(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112063
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】モールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/72 20060101AFI20220726BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B29C33/72
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007692
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】新福 信幸
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202AM10
4F202AM18
4F202CA21
4F202CB01
4F202CS02
4F202CU01
4F202CU20
(57)【要約】
【課題】高品質なタイヤTの製造に貢献できる、モールド2の運搬台車22の提供。
【解決手段】このモールド2の運搬台車22は、タイヤT用モールド2の一部をなすセグメント10を運搬する、運搬台車22である。この運搬台車22は、前記セグメント10が載せられる載置台24と、前記載置台24を支持する台車26とを備える。前記載置台24は、前記セグメント10を横にした状態で前記セグメント10が置かれる横置き部32と、前記セグメント10を斜めにした状態で前記セグメント10が置かれる斜め置き部34とを備える。前記斜め置き部34は前記横置き部32の外側に位置する。前記台車26は少なくとも3つのキャスター30を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを運搬する、運搬台車であって、
前記セグメントが載せられる載置台と、
前記載置台を支持する台車と
を備え、
前記載置台が、前記セグメントを横にした状態で前記セグメントが置かれる横置き部と、前記セグメントを斜めにした状態で前記セグメントが置かれる斜め置き部とを備え、
前記斜め置き部が前記横置き部の外側に位置し、
前記台車が少なくとも3つのキャスターを備える、
モールドの運搬台車。
【請求項2】
前記横置き部が、同心円状に配置された2本のリングで構成され、
内側に位置するリングと、外側に位置するリングとが水平に並ぶ、
請求項1に記載のモールドの運搬台車。
【請求項3】
前記斜め置き部が、同心円状に配置された2本のリングで構成され、
外側に位置するリングが内側に位置するリングよりも下側に位置する、
請求項2に記載のモールドの運搬台車。
【請求項4】
前記横置き部の外側に位置するリングが、前記斜め置き部の内側に位置するリングを兼ねる、
請求項3に記載のモールドの運搬台車。
【請求項5】
前記横置き部を構成するリングと、前記斜め置き部を構成するリングとがゴム製のリングからなる、
請求項4に記載のモールドの運搬台車。
【請求項6】
タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを横にした状態で置くことができる運搬台車を用いて、ブラスト処理によって前記セグメントを洗浄する方法であって、
前記セグメントの成形面を表にして、前記セグメントを前記運搬台車にセットする工程と、
前記運搬台車を動かすことで前記セグメントを水平移動させながら、前記運搬台車の上方から前記成形面に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程と
を含む、
モールドの洗浄方法。
【請求項7】
タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを斜めにした状態で置くことができる運搬台車を用いて、ブラスト処理によって前記セグメントを洗浄する方法であって、
前記セグメントの成形面を表にして、前記セグメントを前記運搬台車にセットする工程と、
前記運搬台車を動かすことで前記セグメントを水平移動させながら、前記運搬台車の上方又は側方から前記成形面に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程と
を含む、
モールドの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法に関する。詳細には、本発明は、タイヤの製造に用いられるモールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図7には、タイヤの製造に用いられる一般的なモールド2の一例が示される。モールド2は、トレッドリング4、一対のサイドプレート6及び一対のビードリング8を備える。トレッドリング4は、複数のセグメント10で構成され、タイヤTのトレッド面を形づける。それぞれのサイドプレート6は、タイヤTの側面を形づける。それぞれのビードリング8は、タイヤTのビードの部分を形づける。このモールド2は割モールドである。
