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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111965
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】フレキシブル管ユニット
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/10 20220101AFI20220725BHJP
   F16L 11/15 20060101ALI20220725BHJP
   B01F 23/2326 20220101ALI20220725BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20220725BHJP
【FI】
B01F5/00 G
F16L11/15
B01F3/04 F
B01F5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007643
(22)【出願日】2021-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】309003957
【氏名又は名称】株式会社 JAPAN STAR
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 博毅
【テーマコード(参考)】
3H111
4G035
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA01
3H111BA15
3H111CA47
4G035AB20
4G035AC23
4G035AC44
4G035AE13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キャビテーション処理用のノズルをフレキシブル管からなる流路に組み込んで使用する場合に、継手部分の部品点数の削減と小寸法化を図ることができ、かつ、気泡の微細化及び発生量も十分に担保できるようにする。
【解決手段】フレキシブル管の継手部を構成する接続ケーシング部に液体処理ノズルとして、ノズル本体に形成された液体流路の内周面に、流路の軸線を螺旋中心線とする螺旋溝からなるキャビテーション処理部を形成したものを組み込む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または樹脂製のノズル本体の一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成されるとともに、前記液体流路の内周面の軸線方向における少なくとも一部の区間が、前記軸線を螺旋中心線とする螺旋溝が刻設されたキャビテーション処理部とされ、前記液体流路に供給される溶存気体を含有する液体の流れの一部を前記キャビテーション処理部の前記螺旋溝に分配するとともに、分配された前記液体を前記螺旋溝内にて増速しつつ旋回させることにより、前記液体の増速により減圧される前記螺旋溝の内部空間をキャビテーション領域となす形で前記溶存気体を減圧析出させるようにした液体処理ノズルと、
金属または樹脂により軸線方向にて両端が開口する筒状部材として構成され、前記液体処理ノズルが同軸的に挿入され該液体処理ノズルを軸線方向に位置保持しつつ収容するノズル収容孔と、前記ノズル収容孔の底部を貫通するとともに前記液体処理ノズルの前記液体流路と連通する形で形成されたケーシング側開口部とを有する接続ケーシング部と、
前記接続ケーシング部に対し前記軸線方向の一端に設けられるとともに接続先配管の継手部と係合するケーシング側継手部と、
金属または樹脂により管壁部が蛇腹状に形成され、前記ケーシング側開口部に対し内部空間が連通する形で前記接続ケーシング部に対し一端が結合されるフレキシブル管本体と、
を備えたことを特徴とするフレキシブル管ユニット。
【請求項2】
前記液体処理ノズルは、前記キャビテーション処理部をなす前記液体流路の内周面において、前記軸線方向において前記螺旋溝の互いに隣接する周回部分を区画する領域を溝間領域として、該溝間領域の最小内径を溝間領域内径としたとき、前記軸線方向における前記螺旋溝の刻設ピッチが前記溝間領域内径よりも大きく設定されている請求項1記載のフレキシブル管ユニット。
【請求項3】
前記液体処理ノズルは、前記螺旋溝の深さが前記刻設ピッチよりも小さく設定されている請求項2記載のフレキシブル管ユニット。
【請求項4】
前記液体処理ノズルは、前記軸線を含む断面において前記溝間領域が平坦に形成され、前記螺旋溝は前記溝間領域に対し外向きに膨出する形態に形成されている請求項2又は請求項3に記載のフレキシブル管ユニット。
【請求項5】
前記液体処理ノズルは、前記溝間領域が円筒面状に形成されている請求項4に記載のフレキシブル管ユニット。
【請求項6】
前記液体処理ノズルは、前記溝間領域の前記軸線方向における幅が前記螺旋溝の幅よりも大きく形成されている請求項4又は請求項5に記載のフレキシブル管ユニット。
【請求項7】
前記螺旋溝は、前記軸線方向にて溝底位置から隣接する前記溝間領域に向け、溝深さが連続的に減ずる外形形状をなすように形成されている請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載のフレキシブル管ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブル管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビテーション効果(水が高流速化して通過する際の減圧効果)により溶存空気を微細気泡として析出させるノズルが種々提案されている(特許文献1~6)。典型的には、水の流路にベンチュリやオリフィスにより絞り部を設け、絞り部を液体が増速して通過する際のキャビテーション効果を利用するものが知られている(特許文献1~6)。また、特許文献7には、軸線方向のスリットを周方向に多数形成した円筒部材を流路内に配置し、水流内で円筒部材を回転させることによりキャビテーションを生じさせる構造が提案されている。また、特許文献8には、流路の途中に水流方向と直角にねじ部材を配置し、そのねじ谷をキャビテーションポイントとして利用するノズルが提案されている。
【0003】
このようなキャビテーションノズルをフレキシブル管からなる流路に組み込んで使用したい場合、キャビテーションノズル側に設けられた継手部をフレキシブル管側に設けられた継手部に接続して用いることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-110468号公報
【特許文献2】特許6609819号公報
【特許文献3】特許6579547号公報
【特許文献4】特許4915962号公報
【特許文献5】WO2018/185866号公報
【特許文献6】特許4999996号公報
【特許文献7】特開2017-136513号公報
