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特開2022-111667異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体、その製造方法、及びそれを用いた異種金属ドープ酸化セリウム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111667
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体、その製造方法、及びそれを用いた異種金属ドープ酸化セリウム
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/34 20060101AFI20220725BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20220725BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B01J23/34
B01J37/04 102
C01B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007247
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝紀
(72)【発明者】
【氏名】奥村 成喜
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA48
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169CA03
4G169CB81
4G169CC08
4G169CC17
4G169CC32
4G169CC33
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18X
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC10
4G169HA01
4G169HB06
4G169HE09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】異種金属でドープされた酸化セリウム製造用中間体、その製造方法、及びそれを用いた異種金属ドープ酸化セリウムに関する。異種金属ドープ酸化セリウムの粒度分布の均一性に優れ、歩留まりが高くなるという点で生産性が向上する。また、流動性に優れ、特に触媒として使用した場合に生産性及び反応効率を向上できる異種金属ドープ酸化セリウムを提供する。
【解決手段】含水量が7.0wt%以下の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体であって、異種金属が、マンガン、コバルト、鉄、ニッケルからなる群より選択される1又は2以上の金属である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水量が7.0wt%以下の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体。
【請求項2】
上記異種金属がマンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)からなる群より選択される1又は2以上の金属である請求項1に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を用いた異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
【請求項4】
異種金属ドープ酸化セリウムの粒子に関し、D90が60μm以上120μm以下である請求項3に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
【請求項5】
異種金属ドープ酸化セリウムの粒子に関し、D10が25μm以上40μm以下である請求項3又は4に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
【請求項6】
(A)原料を調合して水溶液を調製する工程、(B)前記水溶液を噴霧乾燥する工程を有する請求項1又は2に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の製造方法。
【請求項7】
上記工程(B)の後、(C)水分調整工程を有する請求項6に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の製造方法。
【請求項8】
上記工程(C)の後、(D)焼成工程を有する請求項7に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムを用いる水素製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属でドープされた酸化セリウム製造用中間体、その製造方法、及びそれを用いた異種金属ドープ酸化セリウムに関する。より詳細には、粒子の粒度分布均一性が高く、その結果流動性が高い為、特に触媒としての使用に適する異種金属ドープ酸化セリウム粒子を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化セリウムを主体とした無機材料は、高い耐熱性や、顕著な酸素の吸蔵放出能などを有することから、改質反応や水素製造などの触媒や、触媒担体、光触媒用塗料、ガスセンサや燃料電池用固体電解質など様々な用途で工業的に広く使用されている。なかでも酸化セリウムを主成分とした球状粒子は、その材料としての利便性から、数多くの用途提案がなされている。