【0003】
タイヤTの製造では、未加硫状態のタイヤT、すなわち、未加硫タイヤTがモールド2内に投入される。未加硫タイヤTrをモールド2内で加圧及び加熱することで、タイヤTが得られる。一のモールド2で多数のタイヤTが製造されるので、モールド2のキャビティ面12は汚れる。汚れはタイヤTの外観品質に影響するので、モールド2は洗浄される。効率よく十分な洗浄を行うために、モールド2の洗浄方法について様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【0004】
モールド2は、通常、ブラスト処理によって洗浄される。ブラスト処理では、例えば、セグメント10の成形面14に向けて投射材が吹き付けられる。これにより、成形面14が磨かれ、成形面14に付着した汚れが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラスト処理では、投射材を噴射するノズルを、セグメント10に対して動かしながら、投射材が成形面14に吹き付けられる。従来の洗浄方法では、セグメント10は台に固定されるので、セグメント10を動かすことなくノズルのみが動かされる。ノズルの振りが大きくなるため、成形面14に磨き斑が生じることが懸念される。磨き斑の発生は、高品質なタイヤTの製造に影響する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、高品質なタイヤの製造に貢献できる、モールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るモールドの運搬台車は、タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを運搬する、運搬台車である。この運搬台車は、前記セグメントが載せられる載置台と、前記載置台を支持する台車とを備える。前記載置台は、前記セグメントを横にした状態で前記セグメントが置かれる横置き部と、前記セグメントを斜めにした状態で前記セグメントが置かれる斜め置き部とを備える。前記斜め置き部は前記横置き部の外側に位置する。前記台車は少なくとも3つのキャスターを備える。
【0009】
好ましくは、このモールドの運搬台車では、前記横置き部は、同心円状に配置された2本のリングで構成される。内側に位置するリングと、外側に位置するリングとは、水平に並ぶ。
【0010】
好ましくは、このモールドの運搬台車では、前記斜め置き部は、同心円状に配置された2本のリングで構成される。外側に位置するリングは、内側に位置するリングよりも下側に位置する。
【0011】
好ましくは、このモールドの運搬台車では、前記横置き部の外側に位置するリングは、前記斜め置き部の内側に位置するリングを兼ねる。
【0012】
好ましくは、このモールドの運搬台車では、前記横置き部を構成するリングと、前記斜め置き部を構成するリングとはゴム製のリングからなる。
【0013】
本発明の一態様に係るモールドの洗浄方法は、タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを横にした状態で置くことができる運搬台車を用いて、ブラスト処理によって前記セグメントを洗浄する方法である。この洗浄方法は、前記セグメントの成形面を表にして、前記セグメントを前記運搬台車にセットする工程、及び、前記運搬台車を動かすことで前記セグメントを水平移動させながら、前記運搬台車の上方から前記成形面に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程を含む。
【0014】
本発明の他の態様に係るモールドの洗浄方法は、タイヤ用モールドの一部をなすセグメントを斜めにした状態で置くことができる運搬台車を用いて、ブラスト処理によって前記セグメントを洗浄する方法である。この洗浄方法は、セグメントの成形面を表にして前記セグメントを前記運搬台車にセットする工程、及び、前記運搬台車を動かすことで前記セグメントを水平移動させながら、前記運搬台車の上方又は側方から前記成形面に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高品質なタイヤの製造に貢献できる、モールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るモールドの運搬台車の斜視図である。
【
図5】
図5は、ブラスト処理によるモールドの洗浄を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、モールドの洗浄を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、一般的なタイヤ用モールドの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る、モールド2の運搬台車22の一例が示される。このモールド2の運搬台車22(以下、運搬台車22)には、例えば、
