(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011204
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】光シート照射装置、光シート顕微鏡、光シート照射方法、および光シート照射プログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20220107BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20220107BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220107BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G01N21/17 620
G01N21/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112191
(22)【出願日】2020-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.SMALLTALK
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 朋信
(72)【発明者】
【氏名】金城 純一
(72)【発明者】
【氏名】大浪 修一
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043GA01
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA11
2G043JA02
2G043KA01
2G043KA02
2G043LA01
2G059AA05
2G059BB12
2G059BB14
2G059EE01
2G059EE07
2G059FF02
2G059GG01
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ02
2G059JJ11
2G059JJ15
2G059JJ23
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
2H052AC02
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC27
2H052AC34
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】照射斑が軽減され、明暗コントラストの高い断層画像を取得する。
【解決手段】光シート照射装置は、レーザ光源114から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の光学系と、第1のシート状の光を、第1の光路P1を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、第1の光路とは異なる第2の光路P2を進み、第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の光学系と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の光学系と、
前記第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、前記第1の光路とは異なる第2の光路を進み、前記第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の光学系と、
を有する光シート照射装置。
【請求項2】
前記第2の光学系よりも前記試料の側において、前記第2のシート状の光と前記第3のシート状の光とを平行な光路に導く第3の光学系を更に有する、請求項1に記載の光シート照射装置。
【請求項3】
前記レーザ光源と前記第1の光学系との間に配置され、前記第1のシート状の光の照射方向を制御することにより、前記第2のシート状の光と前記第3のシート状の光が前記試料を照射する方向を変更する第4の光学系を更に有する、請求項1又は2に記載の光シート照射装置。
【請求項4】
前記第1の光学系と前記第2の光学系との間に配置され、前記第1のシート状の光の照射方向を制御することにより、前記第2のシート状の光および前記第3のシート状の光が前記試料を照射する位置を変更する第5の光学系を更に有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項5】
前記第1の光学系を前記レーザ光の光軸に対して平行移動させることにより、前記第2のシート状の光および前記第3のシート状の光が前記試料を照射する方向を変更する、請求項1から4のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項6】
前記第2の光学系は、前記第1の光路に前記第1のシート状の光を遮断する第1のシャッタと、前記第2の光路に前記第2のシート状の光を遮断する第2のシャッタをと、を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項7】
前記第2の光学系は、前記第1の光路に第1の波長のレーザ光を通過させる第1のフィルタと、前記第2の光路に前記第1の波長とは異なる第2の波長のレーザ光を通過させる第2のフィルタとを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項8】