酸化セリウムを主体とした無機材料はその用途から、粒度の均一なものが求められている。このため目的の粒度のものを均一に調製できれば、生産性の向上が期待できる。
【0003】
球状酸化セリウムの製法としては一般的に、セリウム塩と機能追加のために要する他金属塩を水系で混合し、そこにシュウ酸塩を加えて沈殿を得る方法が引用文献1に、アンモニアや炭酸アンモニウムを沈殿剤として加える方法が引用文献2に、引用文献3にはアルコキシドを用いて沈殿を形成する方法が示されている。ほかに、引用文献4には、アルカリを加えることで沈殿を得る方法も開示されている。
【0004】
しかし、シュウ酸塩を使用する場合は仮焼成工程において、凝集体の大きな塊となって
しまい易いという欠点を示す。また、アンモニアや炭酸アンモニウムを用いる場合にも、アンモニア成分の残存によって仮焼成工程において球状から柱状の物質になり易いことが報告されている。また、アルコキシドについてはそのものが高価であることから実用性が低く、アルカリを用いた共沈法も回収率の低さや、残渣の処理、沈殿法又は共沈法などバッチ処理であるがゆえに生産性が低い等、工業触媒として製法において実用上は多くの課題が多く残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003-514745号
【特許文献2】特許3793802号
【特許文献3】特開2007-153731号
【特許文献4】特開2010-089989号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
共沈法を主体とした球状酸化セリウムの合成には、球形状の維持、コスト、沈殿形成後の溶媒や残渣の処理など、工業的なコストおよび生産性の観点、および触媒の粒度分布の均一性の観点からはいまだ多く改善の余地があり、安価に製造できかつ高効率で均一な粒度分布を有する酸化セリウムを主とした酸化物粒子の製造方法が求められている。
なかでも、後述するように酸化セリウムの合成においては仮焼成時および/または焼成時の形状の破損を防ぎ、均一な粒度分布の粒子を得ることが、球状酸化セリウムの流動性および生産性の向上において非常に重要である。破損の割合は、製造に要する原料の使用量を左右し製造コストに多大な影響を与えるため特に改善が求められている。また、低い回収率で製造を継続することによって、一度焼成工程を経て酸化物となった副生成物については再利用が難しいとされている。さらには、破損した欠片等を選別除去する、篩分けなど後工程にも大きな負荷を与え、工程の長時間化、および運転設備のコストが上がってしまう等の問題が生じる。
【0007】
これまでの製造技術として、主に共沈法を用いる方法が数々提案されてきた。これは、水系のセリウム塩を主とした溶液に、酸、アンモニア、炭酸アンモニウム、アルコキシド、アルカリ水溶液等を添加することで沈殿を生じさせ、フィルタープレス等により回収し、洗浄作業により精製するという手法がとられている。しかし、大量の溶媒や添加剤の使用、処理などからすると、実用的にはスプレードライヤー(スプレー乾燥)などの連続式の噴霧乾燥機でセリウム混合溶液を連続的に乾燥させるほうが高効率で好ましい。
【0008】
上記セリウム塩を含む水溶液のスプレー乾燥では、仮焼成後に球形状を維持できず、粒度が不均一であるため、分級工程で除外される割合が多く、製造コストがかさみ、生産性が低下する欠点があった。この原因としては、仮焼成前の乾燥粉体の取扱い方法に起因することが考えられるが、その詳細は不明であった。
【0009】
本願の発明者らは、これら上記の現状と課題に対して鋭意検討の結果、特定の含水量を有する異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を用いて製造された異種金属ドープ酸化セリウムは、粒度分布及び粒子の形状の均一性が高く、上記課題を解決するものであることを見出した。
また、本願の発明者らは、高効率化の観点から、共沈法のように沈殿を形成せず、調合液を連続的に乾燥する噴霧乾燥やこれに準ずる乾燥工程を経ることで粒子の球状を維持することができ、高効率でセリウムを主体とする酸化物の調製が可能であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、以下1)~9)に関する。
1)
含水量が7.0wt%以下の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体。
2)
上記異種金属がマンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)からなる群より選択される1又は2以上の金属である上記1)に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体。
3)
上記1)又は2)に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を用いた異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
4)
異種金属ドープ酸化セリウムの粒子に関し、D90が60μm以上120μm以下である上記3)に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
5)
異種金属ドープ酸化セリウムの粒子に関し、D10が25μm以上40μm以下である上記3)又は4)に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
6)
