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特開2022-111988一体型成型流体リザーバ本体と電子流体分注システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111988
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】一体型成型流体リザーバ本体と電子流体分注システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
G01N35/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198375
(22)【出願日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】17/152,842
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】キャリザーズ・アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジュニア.・ジェームス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サード・マイケル エー.
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058EA05
2G058ED17
2G058ED20
(57)【要約】
【課題】流体吐出ヘッド基板が取り付けられた一体型成型流体リザーバ本体と電子流体分注システムを提供する。
【解決手段】一体型成型流体リザーバ本体は、1以上の個別の流体チャンバを含む。各1以上の個別の流体チャンバは、開口頂部と、側壁と、側壁に取り付けられた傾斜底壁を有し、各1以上の個別の流体チャンバは流体供給ビアで終端し、傾斜底壁は側壁に直交する面に対し約6~約12°の範囲の角度を有する。1以上の流体供給ビアを介し1以上の個別の流体チャンバから提供される流体を吐出するための単一の流体吐出装置を取り付けるため、吐出ヘッド支持面が開口頂部に対向して設けられる。
【選択図】図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出ヘッド基板が取り付けられた一体型成型流体リザーバ本体であって、
それぞれが、開口頂部と、側壁と、前記側壁に取り付けられて前記側壁に直交する面に対し約6~約12°の範囲の角度を有する傾斜底壁とを有し、流体供給ビアで終端する、1以上の個別の流体チャンバと、
1以上の流体供給ビアを介し前記1以上の個別の流体チャンバから提供される流体を吐出するための単一の流体吐出装置の取付けのための、前記開口頂部に対向する吐出ヘッド支持面と
を含む、
一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項2】
2つの流体チャンバを含み、前記2つの流体チャンバが、それらの間の分離壁により互いに分離された、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項3】
3つの流体チャンバを含み、前記3つの流体チャンバが、それらの間の分離壁により互いに分離された、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項4】
4つの流体チャンバを含み、前記4つの流体チャンバが、それらの間の分離壁により互いに分離された、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項5】
6つの流体チャンバを含み、前記6つの流体チャンバが、それらの間の分離壁により互いに分離された、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項6】
透明成型流体リザーバ本体を含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項7】
最大流体充填ボリュームを示すしるしを更に含む、
請求項6に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項8】
1以上の前記個別の流体チャンバの前記開口頂部を閉じるための取外し可能な蓋を更に含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項9】
前記1以上の個別の流体チャンバの前記開口頂部を覆うための取外し可能なテープを更に含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項10】
各前記1以上の個別の流体チャンバが約200マイクロリットル~約1ミリリットルの範囲の流体ボリュームを有する、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項11】