図7に示されたタイヤT用モールド2が載せられる。
図1に示された運搬台車22には、モールド2の一部をなすセグメント10が載せられている。この運搬台車22はセグメント10を運搬する。詳述しないが、この運搬台車22は、サイドプレート6や、ビードリング8を載せて、これらを運搬することもできる。
【0019】
運搬台車22は、載置台24と、台車26とを備える。載置台24には、セグメント10が載せられる。台車26は、セグメント10が載せられた載置台24を支持する。
【0020】
台車26は、箱枠28と、キャスター30とを備える。箱枠28は、複数本の棒材を組み合わせて構成される。この運搬台車22では、箱枠28の上部に載置台24が固定される。箱枠28の下部に、キャスター30が取り付けられる。箱枠28の下部は矩形状であり、その4隅それぞれに、キャスター30が取り付けられる。この台車26は4つのキャスター30を備える。箱枠28及び載置台24が安定に支持されるのであれば、台車26に設けられるキャスター30の数は3つでもよい。台車26に設けられるキャスター30の数は、5つ以上であってもよい。この台車26は、少なくとも3つのキャスター30を備える。
【0021】
キャスター30は、自在に向きを変えることができる車輪である。この運搬台車22では、市販のキャスターが、キャスター30として好適に用いられる。
【0022】
載置台24は、横置き部32と、斜め置き部34とを備える。横置き部32には、セグメント10を横にした状態でこのセグメント10が置かれる。
図1に示されるように、セグメント10の背面を横置き部32側にして、セグメント10はこの横置き部32に置かれる。この運搬台車22では、セグメント10の成形面14(つまり、トレッド面を形づける部分)を表にして、セグメント10は横置き部32にセットされる。
【0023】
斜め置き部34には、セグメント10を斜めにした状態でこのセグメント10が置かれる。
図1に示されるように、セグメント10の背面を斜め置き部34側にして、セグメント10は斜め置き部34に置かれる。この運搬台車22では、セグメント10の成形面14を表にして、セグメント10は斜め置き部34にセットされる。
【0024】
図2には、運搬台車22、詳細には載置台24を、運搬台車22の上方から見た様子が示される。
図3には、この
図2のC-C線に沿った断面が示される。
図4には、この
図2のD-D線に沿った断面が示される。
【0025】
図2に示されるように、横置き部32は同心円状に配置された2本のリング36で構成される。横置き部32は円形である。
図3に示されるように、内側に位置するリング36(以下、内側リング36uy)と、外側に位置するリング36(以下、外側リング36sy)とは、水平に並ぶ。この運搬台車22では、横置き部32が3本以上のリング36で構成されてもよい。
【0026】
図3において、符号PUyで示される位置は内側リング36uyの上端である。符号PSyで示される位置は外側リング36syの上端である。この運搬台車22では、上下方向(又は、高さ方向)において、内側リング36uyの上端PUyの位置は、外側リング36syの上端PSyの位置と一致する。言い換えれば、内側リング36uyの上端PUyと外側リング36syの上端PSyとを含む面は水平に拡がる。
【0027】
前述したように、横置き部32にはセグメント10が置かれる。モールド2のトレッドリング4を構成するセグメント10の数は、通常、5以上20以下である。この運搬台車22は、モールド2に含まれる全てのセグメント10を横置き部32に置くことができるように構成される。言い換えれば、この運搬台車22では、モールド2に含まれる全セグメント10が横置き部32に置かれる。内側リング36uyと外側リング36syとの間の間隔は、セグメント10の大きさを考慮して適宜決められる。
【0028】
この運搬台車22では、斜め置き部34は横置き部32の外側に位置する。
図2に示されるように、斜め置き部34は同心円状に配置された2本のリング36で構成される。斜め置き部34は円形である。
図4に示されるように、外側に位置するリング36(以下、外側リング36sn)は、内側に位置するリング36(以下、内側リング36un)よりも下側に位置する。この運搬台車22では、斜め置き部34が3本以上のリング36で構成されてもよい。この場合、外側に位置するリング36が内側に位置するリング36よりも下側に位置するように、これらリング36は配置される。
【0029】
図4において、符号PUnで示される位置は内側リング36unの上端である。符号PSnで示される位置は外側リング36snの上端である。この運搬台車22では、上下方向において、外側リング36snの上端PSnは、内側リング36unの上端PUnの位置よりも下方に位置する。内側リング36unの上端PUnと外側リング36snの上端PSnとを結ぶ線分は、水平方向に対して傾斜する。
