(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111962
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】液体処理ノズル
(51)【国際特許分類】
B01F 25/30 20220101AFI20220725BHJP
B01F 23/2326 20220101ALI20220725BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20220725BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20220725BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20220725BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20220725BHJP
E03C 1/084 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B01F5/04
B01F3/04 F
B01F5/00 G
B01F5/06
B01F15/02 C
B05B7/04
E03C1/084
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007640
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】309003957
【氏名又は名称】株式会社 JAPAN STAR
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 博毅
【テーマコード(参考)】
2D060
4F033
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
2D060CC17
2D060CC20
4F033QA06
4F033QB02X
4F033QB03X
4F033QB12X
4F033QB15X
4F033QC01
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4F033QE09
4F033QE23
4G035AB20
4G035AC23
4G035AC26
4G035AE01
4G035AE13
4G037AA11
4G037EA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】絞り部に設ける気体導入通路の自吸能力を高め、下流側の送液負荷が増大した場合でも、液体の逆流を生じにくい液体処理ノズルを提供する。
【解決手段】ノズル本体10の一方の端面に液体入口3を開口し他方の端面に液体出口4を開口する貫通形態の液体流路2が形成され、液体流路は、内周面の軸線O方向において液体入口を含む上流側区間と該上流側区間に続く下流側区間とを有し、下流側区間の少なくとも上流端を含む部分が、上流側区間よりも流通断面積が縮小された絞り部を形成する。また、ノズル本体には、一端がノズル本体の外面に気体入口20Eを開口し、他端が絞り部に気体出口20Tを開口する気体導入通路20が形成される。気体導入通路は、気体入口から気体出口に至る軸線Qが、液体流路の軸線に対し、気体入口が気体出口よりも液体流路の液体入口側に位置するように傾斜して設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体の一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成され、前記液体流路は、内周面の軸線方向において前記液体入口を含む上流側区間と該上流側区間に続く下流側区間とを有し、前記下流側区間の少なくとも上流端を含む部分が、前記上流側区間よりも流通断面積が縮小された絞り部を形成するとともに、前記ノズル本体には、一端が前記ノズル本体の外面に気体入口を開口し、他端が前記絞り部に気体出口を開口する気体導入通路が形成され、
前記気体導入通路は、前記気体入口から前記気体出口に至る軸線が、前記液体流路の軸線に対し、前記気体入口が前記気体出口よりも前記液体流路の前記液体入口側に位置するように傾斜して設けられていることを特徴とする液体処理ノズル。
【請求項2】
前記気体導入通路は、前記気体出口が前記気体入口よりも径小に形成されている請求項1記載の液体処理ノズル。
【請求項3】
前記気体出口の開口径が0.05mm以上0.2mm以下に設定されている請求項2記載の液体処理ノズル。
【請求項4】
前記気体導入通路の前記気体出口の開口側端部が前記気体出口に向けて、テーパ状の縮径部により連続的に縮径されている請求項2又は請求項3に記載の液体処理ノズル。
【請求項5】
前記縮径部の先端面から前記絞り部の内面に至る部分として、前記気体導入通路の軸線方向に内径が均一なピンホール部が形成され、該ピンホール部の先端に前記気体出口が形成されている請求項4記載の液体処理ノズル。
【請求項6】
前記絞り部の下流側には、前記絞り部の出口から前記液体出口に向けて内径が漸増する出口側テーパ部が形成されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の液体処理ノズル。
【請求項7】
前記液体流路において前記上流側区間は、前記液体入口から前記絞り部の入口に向け、前記出口側テーパ部よりも大きな勾配にて内径が漸減する入口側テーパ部が形成されている請求項6記載の液体処理ノズル。
【請求項8】
前記出口側テーパ部は、前記入口側テーパ部よりも区間長が大きくなるように形成されている請求項7記載の液体処理ノズル。
【請求項9】
前記絞り部は、前記軸線を螺旋中心線とする螺旋溝が内周面に刻設されている請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の液体処理ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気液混合処理に使用するための液体処理ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
気液混合ノズルとして、特許文献1あるいは2が開示するエジェクタノズルが知られている。エジェクタノズルは流路の途中に絞り部を設け、ベルヌーイの原理により前後区間よりも高流速となる絞り部に生ずる負圧を利用して気体を吸引し、流路を流れる液体と混合するものである。
【0003】
特許文献1のようにベンチュリノズルをエジェクタノズルとして使用する場合、ノズル本体に形成する気体導入通路は、流路(絞り部)の軸線と直角に形成されるのが一般的である。また、特許文献2のようにオリフィス型の絞り部を用いるノズルの場合は、オリフィス孔よりも下流側に生ずる高流速部に臨む位置に気体導入通路を開口させるようにしている。特許文献2において、流れ方向に対する気体導入通路の角度はやはり直角である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-131400号公報
【特許文献2】特許6559873号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NanotechJapan Bulletin Vol. 8, No. 4, 2015、企画特集Collabo ナノテクノロジー第4 回「ナノバブル水中のナノバブルの解析」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような気液混合用の液体処理ノズルは、絞り部に生ずる負圧により気体導入通路に気体を自吸吸引できるようになっていることが、気液混合設備全体の簡略化を図る上で望ましい。しかしながら、液体処理ノズルの液体出口よりも下流側にて、液体供給先の負荷状況により圧損が大きく作用すると、絞り部に該圧損に由来した背圧が作用し、気体導入通路に自吸負圧が生じなくなってしまう場合がある。このような場合、気液混合処理を継続するためには絞り部内に気体を圧送するポンプ等が余分に必要となり、設備の複雑化を招く要因となる。また、絞り部での自吸が可能となることを前提として、気体圧送手段を省略した設備構成を採用した場合、下流側の送液負荷の増大により絞り部に過度の背圧が作用すると、吸気ができなくなるばかりでなく、背圧により逆流した液体が気体導入通路を逆流して外部に噴出してしまう不具合につながる。