前記第2の光学系は、偏光ビームスプリッタと、前記第2の光路上に配された半波長板を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項9】
前記第3の光学系は偏光ビームスプリッタを有する、請求項2を引用する請求項8に記載の光シート照射装置。
【請求項10】
前記第1の光学系はガルバノスキャナを有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の光シート照射装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の光シート照射装置と、
前記第2のシート状の光および前記第3のシート状の光が照射された試料の像を撮像し、画像を生成する撮像部と、
を有する光シート顕微鏡。
【請求項12】
前記光シート照射装置と前記撮像部は光学系を共有しない、請求項11に記載の光シート顕微鏡。
【請求項13】
前記レーザ光を制御する制御部と、
前記撮像部により生成された画像を処理する画像処理部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2のシート状の光を前記試料の前記第1の方向の幅よりも小さい第1の幅を有する光に分割して生成し、前記第1の幅の光を照射する位置を前記試料に対して前記第1の方向に複数回移動し、
前記撮像部は、前記位置が移動する度に前記試料の像を撮像し、
前記画像処理部は、前記撮像によって取得した画像を合成して前記試料の前記第1の方向の断層像を得る、請求項11または12に記載の光シート顕微鏡。
【請求項14】
前記制御部は、一回の撮像の間に、複数の前記第1の幅の前記光を前記第1の方向に予め定められた間隔を開けて平行に配置して前記試料に対して照射する、請求項13に記載の光シート顕微鏡。
【請求項15】
前記レーザ光を制御する制御部と、
前記撮像部により生成された画像を処理する画像処理部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第3のシート状の光を前記試料の前記第2の方向の幅よりも小さい第2の幅を有する光に分割して生成し、前記第2の幅の光を照射する位置を前記試料に対して前記第2の方向に複数回移動し、
前記撮像部は、前記位置が移動する度に前記試料の像を撮像し、
前記画像処理部は、前記撮像によって取得した画像を合成して前記試料の前記第2の方向の断層像を得る、請求項11から14のいずれか1項に記載の光シート顕微鏡。
【請求項16】
前記制御部は、一回の撮像の間に、複数の前記第2の幅の前記光を前記第2の方向に予め定められた間隔を開けて平行に配置して前記試料に対して照射する、請求項15に記載の光シート顕微鏡。
【請求項17】
レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の段階と、
前記第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、前記第1の光路とは異なる第2の光路を進み、前記第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の段階と、
を有する光シート照射方法。
【請求項18】
コンピュータに、
レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の段階と、
前記第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、前記第1の光路とは異なる第2の光路を進み、前記第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の段階と、
を実行させる光シート照射プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光シート照射装置、光シート顕微鏡、光シート照射方法、および光シート照射プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
試料の撮像の際に、試料内の微小構造による屈折・散乱・吸収が原因で照射斑が生じることがある。この問題を解決するために、試料に対してシート状の光を複数の方向から照射することで、照射斑を軽減することが行われている(例えば、非特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[非特許文献]
[非特許文献1] Jan Huisken and Didier Y. R. Stainier "Even fluorescence excitation by multidirectional selective plane illumination microscopy (mSPIM)" Optics Letters vol.32 2608-2610 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の装置は照明系と観察系とが独立でなく、照射経路を複数設ける等の自由度の高い光学設計が困難であり、照射斑を軽減する技術と、共焦点やローリングシャッタとの連動などによる撮像画像の明暗コントラストを上げる技術とを両立することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一態様においては、光シート照射装置が提供される。光シート照射装置は、レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の光学系と、第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、第1の光路とは異なる第2の光路を進み、第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の光学系と、を有する。
