(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112020
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】燃料改質触媒、燃料改質方法および燃料改質装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20220725BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20220725BHJP
F02M 27/02 20060101ALI20220725BHJP
F02M 33/00 20060101ALI20220725BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20220725BHJP
【FI】
B01J23/63 M
C01B3/38
F02M27/02 J
F02M33/00 D
F02M25/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022006506
(22)【出願日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021007363
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228198
【氏名又は名称】エヌ・イーケムキャット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】本田 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕基
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EC03
4G140EC04
4G169AA03
4G169BA01B
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4G169BC71A
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4G169EC15Y
4G169ED05
4G169ED06
4G169ED07
4G169FA02
4G169FA06
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】優れた改質活性と、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れた燃料改質触媒を提供する。
【解決手段】炭化水素類を含む燃料を、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、白金族金属元素を含む触媒成分およびネオジムを含む助触媒成分と、前記触媒成分および助触媒成分を担持する担体とを備える燃料改質触媒とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素類を含む燃料を、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、
白金族金属元素を含む触媒成分およびネオジムを含む助触媒成分と、
前記触媒成分および助触媒成分を担持する担体と、
を備える、燃料改質触媒。
【請求項2】
白金族金属元素がロジウムを含む、請求項1に記載の燃料改質触媒。
【請求項3】
白金族金属元素がロジウムおよび白金を含む、請求項1または2に記載の燃料改質触媒。
【請求項4】
前記ネオジムが、前記白金族金属元素100質量部に対して、10質量部以上、1000質量部以下の量で担持されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
【請求項5】
前記担体が多孔質体からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
【請求項6】
前記燃料は、炭素数が2以上12以下の炭化水素類を50質量%以上含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
【請求項7】
前記燃料が自動車用燃料である、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料改質触媒を用いた燃料改質方法であって、
硫黄成分と炭化水素類とを含む燃料を、水蒸気の存在下で前記燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成することを含む、方法。
【請求項9】
内燃機関からの燃焼後排ガスおよび請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料改質触媒により、炭化水素類を含む燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加する、ことを含む燃料改質エンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料改質触媒に関し、より詳細には、炭化水素を含む燃料を水蒸気により改質して水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒、燃料改質方法および燃料改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、窒素酸化物の低減や燃費向上のため、燃焼後の排気ガスの一部を取り入れ再度吸気させる排気再循環(EGR)システムが知られている。近年、EGRシステムに熱交換型燃料改質器と燃料供給手段(燃料噴射弁)とを組み合わせて、燃料の一部を燃料改質器に通した後、気筒内で燃焼させる燃料改質エンジンシステムが提案されている。燃料改質エンジンシステムは、通常のEGRシステムに比べて、熱効率が大幅に向上するという利点がある。これは、内燃機関からの排気ガス中に含まれるH2O(水蒸気)と排気ガスの熱を利用して、水蒸気改質反応により燃料の一部から水素および一酸化炭素を生成させ、これらを内燃機関に燃料とともに供給することによって熱効率を向上させるものである。なお、排気ガスの熱は、水蒸気改質反応の吸熱反応に利用される。