(A)原料を調合して水溶液を調製する工程、(B)前記水溶液を噴霧乾燥する工程を有する上記1)又は2)に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の製造方法。
7)
上記工程(B)の後、(C)水分調整工程を有する上記6)に記載の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の製造方法。
8)
上記工程(C)の後、(D)焼成工程を有する上記7に記載の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法。
9)
上記3)乃至8)のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムを用いる水素製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異種金属ドープ酸化セリウムの粒度分布の均一性に優れ、その結果、製造工程において分級で除外される割合が小さくなり、歩留まりが高くなるという点で生産性が向上する。また、流動性に優れ、特に触媒として使用した場合に生産性及び反応効率を向上できる異種金属ドープ酸化セリウムを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の含水量]
本明細書において、異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体とは、原料を調合して水溶液を調製し、その水溶液を乾燥した顆粒を意味する。なお製造方法について詳細は後述する。
本発明の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体の含水量は、7wt%以下である。本発明者らは、含水量によって、最終製品である異種金属ドープ酸化セリウムの粒径均一性や流動性が異なることを見出した。含水量の上限として好ましいものは、順に6wt%
、5wt%、4wt%、3wt%、2.5wt%、2wt%、1.5wt%、1wt%である。また下限としては、好ましい順に0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%である。従って、含水量として特に好ましい範囲は、0.4wt%以上1wt%以下である。
なお、含水量は水分調整工程の前後における重量変化量から算出する。具体的にはサンプルの重量を電子天秤で測定(この結果をW1とする)し、水分調整工程を経たのち、再度電子天秤で測定(この結果をW2とする)し、以下式(1)に従い算出する。
[数1]
含水量(wt%)=(W2÷W1-1)×100 ・・・(1)
本発明の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体による異種金属ドープ酸化セリウムは生産性が高いことを特徴とする。生産性は粒度分布の結果から、以下の式(2)によって算出される。具体的には、粒径20μm~150μmの粒子の、粒度分布全体に対する割合から算出される。粒径20μm以下だとかさ密度の低下、150μm以上だと流動性の低下につながり、一般に異種金属ドープ酸化セリウムの粒子として20-150μmの使用が好ましく、この範囲外の粒子は分級等により除外する必要がある。なお、粒度分布及び後述するD10、D50、D90は、一般的な粒度分布測定器であればその詳細を問わないが、例えば株式会社セイシン企業製の、LMS-2000e USER等を使用して湿式条件下で測定することができる。
[数2]
生産性=(粒径が20μm~150μmの範囲における体積分布の割合)÷(粒径がすべての範囲における体積分布の割合)×100 ・・・(2)
【0013】
[異種金属ドープ酸化セリウムについて]
本発明は、異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を用いた異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法に関する。
酸化セリウムとはCeOで表わされる金属酸化物であり、セリアとも表現される。
また異種金属とは、Ce(セリウム)以外の金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mn、W、Sb、Sn、Mg、Si、Al、Ti、P等の遷移金属を使用することができる。またこの中でも好ましくはマンガン(Mn)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)であり、更に好ましくはMn、Coである。
なお本明細書においては、異種金属ドープ酸化セリウムを単に酸化セリウムと表現する場合がある。
【0014】
本発明の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法は、上記異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を用いたものである。
本発明の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法では、上記異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を成形したり、シリカ、アルミナ等の不活性担体に担持したり、そのまま焼成したりすることができるが、そのまま焼成するものが特に好ましい。
【0015】
[異種金属ドープ酸化セリウムのD90]
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、その粒子に関し、D90が、60μm以上120μm以下である場合が好ましい。ここでD90とは、累積の体積分率が90%となる点の粒径を表す。
