(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112027
(43)【公開日】2022-08-01
(54)【発明の名称】抗EGFR抗体-薬剤コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C07K 16/22 20060101AFI20220725BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220725BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20220725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220725BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220725BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220725BHJP
【FI】
C07K16/22 ZNA
C07K16/46
A61P35/00
A61K38/07
A61K39/395 L
A61K47/68
C12N15/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022006937
(22)【出願日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】63/139,766
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン・アール・ボガート
(72)【発明者】
【氏名】ミラン・ブランコ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・シー・フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジェイ・サワーズ
(72)【発明者】
【氏名】カメル・イゼラドジェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・イー・ハーラン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB13
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF11
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA59
4C084DA32
4C084NA13
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA14
4C085AA27
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA51
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA28
4H045FA50
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】Bcl-xLを阻害する新規な抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体薬剤コンジュゲート(ADC)の調製方法、およびそれを用いて非小細胞肺がんを治療する方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するBcl-xL阻害剤にコンジュゲートした、特定のアミノ酸配列を有する抗ヒト上皮成長因子受容体(hEGFR)抗体薬剤コンジュゲートを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を含む抗ヒト上皮成長因子受容体(hEGFR)抗体-薬剤コンジュゲート:
【化1】
(式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗hEGFR抗体であり、mは2である)。
【請求項2】
式(I)の構造が、抗体Abに重鎖のC220を介してコンジュゲートしている、請求項1に記載の抗体-薬剤コンジュゲート。
【請求項3】
式(II)の構造を含む、請求項1に記載のADC:
【化2】
【請求項4】
式(III)の構造を含む、請求項1に記載のADC:
【化3】
【請求項5】
抗体薬剤コンジュゲート(ADC)を製造する方法であって、モノクローナルヒトIgG
1抗EGFR抗体を、以下の構造を含むシントンとコンジュゲートさせて、
【化4】
抗EGFR抗体にコンジュゲートした薬剤-リンカーを含む抗体-薬剤コンジュゲートを形成するステップを含み、前記抗EGFR抗体が、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、前記薬剤-リンカーが、前記抗体に重鎖のC220を介してコンジュゲートしている、方法。
【請求項6】
以下の構造を含む抗ヒト上皮成長因子受容体抗体-薬剤コンジュゲートを調製する製法であって:
【化5】
(式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗ヒト上皮成長因子受容体抗体であり、mは2である。)
前記製法は、
約16~24時間、有効量のジスルフィド還元剤を含む緩衝水溶液中で抗体を処理することと、
還元された抗体溶液に、以下の構造を有するシントンを含むジメチルアセトアミドの溶液を添加し、
【化6】
反応させて、ADCを形成させることと
を含み、
電子スプレー質量分析によって測定したとき、質量が、スクシンイミドのスクシンアミドへの各加水分解において18±2amuシフトし、
ADCが、任意選択的に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される、製法。
【請求項7】
請求項5又は6のいずれか一項により調製された抗体-薬剤コンジュゲート。
【請求項8】
非小細胞肺がんを治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療上有効量の請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体-薬剤コンジュゲートを投与することを含む方法。
【請求項9】
有効量の請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体-薬剤コンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、Bcl-xLを阻害する新規な抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体薬剤コンジュゲート(ADC)に関し、これは、かかるADCを用いた組成物及び方法、並びにかかるADCの作製方法も含む。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体(HER-1又はErb-B1としても公知であり、本明細書においては「EGFR」と称する。)は、c-erbBプロトオンコジーンによってコードされる170kDaの膜貫通受容体である。(Modjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996)、Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002))。ヒトEGFRの配列は、SwissProtデータベースエントリーP00533として提供されている。
【0003】
EGFRによるリガンド結合は、受容体のホモ-及び/又はヘテロ二量体化、並びに鍵となる細胞質側の残基及びMUC1の自己リン酸化を始動させる。リン酸化されたEGFRは、複雑な下流側のシグナル伝達カスケードを活性化する。EGFRの過剰発現は、多数のヒトの悪性症状において報告され、患者の予後不良と関連するものであることが分かっている。(Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002)、及びModjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996))。
【0004】
抗体薬剤コンジュゲートは、化学リンカーを介して細胞毒性薬剤にコンジュゲートした抗体を含む治療薬のクラスを表す。皮膚におけるEGFR発現、及びEGFRを標的とする抗体における公知の皮膚毒性のため、EGFRに対するADCを設計することは困難であった。抗EGFR抗体及び抗体-薬剤コンジュゲートは、米国特許第9,493,568号及び米国特許出願公開第2019/0343961号にも記載されており、それらは全体が本明細書において参照により組み込まれる。EGFR ADCの第1世代は、デパツキシズマブ マフォドチンであり、それはマレイミドカプロイルリンカー及び微小管細胞毒のモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を使用するものである。しかしながら、depatux-mの投与を受ける患者は、頻繁な眼の副作用(例えば、ドライアイ、不明瞭な見え方、目の痛み、羞明、角膜炎、角膜沈着及び流涙)を経験する。
【0005】
depatux-mの眼毒性を踏まえ、EGFRを標的とする第2世代のADCであるロサツキシズマブ ベドチンは、異なる毒素とコンジュゲートさせたものであった。このADCの抗体成分であるロサツキシズマブは親和性成熟されたものであり、それはdepatux-mと比較しEGFR(野生型及び突然変異体)に対してより高い親和性を有するものであった。しかしながら、比較的高い頻度でインフュージョンリアクションが生じたため、ロサツキシズマブ ベドチンのフェーズ1試験は早期に中止された。Cleary et al.,Investigational New Drugs 38,1483-1494(2020)を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9,493,568号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2019/0343961号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Modjtahedi et al.,Br.J.Cancer 73:228-235(1996)
【非特許文献2】Herbst and Shin,Cancer 94:1593-1611(2002)
【非特許文献3】Cleary et al.,Investigational New Drugs 38,1483-1494(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、新規な抗EGFR ADCの開発に対するニーズが存在し、特にBcl-xLを選択的に標的がん細胞(例えば、EGFRvIII発現細胞)に送達することができるEGFR ADCは、重要な発見となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
1つの態様は、抗体Abにコンジュゲートした式(I)の構造を含む、抗ヒト上皮成長因子受容体(hEGFR)抗体薬剤コンジュゲートに関し:
【0010】
【化1】
(式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗hEGFR抗体であり、mは2である)。実施形態において、式(I)の構造は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗体Abにコンジュゲートしている。実施形態において、本開示は、非小細胞肺がんを治療するための、抗EGFR抗体薬剤コンジュゲートの使用方法を提供する。実施形態において、本開示は、上記抗hEGFR抗体薬剤コンジュゲートを含む医薬組成物を提供する。
【0011】
他の態様は、抗体Abにコンジュゲートした式(II)の構造を含む、抗ヒト上皮成長因子受容体抗体-薬剤コンジュゲートに関し:
【0012】
【化2】
(式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗ヒト上皮成長因子受容体抗体であり、mは2である)。実施形態において、式(II)の構造は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗体Abにコンジュゲートしている。実施形態において、本開示は、非小細胞肺がんを治療するための、抗EGFR抗体薬剤コンジュゲートの使用方法を提供する。実施形態において、本開示は、上記抗hEGFR抗体薬剤コンジュゲートを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
他の態様は、抗体Abにコンジュゲートした式(III)の構造を含む、抗ヒト上皮成長因子受容体抗体-薬剤コンジュゲートに関し:
【0014】
【化3】
(式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗ヒト上皮成長因子受容体抗体であり、mは2である)。実施形態において、式(III)の構造は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗体Abにコンジュゲートしている。実施形態において、本開示は、非小細胞肺がんを治療するための、抗EGFR抗体薬剤コンジュゲートの使用方法を提供する。実施形態において、本開示は、上記抗hEGFR抗体薬剤コンジュゲートを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
他の態様は、抗体薬剤コンジュゲート(ADC)を作製する方法に関し、それはモノクローナルヒトIgG1抗EGFR抗体を、構造(AAA)を含むシントンとコンジュゲートして、
【0016】
【化4】
抗EGFR抗体にコンジュゲートした薬剤-リンカーを含む抗体-薬剤コンジュゲートを形成するステップを含み、抗EGFR抗体は、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施形態において、薬剤-リンカーは、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗体にコンジュゲートしている。
【0017】
他の態様は、式(I)の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)の調製のための製法に関し:
【0018】
【化5】
式中、Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗ヒト上皮成長因子受容体抗体であり、
mは2であり、
製法は、
約16~24時間、有効量のジスルフィド還元剤を含む緩衝水溶液中で抗体を処理することと、
還元された抗体溶液に、以下の構造を有するシントンを含むジメチルアセトアミドの溶液を添加することと:
【0019】
【化6】
反応させて、ADCを形成させることと
を含み、
電子スプレー質量分析によって測定したとき、質量は、スクシンイミドのスクシンアミドへの各加水分解において18±2amuシフトし、
ADCは任意選択的に疎水性相互作用クロマトグラフィ(HIC)によって精製される。実施形態において、緩衝水溶液は、約pH7.4で緩衝された水溶液である。実施形態において、抗体は、約4℃で約16~24時間、緩衝水溶液中のジスルフィド還元剤で処理される。実施形態において、還元された抗体は、シントンを含むジメチルアセトアミドの溶液に添加され、反応は約60分間実施され、ADCが形成される。実施形態において、ADCが形成された後、約2当量のN-アセチル-L-システインによって反応はクエンチされる。実施形態において、製法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)により精製することを更に含む。実施形態において、製法は、pH緩衝液(例えば約8~9のpH緩衝液)によりスクシンイミドを加水分解することを更に含む。実施形態において、製法は、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)により精製することを更に含む。実施形態において、リンカー-薬剤は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗EGFR抗体Abにコンジュゲートされる。
【0020】
他の態様は、モノクローナルヒトIgG1抗EGFR抗体を、以下の構造を含むシントンとコンジュゲートさせるステップを含む方法により調製された、抗体薬剤コンジュゲート(ADC)に関し、
【0021】
【化7】
抗体は、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施形態において、薬剤-リンカーは、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗EGFR抗体にコンジュゲートしている。
【0022】
他の態様は、式(I)の抗体薬剤コンジュゲート(ADC)の調製のための製法に関し:
【0023】
【化8】