【0003】
このような燃料改質エンジンシステムにおいては、燃料改質器の大きさに制限があるため、水蒸気改質反応に使用される活性種には、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)等の高い活性を有する白金族金属が改質触媒として用いられる。例えば、特許文献1には、式:A’1-xA”xB’1-yB”yO3(式中、A’はランタン(La)および/またはセリウム(Ce)であり、A”はランタン、カルシウム(Ca)、サマリウム(Sm)、セリウム、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、プラセオジム(Pr)の少なくとも1種であり、B’はコバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ガドリウム(Gd)の少なくとも1種であり、B”はルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)である。)で表されるペロブスカイト型複合酸化物を燃料改質用触媒として使用することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2は、Ruと、Irおよび/またはRhを、アルミナを主成分とする担体に担持させた水蒸気改質触媒を提案している。
【0005】
また、特許文献3は、Pt、Pd、Ir、RhおよびRuの少なくとも1種の活性成分Aと、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、クロム(Cr)、レニウム(Re)、Co、Ce、Feの少なくとも1種の金属、その酸化物、その合金またはその混合物である活性成分Baとを含む金属触媒を担体に担持させた燃料改質反応用触媒を提案している。
【0006】
また、特許文献4は、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)と、セリア以外の希土類酸化物とを含有する複合酸化物担体に、白金族金属を担持した触媒系において、該複合酸化物担体において、アルミニウムの表面組成が担体全体のアルミニウムの組成の1.5倍以上とした水蒸気改質触媒を提案している。
【0007】
さらに、特許文献5は、活性金属種であるロジウムをセリア-ジルコニア-アルミナ複合酸化物担体に担持した水蒸気改質触媒を提案しており、E20ガソリンの水蒸気改質を行ったことを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-224963号公報
【特許文献2】特開2008-55252号公報
【特許文献3】特開2008-149313号公報
【特許文献4】特開2016-165712号公報
【特許文献5】特開2018-143988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に自動車等の耐久消費財に用いられる部材には、10年ないし15年の長期にわたり性能低下を起こさないといった実用性が求められる。上記した燃料改質触媒においても、高温環境下や燃料由来の硫黄等の触媒被毒成分の共存する過酷な環境下で優れた性能が保持される必要がある。しかしながら、特許文献1~5に記載された改質燃料触媒は、水蒸気と炭化水素類とから水素および一酸化炭素を生成する活性種としては有用であるものの、改質反応性はまだ改善の余地がある。また、硫黄等の触媒被毒成分や、副反応により生成するカーボンの堆積による触媒劣化要因に対する耐久性が実用性の観点から不十分であった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、優れた改質活性と、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れた燃料改質触媒を提供することを目的としている。また、本発明の別の目的は、燃料改質触媒を用いた燃料改質方法および燃料改質エンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、改質燃料触媒の金属活性種として、従来用いられていたロジウム等の白金族化合物を単独で使うのではなく、白金族化合物と、ネオジムを助触媒成分として共存させることにより、従来の白金族系の単独触媒よりも改質活性が顕著に向上することに気付いた。そして、驚くべきことに、白金族系触媒の触媒毒である硫黄の共存下であっても長期間安定的な改質活性が維持されることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0012】
[1] 炭化水素類を含む燃料を、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、
白金族金属元素を含む触媒成分およびネオジムを含む助触媒成分と、
前記触媒成分および助触媒成分を担持する担体と、
を備える、燃料改質触媒。
[2] 白金族金属元素がロジウムを含む、[1]に記載の燃料改質触媒。
[3] 白金族金属元素がロジウムおよび白金を含む、[1]または[2]に記載の燃料改質触媒。