【特許文献8】特許5731650号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NanotechJapan Bulletin Vol. 8, No. 4, 2015、企画特集Collabo ナノテクノロジー第4 回「ナノバブル水中のナノバブルの解析」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~6が開示するベンチュリ又はこれに類似した絞り機構を用いるノズルは、キャビテーション効果(減圧効果)を十分に得るための流速を、絞り部による増速効果だけで達成するには限界があり、結果として気泡の微細化及び発生量を十分に担保できない問題がある。また、流速増加のため絞り部の断面積をむやみに縮小することは圧損の増加につながり、ノズルに対する通水流力の不足や、供給水圧の過度の増加を招くことにつながる。
【0007】
一方、特許文献7及び8のように、キャビテーション効果を促進するため円筒部材やねじ部材を流路内に配置する構成は、部品点数の増大やノズル内部構造の複雑化を招くほか、余分な部材を流路内に配置することによる圧損増加を生じやすい問題がある。
【0008】
他方、流速増加のため絞り部につながる入口側テーパ部の開口径を拡大することは、ノズル外径寸法の肥大化を生じるとともに、フレキシブル管へ接続する際に継手変換が必要となるケースが多く、部品点数の増大を招く問題がある。
【0009】
本発明の課題は、キャビテーション処理用のノズルをフレキシブル管からなる流路に組み込んで使用したい場合に、継手部分の部品点数の削減と小寸法化を図ることができ、かつ、気泡の微細化及び発生量も十分に担保できるフレキシブル管ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のフレキシブル管ユニットは、金属または樹脂製のノズル本体の一方の端面に液体入口を開口し他方の端面に液体出口を開口する貫通形態の液体流路が形成されるとともに、液体流路の内周面の軸線方向における少なくとも一部の区間が、軸線を螺旋中心線とする螺旋溝が刻設されたキャビテーション処理部とされ、液体流路に供給される液体の流れの一部をキャビテーション処理部の螺旋溝に分配するとともに、分配された液体を螺旋溝内にて増速しつつ旋回させることにより、液体の増速により減圧される螺旋溝の内部空間をキャビテーション領域となす形で溶存気体を減圧析出させるようにした液体処理ノズルと、金属または樹脂により軸線方向にて両端が開口する筒状部材として構成され、液体処理ノズルが同軸的に挿入され該液体処理ノズルを軸線方向に位置保持しつつ収容するノズル収容孔と、ノズル収容孔の底部を貫通するとともに液体処理ノズルの液体流路と連通する形で形成されたケーシング側開口部とを有する接続ケーシング部と、接続ケーシング部に対し軸線方向の一端に設けられるとともに接続先配管の継手部と係合するケーシング側継手部と、金属または樹脂により管壁部が蛇腹状に形成され、ケーシング側開口部に対し内部空間が連通する形で継手ケーシング部に対し一端が結合されるフレキシブル管本体と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明のフレキシブル管ユニットにおいて使用する液体処理ノズルは、ノズル本体に形成された液体流路の内周面に、流路の軸線を螺旋中心線とする螺旋溝からなるキャビテーション処理部を形成している。液体流路に供給される液体の流れの一部はキャビテーション処理部の螺旋溝に分配される。螺旋溝の内周面に衝突した分配流は螺旋溝にガイドされる形で旋回し、その遠心力によって増速する。すなわち、この遠心力旋回効果に基づき螺旋溝の内部空間は液体の増速効果が高められる結果、そのキャビテーション効果により、ベンチュリ管のような直線的に液体が流通するだけの絞り機構と比較して微細気泡の発生効率を大幅に高めることができる。また、液体流路の内周面近傍は壁面摩擦による流量損失が通常は大きくなるが、本発明にて採用する液体処理ノズルの構成によれば、キャビテーション処理部の内周面近傍の流速が旋回流の形成により高まる結果、液体処理ノズルを流路に挿入したときの圧損も低く留めることができる。
【0012】
すなわち、本発明にて採用する上記構成の液体処理ノズルは、液体流路の内周面に形成した螺旋溝が遠心力旋回効果に基づき顕著なキャビテーション効果を発揮するので、単純な構成によりながら、ねじ部材等の別部品でキャビテーション処理部を構成した液体処理ノズルと同等又はそれ以上の性能にて、微細気泡を効率的に発生させることができるようになる。また、螺旋溝によるもたらされるキャビテーション効果が顕著なため、流路入口側で大きな流路断面縮小比を確保する必要がなく、ノズル本体の外形寸法を縮小できる。その結果、フレキシブル管本体の端部に結合される接続ケーシング部の寸法を小さく保ちつつ、十分なキャビテーション性能を有した液体処理ノズルを容易に組み込むことができる。よって、キャビテーション処理用のノズルをフレキシブル管からなる流路に組み込んで使用したい場合に、継手部分の部品点数の削減と小寸法化を図ることができ、かつ、微細気泡の発生量も十分に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のフレキシブル管ユニットの一例を示す要部正面図
図2図1のフレキシブル管ユニットの使用形態の一例を示す正面図。
図3図1の正面断面図
図4】液体処理ノズルの平面図及び正面断面図
図5図4の要部を拡大して示す正面断面図
図6】螺旋溝の断面形状を拡大して示す図
図7図4の液体処理ノズルのキャビテーション処理部に旋回流が形成される様子を説明する図
図8】旋回流の形成原理を説明する第一の図
図9】旋回流の形成原理を説明する第二の図
図10】キャビテーション処理部に生ずる旋回流により微細気泡が発生する様子を説明する図
図11】キャビテーション処理部の上流側半区間に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
図12】キャビテーション処理部の下流側半区間に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
図13】出口側テーパ部に連通する気体導入通路からの気体が旋回流により微粉砕される様子を説明する図
図14】気体導入通路の先端形状の具体例を示す第一の図
図15】気体導入通路の先端形状の具体例を示す第二の図
図16A】ケーシング気体流路の気体入口側の構造の詳細を示す断面図
図16B】逆流防止用弾性リングの吸気時の作用説明図
図16C】逆流防止用弾性リングの液逆流阻止時の作用説明図
図17】気体中継空間を廃止したフレキシブル管ユニットの構成例を示す断面図
図18】気体導入通路の形成形態の第一変形例を示す正面断面図
図19】気体導入通路の形成形態の第二変形例を示す正面断面図
図20】気体導入通路の形成形態の第三変形例を示す正面断面図
図21】気体導入通路の形成形態の第四変形例を示す正面断面図
図22】気体導入通路の形成形態の第五変形例を示す正面断面図