各前記1以上の個別の流体チャンバが流体充填ボリューム限度を示す隆起を更に含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項12】
使用前に、前記1以上の個別の流体チャンバが保護テープで封止された、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項13】
前記保護テープが前記開口頂部と流体吐出ヘッドとを覆う単一のプルテープである、
請求項12に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項14】
前記開口頂部が空気抜き溝を更に含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項15】
少なくとも1つの前記側壁が、前記流体供給ビアに隣接して、前記側壁により定義された面に対し約8~約12°の範囲の角度でアンダーカットされた、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項16】
各前記1以上の個別の流体チャンバが異なる最大流体ボリュームを有する、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項17】
各前記1以上の個別の流体チャンバが類似の最大流体ボリュームを有する、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項18】
半透明成型流体リザーバ本体を含む、
請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項19】
最大流体充填ボリュームを示すため、その透明領域にしるしを更に含む、
請求項18に記載の一体型成型流体リザーバ本体。
【請求項20】
単一の流体吐出装置からマイクロウェルプレートのウェル内又はガラススライド上に流体を正確に分注するため請求項1に記載の一体型成型流体リザーバ本体を含む、
電子流体分注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物スクリーニングといった化学的又は生物学的アッセイに関するものであり、特に、高価でない流体堆積装置における化学的又は生物学的アッセイの応用のために用いられる改善された流体リザーバ本体に関する。
【背景技術】
【0002】
特に医療分野において、分析のための自動化された試料調製及び分析の必要性がある。分析は、比色分析、又は顕微鏡下で試料をより好ましく観察するため試料の着色を要する可能性がある。そのような分析は、薬剤試料分析、血液試料分析等を含む。例えば、血液のアッセイ分析において、血液は個人の健康を判定するために用いられるいくつかの異なる要因を提供する。血液試料分析を要する多くの患者がいる場合、分析のため試料を調製する手順は非常に時間がかかるものとなる。薬物スクリーニングといったアッセイ解析には、試料に対する効果及び性能を評価するため微量の標的試薬を堆積させることが望ましい。従来、手動又は電気機械的に作動するピペットが、これらアッセイ試薬中に微量物質を堆積させるために用いられている。アッセイのために生成される試験流体の総量は、最小の試薬に対する試薬の所望の割合を達成する能力により決定付けられる。ピペットの小規模なボリューム限度により、試薬の適切な割合を達成するため過剰な試験流体を作成することが度々必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
サーマルインクジェット技術は噴射流体のピコリットルサイズの液滴を正確に分配できることが周知である。インクジェット技術が提供する精度と速度は、無駄な試料の量を削減しつつアッセイ試料のスループットを向上させるための有望な候補である。従来のサーマルジェットプリンタでは、典型的に、噴射流体はエンドユーザに届く前にプリントヘッドに事前に充填される。しかし、現場で試験溶液を作成することが望ましいライフサイエンス分野では、予め充填されたカートリッジを使用することは現実的でない。
【0004】
インクジェットプリンティングは化学的および生物学的なアッセイ解析を行う実行可能な方法であるかもしれないが、現在市場に出ているインクジェット印刷製品は、一部研究者にとって法外なコストのかかる特殊なプリンタと特別に設計されたプリントヘッドを使用している。製造コスト及びエンドユーザのコストを削減するため、特別に設計されたプリンティングシステムではなく、既存の標準的なインクジェットプリンタを用いることが望ましい。ライフサイエンス分野において標準的なインクジェットプリンタを使用できるようにするため、流体リザーバ本体に独自の噴射流体を容易に充填できるようにしつつ流体リザーバ本体の既存の流体リザーバのフォームファクタが維持されるようプリントヘッド流体リザーバ本体を改変する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を鑑み、本発明の1つの実施形態は、流体吐出ヘッド基板が取り付けられた、一体型成型流体リザーバ本体である。一体型成型流体リザーバ本体は、1以上の個別の流体チャンバを含む。各1以上の流体チャンバは、開口頂部と、側壁と、側壁に取り付けられた傾斜底壁とを有する。各1以上の流体チャンバは流体供給ビアにおいて終端する。傾斜底壁は、側壁に直交する面に対し約6~12°の範囲の角度を有する。1以上の流体供給ビアを介し1以上の個別の流体チャンバから提供される流体を吐出するために単一の流体吐出装置を取り付けるため、吐出ヘッド支持面が開口頂部に対向し設けられる。