【0030】
前述したように、斜め置き部34にはセグメント10が置かれる。斜め置き部34は横置き部32の外側に位置する。言い換えれば、斜め置き部34は横置き部32をその外側から囲う。この運搬台車22では、この斜め置き部34にもモールド2に含まれる全セグメント10が置かれる。
【0031】
この運搬台車22では、載置台24は、土台プレート38と、この土台プレート38から上方に延びる複数枚の支柱プレート40とを備える。
図2に示されるように、土台プレート38はディスク状である。複数の支柱プレート40は、土台プレート38の径方向外側部分に周方向に間隔をあけて配置される。
図2において、符号PCで示される位置は土台プレート38の中心である。
図2のC-C線及びD-D線は、この土台プレート38の中心PCを通る。この土台プレート38の直径は、C-C線又はD-D線に沿って計測される。
【0032】
複数の支柱プレート40は、横置き部32及び斜め置き部34を支持する。この運搬台車22では、横置き部32の外側リング36syが斜め置き部34の内側リング36unを兼ねる。横置き部32及び斜め置き部34は、3本のリング36で構成される。それぞれの支柱プレート40には、3本のリング36を支持するために3つの支持部42が設けられる。それぞれの支持部42は凹みを有し、この凹みにリング36が嵌め合わされる。
【0033】
支柱プレート40に設けられる3つの支持部42のうち、内側に位置する支持部42は内側支持部42uである。外側に位置する支持部42は、外側支持部42sである。内側支持部42uと外側支持部42sとの間の支持部42は、中間支持部42mである。この運搬台車22では、土台プレート38の径方向内側に位置する、横置き部32の内側リング36uyは、内側支持部42uの凹みに嵌め合わされる。土台プレート38の径方向外側に位置する、斜め置き部34の外側リング36snは、外側支持部42sの凹みに嵌め合わされる。横置き部32の内側リング36uyと、斜め置き部34の外側リング36snとの間に位置し、斜め置き部34の内側リング36unを兼ねる横置き部32の外側リング36syは、中間支持部42mの凹みに嵌め合わされる。
【0034】
前述したように、斜め置き部34は横置き部32の外側に位置する。この運搬台車22は、横置き部32の内側に、セグメント10を立てた状態でこのセグメント10を置くことができる縦置き部44を載置台24に設けることができる。この運搬台車22の載置台24は、前述の横置き部32及び斜め置き部34に加えて、縦置き部44を備えることができる。
図3に示されるように、縦置き部44においては、セグメント10は土台プレート38に載せられる。横置き部32の内側リング36uyがセグメント10の背面にあてがわれる。
【0035】
図2において、縦置き部44に置かれたセグメント10の内側に位置する、ドーナツ盤状のプレートは、モールド2の一部をなすサイドプレート6である。この運搬台車22の載置台24は、縦置き部44の内側に、サイドプレート6を置くためのプレート置き部46をさらに設けることができる。
【0036】
以上説明した運搬台車22は、モールド2の洗浄に用いられる。前述したように、運搬台車22の横置き部32には、セグメント10を横にした状態でセグメント10が置かれる。まず、セグメント10を横にした状態で置くことができる運搬台車22を用いて、セグメント10を洗浄する方法について説明する。
【0037】
この洗浄方法では、ブラスト処理によってセグメント10の成形面14が洗浄される。この洗浄方法は、セグメント10を横にした状態で置くことができる運搬台車22を用いて、ブラスト処理によってセグメント10を洗浄する方法である。
【0038】
図示されないが、ブラスト処理を行うための装置として市販の一般的な装置が用いられる。この装置は、投射材を噴射するためのノズルを備える。この装置では、圧縮空気を利用して投射材がノズルからセグメント10の成形面14に向けて吹き付けられる。圧縮空気の圧力は、好ましくは、2.5kg/cm2以上6.0kg/cm2以下である。投射材には、硝子又は合成樹脂からなる粒子が用いられる。粉砕された卵の殻が、投射材として用いられてもよい。投射材の平均粒子径は、好ましくは、50μm以上600μm以下である。この平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布計を用いて計測される粒子の体積分布から計算される、粒子径分布の中心値(メジアン径)を用いて表される。
【0039】
この洗浄方法では、セグメント10の成形面14を表にしてこのセグメント10が運搬台車22の横置き部32にセットされる。これにより、成形面14を上向きにした状態で、セグメント10が運搬台車22にセットされる。この洗浄方法は、セグメント10の成形面14を表にして、このセグメント10を運搬台車22にセットする工程を含む。
【0040】
セグメント10を運搬台車22にセットすると、