このD90の下限は、更に好ましい順に70μm、80μm、90μm、95μmである。またD90の上限は、更に好ましい順に110μm、100μm、99μmである。すなわち、D90の最も好ましい範囲は、95μm以上99μm以下である。
【0016】
[異種金属ドープ酸化セリウムのD10]
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、その粒子に関し、D10が、25μm以上40μm以下である場合が好ましい。ここでD10とは、累積の体積分率が10%となる点の粒径を表す。
このD10の下限は、更に好ましい順に26μm、27μm、28μmである。またD10の上限は、更に好ましい順に36μm、34μm、32μmである。すなわち、D10の最も好ましい範囲は、28μm以上32μm以下である。
【0017】
[異種金属ドープ酸化セリウムのD50]
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、その粒子に関し、D50が、40μm以上59μm以下である場合が好ましい。ここでD50とは、累積の体積分率が50%となる点の粒径を表す。
このD50の下限は、更に好ましい順に45μm、48μm、50μm、51μmである。またD50の上限は、更に好ましい順に58μm、57μm、56μm、55μmである。すなわち、D50の最も好ましい範囲は、51μm以上55μm以下である。
【0018】
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、粒子径の均一性に優れる。
粒子径の均一性は、例えば下記数式(1)による不均一性の評価によって求めることができる。なお下記式(3)は不均一性を表す為、数値が大きい程不均一、すなわち均一性に劣ることを意味する。
[数3]
不均一性=(D90-D10)/ D50 ・・・(3)
【0019】
本発明の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体、及びそれを用いて得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、組成として以下式(i)を満たすものである場合が好ましい。
[化1]
Ce1-x2-y ・・・(i)

式(i)においてxは0.03以上0.40以下であり、yは酸化物の酸化状態による数値である。なおxの値としてより好ましくは、0.05以上0.35以下であり、更に好ましくは、0.07以上0.30以下である。また式(i)においてMは、上記異種金属である。
【0020】
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、粒径が均一であり、流動床型反応器において最小流動速度当たりの試料量が多い為、流動床での用途、特に流動床で用いる水素製造用途に特に有用である。水素製造には、水を分解する触媒反応プロセスが開発されており、酸化セリウムを高温で還元し酸素を放出させ、また高温で水と反応させる工程が流動床で実施されている。流動床での使用に際して、本発明のような均一な粒子は、粒子の流動が均一なため反応ガスの流れも均一で高効率になる、また経時的に粒子が小さくなり寿命を迎えるまでの間均一に微細化していくため、長期間安定な運転が可能である。さらに、最小流動速度に対する試料量が多いことにより、流動に必要なガス流速や圧力が同等の条件において、多くの触媒粒子を使用することが可能になるため反応の効率が上昇し、反応器の最小化、反応温度の低下などが可能となる。
【0021】
[製造工程(A)、(B)について]
本発明の異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体、及び異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法は、(A)原料を調合して水溶液を調製する工程、(B)前記水溶液を乾燥する工程を有する場合が好ましい。
<工程(A)について>
工程(A)は、原料を調合して水性調合液または水溶液を調製する工程である。
一般に金属添加酸化セリウムを構成する各元素の出発原料は特に制限されるものではない。セリウム成分原料としては酸化セリウムのようなセリウム酸化物、セリウム酸、酢酸セリウム、炭酸セリウム、水酸化セリウム、硝酸セリウムアンモニウムのような塩などを用いることができるが、好ましくは硝酸セリウムを使用した場合で、溶解性や排ガス処理の観点で操作性が良く良好な粒度分布を得ることができる。添加金属の例では、マンガン成分原料としては硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガンなどの硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、水酸化物等又はそれらの混合物を用いることができる。塩、酸化マンガン、金属マンガンなどを用いることができる。なお、当該金属原料としては、有機酸塩として用いる場合が好ましく、酢酸塩として用いる場合が最も好ましい。例えば、マンガンを用いる場合、より好ましくは酢酸マンガンなどの有機酸塩であり、これを使用した場合操作性が良く乾燥体の回収率も上昇し、焼成後も均一な粒度分布を得ることができる。調合については特に原料添加の順番などは関係なく、いずれの原料も蒸留水に完全溶解させることが重要である。調合中の温度に関しては、10℃から100℃が好ましく、20~90℃がより好ましい。より好ましいのは30~80℃である。なお本明細書において「~」は前後の数値を含むものとする。
