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特開2022-111999繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022111999
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/292 20060101AFI20220725BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20220725BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20220725BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
D06M13/292
D06M13/17
D06M15/53
D06M13/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002045
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021007358
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021037330
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】関藤 正剛
(72)【発明者】
【氏名】谷川 博行
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC07
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA39
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】繰り返し透水性と制電性とを両立できる透水性付与剤を提供する。
【解決手段】炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)及び下記一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する透水性付与剤であって、下記一般式(1)において、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/m)は0~0.5であり、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)の含有量が8~39重量%、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量が20~80重量%である透水性付与剤。
R-[(AO)-(CHCHO)-H] (1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)及び下記一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する繊維用透水性付与剤であって、
下記一般式(1)において、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/m)は0~0.5であり、
透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)の含有量が8~39重量%、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量が20~80重量%である繊維用透水性付与剤。
R-[(AO)-(CHCHO)-H] (1)
[一般式(1)中、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。mは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは、価数を表し、3~6の整数である。]
【請求項2】
一般式(1)において、nは、0~20の数である請求項1に記載の繊維用透水性付与剤。
【請求項3】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の多価活性水素化合物が、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びソルビトールからなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の繊維用透水性付与剤。
【請求項4】
さらに、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)を除くアニオン界面活性剤(C1)、及び前記多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を除くノニオン界面活性剤(C2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(C)を含み、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく界面活性剤(C)の含有量が12~70重量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の繊維用透水性付与剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の繊維用透水性付与剤が疎水性繊維に付着した繊維であって、前記透水性付与剤の不揮発性成分の重量割合が、前記疎水性繊維の重量に基づいて、0.15~2重量%である繊維。
【請求項6】
請求項5に記載の繊維を用いた不織布。
【請求項7】
請求項6に記載の不織布を用いた吸水性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維用透水性付与剤、繊維、不織布及び吸水性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙おむつや生理用品等の吸収性物品は、液透過性のトップシートと液不透過性のバックシートとの間に、綿状パルプ、高吸収性高分子物質等からなる吸収体を配置した構成になっている。
吸収性物品のトップシートとしては、例えば短繊維等の繊維を用いて製造した不織布を用いることがある。当該不織布は、短繊維等の繊維を開繊機やカード機に通過させる工程を行って製造されるのが一般的であり、前記繊維としては、ポリエステルやポリプロピレンを材料とするものが用いられることが多い。そのため、前記繊維を未処理(処理剤等を付着させない状態)で、開繊機やカード機に通過させると、静電気が発生して、カード機に巻き付く等の問題が生じることがあった。
このような問題を考慮し、従来から、ポリエステルやポリプロピレン等を材料とする繊維には、繊維処理剤を付着させることが行われている。このような繊維処理剤としては、例えばアルキルリン酸エステル塩を含む処理剤等が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5796922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維処理剤としてアルキルリン酸エステル塩を含む処理剤を用いることにより、繊維を開繊機やカード機を通過させる工程において静電気の発生を抑制し、制電性を高めることができる。しかしながら、アルキルリン酸エステル塩は水への溶解度が高いため、アルキルリン酸エステル塩を含む処理剤を付着させた繊維を用いて製造した不織布を吸収性物品のトップシートとして用いた場合、アルキルリン酸エステル塩の脱落が起こりやすくなり、繰り返し透水性(体液を繰り返し吸収させたときの透水性)が不充分であるという問題があった。
【0005】
繰り返し透水性を良好なものとするためには、耐久親水性(所定の目的に使用される合成繊維に要求される親水性をどれだけ長く持続できるかを示す性能)の高い低HLBのノニオン界面活性剤を含む処理剤を用いることが考えられる。しかしながら、低HLBのノニオン界面活性剤を含む処理剤を用いると漏洩抵抗が高くなり制電性が充分ではなくなったり、粘着性が高くなることがある。つまり、従来の処理剤では、繰り返し透水性と制電性との両立が難しく、改善が求められていた。
本発明の課題は、繰り返し透水性と制電性とを両立できる繊維用透水性付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)及び下記一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する透水性付与剤であって、下記一般式(1)において、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/m)は0~0.5であり、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づく、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)の含有量が8~39重量%、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量が20~80重量%である繊維用透水性付与剤;前記繊維用透水性付与剤が疎水性繊維に付着した繊維であって、前記透水性付与剤の不揮発性成分の重量割合が、前記疎水性繊維の重量に基づいて、0.15~2重量%である繊維;前記繊維を用いた不織布;前記不織布を用いた吸水性物品である。
R-[(AO)-(CHCHO)-H] (1)
[一般式(1)中、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。mは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは、価数を表し、3~6の整数である。]
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維用透水性付与剤が付着した繊維を使用した不織布は、繰り返し透水性と制電性とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[繊維用透水性付与剤]
本発明の繊維用透水性付与剤(以下、「透水性付与剤」ともいう)は炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)及び下記一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する。
R-[(AO)-(CHCHO)-H] (1)
[一般式(1)中、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。mは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは、価数を表し、3~6の整数である。]
【0009】
炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)は、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸モノエステル金属塩および炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸ジエステル金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である。炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)としては、好ましくは炭素数8~18のアルキル基を有するアルコールのリン酸モノエステル金属塩であり、より好ましくは炭素数10~16のアルキル基を有するアルコールのリン酸モノエステル金属塩である。アルキル基としては、直鎖、分岐のいずれであってもよい。以下において「炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)」を「リン酸エステル金属塩(A)」または「(A)成分」と呼ぶことがある。
【0010】
リン酸エステル金属塩(A)の具体例としては、オクチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オクチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、2-エチルヘキシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、デシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、イソデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、ドデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、トリデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、イソトリデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、テトラデシルアルコール(ミリスチルアルコール)のリン酸モノエステルカリウム塩、ヘキサデシルアルコールのリン酸モノエステルナトリウム塩、オクタデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、イソオクタデシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、及びヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩等が挙げられる。これらのリン酸エステル金属塩は単独でも二種以上を併用してもよい。またリン酸エステル金属塩(A)として、リン酸ジエステル金属塩を用いてもよい。
制電性に優れるという観点から、リン酸エステル金属塩(A)としては、2-エチルヘキシルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、ミリスチルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩、イソステアリルアルコールのリン酸モノエステルカリウム塩及びヤシ油アルコールのリン酸モノエステルカリウム塩から選ばれる少なくとも一種以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の透水性付与剤において、リン酸エステル金属塩(A)の含有量は、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づき、8~39重量%である。リン酸エステル金属塩(A)の含有量が、8~39重量%であることにより、繰り返し透水性と制電性とを両立することができる。リン酸エステル金属塩(A)の含有量が8重量%未満であると制電性が不充分となり、当該含有量が39重量%を超えると繰り返し透水性が不充分となる。
リン酸エステル金属塩(A)の含有量は、制電性と繰り返し透水性との両立の観点から、好ましくは10~36重量%であり、より好ましくは15~34重量%である。本発明における不揮発性成分とは、試料1gをガラス製シャーレ中で蓋をせず、130℃45分間循風乾燥機で加熱乾燥した後の残渣である。
【0012】
本発明の透水性付与剤は、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を含有する。以下において「一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)」を「多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)」または「(B)成分」と呼ぶことがある。
R-[(AO)-(CHCHO)-H] (1)
【0013】
一般式(1)において、Rは、多価活性水素化合物から全ての活性水素を除いた残基を表す。AOは、炭素数3又は4のアルキレンオキシ基を表す。mは、AOの付加モル数を表し、4~50の数である。nは、CHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。pは、価数を表し、3~6の整数である。
【0014】
多価活性水素化合物としては価数が3~6の多価アルコール、糖類、多価カルボン酸及び多価アミン等が挙げられる。
価数が3~6の多価アルコールのうち、3価の多価アルコールとしては、グリセリン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、ペンタメチルグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ひまし油及び硬化ひまし油等が挙げられる。
4価の多価アルコールとして、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、リボース、アラビノース、キシロース及びリキソース等が挙げられる。
5価の多価アルコールとして、トリグリセリン、アラビトール、キシリトール、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アロース、グロース、イドース、タロース及びクエルシトール等が挙げられる。
6価の多価アルコールとして、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、ガラクチトール、マンニトール、アリトール、イジトール、タリトール及びイノシトール等が挙げられる。
【0015】
価数が3~6の多価アルコールとしては、ひまし油及び硬化ひまし油以外の動植物油脂等も挙げられる。
【0016】
多価アルコールとしては、透水性が優れるという観点から、グリセリン、トリメチロールプロパン、ひまし油、硬化ひまし油、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトールが好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール及びペンタエリスリトールが更に好ましい。
【0017】
糖類としては、単糖類等が挙げられる。
【0018】
価数が3~6の多価カルボン酸のうち、3価のカルボン酸としては、1,2,3-プロパントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸、トリマー酸(C18不飽和カルボン酸3量体)及びトリメリット酸等が挙げられる。
【0019】
4価のカルボン酸としては、エチレンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸及びブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
