(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111753
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】フィルムアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20220725BHJP
H01Q 1/38 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
H01Q1/12 E
H01Q1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007392
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石綿 宏行
(72)【発明者】
【氏名】池田 友樹
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
【Fターム(参考)】
5J046AA01
5J046AB07
5J046AB17
5J046LA01
5J046LA19
5J046PA07
5J046PA09
5J046QA04
5J046TA04
5J047AA01
5J047AB07
5J047BF02
5J047BF11
5J047EA04
5J047EB03
5J047EC02
(57)【要約】
【課題】信号用電極およびグラウンド接続用電極を有するフィルムアンテナの引き出し方向を容易に調整できるようにすること。
【解決手段】フィルムアンテナ装置は、信号用電極およびグラウンド接続用電極を有するフィルムアンテナと、ケーブルと、フィルムアンテナおよびケーブルが接続される基板と、基板を収容するケースとを備え、フィルムアンテナは、ケースからの引き出し方向を、所定の複数の引き出し方向の各々に調整可能であり、複数の引き出し方向のいずれに調整された場合であっても、信号用電極およびグラウンド接続用電極の各々を、基板に接続可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号用電極およびグラウンド接続用電極を有するフィルムアンテナと、
ケーブルと、
前記フィルムアンテナおよび前記ケーブルが接続される基板と、
前記基板を収容するケースと
を備え、
前記フィルムアンテナは、
前記ケースからの引き出し方向を、所定の複数の引き出し方向の各々に調整可能であり、前記複数の引き出し方向のいずれに調整された場合であっても、前記信号用電極および前記グラウンド接続用電極の各々を、前記基板に接続可能である
ことを特徴とするフィルムアンテナ装置。
【請求項2】
前記フィルムアンテナは、
前記ケーブルの引き出し方向と直交する第1の引き出し方向と、前記第1の引き出し方向とは反対方向の第2の引き出し方向と、前記ケーブルの引き出し方向とは反対方向の第3の引き出し方向とを含む、180度以上の所定の角度範囲内において、前記ケースからの引き出し方向を調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項3】
前記フィルムアンテナは、
前記ケーブルの引き出し方向と直交する第1の引き出し方向と、前記第1の引き出し方向とは反対方向の第2の引き出し方向とに、前記ケースからの引き出し方向を調整可能である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項4】
前記フィルムアンテナは、
前記第1の引き出し方向を含む所定の角度範囲内と、前記第2の引き出し方向を含む所定の角度範囲内とにおいて、前記ケースからの引き出し方向を調整可能である
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項5】
前記基板は、
円環状の基板側内周電極と、
前記基板側内周電極の外側において、前記基板側内周電極の周囲の少なくとも一部に沿うように曲線状に形成された基板側外周電極と
を有し、
前記フィルムアンテナは、
前記基板側内周電極に接続される円環状の前記信号用電極と、
前記信号用電極の外側において、前記信号用電極を取り囲むように曲線状に形成され、前記基板側外周電極に接続される前記グラウンド接続用電極と
を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項6】
前記基板側外周電極は、
前記フィルムアンテナの引き出し方向が、当該引き出し方向の調整が可能な所定の角度範囲内に調整されたときに、前記信号用電極に繋がる第1の引き出し線と交差する領域を回避して形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項7】
前記基板側外周電極は、
前記第1の引き出し線と交差する領域によって分断された、第1の基板側外周電極および第2の基板側外周電極を有し、
前記第1の基板側外周電極および前記第2の基板側外周電極は、
前記フィルムアンテナの前記グラウンド接続用電極を介して、互いに接続される
ことを特徴とする請求項6に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項8】
前記基板は、前記基板側内周電極の中心位置に、基板側貫通孔を有し、
前記フィルムアンテナは、前記信号用電極の中心位置に、アンテナ側開口部を有し、
前記ケースは、前記基板側貫通孔およびアンテナ側開口部に挿通されることによって、前記基板および前記フィルムアンテナを位置決め可能な突起部を有する
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項9】
前記フィルムアンテナの前記基板と重なる面とは反対側の面に重ねて設けられ、前記フィルムアンテナを前記基板に圧接させる平板状の緩衝部材をさらに備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルムアンテナ装置。
【請求項10】
前記基板は、電子回路部品を有し、当該電子回路部品を介して、前記フィルムアンテナと前記ケーブルとを接続可能である
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルムアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、信号ケーブルとフィルムアンテナとを内部の回路基板で結合する結合装置を備え、当該結合装置から、信号ケーブルとフィルムアンテナとが互いに直交する方向(すなわち、90度異なる方向)に引き出されるように構成された、車両用フィルムアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用フィルムアンテナ装置は、フィルムアンテナの引き出し方向が固定であるため、フィルムアンテナの引き出し方向を容易に調整することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るフィルムアンテナ装置は、信号用電極およびグラウンド接続用電極を有するフィルムアンテナと、ケーブルと、フィルムアンテナおよびケーブルが接続される基板と、基板を収容するケースとを備え、フィルムアンテナは、ケースからの引き出し方向を、所定の複数の引き出し方向の各々に調整可能であり、複数の引き出し方向のいずれに調整された場合であっても、信号用電極およびグラウンド接続用電極の各々を、基板に接続可能である。
【発明の効果】
【0006】
一実施形態によれば、信号用電極およびグラウンド接続用電極を有するフィルムアンテナの引き出し方向を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置の外観斜視図
【
図3】第1実施形態に係る回路基板の下面側を示す外観斜視図
【
図4】第1実施形態に係る接続装置(上側ケースが取り外された状態)の外観斜視図
【
図5】第1実施形態に係る接続装置のXZ平面による断面図
【
図6】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置の第1の引き出し方向を示す平面図
【
図7】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置の第2の引き出し方向を示す平面図
【
図8】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置によるフィルムアンテナの引き出し方向の一例を示す図
【
図9】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置によるフィルムアンテナの引き出し方向の一例を示す図
【
図10】第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置によるフィルムアンテナの引き出し方向の一例を示す図
【
図11】第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置の外観斜視図
【
図13】第2実施形態に係る回路基板の下面側を示す外観斜視図
【
図15】第2実施形態に係る接続装置(上側ケースが取り外された状態)の外観斜視図
【
図16】第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置の第1の引き出し方向を示す平面図
【
図17】第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置の第2の引き出し方向を示す平面図
【
図18】第1実施形態に係る車両用フィルムアンテナ装置の整合特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、第1実施形態および第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態では、平面状のフィルムアンテナ110と平行な方向を、X軸方向およびY軸方向とする。特に、ケーブル120が伸びる方向を、X軸方向とする。また、第1実施形態および第2実施形態では、平面状のフィルムアンテナ110と直交する方向を、Z軸方向とする。
【0009】
〔第1実施形態〕
(フィルムアンテナ装置100の概要)
図1は、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100の外観斜視図である。
図1に示すフィルムアンテナ装置100は、例えば、自動車等の車両の窓ガラス(例えば、フロントガラス、リアガラス等)に設置される。フィルムアンテナ装置100は、ケーブル120を介して、車両に搭載された車載装置(例えば、ECU(Electronic Control Unit))に接続され、車両の外部との電波の送受信を行うことが可能な装置である。
【0010】
図1に示すように、フィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110、ケーブル120、および接続装置130を備える。
【0011】
フィルムアンテナ110は、窓ガラスに貼り付けられる、透明なフィルム状のアンテナである。フィルムアンテナ110は、特定の周波数を用いた特定の用途の電波(例えば、移動体通信用電波)の送受信を行う。フィルムアンテナ110は、樹脂フィルム111、放射素子112、およびグラウンド板113を有する。
【0012】
樹脂フィルム111は、透明な樹脂製のフィルムである。
図1に示す例では、樹脂フィルム111は、平面視において、Y軸方向を長手方向とする、長方形状を有する。樹脂フィルム111は、一方の面に形成された粘着層によって、窓ガラスに貼り付けられる。
【0013】
放射素子112およびグラウンド板113は、樹脂フィルム111の表面に形成されており、薄膜状を有する。放射素子112およびグラウンド板113は、透明な薄膜状の導電性素材(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))、金属細線による電極等が用いられて形成される。放射素子112は、接続装置130を介して、ケーブル120の芯線121に接続される。放射素子112は、ケーブル120から給電されることにより、特定の周波数の電波の送受信を行う。グラウンド板113は、接続装置130を介して、グラウンドに接地される。
【0014】
また、フィルムアンテナ110は、引き出し部114を有する。引き出し部114は、樹脂フィルム111がなす長方形状の一方の短辺(Y軸負側の短辺)の中央部から、外側(Y軸負側)に突出して設けられている。引き出し部114は、一定の幅の帯状を有する。フィルムアンテナ110は、引き出し部114の先端部114A(
図2参照)において、接続装置130に接続される。
【0015】
ケーブル120は、芯線121(
図2参照)を中心に有する。ケーブル120は、一端が接続装置130を介してフィルムアンテナ110の放射素子112に接続され、他端が、車載装置に接続される。ケーブル120は、フィルムアンテナ110の放射素子112に対する給電を行うことにより、放射素子112を駆動し、放射素子112と車載装置との間で、信号の送受信を行う。
【0016】
接続装置130は、箱型(概ね直方体形状)の筐体130Aを有しており、当該筐体130Aの内部において、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aと、ケーブル120の芯線121の先端部とを接続する。
【0017】
(接続装置130の構成)
図2は、第1実施形態に係る接続装置130の分解斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る回路基板133の下面側を示す外観斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る接続装置130(上側ケース131が取り外された状態)の外観斜視図である。
図5は、第1実施形態に係る接続装置130のXZ平面による断面図である。
【0018】
図2~
図5に示すように、接続装置130は、上側ケース131、下側ケース132、回路基板133、および緩衝部材134を有する。
【0019】
<上側ケース131および下側ケース132>
上側ケース131および下側ケース132は、接続装置130の筐体130Aを構成する樹脂製の部材である。上側ケース131および下側ケース132は、スナップフィット構造によって、上側ケース131に設けられた一対の係合爪131Aと、下側ケース132に設けられた一対のフック132Bとが係合することによって、互いに結合できるようになっている。上側ケース131および下側ケース132は、互いに結合することによって、
図1に示すように、接続装置130の箱型の筐体130Aを形成する。上側ケース131と下側ケース132との間には、各内部構成部品(回路基板133、フィルムアンテナ110(引き出し部114の先端部114A)、および、緩衝部材134)が挟持される。
【0020】
下側ケース132は、円柱状の突起部132Aを有する。突起部132Aは、中心軸AX上において、下側ケース132の上面から垂直に立設されている。突起部132Aは、回路基板133(基板側貫通孔133B)、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114A(アンテナ側開口部114B)、および、緩衝部材134(貫通孔134A)の各々を貫通することにより、回路基板133、先端部114A、および緩衝部材134を、中心軸AX上に正確に位置決めすることができる。また、突起部132Aは、フィルムアンテナ110の回転軸としても機能する。
【0021】
<回路基板133>
回路基板133は、硬質な平板状の部材である。回路基板133は、平面視において、概ね、X軸方向を長手方向とする長方形状を有する。回路基板133には、例えば、PWB(Printed Wired Board)が用いられる。回路基板133は、そのX軸負側の部分が、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aの上面側に重ねて設けられる。回路基板133は、下側ケース132に設けられた一対の係合爪132Cが、当該回路基板133の縁部に係合することによって、下側ケース132に嵌め込まれて、水平な状態で固定される。
【0022】
回路基板133のX軸正側の部分の上面の中央には、X軸正方向に直線状に延在する、第1電極133Aが銅箔パターンで形成されている。第1電極133AのX軸正側の端部には、ケーブル120の芯線121の先端部が、はんだ接続される。
【0023】
また、回路基板133のX軸負側の部分の中央には、当該回路基板133を上下方向に貫通する基板側貫通孔133Bが形成されている。回路基板133は、
図4に示すように、基板側貫通孔133Bに下側ケース132の突起部132Aが挿通されることにより、当該回路基板133のX軸負側の部分が、中心軸AX上に正確に位置決めされる。
【0024】
また、回路基板133のX軸負側の部分の上面には、基板側貫通孔133BからX軸正方向に直線状に延在する、第2電極133Cが銅箔パターンで形成されている。第2電極133Cは、回路基板133の上面に設けられた電子回路部品133E(例えば、増幅回路、コンデンサ等)を介して、第1電極133Aに接続されている。
【0025】
また、
図3に示すように、回路基板133のX軸負側の部分の下面には、基板側貫通孔133Bを中心とする、円環状の基板側内周電極133Dが銅箔パターンで形成されている。基板側内周電極133Dは、スルーホールである基板側貫通孔133Bを介して、第2電極133Cに接続されている。基板側内周電極133Dは、回路基板133の下側に、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aが重ねて設けられたときに、当該先端部114Aにおいて環状に形成されている信号用電極112Aaと接続される。
【0026】
また、
図3に示すように、回路基板133のX軸正側の部分の下面には、グラウンド電極133F(「基板側外周電極」の一例)が形成されている。グラウンド電極133Fは、そのX軸負側の端部が、基板側貫通孔133B(中心軸AX)を中心とする円周に沿った曲線状を有し、基板側内周電極133Dの周囲の一部に沿うように形成されている。グラウンド電極133Fは、回路基板133の下側に、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aが重ねて設けられたときに、当該先端部114Aにおいて略環状に形成されているグラウンド接続用電極113Aaと接続される。
【0027】
<フィルムアンテナ110の引き出し部114>
ここで、
図2を参照して、フィルムアンテナ110の引き出し部114について説明する。引き出し部114は、一定の幅の帯状を有する。フィルムアンテナ110は、引き出し部114の先端部114Aにおいて、接続装置130に接続される。
【0028】
図2に示すように、引き出し部114には、放射素子112と一体的に形成された第1の引き出し線112Aと、2つのグラウンド板113に一体的に形成された2本の第2の引き出し線113Aとが形成されている。第1の引き出し線112Aは、引き出し部114の中央に形成されており、2本の第2の引き出し線113Aによって挟まれている。
【0029】
また、
図2に示すように、引き出し部114の先端部114Aは、円形状に形成されている。先端部114Aの中心には、円形状のアンテナ側開口部114Bが形成されている。先端部114Aは、アンテナ側開口部114Bに下側ケース132の突起部132Aが挿通されることにより、中心軸AX上に正確に位置決めされる。
【0030】
先端部114Aには、アンテナ側開口部114Bを中心とする円環状の信号用電極112Aaと、アンテナ側開口部114Bを中心とする略円環状のグラウンド接続用電極113Aaとが形成されている。グラウンド接続用電極113Aaの半径は、信号用電極112Aaの半径よりも大きい。
【0031】
信号用電極112Aaは、第1の引き出し線112Aの端部と繋がっており、第1の引き出し線112Aと一体的に形成されている。グラウンド接続用電極113Aaは、2本の第2の引き出し線113Aの各々の端部と繋がっており、2本の第2の引き出し線113Aと一体的に形成されている。
【0032】
<緩衝部材134>
緩衝部材134は、弾性を有する円盤状の部材である。緩衝部材134は、絶縁性の弾性素材(例えば、発砲ウレタン等)が用いられて形成される。緩衝部材134の中心には、当該緩衝部材134を上下方向に貫通する貫通孔134Aが形成されている。緩衝部材134は、貫通孔134Aに下側ケース132の突起部132Aが挿通されることにより、中心軸AX上に正確に位置決めされる。緩衝部材134は、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aの下面側に重ねて設けられる。
【0033】
緩衝部材134は、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aと、下側ケース132の上面との間で挟持されて弾性変形することにより、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aを、回路基板133のX軸負側の部分の下面に対して押し当てることができる。これにより、緩衝部材134は、回路基板133の下面の各電極133D,133Fと、先端部114Aの上面の各電極112Aa,113Aaとの接続状態を安定化することができる。
【0034】
(フィルムアンテナ110の引き出し方向の調整可能構造)
次に、
図6および
図7を参照して、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100におけるフィルムアンテナ110の引き出し方向の調整可能構造について説明する。
