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特開2022-111983グラスラン,グラスランの取付構造及びグラスランの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111983
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】グラスラン,グラスランの取付構造及びグラスランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/88 20160101AFI20220725BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20220725BHJP
【FI】
B60J10/88
B60J10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185791
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2021007533
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】春田 輝
(72)【発明者】
【氏名】宮田 知範
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA26
3D201BA01
3D201CA19
3D201CA23
3D201DA09
3D201DA13
3D201FA05
(57)【要約】
【課題】車外側に設けられた装飾フィルムの連続性を高めて外観上見栄え良くする。
【解決手段】自動車のドア1,2の枠体3,4に取付けられる取付部51と、昇降するドアガラスGを溝部に案内する本体部52を有し、取付部51の車外側はドア1,2の上辺部端部からドア1,2から離れる側に延びる延設部53とされるとともに装飾フィルムFが設けられたグラスラン50であって、装飾フィルムFは、延設部53を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材90を介して延設部53に設けられ、下地材90とともに車外側から車内側に折り曲げられ、延設部53の取付部51又は本体部52の端面53cを覆うように設けられる。また、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2は、延設部53,73の端面53a,73aから一定距離FL1,FL2分、装飾フィルム側を切欠きされ上下方向の残部分の幅FW1,FW2を小さく設定している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアの枠体に取付けられる取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する本体部を有し、前記取付部の車外側は前記ドアの上辺部端部から前記ドアから離れる側に延びる延設部とされるとともに装飾フィルムが設けられたグラスランであって、
前記装飾フィルムは、前記延設部の端部では、前記延設部の車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部の端面を覆うように設けられたことを特徴とするグラスラン。
【請求項2】
前記装飾フィルムの上端部及び下端部はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、
前記装飾フィルムの上端部及び下端部は、前記延設部の端面から一定距離(FL1,FL2)分、装飾フィルム側を切欠きされ前記装飾フィルムの上下方向の残部分の幅を小さくしてなることを特徴とする請求項1に記載のグラスラン。
【請求項3】
前記装飾フィルムの前記上端部及び前記下端部の前記装飾フィルム側切欠き部の、前記延設部の前記端面の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取りされてなることを特徴とする請求項2に記載のグラスラン。
【請求項4】
前記装飾フィルムは、前記延設部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材を介して前記延設部に設けられ、前記延設部の端部では、前記下地材とともに車外側から車内側に折り曲げられ、前記延設部の端面を覆うように設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のグラスラン。
【請求項5】
前記折り曲げられた下地材と、前記延設部の端面との間にインサートパネルを埋設したことを特徴とする請求項4に記載のグラスラン。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載のグラスランを、フロントドアとリヤドアにそれぞれ取付け、フロントドア側では前記グラスランの延設部を、フロントドアの上辺部後端から後方側に延ばすとともに、リヤドア側では前記グラスランの延設部を、リヤドアの上辺部前端から前方側に延ばし、前記延設部同士をフロントドアとリヤドアの見切り部で相対向させたことを特徴とするグラスランの取付構造。
【請求項7】
自動車のドアの枠体に取付けられる取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する本体部を有し、前記取付部の車外側は前記ドアの上辺部端部から前記ドアから離れる側に延びる延設部とされるとともに装飾フィルムが設けられ、
前記装飾フィルムは、前記延設部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材を介して前記延設部に設けられ、前記延設部の端部では、前記下地材とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部の端面を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記延設部については、前記装飾フィルムと前記下地材をともに押出成形した後、該延設部の端面から一定距離(L)分、前記装飾フィルムに並行に切込みを入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込みを入れることにより、前記延設部の一部分を切欠き、切欠き部を除去した後に、残った残部分の任意の位置で車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分の端面を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とするグラスランの製造方法。
【請求項8】