【0006】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は2つの流体チャンバを含み、2つの流体チャンバはこれらの間の分離壁により互いに分離される。
【0007】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は3つの流体チャンバを含み、3つの流体チャンバはこれらの間の分離壁により互いに分離される。
【0008】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は4つの流体チャンバを含み、4つの流体チャンバはこれらの間の分離壁により互いに分離される。
【0009】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は6つの流体チャンバを含み、6つの流体チャンバはこれらの間の分離壁により互いに分離される。
【0010】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は透明成型流体リザーバ本体を含む。他の実施形態において、一体成型流体リザーバ本体は、様々な流体充填ボリュームを示すためのしるしを更に含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は、1以上の個別の流体チャンバの開口頂部を閉じるための取外し可能な蓋を更に含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は、1以上の個別の流体チャンバの開口頂部を覆うための取外し可能なテープを更に含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、各1以上の個別の流体チャンバは、約200マイクロリットル~約1ミリリットルの範囲の流体ボリュームを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、各1以上の個別の流体チャンバは、流体充填ボリューム限度を示すための隆起(shelf)を更に含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、使用前に、1以上の個別の流体チャンバは保護テープで封止される。他の実施形態において、保護テープは開口頂部と流体吐出ヘッドとを覆う単一のプルテープである。
【0016】
いくつかの実施形態において、使用前に、1以上の個別の流体チャンバは取外し可能な蓋で覆われる。
【0017】
いくつかの実施形態において、開口頂部は空気抜き溝を更に含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、側壁の少なくとも1つは、流体供給ビアに隣接して、側壁により定義された面に対し約8~12°の範囲の角度でアンダーカットされている。
【0019】
いくつかの実施形態において、各1以上の個別の流体チャンバは異なる最大流体ボリュームを有する。他の実施形態において、各1以上の個別の流体チャンバは類似の最大流体ボリュームを有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、一体型成型流体リザーバ本体は半透明成型流体リザーバ本体を有する。他の実施形態において、一体成型流体リザーバ本体は、最大流体充填ボリュームを示すため、一体成型流体リザーバ本体の透明又は半透明領域にしるしを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、流体吐出ヘッド基板が取り付けられた一体型成型流体リザーバ本体を含む、電子流体分注システムが提供される。一体型成型流体リザーバ本体は、1以上の個別の流体チャンバを含む。各1以上の流体チャンバは、開口頂部と、側壁と、側壁に取り付けられた傾斜底壁とを有する。各1以上の流体チャンバは流体供給ビアにおいて終端する。傾斜底壁は、側壁に直交する面に対し約6~12°の範囲の角度を有する。1以上の流体供給ビアを介し1以上の流体チャンバから提供される流体を吐出するための流体吐出装置を取り付けるため、吐出ヘッド支持面が開口頂部に対向し設けられる。
【発明の効果】
【0022】