図5に示されるように、投射材を噴射するノズル48が、運搬台車22にセットされたセグメント10の上方に配置される。ブラスト処理のための装置が駆動され、ノズル48からセグメント10の成形面14に向けて投射材が噴射される。
【0041】
前述したように、運搬台車22の下部にはキャスター30が取り付けられている。運搬台車22を動かすことで、作業者はセグメント10を容易に水平移動させることができる。この洗浄方法では、運搬台車22を動かすことでセグメント10を水平移動させながら、運搬台車22の上方から成形面14に向けて投射材が噴射される。この洗浄方法は、運搬台車22を動かすことでセグメント10を水平移動させながら、運搬台車22の上方から成形面14に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程を含む。
【0042】
この洗浄方法は、セグメント10の向きを保持したまま、セグメント10を前後左右に自在に動かすことができるので、従来の洗浄方法に比べてノズル48の振りを小さくできる。この洗浄方法は、投射材の成形面14への衝突状態を維持しながら、成形面14全体に満遍なく投射材を吹き付けることができる。この洗浄方法では、投射材の吹き付け状態に偏りが生じにくいので、成形面14に磨き斑は生じにくい。この洗浄方法では、成形面14に付着した汚れが十分に除去される。この運搬台車22を用いたモールド2の洗浄方法は、高品質なタイヤTの製造に貢献できる。
【0043】
前述したように、運搬台車22の斜め置き部34には、セグメント10を斜めにした状態でセグメント10が置かれる。次に、セグメント10を斜めにした状態で置くことができる運搬台車22を用いて、ブラスト処理によってセグメント10を洗浄する方法について説明する。
【0044】
この洗浄方法は、セグメント10の成形面14を表にしてセグメント10を前記運搬台車22にセットする工程を含む。この洗浄方法では、セグメント10の成形面14を表にしてこのセグメント10が運搬台車22の斜め置き部34にセットされる。これにより、成形面14を傾けた状態で、セグメント10が運搬台車22にセットされる。成形面14が水平方向に対して傾いているので、運搬台車22の上方にノズル48を配置することで、運搬台車22の上方から成形面14に向けて投射材を噴射することが可能である。運搬台車22の側方にノズル48を配置することで、運搬台車22の側方から成形面14に向けて投射材を噴射することも可能である。
【0045】
図示されないが、セグメント10を運搬台車22にセットすると、運搬台車22にセットされたセグメント10の上方又は側方にノズル48が配置される。ブラスト処理のための装置が駆動され、ノズル48からセグメント10の成形面14に向けて投射材が噴射される。この洗浄方法では、運搬台車22を動かすことでセグメント10を水平移動させながら、運搬台車22の上方又は側方から成形面14に向けて投射材が噴射される。この洗浄方法は、運搬台車22を動かすことでセグメント10を水平移動させながら、運搬台車22の上方又は側方から成形面14に向けて洗浄用の投射材を噴射する工程を含む。
【0046】
この洗浄方法においても、前述の洗浄方法と同様、セグメント10の向きを保持したまま、セグメント10を前後左右に自在に動かすことができるので、従来の洗浄方法に比べてノズル48の振りを小さくできる。この洗浄方法は、投射材の成形面14への衝突状態を維持しながら、成形面14全体に満遍なく投射材を吹き付けることができる。この洗浄方法では、投射材の吹き付け状態に偏りが生じにくいので、成形面14に磨き斑は生じにくい。この洗浄方法では、成形面14に付着した汚れが十分に除去される。この洗浄方法では、さらに、投射材は成形面14に対して斜めに衝突する。成形面14に刻まれた窪みの隅に付着した汚れも効果的に除去される。この運搬台車22を用いたモールド2の洗浄方法は、高品質なタイヤTの製造に貢献できる。
【0047】
ところで、モールド2と未加硫タイヤTrとの間に存在するエアの排出のために、例えば、ベントホールがモールド2に設けられる。このベントホールには、未加硫タイヤTrのゴム組成物が流入する。
【0048】
この洗浄方法では、
図6に示されるように、流入したゴム組成物によってベントホール50が詰まることがないよう、ベントホール50に流入したゴム組成物は、
図6に示されるように、ベントホール50に錐52を通すことで除去される。
【0049】
ベントホール50に錐52を通す場合、ベントホール50の向きに応じて錐52の向きが調整される。前述したように、従来の洗浄方法では、セグメント10は台に固定される。セグメント10を固定した状態でベントホール50の向きに錐52の向きを一致させるのは容易でない。錐52の向き調整において錐52に特異な力が作用すると、錐52が折れることが懸念される。錐52が折れると、錐52の交換が必要である。
【0050】
