(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112016
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】基板および二重回転子を有する3軸角速度センサ
(51)【国際特許分類】
G01C 19/5747 20120101AFI20220725BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
G01C19/5747
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006102
(22)【出願日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】10 2021 200 483.0
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン・ラインムート
【テーマコード(参考)】
2F105
4M112
【Fターム(参考)】
2F105BB02
2F105BB03
2F105BB12
2F105BB13
2F105CC04
2F105CD03
2F105CD05
4M112AA02
4M112AA10
4M112BA07
4M112CA45
4M112CA51
4M112CA56
4M112FA01
4M112GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】振動に頑強性があり、パルスノイズに対して強く、高い感度と小さな表面積の3軸角速度センサを提供する。
【解決手段】第1の結合要素8を介して互いに弾性的に接続される第1および第2の回転子1、2と、第1及び第2の回転子1、2に対してそれぞれ変位自在に支持される第1および第2の振動質量体3、4と、第3および第4の振動質量体5、6とを有し、第1の質量体3と第3の質量体5が第1の揺動要素9を介して、第2の質量体4と第4の質量体6が第2の揺動要素9’を介して、それぞれ横方向の反対方向に変位されるように接続され、第1および第2の揺動要素9、9’が、第1および第2の質量体3、4の横方向の変位と、第3および第4の質量体5、6の横方向の変位がそれぞれ逆位相で生じるように、第2の結合要素10を介して互いに弾性的に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板および二重回転子を備えた3軸角速度センサであって、
前記基板は、X方向およびY方向を有する主延在面を有し、
前記二重回転子は、第1および第2の回転子(1、2)を有し、前記第1および第2の回転子が、それぞれ懸架部(13、14)を介して前記基板に弾性的に接続され、かつ逆位相のねじれ振動に対し励振できるように、第1の結合要素(8)を介して互いに弾性的に接続されており、
前記回転子(1、2)の回転軸は、基板に対して直交する垂直なZ方向に延びるものであり、
前記第1の回転子(1)は、前記第1の回転子(1)に対して変位自在に支持された第1および第2の振動質量体(3、4)を有し、前記第1の回転子(1)の前記2つの質量体(3、4)の横方向の変位方向が、基板と平行に延びるものであり、
前記第2の回転子(2)は、前記第2の回転子(2)に対して変位自在に支持された第3および第4の振動質量体(5、6)を有し、前記第2の回転子(2)の前記2つの質量体(5、6)の横方向の変位方向が、基板と平行に延びるものであり、
前記第1の質量体(3)が横方向に変位するときに前記第3の質量体(5)が前記第1の質量体(3)の横方向の変位とは反対方向に変位されるように、前記第1の質量体(3)は第1の揺動要素(9)を介して前記第3の質量体(5)に接続されており、
前記第2の質量体(4)が横方向に変位するときに前記第4の質量体(6)が前記第2の質量体(4)の横方向の変位とは反対方向に変位されるように、前記第2の質量体(4)は第2の揺動要素(9’)を介して前記第4の質量体(6)に接続されており、
前記第1および第2の揺動要素(9、9’)は、前記第1および第2の質量体(3、4)の横方向の変位が逆位相で生じ、前記第3および第4の質量体(5、6)の横方向の変位が逆位相で生じるように、第2の結合要素(10)を介して互いに弾性的に接続される、
ことを特徴とする角速度センサ。
【請求項2】
前記2つの回転子(1、2)が、その中心、特に重心において、少なくとも1つのばね(14)を介して基板に接続される、請求項1に記載の角速度センサ。
【請求項3】
前記二重回転子は、第1および/または第2の対称軸に関して軸対称に設計されており、前記第1の対称軸は、Y方向に延び、かつ前記2つの回転子(1、2)間の中心に配置されており、前記第2の対称軸は、前記第1の回転子(1)の中心、特に重心と、前記第2の回転子(2)の中心、特に重心とを通ってX方向に延びる、請求項1または2に記載の角速度センサ。
【請求項4】
前記第1の回転子(1)は、第3の対称軸に関して軸対称に設計され、および/または、前記第2の回転子(2)は、第4の対称軸に関して軸対称に設計されており、前記第3の対称軸が、前記第1の回転子(1)の中心、特に重心を通ってY方向に延び、前記第4の対称軸が、前記第2の回転子(2)の中心、特に重心を通ってY方向に延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項5】