開示される実施形態の利点は、様々な液体分注の応用に使用でき、分注すべき多様な流体に適合できる、流体を電子的に分注するためのユニークな低コストカートリッジを提供できることである。カートリッジには、従来のインクジェット型プリンタと互換性のある1以上の流体リザーバのための一体型成型構造を提供するという利点もあり、これによりコストのかかる複数部品組立工程を排除する。
【0023】
開示された実施形態のもう1つの利点は、カートリッジの本体を封止する蓋をカートリッジが必要としないことである。流体チャンバと吐出ノズルは、使用前に異物がチャンバに進入することを防ぐため、粘着テープ又はラベルで封止されることができる。チャンバのサイズは、カートリッジ作製に用いられるモールドの僅かな改変により即座に改変されることができる。従って、カートリッジは異なる応用のための流体チャンバボリュームに対し容易にカスタマイズ可能である。
【0024】
各液体リザーバに個別の液体吐出ヘッドチップを用いる製品とは異なり、カートリッジの本体に単一の液体吐出ヘッドチップが取り付けられ、複数の液体リザーバのために用いられる。単一の流体吐出ヘッドチップの使用は、吐出ヘッドから吐出される液滴の位置精度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の1つの実施形態による電子分注システムの、縮尺通りではない、斜視図である。
図2図2は、図1の電子分注システムで用いるためのトレイ及びマイクロウェルプレートの、縮尺通りではない、斜視図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
図4図4は、図3の流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
図6図6は、図5の流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図7図7は、本発明の第3の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
図8図8は、図7の流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図9図9は、図7の流体カートリッジの、その内にある流体チャンバの視図を示す、縮尺通りではない、端部断面図である。
図10図10は、本発明の第4の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
図11図11は、図10の流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図12図12は、本発明の第5の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
図13図13は、図12の流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図14図14は、図10の流体カートリッジの、縮尺通りではない、底面斜視図である。
図15図15は、本発明の第6の実施形態による代替的な流体カートリッジの、縮尺通りではない、底面斜視図である。
図16図16は、本発明の第7の実施形態による代替的な流体カートリッジの、縮尺通りではない、上面斜視図である。
図17図17は、本発明の第7の実施形態による図16の流体カートリッジの、縮尺通りではない、底面斜視図である。
図18図18は、図16による流体カートリッジの一部の、縮尺通りではない、部分平面図である。
図19図19は、図16による流体カートリッジの一部の、縮尺通りではない、部分底面図である。
図20図20は、カートリッジのための保護テープを表す図16の流体カートリッジの、縮尺通りではない、底面斜視図である。
図21図21は、カートリッジのための保護テープを表す図16の流体カートリッジの、縮尺通りではない、上面斜視図である。
図22図22は、図18の流体カートリッジ及び流体カートリッジのための保護テープの、縮尺通りではない、分解図である。
図23図23は、本発明の第8の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、側面図である。
図24図24は、本発明の第9の実施形態による流体カートリッジの、縮尺通りではない、平面図である。
図25図25は、図24の流体カートリッジの、縮尺通りではない、底面図である。
図26図26は、図24の流体カートリッジの、縮尺通りではない、断面図である。
図27図27は、本発明の第10の実施形態による代替的な流体カートリッジの、縮尺通りではない、上面斜視図である。
図28図28は、図10の流体カートリッジの流体チャンバにおける流体供給ビアの、縮尺通りではない、部分平面図である。
図29図29は、図28の2つの流体供給ビアの、縮尺通りではない、部分断面図である。
図30図30は、図28の流体供給ビア及び分離壁の、縮尺通りではない、部分断面斜視図である。