【0005】
本発明の一態様においては、光シート顕微鏡が提供される。光シート顕微鏡は上記光シート照射装置と、第2のシート状の光および第3のシート状の光が照射された試料の像を撮像し、画像を生成する撮像部と、を有する。
【0006】
本発明の一態様においては、光シート照射方法が提供される。上記方法は、レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の段階と、第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、第1の光路とは異なる第2の光路を進み、第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の段階と、を有する。
【0007】
本発明の一態様においては、光シート照射プログラムが提供される。上記プログラムは、コンピュータに、レーザ光源から出射されたレーザ光から第1のシート状の光を生成する第1の段階と、第1のシート状の光を、第1の光路を進み、試料に対して第1の方向に広がる第2のシート状の光と、第1の光路とは異なる第2の光路を進み、第1の方向に交差する第2の方向に広がる第3のシート状の光とに分離する第2の段階と、を実行させる。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る光シート顕微鏡1の概略的な構成を示す図である。
【
図2】光シート照射装置100の概略的な構成を示す図である。
【
図3】水平シート201及び垂直シート202の概略を示す図である。
【
図4】(a)および(b)は、照射斑を軽減する方法についての説明図である。
【
図5】シート高さを制御するためのガルバノスキャナ13の制御を示す図である。
【
図6】画像の明暗コントラストを向上する撮像方法についての説明図である。
【
図7】(a)及び(b)は、
図6の画像を合成する方法についての説明図である。
【
図8】照射斑を軽減する撮像方法についての説明図である。
【
図9】露光時間短縮のための撮像方法についての説明図である。
【
図10】照射斑を軽減する撮像方法と、画像コントラストを向上する撮像方法との両立についての説明図である。
【
図11】(a)から(d)は、本実施形態に係る光シート顕微鏡1と比較例の装置との性能の第1の比較試験の結果を示す図である。
【
図12】(a)から(d)は、第1の比較試験の統計を取った図である。
【
図13】(a)から(d)は、本実施形態に係る光シート顕微鏡1と比較例の装置との性能の第2の比較試験の結果を示す図である。
【
図14】他の実施形態に係る光シート顕微鏡1aの概略的な構成を示す図である。
【
図15】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る光シート顕微鏡1の概略的な構成を示す図である。光シート顕微鏡1は、撮像部111,112と、制御部113と、光シート照射装置100と、レーザ光源114とを備える。光シート顕微鏡1は、励起光であるシート状の光を試料101に向けて照射し、試料101の蛍光色素から励起された蛍光を撮像することで試料101の画像を取得する。
【0012】
光シート顕微鏡1は、シート状の光を撮像部111、112のそれぞれの検出用対物レンズの光軸に沿って試料101に対して相対的に移動させながら撮像することで、試料101の複数の断層像を取得し、それらを再構成することにより、試料101の3次元立体像を得る。試料101は、例えば、蛍光色素により標識された生体細胞である。
【0013】
光シート照射装置100は、シート状の光を検出用対物レンズの光軸に交差する方向、好ましくは直交する方向から試料101に向けて照射する。ここで、試料101の設置面(XY平面とする)に対して平行なシート状の光を照射して、深さ方向(Z方向)の複数の断層像から3次元立体像を構成する場合に、設置面に平行な面内と深さ方向とで分解能が大きく異なってしまう。そのため、設置面に平行な段面とは異なる断面(XZ平面またはYZ平面)からの断層像(XZもしくはYZ)を取得し、いずれの方向の分解能も同じになるようにすることが好ましい。
【0014】
本実施形態では、光シート照射装置100は、試料101の設置面(XY平面)に対して平行なシート状の光と、試料101の設置面に対して垂直なシート状の光とを生成し、一方向から試料101に対して照射する。光シート照射装置100は、撮像部111,112から独立しており、光シート照射装置100と撮像部111,112は光学系(例えば対物レンズ)を共有しない。
【0015】
撮像部111,112は、シート状の光が照射された試料101の像を撮像し、画像を生成する。撮像部111,112は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの2次元イメージセンサを備えたデジタルカメラである。撮像部111,112は、グローバル露光(全素子を同時に露光する)が可能である。
【0016】
制御部113には、撮像部111,112により撮像された試料101の複数の断層像が入力される。制御部113の画像処理部は、入力された試料101の複数の画像から試料101の全体画像である3次元立体像を生成する。また、制御部113は、光シート照射装置100およびレーザ光源114を制御することによって、シート状の光を生成して試料101に照射し、また、生成したシート状の光の試料101に対する照射位置および照射方向を変更する。
【0017】