図23】気体導入通路の形成形態の第六変形例を示す正面断面図
図24】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第一例を示す平面模式図
図25】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第二例を示す平面模式図
図26】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第三例を示す平面模式図
図27】複数の気体導入通路を液体流路の上流側と下流側に振り分けて形成する第四例を示す平面模式図
図28A】螺旋溝の断面外形形状の第一変形例を示す図
図28B】螺旋溝の断面外形形状の第二変形例を示す図
図28C】螺旋溝の断面外形形状の第三変形例を示す図
図29】気体導入通路を有さない液体処理ノズルを用いたフレキシブル管ユニットの一例を示す要部正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は本発明のフレキシブル管ユニットの一例を示す要部正面図である。フレキシブル管ユニット100は、金属または樹脂により軸線方向にて両端が開口する筒状部材として構成された接続ケーシング部40と、ケーシング側継手部60と、接続ケーシング部40に対し一端が結合されるフレキシブル管本体61と、を備える。図2に示すように、フレキシブル管ユニット100はケーシング側継手部60にて、接続先配管91の継手部91Bに取り付けて使用される。接続先配管91を流通する液体は、接続ケーシング部40を通過することにより、これに内蔵された液体処理ノズル(後述)によりキャビテーション処理され、微細気泡を含んだ処理済水となる。なお、フレキシブル管ユニット100及び接続先配管91の液体の流通方向は2つの方向のいずれでもよく、後述の液体処理ノズルの組込方向も液体流通方向に応じて適宜変更される。
【0015】
図3は、図1の正面断面図である。接続ケーシング部40は、液体処理ノズル1が同軸的に挿入され該液体処理ノズル1を軸線Oの方向に位置保持しつつ収容するノズル収容孔44と、ノズル収容孔44の底部を貫通するとともに液体処理ノズル1の液体流路と連通する形で形成されたケーシング側開口部45とを有する。ケーシング側継手部60は雌ねじ部42を有するナット部材であり、接続ケーシング部40との取付側端部が内側に加締められる形で、接続ケーシング部40のフランジ部40Fに対し軸線Oの周りに回転可能に取り付けられている。ケーシング側継手部60の内側には接続ケーシング部40のフランジ部40Fと当接する形で板状のシールリング43が設けられている。また、フレキシブル管本体61は、末端に一体形成された筒状の接続スリーブにて接続ケーシング部40の端部に溶接又はロウ付けにて液密に結合されている。
【0016】
次に、接続ケーシング部40のノズル収容孔44には液体処理ノズル1がはめ込まれている。ノズル収容孔44は円筒面状に形成されるとともに、ケーシング側開口部45の周縁部が半径方向内向きに張り出す支持フランジ44aを形成しており、液体処理ノズル1は下端面の外周縁部が該支持フランジ44aに当て止めされた形で保持されている。
【0017】
液体処理ノズル1は、樹脂製又は金属製のノズル本体10を備える。ノズル本体10には、一方の端面(上端面)に液体入口3を開口し他方の端面(下端面)に液体出口4を開口する貫通形態の液体流路2が形成されている。本実施形態では、ノズル本体10は円柱状であり、液体流路2は該ノズル本体10をその軸線O(中心軸線)の向きに貫通する形で形成されている。
【0018】
図4は液体処理ノズル1を取出して示す平面図及び正面断面図である。液体流路2には、内周面の軸線O方向においてその中間をなす一部区間が絞り部とされ、軸線Oを螺旋中心線とする螺旋溝50が刻設されている。本発明にて採用する液体処理ノズル1においては、この螺旋溝50の形成された絞り部がキャビテーション処理部5を形成する。キャビテーション処理部5にて螺旋溝50が2周回分以上に形成されているのがよく、本実施形態では4周回分形成されている。
【0019】
図5に示す如く、キャビテーション処理部5の内周面において、螺旋溝50の軸線Oの方向に隣接する周回部を区画する領域を溝間領域52として、該溝間領域21の最小内径を溝間領域内径D1としたとき、軸線O方向における螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも大きく設定されている。また、螺旋溝50の深さdは、刻設ピッチPよりも小さい値、本実施形態においては、溝間領域内径D1の10%以上40%以下(望ましくは15%以上25%以下)の値に設定されている。
【0020】
また、軸線Oを含む断面において、溝間領域52は、外形線が平坦(円筒面状)に形成され、螺旋溝50は溝間領域52に対し外向きに膨出する形態に形成されている。さらに、溝間領域52は軸線Oの方向における幅W1が螺旋溝50の幅W2よりも大きく設定されている(図6参照)。螺旋溝50の軸線Oの方向に隣接する周回部が平坦な溝間領域52により区画される結果、螺旋溝50全体の形状は弦巻状となる。
【0021】
軸線Oを含む断面において螺旋溝50は、軸線O方向にて溝底51の位置から隣接する溝間領域52に向け、溝深さが連続的に減ずる外形形状をなすように形成されている。例えば、図6に拡大して示すように、螺旋溝50の断面形状はV字状であり、螺旋溝50の深さdは螺旋溝50の幅W2の80%以上120%以下の値に定めることができる。
【0022】
また、キャビテーション処理部5の区間長をL、溝間領域内径をD1としたとき、L/D1は例えば1以上10以下(望ましくは1以上7以下)の値に設定されている。さらに、図8及び図9に示すように、軸線Oを含む平面上にて、軸線Oを法線とする基準面αと溝底51とのなす角度λ1は、例えば3°以上80°以下であり、望ましくは、45°以上70°以下であるのがよい。
【0023】
次に、キャビテーション処理部5の下流側には、キャビテーション処理部5の出口から液体出口4に向けて内径が漸増する出口側テーパ部22が、螺旋溝50の刻設ピッチPよりも区間長Jが大きくなるように形成されている。出口側テーパ部22に形成されている液体出口4の開口面積は、キャビテーション処理部5の溝間領域52の最小内径位置における軸断面積の1.2倍以上2倍以下(望ましくは、1.3倍以上1.7倍以下:本実施形態では1.5倍)に調整されている。出口側テーパ部22の形成区間長Jは、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば3倍以上5倍以下であり、軸線Oを含む断面において出口側テーパ部22のテーパ角度θ2は例えば4°以上8°以下である。なお、出口側テーパ部22は省略されていてもよい。
【0024】
