本発明に係る結像光学系は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、正の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、無限遠から至近へのフォーカシングに際して、前記第2レンズ群L2は像側に移動し、前記第1レンズ群L1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群L3は像面に対して固定であり、前記第1レンズ群L1は少なくとも1つの接合レンズを有し、前記第2レンズ群L2は正レンズ素子L2pを含む2枚以上のレンズを有し、所定の条件式を満足することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、正の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、
無限遠から至近へのフォーカシングに際して、前記第2レンズ群L2は像側に移動し、前記第1レンズ群L1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群L3は像面に対して固定であり、
前記第1レンズ群L1は少なくとも1つの接合レンズを有し、
前記第2レンズ群L2は正レンズ素子L2pを含む2枚以上のレンズを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系。
(1) -5.5<φ/φ2<-2.5
(2) |φ1cim/νd1cim+φ1cip/νd1cip|<0.0007
(3) |(PgF1cim-PgF1cip)/(νd1cim-νd1cip)|<0.00135
但し、
φは無限遠合焦時のレンズ全系の屈折力、
φ2は前記第2レンズ群L2の屈折力、
φ1cimは前記第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子の屈折力、
νd1cimは前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のアッベ数、
φ1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子の屈折力、
νd1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のアッベ数、
PgF1cimは、前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比、
PgF1cipは、前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比である。
【請求項2】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
(4) 2.0<φ/φ3<3.5
但し、
φ3は前記第3レンズ群L3の屈折力である。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の結像光学系。
(5) 0.70<Y/Bf
但し、
Yは最大像高、
Bfは前記第3レンズ群L3の最も像側の面の面頂から像面までの距離である。
【請求項4】
前記第1レンズ群L1に含まれる最も物体側から3枚目までの負レンズ素子のうち少なくとも1枚の負レンズ素子が以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の結像光学系。
(6) 58.00<νd1n
但し、
νd1nは前記負レンズ素子のアッベ数である。
【請求項5】
前記正レンズ素子L2pが以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の結像光学系。
(7) 0.0140<ΔPgFL2p
但し、
ΔPgFL2pは前記正レンズ素子L2pの異常部分分散性であり、以下の式で表される。
ΔPgFL2p=PgFL2p+0.0018×νdL2p-0.64833
但し、
PgFL2pは前記正レンズ素子L2pのg線とF線に関する部分分散比、
νdL2pは前記正レンズ素子L2pのアッベ数である。
【請求項6】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の結像光学系。
(8) 0.40<EXP/TL
但し、
EXPは無限遠合焦時の射出瞳から像面までの距離、
TLは前記第1レンズ群L1の最も物体側の面の面頂から像面までの距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、銀塩カメラ及びビデオカメラ等に最適であり、特に、画角が90°~100°程度で、小型で、バックフォーカスの短いミラーレスカメラに最適な結像光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献において従来の結像光学系が開示されている。
【0003】
特許文献1では、画角が90°~100°程度で、レンズ全系の全長が短く、バックフォーカスが短い結像光学系が開示されている。
【0004】
また、特許文献2、特許文献3では、画角が90°程度の結像光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許6374713号公報
【特許文献2】特許6558103号公報
【特許文献3】特許6665960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示されている結像光学系は、フォーカス群が1枚の負レンズで構成されているため重量が軽減されフォーカシング速度や停止位置精度の向上は見込まれる一方、特にフォーカシング時の倍率色収差変動が大きいという問題がある。
【0007】
また、特許文献2や3で開示されている結像光学系は、フォーカシング時の収差変動は抑えられているがレンズ全系の全長が長いという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来の結像光学系の課題を解決し、小型であり、良好な光学性能を得ることが可能な、ミラーレスカメラに最適な結像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の結像光学系に係る第1の発明は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、正の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、無限遠から至近へのフォーカシングに際して、前記第2レンズ群L2は像側に移動し、前記第1レンズ群L1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群L3は像面に対して固定であり、前記第1レンズ群L1は少なくとも1つの接合レンズを有し、前記第2レンズ群L2は正レンズ素子L2pを含む2枚以上のレンズを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系である。