前記第1の結合要素(8)は、前記回転子(1、2)間の中央に配置された第1のばね要素であり、前記第1のばね要素が、特に、好ましくは主にY方向に配向された少なくとも1つの板ばねによって形成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項6】
前記揺動要素(9、9’)はそれぞれレバー要素(15)を有し、
前記レバー要素は、第2のばね要素(16)を介して前記第1の回転子の振動質量体(3、4)に接続され、第3のばね要素(16)を介して前記第2の回転子(2)の振動質量体(5、6)に接続されており、
前記第2および第3のばね要素(16)は、好ましくは、それぞれ振動質量体(3、4、5、6)の中心に配置され、および/または、前記レバー要素(15)は、第4のばね要素(17)を介して基板に係止され、
前記第4のばね要素(17)が、特に好ましくは、前記レバー要素(15)の中心に配置され、および/または、前記レバー要素(15)から前記二重回転子の中心の方向に延在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項7】
前記第2の結合要素(10)は、第1および第2の追加アーム(11、11’)と、撓み要素(12)とを有し、前記第1の追加アーム(11)が前記第1の揺動要素(9)に配置され、前記第2の追加アーム(11’)が前記第2の揺動要素(9’)に配置され、前記撓み要素(12)が前記第1の追加アーム(11)を前記第2の追加アーム(11’)に接続する、請求項1から6のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項8】
前記第2の結合要素(10)は、少なくとも1つの部分領域において、前記第1の結合要素(8)の上部もしくは下部に配置され、または、少なくとも1つの部分領域において、平行に延びる2つの部分要素を有し、一方の部分要素が前記第1の結合要素(8)の上部に配置され、他方の部分要素が前記第1の結合要素(8)の下部に配置される、請求項1から7のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項9】
前記第1の回転子(1)の下部および/もしくは上部に配置された第1の検出電極構成(19、19’)が、前記第2および/もしくは第3の対称軸に関して対称に設計され、ならびに/または、前記第2の回転子(2)の下部および/もしくは上部に配置された第2の検出電極構成(29、29’)が、前記第2および/もしくは第4の対称軸に関して対称に設計される、請求項1から8のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項10】
第3の検出電極構成(21)が、前記第1および第2の振動質量体(3、4)の横方向の変位を検出するように構成され、第4の検出電極構成(21’)が、前記第3および第4の振動質量体(5、6)の横方向の変位を検出するように構成され、前記第3および第4の検出電極構成(21、21’)が、基板に対して垂直に配置される電極面を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の角速度センサ。
【請求項11】
前記第3および第4の検出電極構成(21、21’)は、主延在面に対して垂直に延びる回転軸を有する前記揺動要素(9、9’)の回転運動を検出するように構成される、請求項10に記載の角速度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念による3軸角速度センサに基づく。
【背景技術】
【0002】
従来技術の角速度センサ装置は、多数の実施形態において公知である。例えば、簡単な変形例では、基板と平行なMEMSの機能面(XY面)に回転子が配置され、振動するように励振される。MEMS部品にX方向またはY方向の外部角速度が印加している場合、回転子はコリオリ力によりZ方向に変位する。この変位は、固定された検出電極に対する静電容量の変化で決定できる。このとき、回転軸に関して対称に配置された2つの検出電極を用い、その差分信号を角速度信号として使用することが好適である。この装置では、外部から直線的な加速度が印加されると、2つの検出電極の静電容量が等しく変化し、これにより、差分信号は変化しない。したがって、外部から印加される加速度によって角速度信号は干渉されない。
【0003】
さらに、逆位相で振動するように励振され、各検出方向に4つの対称的な検出電極を備えた、2つの対称的な回転子を有する装置も公知である。ここで、静電容量がクロスカップリングされ、その結果得られる差分信号が測定される。駆動振動の周波数を有する外部のねじれ振動が単一の回転子に印加されると、このねじれ振動は、角速度信号と区別のつかない回転子の変位を生成する。一方、逆位相で振動する2つの回転子を有するシステムでは、外部からねじれ振動が印加された場合、第1の回転子の信号は逆位相で振動する第2の回転子の信号で正確に補償される。この装置のさらなる利点は、2つの回転子の逆位相の振動でMEMSシステムからトルクが出力されないことである。このため、取付条件に関係なく、回転エネルギーがシステムから周囲に放出されることはあり得ない。さらに、回転子ではその中心部がばねで支持されていることが好適である。
【0004】
角速度センサの構成では、可動構造物の懸架部と、逆位相で振動するコリオリ質量間の結合とが常に重要なポイントになる。振動、電気的な測定パルス、分析回路の電子的なノイズなどの外乱は、望ましくない振動モードの励起につながり、この振動モードは、振動の形態によっては、信号に偽信号や追加のノイズ成分をもたらす可能性がある。これまでの経験から、センサの構成がシンプルでコンパクトであるほど、センサは干渉の影響を受けにくいことが分かっている。よって、中央に懸架された2つの回転子のみ、および場合によっては結合構造も含む角速度センサも、非常に頑強で感度の低いシステムを形成することができる。