一方、液体流路2において、キャビテーション処理部5の上流側には、液体入口3からキャビテーション処理部5の入口に向け、出口側テーパ部22よりも大きな勾配にて内径が漸減する入口側テーパ部21が形成されている。入口側テーパ部21の液体入口3は、出口側テーパ部22の液体出口4よりも径大に形成されている。入口側テーパ部21に形成されている液体入口3の開口面積は、キャビテーション処理部5の溝間領域52の頂点位置における軸断面積の2.5倍以上8倍以下(望ましくは、3倍以上7倍以下:本実施形態では5倍)に調整されている。入口側テーパ部21の形成区間長Kは、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば1.5倍以上3倍以下であり、軸線Oを含む断面において入口側テーパ部21のテーパ角度θ1は例えば15°以上40°以下である。
【0025】
以上のようなキャビテーション処理部5を含む液体流路2を有したノズル本体10は、切削加工、射出成型等の既知の加工方法により形成できる。また、ノズル本体10を金属で構成する場合は、ロストワックス法等の鋳造にて形成してもよい。
【0026】
次に、図4に示すように、ノズル本体10には、一端がノズル本体10の外面に開口し、他端がキャビテーション処理部5の螺旋溝50に連通する気体導入通路20が形成されている。本実施形態において気体導入通路20はノズル本体10の外周面に上記一端をなす気体入口20Eを開口し、他端をなす気体出口20Tを螺旋溝50内に開口する。そして、気体導入通路20は、気体入口20Eから気体出口20Tに至る軸線Qが液体流路2の軸線Oに対し、気体入口20Eが気体出口20Tよりも液体流路2の液体入口3側に位置するように傾斜して設けられている。軸線Qと軸線Oのなす角度λ2は、例えば30°以上70°以下であるのがよく、本実施形態では45°に設定されている。
【0027】
本実施形態において気体導入通路20は、気体出口20Tが気体入口20Eよりも径小に形成されている。具体的には、図14に示すように、気体導入通路20の気体出口20T(以下、先端という)の開口側端部が気体出口20Tに向けて、テーパ状の縮径部20Bにより連続的に縮径された構造となっている。
【0028】
図4において、気体導入通路20は気体入口20Eが位置する基端側部20Pの内径δ2は、例えば0.8mm以上1.3mm以下(図4においては1.0mm)である。また、これに続く部分は段付き面を経て内径が縮小された本体部20Aとされている。図14に示すように、本体部20Aの内径δ1は例えば0.2mm以上0.7mm以下(望ましくは0.3mm以上0.6mm以下:本実施形態では0.5mm)であり、縮径部20Bの形成区間長は本体部20Aの内径の1.5倍以上3倍以下の範囲に調整されている。
【0029】
縮径部20Bの先端面は、該先端面のエッジが螺旋溝50の内周面と干渉しないように径が定められ、該先端面から螺旋溝50内面に至る部分は気体出口20Tに向けて、軸線方向に内径が均一なピンホール部20Sが形成され、該ピンホール部20Sの先端に気体出口20Tが形成されている。ピンホール部20S(気体出口20T)の内径TDは0.05mm以上0.2mm以下(望ましくは0.08mm以上0.15mm以下:本実施形態では0.1mm)であって本体部20Aの内径δ1より小さく設定されている。なお、図15に示すように、気体導入通路20の縮径部20B’を、内径が段階的に縮小する段付き面状に形成することもできる。
【0030】
図4に戻り、気体導入通路20は、軸線Oの方向にて互いに異なる位置に複数個所に設けられている。具体的には、気体導入通路20は、キャビテーション処理部5に対し軸線O方向における上流側の半区間に連通開口するもの(区別のために符号「20」に(U)を付与している)と、軸線O方向における下流側の半区間に連通開口するもの(区別のために符号「20」に(D)を付与している)とが設けられている。いずれの気体導入通路20(U,D)も螺旋溝50の底部に気体出口20Tを連通開口している。
【0031】
図3に示すように、接続ケーシング部40には、気体導入通路20(U,D)の気体入口20Eと連通する気体出口46Tが一端側に開口し、接続ケーシング部40の外周面に開口する気体入口46Eが他端側に開口するケーシング気体流路46が、ノズル収容孔44を形成する壁部を貫通する形で形成されている。また、ノズル本体10の外周面とノズル収容孔44の内周面との間には、気体導入通路20の気体入口20E側とケーシング気体流路46の気体出口46T側がそれぞれ連通する気体中継空間7が形成されている。
【0032】
図3の構成においては、ノズル本体10の外周面の軸線Oの方向の中間位置にて周方向に形成された環状の空間形成凹部26の底面と、ノズル収容孔44の内周面とが形成する隙間が気体中継空間7を形成している。また、軸線Oの方向にてノズル本体10の両端部には周方向の溝部31,32が形成されており、各溝部31,32にはめ込まれたシールリング24,25によりノズル本体10の外周面とノズル収容孔44の内周面との隙間(ひいては気体中継空間7)は、軸線Oの方向における両側が液密に封止されている。ノズル本体10の両端部はノズル収容孔44の内周面に対し隙間嵌めとなっており、空間形成凹部26の深さ(軸線Oの方向における気体中継空間7の半径方向幅)は、該隙間嵌めのクリアランスよりも大きく設定されている。
【0033】
次に、接続ケーシング部40の外周面には周方向に沿う環状の溝部47が形成され、ケーシング気体流路46の気体入口46Eが該溝部47の底面に開口している。また、溝部47内には、気体入口46Eからケーシング気体流路46内への気体の流入は許容し、ケーシング気体流路46内の逆流液体が気体入口46Eから流出することを阻止する逆流防止用弾性リング70がはめ込まれている。
【0034】
図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70はゴム製であり、円形の断面形状を有する。溝部47の断面は方形であり、接続ケーシング部40の軸線方向(図面上下方向)にて、逆流防止用弾性リング70は溝部47の両内側面に対し外周縁両側が隙間嵌めとなるようにはめ込まれている。図16A右に示すように、逆流防止用弾性リング70の内周縁部は溝部47の底面にてその幅方向中央位置に帯状のシール面70Cを形成しつつ、気体入口46Eを横切る形でこれを半封止している。図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70の内周面と気体入口46Eとの間には気体誘導空隙47Aが形成されている。
【0035】
以下、液体処理ノズル1並びにこれを用いたフレキシブル管ユニット100の動作について説明する。図2に示すように、フレキシブル管ユニット100を接続先配管91に取り付け、例えば、気体として空気を溶存した水道水をフレキシブル管ユニット100に流通させると、フレキシブル管ユニット100内の液体処理ノズル1によりキャビテーション処理される。水道水は、例えば図3において、接続ケーシング部40内の液体処理ノズル1に対し、液体入口3から液体流路2に流れ込み、キャビテーション処理部5を通過することによりキャビテーション処理され、微細気泡を含んだ処理済水となる。また、絞り部をなすキャビテーション処理部5に生ずる負圧により、気体導入通路20(U,D)には負圧吸引力が発生し、気体入口20Eから気体(本実施形態の場合、外気をなす空気)を自吸することができる。その結果、吸引された気体はキャビテーション処理部5内で気液混合され、液体への気体の溶解や微細気泡への粉砕がなされる。