自動車のドアの枠体に取付けられる取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する本体部を有し、前記取付部の車外側は前記ドアの上辺部端部から前記ドアから離れる側に延びる延設部とされるとともに装飾フィルムが設けられ、
前記装飾フィルムは、前記延設部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材を介して前記延設部に設けられ、前記延設部の端部では、前記下地材とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部の端面を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記延設部については、前記装飾フィルムと前記下地材をともに押出成形した後、該延設部の端面から一定距離(L)分、前記装飾フィルムに並行に切込みを入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込みを入れることにより、前記延設部の一部分を切欠き、切欠き部を除去した後に、残った残部分を、前記一定距離(L)から非折曲距離(T)分減算した折曲距離(S=L-T)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分の端面を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とするグラスランの製造方法。
【請求項9】
自動車のドアの枠体に取付けられる取付部と、昇降するドアガラスを溝部に案内する本体部を有し、前記取付部の車外側は前記ドアの上辺部端部から前記ドアから離れる側に延びる延設部とされるとともに装飾フィルムが設けられ、
前記装飾フィルムは、前記延設部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材を介して前記延設部に設けられ、前記延設部の端部では、前記下地材とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部の端面を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記装飾フィルムの上端部及び下端部はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、
前記延設部については、前記装飾フィルムと前記下地材をともに押出成形した後、該延設部の端面から一定距離(L)分、前記装飾フィルムに並行に切込みを入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込みを入れることにより、前記延設部の一部分を切欠き、切欠き部を除去した後に、
前記装飾フィルムの前記上端部及び前記下端部についても、前記延設部の端面から一定距離(FL1,FL2)分、装飾フィルム側を切欠きして上下方向の残部分の幅を小さくし、
前記装飾フィルム側切欠き部を除去した後に残った残部分を、折曲距離(S)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた前記残部分の端面を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とするグラスランの製造方法。
【請求項10】
前記装飾フィルムの前記上端部及び前記下端部の前記装飾フィルム側切欠き部の、前記延設部の前記端面の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取りすることを特徴とする請求項9に記載のグラスランの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアに設けられ、車外側に装飾フィルムが設けられた延設部を有するグラスラン,そのグラスランの取付構造及びそのグラスランの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図11及び図12に示すように、自動車ドア1,2(フロントドア1,リヤドア2)の枠体3,4に、装飾フィルムF付きのグラスラン10,20が取付けられた構造が知られている(例えば特許文献1参照)。なお、図12では型成形部を斜線で示している。
【0003】
フロントドア1に取付けられたグラスラン10では、装飾フィルムFは、グラスラン10の取付部11の車外側に設けられた装飾リップ12の車外側面に設けられ、特にフロントドア1の上辺コーナー部では、装飾リップ12は上辺部後端部からさらに後方側に延びるように形成されその延設部13の車外側面にも装飾フィルムFは連続的に設けられている。
同様に、リヤドア2に取付けられたグラスラン20では、装飾フィルムFは、グラスラン20の取付部の車外側に設けられた装飾リップ22の車外側面に設けられ、特にリヤドア2の上辺コーナー部では、装飾リップ22は上辺部前端部からさらに前方側に延びるように形成されその延設部23の車外側面にも装飾フィルムFは連続的に設けられている。
そして、フロントドア1とリヤドア2間の見切り部ではグラスラン10,20の延設部13,23同士が相対向するようにグラスラン10,20は取付けられている。
【0004】
これによれば、フロントドア1とリヤドア2間でサッシュモールに連続感が得られて外観を向上することができるとされている。
【0005】
しかし、グラスラン10,20の延設部13,23の断面形状は、図13に示すようになっていて、延設部13,23は押出成形材料とともに装飾フィルムFが押出成形された後、延設部13,23の端面13a,23aが型成形材料によって補形されている。
ここで、装飾フィルムFの端部Faも、延設部13,23の端面13a,23aと同じ位置に設定されている。なお、図13では作図便宜上、装飾フィルムFを黒塗りして図示しているが、実際の製品では、一般的には、装飾フィルムFは黒色以外の色で設定されている。
そのため、延設端面グラスラン10,20の向かい合う端部は黒色の補形部14,24が露出した状態であるため、フロントドア1及びリヤドア2を閉めた状態で外側からドア1,2を見るとフロントドア1とリヤドア2間には補形部14,24による黒い2本の筋が生じて見栄えが悪いといった問題がある。
【0006】
一方、補形部14,24を設けるのではなく、グラスランの延設部の端面に、キャップ(図示しない)を嵌め込んだものも知られている(例えば特許文献2参照)が、この場合も、キャップは合わせ面との間に筋ができて装飾フィルムFの連続性が阻害され、見栄えが悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-300953号公報