【0005】
このような装置では、X方向とY方向の角速度しか測定できず、Z方向の測定は不可能であるという欠点がある。これについて、例えばEP1832841A1により、Z方向についての追加の振動質量体を有する単一回転子を用いた、3軸測定のための装置が公知である。二重回転子装置に基づいてZ方向の検出を実現する様々なアプローチがあるが、2つの回転子の運動に連動した追加要素が常に必要となる。3軸角速度センサは、追加要素やその結合構造により、通常非常に複雑で、多数のばね要素、特に非常に柔らかいばね要素を有し、ひいては外部振動や電気的な測定パルスの干渉に非常に敏感である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景から、本発明の課題は、振動に頑強性があり、動作中にできるだけ少ないエネルギーを出力し、電気的な測定パルスに対して感度が低く、小さな表面で実現でき、高い感度と良好な表面利用を有する3軸角速度センサの装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の角速度センサは、3つの空間方向全てについて外部角速度を検出することができ、ここでの駆動運動は、回転子のねじれ振動である。外部角速度がないとき、2つの回転子はまずXY面に平行に配置される。回転軸がXY面に平行となる外部からの回転がセンサに印加されると、回転子を平面に対して傾けるコリオリ力が回転子に作用する。これに対し、回転軸が主延在面で垂直なときの外部角速度では、剛体の回転子には径方向の伸縮力または歪み力のみが作用し、回転子全体の移動は起こり得ない。しかし、本発明に係るセンサの回転子は、回転子のねじれ振動の際に共に回転する変位可能な振動質量体を有するため、径方向に及ぶコリオリ力によって振動質量体を回転子の径方向に変位させ、当該変位は適宜検出することが可能である。本発明に係る第1および第2の結合要素により、2つの回転子の駆動振動と、振動質量体の検出運動との両方がそれぞれ逆位相であるため、振動質量体の変位は差分測定によって正確に決定できる。
【0009】
すなわち、回転子は、本発明に係るセンサにおいて二重の機能を果たし、XおよびY方向とZ方向の両方の検出質量体として機能するため、これに対する追加の要素を必要とせずに、この方法で特にコンパクトなセンサを実現できる。有利には、二重回転子は面積を非常に良好に利用でき、特に省スペースで実現でき、異なる外部拘束条件にもうまく適合させることができる。他の3軸センサと比較して、本発明に係る概念は、非常に少数の質量体および結合要素しか必要としないため、センサは高周波数における干渉モードが非常に少なく、外部干渉の影響を受けにくい。さらに、本発明に係るセンサは、全体的に必要なばねが少なく、特に公知の概念よりも硬いばねで実現できる。したがって、センサは、特に柔らかいばねの実現が非常に不正確になる製造工程で乱れる影響を大幅に受けにくくなる。このように、有利には公知のセンサよりも周波数分布の狭い角速度センサを製造することができる。
【0010】
以下のセンサの電気機械構造の幾何学的記述は、基板の主延在面を基準とする。基板に平行な方向を横方向、基板に対して直交する方向を縦方向と呼ぶ。ここで、横方向は、X方向とX方向に直交するY方向に広がる。X方向とY方向は、縦のZ方向と合わせて直交座標系を形成し、Z方向に対する個々の構成要素の相対位置を「上部」「下部」、および縦方向の移動を「上方」「下方」とも呼ぶ。
【0011】
二重回転子の2つの回転子は、例えば、X方向に離間して配置されることができ、駆動装置、特に静電駆動装置によって基板に対して逆位相のねじれ振動に対し励振できるように結合される。2つの回転子の回転軸はZ方向に延び、2つの回転方向は区別することができ、1つを右回り(基板を上から見て時計回り)、もう1つを左回り(反時計回り)と呼ぶ。回転軸は、好ましくは、それぞれの回転子の中心を、特に好ましくは重心を通る。二重回転子の逆位相振動とは、第1の回転子と第2の回転子とが各時点で互いに逆方向に回転する運動であると理解することができる。換言すると、第2の回転子が左回りの最大変位量に到達した時に、第1の回転子は右回りの最大変位量に到達し、第1の回転子が左回りの最大変位量に到達した時に、第2の回転子は右回りの最大変位量に到達する。センサ全体の回転は、回転子の回転と区別するために、以下では常に外部回転もしくは外部角速度、または外部から印加された回転もしくは外部から印加された角速度と呼ばれる。2つの回転子のそれぞれは、回転子に対する横方向の変位が可能なようにそれぞれの回転子に弾性的に結合された2つの振動質量体を有する。第1の質量体の横変位方向は、第2の質量体の横変位方向と平行に延び、対応して第3の質量体の変位方向は、第4の質量体の変位方向と平行に延びる。2つの回転子が回転に対してそれぞれ変位のない静止位置にある場合、4つの振動質量体全ての横変位方向は、特に互いに平行に、例えばY方向に延びる。
【0012】