図2は、光シート照射装置100の概略的な構成を示す図である。光シート照射装置100は、ガルバノスキャナ11~13と、ビームスプリッタ21~22と、ミラー31~36と、レンズ41~48と、シャッタ51~52を備える。
【0018】
レーザ光源114からは、レーザ光が出射する。レーザ光は、指向性の高いコヒーレント光であるため光源として適している。レーザ光の波長は、例えば、可視光領域から近赤外光領域であって、試料101の中に導入された蛍光色素を励起させる波長が用いられる。また異なる波長を持つ複数のレーザ光をレーザ光源114から同時にまたは時分割で出射させても良いし、単一のレーザ光をレーザ光源114から出射させても良い。
【0019】
レーザ光源114から出射したレーザ光は、可変レンズ41に入射する。本実施形態では、外部信号によって通過するレーザ光の光軸方向の集光位置を変えられる可変レンズ41を設置する。これにより、レーザ光の集光位置を試料101の大きさや位置に合わせて自在に変更する。可変レンズ41の具体例としては、光透過性の液体を内包し、入力される可変電流による電磁力で表面の曲率を変える液体レンズが挙げられる。
【0020】
可変レンズ41から出射したレーザ光は、可変レンズ41の後方に設置されたレンズ42に入射する。なお、特に断らない限り、レーザ光の光路においてレーザ光が時間的に後に到達する側を単に「後方」という。レンズ42の位置は、可変レンズ41からちょうど可変レンズ41の焦点距離だけ離れた位置に設置する。
【0021】
レンズ42からさらにレンズ42の焦点距離だけ離れた位置に、制御部113からの入力信号によって入射光に対する反射光の角度を変えられるガルバノスキャナ11を設置する。レンズ42から出射したレーザ光は、レンズ42の後方に設置されたガルバノスキャナ11に入射する。ガルバノスキャナ11は、試料101内の微小構造による屈折・散乱・吸収が原因で生じる照射斑を軽減させるために用いられる。照射斑を軽減させる方法については、後述する。
【0022】
ガルバノスキャナ11の後にレンズ43を設置する。レンズ43の位置は、ガルバノスキャナ11からちょうどレンズ43の焦点距離だけ離れた位置に設置する。ガルバノスキャナ11から出射したレーザ光は、ガルバノスキャナ11の後方に設置されたレンズ43に入射する。
【0023】
レンズ43からさらにレンズ43の焦点距離だけ離れた位置に、ガルバノスキャナ11と同様のガルバノスキャナ12を設置する。レンズ43から出射したレーザ光は、レンズ43の後方に設置されたガルバノスキャナ12に入射する。
【0024】
ガルバノスキャナ12は、入力された時間に応じて連続的に変化する電圧に応じて高速で走査されることによりシート状の光を形成する。ここで、シート状の光とはシート形状の照明領域を有する照明光のことである。シート状の光は、試料101内で検出用対物レンズの光軸方向に薄く、光軸方向に直交する方向に厚い形状を有する。ガルバノスキャナ12に入力する信号の波形は任意であるが、一例として一定振幅のもと直線的に単調増加または単調減少する鋸型の波形が考えられる。入力波形のサンプリング数およびサンプリング時間間隔は、目的に応じて任意に設定する。
【0025】
ガルバノスキャナ12の後にレンズ44を設置する。レンズ44の位置は、ガルバノスキャナ11からちょうどレンズ44の焦点距離だけ離れている。ガルバノスキャナ12から出射したシート状の光は、ガルバノスキャナ12の後方に設置されたレンズ44に入射する。
【0026】
レンズ44からさらにレンズ44の焦点距離だけ離れた位置に、固定ミラー31を設置し、固定ミラー31の後方にレンズ45を設置する。レンズ44から出射したシート状の光は、固定ミラー31によって反射されレンズ45に入射する。固定ミラー31とレンズ45との間の距離は、レンズ45の焦点距離とする。
【0027】
レンズ45からさらにレンズ45の焦点距離だけ離れた位置に、ガルバノスキャナ11、12と同様のガルバノスキャナ13を設置する。レンズ45から出射したシート状の光は、レンズ45の後方に設置されたガルバノスキャナ13に入射する。ガルバノスキャナ13は、最終的に出力されるシート状の光の、シート面に垂直な方向の位置(シート高さ)を調整するために用いる。ガルバノスキャナ13の設置角度は、ガルバノスキャナ11~13の全てに入力信号の基準値を入力した際に、反射されるシート状の光の方向が垂直上向き(
図2における+Z方向)になるような角度とする。
【0028】
ガルバノスキャナ13で反射されたシート状の光は、ガルバノスキャナ13の直上(
図2における+Z方向)に設置されたビームスプリッタ21によって分離され、光路P1および光路P2に導入される。本実施形態において、ビームスプリッタ21は、無偏光型であって、入射したビーム光の強度を約1:1に分離する。
【0029】
光路P1には、固定ミラー32、レンズ46、固定ミラー33、およびシャッタ51を設置する。固定ミラー32,33とレンズ46との間の距離は、レンズ46の焦点距離とする。固定ミラー33の後方には、シャッタ51を設置する。ビームスプリッタ21によって分離され、光路P1を通過するシート状の光は、試料101の設置面203に対して水平方向に広がる。試料101の設置面203に対して水平なシート状の光を水平シート201という。
【0030】
光路P2には、固定ミラー34、固定ミラー35、レンズ47、固定ミラー36、およびシャッタ52を設置する。固定ミラー35および36とレンズ47との間の距離は、レンズ47の焦点距離とする。固定ミラー36の後方には、シャッタ52を設置する。ビームスプリッタ21によって分離され、光路P2を通過するシート状の光は、試料101の設置面203に対して垂直方向に広がる。試料101の設置面203に対して垂直なシート状の光を垂直シート202という。