【特許文献2】特開2019-112010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、車外側に設けられた装飾フィルムの連続性を高めて外観上見栄え良くするグラスラン,グラスランの取付構造及びグラスランの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明のグラスランは、自動車のドア(1,2)の枠体(3,4)に取付けられる取付部(51,71)と、昇降するドアガラス(G)を溝部に案内する本体部(52,72)を有し、前記取付部(51,71)の車外側は前記ドア(1,2)の上辺部端部から前記ドア(1,2)から離れる側に延びる延設部(53,73)とされるとともに装飾フィルム(F)が設けられたグラスラン(50,70)であって、
前記装飾フィルム(F)は、前記延設部(53,73)の端部では、前記延設部(53,73)の車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部(53,73)の端面(53c,73c)を覆うように設けられたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記装飾フィルム(F)の上端部(F1)及び下端部(F2)はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、
前記装飾フィルム(F)の上端部(F1)及び下端部(F2)は、前記延設部(53,73)の端面(53a,73a)から一定距離(FL1,FL2)分、装飾フィルム側を切欠き(FK1,FK2)され前記装飾フィルム(F)の上下方向の残部分の幅(FW1,FW2)を小さくしてなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記装飾フィルム(F)の前記上端部(F1)及び前記下端部(F2)の前記装飾フィルム(F)側切欠き部(FK1,FK2)の、前記延設部(53,73)の前記端面(53a,73a)の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取り(FK1a,FK2a)されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記装飾フィルム(F)は、前記延設部(53,73)を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材(90)を介して前記延設部(53,73)に設けられ、前記延設部(53,73)の端部では、前記下地材(90)とともに車外側から車内側に折り曲げられ、前記延設部(53,73)の端面(53c,73c)を覆うように設けられたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、前記折り曲げられた下地材(90)と、前記延設部(53,73)の端面(53c,73c)との間にインサートパネル(91)を埋設したことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のグラスランの取付構造は、前記グラスラン(50,70)を、フロントドア(1)とリヤドア(2)にそれぞれ取付け、フロントドア(1)側では前記グラスラン(50)の延設部(53)を、フロントドア(1)の上辺部後端から後方側に延ばすとともに、リヤドア(2)側では前記グラスラン(70)の延設部(73)を、リヤドア(2)の上辺部前端から前方側に延ばし、前記延設部(53,73)同士をフロントドア(1)とリヤドア(2)の見切り部で相対向させたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明のグラスランの製造方法は、自動車のドア(1,2)の枠体(3,4)に取付けられる取付部(51,71)と、昇降するドアガラス(G)を溝部に案内する本体部(52,72)を有し、前記取付部(51,71)の車外側は前記ドア(1,2)の上辺部端部から前記ドア(1,2)から離れる側に延びる延設部(53,73)とされるとともに装飾フィルム(F)が設けられ、
前記装飾フィルム(F)は、前記延設部(53,73)を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材(90)を介して前記延設部(53,73)に設けられ、前記延設部(53,73)の端部では、前記下地材(90)とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部(53,73)の端面(53c,73c)を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記延設部(53,73)については、前記装飾フィルム(F)と前記下地材(90)をともに押出成形した後、該延設部(53,73)の端面(53a,73a)から一定距離(L)分、前記装飾フィルム(F)に並行に切込み(M1)を入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込み(M2)を入れることにより、前記延設部(53,73)の一部分を切欠き、切欠き部(K)を除去した後に、残った残部分(Z)の任意の位置で車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分(Z)の端面(Za)を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、自動車のドア(1,2)の枠体(3,4)に取付けられる取付部(51,71)と、昇降するドアガラス(G)を溝部に案内する本体部(52,72)を有し、前記取付部(51,71)の車外側は前記ドア(1,2)の上辺部端部から前記ドア(1,2)から離れる側に延びる延設部(53,73)とされるとともに装飾フィルム(F)が設けられ、
前記装飾フィルム(F)は、前記延設部(53,73)を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材(90)を介して前記延設部(53,73)に設けられ、前記延設部(53,73)の端部では、前記下地材(90)とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部(53,73)の端面(53c,73c)を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記延設部(53,73)については、前記装飾フィルム(F)と前記下地材(90)をともに押出成形した後、該延設部(53,73)の端面(53a,73a)から一定距離(L)分、前記装飾フィルム(F)に並行に切込み(M1)を入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込み(M2)を入れることにより、前記延設部(53,73)の一部分を切欠き、切欠き部(K)を除去した後に、残った残部分(Z)を、前記一定距離(L)から非折曲距離(T)分減算した折曲距離(S=L-T)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分(Z)の端面(Za)を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、自動車のドア(1,2)の枠体(3,4)に取付けられる取付部(51,71)と、昇降するドアガラス(G)を溝部に案内する本体部(52,72)を有し、前記取付部(51,71)の車外側は前記ドア(1,2)の上辺部端部から前記ドア(1,2)から離れる側に延びる延設部(53,73)とされるとともに装飾フィルム(F)が設けられ、