振動質量体は、特に、1つまたは複数の切欠きによってそれぞれの回転子の残りの部分から分離され、ばねによってそれに接続されている回転子の分離されたセグメントであってよい。例えば、回転子は、横方向の拡がりについて長方形や正方形の形状であってよく、振動質量体は、例えば長方形、正方形、台形などであってよい。横方向の変位を可能にするために、ばねは変位方向に特に柔らかく設計され、すなわち、ばねは変位方向に対して、それに垂直な方向よりも低いばね定数または剛性を有する。好ましくは、横変位方向のばね定数は、それに垂直な横方向および/または縦方向のばね定数の最大半分である。好ましくは、Z方向のアスペクト比が高く、高さ(Z方向の伸び)が幅(横方向の伸び)の少なくとも2倍である板ばねが使用される。横方向の変位が例えばY方向に広がる場合、この方法でX方向に有利な高感度が得られ、Z検出のない純粋な二重回転子と比較して感度はほとんど変わらない。本発明によれば、第1の質量体および第3の質量体と、第2の質量体および第4の質量体との横方向の変位がそれぞれ逆位相で広がるように、振動質量体が揺動要素を介して結合される。例えば、第1の揺動要素の一方の端部が第1の質量体の横方向の変位に追従し、反対側の端部が第3の質量体の横方向の変位に追従するように、特に揺動要素は、この移動時に基板と平行に傾く。これらの逆位相の移動は、次に振動質量体の横方向の変位が以下の位相関係を有するように、本発明に従って第2の結合要素を介して結合される。同じ回転子に属する振動質量体(第1の振動質量体および第2の振動質量体、第3の振動質量体および第4の振動質量体)は逆位相で移動し、揺動要素で接続された振動質量体(第1の振動質量体および第3の振動質量体、第2の振動質量体および第4の振動質量体)も同様に逆位相で移動する。
【0013】
本発明に係るセンサは、好ましくは4点のみで基板に懸架され、当該4点は比較的中心で互いに対称的に配置される。これにより、例えば、加工時の機械的応力によって生じる曲げに対して敏感に反応しない。ここで、2つの回転子のそれぞれは、好ましくは、単一の支持点を有し、2つの回転子の支持点は、例えば、X方向に平行な線上に位置することができる。2つの揺動要素のそれぞれは、好ましくは同様に単一の支持点を有し、この支持点は、特に好ましくは、揺動要素の主延在方向に対して中央に配置され、これにより、各揺動要素は、長手方向で支持点に対して等しい長さのレバーアームを形成する2つの部分に分かれる。2つの揺動要素の支持点は、例えば、Y方向に平行な線上に位置し、Y方向に離間していてよい。第1の結合要素は、好ましくは、2つの回転子の駆動振動を結合するだけでなく、X方向の外部角速度によって生じる2つの回転子の傾斜運動も結合するように設計される。好ましくは、第1の結合要素は、2つの回転子間でX方向に延在し、この方向に対する伸縮または歪みに対して弾性的である。特に、第1の結合要素は、この目的のために、第1の結合要素のX方向への伸縮または歪むにより曲がり、所望の弾力性をもたらす、Y方向に拡がる2つ以上の部分を有してもよい。X方向に外部角速度がある場合、各回転子はコリオリ力による傾きによってY方向の軸を中心として回転し、2つの回転子の傾きは、回転方向が反対向きであるため逆位相で生じる。第1の結合要素は、特に、2つの回転子が基板に平行な非傾斜位置に引き戻されるように方向付けられる復元力を生成し、傾きの逆位相振動が結合によって適宜支持されるようにする。さらに、2つの揺動要素は、好ましくは、振動質量体の縦方向の移動を特に良好に結合するように構成でき、揺動要素の主延在方向は、特にX方向と平行に延びることができる。ここで、第1の揺動要素は、好ましくは、第1の質量体が縦方向に変位する際に、第3の質量体が第1の質量体の縦方向の変位と反対の方向に変位するように、また、第3の質量体が縦方向に変位する際に、第1の質量体が第3の質量体の縦方向の変位と反対の方向に変位するように、第1および第3の振動質量体の(基板に対する)縦方向の移動を結合させる。換言すると、第1の質量体の上方移動と、第2の質量体の下方移動とが結合する(第2の質量体の上方移動と、第1の質量体の下方移動とが結合する)。第1および第3の質量体が移動する際、揺動要素は、特に基板と平行となるその静止位置から傾き、第1の質量体に接続された揺動要素の1つの端部が上方に動き、第3の質量体に接続された反対側の端部が下方に動く(第3の質量体に接続された揺動要素の1つの端部が上方に動き、第1の質量体に接続された反対側の端部が下方に動く)。第2および第4の振動質量体は、第2の揺動要素を介して類似の方法で結合される。それぞれ一対で結合された質量体要素は、今度は第2の結合要素を介して互いに結合される。ここで、例えばねじればねの形態の第2の結合要素によって、揺動要素の逆位相の傾き間の復元力を実現することが考えられる。
【0014】
本発明に係るシステムでは、第1および第2の結合要素ならびに2つの揺動要素によって、すなわち全ての検出質量体が全ての検出方向において互いに結合されている。個々の検出質量体が全て結合しているため、それぞれが全く同じ周波数で振動していることになる。そのため、非結合型のシステムとは異なり、検出運動における不本意なうなりを回避することができる。さらに、追加の電極を介して検出運動の周波数が駆動運動の周波数と同じ値になるようにずらすことも可能である。これにより、検出品質が向上し、特に高感度なセンサが可能になる。さらに、特に好適なクローズドループの概念で動作するセンサも実現できる。
【0015】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、従属請求項および図面を用いた説明から読み取ることができる。
【0016】