図31図31は、取外し可能な蓋を含む図10の流体カートリッジの、縮尺通りではない、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~2を参照し、1以上の流体のある量を基板上に正確に分注する電子流体分注システム10が示される。ハイエンドな電子分注装置とは異なり、本発明の電子流体分注システム10は、第1のx方向に進退する吐出ヘッドと、流体分注動作の間に第1の方向に直交する第2のy方向に進退する基板を移動させるためのトレイ14とに基づく。開示される電子流体分注システム10は、開放型分注ヘッドのみではなく、開放型及び閉鎖型分注ヘッドを受け入れることができる。トレイ14は、マイクロウェルプレート、ガラススライド、電子回路基板等を含むがこれらに限定されない、多様な基板に適合可能である。図2は、マイクロウェルプレートのウェル内又はガラススライド上に流体を分注するため電子流体分注システム10で用いるための、ウェル40を含むマイクロウェルプレート38を保持するためのトレイ14を表す。トレイ14は、流体を堆積させるため異なるサイズのマイクロウェルプレート又はスライド又は他の基板を保持するためのアダプタを含む。
【0027】
流体吐出ヘッドとカートリッジ移動機構とを含む分注ヘッドカートリッジは、直方体状のボックス18に内包される。起動スイッチ20が電子流体分注システム10を起動するためボックス18に含まれる。ボックス18の背面側は、流体を基板上に分注するため第2の方向でボックス18を通るトレイ14の移動のための開口を含む。USBポートが、電子流体分注システム10をコンピュータ又は電子表示装置に接続するため提供される。電源は、ボックス18上の電源入力ポートを介し電子流体分注システム10に提供される。
【0028】
図1の電子流体分注システム10で用いるための流体カートリッジ及びその部品が、図3~31に表される。図3は、本発明の1つの実施形態による単一チャンバ液滴吐出カートリッジ50の、縮尺通りではない、斜視図である。カートリッジ50は、単一の開放型流体チャンバ54を提供する一体型成型本体52を有する。流体チャンバ54は流体供給ビア56(図4)を有し、これはチャンバ54から流体供給ビア56に隣接して取り付けられた吐出ヘッドチップ58への流体のフローのためのものである。実用的な観点から、ここで説明されるカートリッジのための各流体チャンバは、最大約1ミリリットルの流体で満たされてよい。以下により詳細に説明されるように、カートリッジは流体チャンバの過充填を防ぐためのしるし又は構造を含んでよい。吐出ヘッドチップ58は、一体型成型本体52の前壁62へ取り付けられたフレキシブル回路60へ電気接続される。図4は、流体供給ビアの位置を示す図3の単一チャンバカートリッジ50の平面図である。
【0029】
図5と6は、2つの開放型流体チャンバ72Aと72Bを有する流体カートリッジ70を表す。流体チャンバ72Aと72Bは、垂直な分離壁74により互いに分離される。カートリッジ70の本体76は、2つの流体吐出器アレイ80Aと80Bを含む吐出ヘッドチップ78が取り付けられた類似の一体型成型本体である。図6に示されるように、カートリッジ70の本体76は、2つの流体供給ビア82Aと82Bを備えて成型される。第1の実施形態のように、カートリッジ70の各開放型流体チャンバ72Aと72Bは、約200マイクロリットル~約1ミリリットルといった最大1ミリリットルの流体で満たされる。
【0030】
図7~9は、3つの開放型流体チャンバ94A、94B、94Cを備えた一体型本体92を有する流体カートリッジ90を表す。チャンバ94A~94Cは分離壁96Aと96Bにより互いに分離される。チャンバ94A~94Cは、各チャンバにおける流体ボリューム容量が実質的に同一であるよう表されている。ただし、分離壁96Aと96Bは、異なる流体ボリュームを有するチャンバを提供するよう配置されてよい。上述した実施形態のように、カートリッジ90は、3つの流体吐出器アレイを含む吐出ヘッドチップに流体を提供するための3つの流体供給ビア98A、98B、98Cを含む。分離壁96Aと96Bはz方向における実質的に垂直な分離壁であるが、チャンバの底壁はx及びy方向において流体供給ビア98A~98Cへ向かい傾斜している。チャンバ94Aと94Bの傾斜底壁100Aと100Bの図示が図9に表される。いくつかの実施形態において、底壁100Aと100Bは、分離壁96Aと96Bに直交するx及びy方向における面に対し、約6~約12°といった、約4~約20°の範囲の傾斜角を有する。
【0031】
図10~11は、4つの開放型流体チャンバ114A,114B、114C、114Dを備えた一体型本体112を有する流体カートリッジ110を表す。分離壁116Aと116Bがチャンバ114A~114Dを互いに分離する。他の実施形態と同様に、チャンバ114A~114Dは流体供給ビア118A~118Dにおいて終端する。上述した実施形態のように、流体チャンバ114A~114Dの底壁は、流体供給ビア118A~118Dへ向かい傾斜している。