【0031】
図3は、水平シート201及び垂直シート202の概略を示す図である。
図3に示すように、水平シート201は、試料101の設置面203に水平に広がるシート状の光であり、垂直シート202は、試料101の設置面203に対して垂直に広がるシート状の光である。水平シート201および垂直シート202は、試料101に対して+Y方向から照射される。
図3において、試料101の設置面203はXY平面であり、水平シート201および垂直シート202が試料101に照射される方向すなわち進行方向は+Y方向である。水平シート201の高さ方向はZ方向であり、垂直シート202の高さ方向はX方向である。
【0032】
水平シート201の照射によって試料101の水平方向の断層像である画像Aが取得され、垂直シート202の照射によって試料101の垂直方向の断層像である画像Bが取得される。画像Aおよび画像Bは、それぞれ撮像部111および撮像部112によって撮像される。
【0033】
図2に戻り、レンズ46および47は、ビームスプリッタ22の後に設置するレンズ48と合わせて、ガルバノスキャナ13の鏡面を結像する光学系になるように調整する。この光学系によって結像されたガルバノスキャナ13の鏡面の共役面を、検出用の対物レンズの後側焦点面またはその共役面と一致させることで、所望のシート状の光が検出可能となる。
【0034】
シャッタ51およびシャッタ52は、外部入力によってレーザ光を遮断する装置である。シャッタ51およびシャッタ52を光路P1および光路P2に設けることにより、例えば一方の光路を遮断して他方の光路を開通させる制御が可能となる。シャッタ51およびシャッタ52の位置は、ビームスプリッタ21およびビームスプリッタ22の間にあり、光路P1および光路P2を通過するシート状の光を完全に遮断できる位置であればどこでも良い。シャッタ51およびシャッタ52によるシート状の光の遮断は、同時に行っても良いし交互に行っても良い。シャッタ51およびシャッタ52の例としてはソレノイドを用いた電磁メカニカルシャッタが挙げられる。
【0035】
光路P1および光路P2を通ったシート状の光は、別のビームスプリッタ22によって合波され、再び共通の光路を通る。ビームスプリッタ21およびビームスプリッタ22は、目的に応じて種類を選択する。ビームスプリッタ22は、ビームスプリッタ21が無偏光型であることに対応して、同じく無偏光型であり、合波に用いられているのでビームコンバイナとして機能している。以上の構成により、水平シート201及び垂直シート202が試料101に照射可能となる。
【0036】
ここで、試料101の撮像の際に、試料101内の微小構造(小胞など)による屈折・散乱・吸収が原因で照射斑(影)が生じることがある。試料101に対してシート状の光を複数の方向から照射することで、照射斑を軽減することができる。本実施形態では、ガルバノスキャナ11またはガルバノスキャナ12を動作させることにより、試料101に対するシート状の光の進行方向を変更し、試料101に対してシート状の光を複数の進行方向から照射する。
【0037】
図4(a)および(b)は、照射斑を軽減する方法についての説明図である。
図4(a)に示すように、ガルバノスキャナ11に、傾けたい角度に対応した信号を入力し反射光の角度を変えた後にレンズ42を通してガルバノスキャナ12に入射させる。これにより、ガルバノスキャナ12に入射させるシート状の光を、水平面内で平行移動させることができ、最終的に生成されるシート状の光の進行方向を、シート生成面内において基準となる光軸から傾けることができる。なお、ガルバノスキャナ11を動作させる場合にはガルバノスキャナ12を動作させない。
【0038】
図4(b)は、照射斑を軽減する他の例を示す。
図4(b)に示すように、ガルバノスキャナ12を、入力信号によって制御可能な直進ステージ上に設置し、直進ステージによってガルバノスキャナ12を入射光の光軸方向に沿って平行移動させる。これにより、ガルバノスキャナ12から出射するシート状の光を水平面内で平行移動させることができ、シート状の光の進行方向を光軸から傾けることができる。なお、ガルバノスキャナ12を動作させる場合にはガルバノスキャナ11を動作させない。
【0039】
図5は、シート高さを制御するためのガルバノスキャナ13の制御を示す図である。
図5に示すように、ガルバノスキャナ13に得たい高さに対応した信号を入力し反射光の角度を変えた後にガルバノスキャナ13の直上に設置されたビームスプリッタ21に入射させる。これにより、最終的に出力されるシート状の光の、シート面に垂直な方向の位置(シート高さ)を制御する。シート高さとは、水平シート201については試料101の設置面203からの+Z方向の距離であり、垂直シート202については、試料101のX方向の一端面からの+X方向の距離であるものとする。
【0040】
ここで、シート状の光が試料101におけるシート部分以外の領域をも照射してしまうと、取得したい断層面以外からの蛍光が背景光となり、画像の明暗コントラストが低下することがある。本実施形態では、以下の方法によって擬似的に共焦点と同様の効果を作り出し、シート部分以外からの背景光を除去することによって、画像の明暗コントラストを向上させる。
【0041】
図6から
図10は、画像の明暗コントラストを向上する撮像方法についての説明図である。
図6から
図10には、一例として水平シート201が示されているが、垂直シート202についても同様の制御が可能である。
【0042】