この洗浄方法では、セグメント10は斜め置き部34に置かれるだけで、セグメント10はこの斜め置き部34に固定されない、この洗浄方法では、斜め置き部34にセットするセグメント10の向きの調整が可能である。この洗浄方法では、ベントホール50の向きに対する錐52の向き調整が容易である。作業中に錐52が折れることが防止されるので、この洗浄方法は、錐52の交換頻度を低減できる。この洗浄方法は、高品質なタイヤTの製造だけでなく、タイヤTの生産性の向上にも貢献できる。
【0051】
前述したように、運搬台車22の横置き部32及び斜め置き部34はリング36で構成される。この運搬台車22では、横置き部32を構成するリング36と、斜め置き部34を構成するリング36とは、ゴム製のリングからなるのが好ましい。これにより、セグメント10のリング36に対する滑りが抑制される。セグメント10が横置き部32や斜め置き部34に安定的に保持されるので、運搬台車22を動かしたことによる、セグメント10の位置ずれが防止される。この運搬台車22を用いた洗浄方法は、投射材の成形面14への衝突状態を維持しながら、成形面14全体に満遍なく投射材を吹き付けることができる。この洗浄方法では、投射材の吹き付け状態に偏りが生じにくいので、成形面14に磨き斑は生じにくい。この洗浄方法は、高品質なタイヤTの製造に貢献できる。また、セグメント10のリング36に対する滑りが抑制されるので、斜め置き部34にセットするセグメント10の向き調整が容易である。この洗浄方法は、タイヤTの生産性の向上にも貢献する。
【0052】
ゴム製のリングとしては、例えば、ゴムでコーティングした中実の棒材からなるリング及びゴムホースからなるリングが挙げられる。セグメント10の安定保持の観点から、ゴム製のリングとしては、柔軟性を有するゴムホースからなるリングが好ましい。
【0053】
図3において、両矢印Dはリング36の外径である。リング36がゴムホースからなる場合、セグメント10の安定保持の観点から、このリング36の外径Dは、10mm以上30mm以下が好ましい。
【0054】
この運搬台車22では、載置台24の土台プレート38から上方に延びる支柱プレート40に、横置き部32のリング36は支持される。そして、載置台24の縦置き部44に置かれるセグメント10は、この土台プレート38に載せられる。この運搬台車22では、土台プレート38の上面は、リング36の高さ位置を規定する基準位置である。
【0055】
図3において、両矢印HRで示される長さは、基準位置から横置き部32の内側リング36uyの上端PUyまでの高さである。両矢印WMで示される長さは、載置台24に置かれるセグメント10の幅である。
【0056】
この運搬台車22では、基準位置から横置き部32の内側リング36uyの上端PUyまでの高さHRの、セグメント10の幅WMに対する比(HR/WM)は、0.25以上0.50以下が好ましい。
【0057】
比(HR/WM)が0.20以上に設定されることにより、横置き部32の内側リング36uyが、縦置き部44に置かれたセグメント10の安定保持に貢献できる。この観点から、この比(HR/HM)は0.25以上がより好ましく、0.30以上がさらに好ましい。
【0058】
比(HR/WM)が0.50以下に設定されることにより、横置き部32に置かれたセグメント10を斜め置き部34に、作業者は容易に移動できる。斜め置き部34に置かれたセグメント10を横置き部32に、作業者は容易に移動できる。セグメント10の移動作業が容易であるとの観点から、この比(HR/WM)は0.45以下がより好ましく、0.40以下がさらに好ましい。
【0059】
図4において、実線LTは、斜め置き部34の内側リング36unの上端PUnと外側リング36snの上端PSnとを通る直線である。符号θで示される角度は、この直線LTが水平方向に対してなす角度である。この運搬台車22では、この角度θは、斜め置き部34の載置面の傾斜角度とも称される。
【0060】
この運搬台車22では、斜め置き部34に置いたセグメント10の洗浄が十分にかつ効率よく斜め置き部34の載置面の傾斜角度θは20°以上40°以下が好ましい。この傾斜角度θは、25°以上がより好ましく、35°以下がより好ましい。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、高品質なタイヤTの製造に貢献できる、モールド2の運搬台車22及びモールド2の洗浄方法が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明された、モールドの運搬台車及びモールドの洗浄方法は、様々なモールドの洗浄に適用されうる。
【符号の説明】
【0063】
2・・・モールド
4・・・トレッドリング
10・・・セグメント
12・・・キャビティ面
14・・・セグメント10の成形面
22・・・運搬台車
24・・・載置台
26・・・台車
30・・・キャスター
32・・・横置き部
34・・・斜め置き部
36、36uy、36sy、36un、36sn・・・リング
48・・・ノズル
50・・・ベントホール
52・・・錐