工程(A)の具体的な例としては、以下が挙げられる。ただしこの記載に制限されるものではない。
蒸留水を10~100℃に保った状態で加熱攪拌しながら硝酸セリウム6水和物を溶解して水溶液を得る。この水溶液の完全溶解を確認したのち、酢酸マンガン4水和物を追加し溶解し、完全溶解を確認する。その後、硝酸アンモニウムを溶解して原料の水溶液を得る。
上記加熱攪拌の攪拌動力として、下限として好ましい順に0.01kW/m、0.10kW/m、0.15kW/m、0.20kW/mであり、上限として好ましい順に1.50kW/m、1.00kW/m、0.75kW/mである。すなわち最も好ましい範囲として0.20kW/m以上0.75kW/m以下である。
また、上記水溶液の溶液粘度として、下限として好ましい順に0.01cP、0.1cP、0.5cP、1cPであり、上限として好ましい順に1000cP、500cP、100cP、50cP、10cP、5cPである。すなわち最も好ましい範囲は、1cP以上5cP以下である。
さらに、工程A完了後、次工程に移るまでの時間として、下限として好ましい順に1分、5分、10分、30分であり、上限として好ましい順に1か月、15日、7日、3日、1日、10時間である。すなわち最も好ましい範囲は30分以上10時間以下である。
さらに、上記水溶液中の水分量として、固形分の含有量で表現すると、下限として好ましい順に10重量%、20重量%、30重量%であり、上限として好ましい順に80重量%、70重量%、60重量%である。すなわち、最も好ましい範囲として30重量%から60重量%である。ここでいう固形分の重量とは、投入する試薬固形成分を指すが、試薬に含まれる付着水や結晶水は水分として重量計算する。
【0022】
<工程(B)について>
工程(B)は、工程(A)で調整した水溶液を噴霧乾燥する工程である。
本工程を通して、上記調合液またはスラリーを乾燥粉体とする。乾燥方法は、調合液を完全に乾燥できる方法であれば特に制限はないが、例えばドラム乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、蒸発乾固等が挙げられる。これらのうち本発明においては、スラリーから短時間に粉体又は顆粒に乾燥することができる噴霧乾燥が特に好ましい。噴霧乾燥の乾燥温度はスラリーの濃度、送液速度等によって異なるが概ね乾燥機の入口における温度が150~350℃、出口における温度が70~250℃である。また、この際得られる乾燥紛体の平均粒径が10~500μmとなるよう乾燥するのが好ましい。なお本明細書においては、噴霧乾燥に準じる方法、例えばジェットターボドライヤー、フラッシュジェットドライヤーやスプレーパイロライザー等も噴霧乾燥に含まれるものとする。
噴霧乾燥における上記入口における温度の上限は、330℃がより好ましく、310℃が更に好ましい。また下限は170℃がより好ましく、190℃が更に好ましい。従って、190℃~310℃が特に好ましい範囲である。
噴霧乾燥における上記出口における温度の上限は、200℃が好ましく、180℃がより好ましく、160℃がより好ましく、150℃が更に好ましい。また下限は80℃がより好ましく、90℃が更に好ましい。従って、90℃~150℃が特に好ましい範囲である。また、噴霧乾燥における乾燥装置内の乾燥粉体の滞留時間は、1秒から3分が好ましく、より好ましくは5秒から1分、さらに好ましくは7秒から45秒、最も好ましくは10秒から30秒となる。
乾燥粉体の平均粒径に関する上限は、480μmがより好ましく、460μmが更に好ましい。また下限は20μmがより好ましく、40μmが更に好ましい。従って、40~460μmが特に好ましい範囲である。なお、平均粒子径は、上述のレーザー回折散乱粒度分布測定装置より粒子径分布を測定し、その体積平均(メジアン径 D50)として求める。
また、上記平均粒子径を実現する為には、ロータリータイプの噴霧乾燥の場合、噴霧器(アトマイザー)の回転数の最適化が好適である。アトマイザーの回転は触媒前駆体の組成によっても異なるが、好ましくは8,000rpm以上17,000rpm以下である。更に好ましいアトマイザー回転数の上限は、16500pmであり、特に好ましくは16000rpmであり、最も好ましくは15500rpmである。また更に好ましい下限は、8500rpmであり、特に好ましい下限は9000rpmであり、最も好ましい下限は9500rpmである。すなわち最も好ましいアトマイザー回転数の範囲は9500rpm以上16000rpm以下である。また、この回転数は相対遠心加速度によっても表され、2000G以上30000G以下であることが好ましい。またノズルタイプの噴霧乾燥の場合も、上記平均粒子径を達成するためには公知な技術が適用でき、任意のガス種や気液流量比、ノズル形状の使用が本発明に含まれる。
さらに、工程B完了後、次工程に移るまでの時間として、下限として好ましい順に1分、5分、10分、30分であり、上限として好ましい順に1か月、15日、7日、3日、1日、10時間である。すなわち最も好ましい範囲は5分以上10時間以下である。
工程(B)完了後の顆粒を保管する場合は、吸湿を防ぐため、ポリ袋に入れたものをアルミのラミジップに入れて保管する。
【0023】
<工程(D)について>
工程(A)、(B)によって得られた異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体に対して、工程(D)を経ることで異種金属ドープ酸化セリウムを製造することができる。
工程(D)は、工程(B)によって得られた乾燥粉体を仮焼成する工程である。
