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特開2022-111707既存躯体解体と新設杭の連続施工方法
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  • 特開-既存躯体解体と新設杭の連続施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111707
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】既存躯体解体と新設杭の連続施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/045 20060101AFI20220725BHJP
   E02D 11/00 20060101ALI20220725BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20220725BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
E02D29/045 A
E02D11/00
E02D5/34 Z
E04G23/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007315
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 進
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
2D147
2E176
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041CA01
2D041CB01
2D041DA03
2D041EA02
2D050CA02
2D050CB23
2D050DA03
2D050DB03
2D147AA05
2E176AA01
2E176DD23
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】工期短縮を図ることができる既存躯体解体と新設杭の連続施工方法を提供する。
【解決手段】地盤G内に既存する既存地下躯体10の解体工事と、この地盤Gに新設する杭の新設工事を連続して施工する方法であって、地盤G上から第一ケーシング20を既存地下躯体10以深まで圧入し、第一ケーシング20内の既存地下躯体10を除去するステップと、第一ケーシング20の内側に第二ケーシング28を挿入した後、第一ケーシング20を引き抜くステップと、第二ケーシング28を表層ケーシングとして地盤G内に場所打ち杭を築造するステップとを有するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に既存する既存地下躯体の解体工事と、この地盤に新設する杭の新設工事を連続して施工する方法であって、
地盤上から第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入し、第一ケーシング内の既存地下躯体を除去するステップと、
第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングを引き抜くステップと、
第二ケーシングを表層ケーシングとして地盤内に場所打ち杭を築造するステップとを有することを特徴とする既存躯体解体と新設杭の連続施工方法。
【請求項2】
第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングと第二ケーシングの間に充填材を詰め、その後、第一ケーシングを引き抜くことを特徴とする請求項1に記載の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法。
【請求項3】
第一ケーシングとして、下端側の内周面に切削刃を有するとともに全周回転可能に構成された円筒状の掘削ケーシングを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法。
【請求項4】
場所打ち杭としてアースドリル杭を築造することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存躯体解体と新設杭の連続施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、既存地下躯体などが存在する場所に新設の杭工事を行うことがある。この場合、既存地下躯体が杭に干渉することを避けるため、既存地下躯体の解体撤去を先行し、その後、地盤改良工事などを行ってから杭工事を施工することが多い。
【0003】
一方、既存地下躯体が存在する場合の関連工法として、本特許出願人は既に特許文献1に示すような工法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-263467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術のように、既存地下躯体の解体撤去を先行し、その後、地盤改良工事などを行ってから杭工事を施工する方法では、全体の工期が長期化するという問題があった。このため、工期短縮を図ることができる施工方法が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、工期短縮を図ることができる既存躯体解体と新設杭の連続施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法は、地盤内に既存する既存地下躯体の解体工事と、この地盤に新設する杭の新設工事を連続して施工する方法であって、地盤上から第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入し、第一ケーシング内の既存地下躯体を除去するステップと、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングを引き抜くステップと、第二ケーシングを表層ケーシングとして地盤内に場所打ち杭を築造するステップとを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法は、上述した発明において、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングと第二ケーシングの間に充填材を詰め、その後、第一ケーシングを引き抜くことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法は、上述した発明において、第一ケーシングとして、下端側の内周