好ましくは、2つの回転子は、その中心、特に重心において、少なくとも1つのばねを介して基板に接続されている。ここで、特に好ましくは、回転子の回転軸は、中心または重心をも通って延びる。回転子の基板との接続は、例えば、回転子に接続されて基板と平行に延在する1つ、2つ、またはそれ以上のばねが配置された支持点を介して実現することができる。少なくとも1つのばねは、特に硬いばねとして形成されることができ、柔らかいばね(すなわち、特に幅が小さいばね)と比較して、より少ない工程分散で製造され得る。
【0017】
二重回転子、振動質量体、および結合要素の配置構成と幾何学的形状は、有利には、逆位相で移動する検出要素によって生じる力とトルクが互いに正確に補償されるように、対称的に設計することができる。このようにして、基板への運動エネルギーの伝達や、対応する検出運動で発生する測定信号のオフセットを有利に防止することができる。以下の対称性に関する記載は、常に個々の要素の横方向の配置構成、形状、伸長に関するものであり、すなわち、対称性の関係は、主延在面に対する2次元の対称性として記述される。3次元の配置構成において、言及されたそれぞれの対称軸は、対称軸とZ方向とにまたがる対称面に相当する。好ましくは、センサの構成全体が対称的に設けられ、したがってあらゆる種類の干渉が対称性のみに基づいて補償される。
【0018】
好ましい実施形態によれば、二重回転子は、第1および/または第2の対称軸に関して軸対称に設計され、第1の対称軸はY方向に延び、2つの回転子間の中心に配置され、第2の対称軸は、第1の回転子の中心、特に重心と、第2の回転子の中心、特に重心とを通ってX方向に延びていることが企図される。特に、2つの回転子は、X方向に離間され、それらの間を延びる第1の対称軸に関して互いに鏡像に形成される。特に、2つの回転子のそれぞれは、その中心を延びる第2の対称軸と鏡面対称に形成することができる。好ましくは、第1の質量体および第2の質量体、または第3の質量体および第4の質量体は、第2の対称軸に関してそれぞれ鏡像である。特に好ましくは、振動質量体がそれぞれの回転子に接続されるばねの配置構成も、それに対応して対称的に設計される。
【0019】
一実施形態によれば、第1の回転子は第3の対称軸に関して軸対称に設計され、および/または第2の回転子は第4の対称軸に関して軸対称に設計され、第3の対称軸は第1の回転子の中心、特に重心を通ってY方向に延び、第4の対称軸は第2の回転子の中心、特に重心を通ってY方向に延びる。好ましくは、2つの回転子は、Y方向に延びる中心軸に関してそれぞれ鏡面対称に形成される。好ましくは、回転子に配置された振動質量体も、第3および/または第4の対称軸に関して鏡面対称に形成、すなわち、質量体のそれぞれは、好ましくは、Y方向に延びるそれぞれの回転子の対称軸に関して対称的である。特に好ましくは、振動質量体のばね装置も対応する対称性を有する。
【0020】
好ましくは、第1の結合要素は、回転子間の中央に配置された第1のばね要素であり、第1のばね要素は、特に、好ましくは主にY方向に配向された少なくとも1つの板ばねによって形成される。特に好ましくは、第1のばね要素は、1つまたは複数の部分をさらに有し、当該部分は、Y方向に延在し、ばね要素にX方向の負荷がかかるときにそれに応じてX方向に曲がる。ここで、第1のばね要素は、例えばX方向に負荷がかかるときに広がる1つまたは複数のU字形またはO字形の部分を有してもよい。代替的に、連続的に蛇行した部分も考えられる。好ましくは、第1のばね要素は、Z方向の曲げに対してY方向に少なくとも2倍の剛性を有する。好ましくは、Z方向のアスペクト比が高い板ばねが使用され、例えば、ばねの高さが幅の少なくとも2倍である板ばねが使用される。
【0021】
好ましい実施形態によれば、揺動要素はそれぞれ、第2のばね要素を介して第1の回転子の振動質量体に接続され、第3のばね要素を介して第2の回転子の振動質量体に接続されたレバー要素を有し、第2および第3のばね要素は、好ましくは、それぞれ振動質量体の中心に配置され、および/または、レバー要素は、第4のばね要素を介して基板に係止され、第4のばね要素は、特に好ましくは、レバー要素の中心に配置され、および/またはレバー要素から二重回転子の中心の方向に延在していることが企図される。好ましくは、それぞれの振動質量体とのばね要素の接続部は、質量体の(X方向に対する)中央部に配置される。好ましくは、さらに、アスペクト比の高い板ばね、特にばねの高さが幅の少なくとも2倍である板ばねが使用される。レバー要素は少なくとも第4のばね要素を介して基板に係止され、第4のばね要素と係止部は二重回転子の中心に合わせられて、コンパクトな構造を可能にする。2つの揺動要素のそれぞれを第1の対称軸に関して鏡面対称に設計し、さらに第2の対称軸に関して互いに鏡像に設計された2つの同一の揺動要素を使用することが好適である。このようにして、エネルギーのデカップリングと測定信号のオフセットが回避される。
【0022】
好ましい実施形態によれば、第2の結合要素は、第1および第2の追加アームと、撓み要素とを有し、第1の追加アームは第1の揺動要素に配置され、第2の追加アームは第2の揺動要素に配置され、撓み要素は第1の追加アームを第2の追加アームに接続する。追加アームは、好ましくは、オフセットを回避するために、それぞれの揺動要素のレバー要素において対称的に、かつ2つの回転子間の中心に取り付けられる。2つの追加アームを接続する撓み要素は、好ましくは板ばねとして実現され、さらに、高いアスペクト比を有する板ばね、特にその高さが幅の少なくとも2倍である板ばねを使用することができる。板ばねの長さは、好ましくは、追加アームの長さよりも小さくなるように、すなわちレバー要素と撓み要素との間の追加アームのY領域よりも小さくなるように選ばれるため、振動質量体の平行変位が特に強く抑制される。
【0023】
好ましくは、第2の結合要素は、少なくとも1つの部分領域において、第1の結合要素の上部もしくは下部に配置されているか、または少なくとも1つの部分領域において、平行に延在する2つの部分要素を有し、一方の部分要素は第1の結合要素の上部に配置され、他方の部分要素は第1の結合要素の下部に配置されている。換言すると、特にX方向に延在する第1の結合要素と、特にY方向に延在する第2の結合要素は、回転子間の領域で交差し、第2の結合要素は、交差領域において、第1の結合要素の下部もしくは上部(または下部および上部)の平面上で案内される。特に、追加アームと撓み要素の間の接続は、第1の結合要素の一部を橋渡しするメカニカルブリッジを介して実現されることが好適である。このために、例えば撓み要素は、回転子の機能層から縦方向に離間した第2の機能層内のブリッジ要素に接続されてもよい。製造工程で薄い第2の機能層しか作られない場合は、X方向には柔らかいがZ方向には硬く構成され、一方の側では基板に、他方の側ではレバー要素に接続された追加のばね要素によって、2つのレバーアーム間の曲がりを防ぐことが好適である。ブリッジ要素は、第1の結合要素の下部または上部に配置するか、または2つの平行な部分要素に分岐することができ、そのうちの一方は第1の結合要素の上部に、他方は下部に配置されている。その後、ブリッジ要素は、部分領域で第1の結合要素の下部または上部を通され、それぞれレバーアームと接続される。好適には、ブリッジ要素は、第1の結合要素の下部および上部の両方で接続されるため、負荷がかかる際にブリッジ要素の領域で2つのレバーアーム間の曲がりを回避することができる。
【0024】
好ましくは、第1の回転子の下部および/もしくは上部に配置された第1の検出電極構成は、第2および/もしくは第3の対称軸に関して対称的に設計され、ならびに/または、第2の回転子の下部および/もしくは上部に配置された第2の検出電極構成は、第2および/もしくは第4の対称軸に関して対称的に設計される。特に、回転軸をX方向またはY方向とする外部回転の影響によって生じる第1の回転子の傾きが、第1の検出電極構成を介して検出される。好ましくは、第1および第2の検出電極構成はそれぞれ少なくとも4つの電極面を有し、第1の回転子の4つの電極はそれぞれ第2および第3の対称軸に関して鏡面対称に配置され、第2の回転子の4つの電極は第2および第4の対称軸に関して鏡面対称に位置する。この時、個々の電極面の配置構成と横方向の形状(例えば台形)は、いずれも二重鏡面対称に従う。X方向に回転軸がある傾きは、このようにY方向に対向する2つの電極面間の差分測定によって実現され得る。同様に、これと直交する傾きも、それぞれ他方の電極対で決定され得る。対称的な電極構成によって、有利には、電気パルスによって電極に生じる非対称な力が回避される。X、Y検出用の検出電極は、例えば、回転子の下部(もしくは上部、または下部および上部)に設けられ得る。特に好適には、X検出電極を振動質量体の下部にも設けることができ、これらの面を失うことなく、二重に使用できる場合である。
【0025】
好ましい実施形態によれば、第3の検出電極構成が第1および第2の振動質量体の横方向の変位を検出するように構成され、第4の検出電極構成が第3および第4の振動質量体の横方向の変位を検出するように構成され、第3および第4の検出電極構成は基板に対して垂直に配置されている電極面を有することが企図される。Z方向を向いた角速度の検出は、特にレバー要素に設けられた、またはレバー要素に結合された、特に好適には垂直に配置された検出面を介して実現できる。これによって、有利には、レバー要素が検出運動時に共に移動するが、駆動運動には追従しないため、特に干渉の少ない角速度信号を得ることができる。好適には、X、Y方向に少なくとも4つの電極面が設けられ、外部から印加されるねじれ振動がちょうど差分信号で補償され、干渉信号が生じないように対で配置され、相互接続される。
【0026】
好ましい実施形態によれば、第3および第4の検出電極構成は、回転軸が主延在面に対して垂直に延びる揺動要素の回転運動を検出するように形成されている。回転軸がZ方向と平行に延びる外部回転の場合、振動質量体は横方向に変位し、揺動要素はZ方向を中心に回転運動することで(すなわち、基板と平行に傾くことによって)この運動に追従する。特に、例えば第1の揺動要素の一方の端部は第1の質量体の横方向の変位に追従し、反対側の端部は第3の質量体の横方向の変位に追従する。振動質量体の変位は、揺動要素の回転によって決定することができる。ここで、揺動要素の回転運動は、特に、第3および第4の検出電極構成が、基板に固定的に接続された電極と、揺動要素に固定的に接続されたさらなる電極とをそれぞれ有することによって検出することができる。これによって、付随する電極の相対的な変位によって、基板に対して相対的な揺動要素の回転を容量的に決定することができる。
【0027】
このセンサは、上述の検出電極構成を有する対称的な構成で、全方向において、外部加速度または回転加速度に対して不感応である。例外として、X方向に加速度がかかると、レバー要素が変位する場合があり、これは見かけ上のZ角速度に相当する。X方向に加速度がかかると、レバー要素は、回転運動ではなく、X方向に純粋に変位するようなバランスをとるように、追加アームと撓み要素を含むレバー要素の質量分布、およびレバー要素の懸架部を選択することが好適である。
【0028】
