(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111997
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】車椅子
(51)【国際特許分類】
A61G 5/12 20060101AFI20220725BHJP
【FI】
A61G5/12 705
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022000497
(22)【出願日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2021007071
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000210986
【氏名又は名称】中央発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514324852
【氏名又は名称】中発テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】金澤 佑生
(72)【発明者】
【氏名】小向 章文
(72)【発明者】
【氏名】石岡 心
(57)【要約】
【課題】 着席者の体重がフットレストに作用したときに、フットレストが大きく変位してしまうことを規制可能な車椅子の一例を開示する。
【解決手段】 車椅子1は、第2連結中心O2が思案線Loに対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する規制部58を備える。このため、フットレスト4Aが使用位置にある状態で、当該フットレスト4Aに大きな荷重が作用しても、当該フットレスト4Aが使用位置から大きく退避位置側にずれることが規制され得る。延いては、当該車椅子1によれば、着席者の体重がフットレスト4Aに作用したときに、フットレスト4Aが大きく変位してしまうことを規制される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が着席可能な椅子部、及び当該椅子部に設けられた複数の車輪を備える車椅子において、
着席者の脚部を支持するためのフットレストと、
前記フットレストを使用位置と当該使用位置からずれた退避位置との間で変位可能に支持する支持アームであって、前記椅子部に対して揺動可能に連結された支持アームと、
前記支持アームを揺動変位させるための操作力を当該支持アームに伝達する第1リンクであって、前記椅子部に対して揺動可能に連結された第1リンクと、
一端側が前記第1リンクに揺動可能に連結され、他端側が前記支持アームに揺動可能に連結された第2リンクとを備え、
前記第1リンクと前記椅子部との連結中心を第1連結中心とし、前記第1リンクと前記第2リンクとの連結中心を第2連結中心とし、前記第2リンクと前記支持アームとの連結中心を第3連結中心とし、前記第1連結中心と前記第3連結中心とを通る仮想直線を思案線としたとき、
前記第2連結中心が前記思案線から離間すると、前記フットレストが前記退避位置側に向けて変位するように構成されており、
前記フットレストが前記使用位置にある状態では、前記第2連結中心が前記思案線に対して一方側の領域に位置し、かつ、前記フットレストが前記退避位置にある状態では、前記第2連結中心が前記思案線に対して他方側の領域に位置し、
さらに、前記フットレストが前記使用位置にある状態において、当該フットレストに荷重が作用したときに、前記第2連結中心が前記思案線に対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する規制部を備える車椅子。
【請求項2】
前記規制部は、前記第1リンク及び前記第2リンクのうち少なくとも一方に接触することにより、前記第2連結中心が前記思案線に対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する請求項1に記載の車椅子。
【請求項3】
前記椅子部の後方側には、前記第1リンクを操作するための操作部が設けられている請求項1又は2に記載の車椅子。
【請求項4】
前記椅子部の前方側には、前記第1リンクを操作するための操作レバーであって、着脱自在な操作レバーが設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車椅子。
【請求項5】
前記椅子部の前方側には、前記第1リンクを操作するための操作レバーであって、伸縮自在な操作レバーが設けられている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の車椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、椅子部及び複数の車輪を備える車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の車椅子では、フットレストがアームを介して椅子部に対して上下方向に変位可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フットレストは、着席者の脚部を支持するため部位である。そこで、本開示は、例えば、着席者の体重がフットレストに作用したときに、フットレストが大きく変位してしまうことを規制可能な車椅子の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
利用者が着席可能な椅子部(2)、及び当該椅子部(2)に設けられた複数の車輪(3A~3D)を備える車椅子は、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0006】
すなわち、当該構成要件は、着席者の脚部を支持するためのフットレスト(4A)と、フットレスト(4A)を使用位置と当該使用位置からずれた退避位置との間で変位可能に支持する支持アーム(51A)であって、椅子部(2)に対して揺動可能に連結された支持アーム(51A)と、支持アーム(51A)を揺動変位させるための操作力を当該支持アーム(51A)に伝達する第1リンク(52)であって、椅子部(2)に対して揺動可能に連結された第1リンク(52)と、一端側が第1リンク(52)に揺動可能に連結され、他端側が支持アーム(51A)に揺動可能に連結された第2リンク(53)と、フットレスト(4A)が使用位置にある状態において、当該フットレスト(4A)に荷重が作用したときに、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)に対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する規制部(58)とを備えることが望ましい。
【0007】
さらに、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)から離間すると、フットレスト(4A)が退避位置側に向けて変位するように構成され、フットレスト(4A)が使用位置にある状態では、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)に対して一方側の領域(以下、使用領域という。)に位置し、かつ、フットレスト(4A)が退避位置にある状態では、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)に対して他方側の領域に位置するように構成されている。
【0008】
なお、第1連結中心(O1)とは、第1リンク(52)と椅子部(2)との連結中心をいう。第2連結中心(O2)とは、第1リンク(52)と第2リンク(53)との連結中心をいう。第3連結中心(O3)とは、第2リンク(53)と支持アーム(51A)との連結中心をいう。思案線(Lo)とは、第1連結中心(O1)と第3連結中心(O3)とを通る仮想直線をいう。
【0009】
これにより、当該車椅子では、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)上に位置したと
き、つまり、第2連結中心(O2)が思案点(死点)に一致したときに、フットレスト(4A)が退避位置から最も離間した位置(以下、最離間位置という。)となる。そして、第2連結中心(O2)が使用領域内に進入するように思案線(Lo)に対して離間すると、フットレスト(4A)が使用位置となる。
【0010】
つまり、当該車椅子に係る使用位置は、最離間位置から退避位置側にずれた位置となる。このため、フットレスト(4A)が使用位置にある状態で、当該フットレスト(4A)に大きな荷重が作用すると、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)に対して離間するとともに、当該フットレスト(4A)が退避位置に近づいていく。
【0011】
これに対して、当該車椅子では、第2連結中心(O2)が思案線(Lo)に対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する規制部(58)を備える。
【0012】
このため、フットレスト(4A)が使用位置にある状態で、当該フットレスト(4A)に大きな荷重が作用しても、当該フットレスト(4A)が使用位置から大きく退避位置側にずれることが規制され得る。延いては、当該車椅子によれば、着席者の体重がフットレスト(4A)に作用したときに、フットレスト(4A)が大きく変位してしまうことを規制される。
【0013】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図10】第2実施形態に係る第1操作レバーを示す図である。
【
図11】第2実施形態に係る第1操作レバーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0016】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示すものではない。
【0017】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された車椅子は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0018】
(第1実施形態)
<1.車椅子の概要>
本実施形態は、折り畳み可能な車椅子に本開示に係る車椅子の一例が適用されたものである。当該車椅子1は、
図1に示されるように、椅子部2、複数の車輪3A~3D、2つのフットレスト4A、4B、及び2つの支持機構5A、5B等を少なくとも備える。
【0019】
椅子部2は利用者が着席可能な部位である。当該椅子部2は、フレーム及びシート布2A等を有して構成されている。フレームは、複数本の金属製パイプにて構成されている。シート布2Aは、当該フレームに装着されて座面等のシート面を構成する。
【0020】
複数の車輪3A~3Dは、フレームに装着されて椅子部2を移動可能に支持する。なお、車輪3A、3Bは、駆動輪を構成するとともに、椅子部2に作用する荷重の多くを支える。車輪3C、3Dは、椅子部2の姿勢を保持するとともに、車椅子1の操舵(方向転換)を補助する。
【0021】
フットレスト4A、4Bは、着席者の脚部を支持するための足置き部である。フットレスト4Aは支持機構5Aにより変位可能に支持されている。フットレスト4Bは支持機構5Bにより変位可能に支持されている。
【0022】
具体的には、支持機構5A、5Bは、フットレスト4A、4Bそれぞれを使用位置(
図2参照)と当該使用位置からずれた退避位置(
図3)との間で変位可能に支持する。本実施形態に係る使用位置は、退避位置より上方に位置する。本実施形態に係る退避位置は、フットレスト4A、4Bが床や大地に接地可能な状態となる位置である。
【0023】
なお、フットレスト4A、4B及び支持機構5A、5Bそれぞれは、車椅子1の左右方向中央に対して略左右対称な構成である。そして、支持機構5Aと支持機構5Bとは、互いに独立して稼働可能である。以下の説明は、主に、支持機構5Aについての説明である。
【0024】
<2.支持機構>
<2.1 支持機構の構成>
支持機構5Aは、
図4に示されるように、少なくとも1本(本実施形態では、2本)の支持アーム51A、51B、第1リンク52、第2リンク53及び基台部54等を有して構成されている。
【0025】
基台部54は、椅子部2のフレームに設けられ、支持アーム51A、51Bに作用する荷重を支える部位である。支持アーム51A、51Bは、フットレスト4Aを使用位置と退避位置との間で変位可能に支持する部材であって、基台部54に揺動可能に連結されている。
【0026】
具体的には、支持アーム51A(以下、第1支持アーム51Aという。)の一端側は、基台部54に回転可能に連結されている。当該第1支持アーム51Aの他端側は、フットレスト4Aの前端側軸部4Cに回転可能に連結されている。
【0027】
支持アーム51B(以下、第2支持アーム51Bという。)の一端側は、第1支持アーム51Aより後方及び下方にずれた位置にて基台部54に回転可能に連結されている。当該第2支持アーム51Bの他端側は、フットレスト4Aの後端側軸部4Dに回転可能に連結されている。
【0028】
これにより、基台部54、第1支持アーム51A、第2支持アーム51B及びフットレスト4Aは、四節リンク機構を構成する。したがって、第1支持アーム51A及び第2支持アーム51Bのうち少なくとも一方の支持アームが揺動すると、これに連動してフットレスト4Aが揺動変位する(
図4~
図6参照)。
【0029】
第1リンク52は、第1支持アーム51A及び第2支持アーム51Bのうちいずれか一方の支持アーム(以下、当該支持アームを駆動アームという。)を揺動変位させるための操作力を駆動アームに伝達する部材である。なお、本実施形態に係る駆動アームは、第1支持アーム51Aである。
【0030】
第1リンク52の一端側は、椅子部2(本実施形態では、基台部54)に対して揺動可能に連結されている。第2リンク53は、一端側が第1リンク52に揺動可能に連結され、他端側が駆動アーム、つまり第1支持アーム51Aに揺動可能に連結された部材である。
【0031】
そして、第1リンク52のうち第2リンク53との連結箇所を挟んで反対側には、操作リンク55が設けられている。操作リンク55は、第1リンク52に操作力を入力させるための部材である。つまり、第1リンク52は、駆動リンクとして機能する。なお、本実施形態では、操作リンク55と第1リンク52とは一体的に揺動する。
【0032】
操作リンク55には、
図7に示されるように、第1操作レバー56及び第2操作レバー57が直接的又は間接的に連結されている。第1操作レバー56及び第2操作レバー57は、利用者により操作される部材である。
【0033】
第1操作レバー56は、椅子部2の前方側(本実施形態では、車輪3Aより前方)に配置されている。第2操作レバー57は、椅子部2の後方側に配置されている。そして、いずれかの操作レバーが操作されたときに、操作力が第1リンク52に入力される。
【0034】
なお、本実施形態に係る第1操作レバー56は、ボルト56A(
図2参照)等の締結具にて操作リンク55に直接的に固定されている。このため、利用者は、ボルト56Aを着脱することにより、操作リンク55に対して第1操作レバー56を容易に着脱することができる(
図8参照)。
【0035】
本実施形態に係る第2操作レバー57は、
図8に示されるように、プッシュプルワイヤー式のワイヤー装置を介して間接的に操作リンク55に連結されている。なお、第1操作レバー56が取り外された状態であっても、利用者は、第2操作レバー57にて第1リンク52を操作できる。
【0036】
<2.2 支持機構の詳細>
<用語の定義(
図9A参照)>
第1連結中心O1:第1リンク52と椅子部2との連結中心
第2連結中心O2:第1リンク52と第2リンクとの連結中心
第3連結中心O3:第2リンクと支持アーム51Aとの連結中心
思案線Lo:第1連結中心O1と第3連結中心O3とを通る仮想直線
<支持機構の作動>
駆動リンク、つまり第1リンク52が揺動すると、
図9A~
図9(C)に示されるように、第1支持アーム51Aが揺動する。このとき、第2連結中心O2が思案線Loから離間すると、フットレスト4Aが退避位置側に向けて変位する。なお、第2連結中心O2が思案線Loに対して退避位置側、つまり思案線Lo対して下側に変位しときも、フットレスト4Aが退避位置側に向けて変位する。
【0037】
そして、フットレスト4Aが使用位置にある状態では、第2連結中心O2が思案線Loに対して一方側(本実施形態では、上側)の領域、つまり使用領域に位置し、かつ、フットレスト4Aが退避位置にある状態では、第2連結中心O2が思案線Loに対して他方側(本実施形態では、下側)の領域に位置する。
【0038】
ところで、フットレスト4Aが使用位置にある状態において、当該フットレスト4Aに荷重が作用すると、第2連結中心O2は、現時の位置から更に思案線Loから離間する向き(本実施形態では、上向き)に変位しようとする。
【0039】
つまり、フットレスト4Aが使用位置にある状態においては、第2連結中心O2は、思案線Loに対して一方側の領域に位置する。当該フットレスト4Aに荷重が作用すると、第2連結中心O2が思案線Loから更に離間しようとするため、フットレスト4Aが退避位置側に向けて変位しようとする。
【0040】
そこで、本実施形態に係る支持機構5Aでは、規制部58が設けられている。規制部58は、フットレスト4Aが使用位置にある状態において、当該フットレスト4Aに荷重が作用したときに、第2連結中心O2が思案線Loに対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する。
【0041】
具体的には、規制部58は、第1リンク52及び第2リンク53のうち少なくとも一方(本実施形態では、第1リンク52)に接触することにより、第2連結中心O2が思案線Loに対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する。
【0042】
本実施形態に係る規制部58は、第1支持アーム51Aのうち基台部54との箇所に設けられている。なお、本実施形態に係る使用位置は、規制部58と第1リンク52とが接触した状態、つまり、第1リンク52の変位が規制された位置である。
【0043】
因みに、第2連結中心O2が思案(中立)位置にあるとき、つまり、
図9(B)に示されるように、第2連結中心O2が思案点(死点)と一致するとき、フットレスト4Aが最も高い位置となる。したがって、本実施形態に係る使用位置は、当該最も高い位置より僅かに退避位置側にずれた位置となる。
【0044】
<3.本実施形態に係る車椅子の特徴(
図9A~
図9C参照)>
本実施形態に係る車椅子1では、第2連結中心O2が思案線Lo上に位置したとき、つまり、第2連結中心O2が思案点に一致したときに、フットレスト4Aが退避位置から最も離間した位置(以下、最離間位置という。)となる。そして、第2連結中心O2が使用領域内に進入するように思案線Loに対して離間すると、フットレスト4Aが使用位置となる。
【0045】
つまり、当該車椅子1に係る使用位置は、最離間位置から退避位置側にずれた位置となる。このため、フットレスト4Aが使用位置にある状態で、当該フットレスト4Aに大きな荷重が作用すると、第2連結中心O2が思案線Loに対して離間するとともに、当該フットレスト4Aが退避位置に近づいていく。
【0046】
これに対して、当該車椅子1では、第2連結中心O2が思案線Loに対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する規制部58を備える。
【0047】
このため、フットレスト4Aが使用位置にある状態で、当該フットレスト4Aに大きな荷重が作用しても、当該フットレスト4Aが使用位置から大きく退避位置側にずれることが規制され得る。延いては、当該車椅子1によれば、着席者の体重がフットレスト4Aに作用したときに、フットレスト4Aが大きく変位してしまうことを規制される。
【0048】
本実施形態では、第1操作レバー56又は第2操作レバー57(ワイヤー装置)の作動を規制することにより、フットレスト4Aの変位を規制する構成ではない。したがって、例えば、ワイヤー装置に規制機構を設けた構成に比べて、当該車椅子1は、安全性及び信頼性の点で優れている。
【0049】
規制部58は、第1リンク52及び第2リンク53のうち少なくとも一方に接触することにより、第2連結中心O2が思案線Loに対して予め決められた寸法を超えて離間することを規制する。これにより、当該車椅子1によれば、確実にフットレスト4Aが大きく変位してしまうことを規制される。
【0050】
椅子部2の後方側には、第1リンク52を操作するための第2操作レバー57が設けられている。これにより、車椅子1の後方から補助する補助者が、車椅子1の前方側に移動することなく、フットレスト4Aの変位させることが可能となる。
【0051】
椅子部2の前方側に設けられた第1操作レバー56は、着脱自在である。これにより、第1操作レバー56が不要な場合には、当該第1操作レバー56が取り外すことができる。
【0052】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1操作レバー56として、
図10に示されるように、伸縮自在な操作レバー59を用いた例である。具体的には、操作レバー59は、
図11に示されるように、外パイプ59A、内パイプ59B及び係止装置59C等を有して構成されている。
【0053】
外パイプ59Aは、操作リンク55に固定される。内パイプ59Bは、外パイプ59A内にスライド可能に挿入されている。係止装置59Cは、外パイプ59Aに設けられ、当該外パイプ59Aに対する内パイプ59Bのスライド変位を規制する。
【0054】
すなわち、係止装置59Cは、プランジャ(本実施形態では、鋼球)59E、バネ59F、及びホルダ部59G等を有する。プランジャ59Eは、内パイプ59Bの外周に設けられた穴又は凹部(本実施形態では、穴59D)に嵌り込み可能な部材である。
【0055】
バネ59Fは、プランジャ59Eを内パイプに向けて押圧する弾性体である。ホルダ部59Gは、プランジャ59Eを変位可能に保持する。これにより、内パイプ59Bがスライド変位してプランジャ59Eの位置が穴59Dの位置に一致したときに、プランジャ59Eが穴59Dに嵌り込むため、内パイプ59Bの変位が規制される。
【0056】
そして、内パイプ59Bをスライドさせる力が大きくなると、プランジャ59Eが穴59Dから離脱するため、内パイプ59Bのスライド変位を規制する力が小さくなり、内パイプ59Bが容易にスライド可能な状態となる。
【0057】
なお、外パイプ59Aの内周及び内パイプ59Bの外周には、互いにスライド可能に嵌合する凹凸条が設けられている。これにより、内パイプ59Bは、外パイプ59Bの中心軸線周りに回転することが規制される。このため、内パイプ59Bがスライド変位した際に、プランジャ59Eが確実に穴59Dに嵌り込むことが可能となる。
【0058】
本実施形態では、フットレスト4A、4Bそれぞれが退避位置(
図3参照)にあるとき、つまり利用者が椅子部2に乗降する際においては、第1操作レバー56(以下、操作レバー59と記す。)は、使用位置に比べて前方側に位置する。
【0059】
このため、利用者が椅子部2に乗降する際に、操作レバー59が障害となって乗降性が悪化するおそれがある。しかし、本実施形態に係る操作レバー59は伸縮自在であるので、利用者は、乗降時に操作レバー59を縮小させることができる。
【0060】
延いては、操作レバー59が乗降時に障害になることが防止され得る。なお、利用者が操作レバー59を操作する際に、操作レバー59が伸張した状態であれば、操作レバー59の操作力が軽減される。
【0061】
つまり、本実施形態によれば、乗降性の悪化を抑制しながら、第1操作レバー56(操作レバー59)を操作する際の操作力が過度に大きくなることを防止でき得る。
【0062】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係る第2操作レバー57は、プッシュプルワイヤー式のワイヤー装置を介して操作リンク55に連結されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2操作レバー57が連結ロッド等にて構成されたリンク装置、2本のプルワイヤーを有するワイヤー装置、又は1本のプルワイヤー及びリターンスプリングを有するワイヤー装置等であってもよい。
【0063】
上述の実施形態に係る操作リンク55は、第1操作レバー56又は第2操作レバー57の手動操作力が入力される構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、電動モータ等の電動式アクチュエータによる操作力が入力される構成であってもよい。
【0064】
上述の実施形態では、第2連結中心O2が思案線Lo対して下側に変位しとき、フットレスト4Aが退避位置側に向けて変位する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2連結中心O2が思案線Lo対して下側に変位しとき、フットレスト4Aが退避位置側に向けて変位する構成であってもよい。
【0065】
上述の実施形態に係る規制部58は、第1リンク52及び第2リンク53のうち少なくとも一方に接触することにより、第2連結中心O2の離間を規制した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第1リンク52又は第2リンク53に被当接部が設けられ、当該被当接部に規制部58が接触する構成であってよい。
【0066】
上述の実施形態に係る規制部58は、第1支持アーム51Aのうち基台部54との箇所に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、基台部54に規制部58が設けられた構成であってもよい。
【0067】
上述の実施形態に係る支持機構5A、5Bは、フットレスト4A、4Bを上下方向に変位可能に支持する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、フットレスト4A、4Bを水平方向に変位可能に支持する支持機構5A、5Bであってよい。
【0068】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1… 車椅子 2…椅子部 3A~3D… 車輪 4A、4B…フットレスト
5A、5B… 支持機構 13C…第1操作レバー
51A、51B… 支持アーム 52…第1リンク 53… 第2リンク
54… 基台部 55…操作リンク 56… 第1操作レバー
57… 第2操作レバー 58…規制部