[4] 前記ネオジムが、前記白金族金属元素100質量部に対して、10質量部以上、1000質量部以下の量で担持されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
[5] 前記担体が多孔質体からなる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
[6] 前記燃料は、炭素数が2以上12以下の炭化水素類を50質量%以上含む、[1]~[5]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
[7] 前記燃料が自動車用燃料である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒。
[8] [1]~[7]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒を用いた燃料改質方法であって、
硫黄成分と炭化水素類とを含む燃料を、水蒸気の存在下で前記燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成することを含む、方法。
[9] 内燃機関からの燃焼後排ガスおよび[1]~[7]のいずれか一項に記載の燃料改質触媒により、炭化水素類を含む燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加する、ことを含む燃料改質エンジンシステム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低温(400℃~600℃程度)での改質活性が高く、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れた燃料改質触媒を実現することができる。また、本発明による燃料改質触媒を用いることによって、燃料を低温(400℃~600℃程度)でも効率よく改質することができ、さらに、硫黄成分を含有する燃料も効率よく改質することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<燃料改質触媒>
本発明の一実施形態による燃料改質触媒は、炭化水素類を含む燃料を、水素を含む合成ガスに改質するための燃料改質触媒であって、白金族金属元素を含む触媒成分およびネオジムを含む助触媒成分と、触媒成分および助触媒成分を担持する担体とを備えるものである。以下、本明細書においては、担体に担持された触媒成分および助触媒成分を併せて「触媒活性種」と呼ぶ場合がある。また、燃料改質触媒(即ち、触媒成分および助触媒成分と、両成分を担持する担体とを備えた触媒)を保持する部材を「基材」と呼ぶ場合がある。
【0015】
[触媒成分]
本発明による燃料改質触媒に使用される触媒成分は、白金族金属元素を含む。白金族金属元素としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)が挙げられ、これらのなかでも、改質反応における触媒活性の観点から、Ru、Rh、Pd、Ptが好ましく、Rh、Ptがより好ましい。これら元素は単独で使用されてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
白金族元素を2種以上組み合わせる例としては、特に限定されないが、酸化活性に優れる二種以上の白金族元素の組み合わせ、還元活性に優れる二種以上の白金族元素の組み合わせ、酸化活性に優れる白金族元素と還元活性に優れる白金族元素の組み合わせが挙げられる。このなかでも、相乗効果の一つの態様として、酸化活性に優れる白金族元素と還元活性に優れる白金族元素の組み合わせが好ましい。具体的には、PdとRhとの組み合わせ、PtとRhとの組み合わせ、RuとRhとの組み合わせが好ましく、これらのなかでも、PtとRhとの組み合わせがより好ましい。このような組み合わせとすることにより、水蒸気改質反応性に加えて、排ガス浄化性能、特にライトオフ性能がより向上する傾向にある。
【0017】
触媒成分が、Rhと、Rh以外の白金族金属元素を含む場合の割合は特に制限されないが、Rh100質量部に対し、Rh以外の白金族金属元素を通常1質量部以上、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、一方上限は通常500質量部以下、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下である。割合が上記範囲であると、燃料改質触媒としての性能が向上するとともに硫黄などの被毒物質による失活を抑制することができる。
【0018】
[助触媒成分]
本発明による燃料改質触媒は触媒活性種として、上記した白金族金属元素から選択される触媒成分に加えて、ネオジム(Nd)を含む助触媒成分を併用することに特徴を有している。本発明においては、燃料改質触媒の触媒活性種として従来使用されてきた白金族金属元素に加えて、希土類元素であるNdを金属活性種(助触媒成分)として共存させることにより、従来の白金族系の単独触媒よりも改質活性が顕著に向上するとともに、驚くべきことに、白金族系触媒の触媒毒である硫黄の共存下であっても長期間安定的な改質活性を維持することができる。この理由は明らかではないが下記のように考えられる。
【0019】
即ち、上記した白金族金属元素から選択される触媒成分と、希土類元素であるNdを含む助触媒成分とを併用することにより、触媒成分に対して助触媒成分が電子的な相互作用を及ぼし、触媒成分(白金族元素)が作用しやすい状態となっていることが考えられる。具体的な例として触媒成分がRhの場合、NdによってRhが還元された状態をとりやすくなり、Rh単独の触媒成分とした場合に比べて触媒活性が向上するものと考えられる。