(1) -5.5<φ/φ2<-2.5
(2) |φ1cim/νd1cim+φ1cip/νd1cip|<0.0007
(3) |(PgF1cim-PgF1cip)/(νd1cim-νd1cip)|<0.00135
但し、
φは無限遠合焦時のレンズ全系の屈折力、
φ2は前記第2レンズ群L2の屈折力、
φ1cimは前記第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子の屈折力、
νd1cimは前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のアッベ数、
φ1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子の屈折力、
νd1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のアッベ数、
PgF1cimは、前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比、
PgF1cipは、前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比である。
【0010】
また、第2の発明は、さらに、以下の条件式を満足することを特徴とする
結像光学系である。
(4) 2.0<φ/φ3<3.5
但し、
φ3は前記第3レンズ群L3の屈折力である。
【0011】
また、第3の発明は、さらに、以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系である。
(5) 0.70<Y/Bf
但し、
Yは最大像高、
Bfは前記第3レンズ群L3の最も像側の面の面頂から像面までの距離である。
【0012】
また、第4の発明は、さらに、前記第1レンズ群L1に含まれる最も物体側から3枚目までの負レンズ素子のうち少なくとも1枚の負レンズ素子が以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系である。
(6) 58.0<νd1n
但し、
νd1nは前記負レンズ素子のアッベ数である。
【0013】
また、第5の発明は、さらに、前記正レンズ素子L2pが以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系である。
(7) 0.0140<ΔPgFL2p
但し、
ΔPgFL2pは前記正レンズ素子L2pの異常部分分散性であり、以下の式で表される。
ΔPgFL2p=PgFL2p+0.0018×νdL2p-0.64833
但し、
PgFL2pは前記正レンズ素子L2pのg線とF線に関する部分分散比、
νdL2pは前記正レンズ素子L2pのアッベ数である。
【0014】
また、第6の発明は、さらに、以下の条件式を満足することを特徴とする結像光学系である。
(8) 0.40<EXP/TL
但し、
EXPは無限遠合焦時の射出瞳から像面までの距離、
TLは前記第1レンズ群L1の最も物体側の面の面頂から像面までの距離である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の課題であった小型化と良好な光学性能の両立を実現し、ミラーレスカメラに最適な結像光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る撮影距離1042mmでの縦収差図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る撮影距離1042mmでの横収差図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図7】本発明の実施例2に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る撮影距離604mmでの縦収差図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る撮影距離604mmでの横収差図である。
【
図11】本発明の実施例3に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図12】本発明の実施例3に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図13】本発明の実施例3に係る撮影距離908mmでの縦収差図である。
【
図14】本発明の実施例3に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図15】本発明の実施例3に係る撮影距離908mmでの横収差図である。
【
図16】本発明の実施例4に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図17】本発明の実施例4に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図18】本発明の実施例4に係る撮影距離882mmでの縦収差図である。
【
図19】本発明の実施例4に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図20】本発明の実施例4に係る撮影距離882mmでの横収差図である。
【
図21】本発明の実施例5に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図22】本発明の実施例5に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図23】本発明の実施例5に係る撮影距離925mmでの縦収差図である。
【
図24】本発明の実施例5に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図25】本発明の実施例5に係る撮影距離925mmでの横収差図である。