前記装飾フィルム(F)は、前記延設部(53,73)を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材(90)を介して前記延設部(53,73)に設けられ、前記延設部(53,73)の端部では、前記下地材(90)とともに車外側から車内側に折り曲げられ、該延設部(53,73)の端面(53c,73c)を覆うように設けられてなるグラスランの製造方法であって、
前記装飾フィルム(F)の上端部(F1)及び下端部(F2)はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、
前記延設部(53,73)については、前記装飾フィルム(F)と前記下地材(90)をともに押出成形した後、該延設部(53,73)の端面(53a,73a)から一定距離(L)分、前記装飾フィルム(F)に並行に切込み(M1)を入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込み(M2)を入れることにより、前記延設部(53,73)の一部分を切欠き、切欠き部(K)を除去した後に、
前記装飾フィルム(F)の上端部(F1)及び下端部(F2)についても、前記延設部(53,73)の端面(53a,73a)から一定距離(FL1,FL2)分、装飾フィルム側を切欠き(FK1,FK2)上下方向の残部分の幅(FW1,FW2)を小さくし、
前記装飾フィルム(F)側切欠き部(FK1,FK2)を除去した後に残った残部分(FZ1,FZ2)を、折曲距離(S)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた前記残部分(FZ1,FZ2)の端面(FZ1a,FZ2a)を覆い隠すよう金型成形したことを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記装飾フィルム(F)の前記上端部(F1)及び前記下端部(F2)の前記装飾フィルム(F)側切欠き部(FK1,FK2)の、前記延設部(53,73)の前記端面(53a,73a)の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取り(FK1a,FK2a)することを特徴とする。
【0019】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、グラスランの延設部の車外側に設けられた装飾フィルムは、延設部の端部では、延設部の車外側から車内側に折り曲げられ、延設部の端面を覆うように設けられているので、装飾フィルムが表面に露出したものとなる。特に本発明による製品は、金属製のモールを装着した製品と比較して低コストで製造することができるとともに軽量である。
【0021】
これにより、フロントドアとリヤドアにそれぞれ取付けられたグラスランの延設部をフロントドアとリヤドアの見切り部で相対向させたものでは、フロントドア側に設けられた装飾フィルムとリヤドア側に設けられた装飾フィルム間の連続性が高まり外観上見栄えが良くなる。
つまり、従来例(図13)で示したように、延設部の端部において型形成材料で形成された補形部による黒い2本の筋が生じることはない。
また、自動車において、センターピラー部のフロントドアとリヤドア相対向する部位は、人の目線の高さに近い位置となっている為、他の部位よりも外観上、目立ちやすい部位になっており、本発明の効果もより大きくなる。
【0022】
また、本発明によれば、装飾フィルムの上端部及び下端部はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、その上端部及び下端部は、延設部の端面から一定距離(L)分、装飾フィルム側を切欠きされ装飾フィルムの上下方向の残部分の幅を小さくしてなるので、延設部の端部が車外側から車内側に折り曲げられる際に、折り曲げ位置に尖り部やシワが生じることを防止することができる。
また、装飾フィルムの上端部及び下端部の切欠き部の、延設部の端面の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取りされてなるので、尖り部やシワの発生を一層防止することができる。
【0023】
また、本発明によれば、装飾フィルムは、延設部を構成する材料よりも硬い硬質樹脂の下地材を介して延設部に設けられているので装飾フィルムは安定して下地材に支持される。 よって、装飾フィルムはそれ自体薄くても、延設部の端部では下地材とともに車外側から車内側に容易に折り曲げられ、延設部の端面を覆うように設けることができる。
【0024】
また、本発明によれば、折り曲げられた下地材と、延設部の端面との間にインサートパネルを埋設するようにしたので、型成形材料で補形するときに金型内で、装飾フィルム付きの下地材の支持及び固定を容易に行うことができる。
【0025】
また、本発明によれば、グラスランを製造するとき延設部については、装飾フィルムと下地材をともに押出成形した後、延設部の端面から一定距離(L)分、装飾フィルムに並行に切込み(M1)を入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込み(M2)を入れることにより、前記延設部の一部分を切欠き、切欠き部(K)を除去した後に、残った残部分(Z)の任意の位置で車内側に向けて折り曲げるので、押出成形された後の延設部の端部に対して別体の装飾フィルムと下地材を貼り付ける場合と比較して、延設部,装飾フィルム及び下地材が一体化し密着性を高めることができる。
また、本発明によれば、残った残部分(Z)を、前記一定距離(L)から非折曲距離(T)分減算した折曲距離(S=L-T)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分(Z)の端面(Za)を覆い隠すよう金型成形したので、仮に切欠き部の形状にバラツキがあったとしても型成形材料がその間を埋めてきれいに仕上げることができる。
【0026】