【0032】
更にもう1つの実施形態において、流体カートリッジ120は6つの開放型流体チャンバ124A~124Fを含む一体型成型本体122を有する(図12)。分離壁126A、126B、126Cが流体チャンバ124A~124Fを互いに分離する。図13は、流体供給ビア128A~128Fにおいて終端する傾斜底壁を有する流体チャンバ124A~124Fを表す。
【0033】
以下の説明において、図10と11を参照して上述したような4つの開放型流体チャンバを有する流体カートリッジを参照する。ただし、以下で説明する4チャンバカートリッジの特徴は、1つのチャンバ、2つのチャンバ、3つのチャンバ、6つのチャンバを含む上述したカートリッジにも適用することができる。5つの頂部開放型チャンバ又は6つ以上の頂部開放型チャンバを備えたカートリッジを提供することが考えられるが、サイズと製造の観点から、上記流体カートリッジが電子流体分注システム10において流体を分注するために用いられる流体カートリッジのための最も実用的な構成を提供する。
【0034】
図14と15は、上述した4チャンバ流体カートリッジのための代替構造を表す。従来のインクジェットカートリッジにおいて、領域130は、典型的に、発泡材料といった背圧制御装置で満たされ、流体チャンバへと導く流体フローチャネルを有する。ただし、頂部開放型チャンバ114A~114Dでは、流体はカートリッジの使用時にチャンバ内へ挿入され、カートリッジの発泡剤充填領域に流体を格納する必要はない。また、各チャンバ114A~114Dのボリュームは限られることから、チャンバ114A~114D内に背圧制御装置又は濾過塔構造は必要でなく、これによりカートリッジの構造の複雑さを更に低減する。図14は、吐出ヘッドチップを取り付けるための凹部領域132も示している。
【0035】
代替的な実施形態において、図15に示されるように、カートリッジ110Aは、カートリッジ本体112Aの構造的整合性を向上させ、後述する取外し可能なテープのための着床領域を提供するため、領域130Aにおいて複数のリブ134を含んでよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、使用前にカートリッジを格納する間にチャンバ114A~114Dを通気する必要がある。この場合、カートリッジを通気するため通気口が提供されてよい。図16は、流体チャンバ114Aと114Bのための分離壁116Bにおける空気抜き溝150と、流体チャンバ114Cと114Dのための空気抜き溝152とを有する、流体カートリッジ110Bの代替的な実施形態を表す。チャンバ114A~114Dからの蛇行した空気の経路を提供するため、空気キャビティ154が溝150と152からカートリッジ110Bの底側156(図17)への空気のフローのため提供されてよい。空気キャビティ154と気体流通連通している排気口158が、流体チャンバ114A~114Dから大気への蛇行した空気流路を提供するため、カートリッジ110Bの底側156に提供される。図18と19は、カートリッジ110Bの上側(図18)と底側(図19)の部分拡大図である。図示しないもう1つの実施形態において、空気溝は流体チャンバ114A~114Dからの空気抜きのためカートリッジ110Aの上部側縁へ延伸してよい。
【0037】
図20は、カートリッジ110Bの凹部領域132(図17)に設けられた吐出ヘッドチップに取り付けられたフレキシブル回路142も示す。4つの流体チャンバの実施形態において、吐出ヘッドチップ144は、カートリッジ本体112Bの4つの流体供給ビア118A~118Dに対応する流体吐出器の4つのアレイ146A~146Dを含む。取外し可能なテープ140が、流体チャンバの内部をごみや屑から保護するため開放型流体チャンバ114A~114D(図21)を覆うよう、カートリッジ本体112Bに取り付けられる。テープ140はカートリッジが使用されるまでカートリッジ上に留まる。青色テープ148が取外し可能なテープ140に取り付けられ、流体吐出器をごみや屑から保護するためカートリッジの使用前に流体吐出器146A~146Dを覆う。テープ140の取外しは、青色テープ148もカートリッジ110Bから取り外す。
【0038】
いくつかの実施形態において、図22に示されるように、空気キャビティ154を覆うためカートリッジ本体112Bの上側162に永久ラベル160が貼り付けられてよい。永久ラベル160は、カートリッジ112Bに関する取扱説明又は他の識別情報を含んでよい。いくつかの実施形態において、チャンバと吐出ヘッドの両方を覆うため、取外し可能なテープ140と青色テープ148ではなく、単一の取外し可能なテープが用いられる。単一のテープ又は複数のテープシステムのいずれを用いるかについては、流体チャンバと吐出ヘッドを露出するため単一のプルテープを有することが望ましい。カートリッジ本体からのテープの取外しを補助するため、上述したカートリッジ本体に溝又は剥離面を提供することも望ましい。取外し可能な青色テープ148の取外しを補助するため、複数の隆起163が一体型成形本体112Bの外部後壁に設けられる(図20)。