仮焼成の条件としては、空気流通下で250℃から700℃で、好ましくは250℃から600℃で焼成することで不要な硝酸根等の塩を除去することができ、加えて本焼工程後の異種金属ドープ酸化セリウムの粒子が凝集し塊になることを抑制できる。仮焼成時間は1時間から12時間が好ましく、昇温速度は0.1~10℃/minが好ましいが、さらに好ましくは0.5~5℃/minである。こうして仮焼成粉体を得る。仮焼成に関しては、トンネル炉、マッフル炉、箱型焼成炉などを用いることが可能であり、さらにはロータリーキルンのような焼成装置を用いることも可能である。
仮焼成中の雰囲気に関して、流通させるガスとしては空気が簡便で好ましいが、その他に不活性ガスとして窒素、二酸化炭素、還元雰囲気にするための窒素酸化物含有ガス、アンモニア含有ガス、水素ガスおよびそれらの混合物を使用することも可能である。また焼成時流通ガスの絶対湿度については、0.0001kg/kgDAから0.02kg/kgDAが好ましく、より好ましくは0.0001kg/kgDAから0.015kg/kgDA、さらに好ましくは、0.0001kg/kgDAから0.01kg/kgDAである。
【0024】
<工程(C)について>
工程(C)は、上記工程(B)と工程(D)との間における水分調整工程である。本発明では、工程(C)を経る、異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体、及び異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法が好ましい態様である。具体的な操作として、例えば金属または磁製の容器に異種金属ドープ酸化セリウム製造用中間体を厚さが1~30mmになるように入れ、大気中に放置することで含水量を調整する。このとき、容器にフタをすることは必須ではないが、フタをするほうが好ましく、穴なしのフタをすることがさらに好ましい。
水分調整を行う環境としては、絶対湿度5g/m以上25g/m以下である場合が好ましい。その下限として更に好ましくは、順に7g/m、8g/m、9g/m、10g/mである。またその上限とし更に好ましくは、順に22g/m、20g/m、15g/m、12g/mである。すなわち絶対湿度10g/m以上12g/m以下の環境であり、水分調整する時間としては10分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、最も好ましくは5時間以上となる。
また相対湿度で考える場合、例えば15℃~30℃の温度環境下、10%RH以上45%RH以下の湿度条件下で水分調整する場合が好ましい。温度として好ましい下限は順に17℃、19℃、20℃であり、上限は順に27℃、25℃、22℃である。湿度としては、好ましい下限は、順に12%RH、15%RH、17%RHであり、上限は好ましい順に40%RH、35%RH、30%RH、25%RH、20%RHである。
【0025】
<その他の工程について>
本発明の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法では、上記(A)~(D)以外に、成形工程や、本焼成等の工程を行うことができる。
成形工程としては、シリカ等の担体に担持する担持成形と、担体を使用しない非担持成形のいずれの成形方法も採用できる。具体的な成形方法としては、例えば、打錠成形、プレス成形、押出成形、造粒成形等が挙げられる。成形品の形状としては、例えば、円柱状、リング状、球状等が運転条件を考慮して適宜選択可能であるが、球状担体、特にシリカやアルミナ等の不活性担体に触媒活性成分を担持した、平均粒径3.0mm以上10.0mm以下、好ましくは平均粒径3.0mm以上8.0mm以下の担持触媒であるとよい。担持方法としては転動造粒法、遠心流動コーティング装置を用いる方法、ウォッシュコート方法等が広く知られており、仮焼成粉末が担体に均一に担持できる方法で有れば特に限定されないが、触媒の製造効率等を考慮した場合、転動造粒法が好ましい。具体的には、固定円筒容器の底部に、平らな、あるいは凹凸のある円盤を有する装置で、円盤を高速で回転させることにより、容器内にチャージされた担体を、担体自体の自転運動と公転運動の繰り返しにより激しく撹拌させ、ここに仮焼成粉体を添加することにより粉体成分を担体に担持させる方法である。なお、担持に際して、バインダーを使用するのが好ましい。使用できるバインダーの具体例としては、水やエタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコール、高分子系バインダーのポリビニールアルコール、無機系バインダーのシリカゾル水溶液等が挙げられるが、エタノール、メタノール、プロパノール、多価アルコールが好ましく、エチレングリコール等のジオールやグリセリン等のトリオール等がより好ましく、グリセリンの濃度5質量%以上の水溶液がさらに好ましい。グリセリン水溶液を適量使用することにより成形性が良好となり、機械的強度の高い、高性能な触媒が得られる。これらバインダーの使用量は、予備焼成粉末100質量部に対して通常2~60質量部であるが、グリセリン水溶液の場合は15~50質量部が好ましい。担持に際してバインダーと仮焼成粉末は成形機に交互に供給しても、同時に供給してもよい。また、成形に際しては、公知の添加剤、例えば、グラファイト、タルク等を少量添加してもよい。なお、成形において添加される成形助剤、細孔形成剤、担体はいずれも、原料を何らかの別の生成物に転換する意味での活性の有無にかかわらず、本発明における活性成分の構成元素として考慮しないものとする。