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明で詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は本発明に係る角速度センサの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図2a】
図2aは本発明に係る角速度センサの実施形態の駆動運動を模式的に示す図である。
【
図2b】
図2bは本発明に係る角速度センサの実施形態の駆動運動を模式的に示す図である。
【
図2c】
図2cは本発明に係る角速度センサの実施形態の駆動運動を模式的に示す図である。
【
図2d】
図2dは本発明に係る角速度センサの実施形態の駆動運動を模式的に示す図である。
【
図3】
図3はY方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図4】
図4はX方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図5a】
図5aはZ方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図5b】
図5bはZ方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図5c】
図5cはZ方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図5d】
図5dはZ方向に配向している外部角速度の検出運動を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は本発明に係る角速度センサのさらなる実施形態を模式的に示す図である。
【
図7a】
図7aは揺動構造の好ましい構成を示す図である。
【
図7b】
図7bは揺動構造の好ましい構成を示す図である。
【
図7c】
図7cは揺動構造の好ましい設計を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に、本発明に係るセンサ装置を模式的に示す。基本要素は、逆位相で振動する二重回転子で形成される。2つの回転子1、2は、それぞれ、2つの振動質量体3、4と2つの振動質量体5、6とに分けられ、これらは回転子の振動軸に垂直な方向に、ばね7を介して柔軟に支持される。2つの回転子は、第1の結合要素8を介して互いに結合され、この結合要素は、図示の形態では、負荷がかかるとX方向に広がるO字形部分が中央に配置される。回転子1、2の2つの分けられた質量体(5を有する3、および7を有する4)のうちの一方は、それぞれ揺動要素9または9’を介して互いに結合される。揺動要素9、9’によって、質量体4および6、または質量体3および5の逆位相の横方向の変位が強制される(
図5参照)。2つの揺動要素9、9’は、2つの追加アーム11、11’からなる第2の結合要素10を介して接続され、当該追加アーム11、11’は、撓み要素12を介して互いに接続される。図示の特に好適な配置構成では、2つの回転子1、2の結合構造8と2つの揺動要素9、9’の結合構造10とが2つの回転子の間に配置され、2つの結合要素8、10が交差する中央領域にメカニカルブリッジ30が実装され、この領域での2つの構造の独立した移動が可能となる。この目的のために、結合要素は、第1の結合要素8のO字形部分の下部に延在する2つの部分30(ブリッジ要素)を有する。
【0031】
図示の配置構成は、複数の軸対称性を有するため、基板への運動エネルギーの伝達と、対応する検出運動によって生成される測定信号におけるオフセットとを有利に防止することができる。2つの回転子1、2、それらの振動質量体3、4、5、6、揺動要素9、9’、および結合要素8、10は、それぞれX方向とY方向とに延びる二重回転子の中心軸に関して鏡面対称に設計される。ここで、図示の配置構成の左右の鏡面対称の軸は第1の対称軸と呼ばれ、下半分と上半分の鏡面対称は第2の対称軸として割り当てられる。さらに、各回転子1、2には個別にY方向に配向した鏡面軸があり、第3の対称軸または第4の対称軸と呼ばれる。好ましくは、振動質量体3、4、5、6のばね7と回転子1、2の係止要素13、14(
図2参照)は、回転子と同じ対称性を有する。
【0032】
図2は、二重回転子の駆動運動を示す。この運動を明確に示すために、この運動に関与しない第2の結合要素10は図示されていない。
図2aの矢印で示すように、回転子1、2は、駆動装置(図示せず)により逆位相のねじれ振動で動く。
図2aに示す時点では、2つの回転子1、2はゼロ位置にあり(
図2cの二重回転子の静止状態参照)、左側の回転子1は左回転を、右側の回転子2は右回転を行う。
図2bは対応する最大変位を模式的に示し、
図2dは逆の振動位相の最大変位を示す(回転子1が右回り、回転子2が左回り)。回転子1、2のねじれ振動を可能にするために、回転子1、2はそれぞれその重心領域に中央の切欠きを有し、当該切欠きは、ばね要素14を介して支持点13に接続される。
【0033】
図3は、Y軸に平行に及ぶ、外部回転が検出される振動質量体3、4、5、6の運動を模式的に示す。当該運動を明確に示すために、当該運動に関与しない第2の結合要素10は図示されていない。回転子1、2の逆位相のねじれ振動により、質量体3、4、5、6はそれぞれ、図示のゼロ位置を通過する際にX方向の正側または負側に移動する。外部回転に伴って作用するコリオリ力により、2つの質量体3、6は、X方向の負側への駆動運動時にそれぞれZ方向の負側(すなわち下方)に変位される。それに対応して、逆位相で移動する質量体4、5はZ方向の正側(上方)に変位する。質量体3、4、5、6の検出運動の結合は、それぞれがレバー要素15で構成される2つの揺動要素9、9’を介して行われ、レバー要素15は、2つのばね16(第2および第3のばね要素)を介して質量体4、6または質量体3、5にそれぞれ接続され、ばね17(第4のばね要素)を介して支持点18に接続されている。振動質量体3、4、5、6に接続されたレバー15の傾斜運動により、質量体3、4、5、6の検出運動は、3および5、または4および6がそれぞれ逆位相でZ方向に変位するように結合される。Z変位は、二重回転子の上部および/または下部に配置された検出電極構成19および29によって測定され、それぞれ電極対19または29の静電容量の変化の差が測定信号に含まれることになる。特に好適なことは、X検出電極19、29を、分かれた質量体3、4、5、6の下部に設けることによって、これらの表面が失われることなく、二重に使用できることである。
【0034】
図4は、X軸と平行に延びる、外部回転が検出される振動質量体3、4、5、6の運動を模式的に示す図である。この運動を明確に示すために、この運動に関与しない第1の結合要素8は図示されていない。検出運動の結合は、2つの揺動要素9、9’を介して行われる。コリオリ力により、回転子1の右側(Y方向の正の方向に動く)は上方に、左側(Y方向の負の方向に動く)は下方に傾く。第2の回転子2の傾きは、これとは鏡像的に生ずる。第1の結合要素8は、有利には、2つの回転子1、2の駆動振動を結合するだけでなく、2つの回転子1、2の傾斜運動を結合するように設計される。結合要素8のO字形部分によって、回転子1、2間に弾性的な接続が形成され、それを介して回転子1、2が非傾斜位置に引き戻される。検出は、
図3と同様に、検出電極構成19’および29’を介して行われる。
【0035】
図5は、Z軸と平行に延びる、外部回転が検出された振動質量体3、4、5、6の運動を模式的に示す図である。
図5aに示すように、(左回転の)第1の回転子1の質量体3、4はコリオリ力により回転子1の中心に向かって変位し、第2の回転子2の質量体5、6は回転子2の中心から離れるように変位する。このような質量体3、4、5、6の逆位相の運動は、一方では質量体3、5の横方向の検出運動と質量体4、6の横方向の検出運動とを互いに結合し、他方では追加アーム11、11’の間に配置されたばね要素12を介してこれらの対の運動を再び互いに結合するように、第2の結合要素10によって支持される。ここで、
図5aと
図5bは、左側の回転子1が左回転、右側の回転子2が右回転した場合の振動質量体の横方向の変位を示す。
図5dでは、左側の回転子1が右回転、右側の回転子2が左回転を行い、
図5cは比較のために二重回転子の静止状態を示す。
【0036】
図6は、本発明に係るセンサの概念の特に有利な実施態様を示す。ここで、回転子1、2の表面積が大きいため、表面を有効に利用できることがわかる。駆動電極23は、ここでは、回転子1、2に固定された櫛形電極の形態で実現されており、基板に固定された櫛形電極と静電的に結合する。このように駆動コーム23を回転子1、2と完全に一体化することは、この設計において、特に非常に大きな回転子に対して有利である。この実施形態では、3つの空間方向全てで直交補償を行うために表面24もさらに設けられているが、この設計ではこれらを積極的に動作させることはできない。製造工程において薄い第2の機能層しか作れない場合は、X方向には柔らかいがZ方向には硬くなるように構成され、一方の側では基板に、他方の側ではそれぞれのレバーアーム15に接続された追加のばね要素20によって、2つのレバーアーム11、11’間の曲がりを防ぐことが好適である。
【0037】
Z角速度の検出は、ここでは垂直に配置された検出面21、21’を介して実現され、検出面21、21’はレバーアーム15に配置されているか、代替的にレバーアームに結合されてもよい。このことは、レバーアーム15が検出運動に追従するものの、駆動運動を行わないことから、特に低干渉の角速度信号を得ることができるため特に有利である。さらに、好適なことは、X方向およびY方向に少なくとも4つの検出面21、21’を設けて、外部から印加されたねじれ振動がちょうど差分信号で補償され、干渉信号が生じないように、それらを対で配置し相互接続することである。
【0038】
図7は、レバー要素15の懸架部の正しい構成を示す。レバー要素15は、それぞれ支持点18に接続されたばね要素17を介して基板に係止されている。
図7a、7b、7cは、外部の加速度によってZ角速度信号に誤信号が生じないように、X方向に印加される加速度に対して揺動構造を対称にすることができることを示している。対称化は、ばね17の長さと、ばね17に対応する支持点18の位置決めとを適切に選択することにより行われる。
図7aは補償不足の配置構成、
図7bは正しく補償された配置構成、
図7aは補償過剰の配置構成を示す。
【0039】
センサは、上述の検出電極構成を有する対称的な構成で、全方向において、外部加速度または回転加速度に対して不感応である。例外として、X方向に加速度がかかると、レバーアーム15が変位する場合があり、これは見かけ上のZ角速度に相当する(
図7aおよび
図7c参照)。X方向の加速度が生ずるとき、レバー要素15は、回転運動ではなく、X方向に純粋に変位するようなバランスをとるように、追加アーム11、11’と撓み要素12を含むレバー要素15の質量分布、およびレバー要素15の懸架部18を選択することが好適である(
図7bを参照)。
【外国語明細書】