【0039】
いくつかの実施形態において、カートリッジ本体112Bは、流体チャンバ114A~114D内の流体のレベルをユーザが見られるよう、透明プラスチック、又は透明ナイロン又はポリカーボネートといった高分子材料から成型される。他の実施形態において、カートリッジ本体112Bは半透明プラスチック材料から成型される。従って、図23に示されるように、各流体チャンバ114A~114Dにおける流体の必要な又は最大のレベルを示すため、しるし170が流体チャンバ114A~114Dに隣接したカートリッジ本体112Bの内側又は外側に刻まれる。
【0040】
他の実施形態において、カートリッジ本体112Bは、図24~26に示されるように、非透明であり、流体チャンバ114A~114Dに突起又は隆起172と174を含んでよい。隆起172と174は、チャンバを充填するためにどれだけ満たされているかを視覚的に示すだけでなく、ピペット先端からの少量の流体の付着を除くためにピペットの先端を引きずることができる領域を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態において、分離壁180Aと180B(図27)が流体チャンバ114A~114Dの過充填を防ぐために用いられてよい。本実施形態において、分離壁180Aと180Bは流体カートリッジ112Cの頂部まで延伸しない。低減された高さの壁180Aと180Bは、流体チャンバ114A~114D内の流体の量を制限するため、単独で、又は上述したしるし170又は隆起172と174との組合せで用いられてよい。
【0042】
カートリッジが4つ又は6つの流体供給ビアを含み、対応する吐出ヘッドチップが4つ又は6つの流体吐出器アレイを含む実施形態において、吐出ヘッドチップのサイズを減少させるため、流体吐出器アレイの間隔を狭めることが望ましい。ただし、間隔を狭めた流体吐出器アレイは、流体供給ビアの間隔も狭めることも要する。隣接する流体チャンバを分離する分離壁の厚さは、カートリッジの適切な射出成型に要する材料の量により決定される。従って、隣接する流体供給ビアの間の分離壁は流体供給ビアと干渉する又は部分的に重複する可能性があり、吐出ヘッドチップへの流体のフローに干渉する、及び/又は流体供給ビア中に気泡を閉じ込める。
【0043】
接近して隣接する流体供給ビア118Aと118Cの図示が図28と29に表される。流体供給ビア118Aと118Cは吐出ヘッドチップ144へ流体を供給する。見て取れるように、分離壁116Bは領域190において流体供給ビア118Aと118Cに隣接して狭められる又はアンダーカットされており、さもなくば分離壁116Bは点線192により示されるように流体供給ビア118Aと118Cと部分的に重複する。流体供給ビア118Aと118C又は118Bと118Dの重複は、気泡を線192により表される分離壁116Bの重複部分の下に閉じ込める可能性がある。従って、分離壁116Bをアンダーカットすることが望ましく、流体供給ビアに隣接する部分190を側壁116Bにより定義されるz方向における面に対してある角度でアンダーカットされる。z方向における面に対するアンダーカット領域190の適切な角度は、約8~約12°といった約6~約20°の範囲であってよい。壁116Bのアンダーカット領域190は、図30の部分斜視図に流体供給スロット118Dに隣接して更に表される。
【0044】
流体供給カートリッジの壁116Bをアンダーカットすることにより、流体供給ビア118Aと118C、118Bと118Dは吐出ヘッドチップ144のサイズを小さくするために間隔を狭めることができる。ただし、より大きな吐出ヘッドチップ144を使用することが望ましい場合、流体供給ビア118Aと118C、118Bと118Dは分離壁116Bをアンダーカットすることなく更に間隔が空けられてよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、図31に示されるように、流体チャンバ114A~114Dを暫定的に覆うために取外し可能な蓋200が用いられてよい。取外し可能な蓋200は、流体チャンバ114A~114Dを覆う又は露出するスナップオン又はプレスフィット蓋200であってよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、上述した頂部開放型カートリッジを含む電子流体分注システム10がマイクロウェルプレート内に流体を堆積させるため用いられてよい。実験のためのマイクロウェルプレートの充填は、時間のかかる手動タスクであり得る。マイクロウェルプレートの準備に要する時間を短縮するため、複数のウェルに同時に流体を堆積できることが望ましい。従来の電子分注システムが存在するが、従来のシステムは単一軸に沿って直線的に配置された分注ヘッドを有する。流体吐出器を含む分注ヘッドチップがそのような分注ヘッドに個別に配置される。本発明は、単一の吐出ヘッドチップ144上の2次元マトリクスに設けられた流体吐出器の複数アレイを組み合わせることにより改善された電子流体分注システム10を提供する。このような2次元マトリクスは、マイクロウェルプレートのウェルを充填する時間を大幅に短縮することができる。流体吐出器の2次元アレイを含む吐出ヘッドは、吐出ヘッド基板上に個々の吐出ヘッドを機械的に配置するのではなく、フォトリソグラフィ技術により形成されるため、2次元マトリクスは流体吐出器とマイクロウェルプレートとの間の位置合わせをも改善できる。