また本焼成工程では、仮焼成よりもさらに高い温度にて処理することで粒子の安定性を向上させ酸化物としての純度等を高めることを目的とする。本焼成における温度範囲は、空気流通下で最高温度を600℃から2000℃で、好ましくは700℃から1500℃で焼成することができる。焼成時間は1時間から40時間が好ましく、昇温速度は0.1~10℃/分が好ましいが、さらに好ましくは0.5~5℃/分である。
本焼成中の雰囲気に関して、流通させるガスとしては空気が簡便で好ましいが、その他に不活性ガスとして窒素、二酸化炭素、還元雰囲気にするための窒素酸化物含有ガス、アンモニア含有ガス、水素ガスおよびそれらの混合物を使用することも可能である。また焼成時流通ガスの絶対湿度については、0.0001kg/kgDAから0.02kg/kgDAが好ましく、より好ましくは0.0001kg/kgDAから0.015kg/kgDA、さらに好ましくは、0.0001kg/kgDAから0.01kg/kgDAである。
【0026】
本発明の異種金属ドープ酸化セリウムは、上記工程(A)において使用される原料について、下記に示す数式(4)を満たすことを特徴とする。これによって、乾燥後の粒子の粒度分布を制御することができ、更には乾燥工程での付着等の低減による回収効率の改善、さらには焼成工程において数センチオーダーの積載条件での焼成を実施しても質の変化がないことが期待される。この値は、小さすぎると乾燥器内の付着が生じることで乾燥体の十分な回収率が得られない場合があり、逆に大きすぎると乾燥粒子の形状が球形状を維持できなくなる。
[数4]

0.7 ≦ (a+b)/c ≦ 8.0 ・・・ (4)

ここで、a~cは以下を意味する。

a:原料中のセリウム(Ce)の物質量(mol)
原料中のセリウムの物質量とは、原料として使用されるセリウムを含有する化合物中のセリウムの含有量を意味する。例えば硝酸セリウム6水和物1667.7gを原料として用いる場合、aは3.838molとなる。

b:原料中のセリウム以外の金属の物質量(mol)
原料中のセリウム以外の金属の物質量とは、原料として使用されるセリウム以外の金属を含有する化合物中の当該セリウム以外の金属の含有量を意味する。例えば酢酸マンガン4水和物141.1gを原料として用いる場合、マンガンの含有量を意味し、bは0.576molである。

c:防湿剤の物質量(mol)
原料として用いる防湿剤の物質量である。防湿剤としては、硝酸アンモニウムが一般的であるが、その他の塩も使用することができる。例えば、炭酸アンモニウムや、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム(アンモニア水)などが挙げられる。好ましくは、硝酸アンモニウムであり、効果および利便性が良い。
【0027】
上記式(4)における(a+b)/cの範囲は0.7~8.0であるが、上限が20であっても良く、10が更に好ましく、8.0がより好ましく、5.0が特に好ましい。また、下限としては、0.7であるが、1.2がより好ましく、1.3が更に好ましく1.4が特に好ましく、1.5が最も好ましい。従って、(a+b)/cの範囲としては1.5~5.0の場合が最も好ましい。
【0028】
本発明の異種金属ドープ酸化セリウムの製造方法では、上記工程(A)において使用される原料について、上記数式(4)を満たす場合が好ましい。上記数式(4)におけるb/cの上限としては、0.80がより好ましく、0.60が更に好ましく、0.50が特に好ましく、0.40が最も好ましい。また、下限としては、0.10がより好ましく、0.15が更に好ましく0.20が特に好ましく、0.25が最も好ましい。従って、b/cの範囲としては0.25~0.40である場合が最も好ましい。
【0029】
なお、上記a~cそれぞれについて好ましい範囲としては以下である。但し、本項記載の以下のa、b、cの値は調合工程(A)において原料投入間に仕込む蒸留水が1500質量部である場合であり、適宜スケールに応じて蒸留水との比率を考慮して調整する必要がある。
aとしては、1.0mol以上10mol以下である場合が好ましい。その下限としては、更に好ましい順に2.0mol、3.0molであり、上限としては更に好ましい順に5.0mol、4.0molである。すなわち3.0mol以上4.0mol以下である場合が最も好ましい。
bとしては、0.01mol以上1.0mol以下である場合が好ましい。その下限としては、更に好ましい順に0.1mol、0.3mol、0.5molであり、上限としては更に好ましい順に0.9mol、0.8mol、0.7molである。すなわち0.5mol以上0.7mol以下である場合が最も好ましい。
cとしては、0.5mol以上10.0mol以下である場合が好ましい。その下限としては、更に好ましい順に0.6mol、0.7molであり、上限としては更に好ましい順に5.0mol、4.0molである。すなわち0.7mol以上4.0mol以下である場合が最も好ましい。
【0030】
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、嵩比重が0.51g/cc以上1.50g/ccである場合が好ましい。嵩比重は例えば流動させて使用する場合には重要であり、小さすぎると決まった体積当たりに仕込める量が少なくなり触媒として使用する場合に反応の効率を低下させるためランニングコストがかかってしまう場合があり、一方で大きくなりすぎると流動に必要な流体の速度や圧力が大きくなりこれも同様にランニングコストの増加を引き起こす。
嵩比重の下限として更に好ましい順に0.53g/cc、0.55g/cc、0.58g/cc、0.60g/ccである。また上限として更に好ましい順に1.40g/cc、1.30g/ccで、1.20g/cc、1.10g/ccである。すなわち嵩比重として最も好ましくは、0.60g/cc以上1.10g/cc以下である。
【0031】