また、本発明によれば、装飾フィルムの上端部及び下端部はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にしてなり、延設部の一部分を切欠き後、装飾フィルムの上端部及び下端部についても、延設部の端面から一定距離(FL1,FL2)分、装飾フィルム側を切欠き、上下方向の残部分の幅を小さくし、装飾フィルム側切欠き部を除去した後に、残った残部分を、折曲距離(S)分、車内側に向けて折り曲げ、その後、折り曲げられた残部分の端面を覆い隠すよう金型成形したので、残部分が車外側から車内側に折り曲げられる際に、装飾フィルムの折り曲げ位置に尖り部やシワが生じることを防止することができる。
また、装飾フィルムの上端部及び下端部の切欠き部の、延設部の端面の逆側は、コーナー部を湾曲させるように面取りされてなるので、尖り部やシワの発生を一層防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係るグラスランの要部を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るグラスランを示す、図1のB-B線拡大断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るグラスランの要部を示す、図1のC-C線押出成形部材の拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るグラスランの要部を示す、図1のD-D線拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るグラスランの取付構造の要部を示す拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態に係るグラスランの製造工程の要部を示す拡大断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る別のグラスランの取付構造の要部を示す拡大断面図である。
図8】本発明の実施形態に係るさらに別のグラスランの要部を示す、図1のD-D線拡大断面図である。
図9】本発明の実施形態に係るまたさらに別のグラスランの要部を示す、図1のD-D線拡大断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る自動車ドアの側面図である。
図11】従来例に係る自動車ドアの側面図である。
図12】従来例に係るグラスランの取付構造の要部を示す斜視図である。
図13図12のA-A線拡大断面図である。
図14】本発明の実施形態に係るグラスランの製造工程時に尖り部が生じた状態を示す側面図である。
図15】本発明の実施形態に係るグラスランの別の製造工程を示す側面図である。
図16】本発明の実施形態に係るグラスランの別の製造工程で、図15の次工程を示す側面図である。
図17】本発明の実施形態に係るグラスランの別の製造工程で、図16の次工程を示す側面図である。
図18】本発明の実施形態に係るグラスランの図15とは別の製造工程を示す側面図である。
図19】本発明の実施形態に係るグラスランのさらに別の製造工程の要部を示す拡大断面図である。
図20】本発明の実施形態に係るグラスランの、図3とは別の押出成形部材の拡大断面図の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1乃至図6及び図10を参照して、本発明の実施形態に係るグラスランについて説明する。なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。なお、図1では型成形部を斜線で示している。また、図1乃至図6において装飾フィルムFを黒塗りして示している。
本発明の実施形態に係るグラスラン50は、図1図2図3及び図10に示すように、自動車のドア、ここでは、フロントドア1の枠体3において車外側に延びるフランジ3Aに、車外側から枠体3を覆って隠すように取付けられるヒドンタイプのものである。
グラスラン50は、ルーフ側及びセンターピラー側(図示しない)の押出成形品2品がフロントドア1の上辺部後端側のコーナー部で型成形部Moを介して接続されたものであり、フランジ3Aに取付けられる取付部51と、昇降するドアガラスGを溝部に案内する本体部52を有している。
取付部51の車外側はフロントドア1の上辺部後端部からフロントドア1から離れる側、すなわちフロントドア1を閉じた状態で自動車の後方側に延びる延設部53とされ、延設部53の車外側には下地材90を介して装飾フィルム(ここでは光輝フィルム)Fが設けられている。ここで、センターピラー側においては、フロントドア1及びリヤドア2の車外側には、それぞれガーニッシュ81,82が取付けられている。
【0029】
図2に示すように、取付部51は、車内外方向に延びる上側壁部55と、下側壁部56と、それら上側壁部55と下側壁部56を連結する連結壁部57からなる断面略コ字形状で内方に、フランジ3Aに弾接する係止部58が形成されている。ここでは上側壁部55の下部に3つのリップ状の係止部58が形成され、下側壁部56の上部に2つの突起状の係止部58が形成されている。
上側壁部55の略中央部の上面には車体開口部周縁(図示しない)に弾接してボディとフロントドア1間をシールするボディシールリップ部59が突設されている。また、上側壁部55の車内側端部には車内側下方に延びてフランジ3Aに弾接するシールリップ部60と車外側上方に延びるリップ部61が突設されている。また、上側壁部55の車外側上面には、グラスラン50の車外側に取付けられた装飾フィルムFの上面に接して覆う覆いリップ部62が突設されている。また、上側壁部55,連結壁部57及び下側壁部56に沿って断面略U字形状の芯材63が埋設されていて、剛性が高められている。
【0030】
本体部52は、昇降するドアガラスGを溝部に案内する、上述した下側壁部56と、下側壁部56の車内側と車外側から下設された車内側側壁部64と、車外側側壁部65からなる。車外側側壁部65は連結壁部57と連続的に設けられている。この車外側側壁部65と連結壁部57を合わせた部分が、フロントドア1を閉じた状態で自動車の後方側に延びて延設部53となっている(図10に図示)。
車内側側壁部64の端部の車外側面には、車外側に向けて延びてドアガラスGの車内側面に摺接するインナリップ部66が設けられ、また車外側側壁部65の端部の車内側面には、車内側に向けて延びてドアガラスGの車外側面に摺接するアウタリップ部67が設けられている。また、下側壁部56の下方にはドアガラスGの端部に弾接するガラスシールリップ68が突設されているが、省略することもできる。
【0031】
ここで図3に示すように、延設部53の取付部51や本体部52は、図2に示したグラスラン50のルーフ側の押出断面形状から車内側側壁部64,インナリップ部66,アウタリップ部67,ガラスシールリップ68を切欠きして除去した押出断面形状となっている。