【
図26】本発明の実施例6に係る無限遠合焦時のレンズ構成図である。
【
図27】本発明の実施例6に係る無限遠合焦時の縦収差図である。
【
図28】本発明の実施例6に係る撮影距離826mmでの縦収差図である。
【
図29】本発明の実施例6に係る無限遠合焦時の横収差図である。
【
図30】本発明の実施例6に係る撮影距離826mmでの横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る結像光学系の実施例について詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明は本発明の結像光学系の一例を説明したものであり、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において本実施例に限定されるものではない。
【0018】
本実施例の結像光学系は、
図1、
図6、
図11、
図16、
図21、
図26に示すレンズ構成図からわかるように、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、正の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、無限遠から至近へのフォーカシングに際して、前記第2レンズ群L2は像側に移動し、前記第1レンズ群L1と前記開口絞りSと前記第3レンズ群L3は像面に対して固定であり、前記第1レンズ群L1は少なくとも1つの接合レンズを有し、前記第2レンズ群L2は正レンズ素子L2pを含む2枚以上のレンズを有することを特徴とする。
【0019】
本実施例の結像光学系は、さらに、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1) -5.5<φ/φ2<-2.5
(2) |φ1cim/νd1cim+φ1cip/νd1cip|<0.0007
(3) |(PgF1cim-PgF1cip)/(νd1cim-νd1cip)|<0.00135
但し、
φは無限遠合焦時のレンズ全系の屈折力、
φ2は前記第2レンズ群L2の屈折力、
φ1cimは前記第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子の屈折力、
νd1cimは前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のアッベ数、
φ1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子の屈折力、
νd1cipは前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のアッベ数、
PgF1cimは、前記接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比、
PgF1cipは、前記接合レンズL1ciを構成する正レンズ素子のg線とF線に関する部分分散比である。
【0020】
条件式(1)は、小型化と高性能化のため、前記第2レンズ群L2の屈折力を規定したものである。
【0021】
条件式(1)の上限値を超え、第2レンズ群の屈折力が強くなると、フォーカシング時の移動量が小さくなるため小型化には有利になるが、フォーカシングに際する収差変動が大きくなるため高性能化に不利となる。
【0022】
条件式(1)の下限値を超え、第2レンズ群の屈折力が弱くなると、フォーカシングに際する収差変動が小さくなるため高性能化には有利となるが、フォーカシング時の移動量が増えるため小型化に不利となる。
【0023】
なお、上述した条件式(1)について、上限値を-2.7に、また下限値を-5.2に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0024】
条件式(2)は、高性能化のため、第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciの1次の色消し条件の和を規定したものである。
【0025】
本実施例の結像光学系において第1レンズ群L1での中心光束の光線高は像側にいくほど高くなる。また第1レンズ群L1の最も像側の部位は開口絞りに近接する。そのため軸外光束への影響を抑えつつ軸上色収差を効果的に補正するには第1レンズ群L1の像側に接合レンズを配すると共に接合レンズを構成するレンズ素子の硝材を適切に選択することが好ましい。
【0026】
条件式(2)の上限値を超え、第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciの1次の色消し条件の和が大きくなると、1次の色消しが不十分となるため、軸上色収差が悪化し、これをレンズ全系で補正することが困難となる。
【0027】
なお、条件式(2)の上限値を0.00065に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0028】
条件式(3)は、高性能化のため、第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子と正レンズ素子のアッベ数及び部分分散比を規定したものである。
【0029】
条件式(3)の上限値を超え、第1レンズ群L1に含まれる接合レンズのうち最も像側に配する接合レンズL1ciを構成する負レンズ素子と正レンズ素子の部分分散比の差が大きくなる、若しくは、アッベ数の差が小さくなると、軸上色収差の2次スペクトルの補正が不十分となり、これをレンズ全系で補正することが困難となる。
【0030】
なお、条件式(3)の上限値を0.00130に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0031】
さらに、本実施例の結像光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(4) 2.0<φ/φ3<3.5
但し、
φ3は前記第3レンズ群L3の屈折力である。
【0032】
条件式(4)は小型化と高性能化のため前記第3レンズ群L3の屈折力を規定したものである。
【0033】
条件式(4)の上限値を超え、第3レンズ群L3の屈折力が弱くなると、バックフォーカスが長くなるため小型化に不利となる。
【0034】
条件式(4)の下限値を超え、第3レンズ群L3の屈折力が強くなると、特に像面湾曲が悪化しこれをレンズ全系で補正することが困難となるため高性能化に不利となる。