5価のカルボン酸としては、1,2,3,4,5-シクロヘキサンペンタカルボン酸、ベンゼンペンタカルボン酸及び1,2,4,5,8-ナフタレンペンタカルボン酸等が挙げられる。
6価のカルボン酸としては、シクロヘキサンヘキサカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸及び1,2,3,4,5,7-ナフタレンヘキサカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
価数が3~6の多価アミンのうち、3価のアミンとしては、1,2,3-プロパントリアミン、ヘキサメチレントリアミン、1,3,5-ベンゼントリアミン及びメラミン等が挙げられる。
4価のアミンとしては、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、トリエチレンテトラミン及びピリミジン-2,4,5,6-テトラアミン等が挙げられる。
【0022】
多価活性水素化合物は、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも2種の活性水素基を化合物中に含んでいてもよい。上記活性水素基を2種以上含む化合物として、クエン酸、グリセリン酸及びアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸及びグルタミン酸等)等が挙げられる。
【0023】
多価活性水素化合物としては、価数が3~6の多価アルコールと脂肪酸とが部分エステルを形成したものであってもよい。
価数が3~6の多価アルコールとしては、上述した化合物等が挙げられる。
脂肪酸としては、炭素数8~24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)]等が挙げられる。
【0024】
一般式(1)におけるRが、価数が3~6の多価アルコールと脂肪酸との部分エステルのアルキレンオキサイド付加物から全ての活性水素を除いた残基である場合、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のエステル化度は50%以下が好ましい。
エステル化度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果から自動分析法により求めたモノ、ジ及びトリエステル体のピーク面積(積分面積)をもとに下記数式(1)から算出できる。
【0025】
【数1】
【0026】
GPCの条件は以下のとおりである。
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0027】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の多価活性水素化合物としては、透水性に優れるという観点から、価数が3~6の多価アルコール、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも2種の活性水素基を含む化合物及び動植物油脂等が好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ソルビトール、グルタミン酸、ひまし油及び硬化ひまし油からなる群より選ばれる少なくとも一種であることがより好ましく、グリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビトール及びペンタエリスリトールからなる群より選ばれる化合物であることが特に好ましい。
【0028】
一般式(1)におけるAOは、炭素数3~4のアルキレンオキシ基を表し、具体的には、プロピレンオキシ基(以下、POと略記)又はブチレンオキシ基(以下、BOと略記)である。POとしては、直鎖プロピレンオキシ基でも分岐プロピレンオキシ基(1-メチルエチレンオキシ基、2-メチルエチレンオキシ基)でもよい。BOとしては、直鎖ブチレンオキシ基および分岐ブチレンオキシ基(1-メチルプロピレンオキシ基、2-メチルプロピレンオキシ基、3-メチルプロピレンオキシ基、1,2-ジメチルエチレンオキシ基、1,1’-ジメチルエチレンオキシ基、および2,2’-ジメチルエチレンオキシ基等が挙げられる。AOは、POであることが好ましい。なお、AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。
【0029】
一般式(1)におけるmは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]1個当たりのAOの付加モル数を表す。mは、取り扱い性の観点から、4~50の数であり、好ましくは8~40であり、より好ましくは12~30である。mは、整数であるとは限らず、小数の場合もある。
【0030】
O中に2種以上のアルキレンオキシ基が含まれる場合、AO中のPO及びBOは、ブロック状またはランダム状に付加してもよい。「ブロック状」とは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]において、1種のアルキレンオキシ基が2個以上連続している態様をいう。
【0031】
一般式(1)におけるCHCHOは、エチレンオキシ基(EO)を表す。
一般式(1)におけるnは、Rに結合している基[(AO)-(CHCHO)-H]1個当たりのCHCHOの付加モル数を表し、0~25の数である。透水性に優れるという観点から、nは好ましくは0~20の数であり、より好ましくは0~10であり、特に好ましくは0~8である。nは、整数であるとは限らず、小数の場合もある。
【0032】
一般式(1)における、AOとCHCHOとは、ブロック状に付加していることが好ましい。
【0033】
また、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)においては、AO又はCHCHOのいずれかが末端に位置していてもよいが、透水性付与剤の親水性及び耐久性の観点から、CHCHOが末端に位置していることが好ましい。
【0034】
一般式(1)において、AOとCHCHOとの付加モル数の比率(n/m)は0~0.5である。付加モル数の比率は、好ましくは0.02~0.3であり、より好ましくは0.04~0.2である。
なお、AOとCHCHOとの付加モル数の比率は、理論計算から算出される。
【0035】
一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のAOとCHCHOの付加モル数は、(B)をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で分析することにより求めることができる。
この場合の、GPCの測定条件は以下のとおりである。
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0036】
また、一般式(1)で表される多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)のAOの付加モル数mとCHCHOの付加モル数nは、(B)の原料のモル比及び、多価活性水素化合物の活性水素の数等から算出することができる。
例えば、原料として、グリセリン(活性水素の数は3)、プロピレンオキサイド(PO)及びエチレンオキサイド(EO)を、モル比(グリセリン:PO:EO=1:90:20)で用いた場合、グリセリン(3価の活性水素化合物)から全ての活性水素を除いた残基に、[(PO)-(EO)-H]で表される基が3個結合した化合物が得られ(p=3)、当該化合物1分子中の、POの付加モル数の合計は90でEOの付加モル数の合計は20である。
この化合物の、[(PO)-(EO)-H]で表される基1個当たりの、PO付加モル数mは、(PO付加モル数の合計/p)により算出でき、EO付加モル数nは(EO付加モル数の合計/p)により算出できる。
【0037】
本発明の透水性付与剤において、多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)としては、透水性に優れるという観点から、グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物[一般式(1)中の、mが30、nが6.67、pが3の化合物]、グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物[一般式(1)中の、mが28.4、nが7.3、pが3の化合物]、トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物[一般式(1)中の、mが22.3、nが3.67、pが3の化合物]、ペンタエリスリトールPO104モル付加物[一般式(1)中の、mが26、nが0、pが4の化合物]、ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物[一般式(1)中の、mが26、nが4.8、pが4の化合物]、ペンタエリスリトールのBO80モルEO12モルブロック付加物(mが20,nが3,pが4の化合物)、トリメチロールプロパンのPO60モル付加物(mが20、nが0、pが3の化合物)及びソルビトールのPO9モルBO0.84モルPO78モルブロック付加物(mが14.64、nが0、pが6の化合物)等が好ましい。