詳細については省略するが、後述する補形部54の一部分の形状を、取付部51又は本体部52側に型成形により繋げて接続一体化されていてもよい。
【0032】
また、詳細について省略するが、リヤドア2にもフロントドア1に取付けられたグラスラン50と同じ構成のグラスラン70が取付けられている。フロントドア1側ではグラスラン50の延設部53は、フロントドア1の上辺部後端から離れる側である、後方側に延ばされているのに対して、リヤドア2側ではグラスラン70の延設部73は、リヤドア2の上辺部前端から離れる側である、前方側に延ばされ、延設部53,73同士をフロントドア1とリヤドア2の見切り部で相対向させるようにグラスラン50,70はフロントドア1,リヤドア2の枠体3,4にそれぞれ取付けられている。
【0033】
グラスラン50,70の材料は、例えば、EPDM等のゴムやTPOやTPS等のTPE(熱可塑性エラストマー)からなり、スポンジ製であってもソリッド製であってもよい。ここでは、TPEのソリッド材で構成されている。
また、下地材90は、グラスラン50,70の延設部53,73を構成する材料よりも硬い硬質樹脂からなり、その厚みが2mm以下(好ましくは1mm以下)で曲げ弾性率はグラスラン50,70の曲げ弾性率よりも高く、850~4500MPaの範囲のものが使用されている。
下地材90の材料は、例えば、ポリプロピレンにタルクやガラス繊維を混入した材料等で構成されている。混入するタルクやガラス繊維の量を変えることで、上記曲げ弾性率の範囲に入るように調整すればよい。下地材90の材料は、上記曲げ弾性率の範囲のものであれば、特に限定はされず、上記以外の材料を使用してもよい。
【0034】
そして、装飾フィルムFは、図2及び図3に示すように、その上端部F1及び下端部F2はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にするように折り曲げられている(なお、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2を特に折り曲げることなく上下に真っ直ぐに延びる形状にすることも可能である)。また、図3とは別に、図20に示すように、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2を円弧状に折り曲げ、しかも、装飾フィルムFの両端部の一部分に押出成形材料をかぶせるようにしておいても良い。
また、図4及び図5に示すように、延設部53,73の端部では、下地材90とともに車外側から車内側に直角に折り曲げられ、延設部53,73の端面53c,73cを覆うように設けられている。
折り曲げられた装飾フィルムF付きの下地材90と延設部53,73の切欠きによって発生した端面53c,73cの間は型成形材料からなる補形部54,74で補形されている。ここで、図4では、金型による型成形時に使用する、中芯Nも、位置関係理解容易化のために、併記している。
【0035】
またここで、装飾フィルムFとしては、意匠層の裏側に粘着剤や接着層が設けられた薄膜やフィルム材があげられる。
例えば、ステンレススチールの薄膜、金属蒸着フィルム、合成樹脂積層フィルム、表面に装飾模様を有するフィルム、所望の色に着色されたフィルム等があげられる。
粘着層や接着層は、下地材90に対する粘着性、接着性を有する層であればよく、下地材90との間に介在するプライマー層を有していてもよい。
【0036】
グラスラン50,70は、上述したようにルーフ側及びセンターピラー側で押出成形された2品がフロントドア1の上辺部後端側のコーナー部,リヤドア2の上辺部前端側のコーナー部でそれぞれ型成形部Moを介して接続され、それらから延びる延設部53,73の製造方法について図6を参照して説明する。
【0037】
まず、取付部51,71と本体部52,72とともに下地材90と装飾フィルムFを押出成形する(図6(a))。
その後、端部から一定距離(L)分、カッター又は回転刃などの切断部材を利用して、少なくとも装飾フィルムFと下地材90は残るように、延設部53,73の一部分だけを切欠く(図6(b))。
また、より具体的には、まず図6(a)にて、延設部53,73の端部53a,73aから、装飾フィルムFに並行に、一定距離(L)分の切込みM1を入れるとともに、車内側から車外側に向けて一定距離(J)分、切込みM2を入れる。
次に、図6(b)に示すように、切込みM1と切込みM2により、延設部53,73の一部分である、切欠き部Kを、容易に除去することができる。
ここで、切込みM1により、延設部53に、切欠きによって発生した側面53b,73bが形成され、切込みM2により、延設部53に、切欠きによって発生した端面53c,73cが形成される。更に、切込みM1と切込みM2は、どちらを先にしてもよいし、同時にしてもよいが、切込みM1を先にするのが好ましい。またこの際、切込みM1は、装飾フィルムFと下地材90のみが残るようにしても良いが図3に示すように、下地材90の肉厚が薄い場合や、下地材90と連結壁部57や車外側壁部65との境界線が直線状でなく湾曲している場合においては、延設部53の、連結壁部57や車外側側壁部65の一部分が下地材90といっしょに残るように切込みM1を入れても良い。
装飾フィルムFはそれ自体薄くても、延設部53,73の端部53a,73aでは下地材90によって安定した状態で支持されているので延設部53,73の一部分だけを切欠くことは容易である。
【0038】
そして、図6(b),(c),(d)に示すように、延設部53,73から切欠き部Kを除去した後に残った装飾フィルムFと下地材90からなる残部分(Z)を、一定距離(L)から非折曲距離(T)分減算した折曲距離(S=L-T)分、車内側に向けて折り曲げる((折曲距離(S))。
装飾フィルムFは下地材90によって安定した状態で支持されているので、薄い装飾フィルムFであっても下地材90とともに車外側から車内側に容易に折り曲げられる。
このとき、装飾フィルムFと下地材90は、下地材90の下面において下地材90の端面90aから折曲距離(S)に位置する点Pを中心に車内側に折り曲げられる。
ここで、図6(c)に示すように、下地材90について切欠きによって発生した側面53bからから上方外側に向けて点Pまで切込みM3が入れられ、図6(d)に示すように、折り曲げた際にはその切込みM3が塞がれるようにしているが、切込みM3は三角形状の凹部にする代わりに、線状であっても良いし、設定しないことにしても良い。また、延設部53,73から切欠き部Kを除去した後に残った装飾フィルムFと下地材90からなる残部分(Z)について、その残った残部分(Z)の任意の位置で車内側に向けて折り曲げるようにしてもよい。
【0039】
また、切込みM3のかわりに、図19(a)に示すように、刃物や熱板等で四角形状の凹部M4であっても良いし、図19(b)に示すように、刃物や熱板等で下地材90の一部分までも取り除いた四角形状の凹部M5であっても良いし、また、図19(c)に示すように、刃物等で下地材90が残るように取り除いた四角形状の凹部M6で、しかも、非折曲距離が0になるようにしても良い。