【0035】
なお、上述した条件式(4)について、上限値を3.2に、また下限値を2.2に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0036】
さらに、本実施例の結像光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(5) 0.70<Y/Bf
但し、
Yは最大像高、
Bfは前記第3レンズ群L3の最も像側の面の面頂から像面までの距離である。
【0037】
条件式(5)は小型化のため、レンズ全系のバックフォーカスを規定したものである。
【0038】
条件式(5)の下限値を超え、レンズ全系のバックフォーカスが長くなると、レンズ全系の全長が長くなるため小型化に不利となる。
【0039】
なお、上述した条件式(5)について、下限値を0.75に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0040】
さらに、本実施例の結像光学系は、前記第1レンズ群L1に含まれる最も物体側から3枚目までの負レンズ素子のうち少なくとも1枚の負レンズ素子が以下の条件式を満足することを特徴とする。
(6) 58.00<νd1n
但し、
νd1nは前記負レンズ素子のアッベ数である。
【0041】
条件式(6)は高性能化のため、第1レンズ群L1に含まれる負レンズ素子のアッベ数を規定したものである。
【0042】
条件式(6)の下限値を超え、前記第1レンズ群L1に含まれる最も物体側から3枚目までの負レンズ素子のうち少なくとも1枚の負レンズ素子のアッベ数が小さくなると倍率色収差が悪化しこれをレンズ全系で補正することが困難となる。
【0043】
なお、上述した条件式(6)について、下限値を60.00に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0044】
さらに、本実施例の結像光学系は、前記正レンズ素子L2pが以下の条件式を満足することを特徴とする。
(7) 0.0140<ΔPgFL2p
但し、
ΔPgFL2pは前記正レンズ素子L2pの異常部分分散性であり、以下の式で表される。
ΔPgFL2p=PgFL2p+0.0018×νdL2p-0.64833
但し、
PgFL2pは前記正レンズ素子L2pのg線とF線に関する部分分散比、
νdL2pは前記正レンズ素子L2pのアッベ数である。
【0045】
条件式(7)は高性能化のため第2レンズ群L2に含まれる正レンズ素子L2pの異常部分分散性を規定したものである。
【0046】
条件式(7)の下限値を超え、第2レンズ群L2に含まれる正レンズ素子の異常部分分散性が小さくなると、フォーカシングに際する倍率色収差変動が大きくなり、これをレンズ全系で補正することが困難となる。
【0047】
なお、上述した条件式(7)について、下限値を0.0150に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0048】
さらに、本実施例の結像光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(8) 0.40<EXP/TL
但し、
EXPは無限遠合焦時の射出瞳から像面までの距離、
TLは前記第1レンズ群L1の最も物体側の面の面頂から像面までの距離である。
【0049】
条件式(8)は、高性能化のため、レンズ全系の射出瞳位置を規定したものである。
【0050】
条件式(8)の下限値を超え、射出瞳位置が像面に近づくと、カメラのイメージャーへの周辺像高の主光線入射角が急になり、画像周辺での減光や色付きの原因となる。
【0051】
なお、条件式(8)の下限値を0.45に規定することで、前述の効果をより確実にすることができる。
【0052】
また、第2レンズ群L2の最も物体側に配するレンズ素子は物体側に凸面を向けたメニスカス形状であることが好ましい。
【0053】
第1レンズ群L1から第2レンズ群L2に入射する光線は収斂光であることから、第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ素子は物体側に凸面を向けたメニスカス形状とすることでアプラナティックになるため球面収差やコマ収差の発生を抑えることができる。
【0054】
以下、本発明に係る結像光学系の実施例1乃至6の数値データを示す。
【0055】
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面又は開口絞りの番号、rは各面の曲率半径、dは各面の間隔、ndはd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数、PgFは部分分散比、ΔPgFは異常部分分散性を示す。また、BFはバックフォーカスを表す。
【0056】
面番号を付した(絞り)には、平面または開口絞りに対する曲率半径∞(無限大)を記入している。
【0057】
[非球面データ]には[面データ]において*を付したレンズ面の非球面形状を与える各係数値を示している。非球面の形状は、光軸に直交する方向への変位をy、非球面と光軸の交点から光軸方向への変位(サグ量)をz、コーニック係数をK、4、6、8、10、12、14、16次の非球面係数をそれぞれA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16と置くとき、非球面の座標が以下の式で表わされるものとする。
【0058】
[各種データ]には、焦点距離等の値を示している。
【0059】
[可変間隔データ]には、各撮影距離状態における可変間隔及びBF(バックフォーカス)の値を示している。
【0060】
[レンズ群データ]には、各レンズ群を構成する最も物体側の面番号及び群全体の合成焦点距離と屈折力を示している。なお、以下の全ての諸元の値において、記載している焦点距離f、曲率半径r、レンズ面間隔d、その他の長さの単位は特記のない限りミリメートル(mm)を使用するが、光学系では比例拡大と比例縮小とにおいても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【0061】
また、各実施例に対応する収差図において、d、g、Cはそれぞれd線、g線、C線を表しており、ΔS、ΔMはそれぞれサジタル像面、メリジオナル像面を表している。さらに
図1、6、11、16、21、26に示すレンズ構成図において、Sは開口絞り、Iは像面、中心を通る一点鎖線は光軸である。