【0038】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は、繰り返し透水性と制電性の両立の観点から、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づいて、20~80重量%である。多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量が20重量%未満であると、繰り返し透水性が不充分となり、当該含有量が80重量%を超えると制電性が不充分となることがある。
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の含有量は好ましくは30~70重量%であり、より好ましくは30~65重量%である。
【0039】
多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、公知の方法等で製造でき、例えば、上記多価アルコールに、炭酸カリウム又は炭酸ナトリウム等を塩基性触媒として、アルキレンオキサイドを付加することにより製造できる。
【0040】
本発明の透水性付与剤は、(A)成分および(B)成分以外の成分を含みうる。このような成分としては、(A)成分および(B)成分以外の界面活性剤(C)、炭素数2~10の多価アルコール(D)、および添加剤(E)などがあげられる。以下において「界面活性剤(C)」を「(C)成分」ともいう。
(C)成分としては、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)を除くアニオン界面活性剤(C1)、及び多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を除くノニオン界面活性剤(C2)及びベタイン型両性界面活性剤(C3)等が挙げられる。これらは1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
アニオン界面活性剤(C1)としては、ジアルキルスルホサクシネート塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし2種以上を用いてもよい。
ジアルキルスルホサクシネート塩としては、炭素数6~18のアルキル基を有するものが好ましい。アルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよく、2個のアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。アルキルスルホン酸塩としては、炭素数6~20のアルキル基を有するものが好ましい。アルキル基としては、直鎖、分岐のいずれでもよい。
【0042】
アニオン界面活性剤(C1)としては、初期透水性に優れるという観点からジアルキルスルホサクシネート塩が好ましい。ジアルキルスルホサクシネート塩の具体例としては、ジ-2エチルヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩、ジドデシルスルホサクシネートナトリウム塩、及び1-オクチル2-ヘキサデシルスルホサクシネートカリウム塩等が挙げられるが、これらのうち、ジ-2エチルヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩が好ましい。
【0043】
ノニオン界面活性剤(C2)としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C21)、多価アルコールとポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル(C22)、ポリオキシアルキレングリコールジエステル(C23)、多価アルコールと脂肪酸とのエステル(C24)、アミド基及び/又はアミノ基を有するノニオン性界面活性剤(C25)等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤(C2)は、単独でも二種以上を併用してもよい
【0044】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C21)としては、1価アルコールにアルキレンオキサイドが付加したものが挙げられる。1価アルコールのアルキル基の炭素数は、好ましくは1~18であり、より好ましくは6~16である。
アルキル基の炭素数は分布があってもよく、2種類以上の1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物が混合されていてもよい。アルキレンオキサイドとしては、EO、PO、及びこれらがブロック重合又はランダム重合したものが挙げられる。これらのうち好ましいのはEOである。また、アルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15である。
【0045】
多価アルコールとポリオキシアルキレン付加物と脂肪酸とのエステル(C22)としては、上記多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)に該当しない化合物であって、例えば、多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C22-1)、多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(C22-2)が挙げられる。
【0046】
多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C22-1)を構成する多価アルコールの具体例としては、炭素数3~6の脂肪族多価(3~6価)アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン等)が挙げられる。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C22-1)を構成する脂肪酸の具体例としては、炭素数8~24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、及び脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)]が挙げられる。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C22-1)を構成するアルキレンオキサイド(AO)の具体例として、炭素数2~12のAO(EO、PO、BO)等が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
多価アルコールと脂肪酸とのエステルのアルキレンオキサイド付加物(C22-1)の具体例としては、グリセリン牛脂脂肪酸エステルのEO15モル付加物、トリメチロールプロパントリオレイン酸エステルのEO20モル付加物、ペンタエリスリトールのテトラオレイン酸エステルのEO30モル付加物、ソルビタンモノオレイン酸エステルのEO20モル付加物、ソルビタンテトラオレイン酸エステルのEO20モル付加物、ひまし油のEO10モル付加物、ひまし油のEO25モル付加物、ひまし油のEO43モル付加物、及び硬化ひまし油のEO43モル付加物及びグリセリンとひまし油脂肪酸とのエステルのEO25モル付加物が挙げられる。これらのうち、ひまし油のEO10モル付加物及びひまし油のEO25モル付加物が好ましい。
【0047】
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(C22-2)を構成する「多価アルコール」、「アルキレンオキサイド」及び「脂肪酸」としては、上記(C22-1)で説明したものと同様のものが挙げられる。
多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物と脂肪酸とのエステル(C22-2)の具体例としては、ひまし油のEO付加物のステアリン酸エステル、硬化ひまし油のEO付加物のオレイン酸エステル、ひまし油EO付加物の牛脂脂肪酸エステル、硬化ひまし油のEO付加物とマレイン酸とステアリン酸とのポリエステル及び硬化ひまし油のEO付加物とセバシン酸とステアリン酸とのポリエステル等が挙げられる。
【0048】
ポリオキシアルキレングリコールジエステル(C23)としては、ポリオキシアルキレングリコールと脂肪酸とのジエステル(C23-1)等が挙げられる。
ポリオキシアルキレングリコールと脂肪酸とのジエステル(C23-1)を構成するアルキレンオキサイドの具体例としては、炭素数2~12のAO(EO、PO及びBO)等が挙げられる。AOは、1種または2種以上の併用であってもよい。なお、2種以上のAOを併用する場合は、ブロック付加でもランダム付加でもよい。
ポリオキシアルキレングリコールと脂肪酸とのジエステル(C23-1)を構成する脂肪酸の具体例として、炭素数8~24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸等)、動植物油[(ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブ油、米糠油、米胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、ひまし油、硬化ひまし油、牛脂、硬化牛脂及び豚脂等)]脂肪酸が挙げられる。
ポリオキシアルキレングリコールと脂肪酸とのジエステル(C23-1)としては、ポリオキシエチレングリコールジオレートが好ましく、ポリオキシエチレングリコール9モル付加物のジオレートがより好ましい。
【0049】
多価アルコールと脂肪酸とのエステル(C24)を構成する多価アルコールの具体例としては、炭素数3~6の脂肪族多価(3~6価)アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン等)が挙げられる。
多価アルコールと脂肪酸とのエステル(C24)を構成する脂肪酸の具体例として、炭素数8~24の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和カルボン酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、米胚芽油脂肪酸、菜種油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸、ひまし油脂肪酸及び硬化ひまし油脂肪酸等)]が挙げられる。
多価アルコールと脂肪酸とのエステル(C24)の具体例としては、ヤシ油脂肪酸ソルビタンエステル、オレイン酸のソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0050】
アミド基及び/又はアミノ基を有するノニオン性界面活性剤(C25)としては、例えば脂肪酸と水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とのアミド(C25-1)、前記アミドの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)、並びに、脂肪族アミンの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物であってアミノ基を有する化合物(C25-3)等が挙げられる。
【0051】
脂肪酸と水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とのアミド(C25-1)を構成する脂肪酸としては、炭素数6~24の脂肪酸が好ましい。炭素数6~24の脂肪酸としては、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサン酸、ドコサン酸及びテトラコン酸等が挙げられる。また、炭素数6~24の脂肪酸としては、天然油脂由来の脂肪酸[植物油脂由来の脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、米糠油脂肪酸、米胚芽油脂肪酸、菜種油脂肪酸、ひまし油脂肪酸及び水添ひまし油脂肪酸等)ならびに動物油脂由来の脂肪酸(牛脂脂肪酸、水添牛脂脂肪酸、及び豚脂脂肪酸等)等]を用いてもよい。
天然油脂由来の脂肪酸は、一般に、炭素数が8、10、12、14、16、18、20、22、24の飽和脂肪酸及び/又は炭素数が16、18、20、22の不飽和脂肪酸の混合物である。
炭素数6~24の脂肪酸のうち、肌への安全性の観点から好ましいのは、植物油脂由来の脂肪酸であり、更に好ましいのはヤシ油脂肪酸(オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸等の混合物)である。
【0052】
脂肪酸と水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とのアミド(C25-1)を構成する水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物としては、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等が挙げられる。
【0053】
脂肪酸と水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とのアミド(C25-1)は、上記の炭素数6~24の脂肪酸[又は前記の炭素数6~24の脂肪酸と炭素数1~4のアルコール(メタノール等)とのエステル]、及び、上記の水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とを公知の方法で反応させることにより、製造できる。
脂肪酸と水酸基及びアミノ基を有する炭素数2~10の化合物とのアミド(C25-1)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記アミド[(C25-1)のアミド]の炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)は、前記アミド(C25-1)が有する水酸基に、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる化合物であることが好ましい。
前記アミドの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)を構成する炭素数2~4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、1,2-又は1,3-プロピレンオキサイド及び1,2-、1,3-、1,4-又は2,3-ブチレンオキサイド等が挙げられる。これらのうち、エチレンオキサイドが好ましい。
前記アミドの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)における炭素数2~4のアルキレンオキサイドの付加モル数は、2~20モルであることが好ましい。
【0055】
前記アミドの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)は、前記アミド(C25-1)に、公知の方法で炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加させる方法により、製造できる。
前記アミドの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物(C25-2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
脂肪族アミンの炭素数2~4のアルキレンオキサイド付加物であってアミノ基を有する化合物(C25-3)[以下「アミノ基を有する化合物(C25-3)」]を構成する脂肪族アミンとしては炭素数6~24の脂肪族アミンが好ましい。炭素数6~24の脂肪族アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、及び、水添牛脂アミン等が挙げられる。これらの脂肪族アミンのうち、好ましいのは、水添牛脂アミンである。
【0057】
アミノ基を有する化合物(C25-3)における炭素数2~4のアルキレンオキサイドとしては、上記(C25-2)の説明で例示した炭素数2~4のアルキレンオキサイドを用いることができる。炭素数2~4のアルキレンオキサイドのうち好ましいのは、エチレンオキサイドである。
アミノ基を有する化合物(C25-3)における炭素数2~4のアルキレンオキサイドの付加モル数は、2~20モルであることが好ましい。
【0058】
アミノ基を有する化合物(C25-3)は、上記の脂肪族アミンに、公知の方法で、上記の炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加させる方法により製造できる。
アミノ基を有する化合物(C25-3)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ベタイン型両性界面活性剤(C3)としては、アルキル基および/またはアルケニル基を有するベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。アルキル基としては炭素数6~24のアルキル基(ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、イコシル基、ドコシル基及びテトラコシル基)等が挙げられる。
アルケニル基としては炭素数6~24のアルケニル基(ヘキセニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基及びイコセニル基)等が挙げられる。
【0060】
透水性付与剤の乳化性が優れるという観点から、界面活性剤(C)としては、炭素数8~18の脂肪族アルコールのリン酸エステル金属塩(A)を除くアニオン界面活性剤(C1)、及び前記多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を除くノニオン界面活性剤(C2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤が好ましい。
【0061】
透水性付与剤中の界面活性剤(C)の含有量は透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは0~70重量%であり、より好ましくは12~70重量%であり、さらに好ましくは20~65重量%である。
【0062】
本発明の透水性付与剤は、炭素数2~10の多価アルコール(D)[以下「(D)成分」ともいう]を含有していてもよい。
(D)成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びソルビトール等が挙げられる。
本発明の透水性付与剤は、炭素数2~10の多価アルコール(D)を併用することで、透水性が向上する傾向がある。このため、炭素数2~10の多価アルコール(D)を併用する場合は、透水性付与剤の使用量が少ない場合であっても、優れた透水性を発揮できる傾向がある。
【0063】
本発明の透水性付与剤が前記の多価アルコール(D)を含有する場合、多価アルコール(D)の重量割合は、透水性向上の観点から、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づいて、好ましくは5~50重量%である。
【0064】
本発明の透水性付与剤は、必要に応じて上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分以外の成分として添加剤(E)を含有してもよい。
添加剤(E)としては、溶剤(水及び有機溶剤等。好ましくは水)ワックス等の潤滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤及び香料等が挙げられる。
本発明の透水性付与剤中の添加剤(E)の含有量は、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量に基づいて、好ましくは5重量%以下であり、更に好ましくは0.1~1重量%である。
【0065】
本発明の透水性付与剤が、(A)成分、(B)成分とともに(C)成分を含む場合、前記(A)成分と前記(B)成分と前記(C)成分との重量比[(A)/(B)/(C)]は、繰り返し透水性および制電性の両立の観点から、(A)、(B)及び(C)の合計重量を100とした場合、好ましくは[(8~39)/(20~75)/(12~70)]であり、より好ましくは[(9~35)/(21~70)/(15~70)]である。
【0066】
本発明の透水性付与剤は、リン酸エステル塩(A)、及び多価活性水素化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)と、必要により水、界面活性剤(C)、多価アルコール(D)及び添加剤(E)等の成分を配合し、常温又は必要により加熱(例えば30~70℃)して均一に混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0067】
本発明の透水性付与剤は、繊維に使用されることが好ましい。本発明の透水性付与剤を繊維に付着させることで、繊維に透水性を付与することができる。
本発明の透水性付与剤が付着した繊維は、不織布製品に用いられることが好ましく、特に、紙おむつ等の吸収性物品のトップシートに用いられることが好ましい。
【0068】
本発明の透水性付与剤は、一般的に、水系エマルションとして、疎水性繊維に付与される。
水系エマルションは、透水性付与剤に20~40℃の水を投入して希釈するか、20~40℃の水の中に透水性付与剤を加えて乳化し、作製するのが好ましい。
【0069】
水系エマルションの濃度は、任意の濃度の選択が可能であるが、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量割合が、水系エマルションの重量に基づいて、好ましくは0.05~20重量%であり、更に好ましくは0.1~10重量%である。
【0070】
[繊維]
本発明の繊維は、本発明の透水性付与剤が疎水性繊維に付着した繊維である。本発明の透水性付与剤を疎水性繊維に付着させることで、疎水性繊維に透水性を付与し、本発明の繊維とすることができる。
【0071】
疎水性繊維に透水性付与剤を付着させる方法には特に制限はなく、紡糸、延伸などの任意の工程で、ディップ給油法、オイリングロール法、浸漬法、及び噴霧法などの一般的に用いられる方法を利用することができる。
【0072】
透水性付与剤の付着量は、疎水性繊維の重量に基づいて、透水性付与剤中の不揮発性成分の重量割合が0.15~2重量%となる量であることが好ましく、0.2~1.5重量%となる量であることが更に好ましく、0.25~1重量%となる量が特に好ましい。
【0073】
本発明の繊維の素材に用いられる疎水性繊維とは、温度25℃、相対湿度65%で吸水率が1重量%以下である繊維を意味する。
疎水性繊維としては特に限定されず、一般的に用いられる疎水性の合成繊維を用いることができ、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等からなる繊維が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、及びエチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる。
【0074】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、及びポリエーテルポリエステル等が挙げられる。
ポリアミドとしては、6,6-ナイロン、及び6-ナイロン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン及びポリエステルは、おむつ用吸水素材として好ましく用いられる。
【0075】
本発明の透水性付与剤が付着した繊維を用いた繊維形態は、布状の形状のものが好ましく、織物、編物、及び不織布等が挙げられる。また、混綿、混紡、混繊、交編、及び交織などの方法で混合した繊維を布状として使用してもよい。これらの中では、特に不織布が好ましい。
【0076】
[不織布]
本発明の透水性付与剤が付着した繊維は、不織布として適用しうる。本発明の不織布は、本発明の繊維を用いたものである。
本発明の透水性付与剤が付着した繊維を不織布に適用する場合、本発明の透水性付与剤を処理した短繊維を、乾式又は湿式法で繊維積層体とした後、加熱ロールで圧着したり、空気加熱で融着したり、高圧水流で繊維を交絡させ不織布としてもよいし、スパンボンド法、メルトブローン法、及びフラッシュ紡糸法等によって得られた不織布に、本発明の透水性付与剤を付着させてもよい。
【0077】
[吸収性物品]
本発明の繊維、及びそれを用いた不織布は、吸水性物品のトップシート、特に紙おむつ等の衛生材料のトップシートとして好適に用いられる。本発明の吸水性物品は本発明の不織布を用いたものである。
本発明の繊維およびそれを用いた不織布は、セカンドシート、吸水体及び吸収パッド等に利用することもできる。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において部は重量部を表す。
【0079】
<製造例1:ヤシ油アルコールリン酸エステルカリウム塩(A-2)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、ヤシ油アルコール330重量部及び無水リン酸101重量部を仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム94重量部を投入し、ヤシ油アルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩に水を加えて、ヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩(A-2)を50重量%含有する溶液を得た。
【0080】
<製造例2:2-エチルヘキシルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-1)の製造>
製造例1において、ヤシ油アルコール330重量部に代えて、2-エチルヘキシルアルコールを231重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られた2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、2-エチルへキシルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-1)を73重量%含有する溶液を得た。
【0081】
<製造例3:ミリスチルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-3)の製造>
製造例1において、ヤシ油アルコール330重量部に代えて、ミリスチルアルコールを379重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、ミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、ミリスチルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-3)を50重量%含有する溶液を得た。
【0082】
<製造例4:オレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-4)の製造>
製造例1において、ヤシ油アルコール330重量部に代えて、オレイルアルコールを475重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、オレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたオレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、オレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-4)を25重量%含有する溶液を得た。
【0083】
<製造例5:イソステアリルアルコールリン酸エステルカリウム塩(A-5)の製造>
製造例1において、ヤシ油アルコール330重量部に代えて、イソステアリルアルコールを475重量部用いたこと以外は製造例1と同様にして、イソステアリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩を得た。得られたイソステアリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、イソステアリルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(A-5)を90重量%含有する溶液を得た。
【0084】
<製造例6~11で得られたアルキレンオキサイド付加物のGPCによる分析方法>
製造例6~11で得られたアルキレンオキサイド付加物を以下の条件により分析した。
(GPCの条件)
装置:HLC-8220GPC[東ソー(株)製]
GPCカラム
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperH-L(4.6mmI.D.×15cm)
分離カラム:TSKgel SuperH2000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH3000(6mmI.D.×15cm)+TSKgel SuperH4000(6mmI.D.×15cm)
検出器:RI検出器
流動媒体:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
サンプル濃度:0.25重量%
サンプル注入量:10μl
【0085】
<製造例6:グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物(B-1)>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、グリセリン[分子量92.1、商品名:精製グリセリン(阪本薬品工業製)]9.21重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド523重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド88重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、550重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPC法により分析したところ、グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物(B-1)[一般式(1)において、mが30、nが6.67、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0086】
<製造例7:グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物(B-2)>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、グリセリン[分子量92.1、商品名:精製グリセリン(阪本薬品工業製)]9.21重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド496重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド96重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、560重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物(B-2)[一般式(1)中の、mが28.4、nが7.3、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0087】
<製造例8:トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物(B-3)の製造>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、トリメチロールプロパン(I)[分子量134、商品名トリメチロールプロパン(バイエルケミカル製)]13.4重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド389重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、エチレンオキサイド48.4重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、400重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物(B-3)[一般式(1)中の、mが22.3、nが3.67、pが3の化合物]が含まれていることが確認された。
【0088】
<製造例9:ペンタエリスリトールのPO104モル付加物(B-4)の製造>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ペンタエリスリトール(I)[分子量136、商品名ペンタリット(広栄化学工業製)]14重量部、水酸化カリウム0.8重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド604重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、550重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、ペンタエリスリトールのPO104モル付加物(B-4)[一般式(1)中の、mが26、nが0、pが4の化合物]が含まれていることが確認された。
【0089】
<製造例10:ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物(B-5)の製造>
製造例8で得られたアルキレンオキサイド付加物550重量部を130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド75.2重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに0.5時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し、600重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物(B-5)[一般式(1)中の、mが26、nが4.8、pが4の化合物]が含まれていることが確認された。
【0090】
<製造例11:ソルビトールのPO9モルBO0.84モルPO78モルブロック付加物(B-6)の製造>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ソルビトール[分子量182.2、商品名ソルビットD-70(三菱商事フードテック製)]26重量部を仕込み、120±10℃にて脱水した後、50℃以下になるまで冷却した。水酸化カリウム1重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらプロピレンオキサイド52.3重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。次いで、1,2-ブチレンオキサイド6.1重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに0.5時間、圧力が下がりきるまでに1時間を要した。さらにプロピレンオキサイド453.2重量部を逐次滴下した。滴下を終了するまでに1.5時間、圧力が下がりきるまでに2時間を要した。その後、キョーワード600(協和化学製)10重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却し取り出し500重量部のアルキレンオキサイド付加物が得られた。得られたアルキレンオキサイド付加物をGPCにより分析したところ、ソルビトールのPO9BO0.84PO78モルブロック付加物(B-6)[一般式(1)中の、mが14.64、nが0、pが6の化合物]が含まれていることが確認された。
【0091】
<製造例12:ヒマシ油EO10モル付加物(C-1)の製造>
攪拌機、温度計、圧力計、耐圧滴下ロート、減圧及び窒素導入ラインの付いた1Lオートクレーブ中に、ヒマシ油459重量部、水酸化カリウム0.1重量部を加え攪拌を開始し、窒素封入し90℃に昇温した後、0.005MPaまで減圧し、1時間攪拌した。次いで130±10℃に昇温し、4~6.5kPaに保ちながらエチレンオキサイド216重量部を逐次滴下した。その後、キョーワード600(協和化学製)20重量部を仕込み、95℃で1時間吸着処理した後、ろ過処理してアルカリ金属の除去を行った。60℃に冷却した後、取り出してヒマシ油EO10モル付加物(C-1)を得た。
【0092】
<製造例13:ヒマシ油EO25モル付加物(C-2)の製造>
製造例12において、エチレンオキサイド216重量部を541重量部に代えたこと以外は製造例10と同様にして、ヒマシ油EO25モル付加物(C-2)を得た。
【0093】
<実施例1~12及び比較例1~4>
表1に記載した各成分を、各成分(純分:不揮発性成分)の量が表1に記載の量となるように配合した混合物を(40℃で30分間)撹拌することにより、実施例1~12および比較例1~4の透水性付与剤を得た。