また、助触媒成分を担体構造とする例(Ce-Zr粒子等)も知られているものの、本発明においては、担体の表面に触媒成分と助触媒成分とが存在することで、助触媒成分が担体の酸・塩基点として作用し、酸点で進行しやすい炭素析出や塩基点で進行しやすい硫黄被毒の緩衝材となり、触媒成分の耐久性も向上するものと考えられる。
特に、助触媒成分としての上記した特定元素は、触媒成分との好適な電子相互作用に加え、酸・塩基の双方の性質を示すため、各種被毒に対する高い緩衝作用を生じさせると推測している。
【0020】
上記した助触媒成分はネオジム以外の成分が含まれていてもよく、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm) 、サマリウム(Sm) 、ユウロピウム(Eu) 、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等の希土類元素;バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属;ニッケル(Ni)等の第10族元素等が挙げられる。上記した元素はネオジムと単独で併用してもよく、また2種以上と組み合わせて併用してもよい。なお、セリウムは触媒活性には好ましいものの、燃料の種類によっては(特に硫黄が微量でも含まれる場合)、長期耐久性に課題がある。
【0021】
触媒成分と助触媒成分との割合は特に制限されないが白金族金属元素100質量部に対して、助触媒成分は通常10質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、上限は通常2000質量部以下、好ましくは1000質量部以下である。両者の割合が上記範囲であると、白金族金属元素から選択される触媒成分の触媒活性(燃料改質能力)が向上すると共に、硫黄などの被毒物質による失活を抑制することができる。
なお、触媒成分として複数の元素が含まれている場合の配合割合は、その総和を意味するものとする。
【0022】
上記した触媒活性種の担持量は特に制限されず、目的とする設計条件やコスト要求等に応じて適宜必要量担持させればよいが、金属換算で担体100質量部に対して0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上15質量部以下であることがより好ましい。触媒活性種の担持量が少ないと炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応において十分な触媒活性が得られない傾向にあり、一方、担持量が多すぎると、金属元素が粗大粒子化し、触媒活性種の単位量あたりの触媒活性が向上しない傾向にある。触媒性能とコストとの両立を考慮すると、触媒活性種の担持量は、担体100質量部に対して0.4質量部以上8質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
担体に担持される触媒活性種(触媒成分および助触媒成分)は粒子状の形態で担持されていることが好ましい。この場合の触媒活性種の粒子径は、触媒活性の観点からは、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは2~50nmである。触媒活性種の粒子径が小さすぎると触媒活性を示さない酸化物状態になりやすい傾向にあり、一方、粒子径が大きすぎると、活性サイトの量が減少し、触媒活性種の単位量あたり触媒活性が低下する傾向にある。
【0024】
触媒活性種を上記したような所定の粒子径となるようにするには、例えば、触媒成分の供給源(一例として、白金族金属の硝酸塩または酢酸塩)および助触媒成分の供給源(一例として、上記した所定の元素の硝酸塩または酢酸塩)を含有する溶液に、担体を浸漬して所定量の溶液を担体に含浸させた後、これを焼成することによって担体に触媒を担持する方法を用い、当該溶液濃度(触媒活性種の濃度)や当該溶液の含浸量、焼成条件(温度および時間)を制御することにより、触媒粒子の粒子径を調整することができる。
【0025】
本発明による燃料改質触媒は、上記した触媒活性種が担体に担持されたものであるが、触媒活性種以外の他の成分を含有していてもよい。但し、担体を除く燃料改質触媒のうち、上記した触媒活性種の割合が70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、特に95質量%以上(100質量%含む)であることが好ましい。
【0026】
[担体]
上記した触媒活性種を担持する担体としては特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができるが、耐久性の観点から無機酸化物を好ましく使用するこができる。例えば、α、γ、δ、θなどのアルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)等の酸化物、ニオブ酸、ジルコニウム酸、タングステン酸、チタン酸等の水酸化物、活性炭、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし二種以上を混合してもよく、また、これらの複合酸化物等の複合化合物であってもよい。これらのなかでも耐久性の観点から、アルミナが好ましく用いられる。
【0027】
本発明の燃料改質触媒に使用される担体は多孔質体であることが好ましい。多孔質体としては、BET比表面積が30m2/g~600m2/gのものが挙げられる。多孔質体とするには、後記するような従来公知の方法により担体を作製する。例えば、触媒活性種成分および担体成分と、バインダー、造孔剤、溶媒等を、ボールミル等により混練することによりスラリーを調製し、所望の形状に成形した後に乾燥、焼成することにより造孔剤やバインダーが除去され、担体中に細孔が形成される。
【0028】
担体が多孔質体からなる場合の平均細孔径は、燃料ガスの拡散と触媒への接触の観点から、0.5nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましく、2nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。担体中の細孔径が大き過ぎると触媒との接触回数が減り反応が進みにくくなり、細孔径が小さ過ぎると燃料ガスが拡散しづらくなり、同様に反応が進みづらくなるためである。なお、本明細書において、平均細孔径は、任意に10個選択した個々の担体について、窒素吸着型の細孔分布計などにより細孔径を測定し、これら10個の細孔径の平均値を算出することにより求めることができる。
【0029】
[基材]
本発明の燃料改質触媒は単独で使用することもできるが、適当な基材に保持されていてもよい。基材として特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。例えば、担体として、アルミナ、シリカ、ムライト(アルミナ-シリカ)、コージェライト、コージェライト-アルファアルミナ、ジルコンムライト、アルミナ-シリカマグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト(sillimanite)、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト(petalite)、アルミノシリケート類、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックスや、耐火性金属、例えばステンレス鋼または鉄を基とするフェライト系ステンレス等の耐食性合金等の金属材料を挙げることができる。上記した無機または金属材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記したなかでも、アルミナ、シリカ、ムライト、コージェライト、ステンレススチール、炭化ケイ素が好ましく、コージェライト、ステンレススチール、炭化ケイ素を含むのがより好ましい。この場合、基材全体に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは99質量%以上(100質量%を含む)が上記材料からなる基材を用いるとよい。
【0030】
また、基材は、上記した材料を主成分として他の成分が含まれていてもよい。例えば、担体の耐熱性向上で知られているようなFe2O3、SiO2、Na2O等を上記した材料に添加してもよい。
【0031】
基材の形状は特に制限されるものではなく、球状、円柱状、ビーズ状、ペレット状、角柱状、打錠状、針状、膜状、ハニカムモノリス状等、用途に応じて種々の形状とすることができる。これらのなかでも、ビーズ状、ペレット状、ハニカムモノリス状であるのが好ましい。したがって、本発明における好ましい実施形態による基材は、材料として、アルミナ、シリカ、ムライト、コージェライト、ステンレススチールからなり、その形状は、ビーズ状、ペレット状またはハニカムモノリス状であるものが特に好ましいと言える。
【0032】
基材の形状がビーズ状またはペレット状である場合の基材の平均径は、ハンドリング性や容器内での流動性の観点から、0.5mm以上10mm以下であるのが好ましく、0.7mm以上5mm以下であるのがより好ましく、1mm以上3mm以下であるのがさらに好ましい。また、担体の形状が球状である場合の担体の平均径(直径)は、ハンドリング性や容器内での流動性の観点から、1mm以上10mm以下であるのが好ましく、1mm以上5mm以下であるのがより好ましい。なお、担体の平均径は、光学顕微鏡などを用いて観察し、任意に選択した100個の担体(触媒粒子)の長径および短径を測定して長径と短径の平均を粒子径として算出し、100個の個々の粒子の粒子径の平均値を算出することにより求めることができる。
【0033】
<燃料改質触媒の製造方法>
上記した燃料改質触媒は、触媒活性種成分(触媒成分および助触媒成分)を担体に担持することによって得ることができる。担持方法は特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適用することができ、例えば、触媒成分の供給源(一例として、白金族金属の硝酸塩または酢酸塩)および助触媒成分の供給源(一例として、ネオジムの硝酸塩または酢酸塩)とを含む混合触媒溶液を担体に含浸させた後、還元や焼成を行うことで、担体上に触媒活性種成分を粒子状に析出させることができる。あるいは、触媒成分供給源を先に担体に含浸させ、次いで助触媒成分供給源を担体に含浸させた後に還元や焼成を行うことで両者を担持させたり、逆に、助触媒成分供給源を先に担体に含浸させ、次いで触媒成分供給源を担体に含浸させた後に還元や焼成を行うことで両者を担持させてもよい。その後必要に応じて、洗浄、焼成、水素還元等の処理を行うことで、燃料改質触媒を製造することができる。
【0034】
触媒活性種成分の供給源としては、上記した白金族金属元素(触媒成分)またはネオジムを含む希土類元素もしくはアルカリ土類元素(助触媒成分)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアンミン塩等またはそれらの錯体が挙げられる。例えば、白金族金属元素がロジウムである場合は、担持されやすさと高分散性の観点から、ロジウム(Rh)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアミン塩等またはそれらの錯体の溶液が挙げられ、それらのなかでも硝酸塩が好ましい。また、白金族金属元素が白金である場合は、担持されやすさと高分散性の観点から、白金(Pt)の酢酸塩、炭酸塩、硝酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩、ジニトロジアミン塩等またはそれらの錯体が挙げられ、それらのなかでもジニトロジアミン塩が好ましい。
【0035】
また、本発明の燃料改質触媒を、例えば内燃機関向けの燃料改質装置に用いる場合は、ハニカムモノリス状等の基材に、燃料改質触媒が保持された状態で用いることが好ましい。以下に、本発明の燃料改質触媒を用いた内燃機関向け燃料改質用ハニカム触媒の製造方法について説明する。
【0036】
一例として、触媒成分の金属塩、助触媒成分の金属塩、担体、適宜必要に応じてバインダー、分散剤および溶媒を混合してスラリー溶液を調製し、該スラリー溶液をウォッシュコート法等でハニカムモノリス状基材に含浸させ、スラリー溶液を含浸させた基材を焼成することにより燃料改質触媒が保持されたハニカム触媒を得ることができる。
【0037】
上記スラリー溶液の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水(好ましくはイオン交換水および蒸留水等の純水)等の溶媒が挙げられる。なお、このような金属塩の溶液の濃度としては、特に制限されないが金属塩のイオンとして0.001mol/L以上、0.5mol/L以下であることが好ましい。
【0038】
スラリー溶液を含浸させた基材を焼成する際の温度は、特に制限されないが通常は200℃以上、800℃以下である。焼成温度が低すぎると触媒活性種元素の供給源が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にある。一方、焼成温度が高すぎると、担持した触媒活性種元素が粗大粒子化して炭化水素類からなる燃料の水蒸気改質反応における触媒活性が低下する傾向にある。
【0039】
また、焼成する時間も適宜調整することができるが、通常は0.1時間以上、100時間以下であることが好ましい。焼成時間が短すぎると触媒活性種元素の供給源物が十分に熱分解せず、触媒活性を示すメタル状態になりにくくなるため、活性が低くなる傾向にある。一方、焼成時間を必要以上に長くしても効果は得られず、コストと単位時間あたりの生産量が低下する傾向にある。
【0040】
担持された触媒活性種の量は、ICP発光分光分析装置によって測定することができる。担体に含浸させる各供給源の濃度や量を適宜調整することにより、触媒成分の100質量部に対して、助触媒成分を50質量部以上、1000質量部以下の量で担持させることができる。
【0041】
<燃料改質触媒の用途>
本発明による燃料改質触媒は、内燃機関向けのEGR用途はもちろんのこと、そのまま単独の触媒として使用することもでき、水蒸気改質反応に係わる様々な装置における触媒として利用可能である。例えば製油所などの水素プラントや、定置型分散電源における燃料電池用水素製造装置、天然ガスからの水素製造装置等にも適用することができる。
【0042】
<燃料改質方法>
本発明による燃料改質触媒を用いることによって、炭化水素を水蒸気改質することができる。すなわち、炭化水素を含む燃料を水蒸気の存在下で燃料改質触媒と接触させて、水素および一酸化炭素を生成させることができる。
【0043】
本発明の燃料改質方法において、炭化水素類を含む燃料と水蒸気とはそれぞれ独立して反応装置に供給してもよいし、予めこれらを混合した後、反応装置に供給してもよい。
反応装置に水蒸気を供給する際は、改質後の水素燃焼後の排ガスを反応装置に提供する方法を用いると、別途水蒸気供給源を用意しなくともよくなるため装置が簡便となり好ましい。
【0044】
燃料に含まれる炭化水素類としては特に制限はなく、例えば、アルカン類、アルケン類、アルキン類、芳香族化合物、アルコール類、アルデヒド類等が含まれるものが挙げられ、具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖状または分岐状の飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式飽和炭化水素、単環または多環芳香族炭化水素等のガス状または液状の炭素数が2以上12以下の炭化水素類が好ましく、炭素数2以上8以下の炭化水素がより好ましい。これらのなかでも飽和脂肪族炭化水素が好ましく、燃料の50%以上が飽和脂肪族炭化水素であることがより好ましい。
【0045】
また、炭化水素類からなる燃料としては、エタノール、ガソリン、ディーゼル燃料(軽油)、天然ガス、炭化水素ガス、バイオディーゼル等の炭化水素類からなるバイオマス燃料を用いることができる。更に、自動車等の内燃機関において炭化水素類からなる燃料として使用する場合には、例えば、エタノールとガソリンとの混合燃料を用いることができる。このような混合燃料としては、エタノールはオクタン価が高いので、オクタン価が低いガソリン(例えば、30~85の範囲)とエタノールを混合することにより、通常のガソリン燃料と同等の80~100の範囲のオクタン価に調整した混合燃料を得ることができ、自動車等の内燃機関の燃料として好適に用いることができる。
【0046】
炭化水素類を含む燃料のうち、常温で液体であるため取り扱いやすく、安全性が高く、水(水蒸気)との親和性が高く、入手がしやすいという観点から、本発明の燃料改質方法を、天然ガス、メタノール、エタノールおよびガソリンに対して適用することが好ましく、エタノール、ガソリン、およびエタノールとガソリンとの混合燃料に対して適用することがより好ましい。
【0047】
炭化水素類を含む燃料と排ガス中に含まれる水蒸気との混合比は特に制限はないが、例えば、炭化水素類を含む燃料がエタノールの場合においては、水蒸気と炭素のモル比(S/C)が0.2~10であることが好ましく、0.4~2であることがより好ましい。本発明の燃料改質触媒を用いることによって、コーキングが発生していた低S/Cの条件下においても炭化水素類を含む燃料を改質することができる。
【0048】
また、改質反応の温度としては250~800℃が好ましく、350~700℃がより好ましい。本発明の燃料改質触媒によれば、従来、触媒活性が低く、炭化水素類を含む燃料の水蒸気改質が困難であった400℃以下の低温においても炭化水素類からなる燃料を改質させることが可能となる。また、550℃以上の高温においても高い活性を保持することが可能となり、炭化水素類からなる燃料を水蒸気により改質させることが可能となる。
また、熱源として内燃機関燃焼後の排ガスを反応器に供給することで、別途熱源の用意が不要となり、構造やコスト的に優位となる。
【0049】
また、本発明による燃料改質触媒は、耐硫黄被毒性に優れているため、燃料が硫黄成分を含む場合であっても、安定した触媒性能を長期間にわたって発揮することができる。燃料に含まれる硫黄成分としては、例えば、S、S2-、SO、SO2、SO3、SO4
2-等のほか、Sを含む化合物が挙げられる。主な硫黄成分の由来としては、燃料に含まれる硫黄成分との接触や燃料燃焼後の排ガスに含まれる硫黄成分が挙げられる。
【0050】
<燃料改質エンジンシステム>
ガソリンを燃料に含み、水蒸気及び熱源に内燃機関の排ガスを用いたEGRシステムは、改質装置の構造が簡便となりコスト的に優位となるが、燃料改質触媒と硫黄分との接触量も増え、触媒寿命が低下するという問題が発生しやすくなる。
これに対し、本発明による燃料改質触媒を用いた燃料改質方法は、EGRシステムに組み合わせることにより、熱効率を向上させることができる。例えば、内燃機関からの燃焼後排ガスに含まれる水蒸気を利用して、炭化水素類を含む燃料を水蒸気の存在下で本発明による燃料改質触媒と接触させることにより、燃料の一部または全部を水素および一酸化炭素に改質し、得られた水素および一酸化炭素を、内燃機関へ供給する燃料に添加することで、エンジンの熱効率を向上させることができる。
【実施例0051】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
γ-アルミナ粉末(平均粒子径が28μm、BET比表面積が141m2/g)に、硝酸ネオジム水溶液を含浸させ、乾燥させた。次いで、硝酸ネオジム水溶液(Nd2O3換算で約25wt%)を含浸させたγアルミナ粉末に、硝酸ロジウム水溶液(Rh換算で約7wt%)を含浸させた後、大気雰囲気化中、600℃で30分間焼成して、ロジウム-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。各元素の担持量を、ICP発光分光分析装置により測定したところ、ロジウム0.8質量%、ネオジム4.0質量%であった。
得られたロジウム-ネオジム担持アルミナ粉末に、硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて粒子径(D90)が12μm以下となるまで湿式粉砕し、触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0053】
[実施例2]
硝酸ネオジム水溶液の含浸量を変えた以外は実施例1と同様にしてロジウム-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。各元素の担持量を実施例1と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%、ネオジム2.0質量%であった。
次いで、実施例1と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0054】
[実施例3]
硝酸ネオジム水溶液の含浸量を変えた以外は実施例1と同様にしてロジウム-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。各元素の担持量を実施例1と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%、ネオジム10.0質量%であった。
次いで、実施例1と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0055】
[実施例4]
γ-アルミナ粉末に、硝酸ネオジム水溶液(Nd2O3換算で約25wt%)を含浸させ、乾燥させた。次いで、硝酸ネオジム水溶液を含浸したγアルミナ粉末に、白金塩溶液(NECC社製、製品名:A-solt)を含浸させ、乾燥させた。続いて、白金塩水溶液を含浸させたγアルミナ粉末に上記した硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、乾燥した以外は実施例1と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。各元素の担持量を、実施例1と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%、白金0.16質量%、ネオジム4.0質量%であった。
【0056】
[実施例5]
白金塩溶液の含浸量を変えた以外は実施例4と同様にしてロジウム-白金-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。各元素の担持量を実施例4と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%、白金0.4質量%、ネオジム4.0質量%であった。
次いで、実施例4と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0057】
[実施例6]
白金塩溶液の含浸量を変えた以外は実施例4と同様にしてロジウム-白金-ネオジム担持アルミナ前駆体を得た。各元素の担持量を実施例4と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%、白金0.8質量%、ネオジム4.0質量%であった。
次いで、実施例4と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0058】
[比較例1]
γ-アルミナ粉末に硝酸ネオジム水溶液を含浸させなかった以外は、実施例1と同様にしてロジウム担持アルミナ前駆体を得た。元素の担持量を、実施例1と同様にして測定したところ、ロジウム0.8質量%であった。
次いで、実施例1と同様にして触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
【0059】
<水素生成評価>
上記のようにして得られた実施例1および比較例1の各触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を乾燥させた固形物を粉末状にしに、この粉末を硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて平均粒子径が12μmとなるまで湿式粉砕し、触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
得られたスラリー溶液を乾燥させた固形物を粉末状にしたものを反応管に50mg充填した後、反応管を600℃に昇温し、反応管にレギュラーガソリンと大気の混合ガスを模した炭化水素類を含む原料ガス(O
2:0.5vol%、iso-オクタン:0.045vol%、Ar:5vol%、H
2O:1vol%、He:balance(S/C=3.5))を300cc/分の流量にて5分間供給し反応させた。反応管を経たガスの成分を質量分析装置を用いて分析し、原料ガスが改質されることで得られた水素発生量を評価した。評価結果は
図1に示されるとおりであった。
また、実施例1~6および比較例1の触媒担持アルミナ粉末を用いて、上記と同様にして水素発生量を評価した。評価結果は下記表1に示されるとおりであった。
【0060】
【0061】
[実施例7]
実施例1において、担体への溶液の含浸量を変更することにより、触媒担持量がロジウム1.33質量%、ネオジム4.0質量%とした触媒担持アルミナ粉末を調製し、得られたロジウム-ネオジム担持アルミナ粉末に、硝酸および水を添加しpHを4~5に調整した後、ボールミルにて平均粒子径が12μmとなるまで湿式粉砕し、触媒担持アルミナ粉末のスラリー溶液を調製した。
次いで、コージェライト製のハニカム基材(セル数/ミル厚:600cpsi/3.5mil)を用意し、ハニカム基材の端部をスラリー溶液に浸漬させ、ハニカム基材の反対側の端部側から減圧吸引して、基材表面にスラリー溶液を含浸させた(ウォッシュコート量150g/L)。
このようにしてスラリー溶液を含浸させたハニカム基材を150℃で乾燥させ、大気雰囲気下、450℃で焼成することにより、触媒担持ハニカム基材を得た。得られた触媒担持ハニカム基材の触媒担持量(触媒容積に対する触媒量)はRh 2.0g/L、ネオジム6.0g/Lであった。
【0062】
得られた触媒担持ハニカム基材を用いて、エンジン排ガスを模したガス(CO:0.71%、HC:0.12%、NO:0.03%、O2:0.69%、CO2:14%、H2O:14%、N2:Balance、A/F=14.7 with パーターベーション(パーター O2:0.31%、CO:63%)、A/F±0.2 2.5Hz)とレギュラーガソリンを模したガス(C10H22:0.362%、SO2:0.31%)とを混合した硫黄含有混合ガスの水蒸気改質を行い、レギュラーガソリン車におけるEGR使用環境(S/C=3.5、温度600℃、SV≒50000h-1)を模した条件にて、水素発生量および被毒物質存在下での耐久性評価を行った。原料ガスに切り替え、反応が安定した段階を0秒とし、0秒時点での水素発生量を100とした経時的な水素発生量の評価を行った。
【0063】
[比較例2]
触媒担持量がロジウム2質量%とした触媒担持アルミナ粉末のスラリーを用い、ウォッシュコート量を100g/Lとした以外は実施例7と同様にして触媒担持ハニカム基材を製造し、上記と同様にして経時的な水素発生量の評価を行った。なお、0秒時点での実施例13および比較例2の水素発生量は、ほぼ同値であった。
【0064】
【0065】
表1の評価結果からも明らかなように、白金族金属元素からなる触媒成分に加えてネオジムを助触媒成分として併用した担持触媒(実施例1~6)を充填した系では、従来の白金族金属元素のみからなる担持触媒(比較例1相当)を充填した系と比較して水素発生量が多く、触媒性能が向上していることがわかる。
【0066】
また、表1の評価結果からも明らかなように、触媒成分としてロジウムと白金とを併用した担持触媒(実施例4~6)を充填した系では、触媒成分がロジウム単体の担持触媒(実施例1)を充填した系と比較して水素発生量がより多く、触媒性能が一層向上していることがわかる。
【0067】
また、ガソリン車に本発明の燃料改質触媒を適用した場合を模した表2の評価結果からも明らかなように、白金族金属元素からなる触媒成分に加えてネオジム助触媒成分を併用した担持触媒(実施例7)は、硫黄分を含む燃料の改質に使用した場合であっても、従来の白金族金属元素のみからなる担持触媒(比較例2)と比較して、経時的に水素発生量の低下が緩やかであり、触媒被毒等の劣化要因に対する耐久性に優れていることがわかる。