【0040】
その後、図5及び図6に示すように、折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90の残部分の端部(Za)と延設部53,73の取付部51,71又は本体部52,72の、切欠きによって発生した端面53c,73cとを覆い隠すことが可能な範囲(R)を型成形して、補形部54,74を型成形材料で形成する。
これによれば、仮に切欠き部Kの形状にバラツキがあったとしても型成形材料がその間を埋めるのできれいに仕上げることができる。
ここでは、折り曲げられた装飾フィルムFの表面と面一になるように補形部54,74が形成され、車外側から自動車のドア1,2を見た場合、黒色の補正部54,74が視界に入らないようにされている。
【0041】
このように構成されたグラスラン50,70によれば、グラスラン50,70の延設部53,73の車外側に設けられた装飾フィルムFは、延設部53,73の端部では、延設部53,73の車外側から車内側に折り曲げられ、延設部53,73の端面53c,57cを覆うように設けられているので、装飾フィルムFが表面に露出したものとなる。
これにより、フロントドア1とリヤドア2の見切り部では、フロントドア1側に設けられた装飾フィルムFとリヤドア2側に設けられた装飾フィルムF間の連続性が高まり外観上見栄えが良くなる。
【0042】
また、特に装飾フィルムFは、金属製のモールを装着した製品と比較して、同様の外観を低コストで製造することができるとともに軽量である。
【0043】
なお、本実施形態では、図5及び図6で示したように、少なくとも装飾フィルムFと下地材90を車外側から車内側に直角に折り曲げるようにしたが、図7に示すように、装飾フィルムFと下地材90を直角よりも鋭角に、すなわちフロントドア1側では前方に折り返されるように、リヤドア2側では後方に折り返されるように曲げた後、折り曲げられた残部分と切欠きされていない(切欠き後に残った)延設部53,73の、切欠きによって発生した端面53c,73cとを覆い隠すことが可能な範囲(R)を型成形して補形するようにしてもよい。
このとき、補形部54,74は、装飾フィルムFの表面と面一にはならないが、折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90は、型成形材料で挟み込まれるので型形成材料との密着性は高まり、接着強度が向上する。
【0044】
また、本実施形態では、折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90と延設部53,73の切欠きによって発生した端面53c,73cを覆い隠すことが可能な範囲(R)に型成形材料を流し込むようにしたが、図8に示すように、この間に断面矩形状のインサートパネル91を挿入し、折り曲げられた残部分の端面(Za)と、延設部53,73の切欠きによって発生した端面53c,73cと、インサートパネル91とを覆い隠すことが可能な範囲(R)を型成形するようにしてもよい。
ここで、金型を使用しての型成形に先立ち、インサートパネル91は、必要に応じて延設部53,73の切欠きによって発生した端部53c,73c又は下地材90の残部分(Z)の折曲した部分に、接着,一体化しておいても良い。
また、その際、折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90をインサートパネル91とで挟み込むように型成形材料で装飾フィルムFと下地材90を外側から覆うように補形部54,74を形成することもできる。
【0045】
これによれば、インサートパネル91を挿入してからインサートパネル91と折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90の下端を覆い隠すことが可能な範囲を型成形したので、型成形時に使用される金型(図示しない)内で、装飾フィルムF付きの下地材90の支持及び固定を容易に行うことができ、型成形部の形状精度を向上させることもできる。また、更に、図示は省略するが、折り曲げられた装飾フィルムFと下地材90の折り曲げした部分の面積よりも、インサートパネル91の面積を小さく設定して、下地材90と補形部54,74との接着面積を拡大して、接着強度を更に向上させるようにしても良い。
また、更に、図8で示したインサートパネル91を使用することに代えて、図9で示すように、金型の中芯Nで直接支持して、補形部54,74を型成形するようにしても良い。
【0046】
また、本実施形態では、図6(b)に示すように、切込みM1と切込みM2により、延設部53,73の一部分である切欠き部Kを除去した後に、残った残部分(Z)を、一定距離(L)から非折曲距離(T)分減算した折曲距離(S=L-T)分、車内側に向けて折り曲げるようにしたが、切欠き部Kを除去した後にさらに、図15に示すように、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2を装飾フィルムF側切欠き部FK1により除去し、その後、残った残部分(FZ1)を車内側に向けて折り曲げるようにしてもよい。
【0047】
これは、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2はそれぞれ車外側から車内側に傾斜または円弧状にするように折れ曲がった押出断面形状であるので、延設部53,73の残部分(Z)を車外側から車内側に向けて折り曲げると、周長差により曲げの内側部分において肉の行き場がなくなり、図14に示すように、尖り部Vやシワが生じる場合があるのでそれを防止するためである。
【0048】
そのため、図6(b)で示したように、延設部53,73の一部分を切欠き(K)後、図15に示すように、装飾フィルムFの上端部F1及び下端部F2についても、延設部53,73の端面53a,73aから一定距離FL1分、装飾フィルム側を切欠き、上下方向の残部分の幅FW1を小さくする。このときの装飾フィルム側切欠き部FK1については、図15では斜線で示した。
その後、図15に点線で示した折り曲げ線X1にしたがって延設部53,73の残部分(FZ1)を車外側から車内側に向けて折り曲げると、図16に示すようになり、さらに型成形材料で補形部54,74を形成すると、図17に示すようになる。
なお、ここで折り曲げ線X1は、上方から下方にいくにつれて、前方向になるように傾いているが、自動車のデザインに合わせて変更しても良い。例えば、フロントドアの後上端部に取付けるグラスランの場合や、リヤドアの前上端部に取付けるグラスランの場合では、図15と同様の向きに傾けるようにしても良い。
また、自動車のデザインにあわせて、傾けないようにしても良い。