【0047】
流体供給ビア118Aと流体供給ビア118Cとの中心間距離は、約4.2mmといった約2~約9mmの範囲であってよい。流体供給ビア118Aと流体供給ビア118C、又は118Bと118Dの間の距離は、約3.5mmといった約1~約5mmであってよい。いくつかの実施形態において、吐出ヘッドチップ144は、約7~約11mmの長さLと、約5~約7mmの幅Wを有する。
【0048】
従って、本発明による電子流体分注システム10は、上述した流体カートリッジを用いて、マイクロウェルプレートのウェル内、スライド上、回路基板上、又は他の基板上に流体を堆積させるために用いることができる。流体吐出器の複数アレイを含む吐出ヘッドチップ144は、より正確なマイクロウェルプレートの充填、ガラススライド上への液滴の配置、又は回路板基板上への流体の堆積を可能にする、改善された位置合わせ精度を提供する。
【0049】
上記の実施形態では1つ~6つの流体チャンバを有する流体カートリッジを特に説明したが、各流体カートリッジは単一の流体又は2以上の異なる流体を分注するよう構成されてよいことを理解されたい。
【0050】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「a」、「an」、「the」は、明示的かつ明確に1つの指示物に限定されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。本明細書で用いられる「include」という用語およびその文法上の変形は、リスト内の項目の列挙が、リストされた項目を置換または追加できる他の同様の項目を除外しないよう、非限定的であることを意図している。
【0051】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のため、特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、百分率又は比率を表す全ての数値及び他の数値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして各数値パラメータは、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも、述べられた有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0052】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測してない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0053】
10:電子流体分注システム
14:トレイ
18:ボックス
20:起動スイッチ
38:マイクロウェルプレート
40:ウェル
50:流体カートリッジ
52:一体型成型本体
54:流体チャンバ
56:流体供給ビア
58:吐出ヘッドチップ
60:フレキシブル回路
62:前壁
70:流体カートリッジ
72A、72B:流体チャンバ
74:分離壁
76:本体
78:吐出ヘッドチップ
80A、80B:流体吐出器アレイ
82A、82B:流体供給ビア
90:流体カートリッジ
92:本体
94A、94B、94C:流体チャンバ
96A、96B:分離壁
98A、98B、98C:流体供給ビア
100A、100B:底壁
110、110A:流体カートリッジ
112、112A、112B:本体
114A~114D:流体チャンバ
116A、116B:分離壁
118A~118D:流体供給ビア
120:流体カートリッジ
122:本体
124A~124F:流体チャンバ
126A~126C:分離壁
128A~128F:流体供給ビア
130、130A:領域
132:凹部領域
140:テープ
142:フレキシブル回路
144:吐出ヘッドチップ
146A~146D:流体吐出器
148:青色テープ
134:リブ
150、152:空気抜き溝
154:空気キャビティ
156:底側
158:排気口
160:永久ラベル
163:隆起
170:しるし
172、174:隆起
180A、180B:分離壁
190:アンダーカット領域
192:(点)線
200:蓋
L:長さ
W:幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
図27
図28
図29
図30
図31