【0007】
本発明の課題は、絞り部に設ける気体導入通路の自吸能力を高め、下流側の送液負荷が増大した場合でも、液体の逆流を生じにくい液体処理ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の液体処理ノズルは、ノズル本体の一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成され、液体流路は、内周面の軸線方向において液体入口を含む上流側区間と該上流側区間に続く下流側区間とを有し、下流側区間の少なくとも上流端を含む部分が、上流側区間よりも流通断面積が縮小された絞り部を形成するとともに、ノズル本体には、一端がノズル本体の外面に気体入口を開口し、他端が絞り部に気体出口を開口する気体導入通路が形成され、気体導入通路は、気体入口から気体出口に至る軸線が、液体流路の軸線に対し、気体入口が気体出口よりも液体流路の液体入口側に位置するように傾斜して設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明の液体処理ノズルは、ノズル本体に形成された液体流路に絞り部が設けられるとともに、ノズル本体には、一端がノズル本体の外面に気体入口を開口し、他端が絞り部に気体出口を開口する気体導入通路が形成される。そして、その気体導入通路の気体入口から気体出口に至る軸線を、液体流路の軸線に対し、気体入口が気体出口よりも液体流路の液体入口側に位置するように傾斜させることで、気体導入通路内の気体が絞り部内を流れる液体から受ける背圧が軽減される。よって、気体導入通路の自吸能力が高まり、下流側の送液負荷が増大した場合でも液体の逆流を生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の液体処理ノズルを組み込んだ水道水処理装置の一例を示す正面図及び底面図
【
図2】
図1の水道水処理装置の使用形態の一例を示す正面図。
【
図3】
図1の水道水処理装置の平面図及び正面断面図
【
図4】本発明の液体処理ノズルの平面図及び正面断面図
【
図7】
図4の液体処理ノズルのキャビテーション処理部に旋回流が形成される様子を説明する図
【
図10】キャビテーション処理部に生ずる旋回流により微細気泡が発生する様子を説明する図
【
図11】キャビテーション処理部の上流側半区間に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
【
図12】キャビテーション処理部の下流側半区間に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
【
図13】出口側テーパ部に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
【
図14】気体導入通路の先端形状の具体例を示す第一の図
【
図15】気体導入通路の先端形状の具体例を示す第二の図
【
図16A】ケーシング気体流路の気体入口側の構造の詳細を示す断面図
【
図16B】逆流防止用弾性リングの吸気時の作用説明図
【
図16C】逆流防止用弾性リングの液逆流阻止時の作用説明図
【
図17】気体中継空間を廃止した水道水処理装置の構成例を示す断面図
【
図18】気体導入通路の形成形態の第一変形例を示す正面断面図
【
図19】気体導入通路の形成形態の第二変形例を示す正面断面図
【
図20】気体導入通路の形成形態の第三変形例を示す正面断面図
【
図21】気体導入通路の形成形態の第四変形例を示す正面断面図
【
図22】気体導入通路の形成形態の第五変形例を示す正面断面図
【
図23】気体導入通路の形成形態の第六変形例を示す正面断面図
【
図24】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第一例を示す平面模式図
【
図25】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第二例を示す平面模式図
【
図26】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第三例を示す平面模式図
【
図27】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第四例を示す平面模式図
【
図28A】螺旋溝の断面外形形状の第一変形例を示す図
【
図28B】螺旋溝の断面外形形状の第二変形例を示す図
【
図28C】螺旋溝の断面外形形状の第三変形例を示す図
【
図29】本発明の液体処理ノズルを組み込んだ洗濯機用の通水アタッチメントの一例を示す断面図
【
図30】
図29の通水アタッチメントを洗濯機の給水経路に組み込んだ実施形態を示す模式図
【
図31】絞り部に螺旋溝を形成しない液体処理ノズルを用いた水道水処理装置の一例を示す平面図及び正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は本発明の液体処理ノズルを組み込んだ水道水処理装置の一例を示す正面図及び底面図である。水道水処理装置100は、金属又は樹脂にて構成される筒状をなし水流出口61を有する本体ケーシング40と、該本体ケーシング40の下端部に着脱可能に装着される筒状の出口キャップ60とを備える。出口キャップ60の下端側開口部には水流出口61を覆う水流分散用のメッシュ部材63がはめ込まれている。
図2に示すように、水道水処理装置100は、水流入口を形成する本体ケーシング40の上端面側にて、キッチンシンク93(あるいは洗面台等)に併設されている水道蛇口ユニット91の末端に取り付けて使用される。水道蛇口ユニット91から供給される空気を溶存した水道水は、水道水処理装置100を通過することによりキャビテーション処理され、溶存空気が析出して生ずる微細気泡を含んだ処理済水DXWとなって、水流出口61から流出する。
【0012】
図3は、
図1の水道水処理装置100の平面図及び正面断面図である。本体ケーシング40には上端面に開口する継手座ぐり41と、該継手座ぐり41の下流側に連通するノズル収容孔44と、該ノズル収容孔44の下流側に連通する本体側出口孔45とが、本体ケーシング40を貫通する形で同軸的に一体形成されている。継手座ぐり41の内周面には、
図2の水道蛇口ユニット91側に形成されている金具取付用雄ねじ部(図示せず:例えばM22/ピッチ1.25の泡沫金具取付用雄ねじ)と螺合する雌ねじ継手部42が形成されるとともに、その底部周縁部には水道蛇口ユニットとの間を水密にシールするためのシールリング43が装着されている。
【0013】
一方、本体ケーシング40の下端側は段付き面40aにより縮径された筒状の出口スリーブ64を形成している。本体ケーシング40に対し出口キャップ60は、内周面に形成された雌ねじ部60bを、出口スリーブ64の外周面に形成された雄ねじ部64bに螺合させる形で取り付けられている。出口スリーブ64の雄ねじ部64bの基端位置には、出口スリーブ64の外周面と出口キャップ60の内周面との間をシールするためのシールリング33がはめ込まれている。
【0014】
また、出口キャップ60の先端側開口周縁部は半径方向内向きに張り出す支持フランジ62を形成しており、メッシュ部材63は外周縁部が出口スリーブ64の下端面と、出口キャップ60の支持フランジ62との間で軸線方向に挟持された形で保持されている。出口スリーブ64の内側空間は液体処理ノズル1の液体出口4よりも径大の水滞留空間64aを形成し、液体出口4から流出する細い水流は該水滞留空間64a内にて軸線Oに関する半径方向外向きに広がりつつ、水流出口61にてメッシュ部材63を介して整流され、より太い水流となって流出するようになっている。