なお、図6(c)に示すように、下地材90について点Pから上方外側に向けて三角形状の凹部や線状の切込みM3を設定してもよく、あるいは設定しないことにしても良い。
また、図6に示した切込みM3の代わりに、図19(a),図19(b),図19(c)に示した切込みM4,切込みM5,切込みM6を設定しても良い。
【0049】
また、図15に示すように、装飾フィルムF側切欠き部FK1を切欠きする際、装飾フィルムF側切欠き部FK1の、延設部53,73の端面53a,73aの逆側については、コーナー部を湾曲させるように面取りFK1aして、尖り部Vやシワの発生を一層防止するようにしている。
また、面取りFK1aの開始位置は装飾フィルムF側切欠き部FK1と折り曲げ線X1とが交差する部位付近からにしても良いし、面取りFK1aの開始位置は装飾フィルムF側切欠き部FK1と折り曲げ線X1とが交差する部位からにしても良い。
また、延設部53,73の残部分(FZ1)を曲げ加工することによって、開いてしまう部分の装飾フィルムF側切欠き部FK1形成の際の切欠きを最小限にするため,熱圧縮成形による整形も併せて行うようにしてもよい。
また、図15に示した装飾フィルム側切欠き部FK1の代わりに、図18に示す装飾フィルム側切欠き部FK2をすることにしても良い。
また、更に、図15図18に示すように、折り曲げ線X1,X2は、面取りFK1a,FK2aのR止まり付近に設定するのが好ましい。R止まりよりを越えて、直線部分になればなるほど、面取りFK1a,FK2aをうめる補形部54,74である黒色の型成形材料部分が、車外側から目視される大きさが大きくなり、車両外観が低下し、好ましくない。また、逆に、R止まりを越えない部分であればあるほど、折り曲げた際、肉の重なり度合いが大きくなり、尖りVやシワが大きくなり、グラスランの製品外観が低下し、好ましくない。
【0050】
また、装飾フィルムF側切欠き部FK2は装飾フィルムF側切欠き部FK1と比較して、装飾フィルムの端面に近づくにつれて上端及び下端の位置が中央側に近づくように傾斜させて、かつ、装飾フィルムの上下方向の残部分の幅FW2はFW1よりも小さくなるように設定しかつ、切欠き一定距離FL2はFL1よりも小さくなるように設定し、装飾フィルムF側切欠き部FK2の延設部53,73の端面53a,73aの逆側については、コーナー部を湾曲させるように面取りFK2aとして、面取りFK2aは面取りFK1aよりも小さくなるように設定している。このような装飾フィルムF側切欠き部FK2にすることにより、面取りFK2aは面取りFK1aよりも小さくなるように設定している。
また、面取りFK2aの開始位置は装飾フィルムF側切欠き部FK2と折り曲げ線X2とが交差する部位付近からにしても良いし、面取りFK2aの開始位置は装飾フィルムF側切欠き部FK2と折り曲げ線X2とが交差する部位からにしても良い。
図16及び図17に示したように、面取りFK1aをうめる補形部54,74である、黒色の型成形材料部分が、車外側から目視される大きさをより小さくすることができる為、車両外観がより向上し、また更に、装飾フィルムFの残り幅FW2はFW1よりも小さくなるように設定している為、装飾フィルムFを折り曲げた際、肉の重なり度合いがより小さくなり、尖りVやシワがより小さくなり、グラスランの製品外観がより向上する。
【0051】
また、本実施形態では、取付部51,71と本体部52,72とともに下地材90と装飾フィルムFを押出成形した後に、延設部53,73の一部分を切欠きするようにしたが、グラスラン50,70の連結壁部55,57と、車外側側壁部65の車外側に下地材90を設けることなく押出成形されたものと、センターピラー側の押出成形品とを、型成形部Moを介して接着された後、別体の装飾フィルムFをグラスラン50,70の車外側に貼付け、延設部53,73の端面53a,73aに型成形材料で補形された端部では、車外側から車内側に折り曲げ、延設部53,73の端面53a,73aに型成形材料で補形された端部を覆うように貼り付けるようにしても良い。
【0052】
また、本実施形態ではフロントドア1,リヤドア2の枠体3,4を車外側から覆って隠すように取付けられるヒドンタイプの延設部53,73に装飾フィルムFを取付ける場合について説明したが、従来例で示したような(図12)、枠体に対して取付部11が下方から嵌め込まれ、車外側に設けられた装飾リップ12,22における延設部13,23に装飾フィルムFを取付ける場合にも適用することができる。
また、本実施形態では図5図10に示したように、フロントドア1の延設部53とリヤドア2の延設部73が見切り部で相対向している部位について説明したが、フロントドア1の前側の型成形部やリヤドア2の後側の型成形部等で、延設部同士が相対向していない部位においても、適用することができる。
また、本実施形態では図5図10に示したように、フロントドア1の延設部53やリヤドア2の延設部73がセンターピラー側の押出成形品よりも見切り部側に突出した場合について説明したが、突出せずに、ピラー側の押出成形品の位置までとなっている場合においても、適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 フロントドア
2 リヤドア
3,4 枠体
3A フランジ
10,20 グラスラン
11 取付部
12,22 装飾リップ
13,23 延設部
13a,23a 延設部の端面
14,24 補形部
50,70 グラスラン
51,71 取付部
52,72 本体部
53,73 延設部
53a,73a 延設部の端面
53b,73b 切欠きによって発生した側面
53c,73c 切欠きによって発生した端面
54,74 補形部
55,75 上側壁部
56,76 下側壁部
57,77 連結壁部
58 係止部
59 ボディシールリップ部
60 シールリップ部
61 リップ部
62 覆いリップ部
63 芯材
64 車内側側壁部
65 車外側側壁部
66 インナリップ部
67 アウタリップ部
68 ガラスシールリップ
81,82 ガーニッシュ
90 下地材
90a 下地材の端面
91 インサートパネル
F 装飾フィルム
F1 上端部
F2 下端部
Fa 装飾フィルムの端面
FW1,FW2 装飾フィルムの上下方向の残部分の幅
FL1,FL2 装飾フィルム側切欠き部の前後方向の幅
FZ1,FZ2 装飾フィルムの残部分
FZ1a,FZ2a 装飾フィルムの残部分の端面
FK1,FK2 装飾フィルム側切欠き部
FK1a,FK2a 装飾フィルム側切欠き部の面取部
G ドアガラス
J 一定距離
K 切欠き部
L 一定距離
M1~M6 切込み
Mo 型成形部
N 中芯
P 点
R 範囲
S 折曲距離
T 非折曲距離
V 尖り部
X,X1,X2 折り曲げ線
Z 残部分
Za 残部分の端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20