【0094】
尚、実施例1~12及び比較例1~4で用いる各成分に対応する原料は、以下の通りである。表1に記載の各成分の配合量(重量部)は、純分の量である。
(A-1):製造例2で得た2-エチルヘキシルアルコールリン酸モノエステルカリウム塩を73重量%含有する溶液
(A-2):製造例1で得たヤシ油アルコールリン酸モノエステルカリウム塩を50重量%含有する溶液
(A-3):製造例3で得たミリスチルアルコールリン酸モノエステルカリウム塩を50重量%含有する溶液
(A-4):製造例4で得たオレイルアルコールリン酸エステルカリウム塩を25重量%含有する溶液
(A-5):製造例5で得たイソステアリルアルコールリン酸エステルカリウム塩を90重量%含有する溶液
(B-1):製造例6で得たアルキレンオキサイド付加物(グリセリンのPO90モルEO20モルブロック付加物)
(B-2):製造例7で得たアルキレンオキサイド付加物(グリセリンのPO85.3モルEO21.8モルブロック付加物)
(B-3):製造例8で得たアルキレンオキサイド付加物(トリメチロールプロパンのPO67モルEO11モルブロック付加物)
(B-4):製造例9で得たアルキレンオキサイド付加物(ペンタエリスリトールのPO104モル付加物)
(B-5):製造例10で得たアルキレンオキサイド付加物(ペンタエリスリトールのPO104モルEO19.2モルブロック付加物)
(B-6):製造例11で得たアルキレンオキサイド付加物(ソルビトールのPO9モルBO0.84モルPO78モルブロック付加物)
(C-1):製造例12で得たヒマシ油EO10モル付加物
(C-2):製造例13で得たヒマシ油EO25モル付加物
(C-3):ヤシ油脂肪酸ソルビタンエステル[品名:イオネット S-20、三洋化成工業(株)製]
(C-4):オレイン酸ソルビタンエステル[品名:イオネット S-80、三洋化成工業(株)製]
(C-5):ポリオキシエチレングリコール9モル付加物ジオレート[品名:イオネット DO-400、三洋化成工業(株)製]
(C-6):ジ-2-エチルヘキシルスルホサクシネートナトリウム塩を70重量%含有する溶液[品名:サンモリン OT-70、三洋化成工業(株)製]
(D-1):グリセリン(阪本薬品工業(株)製)
【0095】
<表面抵抗の測定(制電性の評価)>
[処理綿の作製]
実施例1~12および比較例1~4の透水性付与剤を用い、以下の手順により処理綿を作製した。
ローメルトポリエステル系合成繊維綿(低融点のポリエチレンテレフタレート製の合成繊維綿、単糸維度が4.0Dtex、繊維長が51mm)に、各例の透水性付与剤を塗布することにより付着させ、処理綿(ポリエステル系合成繊維の処理綿)を得た。各例の透水性付与剤の付着量は表1に記載の量となるようにした。
【0096】
[表面抵抗値の測定]
ポリエステル系合成繊維の処理綿20gを小型開繊機およびカード機に通してウェブを作製した。得られたウェブを25℃で40%RHの恒温室内で24時間調湿した後、東亜電波社製の超絶縁計を用いて電気抵抗(Ω)を測定した。表面抵抗値は小さいほうがよい。充分な制電性が発現するという観点から表面抵抗は1.0×1010Ω未満であることが好ましい。当該表面抵抗値が1.0×1010Ω未満であり、かつ、後述のカード通過性の評価結果(排出量の割合)が60%以上であれば、制電性が優れる。
【0097】
<カード通過性の評価)>
[ポリエステル系合成繊維の処理綿の作製]
ローメルトポリエステル系合成繊維綿(低融点のポリエチレンテレフタレート製の合成繊維綿、単糸維度が4.0Dtex、繊維長が51mm)に、各例の透水性付与剤を塗布することにより付着させ、処理綿(ポリエステル系合成繊維の処理綿)を得た。各例の透水性付与剤の付着量は表1に記載の量となるようにした。
【0098】
[カード通過性の評価]
上記ポリエステル系合成繊維処理綿20gを、25℃で40%RHの恒温室内で24時間調湿した後、フラットカードに投入した。投入量に対する排出量の割合を算出した。結果を表1に示す。
投入量に対する排出量の割合が大きいほうがカード通過性に優れる。カード通過性が優れていると、カード機通過に起因する静電気の発生を抑制でき、その結果、制電性を高めることができる。カード通過性に優れるという観点から、投入量に対する排出量の割合は60%以上であることが好ましい。
【0099】
<ウェブ透水性の評価>
制電性評価試験において作製したウェブ(ポリエステル系合成繊維処理綿を用いたウェブ)を用いて以下の方法により沈降時間を測定した。結果を表1に示す。
(1)1回目の沈降時間の測定
1000mLのガラスビーカーに800mLのイオン交換水を加え、25℃で40%RHの恒温室内で24時間調湿した。表面抵抗値測定試験で作製したウェブ5gをSUS製の編み寵(重さ3±0.1g、底辺の直径50mm、高さ80mmの円筒状の編み籠)に入れ、液面より25mmの高さから水平に落とし籠が完全に液面に沈んだ時間を測定した。籠が液面に沈んでからすぐにピンセットで水中から取り出して手でウェブを絞り、水を取り除き、2回目の沈降時間測定に供した。沈降時間が短いほど透水性が優れている。ウェブを編み籠に入れ液面に落とした時点から60秒以上経過しても沈降しない場合は、沈降しないものと判断し、表には×と記載した。
【0100】
(2)2回目~3回目の沈降時間の測定
(i)2回目の沈降時間の測定
1回目の沈降時間測定後のウェブ(籠が液面に沈んだ後水中から取り出して手で絞ったウェブ)を吸水紙の上に置き25℃で40%RHの恒温室内で48時間乾燥させた。ウェブを再びSUS製編み寵の中に均一に詰め、1回目の沈降時間測定と同様にして沈降時間を測定した。籠が液面に沈んでからすぐにピンセットで水中から取り出して手でウェブを絞り、水を取り除き、3回目の沈降時間測定に供した。
(ii)3回目の沈降時間の測定
2回目の沈降時間測定後のウェブを用いて上記(i)と同じ操作を行い、3回目の沈降時間を測定した。回数を重ねても沈降時間が短い方が、繰り返し透水性に優れる。
【0101】
<実施例13~24、比較例5~8:不織布の製造及び評価>
[不織布の製造]
実施例1~12および比較例1~4の透水性付与剤について、それぞれ25℃の温水で不揮発性成分が1.0重量%となるように希釈することにより、透水性付与剤の希釈液を得た。
次に、繊維本体300gに対し、透水性付与剤希釈液150gをディップ給油法で付着させ、繊維に付着する透水性付与剤の不揮発性成分の付着量を、表1に記載の値にした。
繊維本体は、繊維処理剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリエステル(芯)-ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が51mmのものであった。それぞれの透水性付与剤希釈液を付着させた繊維を、80℃の温風乾燥機の中に1時間入れた後、室温で4時間以上放置して乾燥させて、透水性付与剤が付着した繊維を得た。
得られた繊維をローラーカードに通し、目付け20g/m2のカードウェブを作製した。得られたカードウェブを140℃で10秒の熱風処理を行い、エアスルー不織布を得た。
得られた不織布(実施例13~24、比較例5~8)について、以下の方法により透水性及び繰り返し透水性(耐久透水性)の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0102】
[透水性及び繰り返し透水性(耐久透水性)の評価]
実施例13~24及び比較例5~8で製造した各不織布から、10cm×10cmの大きさの方形状の不織布を切り出し、透水性試験に供した。
(1)1回目の透水性試験
温度25℃、湿度65%RHの条件下、各例の不織布を濾紙(東洋濾紙製、No.5)の上に重ね、不織布表面から10mmの高さに設置したビューレットより1滴(約0.05mL)の生理食塩水を滴下して、不織布表面から水滴が消失するまでの時間を測定した。不織布表面の10か所にマーキングペンで点を付し、当該点で測定を行って5秒未満に生理食塩水が消失する個数を計数した。消失時間5秒未満となる箇所の個数が多い方が、透水性に優れる。
(2)2回目~5回目の透水性試験(繰り返し透水性の評価)
(i)2回目の透水性試験
1回目の透水性試験を行った後の不織布を市販の紙おむつの上に置き、さらにその上にSUS製リング(内径6cm、高さ6cm)を置き、それを通じて(リングの内径内に)50mLの生理食塩水を通液させて紙おむつに吸収させた。不織布を紙おむつから外して乾燥させた後、不織布表面10箇所のマーキング箇所に、再び1滴ずつの生理食塩水を滴下して、その消失時間を10箇所毎に測定し、消失時間5秒未満の箇所の個数を計数した。
(ii)3回目~5回目の透水性試験
2回目の透水性試験を行った後の不織布について、上記(i)と同様の作業を行って3回目の透水性試験を行った。さらに、3回目の透水性試験を行った後の不織布について、上記(i)と同様の作業を行って4回目の透水性試験を行った。さらに4回目の透水性試験を行った後の不織布について、上記(i)と同様の作業を行って5回目の透水性試験を行った。
回数を重ねても消失時間5秒未満となる箇所の個数が多い方が、繰り返し透水性(耐久透水性)に優れる。表1の耐久透水性の評価結果には、消失時間5秒未満となる箇所の個数を記載した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の透水性付与剤が付着した繊維を使用した不織布は、繰り返し透水性と制電性とを両立できるため、吸収性物品のトップシートなどとして有用である。