本発明の製造方法によって得られる異種金属ドープ酸化セリウムは、粒度分布の均一性が高いことを特徴とする。さらには、本発明の製造方法によって製造された異種金属ドープ酸化セリウムは、粒子径10μm以下の微細粒子の含有量が少ない点を特徴とする。従って、例えば以下用途における特性に優れる。
工業的な粉体一般、たとえば触媒、電池材料やセンサ材料、顔料や分散質や化粧品、研磨剤そのものまたはそれらの原料として用いる場合、流動性が改善し粉体としての扱いやすさや操作性に優れる。具体的には、フレコン、フィーダーやホッパーへの粉体の残留が少なくなり製造上のロスが少なくなる点が挙げられる。このような粉体としての操作性は、公知な方法で簡便に評価可能であり、例えば真密度や嵩密度や圧縮度のほか、安息角や崩壊角、差角であれば公知な方法が適用できる。
特に触媒として用いる場合、成形することで排ガス処理触媒や水素製造用触媒等に使用できる。粒度分布が均一なことで性能が向上し、さらに微細粒子が少ないことで反応器から系外への排出が抑えられ、安定した反応成績が期待できる。
電池材料やセンサ材料として用いる場合、粒度分布が均一なことで高密度化が期待でき導電率が向上し、性能の向上が期待できる。
研磨剤として用いる場合、たとえば半導体向けCMP研磨剤として用いる場合、粒度分布が均一なことにより、研磨後の面内の凹凸の均一性が改善された研磨が可能となる。
【実施例0032】
以下、具体例を挙げて実施例を示したが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り実施例に限定されるものではない。
【0033】
[実施例1]
蒸留水1500質量部を80℃に加熱攪拌しながら硝酸セリウム6水和物1667.7質量部を溶解して水溶液(A1)を得た。(A1)の完全溶解を確認したのち、酢酸マンガン4水和物141.1質量部を追加し溶解して水溶液(B1)を調製した。B1の完全溶解を確認した後、硝酸アンモニウムの150.2質量部を溶解して水溶液(C1)を調製した。上記水溶液を順次、激しく攪拌しながら混合し完全溶解状態を確認し、スプレードライヤーを用いて乾燥粉末(D1)を得た。スプレーの入口温度は240℃、出口温度は140℃とし、アトマイザーの回転数は10500rpmで実施した。このときの触媒活性成分の酸素を除いた組成比は原子比でCe=100、Mn=16であった。なお元素比率は、XRF装置を用いて測定した(以下同じ)。
その後、乾燥粉末を磁製の直径45mm、深さ36mmのるつぼに厚みが30mmになるように入れ、穴無しのフタをしたものを室温21℃、相対湿度18%、絶対湿度11.5g/mの環境下に5時間放置して中間体(E1)を得た後、空気流通下で50℃より300℃まで0.5℃/minにて昇温する工程で焼成を実施することで異種金属ドープ酸化セリウム触媒(触媒1)を得た。得られた異種金属ドープ酸化セリウム触媒の酸素を除いた元素組成比は原子比でCe=100、Mn=16であった。
【0034】
[実施例2]
乾燥粉末を磁製の直径45mm、深さ36mmのるつぼに厚みが30mmになるように入れ、穴無しのフタをしたものを室温21℃、相対湿度18%、絶対湿度11.5g/mの環境下に24時間放置した以外は実施例1と全く同様にして中間体(E2)を得たのち、これを実施例1と全く同様に焼成して異種金属ドープ酸化セリウム触媒(触媒2)を得た。
【0035】
[実施例3]
乾燥粉末を磁製の直径45mm、深さ36mmのるつぼに厚みが30mmになるように入れ、フタをせずに室温21℃、相対湿度18%、絶対湿度11.5g/mの環境下に5時間放置した以外は実施例1と全く同様にして中間体(E3)を得たのち、これを実施例1と全く同様に焼成して異種金属ドープ酸化セリウム触媒(触媒3)を得た。
【0036】
[比較例1]
乾燥粉末を磁製の直径45mm、深さ36mmのるつぼに厚みが30mmになるように入れ、フタをせずに室温21℃、相対湿度18%、絶対湿度11.5g/mの環境下に24時間放置した以外は実施例1と全く同様にして中間体(E4)を得たのち、これを実施例1と全く同様に焼成して異種金属ドープ酸化セリウム触媒(触媒4)を得た。
【0037】
[評価]
実施例1~3、比較例1で得られた異種金属ドープ酸化セリウム及び中間体について、メジアン径(D10,D50、D90)、粒度分布の均一性、生産性、含水量を測定し、以下基準に従って評価した。

<メジアン径>
株式会社セイシン企業製の、LMS-2000e USERを使用して湿式条件下で測定し、得られた体積分布におけるD50(累積の体積分率が50%となる点の粒径)をメジアン径とした。その他、同様に得られたD10(累積の体積分率が10%となる点の粒径)、D50、D90(累積の体積分率が90%となる点の粒径)を表1に示す。

<粒度分布の不均一性>
上記メジアン径(D50)を用いて、上記の数式(3)によって粒度分布の均一性を評価した。この値は任意粒子径を用い体積分布の幅の尺度で比較を行ったものである。なお用いられる粒子径の単位はμmとする。

<生産性>
粒度分布の結果から、上記の数式(2)によって算出される粒径20μm~150μmの粒子の、粒度分布全体に対する割合。

<含水量>
サンプルの重量を電子天秤で測定(この結果をW1とする)し、水分調整工程を経たのち、再度電子天秤で測定(この結果をW2とする)し、上記数式(1)に従い算出する。
【0038】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の中間体により、粒度分布の均一性が高い異種金属ドープ酸化セリウムを得ることができ、さらに異種金属ドープ酸化セリウムを製造する際の生産性が高く、より少ない原料で高効率に製造することができる。