面に切削刃を有するとともに全周回転可能に構成された円筒状の掘削ケーシングを用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法は、上述した発明において、場所打ち杭としてアースドリル杭を築造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、地盤内に既存する既存地下躯体の解体工事と、この地盤に新設する杭の新設工事を連続して施工する方法であって、地盤上から第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入し、第一ケーシング内の既存地下躯体を除去するステップと、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングを引き抜くステップと、第二ケーシングを表層ケーシングとして地盤内に場所打ち杭を築造するステップとを有するので、既存地下躯体の解体工事に連続して杭の新設工事を施工することができる。これにより、全体の工期短縮を図ることができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングと第二ケーシングの間に充填材を詰め、その後、第一ケーシングを引き抜くので、第一ケーシングによって形成した孔壁を保護しながら第一ケーシングを引き抜くことができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、第一ケーシングとして、下端側の内周面に切削刃を有するとともに全周回転可能に構成された円筒状の掘削ケーシングを用いるので、全周回転機で第一ケーシングを周方向に回転することにより第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入して既存地下躯体を切削することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、場所打ち杭としてアースドリル杭を築造するので、工期短縮を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法の実施の形態を示す解体ステップの図である。
図2図2は、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法の実施の形態を示す新築ステップの図である。
図3図3は、図1のA部分拡大図である。
図4図4は、図1のB部分拡大図である。
図5図5は、図1のC部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、既存の基礎および耐圧板10の上に埋め戻し土12が埋め戻された地盤Gにおいて、新設の杭を施工するものとする。基礎および耐圧板10は地中深く(例えば地表から例えば8~9mの深さ)に位置している。
【0018】
本実施の形態は、既存地下躯体(基礎および耐圧板10)の解体ステップと、杭の新築ステップとを有する。以下に、各ステップの処理内容について説明する。
【0019】
(解体ステップ)
まず、解体ステップについて説明する。図1は、解体ステップの施工手順を示したものである。
図1(1)に示すように、地盤Gの上に敷鉄板16を設置するとともに、この敷鉄板16の上に全周回転オールケーシング機18(全周回転機)を据え付け設置する。さらに、この全周回転オールケーシング機18に掘削ケーシング20(第一ケーシング)を装着する。全周回転オールケーシング機18は、掘削ケーシング20を地中に圧入するためのものであり、掘削ケーシング20を把持した状態で回転させる機能と、上下方向に移動させる機能を有している。
【0020】
掘削ケーシング20は、図3に示すように、下端側の内周面にインナービット22(切削刃)を有する円筒状の鋼製チューブであり、全周回転可能に構成される。本実施の形態の掘削ケーシング20は、外径D1=2500mm程度のものを想定しているが、施工可能な仕様であればこれ以外の寸法であっても構わない。図1(1)に示すように、全周回転オールケーシング機18で掘削ケーシング20を周方向に回転することによって、掘削ケーシング20を埋め戻し土12内に圧入し、掘削ケーシング20内の埋め戻し土12を掘削する。掘削した埋め戻し土12は、ハンマーグラブ24によって引き上げ撤去する。
【0021】
続いて、図1(2)に示すように、掘削ケーシング20の上端に同径のケーシング26を継ぎ足しながら地中深く圧入するとともに、掘削ケーシング20内の埋め戻し土12を掘削していく。
【0022】
その後、図1(3)に示すように、掘削ケーシング20の下端を基礎および耐圧板10以深まで圧入する。こうすることで、基礎および耐圧板10を切削する。
【0023】
次に、図1(4)に示すように、掘削ケーシング20内の基礎および耐圧板10をハンマーグラブ24で引き上げ撤去する。
【0024】
次に、図1(5)および図4に示すように、掘削ケーシング20内にアースドリル用の表層ケーシング28(第二ケーシング)を建て込む。本実施の形態の表層ケーシング28は、外径D2=2000mm、長さ11m程度の円筒状の鋼製チューブを想定しているが、施工可能な仕様であればこれ以外の寸法であっても構わない。表層ケーシング28の外周面には位置決め用のスペーサー30をあらかじめ複数設けておくようにする。スペーサー30は、例えば鉄筋などを用いて構成することができる。スペーサー30を設けることで、表層ケーシング28を掘削ケーシング20の軸心と同軸上に容易に配置することができる。
【0025】
次に、図1(6)および図4に示すように、表層ケーシング28の下端が掘削ケーシング20の下端から下側に位置するように圧入する。続いて、表層ケーシング28の上端の開口を蓋32で塞ぐ。この蓋32は、次の工程でケーシング間の間隙に充填材34を充填するために一時的に設ける。
【0026】
次に、図1(7)に示すように、ハンマーグラブ24を用いて、表層ケーシング28の外周面とケーシング26および掘削ケーシング20の内周面の間の間隙に再生砂などの充填材34を充填する。
【0027】
次に、図1(8)に示すように、表層ケーシング28を残したまま、ケーシング26および掘削ケーシング20を地盤Gから引き抜く。
【0028】
次に、図1(9)に示すように、全周回転オールケーシング機18を移動する。その後、図5に示すように、表層ケーシング28の上端側の外周面に沈下止めブラケット36を溶接等により設置し、敷鉄板16に支持されるようにする。沈下止めブラケット36は、例えばH形鋼などを用いて構成することができる。
その後、次の新築ステップに移行する。
【0029】
(新築ステップ)
次に、新築ステップについて説明する。図2は、新築ステップの施工手順を示したものである。なお、以下の実施の形態では、アースドリル拡底工法による場合を例にとり説明するが、本発明はこれに限るものではない。例えばアースドリル工法などの他の場所打ち杭工法で杭を築造してもよい。
【0030】
まず、図2(1)に示すように、アースドリル機のアースドリル38を表層ケーシング28内に挿入し、表層ケーシング28以深に軸部となる杭孔40を掘削形成する。その後、アースドリル機のケリーバーの先端に取り付けた拡底バケットを杭孔40の底部で回転させることにより拡幅掘削し、拡底部を形成する。孔壁は、ベントナイト等を用いた安定液によって保護する。
【0031】
次に、図2(2)に示すように、杭孔40の拡底部に攪拌翼付きスライムポンプ42を配置してスライム処理を行い、安定液を置換する。
【0032】
次に、図2(3)に示すように、杭孔40に鉄筋籠44を建て込む。
【0033】
次に、図2(4)に示すように、杭孔40にトレミー管46を建て込み、鉄筋籠44を埋設する態様で所定の高さ位置まで生コンクリート48を打設する。
【0034】
次に、図2(5)に示すように、生コンクリート48の打設完了後、トレミー管46を引き抜く。その後、地盤G上に表層ケーシング引抜き用のパワージャッキ50を据え付け設置し、パワージャッキ50で表層ケーシング28を生コンクリート48の上まで引き上げる。
【0035】
次に、図2(6)に示すように、所定の養生期間(例えば1日)について杭孔40内のコンクリート48の養生を行う。
【0036】
次に、図2(7)に示すように、杭孔40内のコンクリート48の上方部分に再生砂等の埋め戻し材52を埋め戻す。
【0037】
最後に、図2(8)に示すように、パワージャッキ50で表層ケーシング28を地盤Gから引き抜いた後、地盤Gの表面を整地して施工を完了する。
【0038】
このように、掘削ケーシング20を用いて既存地下躯体(基礎および耐圧板10)を貫通する立坑を形成することで、立坑の外側の既存地下躯体を残したまま、立坑部分にアースドリル拡底杭(場所打ち杭)を築造することができる。全周回転オールケーシングによる既存地下躯体の解体工事と新築アースドリル杭工事の連続施工により、工期短縮を図ることができる。本実施の形態は、大規模な機械設備や広大なスペースを要しないことから、市街地、特に狭隘な敷地における杭築造工事に有効である。
【0039】
上記の実施の形態においては、全周回転オールケーシング機18で第一ケーシング(掘削ケーシング20)を回転圧入する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、第一ケーシングを既存地下躯体(基礎および耐圧板10)以深まで圧入可能な方法であればいかなる方法でもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。また、上記の実施の形態においては、場所打ち杭としてアースドリル拡底杭を築造する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、場所打ち杭を築造する方法であればいかなる方法でもよい。このようにしても上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0040】
また、上記の実施の形態においては、既存の基礎および耐圧板10の上に埋め戻し土12が埋め戻された地盤Gにおいて新設の杭を施工する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、埋め戻し土12はコンクリート解体ガラ等を含んでいてもよい。このような場合でも上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
また、上記の連続施工方法は、新設の杭と干渉するおそれのある既存杭が地中に存在する場合にも同様に適用可能である。このような場合でも上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
以上説明したように、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、地盤内に既存する既存地下躯体の解体工事と、この地盤に新設する杭の新設工事を連続して施工する方法であって、地盤上から第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入し、第一ケーシング内の既存地下躯体を除去するステップと、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングを引き抜くステップと、第二ケーシングを表層ケーシングとして地盤内に場所打ち杭を築造するステップとを有するので、既存地下躯体の解体工事に連続して杭の新設工事を施工することができる。これにより、全体の工期短縮を図ることができる。
【0043】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、第一ケーシングの内側に第二ケーシングを挿入した後、第一ケーシングと第二ケーシングの間に充填材を詰め、その後、第一ケーシングを引き抜くので、第一ケーシングによって形成した孔壁を保護しながら第一ケーシングを引き抜くことができる。
【0044】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、第一ケーシングとして、下端側の内周面に切削刃を有するとともに全周回転可能に構成された円筒状の掘削ケーシングを用いるので、全周回転機で第一ケーシングを周方向に回転することにより第一ケーシングを既存地下躯体以深まで圧入して既存地下躯体を切削することができる。
【0045】
また、本発明に係る他の既存躯体解体と新設杭の連続施工方法によれば、場所打ち杭としてアースドリル杭を築造するので、工期短縮を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る既存躯体解体と新設杭の連続施工方法は、既存地下躯体などの地中埋設物が存在する地盤に新設の杭工事を施工する場合に有用であり、特に、全体の工期短縮を図るのに適している。
【符号の説明】
【0047】
10 基礎および耐圧板(既存地下躯体)
12 埋め戻し土
16 敷鉄板
18 全周回転オールケーシング機
20 掘削ケーシング(第一ケーシング)
22 インナービット(切削刃)
24 ハンマーグラブ
26 ケーシング
28 表層ケーシング(第二ケーシング)
30 スペーサー
32 蓋
34 充填材
36 沈下止めブラケット
38 アースドリル
40 杭孔
42 攪拌翼付きスライムポンプ
44 鉄筋籠
46 トレミー管
48 コンクリート
50 パワージャッキ
52 埋め戻し材
G 地盤
図1
図2
図3
図4
図5