図6は、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100の第1の引き出し方向を示す平面図である。
図7は、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100の第2の引き出し方向を示す平面図である。
【0035】
第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100では、フィルムアンテナ110が、中心軸AX(アンテナ側開口部114B)を回転中心として、筐体130Aに対して回転可能となっている。これにより、フィルムアンテナ110が、筐体130Aからの引き出し方向を調整することができるようになっている。
【0036】
第1実施形態では、フィルムアンテナ110は、Y軸正方向を第1の引き出し方向とし、Y軸負方向を第2の引き出し方向とし、第1の引き出し方向および第2の引き出し方向を含む180度以上の角度範囲内で、当該フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整することができる。
【0037】
フィルムアンテナ110における引き出し部114の先端部114Aの上面には、いずれも、アンテナ側開口部114B(中心軸AX)を中心とする円環状の、第1の引き出し線112Aに繋がる信号用電極112Aaと、第2の引き出し線113Aに繋がるグラウンド接続用電極113Aaとが形成されている。
【0038】
一方、回路基板133の下面には、基板側貫通孔133B(中心軸AX)を中心とする円環状の基板側内周電極133Dと、基板側内周電極133Dよりも外側において、基板側貫通孔133B(中心軸AX)を中心とする円周状の部分を有するグラウンド電極133Fとが形成されている。
【0039】
フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板133の基板側内周電極133Dとは、互いに接触し、且つ、いずれも中心軸AXを中心とする円環状であるため、フィルムアンテナ110を回転させて、フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整した場合であっても、互いに接触した状態を維持することができる。
【0040】
また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと、回路基板133のグラウンド電極133Fとは、互いに接触し、且つ、グラウンド接続用電極113Aaが円環状であるため、フィルムアンテナ110を回転させて、フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整した場合であっても、互いに接触した状態を維持することができる。
【0041】
ここで、
図3に示すように、回路基板133の下面において、グラウンド電極133Fは、基板側内周電極133Dよりも、X軸正側に形成されており、すなわち、X軸負側には形成されていない。これにより、
図3に示すように、回路基板133の下面には、基板側内周電極133DよりもX軸負側に、第1の引き出し線112Aを引き出すことが可能な(すなわち、第1の引き出し線112Aと重ならない)、引出可能領域Aが形成されている。第1実施形態では、引出可能領域Aは、第1の引き出し方向(Y軸正方向)および第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む、180度以上の角度範囲(例えば、200度の角度範囲)に亘って形成されている。
【0042】
これにより、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)および第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む、180度以上の角度範囲内で調整可能となっている。そして、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、180度以上の角度範囲内のいずれとした場合であっても、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと回路基板133の基板側内周電極133Dとが互いに接触した状態と、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板133のグラウンド電極133Fとが互いに接触した状態とを維持することができ、さらには、引出可能領域Aが形成されていることにより、グラウンド電極133Fと第1の引き出し線112Aは接触しないようになっている。
【0043】
このため、グラウンド電極133Fと第1の引き出し線112Aが短絡することがなく、また、電気的な結合を抑制することができるため、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)および第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む、180度以上の角度範囲内で調整しても、整合特性が劣化することを抑制して、フィルムアンテナ110とケーブル120とを、接続装置130を介して接続することができる。
【0044】
例えば、
図6に示す例では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、第1の引き出し方向(Y軸正方向)に調整されている。この状態で、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板133の基板側内周電極133Dとが互いに接続されている。また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板133のグラウンド電極133Fとが互いに接続されている。さらには、グラウンド電極133Fと第1の引き出し線112Aは接続されていない。
【0045】
また、例えば、
図7に示す例では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、
図6に示す第1の引き出し方向(Y軸正方向)から180度異なる、第2の引き出し方向(Y軸負方向)に調整されている。この状態で、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板133の基板側内周電極133Dとが互いに接続されている。また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板133のグラウンド電極133Fとが互いに接続されている。さらには、グラウンド電極133Fと第1の引き出し線112Aは接続されていない。
【0046】
なお、
図5に示すように、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100では、筐体130Aの側壁部(上側ケース131と下側ケース132との境界の高さ位置)に、一定の高さ幅を有して切り欠かれた、スリット130Bが形成されている。スリット130Bは、筐体130Aの内部から筐体130Aの外側への、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出しを可能にする。スリット130Bは、少なくとも、中心軸AXを中心とする、フィルムアンテナ110の引き出し可能な180度以上の角度範囲に亘って形成されている。このため、第1実施形態では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、180度以上の角度範囲内のいずれに調整された場合であっても、筐体130Aの側壁部がフィルムアンテナ110(引き出し部114)の妨げになることなく、フィルムアンテナ110(引き出し部114)を、筐体130Aの外側へと引き出すことができる。
【0047】
また、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100では、スナップフィット機構により、上側ケース131と下側ケース132とを、容易に互いに結合させることができる。その際、上側ケース131と下側ケース132との間に配置された各内部構成部材(回路基板133、フィルムアンテナ110の先端部114A、および緩衝部材134)を、上側ケース131と下側ケース132とによって挟持することができる。また、下側ケース132の突起部132Aを、各内部構成部材に挿通させることにより、各内部構成部材を、中心軸AXに対して正確に位置決めすることができる。
【0048】
また、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100では、緩衝部材134によって、フィルムアンテナ110の先端部114Aを、回路基板133の下面に押し当てることができ、これにより、電極同士の接続状態を安定化することができるとともに、フィルムアンテナ110の不要な回転を抑制することができる。但し、フィルムアンテナ110は完全には固定されず、フィルムアンテナ110に対して、緩衝部材134の摩擦力に打ち勝つ回転方向への力を加えることにより、フィルムアンテナ110の引き出し方向の微調整が可能である。
【0049】
(フィルムアンテナ110の引き出し方向の一例)
次に、
図8~
図10を参照して、フィルムアンテナ110の引き出し方向の一例について説明する。
図8~
図10は、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100によるフィルムアンテナ110の引き出し方向の一例を示す図である。
【0050】
第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、
図6に示した第1の引き出し方向(Y軸正方向)、および、
図7に示した第2の引き出し方向(Y軸負方向)に限らず、180度以上の角度範囲内で、任意の角度に調整可能である。
【0051】
例えば、
図8に示すように、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、ケーブル120の引き出し方向(X軸正方向)とは反対方向である第3の引き出し方向(X軸負方向)に調整することができる。
【0052】
また、例えば、
図9に示すように、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)とはX軸負側に45度異なる方向(すなわち、第1の引き出し方向と第3の引き出し方向との中間方向)に調整することができる。
【0053】
また、例えば、
図10に示すように、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第2の引き出し方向(Y軸負方向)とはX軸負側に45度異なる方向(すなわち、第2の引き出し方向と第3の引き出し方向との中間方向)に調整することができる。
【0054】
なお、図示を省略するが、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、所定の180度以上の角度範囲内であれば、第1の引き出し方向(Y軸正方向)よりもX軸正側に調整することもできる。
【0055】
また、図示を省略するが、第1実施形態に係るフィルムアンテナ装置100は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、所定の180度以上の角度範囲内であれば、第2の引き出し方向(Y軸正方向)よりもX軸正側に調整することもできる。
【0056】
例えば、所定の角度範囲が、第3の引き出し方向(X軸負方向)を0度として、+100度~-100度である場合、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)よりもX軸正側の、+90度~+100度の角度範囲内に調整することもでき、第2の引き出し方向(Y軸負方向)よりもX軸正側の、-90度~-100度の角度範囲内に調整することもできる。
【0057】
(整合特性)
図18は、第1実施形態に係る車両用フィルムアンテナ装置100の整合特性を示す図である。
図18(a)は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)とした場合の、車両用フィルムアンテナ装置100の整合特性を示す。
図18(b)は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第3の引き出し方向(X軸負方向)とした場合の、車両用フィルムアンテナ装置100の整合特性を示す。
図18(c)は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第2の引き出し方向(Y軸負方向)とした場合の、車両用フィルムアンテナ装置100の整合特性を示す。
図18(a)~
図18(c)に示すように、第1実施形態に係る車両用フィルムアンテナ装置100の接続装置130は、フィルムアンテナ110の引き出し方向をいずれに調整した場合であっても、良好なVSWR値(2.00以下)でフィルムアンテナ110と、ケーブル120を、接続させることが確認された。
【0058】
〔第2実施形態〕
(フィルムアンテナ装置200の概要)
図11は、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200の外観斜視図である。
図11に示すフィルムアンテナ装置200は、自動車等の車両の窓ガラス(例えば、フロントガラス、リアガラス等)に設置される。フィルムアンテナ装置200は、ケーブル120を介して、車両に搭載された車載装置(例えば、ECU(Electronic Control Unit))に接続され、車両の外部との電波の送受信を行うことが可能な装置である。
【0059】
図11に示すように、フィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110、ケーブル120、および接続装置230を備える。なお、フィルムアンテナ110およびケーブル120は、第1実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0060】
接続装置230は、箱型(概ね直方体形状)の筐体230Aを有しており、当該筐体230Aの内部において、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114A(
図12参照)と、ケーブル120の芯線121(
図12参照)の先端部とを接続する。
【0061】
(接続装置230の構成)
図12は、第2実施形態に係る接続装置230の分解斜視図である。
図13は、第2実施形態に係る回路基板233の下面側を示す外観斜視図である。
図14は、第2実施形態に係る接続装置230の外観斜視図である。
図15は、第2実施形態に係る接続装置230(上側ケース231が取り外された状態)の外観斜視図である。
【0062】
図12~
図15に示すように、接続装置230は、上側ケース231、下側ケース232、回路基板233、および緩衝部材234を有する。
【0063】
<上側ケース231および下側ケース232>
上側ケース231および下側ケース232は、接続装置230の筐体230Aを構成する樹脂製の部材である。上側ケース231および下側ケース232は、上側ケース231のX軸負側の端部に設けられた一対の軸孔231Aと、下側ケース232のX軸負側の端部に設けられた一対の軸部232Bとを有する開閉機構によって、互いに開閉可能に連結されている。また、上側ケース231および下側ケース232は、上側ケース231に設けられた一対の係合爪231Cと、下側ケース232に設けられた一対の係合突起232Dとを有するスナップフィット機構により、互いに閉じた状態で固定することができる。上側ケース231および下側ケース232は、互いに閉じた状態となることによって、
図11に示すように、接続装置230の箱型の筐体230Aを形成する。上側ケース231と下側ケース232との間には、各内部構成部品(回路基板233、フィルムアンテナ110(引き出し部114の先端部114A)、および、緩衝部材234)が挟持される。
【0064】
下側ケース232は、円柱状の突起部232Aを有する。突起部232Aは、中心軸AX上において、下側ケース232の上面から垂直に立設されている。突起部232Aは、回路基板233(基板側貫通孔233B)、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114A(アンテナ側開口部114B)、および、緩衝部材234(貫通孔234A)の各々を貫通することにより、回路基板233、先端部114A、および緩衝部材234を、中心軸AX上に正確に位置決めすることができる。また、突起部232Aは、フィルムアンテナ110の回転軸としても機能する。
【0065】
<回路基板233>
回路基板233は、硬質な平板状の部材である。回路基板233は、平面視において、概ね、X軸方向を長手方向とする長方形状を有する。回路基板233には、例えば、PWB(Printed Wired Board)が用いられる。回路基板233は、そのX軸負側の部分が、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aの上面側に重ねて設けられる。回路基板233は、下側ケース232に設けられた一対の係合爪232Cが、当該回路基板233の縁部に係合することによって、下側ケース232に嵌め込まれて、水平な状態で固定される。
【0066】
回路基板233のX軸正側の部分の上面の中央には、X軸正方向に直線状に延在する、第1電極233Aが銅箔パターンで形成されている。第1電極233AのX軸正側の端部には、ケーブル120の芯線121の先端部が、はんだ接続される。
【0067】
また、回路基板233のX軸負側の部分の中央には、当該回路基板233を上下方向に貫通する基板側貫通孔233Bが形成されている。回路基板233は、
図15に示すように、基板側貫通孔233Bに下側ケース232の突起部232Aが挿通されることにより、当該回路基板233のX軸負側の部分が、中心軸AX上に正確に位置決めされる。
【0068】
また、回路基板233のX軸負側の部分の上面には、基板側貫通孔233BからX軸正方向に直線状に延在する、第2電極233Cが銅箔パターンで形成されている。第2電極233Cは、回路基板233の上面に設けられた電子回路部品233E(例えば、増幅回路、コンデンサ等)を介して、第1電極233Aに接続されている。
【0069】
また、
図13に示すように、回路基板233のX軸負側の部分の下面には、基板側貫通孔233Bを中心とする、円環状の基板側内周電極233Dが銅箔パターンで形成されている。基板側内周電極233Dは、スルーホールである基板側貫通孔233Bを介して、第2電極233Cに接続されている。基板側内周電極233Dは、回路基板233の下側に、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aが重ねて設けられたときに、当該先端部114Aにおいて環状に形成されている信号用電極112Aaと接続される。
【0070】
また、
図13に示すように、回路基板233のX軸正側の部分の下面には、グラウンド電極233F(「第1の基板側外周電極」の一例)およびグラウンド電極233G(「第2の基板側外周電極」の一例)が形成されている。グラウンド電極233Fとグラウンド電極233Gとは、基板側貫通孔233Bおよび基板側内周電極233Dを間に挟んで、X軸方向に並べて設けられている。グラウンド電極233Fは、基板側貫通孔233Bおよび基板側内周電極233DよりもX軸正側に設けられている。グラウンド電極233Gは、基板側貫通孔233Bおよび基板側内周電極233DよりもX軸負側に設けられている。グラウンド電極233Fは、そのX軸負側の端部が、基板側貫通孔233B(中心軸AX)を中心とする円周に沿った曲線状を有し、基板側内周電極233Dの周囲の一部に沿うよう設けられている。グラウンド電極233Gは、基板側貫通孔233B(中心軸AX)を中心とする円周に沿った曲線状を有し、基板側内周電極233Dの周囲の一部に沿うよう設けられている。グラウンド電極233Fおよびグラウンド電極233Gは、回路基板233の下側に、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aが重ねて設けられたときに、当該先端部114Aにおいて略環状に形成されているグラウンド接続用電極113Aaと接続される。
【0071】
<緩衝部材234>
緩衝部材234は、弾性を有する円盤状の部材である。緩衝部材234は、絶縁性の弾性素材(例えば、発砲ウレタン等)が用いられて形成される。緩衝部材234の中心には、当該緩衝部材234を上下方向に貫通する貫通孔234Aが形成されている。緩衝部材234は、貫通孔234Aに下側ケース232の突起部232Aが挿通されることにより、中心軸AX上に正確に位置決めされる。緩衝部材234は、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aの下面側に重ねて設けられる。
【0072】
緩衝部材234は、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aと、下側ケース232の上面との間で挟持されて弾性変形することにより、フィルムアンテナ110の引き出し部114の先端部114Aを、回路基板233のX軸負側の部分の下面に対して押し当てることができる。これにより、緩衝部材234は、回路基板233の下面の各電極233D,233F,233Gと、先端部114Aの上面の各電極112Aa,113Aaとの接続状態を安定化することができる。
【0073】
(フィルムアンテナ110の引き出し方向の調整可能構造)
次に、
図16および
図17を参照して、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200におけるフィルムアンテナ110の引き出し方向の調整可能構造について説明する。
図16は、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200の第1の引き出し方向を示す平面図である。
図17は、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200の第2の引き出し方向を示す平面図である。
【0074】
第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200では、フィルムアンテナ110が、中心軸AX(アンテナ側開口部114B)を回転中心として、筐体230Aに対して回転可能となっている。これにより、フィルムアンテナ110が、筐体230Aからの引き出し方向を調整することができるようになっている。
【0075】
第2実施形態では、フィルムアンテナ110は、Y軸正方向を第1の引き出し方向とし、Y軸負方向を第2の引き出し方向とし、第1の引き出し方向と、第2の引き出し方向との各々に、当該フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整することができる。
【0076】
さらに、第2実施形態では、フィルムアンテナ110は、第1の引き出し方向を含む所定の角度範囲内と、第2の引き出し方向を含む所定の角度範囲内との各々で、当該フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整することができる。
【0077】
フィルムアンテナ110における引き出し部114の先端部114Aの上面には、いずれも、アンテナ側開口部114B(中心軸AX)を中心とする円環状の、第1の引き出し線112Aに繋がる信号用電極112Aaと、第2の引き出し線113Aに繋がるグラウンド接続用電極113Aaとが形成されている。
【0078】
一方、回路基板233の下面には、基板側貫通孔233B(中心軸AX)を中心とする円環状の基板側内周電極233Dと、基板側内周電極233Dよりも外側において、基板側貫通孔233B(中心軸AX)を中心とする同一円周上に形成されたグラウンド電極233F,233Gとが形成されている。
【0079】
フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板233の基板側内周電極233Dとは、互いに接触し、且つ、いずれも中心軸AXを中心とする円環状であるため、フィルムアンテナ110を回転させて、フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整した場合であっても、互いに接触した状態を維持することができる。
【0080】
また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと、回路基板233のグラウンド電極233F,233Gとは、互いに接触し、且つ、グラウンド接続用電極113Aaが円環状であるため、フィルムアンテナ110を回転させて、フィルムアンテナ110の引き出し方向を調整した場合であっても、互いに接触した状態を維持することができる。
【0081】
ここで、
図13に示すように、回路基板233の下面において、基板側貫通孔233Bおよび基板側内周電極233DよりもY軸正側には、グラウンド電極が形成されていないことにより、第1の引き出し線112Aを引き出すことが可能な(すなわち、第1の引き出し線112Aと重ならない)、引出可能領域Bが形成されている。特に、第2実施形態では、引出可能領域Bは、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む、所定の角度範囲(例えば、+10度~-10度の角度範囲)に亘って形成されている。
【0082】
これにより、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)に調整可能であるとともに、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む所定の角度範囲内でも調整可能となっている。そして、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む所定の角度範囲内のいずれとした場合であっても、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと回路基板233の基板側内周電極233Dとが互いに接触した状態と、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板233のグラウンド電極233F,233Gとが互いに接触した状態とを維持することができ、さらには、引出可能領域Bが形成されていることにより、グラウンド電極233Fと第1の引き出し線112Aは接触しないようになっている。
【0083】
また、
図13に示すように、回路基板233の下面において、基板側貫通孔233Bおよび基板側内周電極233DよりもY軸負側には、グラウンド電極が形成されていないことにより、第1の引き出し線112Aを引き出すことが可能な(すなわち、第1の引き出し線112Aと重ならない)、引出可能領域Cが形成されている。特に、第2実施形態では、引出可能領域Cは、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む、所定の角度範囲(例えば、+10度~-10度の角度範囲)に亘って形成されている。
【0084】
これにより、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第2の引き出し方向(Y軸負方向)に調整可能であるとともに、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲内でも調整可能となっている。そして、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲内のいずれとした場合であっても、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと回路基板233の基板側内周電極233Dとが互いに接触した状態と、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板233のグラウンド電極233F,233Gとが互いに接触した状態とを維持することができ、さらには、引出可能領域Cが形成されていることにより、グラウンド電極233Fと第1の引き出し線112Aは接触しないようになっている。
【0085】
このため、グラウンド電極133Fと第1の引き出し線112Aが短絡することがなく、また、電気的な結合を抑制することができるため、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む所定の角度範囲内、または第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲内のいずれかに調整しても、整合特性が劣化することを抑制して、フィルムアンテナ110とケーブル120とを、接続装置230を介して接続することができる。
【0086】
例えば、
図16に示す例では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、第1の引き出し方向(Y軸正方向)に調整されている。この状態で、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板233の基板側内周電極233Dとが互いに接続されている。また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板233のグラウンド電極233F,233Gとが互いに接続されている。さらには、グラウンド電極233Fに第1の引き出し線112Aに接続されていない。
【0087】
また、例えば、
図17に示す例では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、
図16に示す第1の引き出し方向(Y軸正方向)から180度異なる、第2の引き出し方向(Y軸負方向)に調整されている。この状態で、フィルムアンテナ110の信号用電極112Aaと、回路基板233の基板側内周電極233Dとが互いに接続されている。また、フィルムアンテナ110のグラウンド接続用電極113Aaと回路基板233のグラウンド電極233F,233Gとが互いに接続されている。さらには、グラウンド電極233Fに第1の引き出し線112Aに接続されていない。
【0088】
なお、
図14に示すように、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200では、筐体230Aの側壁部(上側ケース231と下側ケース232との境界の高さ位置)に、一定の高さ幅を有して切り欠かれた、スリット230Bが形成されている。スリット230Bは、筐体230Aの内部から筐体230Aの外側への、フィルムアンテナ110(引き出し部114)の引き出しを可能にする。スリット230Bは、少なくとも、中心軸AXを中心とする、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む所定の角度範囲と、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲とに亘って形成されている。このため、第2実施形態では、フィルムアンテナ110の引き出し方向が、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を含む所定の角度範囲内と、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲内とのいずれに調整された場合であっても、筐体230Aの側壁部がフィルムアンテナ110(引き出し部114)の妨げになることなく、フィルムアンテナ110(引き出し部114)を、筐体230Aの外側へと引き出すことができる。
【0089】
また、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200では、開閉機構により、上側ケース231と下側ケース232とを、容易に開閉することができ、さらに、スナップフィット機構により、上側ケース231と下側ケース232とを、容易に互いに閉じた状態に固定することができる。その際、上側ケース231と下側ケース232との間に配置された各内部構成部材(回路基板233、フィルムアンテナ110の先端部114A、および緩衝部材234)を、上側ケース231と下側ケース232とによって挟持することができる。また、下側ケース232の突起部232Aを、各内部構成部材に挿通させることにより、各内部構成部材を、中心軸AXに対して正確に位置決めすることができる。
【0090】
また、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200では、緩衝部材234によって、フィルムアンテナ110の先端部114Aを、回路基板233の下面に押し当てることができ、これにより、電極同士の接続状態を安定化することができるとともに、フィルムアンテナ110の不要な回転を抑制することができる。但し、フィルムアンテナ110は完全には固定されず、フィルムアンテナ110に対して、緩衝部材234の摩擦力に打ち勝つ回転方向への力を加えることにより、フィルムアンテナ110の引き出し方向の微調整が可能である。
【0091】
なお、図示を省略するが、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、
図16に示す第1の引き出し方向(Y軸正方向)のみならず、所定の角度範囲内であれば、第1の引き出し方向(Y軸正方向)よりもX軸正側およびX軸負側の各々に調整することもできる。
【0092】
また、図示を省略するが、第2実施形態に係るフィルムアンテナ装置200は、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、
図17に示す第2の引き出し方向(Y軸負方向)のみならず、所定の角度範囲内であれば、第2の引き出し方向(Y軸負方向)よりもX軸正側およびX軸負側の各々に調整することもできる。
【0093】
例えば、第1の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲が、第1の引き出し方向(X軸負方向)を0度として、+10度~-10度である場合、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第1の引き出し方向(Y軸正方向)を基準として+10度~-10度の角度範囲内に調整することができる。
【0094】
また、例えば、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を含む所定の角度範囲が、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を0度として、+10度~-10度である場合、フィルムアンテナ110の引き出し方向を、第2の引き出し方向(Y軸負方向)を基準として+10度~-10度の角度範囲内に調整することができる。
【0095】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
100,200 フィルムアンテナ装置
110 フィルムアンテナ
111 樹脂フィルム
112 放射素子
112A 第1の引き出し線
112Aa 信号用電極
113 グラウンド板
113A 第2の引き出し線
113Aa グラウンド接続用電極
114 引き出し部
114A 先端部
114B アンテナ側開口部
120 ケーブル
121 芯線
130,230 接続装置
130A,230A 筐体
130B スリット
131,231 上側ケース
131A 係合爪
132,232 下側ケース
132A 突起部
132B フック
132C,232C 係合爪
133,233 回路基板
133A,233A 第1電極
133B,233B 基板側貫通孔
133C,233C 第2電極
133D,233D 基板側内周電極
133E,233E 電子回路部品
133F,233F,233G グラウンド電極
134,234 緩衝部材
134A,234A 貫通孔
231A 軸孔
231C 係合爪
232B 軸部
232D 係合突起
AX 中心軸