【0015】
メッシュ部材63は例えば金属ワイヤの編み込み体として構成でき、その目開きは例えば#150~#635(目開き0.020mm以上0.109mm以下、開口率25.0%以上41.7%以下)、より望ましくは#200~#500(目開き0.026mm以上0.077mm以下、開口率25.8%以上36.8%以下)であるのがよい。また、メッシュ部材63は1枚のみで構成してもよいし、複数枚(例えば2、3、4又は5枚)を積層して配置してもよい。
【0016】
次に、本体ケーシング40のノズル収容孔44には液体処理ノズル1がはめ込まれている。ノズル収容孔44は円筒面状に形成されるとともに、本体側出口孔45の周縁部が半径方向内向きに張り出す支持フランジ44aを形成しており、液体処理ノズル1は下端面の外周縁部が該支持フランジ44aに当て止めされた形で保持されている。
【0017】
液体処理ノズル1は、樹脂製又は金属製のノズル本体10を備える。ノズル本体10には、一方の端面(上端面)に液体入口3を開口し他方の端面(下端面)に液体出口4を開口する貫通形態の液体流路2が形成されている。本実施形態では、ノズル本体10は円柱状であり、液体流路2は該ノズル本体10をその軸線O(中心軸線)の向きに貫通する形で形成されている。
【0018】
図4は液体処理ノズル1を取出して示す平面図及び正面断面図である。液体流路2は、内周面の軸線O方向においてその中間をなす一部区間が絞り部とされ、軸線Oを螺旋中心線とする螺旋溝50が刻設されている。本発明の液体処理ノズル1においては、この螺旋溝50の形成された絞り部がキャビテーション処理部5を形成する。キャビテーション処理部5にて螺旋溝50が2周回分以上に形成されているのがよく、本実施形態では4周回分形成されている。
【0019】
図5に示す如く、キャビテーション処理部5の内周面において、螺旋溝50の軸線Oの方向に隣接する周回部を区画する領域を溝間領域52として、該溝間領域21の最小内径を溝間領域内径D1としたとき、軸線O方向における螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも大きく設定されている。また、螺旋溝50の深さdは、刻設ピッチPよりも小さい値、本実施形態においては、溝間領域内径D1の10%以上40%以下(望ましくは15%以上25%以下)の値に設定されている。
【0020】
また、軸線Oを含む断面において、溝間領域52は、外形線が平坦(円筒面状)に形成され、螺旋溝50は溝間領域52に対し外向きに膨出する形態に形成されている。さらに、溝間領域52は軸線Oの方向における幅W1が螺旋溝50の幅W2よりも大きく設定されている(
図6参照)。螺旋溝50の軸線Oの方向に隣接する周回部が平坦な溝間領域52により区画される結果、螺旋溝50全体の形状は弦巻状となる。
【0021】
軸線Oを含む断面において螺旋溝50は、軸線O方向にて溝底51の位置から隣接する溝間領域52に向け、溝深さが連続的に減ずる外形形状をなすように形成されている。例えば、
図6に拡大して示すように、螺旋溝50の断面形状はV字状であり、螺旋溝50の深さdは螺旋溝50の幅W2の80%以上120%以下の値に定めることができる。
【0022】
また、キャビテーション処理部5の区間長をL、溝間領域内径をD1としたとき、L/D1は例えば1以上10以下(望ましくは1以上7以下)の値に設定されている。さらに、
図8及び
図9に示すように、軸線Oを含む平面上にて、軸線Oを法線とする基準面αと溝底51とのなす角度λ1は、例えば3°以上80°以下であり、望ましくは、45°以上70°以下であるのがよい。
【0023】
次に、キャビテーション処理部5の下流側には、キャビテーション処理部5の出口から液体出口4に向けて内径が漸増する出口側テーパ部22が、螺旋溝50の刻設ピッチPよりも区間長Jが大きくなるように形成されている。出口側テーパ部22に形成されている液体出口4の開口面積は、キャビテーション処理部5の溝間領域52の最小内径位置における軸断面積の1.2倍以上2倍以下(望ましくは、1.3倍以上1.7倍以下:本実施形態では1.5倍)に調整されている。出口側テーパ部22の形成区間長Jは、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば3倍以上5倍以下であり、軸線Oを含む断面において出口側テーパ部22のテーパ角度θ2は例えば4°以上8°以下である。
【0024】
一方、液体流路2において、キャビテーション処理部5の上流側には、液体入口3からキャビテーション処理部5の入口に向け、出口側テーパ部22よりも大きな勾配にて内径が漸減する入口側テーパ部21が形成されている。入口側テーパ部21の液体入口3は、出口側テーパ部22の液体出口4よりも径大に形成されている。入口側テーパ部21に形成されている液体入口3の開口面積は、キャビテーション処理部5の溝間領域52の最小内径位置における軸断面積の2.5倍以上8倍以下(望ましくは、3倍以上7倍以下:本実施形態では5倍)に調整されている。入口側テーパ部21の形成区間長Kは、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば1.5倍以上3倍以下であり、軸線Oを含む断面において入口側テーパ部21のテーパ角度θ1は例えば15°以上40°以下である。
【0025】
以上のようなキャビテーション処理部5を含む液体流路2を有したノズル本体10は、切削加工、射出成型等の既知の加工方法により形成できる。また、ノズル本体10を金属で構成する場合は、ロストワックス法等の鋳造にて形成してもよい。
【0026】
次に、
図4に示すように、ノズル本体10には、一端がノズル本体10の外面に開口し、他端がキャビテーション処理部5の螺旋溝50に連通する気体導入通路20が形成されている。本実施形態において気体導入通路20はノズル本体10の外周面に上記一端をなす気体入口20Eを開口し、他端をなす気体出口20Tを螺旋溝50内に開口する。そして、気体導入通路20は、気体入口20Eから気体出口20Tに至る軸線Qが液体流路2の軸線Oに対し、気体入口20Eが気体出口20Tよりも液体流路2の液体入口3側に位置するように傾斜して設けられている。軸線Qと軸線Oのなす角度λ2は、例えば30°以上70°以下であるのがよく、本実施形態では45°に設定されている。
【0027】
本実施形態において気体導入通路20は、気体出口20Tが気体入口20Eよりも径小に形成されている。具体的には、
図14に示すように、気体導入通路20の気体出口20T(以下、先端という)の開口側端部が気体出口20Tに向けて、テーパ状の縮径部20Bにより連続的に縮径された構造となっている。
【0028】
図4において、気体導入通路20は気体入口20Eが位置する基端側部20Pの内径δ2は、例えば0.8mm以上1.3mm以下(
図4においては1.0mm)である。また、これに続く部分は段付き面を経て内径が縮小された本体部20Aとされている。
図14に示すように、本体部20Aの内径δ1は例えば0.2mm以上0.7mm以下(望ましくは0.3mm以上0.6mm以下:本実施形態では0.5mm)であり、縮径部20Bの形成区間長は本体部20Aの内径の1.5倍以上3倍以下の範囲に調整されている。
【0029】
縮径部20Bの先端面は、該先端面のエッジが螺旋溝50の内周面と干渉しないように径が定められ、該先端面から螺旋溝50内面に至る部分は気体出口20Tに向けて、軸線方向に内径が均一なピンホール部20Sが形成され、該ピンホール部20Sの先端に気体出口20Tが形成されている。ピンホール部20S(気体出口20T)の内径TDは0.05mm以上0.2mm以下(望ましくは0.08mm以上0.15mm以下:本実施形態では0.1mm)であって本体部20Aの内径δ1より小さく設定されている。なお、
図15に示すように、気体導入通路20の縮径部20B’を、内径が段階的に縮小する段付き面状に形成することもできる。
【0030】
図4に戻り、気体導入通路20は、軸線Oの方向にて互いに異なる位置に複数個所に設けられている。具体的には、気体導入通路20は、キャビテーション処理部5に対し軸線O方向における上流側の半区間に連通開口するもの(区別のために符号「20」に(U)を付与している)と、軸線O方向における下流側の半区間に連通開口するもの(区別のために符号「20」に(D)を付与している)とが設けられている。いずれの気体導入通路20(U,D)も螺旋溝50の底部に気体出口20Tを連通開口している。
【0031】
図3に示すように、本体ケーシング40には、気体導入通路20(U,D)の気体入口20Eと連通する気体出口46Tが一端側に開口し、本体ケーシング40の外周面に開口する気体入口46Eが他端側に開口するケーシング気体流路46が、ノズル収容孔44を形成する壁部を貫通する形で形成されている。また、ノズル本体10の外周面とノズル収容孔44の内周面との間には、気体導入通路20の気体入口20E側とケーシング気体流路46の気体出口46T側がそれぞれ連通する気体中継空間7が形成されている。
【0032】
図3の構成においては、ノズル本体10の外周面の軸線Oの方向の中間位置にて周方向に形成された環状の空間形成凹部26の底面と、ノズル収容孔44の内周面とが形成する隙間が気体中継空間7を形成している。また、軸線Oの方向にてノズル本体10の両端部には周方向の溝部31,32が形成されており、各溝部31,32にはめ込まれたシールリング24,25によりノズル本体10の外周面とノズル収容孔44の内周面との隙間(ひいては気体中継空間7)は、軸線Oの方向における両側が液密に封止されている。ノズル本体10の両端部はノズル収容孔44の内周面に対し隙間嵌めとなっており、空間形成凹部26の深さ(軸線Oの方向における気体中継空間7の半径方向幅)は、該隙間嵌めのクリアランスよりも大きく設定されている。
【0033】
次に、本体ケーシング40の外周面には周方向に沿う環状の溝部47が形成され、ケーシング気体流路46の気体入口46Eが該溝部47の底面に開口している。また、溝部47内には、気体入口46Eからケーシング気体流路46内への気体の流入は許容し、ケーシング気体流路46内の逆流液体が気体入口46Eから流出することを阻止する逆流防止用弾性リング70がはめ込まれている。
【0034】
図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70はゴム製であり、円形の断面形状を有する。溝部47の断面は方形であり、本体ケーシング40の軸線方向(図面上下方向)にて、逆流防止用弾性リング70は溝部47の両内側面に対し外周縁両側が隙間嵌めとなるようにはめ込まれている。
図16A右に示すように、逆流防止用弾性リング70の内周縁部は溝部47の底面にてその幅方向中央位置に帯状のシール面70cを形成しつつ、気体入口46Eを横切る形でこれを半封止している。
図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70の内周面と気体入口46Eとの間には気体誘導空隙47Aが形成されている。
【0035】
以下、液体処理ノズル1並びにこれを用いた水道水処理装置100の動作について説明する。
図2に示すように、水道水処理装置100を水道蛇口ユニット91に取り付け、通水バルブ91Bを開くと、気体として空気を溶存した水道水が水道水処理装置100に流れ込み、処理済水DXWとして流出する。水道水は、
図3において、本体ケーシング40内の液体処理ノズル1に対し、液体入口3から液体流路2に流れ込み、キャビテーション処理部5を通過することによりキャビテーション処理され、微細気泡を含んだ処理済水となり、液体出口4から水滞留空間64aに流れ込むとともに、さらに水流出口61からメッシュ部材63を通過して流出する。また、絞り部をなすキャビテーション処理部5に生ずる負圧により、気体導入通路20(U,D)には負圧吸引力が発生し、気体入口20Eから気体(本実施形態の場合、外気をなす空気)を自吸することができる。その結果、吸引された気体はキャビテーション処理部5内で気液混合され、液体への気体の溶解や微細気泡への粉砕がなされる。
【0036】
ここで、液体処理ノズル1の液体出口4側の流通負荷が何らかの要因により増大した場合、キャビテーション処理部5(絞り部)内の液体は、該流通負荷に由来した背圧を受ける。旋回流CFに由来した負圧による気体導入通路20への気体流入圧よりも、この背圧が高くなれば、キャビテーション処理部5(絞り部)側から気体導入通路20へ液体が逆流し、気体入口20E側へ液体が流出することがある。
【0037】
気体導入通路20は、気体入口20Eが気体出口20Tよりも液体流路2の液体入口3側に位置するように傾斜して設けられていることで、キャビテーション処理部5(絞り部)に生ずる背圧の影響を受けにくくなり、上記のような気体導入通路20へ液体の逆流を効果的に抑制することがきる。該効果をより顕著なものとするためには、気体入口20Eの軸線Qと、液体流路2の軸線Oのなす角度λ2は70°以下、望ましくは60°以下となっていることが有効である。また、角度λ2が極度に小さくなると、気体導入通路20に生ずる負圧吸引力が不十分となる場合があるので、λ2の下限値は例えば30°以上に定められる。
【0038】
また、
図14のように、縮径部20Bを連続的に縮径されるテーパ状の構造とすることは、
図15のように縮径部20B’を段付き面状に形成する構造と比較して、流路断面積縮小に伴なう自吸気体への圧損低減に有効である。例えば
図14の構成のごとく、縮径部20Bを圧損の小さいテーパ状の構造とすることで、気体入口20E側への液体の逆流をさらに生じにくくすることができる。
【0039】
また、縮径部20Bの形成により気体出口20Tが気体入口20Eよりも径小に形成されていることで、気体出口20Tから流れF中に供給される粗大気泡の気泡径が縮小し、微細気泡への粉砕効率が大幅に高められる。特に、気泡径1μm以上100μm未満のファインバブルや、気泡径1μm未満のウルトラファインバブルへの粉砕効率を高めるためには、
図14及び
図15に示すように、気体出口20Tの内径TDが0.05mm以上0.2mm以下(望ましくは0.08mm以上0.15mm以下:本実施形態では0.1mm)に設定されていることが極めて有効である。また、縮径部20Bの先端側に連通するピンホール部20Sにより気体出口20Tを形成することは、気体出口20Tの内径TDの寸法精度を確保する観点において有効である。
【0040】
図3の水道水処理装置100の構成においては、本体ケーシング40のノズル収容孔44を形成する壁部を貫通する形でケーシング気体流路46が形成され、液体の流通に伴い、液体処理ノズル1の複数の気体導入通路20(U,D)に生ずる吸引負圧は、気体中継空間7を介してケーシング気体流路46に伝達されるようになっている。これにより、本体ケーシング40に形成するケーシング気体流路46の数を減ずることができ、本体ケーシング40の構造の簡略化に貢献する。また、液体逆流に由来した液漏れの懸念箇所も減ずることが可能である。
【0041】
また、本体ケーシング40の外周面に環状の溝部47が形成され、該溝部47の底面に開口するケーシング気体流路46の気体入口46Eが、溝部47内にはめ込まれた逆流防止用弾性リング70により半封止されている。ケーシング気体流路46に逆流液体が侵入しても、該逆流防止用弾性リング70により気体入口46Eからの液体の漏れ出しが効果的に抑止される。
【0042】
図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70は円形断面のゴム製(いわゆるオーリング)であり、方形断面の溝部47に対し隙間嵌めとなるようにはめ込まれるとともに、逆流防止用弾性リング70の内周面と気体入口46Eとの間には気体誘導空隙47Aが形成されている。この構成によると、気体入口46Eからケーシング気体流路46へ気体が流入する際の流通抵抗部は、逆流防止用弾性リング70と溝部47の両内側面との間の線状の隙間嵌め空間のみであるから、気体入口46Eが逆流防止用弾性リング70により半封止されているにも関わらず、ケーシング気体流路46へ気体をスムーズに流入させることができる。
【0043】
図16Bは、吸気時における逆流防止用弾性リング70の作用を説明するものである。液体処理ノズルへの液体流通に伴い、ケーシング気体流路46に負圧NPが誘導されると、その吸気流により逆流防止用弾性リング70は気体入口46Eにてケーシング気体流路46の内部へと引っ張られる。これにより、逆流防止用弾性リング70は、気体入口46Eに臨む部分が、溝部47の幅方向に断面径を減少させる形でつぶれ変形するとともに、溝部47の内側面と逆流防止用弾性リング70との間に隙間GPが生じ、その隙間から気体誘導空隙47Aを経てケーシング気体流路46に気体流AFが吸い込み形態で発生する。
【0044】
一方、
図16Cは、液体処理ノズルからケーシング気体流路46側へ液体が逆流してきた場合の逆流防止用弾性リング70の作用を説明するものである。
図16C左に示すように、逆流しようとする液体流WFは、気体流に比べて粘性が高く大きな表面張力を有するため、溝部47と逆流防止用弾性リング70との微小な隙間(あるいは緩い密着面)を透過する際の抵抗が気体流に比べてはるかに大きい。よって、
図16C右に示すように、液体流WFは、隙間GPからの流出が阻害された状態でケーシング気体流路46側からの逆流による正圧PPにより加圧される。この加圧により逆流防止用弾性リング70は、気体入口46Eに臨む部分が、溝部47の幅方向に断面径を増加させようとする向きにつぶれ変形しようとするが、該変形は溝部47の内側面に規制されていることから逆流防止用弾性リング70と溝部47の内側面との接触面積が増大して、液体流WFがより強固に阻止される状態となる。
【0045】
次に、キャビテーション処理部5の作用効果について説明する。
液体流路2に供給される水道水(液体)は入口側テーパ部21で絞られて増速され、
図7に示すように、その流れの一部は中心流MFとなって液体流路2の断面中心付近を流通する一方、残余の流れはキャビテーション処理部5の螺旋溝50に分配されて旋回流CFを形成する。
図8に示すように、螺旋溝50の内周面に衝突した分配流は螺旋溝50にガイドされる形で旋回し、その遠心力によって増速する。
図7に示すように、螺旋溝50の内部空間は、この遠心力の旋回効果に基づき発生する旋回流CFの形成により増速効果が高められる。増速された旋回流CFの領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーション効果により空気溶存濃度が過飽和となって、気泡径が1μm未満の微細気泡(いわゆるウルトラファインバブル)が多量に析出生成した処理済水が得られる。
【0046】
処理済水中の微細気泡は、例えばレーザー散乱式粒度測定装置を用いて検出することができる。また、処理済水には、観測可能な気泡となる前に成長を停止した気泡析出核も多量に含まれていると考えられるが、この気泡析出核のサイズは10nm以下であると考えられ、一般的な測定装置による検出が難しいこともある。例えば非特許文献1には、水撃力を用いて気液混合する形で微細気泡を形成した処理水を凍結し、クライオ型超高圧電子顕微鏡を用いて観察することにより、気泡析出核に該当すると思われる寸法の微細気泡が確認されている事例がある。
【0047】
本発明の液体処理ノズル1によると、通常のベンチュリ管のように直線的に絞り機構が形成されたノズルと比較して、螺旋溝50に由来した旋回流CFが発生することで、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効率を大幅に高めることができる。また、ベンチュリ管の絞り部をなす液体流路の内周面近傍は壁面摩擦による流量損失が通常は大きくなる。しかし、
図4の液体処理ノズル1の構成によれば、キャビテーション処理部5の内周面近傍の流速が旋回流CFの形成により高まる結果、上記の水道水処理装置100等の形で液体処理ノズル1を流路に挿入したときの圧損も低く留めることができる。
【0048】
本発明者が有限要素法を用いた流体シミュレーションシステムにより解析したところ、
図7に示すように、螺旋溝50により誘導される旋回流CFの流速は、螺旋溝50の開始端から下流側に向け、螺旋周回数を重ねるほど、すなわち下流側に向かうほど大きくなることがわかった(図中、旋回流CFを示す曲線は線幅が大きいほど大流速であることを示す)。すなわち、螺旋周回数が比較的小さい上流側は、入口側テーパ部21により絞られた直後であり、螺旋溝50に沿う流れ分配量も小さく中心流MFが主体的となるが、螺旋周回数が増す下流側では螺旋溝50に沿う流れ分配量が積分的に累積される結果、旋回流CFが発達して周方向の流速が顕著に増加する。螺旋溝50の形成長は例えば1周回分以上、望ましくは2周回分以上に形成されているのがよい。
【0049】
図8及び
図9に示すように、キャビテーション処理部5の内面に沿って軸線方向に流れる流れFは、螺旋溝50の溝間領域52を乗り越えようとする直進成分LFと、螺旋溝50に沿う旋回流CFの成分とに分解する。旋回流CFの成分は溝間領域52を乗り越えるたびに、つまり螺旋溝50の通過周回数を重ねるごとに増加すると考えられる。このとき、軸線Oを含む平面への軸線Oと溝底51とのなす角度λ1が大きいほど、つまり、螺旋溝50の刻設ピッチPが大きいほど1周回あたりに生ずる旋回流CFの分配比率が大きくなると考えられる。
【0050】
特に、
図8のように、軸線O方向における螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも大きく設定されていることで、螺旋溝50の形成周回数が比較的小さくとも旋回流CFを著しく形成でき、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効果を顕著なものとすることができる。一方、
図9のように、螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも小さい場合は、1周回あたりに生ずる旋回流CFの分配比率は小さくなる。しかし、この場合も螺旋溝50の形成周回数をより大きく確保することで、キャビテーション効果を十分に達成できる場合がある。
【0051】
図6において、螺旋溝50の深さdが大きすぎると、溝間領域52を流れが乗り越える際の流体抵抗が過剰となり、キャビテーション処理部5を流れが通過する際の圧損が増加して流速低下を招き、十分なキャビテーション効果が得られなくなる場合がある。螺旋溝50の深さdを螺旋溝の刻設ピッチPよりも小さく設定することは、この観点において有効である。
【0052】
一方、螺旋溝50の深さdが浅すぎる場合は、溝間領域52を流れが乗り越える際の流体抵抗が減少し、螺旋溝50に沿った旋回流CFの誘導効果が不十分となり、キャビテーション効果が不足することにつながる場合がある。螺旋溝50の深さを溝間領域内径D1の10%以上に設定することは、この観点において有効である。
【0053】
また、
図7に示す如く、軸線Oを含む断面において、溝間領域52の外形線を平坦(円筒面状:出口側テーパ部22よりも勾配の小さいテーパ面としてもよい)となし、螺旋溝50を溝間領域52に対し外向きに膨出する形態とすること(すなわち、螺旋溝50の全体を弦巻状に形成すること)により、中心流MFにより旋回流CFが螺旋溝50内に封じ込められる効果が増大する。その結果、旋回流CFがより高速化してキャビテーション効果を高めることに貢献できる。また、溝間領域52を円筒面とすることで、溝間領域52の表面を流れる中心流MFに乱れが少なくなり、旋回流CFを螺旋溝50内により効果的に封じ込めることができる。
【0054】
旋回流CFを螺旋溝50内に封じ込める効果を高める観点においては、
図6に示すように、軸線Oの方向において溝間領域52の幅W1を螺旋溝50の幅W2よりも大きく設定することが望ましい。同様に、螺旋溝50の深さdについては、溝間領域内径D1の10%以上40%以下(望ましくは15%以上25%以下)の値に設定すること、さらには、螺旋溝50の幅W2の80%以上120%以下の値に定めることが有効である。
【0055】
螺旋溝50に沿った旋回流CFの発生をより顕著なものとするためには、軸線O方向にて溝底51位置から隣接する溝間領域52に向け、溝深さが連続的に減ずる外形形状をなすように形成すること、例えば、
図6に拡大して示すように、螺旋溝50の断面形状をV字状となすことが有効である。特に、溝底に向けての溝幅の縮小率の高いV字形状を採用することは、溝底付近にて局所的に流速を増加させ、キャビテーションによる減圧レベルをさらに高める上で有利となる。なお、
図6において螺旋溝50の断面形状は内側面が外向きに多少膨らむV字形状で形成しているが、
図28Bに示すように、U字状の断面とすること、あるいは、
図28Cの左に示すように、膨出のない先鋭なV字形態としてもよい。また、
図28Cの右に示すように、V字状の螺旋溝50を、溝底を平坦化して形成することも可能である。
【0056】
また、キャビテーション処理部5の通過区間長をL、溝間領域内径をD1としたとき、L/D1の値が過度に大きすぎると、キャビテーション処理部5を液体流が通過する際の流通抵抗が大きくなりすぎ、顕著なキャビテーション効果が得られなくなる場合がある。この観点において、L/D1の値は10以下に設定することが有効であるといえる。
【0057】
図10は、螺旋溝50による微細気泡の生成・粉砕効果を取り出した形で示す説明図である(説明の便宜を図るため、気体導入通路20を省略して描いている)。キャビテーション処理部5に供給される流れFは、螺旋溝50の下流側に向かうにつれ旋回流CFの発達が顕著となり、例えばその流速が5m/秒以上に到達するとキャビテーション効果による気泡核BNが生成し始める。気泡核BNの生成量は、旋回流CFの流速が上昇する下流側ほど大きくなると考えられる。また、気泡核BNが特に発生しやすい領域は、流速がより高まりやすい螺旋溝50の溝底51付近である。
【0058】
生成した気泡核BNは、減圧状態が継続すれば液体中の過飽和気体成分を吸収して成長する。しかし、旋回流CFの形成が著しい螺旋溝50の内部では、キャビテーション効果により、新たな気泡核BNが続々と生成し、強い負圧環境のためそれらが急激に気泡へと成長するため、キャビテーション処理部5内の液体は突沸状態に近い乱流撹拌状態となり、成長した気泡もその乱流に巻き込まれ、少なくともその一部はウルトラファインバブル状態にまで微粉砕される。例えば、ねじ部材を用いた液体処理ノズルでは、キャビテーションポイントはねじ部材のねじ谷付近に限定的に形成され、気泡析出に伴う突沸領域も、ねじ部材の直下領域に限定的に形成されるにすぎないから、成長した気泡の再粉砕効果にはやや劣るといえる。これに対し、本発明の液体処理ノズル1の構成では、螺旋溝50の形成区間の全体にてキャビテーション効果ひいては気泡析出による乱流撹拌効果が確保される結果、成長した気泡の再粉砕効果にも優れ、例えばウルトラファインバブルの生成個数密度を大幅に高めることができる。
【0059】
また、キャビテーション処理部5の下流側に螺旋溝50の刻設ピッチPよりも区間長が大きくなるように出口側テーパ部22が形成されている場合、キャビテーション処理部5にて発生した旋回流CFは、螺旋溝50が非形成の出口側テーパ部22内にも継続旋回流SFとして持ちきたすことができる。これにより、キャビテーション処理部5内で発生し成長した気泡あるいは気体導入通路20から導入された気泡は、出口側テーパ部22内でも継続旋回流SFにより粉砕することができ、ファインバブルあるいはウルトラファインバブルの生成個数密度を高めることに貢献する。
【0060】
継続旋回流SFは、出口側テーパ部22内での流れ拡大に伴う圧損が少ないほど形成されやすい。この観点において、液体出口4の開口面積が、キャビテーション処理部5の溝間領域52の最小内径位置における軸断面積の1.2倍以上2倍以下(望ましくは、1.3倍以上1.7倍以下:本実施形態では1.5倍)に調整され、出口側テーパ部22の形成区間長は、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば3倍以上5倍以下であるのが有効である。
【0061】
次に、
図5に示す液体処理ノズル1の構成において、気体導入通路20(U,D)はキャビテーション処理部5を形成する螺旋溝50に気体出口20Tを開口している。すでに説明した通り、螺旋溝50内には強い旋回流CFが発生しており、その旋回流CFに作用する負圧は、螺旋溝50を形成しない通常のベンチュリ間の絞り部よりも高くなっていると考えられる。よって、気体導入通路20(U,D)には、絞り部に螺旋溝50を形成しない液体処理ノズル(
図31:符号1’、後述)と比較して、より高い負圧吸引力が発生し、気体入口20Eからの気体(本実施形態の場合、外気をなす空気)の自吸能力がより向上する。螺旋溝50内に発生する旋回流CFに該気体を巻き込んで粉砕することにより、微細気泡(特に、ウルトラファインバブル)の生成量をさらに高めることができる。
【0062】
図4の液体処理ノズル1の構成においては、気体導入通路20(U)はキャビテーション処理部5(螺旋溝50)に対し軸線O方向における上流側の半区間に連通開口している。
図11に示すように、この位置で吸引された粗大気泡LBは、下流側の螺旋溝50にて強い旋回流CFと気泡析出に伴う撹拌乱流により、長い区間に渡って激しく粉砕される結果、ウルトラファインバブルの生成個数密度の増大に大きく貢献する。
【0063】
なお、螺旋溝50の上流側半区間では旋回流CFは発達途上の段階にあり、流速も比較的小さいから、旋回流CFに随伴して発生する負圧レベルも多少低くなる。その結果、吸引される気体の量はやや少なくなると考えられる。ここで、螺旋溝50の上流側にて流れに対し気体が過剰に混入すると、それよりも下流側にて、螺旋溝50の溝底51の領域は粗大気泡と直接接触する頻度が高くなる。粗大気泡と接している溝底51の領域は、旋回流CFの流速が大きくともキャビテーションによる新たな気泡核生成には貢献しないから、微細気泡の生成効率と乱流撹拌による気泡粉砕効率が損なわれ、ウルトラファインバブルの生成個数密度は却って低下することにつながる。よって、上流側半区間の気体導入通路20(U)から吸引される気体量が過度に増大しないことは、上記のような問題を生じにくくする方向に寄与し、ウルトラファインバブルの生成個数密度の増大を図る上で有利に作用するといえる。
【0064】
一方、
図4の液体処理ノズル1の構成において、気体導入通路20(D)はキャビテーション処理部5(螺旋溝50)に対し軸線O方向における下流側の半区間に連通開口している。
図12に示すように、螺旋溝50の下流側半区間では旋回流CFは十分発達しており、流速も大きいので、旋回流CFに随伴して発生する負圧レベルも高い。よって、気体導入通路20(D)においては、増速された旋回流CFにより吸引される粗大気泡LBの量は多くなるが、該旋回流CFと気泡析出に伴う撹拌乱流による粉砕を受ける区間長は短くなる。よって、該粗大気泡LBはファインバブルFBの生成個数密度の増大を図る上で有利に作用する。
【0065】
ウルトラファインバブルやそれよりもさらに小さい気泡析出核は、水の巨視的な浸透性向上作用があるといわれている。これに対し、1μm以上のファインバブル領域の微細気泡は、気泡表面の帯電による吸着作用や、イオン吸着した気泡の収縮・圧壊に伴う衝撃力による汚れ除去等の効果が顕著であるといわれている。気体導入通路20(U)及び気体導入通路20(D)のいずれを用いても、本発明の液体処理ノズル1により空気を吸引しつつ水道水を処理した場合、特に1μm以上20μm以下(特に1μm以上5μm以下)の気泡径領域のファインバブルが多量に生じやすいことが判明している。この領域のファインバブルFBの生成量が増大した処理済水は、汚れ除去等の効果が特に顕著となることに加え、該ファインバブルFBによる光散乱により顕著に白濁した状態が長時間続くため、微細気泡が大量に含まれていることが可視的に把握しやすくなる利点も生ずる。
【0066】
気体導入通路20(U)及び気体導入通路20(D)のいずれも、気体導入通路20の気体出口20Tは、旋回流CFの流速が高められる螺旋溝50の底部に連通開口することで、気体の自吸効率が高められている。なお、
図13に示すように、気体導入通路20(D)は出口側テーパ部22に連通するように設けることもできる。出口側テーパ部22を設けた構成であれば、該出口側テーパ部22に生ずる継続旋回流SFにより、気体を自吸することが可能である。
【0067】
以下、本発明の種々の変形実施形態について説明する。
図17に示す水道水処理装置100’においては、液体処理ノズル1に空間形成凹部が形成されず、液体処理ノズル1の外周面全体がノズル収容孔44の内周面に対し隙間嵌めとなっている(すなわち、気体中継空間が省略された構成である)。そして、本体ケーシング40には、液体処理ノズル1に形成された複数の気体導入通路20にそれぞれ対応する形で、ケーシング気体流路46がそれぞれ個別に形成されている。なお、複数の気体導入通路20は、キャビテーション処理部5の前半区間と後半区間とに振り分けて形成され、前半区間の気体導入通路20(U)を受け持つ溝部47(U)及び逆流防止用弾性リング70(U)の組と、鋼板区間の気体導入通路20(D)を受け持つ溝部47(D)及び逆流防止用弾性リング70(D)の組とが個別に設けられている。
【0068】
また、液体処理ノズル1に形成する気体導入通路20は、
図18に示すようにキャビテーション処理部5の前半区間にのみ設けたり、
図19に示すようにキャビテーション処理部5の後半区間にのみ設けたりするようにしてもよい。また、
図20~
図23に示すように、キャビテーション処理部5に対し軸線方向にて螺旋溝50の互いに異なる位置に、複数の気体導入通路20を振り分けて形成するようにしてもよい。
図20の構成は、2つの気体導入通路20を螺旋溝50に対し、液体入口3側から1周回目の溝底と、2周回目の溝底にそれぞれ連通するように形成した例である。
図21の構成は、
図20の構成に対し、液体入口3側から3周回目の溝底に連通する3つ目の気体導入通路20を追加した例を示す。
図22の構成は、
図21の構成に対し、液体入口3側から4周回目の溝底に連通する4つ目の気体導入通路20を追加した例を示す。また、
図23の構成は、
図18の構成に対し、出口側テーパ部22に連通する気体導入通路20を2つ追加した例を示す。
【0069】
さらに、
図24~
図27に示すように、キャビテーション処理部5の前半区間(上流側)と後半区間(又は出口側テーパ部22:下流側)には、複数の気体導入通路20を種々の個数にて振り分けて形成することができる。
図24は、上流側に1つの気体導入通路20を、下流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。
図25は、上流側に1つの気体導入通路20を、下流側に互いに120°ずれた角度位相にて3つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。
図26は、上流側に互いに120°ずれた角度位相にて3つの気体導入通路20を、下流側に互いに60°ずれた角度位相にて6つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。
図27は、上流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、下流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。
【0070】
図28Aは、変形態様による螺旋溝50”を備えたキャビテーションノズル1”を示すものである。該態様にて螺旋溝50”は、軸線Oの向きに隣接する周回部分の幅が拡大されるとともに、該幅方向の対応する縁が連なって細い稜線状の溝間領域52を形成している。図中の太い実線(紙面垂直方向にて手前側に位置する部分)及び太い破線(紙面垂直方向にて向こう側に位置する部分)は溝底(谷底)51を、図中の太い一点鎖線(紙面垂直方向にて手前側に位置する部分)及び細い一点鎖線(紙面垂直方向にて向こう側に位置する部分)は、陵線状の溝間領域52を示している。これに伴い、螺旋溝50の外形形状は三角波状を呈するものとなっている(この場合、溝間領域内径D1は溝間領域52の稜線位置での内径となる)。なお、螺旋溝50の外形形状は正弦波状あるいは互いに反転関係にある半楕円曲線を交互に接続した波型等であってもよい。このような形状の螺旋溝50”は、旋回流の封じ込め効果は多少損なわれるものの、溝間領域52を含めたキャビテーション処理部5の内周面全体の抵抗が低減される。これにより、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効果を比較的良好に確保することができる。
【0071】
図29は本発明の液体処理ノズルを組み込んだ洗濯機用の水処理アタッチメントの一例を示す断面図である。水処理アタッチメント300は本体ケーシング340を備える。本体ケーシング340は上端面に開口する継手座ぐり341と、該継手座ぐり341の下流側に連通するノズル収容孔344と、該ノズル収容孔344の下流側に連通する本体側出口孔345とが、本体ケーシング340を貫通する形で同軸的に一体形成されている。継手座ぐり341の内周面には、水道蛇口ユニット側に形成されている金具取付用雄ねじ部(例えばG1/2雄ねじ)と螺合する雌ねじ継手部342が形成されている。一方、本体ケーシング340の下端側にはホース接続部349が形成されている。ホース接続部349は、本実施形態ではタケノコ状の継手部として形成されている。ノズル収容孔344に収容されている液体処理ノズル1は、たとえば
図18に示したものと同様の構成であり、詳細な説明は略する。液体処理ノズル1に形成された気体導入通路20へは気体中継空間7及び本体ケーシング340側のケーシング気体流路346を経て外気が自吸されるようになっている。また、符号370は、
図3と同様の逆流防止用弾性リングである。
【0072】
図30は、水処理アタッチメント300の使用例を示すものである。水処理アタッチメント300は、住居の洗濯機置き場に配設される洗濯用水供給用の水道蛇口ユニット91に雌ねじ継手部342を、洗濯機400の給水インレット401に装着される給水ホース92にホース接続部349をそれぞれ接続する形で使用される。水道蛇口ユニット91から供給される空気を溶存した水道水は、水処理アタッチメント300を通過することにより外気を自吸しつつキャビテーション処理され、微細気泡を含んだ処理済水となって、給水ホース92を経て洗濯機400の洗濯槽(図示せず)に供給される。処理済水は、キャビテーション効果によりウルトラファインバブルを多量に含み、これが洗濯槽内に供給されることで、衣類等に対する洗浄効果が大きく向上する。
【0073】
なお、
図31に示すように、螺旋溝を有さない絞り部5’を液体流路2に形成した液体処理ノズル1’についても、本発明を同様に適用できる。
図31は、
図3の水道水処理装置100の液体処理ノズル1を上記の液体処理ノズル1’に置き換えた水処理装置100’を示すものであり、キャビテーション処理部5と絞り部5’の相違点を除き、その余の構成は
図3と全く同じである。よって、