図6に示すように、制御部113は、試料101のX方向の幅よりも小さい幅を有する光である部分シート211を生成して試料101に対する照射を行い、撮像部111によって試料101の像を撮像する。その後、部分シート211の照射位置を水平シート201の広がりの面内である-X方向に予め定められた間隔ずらしながら一枚ずつ撮像(すなわち露光)を行い、試料101の水平面(XY平面)を全て撮像する。
【0043】
図6の例で、一回の撮像の間はガルバノスキャナ12の向きが固定され、次の撮像までに次の照射位置に対応する向きに移動する、ように制御部113からガルバノスキャナ12に信号が与えられる。従って、部分シート211の水平方向の幅は、レーザ光源114から出射された光が試料101に投影された像の水平方向の断面の幅に対応する。部分シート211の水平方向の幅は試料101の水平方向の断面のX方向の幅より十分小さく、かつ、水平シート210のX方向の幅に対しても十分に小さい。なお、ガルバノスキャナ11の向きは固定されている。
【0044】
続いて、
図7(a)及び(b)に示すように、撮像された各画像においてシート状の光の照射領域の輝度分布を既知の方法で合成して試料101の断面像を再構成する。各画像におけるレーザ照射領域の輝度分布を合成する手法の例としては、最大輝度投影法(Maximum intensity projection)が挙げられる。これにより、
図7(b)に示すように、制御部113の画像処理部は試料101全体の1枚の断層像の画像を得る。
【0045】
上記の通り、撮像部111が部分シート211の位置が移動する度に試料101の像を撮像し、画像処理部がそれらを合成するので、試料101に水平に広がるシート状の光を照射した場合の像に対応した像を得ることができる。その観点から時分割で生成された複数の部分シート211によって結果的に水平シート210が生成されて試料101に照射されているともいえる。
【0046】
さらに、部分シート211の水平方向の幅が試料101の水平方向の断面の幅よりも狭い。よって、一回の撮像の間に試料101の水平方向の断面の幅を水平シート201で照射する場合に互いに重畳されていた像を、狭い照射範囲からの像として別個に撮像でき、その結果、再構成された像全体のコントラストを向上することができる。
【0047】
図8は、照射斑を軽減する撮像方法の説明図である。
図8に示す撮像方法は、
図6に示した撮像方法を一つの単位として、当該単位を部分シート211の撮像方向を変える毎に繰り返し、それらよって得られた画像を再構成する。
【0048】
この場合に、まず、ガルバノスキャナ11をある角度に固定して、
図6に示すようにガルバノスキャナ12で部分シート211の照射位置を移動する度に撮像部111で撮像する。次に、ガルバノスキャナ11を別の角度に固定して、
図6に示す撮像方法を繰り返す。
【0049】
そのようにして得られた複数の画像を合成する。合成は既知の方法でなされてよいが、例えば、まずガルバノスキャナ11の角度ごと(すなわち上記単位ごと)に
図7(a)及び(b)と同様の方法で試料101全体の像を再合成する。さらに、試料101の像をガルバノスキャナ11の複数の角度の全体でさらに再合成する。
【0050】
これにより、画像のコントラスト向上させつつ、照射斑を軽減することができる。なお、部分シート211の撮像方法を変える方法は、
図4(b)に示すような、ガルバノスキャナ12を平行移動させる方法であってもよい。
【0051】
なお、
図6のように1つの照射位置に対して1枚ずつ画像を撮像する方法に代えて、一度の撮像において、複数の部分シート211が並列に照射されるようにし、並列化された部分シート211の位置を少しずつずらしながら、複数回の撮像により試料101の断層面全体を覆うように走査してもよい。
【0052】
図9は、露光時間短縮のための撮像方法についての説明図である。
図9では、一回の撮像(すなわち一度の露光)の間に、
図6に示す部分シート211を、予め定められた間隔をあけて並列に複数配置している。並列化された複数の水平シート201を、試料101に対して照射して撮像を行う。
【0053】
この場合、一度の露光の間に、ガルバノスキャナ12の向きを間欠的に変える。すなわち、ガルバノスキャナ12の静止と回転とを繰り返す。ガルバノスキャナ12の向きを変えるのに要する時間は、一度の露光時間及び静止時間に比べて十分短く設定される。これにより、
図9に示すように、一回の撮像全体で見れば(すなわち、照射量を各々の撮像における時間で積分すれば)、複数の部分シート211が互いに間隔を置いて並列に試料101を照射することになる。付言すれば、ガルバノスキャナ12の向きの移動中も露光はされているが、時間が短いので移動中に照射された試料101の領域からの像は十分に弱い。
【0054】
図9の場合も、
図6と同じように、並列化された複数の部分シート211の照射位置を試料101の-X方向に予め定められた間隔ずらしながら一枚ずつ撮像を行い、試料101の水平面(XY平面)を全て撮像する。画像処理部はそのようにして得た画像を
図7(a)及び(b)と同様に合成して試料101の再構成画像を得る。
【0055】
以上のように、複数のシート状の光を並列に配置して撮像することで並列化した分だけ一時的な画像の撮像枚数を減らし、全露光時間も短くすることができる。並列化されたシート状の光における、隣接するシート状の光の間隔は任意であるが、あるシート状の光によって発生した蛍光が、隣接するシート状の光の領域に影響を及ぼさないような間隔に設定することが望ましい。
【0056】
図10は、照射斑を軽減する撮像方法と、画像コントラストを向上する撮像方法との両立についての説明図である。
図10の例は、
図4及び
図8に示す照射斑を軽減するためにレーザ光の進行方向を変更する方法と、
図9に示す画像コントラストを向上する撮像方法との両立についての手順を示す。