【0036】
液体流路2に供給される水道水(液体)は入口側テーパ部21で絞られて増速され、図7に示すように、その流れの一部は中心流MFとなって液体流路2の断面中心付近を流通する一方、残余の流れはキャビテーション処理部5の螺旋溝50に分配されて旋回流CFを形成する。図8に示すように、螺旋溝50の内周面に衝突した分配流は螺旋溝50にガイドされる形で旋回し、その遠心力によって増速する。図7に示すように、螺旋溝50の内部空間は、この遠心力の旋回効果に基づき発生する旋回流CFの形成により増速効果が高められる。増速された旋回流CFの領域はベルヌーイの定理により負圧領域となり、キャビテーション効果により空気溶存濃度が過飽和となって、気泡径が1μm未満の微細気泡(いわゆるウルトラファインバブル)が多量に析出生成した処理済水が得られる。
【0037】
処理済水中の微細気泡は、例えばレーザー散乱式粒度測定装置を用いて検出することができる。また、処理済水には、観測可能な気泡となる前に成長を停止した気泡析出核も多量に含まれていると考えられるが、この気泡析出核のサイズは10nm以下であると考えられ、一般的な測定装置による検出が難しいこともある。例えば非特許文献1には、水撃力を用いて気液混合する形で微細気泡を形成した処理水を凍結し、クライオ型超高圧電子顕微鏡を用いて観察することにより、気泡析出核に該当すると思われる寸法の微細気泡が確認されている事例がある。
【0038】
本発明にて採用する液体処理ノズル1によると、特許文献1~6のベンチュリ管のように直線的に絞り機構が形成されたノズルと比較して、螺旋溝50に由来した旋回流CFが発生することで、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効率を大幅に高めることができる。また、特許文献7あるいは8のような、キャビテーションポイントを形成するためのねじ部材も不要である。さらに、ベンチュリ管の絞り部をなす液体流路の内周面近傍は壁面摩擦による流量損失が通常は大きくなる。しかし、図4の液体処理ノズル1の構成によれば、キャビテーション処理部5の内周面近傍の流速が旋回流CFの形成により高まる結果、上記のフレキシブル管ユニット100等の形で液体処理ノズル1を流路に挿入したときの圧損も低く留めることができる。
【0039】
液体処理ノズル1は、液体流路2の内周面に形成した螺旋溝50が上記のごとく遠心力旋回効果に基づき顕著なキャビテーション効果を発揮するので、単純な構成によりながら、ねじ部材等の別部品でキャビテーション処理部を構成した液体処理ノズルと同等又はそれ以上の性能にて、微細気泡を効率的に発生させることができるようになる。また、螺旋溝50によりもたらされるキャビテーション効果が顕著なため、流路入口3側で大きな流路断面縮小比を確保する必要がなく、ノズル本体10の外形寸法を縮小できる。その結果、フレキシブル管本体61の端部に結合される接続ケーシング部40の寸法を小さく保ちつつ、十分なキャビテーション性能を有した液体処理ノズル1を容易に組み込むことができる。よって、図2のごとく、キャビテーション処理用のノズルをフレキシブル管からなる流路に組み込んで使用したい場合に、継手部分の部品点数の削減と小寸法化を図ることができ、かつ、微細気泡の発生量も十分に確保することが可能となる。
【0040】
本発明にて採用する液体処理ノズル1において螺旋溝50に発生する旋回流CFの流速を高め、キャビテーション効果ひいては微細気泡発生効果を顕著なものとするには、キャビテーション処理部5には、螺旋溝50以外の圧損要素が含まれていないことが望ましい。例えば、特許文献7、8に開示された液体処理ノズルのような、流路内面から突出するねじ部材については、本発明にて採用する液体処理ノズル1においては排除されていることが望ましい。ねじ部材が不要となることは、単なる部品点数の削減にとどまらず、流路内面に突出するねじ部材による圧損が生じないことも意味し、結果としてキャビテーション処理部5内を流れる液体の流量及び流速が高められ、例えば比較的低い水道圧でも十分な流量を確保しつつ、微細気泡を多量に含んだ処理済水が得られる利点を生ずる。
【0041】
本発明者が有限要素法を用いた流体シミュレーションシステムにより解析したところ、図7に示すように、螺旋溝50により誘導される旋回流CFの流速は、螺旋溝50の開始端から下流側に向け、螺旋周回数を重ねるほど、すなわち下流側に向かうほど大きくなることがわかった(図中、旋回流CFを示す曲線は線幅が大きいほど大流速であることを示す)。すなわち、螺旋周回数が比較的小さい上流側は、入口側テーパ部21により絞られた直後であり、螺旋溝50に沿う流れ分配量も小さく中心流MFが主体的となるが、螺旋周回数が増す下流側では螺旋溝50に沿う流れ分配量が積分的に累積される結果、旋回流CFが発達して周方向の流速が顕著に増加する。螺旋溝50の形成長が1周回分未満では旋回流CFの発達が不十分となり、キャビテーション効果ひいては微細気泡の生成効果が不十分となる。前述のごとく、螺旋溝50は2周回分以上に形成されているのがよい。
【0042】
図8及び図9に示すように、キャビテーション処理部5の内面に沿って軸線方向に流れる流れFは、螺旋溝50の溝間領域52を乗り越えようとする直進成分LFと、螺旋溝50に沿う旋回流CFの成分とに分解する。旋回流CFの成分は溝間領域52を乗り越えるたびに、つまり螺旋溝50の通過周回数を重ねるごとに増加すると考えられる。このとき、軸線Oを含む平面への軸線Oと溝底51とのなす角度λ1が大きいほど、つまり、螺旋溝50の刻設ピッチPが大きいほど1周回あたりに生ずる旋回流CFの分配比率が大きくなると考えられる。
【0043】
特に、図8のように、軸線O方向における螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも大きく設定されていることで、螺旋溝50の形成周回数が比較的小さくとも旋回流CFを著しく形成でき、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効果を顕著なものとすることができる。一方、図9のように、螺旋溝50の刻設ピッチPが溝間領域内径D1よりも小さい場合は、1周回あたりに生ずる旋回流CFの分配比率は小さくなる。しかし、この場合も螺旋溝50の形成周回数をより大きく確保することで、キャビテーション効果を十分に達成できる場合がある。
【0044】
図5において、螺旋溝50の深さdが大きすぎると、溝間領域52を流れが乗り越える際の流体抵抗が過剰となり、キャビテーション処理部5を流れが通過する際の圧損が増加して流速低下を招き、十分なキャビテーション効果が得られなくなる場合がある。螺旋溝50の深さdを螺旋溝の刻設ピッチPよりも小さく設定することは、この観点において有効である。
【0045】
一方、螺旋溝50の深さdが浅すぎる場合は、溝間領域52を流れが乗り越える際の流体抵抗が減少し、螺旋溝50に沿った旋回流CFの誘導効果が不十分となり、キャビテーション効果が不足することにつながる場合がある。螺旋溝50の深さを溝間領域内径D1の10%以上に設定することは、この観点において有効である。
【0046】
また、図7に示す如く、軸線Oを含む断面において、溝間領域52の外形線を平坦(円筒面状:出口側テーパ部22よりも勾配の小さいテーパ面としてもよい)となし、螺旋溝50を溝間領域52に対し外向きに膨出する形態とすること(すなわち、螺旋溝50の全体を弦巻状に形成すること)により、中心流MFにより旋回流CFが螺旋溝50内に封じ込められる効果が増大する。その結果、旋回流CFがより高速化してキャビテーション効果を高めることに貢献できる。また、溝間領域52を円筒面とすることで、溝間領域52の表面を流れる中心流MFに乱れが少なくなり、旋回流CFを螺旋溝50内により効果的に封じ込めることができる。
【0047】
旋回流CFを螺旋溝50内に封じ込める効果を高める観点においては、図6に示すように、軸線Oの方向において溝間領域52の幅W1を螺旋溝50の幅W2よりも大きく設定することが望ましい。同様に、螺旋溝50の深さdについては、溝間領域内径D1の10%以上40%以下(望ましくは15%以上25%以下)の値に設定すること、さらには、螺旋溝50の幅W2の80%以上120%以下の値に定めることが有効である。
【0048】
螺旋溝50に沿った旋回流CFの発生をより顕著なものとするためには、軸線O方向にて溝底51位置から隣接する溝間領域52に向け、溝深さが連続的に減ずる外形形状をなすように形成すること、例えば、図6に拡大して示すように、螺旋溝50の断面形状をV字状となすことが有効である。特に、溝底に向けての溝幅の縮小率の高いV字形状を採用することは、溝底付近にて局所的に流速を増加させ、キャビテーションによる減圧レベルをさらに高める上で有利となる。なお、図6において螺旋溝50の断面形状は内側面が外向きに多少膨らむV字形状で形成しているが、図28Bに示すように、U字状の断面とすること、あるいは、図28Cの左に示すように、膨出のない先鋭なV字形態としてもよい。また、図28Cの右に示すように、V字状の螺旋溝50を、溝底を平坦化して形成することも可能である。
【0049】
また、キャビテーション処理部5の通過区間長をL、溝間領域内径をD1としたとき、L/D1の値が過度に大きすぎると、キャビテーション処理部5を液体流が通過する際の流通抵抗が大きくなりすぎ、顕著なキャビテーション効果が得られなくなる場合がある。この観点において、L/D1の値は10以下に設定することが有効であるといえる。
【0050】
図10は、気体導入通路20を省略し、螺旋溝50による微細気泡の生成・粉砕効果を取り出した形で示す説明図である。キャビテーション処理部5に供給される流れFは、螺旋溝50の下流側に向かうにつれ旋回流CFの発達が顕著となり、例えばその流速が5m/秒以上に到達するとキャビテーション効果による気泡核BNが生成し始める。気泡核BNの生成量は、旋回流CFの流速が上昇する下流側ほど大きくなると考えられる。また、気泡核BNが特に発生しやすい領域は、流速がより高まりやすい螺旋溝50の溝底51付近である。
【0051】
生成した気泡核BNは、減圧状態が継続すれば液体中の過飽和気体成分を吸収して成長する。しかし、旋回流CFの形成が著しい螺旋溝50の内部では、キャビテーション効果により、新たな気泡核BNが続々と生成し、強い負圧環境のためそれらが急激に気泡へと成長するため、キャビテーション処理部5内の液体は突沸状態に近い乱流撹拌状態となり、成長した気泡もその乱流に巻き込まれ、少なくともその一部はウルトラファインバブル状態にまで微粉砕される。特許文献7、8のようなねじ部材を用いた液体処理ノズルでは、キャビテーションポイントはねじ部材のねじ谷付近に限定的に形成され、気泡析出に伴う突沸領域も、ねじ部材の直下領域に限定的に形成されるにすぎないから、成長した気泡の再粉砕効果にはやや劣るといえる。これに対し、本発明にて採用する液体処理ノズル1の構成では、螺旋溝50の形成区間の全体にてキャビテーション効果ひいては気泡析出による乱流撹拌効果が確保される結果、成長した気泡の再粉砕効果にも優れ、例えばウルトラファインバブルの生成個数密度を大幅に高めることができる。
【0052】
また、キャビテーション処理部5の下流側に螺旋溝50の刻設ピッチPよりも区間長が大きくなるように出口側テーパ部22が形成されている場合、キャビテーション処理部5にて発生した旋回流CFは、螺旋溝50が非形成の出口側テーパ部22内にも継続旋回流SFとして持ちきたすことができる。これにより、キャビテーション処理部5内で発生し成長した気泡あるいは気体導入通路20から導入された気泡は、出口側テーパ部22内でも継続旋回流SFにより粉砕することができ、ファインバブルあるいはウルトラファインバブルの生成個数密度を高めることに貢献する。
【0053】
継続旋回流SFは、出口側テーパ部22内での流れ拡大に伴う圧損が少ないほど形成されやすい。この観点において、液体出口4の開口面積が、キャビテーション処理部5の溝間領域52の最小内径位置における軸断面積の1.2倍以上2倍以下(望ましくは、1.3倍以上1.7倍以下:本実施形態では1.5倍)に調整され、出口側テーパ部22の形成区間長は、螺旋溝50の溝間領域内径D1の例えば3倍以上5倍以下であるのが有効である。
【0054】
次に、気体導入通路20及びその周辺構造の作用効果について説明する。
図5に示す液体処理ノズル1の構成において、気体導入通路20(U,D)はキャビテーション処理部5を形成する螺旋溝50に気体出口20Tを開口している。すでに説明した通り、螺旋溝50内には強い旋回流CFが発生しており、その旋回流CFに作用する負圧は、螺旋溝50を形成しない通常のベンチュリ間の絞り部よりも高くなっていると考えられる。よって、気体導入通路20(U,D)には、通常のベンチュリ管よりも高い吸引力が発生し、気体入口20Eから気体(本実施形態の場合、外気をなす空気)を自吸することが可能となり、螺旋溝50内に発生する旋回流CFに該気体を巻き込んで粉砕することにより、微細気泡の生成量をさらに高めることができる。
【0055】
図4の液体処理ノズル1の構成においては、気体導入通路20(U)はキャビテーション処理部5(螺旋溝50)に対し軸線O方向における上流側の半区間に連通開口している。図11に示すように、この位置で吸引された粗大気泡LBは、下流側の螺旋溝50にて強い旋回流CFと気泡析出に伴う撹拌乱流により、長い区間に渡って激しく粉砕される結果、ウルトラファインバブルの生成個数密度の増大に大きく貢献する。
【0056】
なお、螺旋溝50の上流側半区間では旋回流CFは発達途上の段階にあり、流速も比較的小さいから、旋回流CFに随伴して発生する負圧レベルも多少低くなる。その結果、吸引される気体の量はやや少なくなると考えられる。ここで、螺旋溝50の上流側にて流れに対し気体が過剰に混入すると、それよりも下流側にて、螺旋溝50の溝底51の領域は粗大気泡と直接接触する頻度が高くなる。粗大気泡と接している溝底51の領域は、旋回流CFの流速が大きくともキャビテーションによる新たな気泡核生成には貢献しないから、微細気泡の生成効率と乱流撹拌による気泡粉砕効率が損なわれ、ウルトラファインバブルの生成個数密度は却って低下することにつながる。よって、上流側半区間の気体導入通路20(U)から吸引される気体量が過度に増大しないことは、上記のような問題を生じにくくする方向に寄与し、ウルトラファインバブルの生成個数密度の増大を図る上で有利に作用するといえる。
【0057】
一方、図4の液体処理ノズル1の構成において、気体導入通路20(D)はキャビテーション処理部5(螺旋溝50)に対し軸線O方向における下流側の半区間に連通開口している。図12に示すように、螺旋溝50の下流側半区間では旋回流CFは十分発達しており、流速も大きいので、旋回流CFに随伴して発生する負圧レベルも高い。よって、気体導入通路20(D)においては、増速された旋回流CFにより吸引される粗大気泡LBの量は多くなるが、該旋回流CFと気泡析出に伴う撹拌乱流による粉砕を受ける区間長は短くなる。よって、該粗大気泡LBは、1μm以上のファインバブルFBの生成個数密度の増大を図る上で有利に作用する。
【0058】
ウルトラファインバブルやそれよりもさらに小さい気泡析出核は、水の巨視的な浸透性向上作用があるといわれている。これに対し、1μm以上のファインバブル領域の微細気泡は、気泡表面の帯電による吸着作用や、イオン吸着した気泡の収縮・圧壊に伴う衝撃力による汚れ除去等の効果が顕著であるといわれている。気体導入通路20(U)及び気体導入通路20(D)のいずれを用いても、本発明にて採用する液体処理ノズル1により空気を吸引しつつ水道水を処理した場合、特に1μm以上20μm以下(特に1μm以上5μm以下)の気泡径領域のファインバブルが多量に生じやすいことが判明している。この領域のファインバブルFBの生成量が増大した処理済水は、汚れ除去等の効果が特に顕著となることに加え、該ファインバブルFBによる光散乱により顕著に白濁した状態が長時間続くため、微細気泡が大量に含まれていることが可視的に把握しやすくなる利点も生ずる。
【0059】
なお、図13に示すように、気体導入通路20(D)は出口側テーパ部22に連通するように設けることもできる。出口側テーパ部22を設けた構成であれば、通常のベンチュリ管では気体吸引が困難な出口側テーパ部22であっても、該出口側テーパ部22に生ずる継続旋回流SFにより、気体を自吸することが可能である。
【0060】
気体導入通路20(U)及び気体導入通路20(D)のいずれも、気体導入通路20の気体出口20Tは、旋回流CFの流速が高められる螺旋溝50の底部に連通開口することで、気体の自吸効率が高められている。また、縮径部20Bの形成により気体出口20Tが気体入口20Eよりも径小に形成されていることで、気体出口20Tから流れF中に供給される粗大気泡の気泡径が縮小し、微細気泡への粉砕効率が高められる。特に、ウルトラファインバブルや1~5μmのファインバブルの発生効率を高めるためには、図14及び図15に示すように、内径TDが0.05mm以上0.2mm以下(望ましくは0.08mm以上0.15mm以下:本実施形態では0.1mm)に設定されたピンホール部20Sにより、気体出口20Tが形成されていることが有効である。
【0061】
ここで、液体処理ノズル1の液体出口4側の流通負荷が何らかの要因により増大した場合、キャビテーション処理部5内の液体は、該流通負荷に由来した背圧を受ける。旋回流CFに由来した負圧による気体導入通路20への気体流入圧よりも、この背圧が高くなれば、キャビテーション処理部5側から気体導入通路20へ液体が逆流し、気体入口20E側へ液体が流出することがある。
【0062】
気体導入通路20は、気体入口20Eから気体出口20Tに至る軸線Qが、例えば液体流路2の軸線Oに対し直角となるように形成されていてもよいが、気体入口20Eが気体出口20Tよりも液体流路2の液体入口3側に位置するように傾斜して設けられていることで、上記のような気体導入通路20へ液体の逆流を効果的に抑制することがきる。また、図14のように、縮径部20Bを連続的に縮径されるテーパ状の構造とすることは、図15のように縮径部20B’を段付き面状に形成する構造と比較して、流路断面積縮小に伴なう自吸気体への圧損低減に有効である。例えば図14の構成のごとく、縮径部20Bを圧損の小さいテーパ状の構造とすることで、気体入口20E側への液体の逆流をさらに生じにくくすることができる。
【0063】
図3のフレキシブル管ユニット100の構成においては、接続ケーシング部40のノズル収容孔44を形成する壁部を貫通する形でケーシング気体流路46が形成され、液体の流通に伴い、液体処理ノズル1の複数の気体導入通路20(U,D)に生ずる吸引負圧は、気体中継空間7を介してケーシング気体流路46に伝達されるようになっている。これにより、接続ケーシング部40に形成するケーシング気体流路46の数を減ずることができ、接続ケーシング部40の構造の簡略化に貢献する。また、液体逆流に由来した液漏れの懸念箇所も減ずることが可能である。
【0064】
また、接続ケーシング部40の外周面に環状の溝部47が形成され、該溝部47の底面に開口するケーシング気体流路46の気体入口46Eが、溝部47内にはめ込まれた逆流防止用弾性リング70により半封止されている。ケーシング気体流路46に逆流液体が侵入しても、該逆流防止用弾性リング70により気体入口46Eからの液体の漏れ出しが効果的に抑止される。
【0065】
図16A左に示すように、逆流防止用弾性リング70は円形断面のゴム製(いわゆるオーリング)であり、方形断面の溝部47に対し隙間嵌めとなるようにはめ込まれるとともに、逆流防止用弾性リング70の内周面と気体入口46Eとの間には気体誘導空隙47Aが形成されている。この構成によると、気体入口46Eからケーシング気体流路46へ気体が流入する際の流通抵抗部は、逆流防止用弾性リング70と溝部47の両内側面との間の線状の隙間嵌め空間のみであるから、気体入口46Eが逆流防止用弾性リング70により半封止されているにも関わらず、ケーシング気体流路46へ気体をスムーズに流入させることができる。
【0066】
図16Bは、吸気時における逆流防止用弾性リング70の作用を説明するものである。液体処理ノズルへの液体流通に伴い、ケーシング気体流路46に負圧NPが誘導されると、その吸気流により逆流防止用弾性リング70は気体入口46Eにてケーシング気体流路46の内部へと引っ張られる。これにより、逆流防止用弾性リング70は、気体入口46Eに臨む部分が、溝部47の幅方向に断面径を減少させる形でつぶれ変形するとともに、溝部47の内側面と逆流防止用弾性リング70との間に隙間GPが生じ、その隙間から気体誘導空隙47Aを経てケーシング気体流路46に気体流AFが吸い込み形態で発生する。
【0067】
一方、図16Cは、液体処理ノズルからケーシング気体流路46側へ液体が逆流してきた場合の逆流防止用弾性リング70の作用を説明するものである。図16C左に示すように、逆流しようとする液体流WFは、気体流に比べて粘性が高く大きな表面張力を有するため、溝部47と逆流防止用弾性リング70との微小な隙間(あるいは緩い密着面)を透過する際の抵抗が気体流に比べてはるかに大きい。よって、図16C右に示すように、液体流WFは、隙間GPからの流出が阻害された状態でケーシング気体流路46側からの逆流による正圧PPにより加圧される。この加圧により逆流防止用弾性リング70は、気体入口46Eに臨む部分が、溝部47の幅方向に断面径を増加させようとする向きにつぶれ変形しようとするが、該変形は溝部47の内側面に規制されていることから逆流防止用弾性リング70と溝部47の内側面との接触面積が増大して、液体流WFがより強固に阻止される状態となる。
【0068】
以下、本発明の種々の変形実施形態について説明する。
図17に示すフレキシブル管ユニット100’においては、液体処理ノズル1に空間形成凹部が形成されず、液体処理ノズル1の外周面全体がノズル収容孔44の内周面に対し隙間嵌めとなっている(すなわち、気体中継空間が省略された構成である)。そして、接続ケーシング部40には、液体処理ノズル1に形成された複数の気体導入通路20にそれぞれ対応する形で、ケーシング気体流路46が個別に形成されている。なお、複数の気体導入通路20は、キャビテーション処理部5の前半区間と後半区間とに振り分けて形成され、前半区間の気体導入通路20(U)を受け持つ溝部47(U)及び逆流防止用弾性リング70(U)の組と、鋼板区間の気体導入通路20(D)を受け持つ溝部47(D)及び逆流防止用弾性リング70(D)の組とが個別に設けられている。
【0069】
また、液体処理ノズル1に形成する気体導入通路20は、図18に示すようにキャビテーション処理部5の前半区間にのみ設けたり、図19に示すようにキャビテーション処理部5の後半区間にのみ設けたりするようにしてもよい。また、図20図23に示すように、キャビテーション処理部5に対し軸線方向にて螺旋溝50の互いに異なる位置に、複数の気体導入通路20を振り分けて形成するようにしてもよい。図20の構成は、2つの気体導入通路20を螺旋溝50に対し、液体入口3側から1周回目の溝底と、2周回目の溝底にそれぞれ連通するように形成した例である。図21の構成は、図20の構成に対し、液体入口3側から3周回目の溝底に連通する3つ目の気体導入通路20を追加した例を示す。図22の構成は、図21の構成に対し、液体入口3側から4周回目の溝底に連通する4つ目の気体導入通路20を追加した例を示す。また、図23の構成は、図18の構成に対し、出口側テーパ部22に連通する気体導入通路20を2つ追加した例を示す。
【0070】
さらに、図24図27に示すように、キャビテーション処理部5の前半区間(上流側)と後半区間(又は出口側テーパ部22:下流側)には、複数の気体導入通路20を種々の個数にて振り分けて形成することができる。図24は、上流側に1つの気体導入通路20を、下流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。図25は、上流側に1つの気体導入通路20を、下流側に互いに120°ずれた角度位相にて3つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。図26は、上流側に互いに120°ずれた角度位相にて3つの気体導入通路20を、下流側に互いに60°ずれた角度位相にて6つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。図27は、上流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、下流側に180°ずれた角度位相にて2つの気体導入通路20を、それぞれ形成した例を示す。
【0071】
図28Aは、変形態様による螺旋溝50”を備えたキャビテーションノズル1”を示すものである。該態様にて螺旋溝50”は、軸線Oの向きに隣接する周回部分の幅が拡大されるとともに、該幅方向の対応する縁が連なって細い稜線状の溝間領域52を形成している。図中の太い実線(紙面垂直方向にて手前側に位置する部分)及び太い破線(紙面垂直方向にて向こう側に位置する部分)は溝底(谷底)51を、図中の太い一点鎖線(紙面垂直方向にて手前側に位置する部分)及び細い一点鎖線(紙面垂直方向にて向こう側に位置する部分)は、陵線状の溝間領域52を示している。これに伴い、螺旋溝50の外形形状は三角波状を呈するものとなっている(この場合、溝間領域内径D1は溝間領域52の稜線位置での内径となる)。なお、螺旋溝50の外形形状は正弦波状あるいは互いに反転関係にある半楕円曲線を交互に接続した波型等であってもよい。このような形状の螺旋溝50”は、旋回流の封じ込め効果は多少損なわれるものの、溝間領域52を含めたキャビテーション処理部5の内周面全体の抵抗が低減される。これにより、キャビテーション効果ひいては微細気泡の発生効果を比較的良好に確保することができる。
【0072】
また、図29に示すように、気体導入通路を形成しない液体処理ノズル1を接続ケーシング部40に組み込むようにしてもよい。
【0073】
以上、本発明の種々の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した必須の構成要件以外の技術的要素については、適宜取捨選択した形で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 液体処理ノズル
2 液体流路
3 液体入口
4 液体出口
5 キャビテーション処理部
7 気体中継空間
10 ノズル本体
20 気体導入通路
20A 本体部
20B 縮径部
20E 気体入口
20P 基端側部
20S ピンホール部
20T 気体出口
21 入口側テーパ部
22 出口側テーパ部
26 空間形成凹部
31,32 溝部
31,32 シールリング
33 シールリング
40 接続ケーシング部
40a 段付き面
41 継手座ぐり
42 雌ねじ部
43 シールリング
44 ノズル収容孔
44a 支持フランジ
45 ケーシング側開口部
46 ケーシング気体流路
46E 気体入口
46T 気体出口
47 溝部
47A 気体誘導空隙
50 螺旋溝
51 溝底
52 溝間領域
60 ケーシング側継手部
61 フレキシブル管本体
70 逆流防止用弾性リング
70C シール面
91 接続先配管
100 フレキシブル管ユニット
O 軸線
Q 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
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図16A
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図29