図3と共通する構成要素には同一の符号を付与して詳細な説明は略する。絞り部5’は螺旋溝50を有さず、旋回流の発生は見込めないが、流れが絞られることによる流速増大により負圧発生する点は同様であり、気体導入通路20を経て気体を自吸でき、気液混合ノズルとしての活用が可能である。そして、気体導入通路20が傾斜して設けられていることで、キャビテーション処理部5’(絞り部)に生ずる背圧の影響を受けにくくなり、気体導入通路20へ液体の逆流を抑制できる効果が同様に達成できる。
【0074】
以下、本発明の液体処理ノズルの作用効果を確認するために行った種々の実験の結果について記載する。
(実験例1)
図31の実施形態にて使用した、螺旋溝を形成しない液体処理ノズル1’の試作品を、2か所形成した気体供給通路について、形成角度λ2、気体出口の内径(TD)及び縮径部の形状を種々に変更しつつ作成し、
図3の水道水処理装置100に組み込んだ。液体処理ノズル1の各部の寸法を以下のように設定している(
図5参照:ただし、螺旋溝50を形成せず)。
・液体入口3の内径D2:4.5mm
・液体出口4の内径D3:2.5mm
・入口側テーパ部21の区間長:5mm
・出口側テーパ部22の区間長:7mm
・メッシュ部材63:目開き番手#400(目開き0.034mm、開口率27.8%)3~5枚積層
【0075】
気体導入通路20の形成仕様は以下の通りである。
・先端形状:
図14(テーパ形状)又は
図15(段付き面状)のいずれか。本体部20Aの内径は0.5mm。縮径部の区間長CLは1.5mm。気体出口20Tを形成するピンホール部20Sの区間長TLは0.15mm、内径TDは0.03~0.25mm。
・軸線Qと軸線Oのなす角度λ2:30~90°(
図5参照:90°は比較例)
・気体出口20Tの開口位置
上流側:螺旋溝50の起点から1周回目の溝底位置(
図5:20(U))
下流側:螺旋溝50の終点から1/4周回分戻った溝底位置(
図5:20(D))
【0076】
上記の水道水処理装置100を
図2のごとく水道蛇口ユニットに接続し、通水バルブ91Bを手動操作することにより出口側通水量が4L/分となるように調整した。このとき、本体ケーシングの気体入口からの逆流水の有無を目視で確認した。さらに、得られた処理済水の微細気泡の個数形成密度及び個数気泡径分布を、レーザー散乱式のナノ粒子径分布測定装置(島津製作所製:SALD-7500nano)を用いて計測した。なお、処理済水の気泡径計測は、取水から15秒を経過した時点で行っている。結果を表1にまとめて示す。
【0077】
【0078】
上記の結果によると、気体供給通路を傾斜させて形成した番号1~11のノズルは、気体供給通路を傾斜させず直角に形成した番号12のノズルと比較して、気体入口からの水の逆流が総じて生じにくくなっていることがわかる。水の逆流防止効果に関しては、気体供給通路の傾斜角度λ2が70°以下、特に60°以下に設定される場合に顕著であることもわかる。また、気体出口内径TDを0.1mmに設定した場合の比較において、気体供給通路の傾斜角度λ2が30°となる番号9のノズルは、傾斜角度λ2を45°~70°に設定した番号3、10、11のノズルと比較して、外気の自吸力がやや低下し、微細気泡の形成量が減少していることがわかる。
【0079】
また、メッシュ部材の積層数を5枚として液体出口側の圧損を増加させた番号6及び8の各ノズルについて、縮径部の先端側を
図14のごとくテーパ状とした番号6のノズルの方が、縮径部の先端側を
図15のごとく段付き面状とした番号8のノズルよりも逆流が生じにくくなっていることがわかる。
【0080】
さらに、気体出口の内径TDについては、これを0.05mm~0.20mmの範囲内に収まる寸法に設定した番号2~4のノズルについて、その範囲外となる番号1及び番号5のノズルよりも微細気泡の形成量が大幅に増加していることがわかる。
【0081】
(実験例2)
図4に示す外形の液体処理ノズル1(絞り部に螺旋溝を形成したもの)の試作品を、気体導入通路20を種々のレイアウトで形成しつつ作成し、
図3の水道水処理装置100に組み込んだ。液体処理ノズル1の各部の寸法を以下のように設定している(
図5参照)。
・螺旋溝50の形成区間長L:11mm
・螺旋溝50の深さd:0.5mm又は0.3mm
・螺旋溝50の幅W2:0.5mm
・溝間領域内径D1:2mm
・螺旋溝形成周回数:2又は4
・螺旋溝50の刻設ピッチP:4.50又は2.75mm
・液体入口3の内径D2:4.5mm
・液体出口4の内径D3:2.5mm、2.2mm、2.0mm又は3.0mm
・入口側テーパ部21の区間長:5mm
・出口側テーパ部22の区間長:7mm
・メッシュ部材63:目開き番手#400(目開き0.034mm、開口率27.8%)3枚積層
【0082】
気体導入通路20の形成仕様は以下の通りである。
・先端形状:
図14の通り。本体部20Aの内径は0.5mm。縮径部の区間長CLは1.5mm。気体出口20Tを形成するピンホール部20Sの区間長TLは0.15mm、内径TDは0.1mm。
・軸線Qと軸線Oのなす角度λ2:45°(
図5参照)
・気体出口20Tの開口位置:以下の3種類のいずれか、またはそれらの組み合わせとした。
上流側:螺旋溝50の起点から1周回目の溝底位置(
図5:20(U))
下流側:螺旋溝50の終点から1/4周回分戻った溝底位置(
図5:20(D))
出口側テーパ部:軸線Oの向きに液体出口4から2.5mm隔たった出口側テーパ部22の内面位置(
図13:20(D))
各試作品の具体的な寸法設定及び気体導入通路20の形成位置については表2にまとめて示している。
【0083】
上記の水道水処理装置100を
図2のごとく水道蛇口ユニットに接続し、通水バルブ91Bを手動操作することにより出口側通水量が4L/分となるように調整した。得られた処理済水の微細気泡の個数形成密度及び個数気泡径分布を、レーザー散乱式のナノ粒子径分布測定装置(島津製作所製:SALD-7500nano)を用いて計測した。なお、処理済水の気泡径計測は、取水から15秒を経過した時点で行っている。結果を表2にまとめて示す。
【0084】
【0085】
絞り部に螺旋溝を形成しない表1の番号3のノズルの結果と比較すれば明らかなとおり、螺旋溝を形成したノズル(番号111~118)は、気泡径0.3μm以下のウルトラファインバブルの形成密度が劇的に向上していることがわかる。特に、上流側にのみ気体導入通路20を設けた番号111~114のノズルを用いた場合は33億個/cc~320億個/ccと、ウルトラファインバブルの形成密度が飛躍的に向上している。
【0086】
以上、本発明の種々の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した必須の構成要件以外の技術的要素については、適宜取捨選択した形で実施することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 液体処理ノズル
2 液体流路
3 液体入口
4 液体出口
5 キャビテーション処理部
7 気体中継空間
10 ノズル本体
20 気体導入通路
20A 本体部
20B 縮径部
20E 気体入口
20P 基端側部
20S ピンホール部
20T 気体出口
21 入口側テーパ部
22 出口側テーパ部
26 空間形成凹部
31,32 溝部
31,32 シールリング
33 シールリング
40 本体ケーシング
40a 段付き面
41 継手座ぐり
42 雌ねじ継手部
43 シールリング
44 ノズル収容孔
44a 支持フランジ
45 本体側出口孔
46 ケーシング気体流路
46E 気体入口
46T 気体出口
47 溝部
47A 気体誘導空隙
50 螺旋溝
51 溝底
52 溝間領域
60 出口キャップ
60b 雌ねじ部
61 水流出口
62 支持フランジ
63 メッシュ部材
64 出口スリーブ
64b 雄ねじ部
70 逆流防止用弾性リング
70c シール面
91 水道蛇口ユニット
92 通水バルブ
100 水道水処理装置
DXW 処理済水
O 軸線
Q 軸線