【0057】
まず、ガルバノスキャナ11の向きすなわち部分シート211の進行方向をある方向に固定し、
図9と同様の撮像を行い、画像を保持しておく。次にガルバノスキャナ11の向きすなわちシート状の光の進行方向をある角度だけ傾け、
図9と同様の撮像と画像の保持を繰り返す。これらにより得られた画像を
図8で説明したのと同様の方法により合成し、試料101の像を再構築した画像を得る。
【0058】
なお、
図6から
図10の例において、部分シート211はガルバノスキャナ12を固定して生成されている。これに代えて、部分シート211は一回の露光中にガルバノスキャナ12をゆっくり走査させて生成してもよい。ゆっくりの度合いは、少なくとも
図9で説明した複数の離間した部分シート211を生成する場合の部分シート211間に対応するガルバノスキャナ12の回転に比べて遅く、それぞれの走査位置に対応する照射位置からの像が撮像部111に十分に撮像される程度に遅いことが好ましい。これにより、部分シート211の水平方向の幅を、レーザ光源114から出射された光が試料101に投影された像の水平方向の断面の幅よりも広くすることができる。この場合にも、部分シート211の水平方向の幅は試料101の水平方向の断面のX方向の幅より十分小さく、かつ、水平シート210のX方向の幅に対しても十分に小さくすることが好ましい。
【0059】
図11(a)から(d)は、本実施形態に係る光シート顕微鏡1と比較例の装置との性能の第1の比較試験の結果を示す図である。第1の比較試験では、試料101として蛍光ビーズを分散させた媒体を使用し、蛍光ビーズの密度が薄い箇所と密度が濃い箇所について撮像を行った。なお、本実施形態に係る光シート顕微鏡1による撮像は、
図9に示す露光時間短縮のための撮像方法を使用した。
図11(a)および(b)は、試料101の密度が薄い部分の水平面の投影図を示しており、
図11(c)および(d)は、試料101の密度が濃い部分の水平面の投影図を示している。
【0060】
図11(a)および(c)は、明暗コントラストを向上させる撮像方法を使用しない比較例の装置を使用した場合の投影図を示しており、
図11(b)および(d)は、
図9に示す本実施形態における画像の明暗コントラストを向上させる撮像方法を使用した場合の水平面の投影図を示している。
【0061】
図11(a)および(b)に示すように、試料101の密度が薄い部分については比較例の装置を使用した場合と本実施形態における光シート顕微鏡1を使用した場合では明暗コントラストの差はさほど生じていない。一方で、
図11(c)および(d)に示すように、試料101の密度が濃い部分については比較例の装置を使用した場合と本実施形態における光シート顕微鏡1を使用した場合とにおいて、明暗コントラストの差が明確に生じており視認性が向上している。
【0062】
図12(a)から(d)は、第1の比較試験の統計を取った図である。
図12(a)および(b)は、試料101の密度が薄い部分の撮像画像のコントラスト比の比較を示しており、
図12(c)および(d)は、試料101の密度が濃い部分の撮像画像の分解能の比較を示している。
【0063】
図12(a)に示すように、試料101の密度が薄い部分では、本実施形態における光シート顕微鏡1を使用した場合のほうが明暗コントラストの値が高い。また、
図12(b)に示すように、試料101の密度が濃い部分では、本実施形態における光シート顕微鏡1を使用した場合のほうが明暗コントラストの値が高く、その差が
図12(a)よりも大きくなっている。
図12(c)および(d)に示すように、試料101の密度が薄い部分および濃い部分ともに、本実施形態における光シート顕微鏡1を使用した場合の方が分解能の値が低く、分解能に優れていることが分かる。
【0064】
図13は、本実施形態に係る光シート顕微鏡1と比較例の装置との性能の第2の比較試験の結果を示す図である。第2の比較試験では、試料101としてES細胞塊を用いている。
図13には、比較例の装置を用いた場合の撮像画像と、本実施形態の光シート顕微鏡1を用いた場合の撮像画像が、試料101の表面からの距離(Z)ごとに示される。
図13に示すように、比較例の装置によると試料101の表面から深い位置(Z=200μm)では、ボケが生じていることが分かる。これに対して、本実施形態の光シート顕微鏡1を用いた撮像画像では、試料101の表面から深い位置であってもボケの発生が抑制されていることが分かる。
【0065】
上記実施形態によれば、光シート照射装置100と、撮像部111,112とをそれぞれ独立した装置とし、照射経路を複数設けた。これにより、自由度の高い光学設計が可能となり、照射斑を軽減する撮像方法と、画像コントラストを向上する撮像方法との両立が可能となった。したがって、照射斑が軽減され、明暗コントラストの高い断層画像を取得することができる。
【0066】
上記実施形態によれば、水平シート201と垂直シート202の生成に係る光学系を分離し、並列に配置した。これにより、水平シート201と垂直シート202とをそれぞれ異なる2つの波長で生成し、同時に試料101に照射する制御が可能となった。
【0067】
上記実施形態によれば、光路を直交する2つの光路P1およびP2に分離し、再び合波することによって、共通の光スキャナであるガルバノスキャナ12を用いて、水平シート201および垂直シート202の両方を生成することができる。したがって、水平シート201と垂直シート202を生成するために複数の光スキャナを設ける必要がなくなり、必要な光スキャナの数を減らすことができる。
【0068】