式中、Abは、番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むIgG1抗ヒト上皮成長因子受容体抗体であり、
mは2であり、
製法は、
約4℃で約16~24時間、有効量のジスルフィド還元剤を含む約pH7.4の緩衝水溶液中で抗体を処理することと、
還元された抗体溶液を周囲温度に加温することと、
還元された抗体溶液に、以下の構造を有するシントンを含むジメチルアセトアミドの溶液を添加することと:
【0024】
【化9】
約60分間反応させて、ADCを形成させることと、
約2当量のN-アセチル-L-システインによってクエンチすることと、
疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製することと、
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製することと、
約8~9のpHの緩衝液によってスクシンイミドを加水分解することと、
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)によって精製することと
を含み、
電子スプレー質量分析によって測定したとき、質量は、スクシンイミドのスクシンアミドへの各加水分解において18±2amuシフトし、
ADCは、任意選択的に疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製される。実施形態において、リンカー-薬剤は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して抗EGFR抗体にコンジュゲートしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、FACSによって評価した、A-431(ヒト扁平上皮細胞癌)及びNCI-H1650(非小細胞肺がん)への、AM2-AAA、AM2及びMSL109 hIgG1の結合を示す。
【
図2】
図2は、(A)A-431(ヒト扁平上皮細胞癌)及び(B)NCI-H1650(非小細胞肺がん)細胞における、AM2-AAA、MSL109 hIgG-AAA又はAM2による処理の後、AM2-AAAがBIM-Bcl-xL複合体を破壊し、カスパーゼ活性化及びBcl-xL-BIM複合体の破壊を促進することを示す。
【
図3】
図3は、AM2B-AAA、AM7-AAA、DTX及びAM2B-AAA又はAM7-AAAを有するDTXの組合せによる処理の後の、EBC-1(ヒト肺扁平上皮癌)及びH441(ヒト肺腺がん)異種移植の成長の阻害を示す。AM7はAM2Bより高い親和性抗体であるにもかかわらず、AM2B-AAAは、前臨床有効性モデルにおいてAM7-AAAと同程度の効力を示した。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(配列表の簡単な説明)
本明細書において開示される配列番号1から配列番号30のアミノ酸配列を含む、「ABV12608USO1 Sequence Listing_ST25.txt」と題する配列表は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。配列表は、EFSを通じて、ASCIIテキストフォーマットにおいて本明細書と共に提出された。配列表は最初に、2022年1月13日に製造され、71,052バイトのサイズである。
【0027】
(詳細な説明)
本開示の各種の態様は、新規な抗EGFR抗体-薬剤コンジュゲート(ADC、また免疫複合体とも呼ばれる。)及びその医薬組成物に関する。特に、本開示は、Bcl-xL阻害剤を含む新規な抗EGFR ADC、ADCを合成するために有用なシントン、ADCを含む組成物、ADCを製造する方法、及びADCを使用する各種の方法を記載する。
【0028】
当業者に明らかなように、本明細書において記載される各種のBcl-xL阻害剤、ADC及び/又はADCシントンは、塩の形態であってもよく、また特定の実施形態では、特に薬学的に許容される塩であってもよい。十分に酸性の、十分に塩基性の、又はそれらの両方の官能性基を有する本開示の化合物は、いくつかの無機塩基、並びに無機及び有機酸のいずれかと反応して塩を形成することができる。あるいは、固有的に荷電された化合物(例えば四級窒素を有するもの)は、適切な対イオンと共に塩を形成することができる。
【0029】
本明細書の開示において、構造図及び命名法が含まれる場合であって、命名法が構造図と矛盾する場合、構造図が優先される。
【0030】
定義
本発明をより容易に理解するため、特定の用語については最初に定義する。加えて、パラメータの数値又は数値範囲が記載されるときは、記載された値の中間の値及び範囲も、本発明の一部であることが意図されている点に留意すべきである。更に、本明細書において特に定義されない限り、本開示に関連して使用する科学的及び技術的用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するものとする。
【0031】
本明細書中で使用する「抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体」なる用語は、EGFRに特異的に結合する抗体を指す。目的の抗原(すなわちEGFR)に「結合する」抗体は、十分な親和性でその抗原に結合することができるものであり、それにより、抗体はその抗原を発現する細胞を標的とする際に有用である。実施形態において、抗体は、ヒトEGFR(hEGFR)と特異的に結合する。抗EGFR抗体の例は、以下で開示する。特に明記しない限り、用語「抗EGFR抗体」は、野生型EGFR又はいかなるEGFRの変異体(例えばEGFRvIII)とも結合する抗体を指すものとする。
【0032】
野生型ヒトEGFRのアミノ酸配列は、シグナルペプチド(アミノ酸残基1~24)及び細胞外ドメイン(ECD、アミノ酸残基25~645)のアミノ酸残基を含むものとして下記の配列番号15として示す。EGFRの短縮された野生型ECD(また、本明細書においてEGFR(1-525)と称する。)は、配列番号16に対応し、配列番号15のアミノ酸1~525に相当する。野生型EGFRの成熟形態は、シグナルペプチドのないタンパク質(すなわち、配列番号15のアミノ酸残基25~1210)に対応する。
【0033】
ヒトEGFRのECDのアミノ酸配列は、配列番号17として下記に示され、シグナル配列を含む。
【0034】
EGFRvIIIは、ヒトがんにおいて最も一般に生じるEGFR変異体である(Kuan et al.Endocr Relat Cancer.8(2):83-96(2001))。遺伝子増幅プロセスの間、融合ジャンクションにグリシン残基が挿入された形で、EGFRの細胞外ドメインにおける267アミノ酸の欠失が生じる。すなわち、EGFRvIIIは、野生型EGFRの細胞外ドメインのアミノ酸6~273を欠失し、及びジャンクションにおけるグリシン残基挿入を含む。EGFRのEGFRvIII変異体は、細胞外ドメインにおいて267アミノ酸残基が欠失し、そこでは欠失ジャンクションにおいてグリシンが挿入されている。EGFRvIIIのアミノ酸配列を配列番号18として下記に示す。
【0035】
本明細書で用いられる用語「特異的な結合」又は「特異的に結合」は、抗体又はADCの第2の化学種との相互作用に関しては、その相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依ることを意味し、例えば、抗体は、タンパク質一般というよりは、むしろ特異的なタンパク質の構造を認識し、結合する。抗体又はADCがエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」及び抗体を含む反応においては、エピトープA(又は、遊離の非標識のA)を含む分子の存在により、抗体又はADCに結合する標識されたAの量は減少する。
【0036】
用語「抗体」は、抗原に特異的に結合し、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(HCVR又はVHとして本明細書において略記する。)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(LCVR又はVLとして本明細書において略記する。)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)から構成される。VH及びVLの領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域と、それと共に点在するより保存的なフレームワーク領域(FR)と称される領域と、に更に分割することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向けて以下の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0037】
ある種の実施形態では、抗体は、重鎖のカルボキシ末端における1~5つのアミノ酸の欠失を有する重鎖を含むことができる。
【0038】
本明細書で用いられる「単離された抗体」とは、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、EGFRと特異的に結合する単離された抗体は、EGFR以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない。)。しかしながら、EGFRと特異的に結合する単離された抗体は、他の抗原(例えば他の種由来のEGFR分子)と交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞性の材料及び/又は化学物質を実質的に含まないものであってもよい。
【0039】
用語「エピトープ」は、抗体又はADCが結合する抗原の領域を指す。実施形態において、エピトープの決定要素としては、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリル又はスルホニルなどの、分子表面の化学的に活性な基の群が挙げられ、実施形態において、特異的な3次元構造特徴及び/又は特異的な電荷特性を有し得る。実施形態において、抗体は、それがタンパク質及び/又は巨大分子の複合体混合物中においてその標的抗原を優先的に認識するとき、抗原と特異的に結合するという。実施形態において、本発明の抗体は、CGADSYEMEEDGVRKC(配列番号20)(hEGFRの成熟形態のアミノ酸残基287~302に対応する。)のアミノ酸配列によって定義されるエピトープに対して結合する。
【0040】
本明細書で用いられる用語「表面プラズモン共鳴」は、バイオセンサーマトリックス(例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、Sweden及びPiscataway、NJ)を使用する。)の中でタンパク質濃度の変化の検出によってリアルタイムな生物学的特異的相互作用の分析を可能にする光学的現象を指す。更なる説明については、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26、Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620-627、Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125-131、及びJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268-277を参照されたい。
【0041】
本明細書で使用される用語「ka」は、抗原に対して抗体が会合して抗体/抗原複合体を形成する際の結合速度定数を指すものとする。
【0042】
本明細書で使用される用語「kd」は、抗体/抗原複合体から抗体が解離する際の解離速度定数を指すものとする。
【0043】
本明細書で使用される用語「KD」、は、特定の抗体-抗原相互作用(例えば、AM2抗体及びEGFR)の平衡解離定数を指すものとする。KDは、ka/kdによって算出される。
【0044】
用語「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC」は、任意に治療薬又は細胞毒性剤であり得る1つ以上の化学薬剤(また、本明細書において、薬剤、弾頭又はペイロードと称される。)に化学的に連結された結合タンパク質(例えば抗体又はその抗原結合フラグメント)を指す。実施形態において、ADCは、抗体と、細胞毒性剤又は治療薬と、抗体への薬剤の付着又はコンジュゲーションを可能にするリンカーとを含む。本発明では、ADCは、Bcl-xL阻害剤にリンカーを介してコンジュゲートした抗EGFR抗体を含む。
【0045】
用語「抗上皮成長因子抗体薬剤コンジュゲート」、「抗EGFR抗体薬剤コンジュゲート」又は「抗EGFR ADC」(本明細書において交換可能に使用される。)は、EGFRに特異的に結合する抗体を含むADCであり、そこでは該抗体は1つ以上の化学薬剤にコンジュゲートしている。本発明では、抗EGFR ADCは、Bcl-xL阻害剤にコンジュゲートした抗体AM2を含む。
【0046】
抗EGFR抗体及び抗体薬剤コンジュゲート
本明細書に記載されている抗EGFR抗体は、EGFRに結合する能力を有する本開示のADCをもたらし、それにより、抗体に結合した細胞毒性的なBcl-xL薬剤が、EGFRを発現する細胞に送達され得るようになる。
【0047】
実施形態において、本開示は、抗EGFR IgG1抗体を提供する。実施形態において、ヒト化IgG1抗EGFR抗体は、AM2である。AM2抗体は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含むCDR1ドメイン、配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含むCDR2ドメイン、及び配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含むCDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。AM2抗体は、配列番号22で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。AM2抗体は、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0048】
AM2抗体は、デパツキシズマブ(デパツキシズマブ マフォドチンABT-414の抗体成分として使用される。)よりも高い親和性で、活性EGFRの高次構造を模倣するEGFRの細胞外ドメイン(ECD)の短縮形態に結合する。EGFRの活性形態に対するこの著しく増加された親和性にもかかわらず、AM2は、全長の野生型EGFR ECDに対する結合性は全く欠いている。AM2抗体は、AM1抗体(ロサツキシズマブ、ロサツキシズマブ ベドチンABBV-221の抗体成分として使用される。)の結合特徴を維持するが、異なる配列を有し、潜在的な安全性の問題(例えばABBV-221によって観察されるインフュージョンリアクション)を緩和する。AM2抗体は、ロサツキシズマブのz、非aアロタイプとは対照的に、z、aアロタイプである。AM2抗体は、LALA突然変異が組み込まれており、それによりFcγ受容体との相互作用が低減される。AM2はまた、C6v1(LC:C214A)突然変異が組み込まれており、部位特異的なコンジュゲーション及びDARの制御が可能である。まとめると、AM2の新規な配列は、従来の抗EGFR ADCに存在する潜在的な安全性の問題が緩和されている。
【0049】
抗体は、いくつかの技術のいずれかによって産生され得る。例えば、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクションし、その宿主細胞から発現させる。
【0050】
実施形態において、本開示は、シントンにコンジュゲートした抗hEGFR抗体を含む抗hEGFR ADCを提供し、シントンは、6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}-3-[1-({3-[2-({[(2-{2-[(2S,3R,4R,5S,6S)-6-カルボキシ-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]エチル}-4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-(2-{(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-[(2-スルホエトキシ)メチル]ピロリジン-1-イル}アセトアミド)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル)メトキシ]カルボニル}[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ)エトキシ]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}メチル)-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル]ピリジン-2-カルボン酸(「AAA」)である:
【0051】
【0052】
実施形態において、本開示は、以下の構造を含む抗ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)抗体-薬剤コンジュゲートを提供する:
【0053】
【化11】
(式中、mは整数であり、AbはIgG1抗hEGFR抗体である)。実施形態において、抗体は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン、及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン、配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン、及び配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号22で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施形態において、mは1~3の整数である。実施形態において、mは2である。実施形態において、抗体は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して式(I)の構造にコンジュゲートしている。
【0054】
実施形態において、本開示は、以下の構造を含む抗ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)抗体-薬剤コンジュゲートを提供する:
【0055】
【化12】
(式中、mは整数であり、AbはIgG1抗hEGFR抗体である)。実施形態において、抗体は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン、及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン、配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン、及び配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号22で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施形態において、mは1~3の整数である。実施形態において、mは2である。実施形態において、抗体は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して式(II)の構造にコンジュゲートしている。
【0056】
実施形態において、本開示は、以下の構造を含む抗ヒト上皮成長因子受容体(EGFR)抗体-薬剤コンジュゲートを提供する:
【0057】
【化13】
(式中、mは整数であり、AbはIgG1抗hEGFR抗体である)。実施形態において、抗体は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1ドメイン、配列番号3で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2ドメイン、及び配列番号4で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3ドメインを含む重鎖可変領域と、配列番号6で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1ドメイン、配列番号7で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2ドメイン、及び配列番号8で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3ドメインを含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号22で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。実施形態において、抗体Abは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号5で表わされるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。実施形態において、mは1~3の整数である。実施形態において、mは2である。実施形態において、抗体は、重鎖のC220(すなわち、配列番号1のC219)を介して式(III)の構造にコンジュゲートしている。
【0058】
実施形態において、本開示の抗体及び抗体-薬剤コンジュゲート(例えばAM2抗体及びAM2-AAA ADC)は、EGFR(1~525)(配列番号16)と、表面プラズモン共鳴により測定したとき、1x10-6M以下の、例えば1x10-6M~1x10-10Mの、又は約1x10-6M~1x10-7Mの解離定数(KD)で結合する。
【0059】
実施形態において、本開示の抗体(例えばAM2抗体及びAM2-AAA ADC)は、EGFRvIII(配列番号18)と、表面プラズモン共鳴により測定したとき、約6x10-9M以下の、又は約5.5x10-9M以下の、又は5.0x10-9M以下のKDで結合する。
【0060】
使用方法
一実施形態は、非小細胞肺がんを治療する方法に関し、該方法は、非小細胞肺がんを有する対象に、有効量の、本明細書に記載されている抗EGFR ADCを投与して、治療的利点を提供することを含む。
【実施例0061】
以下の実施例は、Bcl-XL阻害剤(実施例1.1.17)及びシントン(AAA、実施例1)の場合の合成法を提供する。例えばbcl-xL阻害剤及びAAAなどのシントンを合成する方法は、例えば、米国特許出願公開第2019/0343961号(AbbVie,Inc.)に見出すことができ、その全開示内容を参照により本明細書に組み込む。
【0062】
実施例における命名は、ACD/Name 2012 release(Build 56084,05 April 2012,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ACD/Name 2014 release(Build 66687,25 October 2013,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ACD/Name 2019.1.1 release(Build 110555,18 July 2019,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ChemDraw(登録商標)Ver.9.0.7(CambridgeSoft,Cambridge,MA)、ChemDraw(登録商標)Ultra Ver.12.0(CambridgeSoft,Cambridge,MA)、又はChemDraw(登録商標)Professional Ver.15.0.0.106を用いて行った。BCL-XL阻害剤及びシントン中間体の命名は、ACD/Name 2012 release(Build 56084,05 April 2012,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ACD/Name 2014 release(Build 66687,25 October 2013,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ACD/Name 2019.1.1 release(Build 110555,18 July 2019,Advanced Chemistry Development Inc.,Toronto,Ontario)、ChemDraw(登録商標)Ver.9.0.7(CambridgeSoft,Cambridge,MA)、ChemDraw(登録商標)Ultra Ver.12.0(CambridgeSoft,Cambridge,MA)、ChemDraw(登録商標)Professional Ver.15.0.0.106により行った。
【0063】
本明細書で用いられる略語は、以下のとおりである:
【0064】
【0065】
[実施例1]:6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}-3-[1-({3-[2-({[(2-{2-[(2S,3R,4R,5S,6S)-6-カルボキシ-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]エチル}-4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-(2-{(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-[(2-スルホエトキシ)メチル]ピロリジン-1-イル}アセトアミド)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル)メトキシ]カルボニル}[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ)エトキシ]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}メチル)-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル]ピリジン-2-カルボン酸(シントンAAA)
【0066】
【0067】
[実施例1.1.1]:3-ブロモ-5,7-ジメチルアダマンタン-1-カルボン酸
50mLの丸底フラスコに、0℃で臭素(16mL)を添加した。鉄粉(7g)を添加し、反応混合物を0℃で30分間撹拌した。3,5-ジメチルアダマンタン-1-カルボン酸(12g)を添加した。混合物を室温に加温し、3日間撹拌した。氷及び濃HClの混合物を反応混合物に注入した。得られた懸濁液を2回にわたりNa2SO3(200mLの水中、50g)で処理し、ジクロロメタンによって3回抽出した。有機画分を混合し、1NのHCl水溶液によって洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。
【0068】
【0069】
[実施例1.1.2]:(3-ブロモ-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル)メタノール
テトラヒドロフラン(200mL)中の実施例1.1.1の溶液(15.4g)に、BH3(テトラヒドロフラン(150mL)中、1M)を添加し、混合物を一晩室温で撹拌した。次に反応混合物にメタノールを滴下して添加することによって慎重にクエンチした。次に混合物を真空下で濃縮し、残留物を酢酸エチル(500mL)及び2N HCl水溶液(100mL)に分割した。水層を酢酸エチルによって2回更に抽出し、有機抽出液を混合して水及びブラインによって洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を濃縮し、標題化合物を得た。
【0070】
【0071】
[実施例1.1.3]:1-[(3-ブロモ-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル)メチル]-1H-ピラゾール
トルエン(60mL)中の実施例1.1.2(8.0g)の溶液に、1H-ピラゾール(1.55g)及びシアノメチレントリブチルホスホラン(2.0g)を添加し、混合物を一晩90℃で撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し(10:1のヘプタン:酢酸エチル)、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 324.2(M+H)+.
【0072】
【0073】
[実施例1.1.4]:2-({3,5-ジメチル-7-[(1H-ピラゾル-1-イル)メチル]アダマンタン-1-イル}オキシ)エタン-1-オル
実施例1.1.3(4.0g)のエタン-1,2-ジオール(12mL)中の溶液に、トリエチルアミン(3mL)を添加した。混合物を、マイクロ波条件(Biotage(登録商標)Initiator)下、150℃で45分間撹拌した。混合物を水(100mL)に注入し、酢酸エチルによって3回抽出した。混合した有機抽出液を水及びブラインによって洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の20%酢酸エチルによって、続いてジクロロメタン中の5%のメタノールによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 305.2(M+H)+.
【0074】
【0075】
[実施例1.1.5]:2-({3,5-ジメチル-7-[(5-メチル-1H-ピラゾル-1-イル)メチル]アダマンタン-1-イル}オキシ)エタン-1-オル
テトラヒドロフラン(100mL)中の実施例1.1.4(6.05g)の冷却(-78℃)溶液に、n-ブチルリチウム(40mL、ヘキサン中の2.5M)を添加し、混合物を1.5時間-78℃で撹拌した。ヨードメタン(10mL)をシリンジによって添加し、混合物を3時間-78℃で撹拌した。反応混合物を次にNH4Cl水溶液によってクエンチし、酢酸エチルで2度抽出し、混合した有機抽出液を水及びブラインによって洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水した後、溶液を濾過及び濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の5%メタノールによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 319.5(M+H)+.
【0076】
【0077】
[実施例1.1.6]:2-({3-[(4-ヨード-5-メチル-1H-ピラゾル-1-イル)メチル]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}オキシ)エタン-1-オル
N,N-ジメチルホルムアミド(30mL)中の実施例1.1.5(3.5g)の溶液に、N-ヨードスクシンイミド(3.2g)を添加し、混合物を1.5時間室温で撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(600mL)で希釈し、10%w/w NaHSO3水溶液、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の20%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 445.3(M+H)+.
【0078】
【0079】
[実施例1.1.7]:3-ブロモ-6-フルオロピリジン-2-カルボン酸
1:1ジクロロメタン/クロロホルム(400mL)中の6-アミノ-3-ブロモピリジン-2-カルボン酸(25g)のスラリーを、1時間にわたり5℃のジクロロメタン(100mL)中のニトロソニウムテトラフルオロボレート(18.2g)に添加した。得られた混合物を更に30分間撹拌し、次に35℃に加温し、一晩撹拌した。反応物を室温に冷却し、次にNaH2PO4水溶液でpHを4に調整した。得られた溶液をジクロロメタンによって3回抽出し、混合した抽出物をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。
【0080】
【0081】
[実施例1.1.8]:tert-ブチル3-ブロモ-6-フルオロピリジン-2-カルボキシレート
塩化パラトルエンスルホニル(27.6g)を、0℃でジクロロメタン(100mL)及びtert-ブタノール(80mL)中の実施例1.1.7(14.5g)及びピリジン(26.7mL)の溶液に添加した。反応物を15分間撹拌し、次に室温に加温し、一晩撹拌した。溶液を濃縮し、酢酸エチルと飽和Na2CO3水溶液との間に分割した。層を分離し、水層を酢酸エチルによって抽出した。有機層を一つに混合し、Na2CO3水溶液及びブラインですすぎ、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。
【0082】
【0083】
[実施例1.1.9]:メチル2-[5-ブロモ-6-(tert-ブトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート
ジメチルスルホキシド(100mL)中のメチル1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート塩酸塩(12.37g)及び実施例1.1.8(15g)の溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(12mL)を添加し、混合物を24時間50℃で撹拌した。混合物を次に酢酸エチル(500mL)で希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中の20%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 448.4(M+H)+.
【0084】
【0085】
[実施例1.1.10]:メチル2-[6-(tert-ブトキシカルボニル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート
アセトニトリル(30mL)中の実施例1.1.9(2.25g)及び[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(205mg)の溶液に、トリエチルアミン(3mL)及びピナコールボラン(2mL)を添加し、混合物を3時間還流下で撹拌した。混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中の20%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0086】
【0087】
[実施例1.1.11]:メチル2-[6-(tert-ブトキシカルボニル)-5-(1-{[3-(2-ヒドロキシエトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート
テトラヒドロフラン(30mL)及び水(10mL)中の実施例1.1.10(2.25g)の溶液に、実施例1.1.6(2.0g)、1,3,5,7-テトラメチル-6-フェニル-2,4,8-トリオキサ-6-ホスファアダマンタン(329mg)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(206mg)及び三塩基性リン酸カリウム(4.78g)を添加した。混合物を一晩還流し、冷却し、酢酸エチル(500mL)で希釈した。得られた混合物を水及びブラインで洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の20%酢酸エチル、続いてジクロロメタン中の5%メタノールによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0088】
【0089】
[実施例1.1.12]:メチル2-[6-(tert-ブトキシカルボニル)-5-{1-[(3-{2-[(メタンスルホニル)オキシ]エトキシ}-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル)メチル]-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル}ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート
氷浴中のジクロロメタン(100mL)中の実施例1.1.11(3.32g)の冷却した溶液に、トリエチルアミン(3mL)及びメタンスルホニルクロリド(1.1g)を順次添加した。反応混合物を1.5時間室温で撹拌し、酢酸エチルで希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。
【0090】
【0091】
[実施例1.1.13]:メチル2-[5-(1-{[3-(2-アジドエトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-6-(tert-ブトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボキシレート
N,N-ジメチルホルムアミド(120mL)中の実施例1.1.12(16.5g)の溶液に、アジ化ナトリウム(4.22g)を添加した。混合物を3時間80℃で加熱し、冷却し、酢酸エチルで希釈し、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の20%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0092】
【0093】
[実施例1.1.14]:2-[5-(1-{[3-(2-アジドエトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-6-(tert-ブトキシカルボニル)ピリジン-2-イル]-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-8-カルボン酸
テトラヒドロフラン(60mL)、メタノール(30mL)及び水(30mL)の混合液中の実施例1.1.13(10g)の溶液に、水酸化リチウム一水和物(1.2g)を添加した。混合物を一晩室温で撹拌し、2%のHCl水溶液によって中和した。得られた混合物を濃縮し、残留物を酢酸エチル(800mL)に溶解させ、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。
【0094】
【0095】
[実施例1.1.15]:tert-ブチル3-(1-{[3-(2-アジドエトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}ピリジン-2-カルボキシレート
N,N-ジメチルホルムアミド(20mL)中の実施例1.1.14(10g)、ベンゾ[d]チアゾール-2-アミン(3.24g)、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロホスフェート(5.69g)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.57g)の混合物を、3時間60℃で加熱し、冷却し、酢酸エチルで希釈した。得られた混合物を、水及びブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の20%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0096】
【0097】
[実施例1.1.16]:tert-ブチル3-(1-{[3-(2-アミノエトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)-6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}ピリジン-2-カルボキシレート
テトラヒドロフラン(30mL)中の実施例1.1.15(2.0g)の溶液に、Pd/C(10%、200mg)を添加した。混合物を一晩水素雰囲気(18psi)下で撹拌した。不溶性物質を濾過して取り除き、濾液を濃縮し、標題化合物を得た。
【0098】
【0099】
[実施例1.1.17]:6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}-3-(1-{[3-(2-{[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ}エトキシ)-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル]メチル}-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル)ピリジン-2-カルボン酸
ジクロロメタン(2mL)中の実施例1.1.16(213mg)の溶液に、(S)-2-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)アセトアルデヒド(42mg)を添加した。30分間室温で撹拌した後、ナトリウムトリアセトキシホウ化水素(144mg)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。トリフルオロ酢酸(2mL)を添加し、撹拌を一晩継続した。反応混合物を濃縮し、残留物を、Gilsonシステムを用いた逆相HPLCによって精製し(Phenomenex(登録商標)Luna(登録商標)C18 250×50mmカラム)、0.1%v/vのトリフルオロ酢酸(100mL/分)を含む水中の5~85%のアセトニトリルによって溶出させた。望ましい画分を混合し、凍結乾燥し、標題化合物を得た。1H NMR (400 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ ppm 12.86 (s, 1H), 8.22 (d, 2H), 8.05 - 8.01 (m, 1H), 7.79 (d, 1H), 7.61 (d, 1H), 7.53 - 7.41 (m, 3H), 7.36 (td, 2H), 7.28 (s, 1H), 6.95 (d, 1H), 4.95 (s, 2H), 3.88 (t, 2H), 3.82 (s, 2H), 3.26 - 2.94 (m, 7H), 2.10 (s, 3H), 1.84 - 1.75 (m, 1H), 1.52-1.63 (m, 1H), 1.45 - 1.23 (m, 6H), 1.19 - 0.96 (m, 7H), 0.86 (s, 6H);MS(ESI)m/z 834.3(M+H)+.
【0100】
【0101】
[実施例1.2.1]:(3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-[(ベンジルオキシ)メチル]オキサン-2-オン
0℃のジメチルスルホキシド(400mL)中の(3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-[(ベンジルオキシ)メチル]オキサン-2-オル(75g)の混合物に、無水酢酸(225mL)を添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、次に0℃に冷却した。大量の水を添加し、撹拌を停止し、反応混合物を3時間静置した(粗製のラクトンがフラスコの底に移動した。)。上清を除去し、粗製の混合物を酢酸エチルで希釈し、3回水で洗浄し、飽和NaHCO3水混合物で中和し、2回再び水で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 561(M+Na)+.
【0102】
【0103】
[実施例1.2.2]:(3R,4S,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-((ベンジルオキシ)メチル)-2-((トリメチルシリル)エチニル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オル
テトラヒドロフラン(400mL)中のエチニルトリメチルシラン(18.23g)の混合物に、窒素下で、ドライアイス/アセトン浴(内部温度-65℃)において冷却しながら、ヘキサン(55.7mL)中の2.5Mのブチルリチウムを滴下して添加し、-60℃未満の温度を維持した。混合物を40分間冷浴において、続いて40分間氷水浴(内部温度は0.4℃まで上昇)において撹拌し、最後に再び-75℃に冷却した。テトラヒドロフラン(50mL)中の実施例1.2.1(50g)の混合物を滴下して添加し、-70℃未満の内部温度を維持した。混合物を更に3時間、ドライアイス/アセトン浴において撹拌した。飽和NaHCO3水溶液(250mL)によって反応をクエンチした。混合物を室温に加温し、酢酸エチル(3×300mL)によって抽出し、MgSO4で脱水し、濾過し、真空中で濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 659(M+Na)+.
【0104】
【0105】
[実施例1.2.3]:トリメチル({(2S,3S,4R,5R,6R)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-6-[(ベンジルオキシ)メチル]オキサン-2-イル}エチニル)シラン
氷塩水浴中の-15℃のアセトニトリル(450mL)及びジクロロメタン(150mL)中の実施例1.2.2(60g)の混合された混合物に、トリエチルシラン(81mL)を滴下して添加し、続いて、内部温度が-10℃を超えない速度で、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル複合体(40.6mL)を添加した。混合物を次に、2時間-15℃~-10℃で撹拌した。飽和NaHCO3水溶液(275mL)によって反応をクエンチし、室温で1時間撹拌した。次に混合物を酢酸エチル(3×550mL)によって抽出した。混合された抽出物を、MgSO4で脱水し、濾過し、濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製して0%~7%の酢酸エチル/石油エーテルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 643(M+Na)+.
【0106】
【0107】
[実施例1.2.4]:(2R,3R,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(ベンジルオキシ)-2-[(ベンジルオキシ)メチル]-6-エチニルオキサン
ジクロロメタン(200mL)及びメタノール(1000mL)中の実施例1.2.3(80g)の混合物に、1N NaOH水(258mL)を添加した。混合物を2時間室温で撹拌し、次に濃縮した。残留物を次に水とジクロロメタンとに分割した。混合された有機抽出物をブラインによって洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 571(M+Na)+.
【0108】
【0109】
[実施例1.2.5]:(2R,3R,4R,5S,6S)-2-[(アセチルオキシ)メチル]-6-エチニルオキサン-3,4,5-トリイルトリアセテート
氷/水浴によって冷却した無水酢酸(500mL)中の実施例1.2.4(66g)の混合物に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル複合体(152mL)を滴下して添加した。混合物を16時間室温で撹拌し、氷/水浴によって冷却し、飽和NaHCO3水溶液によって中和した。混合物を酢酸エチル(3×500mL)によって抽出し、Na2SO4で脱水し、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、フラッシュクロマトグラフィーにより精製して0%~30%の酢酸エチル/石油エーテルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 357(M+H)+.
【0110】
【0111】
[実施例1.2.6]:(2S,3R,4R,5S,6R)-2-エチニル-6-(ヒドロキシメチル)オキサン-3,4,5-トリオール
メタノール(440mL)中の実施例1.2.5(25g)の混合物に、ナトリウムメタノール酸(2.1g)を添加した。混合物を2時間室温で撹拌し、次にジオキサン中の4M HClによって中和した。混合物を濃縮し、残留物をシリカゲル上へ吸着させ、シリカゲルカラム上にロードした。カラムを0~100%の酢酸エチル/石油エーテル、次に0~12%のメタノール/酢酸エチルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 211(M+Na)+.
【0112】
【0113】
[実施例1.2.7]:(2S,3S,4R,5R,6S)-6-エチニル-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-カルボン酸
3首の丸底フラスコに、実施例1.2.6(6.00g)、KBr(0.30g)、臭化テトラブチルアンモニウム(0.41g)及び60mLの飽和NaHCO3水溶液を投入した。ジクロロメタン(60mL)中のTEMPO((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル、0.15g)を添加した。混合物を激しく撹拌し、-2℃の内部温度となるまで氷塩水浴において冷却した。内部温度を2℃未満に維持されるよう、ブライン(12mL)、飽和NaHCO3水溶液(24mL)及び10重量%のNaOCl水溶液(154mL)の混合溶液を滴下して添加した。固形Na2CO3を添加して反応混合物のpHを8.2~8.4の範囲に維持した。合計6時間後に、反応混合物を3℃の内部温度まで冷却し、エタノール(約20mL)を滴下して添加した。混合物を約30分撹拌した。混合物を分液漏斗へ移し、ジクロロメタン層を廃棄した。水層のpHを1MのHCl水溶液を用いて2~3に調整した。次に水層を乾燥するまで濃縮し、固体を得た。乾燥固体にメタノール(100mL)を添加し、スラリーを約30分間撹拌した。混合物を珪藻土のパッドを通じて濾過し、漏斗の残留物をメタノール約100mLによって洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、標題化合物を得た。
【0114】
【0115】
[実施例1.2.8]:メチル(2S,3S,4R,5R,6S)-6-エチニル-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-カルボキシレート
500mLの3首の丸底フラスコに、メタノール(96mL)中の実施例1.2.7(6.45g)の懸濁液を投入し、混合物を-1℃の内部温度となるよう氷塩水浴において冷却した。無水の塩化チオニル(2.79mL)を慎重に添加した。添加の際に内部温度が上昇し続けたが、10℃を超えなかった。反応液を2.5時間にわたり、徐々に最高15~20℃となるまで加温した。2.5時間後に、反応液を濃縮し、標題化合物を得た。
【0116】
【0117】
[実施例1.2.9]:メチル(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-エチニルオキサン-2-カルボキシレート
N,N-ジメチルホルムアミド(75mL)中の混合物としての実施例1.2.8(6.9g)に、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.17g)及び無水酢酸(36.1mL)を添加した。懸濁液を氷浴において冷却し、ピリジン(18.04mL)を15分間にわたりシリンジを介して添加した。反応液を一晩室温に加温した。更なる無水酢酸(12mL)及びピリジン(6mL)を添加し、更に6時間撹拌を継続した。反応物を氷浴において冷却し、250mLの飽和NaHCO3水混合物を添加し、1時間にわたり撹拌した。水(100mL)を添加し、混合物を酢酸エチルによって抽出した。有機抽出物を2回飽和CuSO4混合物で洗浄し、乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、50%の酢酸エチル/石油エーテルによって溶出させ、標題化合物を得た。1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ ppm 5.29 (t, 1H), 5.08 (td, 2H), 4.48 (dd, 1H), 4.23 (d, 1H), 3.71 (s, 3H), 3.04 (d, 1H), 2.03 (s, 3H), 1.99 (s, 3H), 1.98 (s, 4H).
【0118】
【0119】
[実施例1.2.10]:2-ヨード-4-ニトロ安息香酸
機械式撹拌機、温度プローブ及び添加漏斗を備えた、3Lのフルジャケット装備型のフラスコに、窒素雰囲気下、2-アミノ-4-ニトロ安息香酸(69.1g、Combi-Blocks)及び1.5M硫酸水溶液(696mL)を添加した。得られた懸濁物を0℃の内部温度まで冷却し、水(250mL)中の亜硝酸ナトリウム(28.8g)の混合物を43分間にわたり滴下して添加し、1℃未満の温度を維持した。反応液を1時間約0℃で撹拌した。水(250mL)中のヨウ化カリウム(107g)の混合物を、内部温度を1℃未満に維持しながら44分間にわたり滴下して添加した(最初に、添加により放熱が起こり、気体が発生した。)。反応液を0℃で1時間撹拌した。温度が20℃まで上昇し、次に一晩周囲温度で撹拌した。反応混合物は懸濁液となった。反応混合物を濾過し、回収された固体を水によって洗浄した。湿った固体(約108g)を、30分間にわたり10%亜硫酸ナトリウム(350mL、固体の洗浄用の約200mLの水を有する。)において撹拌した。懸濁液を濃塩酸(35mL)で酸性化し、固体を濾過によって回収し、水によって洗浄した。固体を水(1L)においてスラリー化し、再度濾過し、固体を一晩漏斗中で乾燥させた。次に固体を60℃で2時間真空オーブンにおいて乾燥させた。得られた固体をジクロロメタン(500mL)とすり混ぜ、懸濁液を濾過し、更にジクロロメタンによって洗浄した。固体を空気乾燥し、標題化合物を得た。
【0120】
【0121】
[実施例1.2.11]:(2-ヨード-4-ニトロフェニル)メタノール
火炎により乾燥させた3Lの3首フラスコに、実施例1.2.10(51.9g)及びテトラヒドロフラン(700mL)を投入した。混合物を0.5℃に氷浴において冷却し、ボラン-テトラヒドロフラン錯体(443mL、テトラヒドロフラン中1M)を50分間にわたり滴下して添加し(気体発生)、1.3℃の最終的な内部温度に達した。反応混合物を15分間撹拌し、氷浴を除去した。反応液を30分間周囲温度に静置した。加熱マントルを設置し、反応液を3時間にわたり65.5℃の内部温度まで加熱し、次に一晩撹拌しながら室温に冷却した。反応混合物を、氷浴において冷却し0℃にして、メタノール(400mL)を滴下して添加しクエンチした。短いインキュベート時間の後、温度は急速に2.5℃まで上昇し、気体発生を伴った。最初の100mLを約30分間にわたり添加した後は、添加してももはや放熱せず、気体発生も終了した。氷浴を除去し、混合物を一晩窒素下で周囲温度にて撹拌した。混合物を濃縮して固体とし、ジクロロメタン/メタノールに溶解させ、シリカゲル(約150g)に吸着させた。残留物をシリカゲル(3000mL)のプラグ上にロードし、ジクロロメタンによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0122】
【0123】
[実施例1.2.12]:(4-アミノ-2-ヨードフェニル)メタノール
機械式撹拌機、JKEM温度プローブによって制御される加熱マントル、及び凝縮器を備えた5Lのフラスコに、実施例1.2.11(98.83g)及びエタノール(2L)を投入した。反応液を急速に撹拌し、鉄(99g)を添加し、続いて水(500mL)中の塩化アンモニウム(20.84g)の混合物を添加した。80.3℃の内部温度となるまで、反応液を20分間にわたって加熱し、その際に還流が激しく開始した。還流が鎮まるまでマントルを落とした。その後、混合物を1.5時間80℃に加熱した。反応液を加熱しながらメンブランフィルターに通し、鉄の残留物を加熱した50%の酢酸エチル/メタノール(800mL)によって洗浄した。溶出物を珪藻土パッドに通過させ、濾液を濃縮した。残留物を50%のブライン(1500mL)と酢酸エチル(1500mL)とに分割した。層を分離し、水層を酢酸エチル(400mL×3)によって抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得、それを更なる精製なしで用いた。
【0124】
【0125】
[実施例1.2.13]:4-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-3-ヨードアニリン
機械式撹拌機を有する5Lのフラスコに、実施例1.2.12(88g)及びジクロロメタン(2L)を投入した。懸濁液を2.5℃の内部温度となるまで氷浴において冷却し、tert-ブチルクロロジメチルシラン(53.3g)を8分間にわたり数回に分けて添加した。10分後、1H-イミダゾール(33.7g)を、冷却した反応液に数回に分けて添加した。反応液を90分間撹拌し、その間内部温度が15℃まで上昇した。反応混合物を、水(3L)及びジクロロメタン(1L)で希釈した。層を分離させ、有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、濃縮し、油状物を得た。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー(1600gのシリカゲル)によって精製し、ヘプタン中0~25%の酢酸エチルの勾配で溶出させ、標題化合物を得た。
【0126】
【0127】
[実施例1.2.14]:(2S)-2-{[(2S)-2-({[(9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル}アミノ)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパン酸
(9H-フルオレン-9-イル)メチル{(2RS)-1-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル}カルバメート(6.5g)のジメトキシエタン(40mL)中の混合物に、水(40mL)中の(2S)-2-アミノプロパン酸(1.393g)及び重炭酸ナトリウム(1.314g)を添加した。テトラヒドロフラン(20mL)を添加し、溶解を補助した。得られた混合物を室温で16時間撹拌した。クエン酸水溶液(15%、75mL)を添加し、混合物を酢酸エチル(2×100mL)中の10% 2-プロパノールによって抽出した。沈殿物が有機層において生じた。混合した有機層を水(2×150mL)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮し、次にジエチルエーテル(80mL)とすり混ぜた。短い音波処理の後、標題化合物を濾過及び風乾によって回収した。MS(ESI)m/z 411(M+H)+.
【0128】
【0129】
[実施例1.2.15]:(9H-フルオレン-9-イル)メチル[(2S)-1-({(2S)-1-[4-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-3-ヨードアニリノ]-1-オキソプロパン-2-イル}アミノ)-3-メチル-1-オキソブタン-2-イル]カルバメート
ジクロロメタン(70mL)及びメタノール(35.0mL)の混合物中の、実施例1.2.13(5.44g)及び実施例1.2.14(6.15g)の混合物に、エチル2-エトキシキノリン-1(2H)-カルボキシレート(4.08g)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物を濃縮し、残留物をシリカゲル上にロードし、ヘプタン中の10%~95%酢酸エチル勾配、続いてジクロロメタン中の5%メタノールによって溶出させた。生成物を含有する画分を濃縮し、残留物を0.2%のジクロロメタン中のメタノール(50mL)において溶解させ、シリカゲル上にロードし、ジクロロメタン中の0.2%~2%メタノールの勾配によって溶出させた。生成物含有画分を回収し、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 756.0(M+H)+.
【0130】
【0131】
[実施例1.2.16]:メチル(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{[2-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル}アミノ)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル]エチニル}オキサン-2-カルボキシレート
実施例1.2.9(4.500g)、実施例1.2.15(6.62g)、ヨウ化銅(I)(0.083g)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)二塩化物(0.308g)の混合物を、バイアルにおいて混合し、脱気した。N,N-ジメチルホルムアミド(45mL)及びN-エチル-N-(プロパン-2-イル)プロパン-2-アミン(4.55mL)を添加し、反応器を窒素によってフラッシュ洗浄し、一晩室温で撹拌した。反応液を、水(100mL)と酢酸エチル(250mL)とに分割した。層を分離させ、有機層を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中5%~95%の酢酸エチルの勾配で溶出させた。生成物を含む画分を回収し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の0.25%~2.5%メタノールの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 970.4(M+H)+.
【0132】
【0133】
[実施例1.2.17]:メチル(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[2-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル}アミノ)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル]エチル}オキサン-2-カルボキシレート
実施例1.2.16(4.7g)及びテトラヒドロフラン(95mL)を、50mLの耐圧ボトル中、5%のPt/C(2.42g、湿状態)に添加し、50psiの水素下、室温で90分間振とうした。反応混合物を濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 974.6(M+H)+.
【0134】
【0135】
[実施例1.2.18]:メチル(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[5-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル}アミノ)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}-2-(ヒドロキシメチル)フェニル]エチル}オキサン-2-カルボキシレート
テトラヒドロフラン(7mL)、水(7mL)及び氷酢酸(21mL)中の実施例1.2.17(5.4g)の混合物を室温で一晩撹拌した。反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(100mL)、飽和NaHCO3水溶液(100mL)及びブライン(100mL)で洗浄した。有機画分を硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ジクロロメタン中の0.5%~5%メタノールの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 860.4(M+H)+.
【0136】
【0137】
[実施例1.2.19]:メチル(2S,3S,4R,5S,6S)-3,4,5-トリス(アセチルオキシ)-6-{2-[5-{[(2S)-2-{[(2S)-2-({[(9H-フルオレン-9-イル)メトキシ]カルボニル}アミノ)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}-2-({[(4-ニトロフェノキシ)カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]エチル}オキサン-2-カルボキシレート
実施例1.2.18(4.00g)及びビス(4-ニトロフェニル)カルボキシレート(2.83g)のアセトニトリル(80mL)中の混合物に、室温で、N-エチル-N-(プロパン-2-イル)プロパン-2-アミン(1.22mL)を添加した。一晩撹拌した後、反応液を濃縮し、ジクロロメタン(250mL)中に溶解させ、飽和NaHCO3水混合物(4×150mL)によって洗浄した。有機層を、硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮した。得られた泡沫をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中の5%~75%酢酸エチルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 1025.5(M+H)+.
【0138】
【0139】
[実施例1.3.1]:(3R,7aS)-3-フェニルテトラヒドロ-3H,5H-ピロロ[1,2-c][1,3]オキサゾル-5-オン
トルエン(300mL)中の(5S)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-オン(25g)、ベンズアルデヒド(25.5g)及びpara-トルエンスルホン酸一水和物(0.50g)の混合物を、16時間、乾燥管下で、Dean-Starkトラップを用いて還流加熱した。反応混合物を室温に冷却し、溶媒を不溶性物質からデカントした。デカントされた有機層を、飽和重炭酸ナトリウム混合水溶液(2回)及びブライン(1回)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製し35/65のヘプタン/酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 204.0(M+H)+.
【0140】
【0141】
[実施例1.3.2]:(3R,6R,7aS)-6-ブロモ-3-フェニルテトラヒドロ-3H,5H-ピロロ[1,2-c][1,3]オキサゾル-5-オン
冷却(-77℃)した、テトラヒドロフラン(670mL)中の実施例1.3.1(44.6g)の混合物に、40分間にわたりリチウムビス(トリメチルシリル)アミド(ヘキサン(250mL)中1.0M)を滴下して添加し、-73℃以下の反応混合物温度を維持した。反応液を2時間にわたり-77℃で撹拌し、臭素(12.5mL)を20分間にわたり滴下して添加し、-64℃以下の反応混合物温度を維持した。反応液を75分間にわたり-77℃で撹拌し、-77℃の反応液に、冷却した10%のチオ硫酸ナトリウム水溶液(150mL)を添加してクエンチした。混合物を室温に加温し、半飽和の塩化アンモニウム水溶液と酢酸エチルとに分割した。層を分離させ、有機層を水及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーによって残留物を精製し、80/20、75/25及び、70/30のヘプタン/酢酸エチルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 299.0及び301.0(M+NH3+H)+.
【0142】
【0143】
[実施例1.3.3]:(3R,6S,7aS)-6-アジド-3-フェニルテトラヒドロ-3H,5H-ピロロ[1,2-c][1,3]オキサゾル-5-オン
N,N-ジメチルホルムアミド(100mL)中の実施例1.3.2(19.3g)の混合物に、アジ化ナトリウム(13.5g)を添加した。反応液を2.5時間60℃に加熱した。反応液を室温に冷却し、水(500mL)及び酢酸エチル(200mL)を添加してクエンチした。層を分離し、有機層をブラインによって洗浄した。混合した水層を酢酸エチル(50mL)によって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、78/22のヘプタン/酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 262.0(M+NH3+H)+.
【0144】
【0145】
[実施例1.3.4]:(3R,6S,7aS)-6-アミノ-3-フェニルテトラヒドロ-3H,5H-ピロロ[1,2-c][1,3]オキサゾル-5-オン
テトラヒドロフラン(500mL)及び水(50mL)中の実施例1.3.3(13.5g)の混合物に、ポリマーにより担持されたトリフェニルホスフィン(55g、Aldrich、カタログ#366455、ローディング3mmol/g)を添加した。反応混合物を室温で一晩機械的に撹拌した。反応混合物を珪藻土で濾過し、酢酸エチル及びトルエンによって溶出させた。混合物を減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(100mL)に溶解させ、硫酸ナトリウムによって脱水し、次に濾過し、濃縮し、標題化合物を得、それを更なる精製をせずに次のステップで用いた。MS(DCI)m/z 219.0(M+H)+.
【0146】
【0147】
[実施例1.3.5]:(3R,6S,7aS)-6-(ジベンジルアミノ)-3-フェニルテトラヒドロ-3H,5H-ピロロ[1,2-c][1,3]オキサゾル-5-オン
N,N-ジメチルホルムアミド(100mL)中の実施例1.3.4(11.3g)の混合物に、炭酸カリウム(7.0g)、ヨウ化カリウム(4.2g)及び臭化ベンジル(14.5mL)を添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌し、水及び酢酸エチルを添加してクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層を酢酸エチルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の10~15%酢酸エチルの勾配によって溶出させて固体を得、それをヘプタンとすり混ぜ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 399.1(M+H)+.
【0148】
【0149】
[実施例1.3.6]:(3S,5S)-3-(ジベンジルアミノ)-5-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-2-オン
テトラヒドロフラン(130mL)中の実施例1.3.5(13g)の混合物に、para-トルエンスルホン酸一水和物(12.4g)及び水(50mL)を添加し、反応液を6日間65℃で加熱した。反応液を室温に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液及び酢酸エチルの添加によってクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層を酢酸エチルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。ワックス状の固体をヘプタン(150mL)とすり混ぜ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 311.1(M+H)+.
【0150】
【0151】
[実施例1.3.7]:(3S,5S)-5-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-3-(ジベンジルアミノ)ピロリジン-2-オン
N,N-ジメチルホルムアミド中の実施例1.3.6(9.3g)及び1H-イミダゾール(2.2g)の混合物に、tert-ブチルクロロジメチルシラン(11.2mL、トルエン中の50重量%)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。水及びジエチルエーテルを添加して反応混合物をクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層をジエチルエーテルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の35%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 425.1(M+H)+.
【0152】
【0153】
[実施例1.3.8]:tert-ブチル[(3S,5S)-5-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-3-(ジベンジルアミノ)-2-オキソピロリジン-1-イル]アセテート
冷却(0℃)した、テトラヒドロフラン(45mL)中の実施例1.3.7(4.5g)の混合物に、2回に分けて95%水素化ナトリウム(320mg)を添加した。冷却した混合物を40分間撹拌し、tert-ブチル2-ブロモアセテート(3.2mL)を添加した。反応混合物を室温に加温し、一晩撹拌した。水及び酢酸エチルを添加して反応をクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層を酢酸エチルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の5~12%酢酸エチルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 539.2(M+H)+.
【0154】
【0155】
[実施例1.3.9]:tert-ブチル[(3S,5S)-3-(ジベンジルアミノ)-5-(ヒドロキシメチル)-2-オキソピロリジン-1-イル]アセテート
テトラヒドロフラン(25mL)中の実施例1.3.8(5.3g)の混合物に、フッ化テトラブチルアンモニウム(11mL、95/5のテトラヒドロフラン/水中、1.0M)を添加した。反応混合物を1時間室温で撹拌し、次に飽和塩化アンモニウム水溶液、水及び酢酸エチルの添加によってクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層を酢酸エチルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の35%酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。MS(DCI)m/z 425.1(M+H)+.
【0156】
【0157】
[実施例1.3.10]:tert-ブチル[(3S,5S)-3-(ジベンジルアミノ)-2-オキソ-5-(8,8,13,13-テトラメチル-5,5-ジオキソ-12,12-ジフェニル-2,6,11-トリオキサ-5λ6-チア-12-シラテトラデカン-1-イル)ピロリジン-1-イル]アセテート
ジメチルスルホキシド(14mL)中の実施例1.3.9(4.7g)の混合物に、ジメチルスルホキシド(14mL)中の4-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)-2,2-ジメチルブチルエタンスルホネート(14.5g)の混合物を添加した。炭酸カリウム(2.6g)及び水(28μL)を添加し、反応混合物を1日間窒素下で60℃で加熱した。反応液を室温に冷却し、次にブライン、水及びジエチルエーテルの添加によってクエンチした。層を分離し、有機層をブラインで洗浄した。混合した水層をジエチルエーテルによって逆抽出した。混合した有機層を硫酸ナトリウムによって脱水し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、ヘプタン中の15~25%酢酸エチルの勾配によって溶出させ、標題化合物を得た。MS(ESI+)m/z 871.2(M+H)+.
【0158】
【0159】
[実施例1.3.11]:tert-ブチル[(3S,5S)-3-アミノ-2-オキソ-5-(8,8,13,13-テトラメチル-5,5-ジオキソ-12,12-ジフェニル-2,6,11-トリオキサ-5λ6-チア-12-シラテトラデカン-1-イル)ピロリジン-1-イル]
実施例1.3.10(873mg)を酢酸エチル(5mL)及びメタノール(15mL)中に溶解させ、水酸化パラジウム/炭素(20重量%)(180mg)を添加した。反応混合物を、30時間室温で、次に1時間50℃で、水素雰囲気(30psi)下で撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI+)m/z 691.0(M+H)+.
【0160】
【0161】
[実施例1.3.12]:(2Z)-4-{[(3S,5S)-1-(2-tert-ブトキシ-2-オキソエチル)-2-オキソ-5-(8,8,13,13-テトラメチル-5,5-ジオキソ-12,12-ジフェニル-2,6,11-トリオキサ-5λ6-チア-12-シアテトラデカン-1-イル)ピロリジン-3-イル]アミノ}-4-オキソブタ-2-エン酸
無水マレイン酸(100mg)をジクロロメタン(0.90mL)に溶解させ、ジクロロメタン(0.90mL)中の実施例1.3.11(650mg)の混合物を滴下して添加し、続いて2時間40℃で加熱した。反応混合物をシリカゲルクロマトグラフィーによって直接精製し、0.2%の酢酸を含むジクロロメタン中の1.0~2.5%メタノールの勾配によって溶出させた。生成物を含む画分を濃縮した後、トルエン(10mL)を添加し、混合物を再度濃縮し、標題化合物を得た。MS(ESI-)m/z 787.3(M-H)-.
【0162】
【0163】
[実施例1.3.13]:tert-ブチル[(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-(8,8,13,13-テトラメチル-5,5-ジオキソ-12,12-ジフェニル-2,6,11-トリオキサ-5λ6-チア-12-シラテトラデカン-1-イル)ピロリジン-1-イル]アセテート
実施例1.3.12(560mg)をトルエン(7mL)中においてスラリー化し、トリエチルアミン(220μL)及び硫酸ナトリウム(525mg)を添加した。反応液を6時間窒素雰囲気下で還流加熱し、反応混合物を一晩室温で撹拌した。混合物を濾過し、固体を酢酸エチルですすいだ。溶出物を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、45/55のヘプタン/酢酸エチルによって溶出させ、標題化合物を得た。
【0164】
【0165】
[実施例1.3.14]:{(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-[(2-スルホエトキシ)メチル]ピロリジン-1-イル}酢酸
実施例1.3.13(1.2g)を、トリフルオロ酢酸(15mL)に溶解させ、一晩窒素下で65~70℃で加熱した。トリフルオロ酢酸を減圧下で除去した。残留物をアセトニトリル(2.5mL)に溶解させ、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水(70mL/分)中の5~75%アセトニトリルの勾配を用いて、Phenomenex(登録商標)Luna(登録商標)C18(2)AXIA(商標)カラム(250×50mm、10μm粒径)における調製的逆相高圧液体クロマトグラフィーによって30分間にわたり精製し、標題化合物を得た。MS(ESI-)m/z 375.2(M-H)-.
【0166】
【0167】
[実施例1.4.1]:3-[1-({3-[2-({[(4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-アミノ-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}-2-{2-[(2S,3R,4R,5S,6S)-6-カルボキシ-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]エチル}フェニル)メトキシ]カルボニル}[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ)エトキシ]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}メチル)-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル]-6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}ピリジン-2カルボン酸
適切にサイズ設定された反応装置に、実施例1.1.17(5.17g)、実施例1.2.19(6.99g)、N,N-ジメチルホルムアミド(50mL)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(7.6mL)を投入した。固体を溶解させた後、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(1.21g)を反応装置に投入し、反応の進捗をHPLC(Ascentis(登録商標)Express(登録商標)C18、4.6×150mm、2.7μm、1.5mL/分の流速、18分間にわたり水中0.05%のHClO4中の40~100%アセトニトリルの勾配によって溶出)によってモニターした。カップリングが完了したことを確認した後、テトラヒドロフラン(62mL)を反応装置に投入し、及び、反応混合物は0℃に冷却された。リチウムメトキシド(62mL、メタノールの1.0Mの溶液)を1時間にわたって投入し、反応混合物を周囲温度に加温した。反応の進捗をHPLC(Ascentis(登録商標)Express(登録商標)C18、4.6×150mm、2.7μm、1.5mL/分の流速、18分間にわたり水中0.05%のHClO4中の40~100%アセトニトリルの勾配によって溶出)によってモニターし、加水分解が完了したことを確認した後、アセトニトリル(110mL)を2時間にわたり反応装置に投入した。スラリーを更に2時間撹拌し、固体を真空濾過して単離し、続いてアセトニトリル(2×10mL)で湿状態のケーキを洗浄した。残留物を逆相クロマトグラフィー(Phenomenex(登録商標)Luna(登録商標)C18、50×250mm、10μm、80mL/分の流速、25mMの酢酸アンモニウム/アセトニトリル、64/36のアイソクラチック)により精製し、望ましい画分を凍結乾燥し、酢酸塩として標題化合物を得た。MS(ESI)m/z 1357.5(M+H)+.
【0168】
【0169】
[実施例1]:6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}-3-[1-({3-[2-({[(2-{2-[(2S,3R,4R,5S,6S)-6-カルボキシ-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]エチル}-4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-(2-{(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-[(2-スルホエトキシ)メチル]ピロリジン-1-イル}アセトアミド)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル)メトキシ]カルボニル}[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ)エトキシ]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}メチル)-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル]ピリジン-2-カルボン酸(シントンAAA)
実施例1.3.14(17.7mg)を、N,N-ジメチルホルムアミド(0.14mL)に溶解させ、O-(7-アザベンゾトリアゾル-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(16.9mg)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(18.5μL)を添加した。混合物を室温で3分間撹拌し、次にN,N-ジメチルホルムアミド(0.2mL)中の実施例1.4.1(52.0mg)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(24.7μL)の混合物に添加した。1時間後に、反応液をN,N-ジメチルホルムアミド/水=1/1(1.0mL)で希釈し、逆相HPLC(Phenomenex(登録商標)Luna(登録商標)C18 250×50mmのカラム)によって精製し、0.1%のトリフルオロ酢酸/水(100mL/分)中の5~75%アセトニトリルによって溶出させ、標題化合物を得た。1H NMR (500 MHz, ジメチルスルホキシド-d6) δ ppm 9.86 (br d, 1H), 8.17 (br d, 1H), 8.04 (m, 2H), 7.78 (d, 1H), 7.61 (d, 1H), 7.51 (br d, 1H), 7.49-7.39 (m, 4H), 7.36 (m, 2H), 7.29 (s, 1H), 7.21 (d, 1H), 7.07 (s, 2H), 6.95 (d, 1H), 5.00 (s, 2H), 4.96 (s, 2H), 4.64 (t, 1H), 4.36 (m, 1H), 4.19 (m, 1H), 4.16 (d, 1H), 4.01 (d, 1H), 3.88 (br t, 2H), 3.82 (br m, 3H), 3.75 (br m, 1H), 3.64 (t, 2H), 3.54 (d, 2H), 3.47 (m, 4H), 3.43 (br m, 4H), 3.23 (br m, 5H), 3.13 (t, 1H), 3.10 (br m, 1H), 3.01 (br m, 2H), 2.93 (t, 1H), 2.83-2.68 (m, 3H), 2.37 (m, 1H), 2.08 (s, 3H), 1.99 (br m, 2H), 1.85 (m, 1H), 1.55 (br m, 1H), 1.37 (br m, 1H), 1.28 (br m, 6H), 1.10 (br m, 7H), 0.93 (br m, 1H), 0.88-0.69 (m, 12H);MS(ESI)m/z 1713.6(M-H)-.
【0170】
[実施例2]:AM2抗体の調製
AM2のVH領域のアミノ酸配列を、配列番号22において示す。AM2のVL領域のアミノ酸配列を、配列番号23において示す。AM2の重鎖を配列番号1として示し、軽鎖を配列番号5として示す。
【0171】
AM2の重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターをHEK293細胞に一過性にトランスフェクションすることにより、AM2の重鎖及び軽鎖の全長の核酸配列を発現させた。重鎖の発現のために使用するリーダー配列のアミノ酸配列をMEFGLSWLFLVAILKGVQC(配列番号25)とし、一方、軽鎖の発現のために使用するアミノ酸配列をMDMRVPAQLLGLLLLWFPGSRC(配列番号26)とした。AM2は、配列番号1の重鎖及び配列番号5の軽鎖を有し、次の機能性評価のためにその後精製した。
【0172】
配列番号21の重鎖及び配列番号24の軽鎖を含む抗EGFR抗体AM2Bに対して、AM2のアミノ酸突然変異は、(1):z、非aアロタイプからz、aアロタイプへ変更したヒトIgGアロタイプ、(2):C6v1(LC:C214A)突然変異、部位特異的コンジュゲーションが可能、及び(3)LALA突然変異(2つのロイシンのアラニンへの置換、L234A、L235A)とした。
【0173】
[実施例3]:EGFR AM2抗体によるシントンAAAのコンジュゲーション
ジメチルアセトアミド(DMA)中の10mMの2-(ジフェニルホスフィノ)安息香酸(DPPBA、Sigma Aldrich)の溶液を調製した。2.42当量のDPPBAを、4℃で、EGFR AM2抗体の予備平衡溶液(約10mg/mL、1×ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)中に調合し、2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)でpH7.4)に添加した。反応混合物を16~24時間、4℃で穏やかに混合し、インキュベートした。3.7当量の10mMシントンAAA(6-{8-[(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)カルバモイル]-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル}-3-[1-({3-[2-({[(2-{2-[(2S,3R,4R,5S,6S)-6-カルボキシ-3,4,5-トリヒドロキシオキサン-2-イル]エチル}-4-{[(2S)-2-{[(2S)-2-(2-{(3S,5S)-3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)-2-オキソ-5-[(2-スルホエトキシ)メチル]ピロリジン-1-イル}アセトアミド)-3-メチルブタノイル]アミノ}プロパノイル]アミノ}フェニル)メトキシ]カルボニル}[(3S)-3,4-ジヒドロキシブチル]アミノ)エトキシ]-5,7-ジメチルアダマンタン-1-イル}メチル)-5-メチル-1H-ピラゾル-4-イル]ピリジン-2-カルボン酸)(米国特許出願公開第2019/0343961号を参照)(DMAに溶解)を、還元した抗体溶液に添加し、穏やかに混合した。反応混合物を60分間室温でインキュベートし、次に2当量のN-アセチル-L-システイン(NAC、Sigma Aldrich A-8199-10G)によってクエンチした。抗体-薬剤コンジュゲート(ADC)を、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によって精製した。
【0174】
[実施例4]:EGFRを標的とするADCは、インビボにおいてがん細胞の成長を阻害する
NSCLC細胞株、EBC-1及びNCI-H441(以降H441と称する。)は、それぞれ、JCRB及びATCCから得た。細胞は、供給元の勧告に従い、最大3回の継代単層培養において維持した。培地中5×106細胞の懸濁液をMatrigelと混合し(1:1=体積:体積)、雌のSCID/ベージュマウスの右側脇腹に皮下に注入した。横腹の腫瘍サイズがおよそ200mm3となったとき、処理を開始した。
【0175】
【0176】
平均DARは、組成物中の抗体に連結する薬剤の平均数を表す。
【0177】
図3は、AM2B-AAA及びAM7-AAAが、免疫を損なわれたマウスにおける異種移植として増殖するヒトNSCLCの成長を阻害したことを示す。適度な成長阻害が、単一薬剤としてのADCの投与後に観察された。ドセタキセル(DTX)によって生じる阻害の耐久性が、AM2B-AAA又はAM7-AAAによる同時投与の後に増加した。ADCの活性を、非標的化IgG抗体(AB095)(破傷風トキソイドを認識するヒトIgGl抗体;Larrick et al,1992,Immunological Reviews 69-85を参照)と比較した。
【0178】
図3A及び3Bは、乳頭状腺がん(H441)の処理後の腫瘍体積の変化を示す。
【0179】
図3C及び3Dは、扁平上皮癌(EBC-1)の処理後の腫瘍体積の変化を示す。
【0180】
曲線の各位置は、8つの腫瘍の平均体積を表す。
【0181】
エラーバーは、平均値の標準誤差を表す。
【0182】
[実施例5]:FACS分析による、EGFRを過剰発現する細胞におけるAM2-AAAによるBcl-xLの阻害
細胞表面に過剰発現させた野生型EGFRに対する、及びNSCLCにおいて存在する活性化突然変異を含むEGFRの突然変異形態(mutEGFR)に対する、AM2-AAAの結合をアッセイするため、野生型EGFR(A431)及びmutEGFR(NCI-H1650)を過剰発現する腫瘍細胞を、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって評価した。
【0183】
およそ1.5×106細胞/mLとなったときに、細胞をフラスコから回収した。PBS/1%のFBS(FACS緩衝液)で細胞を1回洗浄し、次にFACS緩衝液中に2.5×106細胞/mLで再懸濁した。50μLの細胞を、丸底96ウエルプレートに添加した。2x濃度のmAb/ADC(最終濃度を図に示す。)50μLをウェルに添加し、プレートを1時間4℃でインキュベートした。細胞を2回FACS緩衝液で洗浄し、50μLの、FACS緩衝液で希釈した1:100希釈の二次Ab(AlexaFluor 488、Invitrogen、11013)に再懸濁した。プレートを1時間4℃でインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄した。細胞は、100μLのPBS/1%のホルムアルデヒド中に再懸濁させ、Becton Dickinson FACSCanto IIフローサイトメーターで分析した。データを、WinListフローサイトメトリー分析ソフトウェアを使用して分析した。
【0184】
【0185】
AM2-AAA及びAM2は、両方の細胞株に同様の見かけの親和性で結合することを示し、すなわちAb結合特性に対するリンカー薬剤の影響がないことを示した。結合しない対照MSL109 hIgG(
図1)を使用したとき、結合は観察されなかった。CMV糖タンパク質H(MSL109)に対するモノクローナル抗体は、配列番号29で表わされる重鎖と配列番号30で表わされる軽鎖とを有する非標的化対照である。
【0186】
[実施例6]:BIM-Bcl-xL複合体破壊アッセイ
AM2-AAAによる細胞の処理が、EGFR依存的にBcl-xLを阻害したか否かを判断するため、野生型EGFR及びmutEGFRを発現する細胞株におけるBcl-xL-BIM複合体の破壊を評価した。
【0187】
朝、10%のウシ胎児血清を補充した増殖培地RPMI-1640(GibcoInvitrogen、22400-089)中、96ウエルプレートにおいて50×10
3細胞/ウェルで細胞を播種した。午後に、処理剤を新しい培地に添加し、3つの同じウェルを用意した。24時間後に、細胞を10mMのHEPES、150mMのNaCl、1%のCHAPS緩衝液によって溶解させ、予め抗Bcl-xL捕捉抗体(R&Dシステム、ビオチン化抗Bcl-xL 840768、DYC894-2キット)でコーティングしたプレート(MesoScale Diagnostics LLC、L15SA-1)上で、タンパク質ライセート中のBcl-xL/BIM複合体を捕捉した。プレートをPBSによって洗浄し、検出用抗体の抗BIM(Cell Signaling、2933)を室温で1時間にわたりウェルに添加した。次にプレートをPBSによって洗浄し、Sulfoタグを有する抗ウサギ抗体(MesoScale Diagnostics LLC、R32AB-1)をウェルに添加し、次に1時間室温でインキュベートした。プレートを洗浄し、MSDリード緩衝液(MesoScale Diagnostics LLC、R92TC-2)をウェルに添加し、プレートをMesoScale Diagnostics LLC装置(Sector S 600)で測定した。データを、残留するBIM/BCL-xL複合体のパーセントとしてプロットした。(
図2)
【0188】
[実施例7]:カスパーゼアッセイ
【0189】
【0190】
A431細胞を増殖培地中、ウェル当たり50,000細胞で、96ウェルプレート(Coastar、3610)に播種した。37℃で24時間の培養後に、ADCをウェルに添加し、24時間のCO2インキュベータ内で37℃でインキュベートした。インキュベーション後、100μLのカスパーゼ-Glo3/7 Assay試薬(Promega、G8093)を各ウェルに添加し、10分間振とうした。次にプレートを20分間37℃でインキュベートした。カスパーゼ3/7活性は、Victor発光プレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して評価した。
【0191】
非標的化ADC(MSL109 hIgG-AAA)又はAM2が、Bcl-xL-BIM複合体を破壊できなかった一方、AM2-AAA処理の結果、両方の細胞株において効率的な複合体の破壊がもたらされた。これらの結果は、AAA弾頭がAM2-AAAを介してEGFR発現細胞に特異的に送達され(
図2を参照)及びBcl-xL活性を阻害したことを示す。
【0192】
カスパーゼ活性化(Bcl-xL阻害の下流側の結果)を促進するAM2-AAAの能力を、A-431細胞においても評価した。AM2-AAAは、AM2又は非標的化MSL109 hIgG-AAAとは異なりカスパーゼ活性化を誘導し、これは標的化されたADCの、EGFR依存的なオンメカニズム活性(EGFR-dependent on mechanism activity)を裏付ける。
【0193】
[実施例8]:毒性試験
【0194】
【0195】
試験A:カニクイザルにおけるAM2B-AAAの2回の静脈内投与(3週毎に1回)の4週間にわたる毒性試験
AM2B-AAAの2回の静脈内投与を、以下の4つの群の雄及び雌のカニクイザルに投与した:対照(0mg/kg/用量)、用量A(低用量;Xmg/kg/用量)、用量B(中用量;3Xmg/kg/用量)、及び用量C(高用量;6Xmg/kg/用量)。AM2B-AAAの投与の結果、高用量(用量C)では複数の器官の動脈において有害効果の所見が得られた。ヒトIgG及び補体のための明確な免疫組織化学的染色の結果、用量Cにより、異種タンパク質の投与による二次免疫複合体病に対応する、動脈における(低度~中度の)炎症が観察された。これは、免疫組織化学によって示されるように、補体の結合による免疫複合体の形成及び堆積による副次的なものであると解釈された。AB2B-AAAに起因する有害効果ではない所見として、すべての用量レベルでの腎臓における糸球体マトリックスの増加が挙げられた。
【0196】
注目すべきことに、程度が低く、機能効果がないために、有害効果であるとはみなされない、腎臓における試験項目関連の変化としては、≧用量Aにおける糸球体マトリックスの増加(低度~軽度)、≧用量Bにおける細管の拡張(低度)、赤血球量(減少、≧用量Bで低度)、血小板数(減少、≧用量Bで軽度~中度)、グロブリンを特徴とする急性期炎症反応(用量A及び用量Bで低度の増加、用量Cで軽度~中度の増加)、CRP(用量Cで軽度の増加)、アルブミン(≧用量Bで低度~軽度の減少)及びフィブリノーゲン(≧用量Bで低度の増加)が挙げられた。
【0197】
試験B:カニクイザルにおける5週間にわたるAM2-AAAの静脈内投与(2つの用量;Q3W)における毒性診査試験
AM2-AAAの2つの静脈内投与として、0mg/kg/用量(対照)、用量1(6Xmg/kg/用量、Xは試験Aと同じ)及び用量2(15Xmg/kg/用量)にて、雄及び雌のカニクイザルに投与した。検出可能な免疫複合体病の所見はなかった。
【0198】
腎臓における所見は、≧用量1では、尿素窒素の軽度の増加を伴う、糸球体マトリックスの軽度~中度の増加であった。血液学所見としては、試験項目関連の軽度~中度のRBCの質量減少、非有害な網状赤血球の減少、及び≧用量1での中度~顕著な血小板減少(用量2の場合のみ有害とみなされる。)が挙げられた。有害であるとはみなされない他の試験項目関連の変化としては、≧用量1での胸腺のリンパ球数の軽度~中度の減少、AST活性の低度~軽度の増加、用量1でのビリルビンの増加、≧用量1での軽度~中度のカルシウムの減少、及び≧用量1での低度~軽度のアルブミンの減少が挙げられた。
【0199】
[実施例9]:AM2及びAM2-AAAのBiacore結合分析
AM2抗体及びAM2-AAA ADCの、組換えEGFR、具体的には、野生型EGFR細胞外ドメイン(ECD)(EGFR(h)(1~645))、EGFRvIII(EGFR(h)(1~29)-G-(298~645))及び短縮された野生型EGFR 1~525(EGFR1(h)(1~525))に対する親和性を、3つの形態間で比較するため、Biacore分析を行った。AM2は、配列番号1及び5においてそれぞれ提供されるAM2の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を含み、標準的な方法に従って作製した。配列番号1及び5においてそれぞれ提供される重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を有するAM2抗体を含むAM2-AAAを、AAAシントン(平均DAR 2)にコンジュゲートした。
【0200】
AM2及びAM2-AAAの組換え可溶性EGFR細胞外ドメイン(ECD)に対する結合動態学を、抗Fc捕捉アッセイ手法を用い、25℃で、Biacore T200装置(GE Healthcare)において構成した表面プラズモン共鳴ベースの測定によって測定した。EGFRの3つのアイソフォームの組換え可溶性ECDを、C末端にmyc及びヒスチジンタグを有する分泌タンパク質として、一過性トランスフェクションされたHEK293細胞から発現させ、Ni-IMAC(固定化金属アフィニティークロマトグラフィー)及びSECによって精製した。特に、試験したEGFR ECDは、myc及びヒスチジンタグに融合するEGFRのアミノ酸1~645[(EGFR(1~645)-LESRGPF-Myc-NMHTG-6His(「LESRGPF」(配列番号27))]を含んだ。EGFRvIII変異体も、myc及びヒスチジンタグに融合し(EGFR(h)(1~29)-G-(298~645)-LESRGPF-Myc-NMHTG-6His)、またECD EGFR 1~525も[EGFR1(h)(1~525)]-LESRGPF-Myc-NMHTG-6His(「LESRGPF」(配列番号28))]であった。すべてのECDは、シグナル配列MRPSGTAGAALLALLAALCPASRAと共に発現し、それは分泌の間に切断された。
【0201】
チップの調製及び結合動態の測定は、アッセイ緩衝液HBS-EP+(10mMのHepes、pH 7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.05%のTween 20)において行った。抗Fc捕捉チップの調製の際、約2000RUのヤギ抗ヒトIgG Fcポリクローナル抗体(Thermo Fisher Scientific Inc.、カタログ番号31125)を25μg/mLまで10mMの酢酸ナトリウム(pH 4.5)で希釈し、製造業者の指示及び手順(GE Healthcare)に従って、標準的なアミンカップリングキットを使用してCM5バイオセンサーチップ全体に直接固定した。バイオセンサー表面上の未反応の部分を、エタノールアミンによってブロックした。結合動態を測定するため、各アッセイサイクルでは以下のステップを含めた:(1)試験表面上のみにおける試験抗体の捕捉、(2)参照及び試験表面(240μL、80μL/分)上への検体注入(EGFR ECD又は緩衝液のみ)、その後、900秒間、80μl/分で分離をモニター、(3)参照及び試験表面への10mMのグリシン-HCl(pH1.5)の注入による捕捉表面の再生。
【0202】
動態測定の際、検体を、3μMの最大用量からランダムに3倍の希釈系列として調製した。アッセイの間、すべての測定は、捕捉表面単独(すなわち、捕捉される試験抗体なし)を参照として行い、また緩衝液のみの注入を2次的参照として用いた。データを処理し、Biacore T200 Evaluationソフトウェアを使用して、1:1の結合モデルに全体的にフィットさせ、結合動態反応速度定数、ka(M-1s-1)及びkd(s-1)、及び平衡解離定数KD(M)を決定した。Biacore分析の結果を表1に示す。
【0203】
【0204】
様々な具体的実施形態を例示及び記載したが、様々な変更が、本開示の技術思想及び範囲から逸脱することなく可能であることはいうまでもない。
【0205】