【0062】
以下に、各実施例に係る結像光学系の諸元値を示す。[面データ]において、第1列は物体側から数えたレンズ面の順番、第2列rはレンズ面の曲率半径、第3列dはレンズ面間隔、第4列ndはd線(波長λ=587.56nm)での屈折率、第5列νdはd線でのアッベ数、第6列PgFはg線(波長λ=435.84nm)とF線(波長λ=486.13nm)に関する部分分散比、第7列ΔPgFはg線とF線に関する異常部分分散性を表す。またr=∞は平面を表し、(BF)はバックフォーカス、(絞り)は絞り面を示し、空気の屈折率n=1.0000はその記載を省略する。
【実施例0063】
図1は実施例1に係る結像光学系の無限遠合焦時のレンズ構成図である。実施例1の結像光学系は、物体側から像側へ順に、フォーカシングに際して像面に対して固定で正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、フォーカシングに際して像側に移動し負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、フォーカシングに際して像面に対して固定で正の屈折力を有する第3レンズ群L3とから構成される。
【0064】
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、R1面が非球面で物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと両凸レンズの接合レンズと、物体側に凹面を向けた凹メニスカスレンズと、R1、R2両面が非球面の両凸レンズと、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと両凸レンズの接合レンズとから構成される。
【0065】
第2レンズ群L2は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、物体側に凸面を向けた凸メニスカスレンズとから構成される。
【0066】
第3レンズ群L3は、物体側から像側へ順に、R1、R2両面が非球面の両凸レンズと、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズとから構成される。
【0067】
続いて、以下に実施例1に係る結像光学系の諸元値を示す。
【0068】
数値実施例1
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd PgF ΔPgF
物面 ∞ (d0)
1 30.2914 1.5000 1.60311 60.70
2 14.3373 7.5876
3* 268.9588 1.5000 1.49710 81.56
4 22.5195 3.6356
5 1750.8813 0.9000 1.43700 95.10
6 31.6089 3.1967 1.85451 25.15
7 -255.7224 3.8016
8 -17.5512 0.8000 1.85451 25.15
9 -167.9085 0.1500
10* 47.4239 6.4008 1.88202 37.22
11* -23.6209 1.1610
12 35.5260 0.8000 1.85451 25.15 0.6103
13 17.7499 9.2101 1.43700 95.10 0.5336
14 -24.5403 1.0000
15(絞り) ∞ (d15)
16 96.7375 0.8000 1.63930 44.87
17 21.6511 1.8640
18 28.6099 1.9663 1.92286 20.88 0.6390 0.0283
19 40.2924 (d19)
20* 39.2818 6.9197 1.77250 49.50
21* -32.0648 1.8585
22 1000.0000 0.9000 1.85451 25.15
23 27.8303 (BF)
像面 ∞
[非球面データ]
3面 10面 11面 20面
K 205.79565 0.00000 0.00000 0.00000
A4 5.73446E-06 -1.52874E-05 1.21197E-05 -9.38511E-06
A6 -2.45112E-08 2.89572E-08 1.11605E-08 -2.15160E-08
A8 2.97636E-11 1.83368E-10 1.01199E-10 5.35902E-10
A10 2.83658E-12 -1.92518E-12 -2.09317E-14 -4.56961E-12
A12 -3.49274E-14 1.18209E-14 0.00000E+00 1.81408E-14
A14 1.79140E-16 -4.06974E-17 0.00000E+00 -2.78012E-17
A16 -2.99297E-19 4.93753E-20 0.00000E+00 0.00000E+00
21面
K 0.00000
A4 1.15831E-05
A6 -3.27663E-08
A8 2.79629E-10
A10 -1.57121E-12
A12 3.94316E-15
A14 -2.68968E-18
A16 0.00000E+00
[各種データ]
INF
焦点距離 23.99
Fナンバー 2.05
全画角2ω 90.09
像高Y 21.63
レンズ全長 90.81
[可変間隔データ]
INF 撮影距離1042mm
d0 ∞ 950.77
d15 3.1000 4.0914
d19 10.4034 9.4120
BF 21.3548 21.3548
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離 屈折力
L1 1 26.53 0.0377
L2 16 -77.81 -0.0129
L3 20 57.77 0.0173
L1cim 12 -42.39 -0.0236
L1cip 13 25.24 0.0396
第1レンズ群L1は、物体側から像側へ順に、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、R1面が非球面で物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと、両凹レンズと両凸レンズの接合レンズと、物体側に凹面を向けた凹メニスカスレンズと、R1、R2両面が非球面の両凸レンズと、物体側に凸面を向けた凹メニスカスレンズと両凸レンズの接合レンズとから構成される。