上記実施形態において、光路P1および光路P2には、特定波長のレーザのみを通す任意の光学フィルタを設置してもよい。光学フィルタを設置する場合は、外部入力によって制御可能なフィルタホイールにマウントし、光路上にフィルタを挿入するかしないかを任意のタイミングで切り替えられるようにすることが好ましい。このような光学フィルタを設けることにより、2つの異なる波長を持つレーザ光を同時に本装置に入射させておき、光路P1と光路P2を通過するレーザ波長が互いに異なるようにフィルタを設置することで、水平シート201と垂直シート202を異なる波長として同時に試料101に照明するといった使い方が考えられる。これにより、光路P1と光路P2を波長で分離することができるので、水平シート201および垂直シート202の両方を時間遅れなく同時に取得することが可能となる。
【0069】
上記実施形態において、光路P1と光路P2との分離および合波にビームスプリッタ21およびビームスプリッタ22を使用した。しかしながら、ビームスプリッタ21およびビームスプリッタ22の代わりにハーフミラーを使用してもよい。
【0070】
上記実施形態において、ビームスプリッタ21およびビームスプリッタ22として無偏光型のビームスプリッタを用いたが、偏光ビームスプリッタを用いてもよい。偏光ビームスプリッタを用いることにより、レーザ光源114のエネルギー損失を最小化することができる。この場合、光路P2を通過し、ビームスプリッタ22で反射されるレーザーエネルギーが最大になるように、光路P2上に半波長板を設置しその回転角を調整する。
【0071】
上記実施形態において、
図3に示すように、水平シート201および垂直シート202を、試料101の-Y方向側から照射した。しかしながら、水平シート201および垂直シート202を互いに反対の方向から試料101に対して照射してもよい。
図14は、水平シート201を試料101の-Y方向側から照射し、垂直シート202を試料101の+Y方向側から照射する場合の、光シート顕微鏡1aの概略的な構成を示す図である。このように、試料101の両側から照射することによって、影のない画像を取得することができる。なお、
図14においては試料101の奥側(
図3における+X方向側)にある撮像部112を省略している。
【0072】
図1の実施形態において、水平シート201で試料101を観察した像を撮像部111で撮像し、垂直シート202で試料101を観察した像を撮像部112で撮像している。これに代えて、水平シート201で試料101を観察した像の光路と、垂直シート202で試料101を観察した像の光路とをミラー、ビームコンバイナ等で結合し、1つの撮像部で、例えば時分割等により、それぞれを撮像してもよい。
【0073】
上記実施形態において、
図6から
図10の形態は独立した制御方法として使用可能である。すなわち、
図2,3の形態の場合には必ずしも
図6から
図10の形態にしなくてよいし、逆に
図6から
図10の形態の場合には必ずしも
図2,3の形態にしなくてもよい。
【0074】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0075】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0076】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0077】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0078】
図15は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0079】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0080】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0081】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0082】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0083】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0084】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0085】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0086】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0087】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0088】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0089】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0090】
1 光シート顕微鏡、11~13 ガルバノスキャナ、21~22 ビームスプリッタ、31~36 ミラー、41~48 レンズ、51~52 シャッタ、100 光シート照射装置、101 試料、111,112 撮像部、113 制御部、114 レーザ光源、201 水平シート、211 部分シート、202 垂直シート、203 設置面、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インタフェース、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード