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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112066
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】センサの設置作業用の補助治具
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20220726BHJP
   G01D 11/30 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
G01D11/30 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007697
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公孝
(57)【要約】
【課題】作業者のスキルによらず、車両の所定の設置位置にセンサをより短時間で設置することを可能にする。
【解決手段】補助治具1は、床G上に配置された車両Cの基準位置Xから、床Gに対して平行な方向へ第1距離P1離れ、かつ、床Gに対して垂直な方向に当該床Gから第2距離P2離れた、車両Cの設置位置ZにセンサSを設置する作業用の補助治具である。補助治具1は、床Gに対して自立可能なフレーム10と、車両Cの基準位置Xに合わせられる基準ピン14と、基準ピン14から第1距離P1離れた位置に設置されているマーカー部材16と、車両Cに設置されたセンサSの床Gからの距離を測定する測定具18と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に配置された車両の基準位置から、前記床に対して平行な方向へ第1距離離れ、かつ、前記床に対して垂直な方向に当該床から第2距離離れた、前記車両の設置位置にセンサを設置する作業用の補助治具であって、
前記床に対して自立可能なフレームと、
前記車両の前記基準位置に合わせられる基準ピンと、
前記基準ピンから前記第1距離離れた位置に設置されているマーカー部材と、
前記車両に設置された前記センサの前記床からの距離を測定する測定具と、
を備える、センサの設置作業用の補助治具。
【請求項2】
前記フレームが、
それぞれ前記床に対して自立可能な第1フレーム及び第2フレームと、
前記第1フレームと前記第2フレームとの間を架け渡す第3フレームと、
を備え、
前記第1フレーム及び第2フレームそれぞれが、前記床に対して接地する脚部と、前記脚部から前記床に対して垂直となる方向に延びる柱部と、を有し、
前記第3フレームが、前記柱部に対して垂直な方向に延びる桁部を有し、
前記桁部の第1端部が前記第1フレームに支持されるとともに、当該桁部の第2端部が前記第2フレームに支持され、
前記第3フレームが、
前記第1フレーム及び前記第2フレームに対して着脱可能である、請求項1に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項3】
前記フレームが、
前記床に垂直な方向からみて、前記桁部を境界として対称な形状を有している、請求項2に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項4】
前記第1フレームが、前記第3フレームの前記第2端部を支持可能に構成され、かつ、前記第2フレームが、前記第3フレームの前記第1端部を支持可能に構成されている、請求項2又は請求項3に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項5】
前記第1フレーム及び前記第2フレームが、前記柱部の長さを調整するジャッキ部をそれぞれにおいて有している、請求項2から請求項4の何れか一項に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項6】
前記基準位置に前記フレームを位置決めする位置決め装置をさらに備える、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項7】
前記第1フレームと、前記第2フレームと、前記第3フレームとが、それぞれにおいて、水準器を有する、請求項2から請求項6の何れか一項に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【請求項8】
前記第1フレームと、前記第2フレームと、前記第3フレームとが、それぞれにおいて、取手を有する、請求項2から請求項7の何れか一項に記載のセンサの設置作業用の補助治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの設置作業用の補助治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両やタイヤの性能を確認する試験において、種々のセンサを備えた測定装置が用いられている。前記センサとしては、例えば、車両の前後方向及び左右方向の移動距離や速度、及びスリップ角度等を測定できるものが用いられている。タイヤの性能を確認するための測定装置としては、例えば、下記の特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-329301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記センサは、車両における所定の設置位置に設置して使用する場合が多い。車両に対して前記センサを設置する作業では、従来定規やメジャー等の一般的な測定具を用いて、作業者が基準位置から設置位置までの距離を測定する。このような距離の測定は、車両の前後方向、左右方向、及び上下方向を正確に把握しながら行う必要があるため、熟練していない作業者では、正確な距離の測定に時間を要する場合がある。このため、前記センサを設置する作業では、熟練者とそうでない者との間で、所要時間に大きな差が生じている。
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、作業者のスキルによらず、車両における所定の設置位置に、センサをより短時間で設置することを可能にするセンサの設置作業用の補助治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るセンサの設置作業用の補助治具は、床上に配置された車両の基準位置から、前記床に対して平行な方向へ第1距離離れ、かつ、前記床に対して垂直な方向に当該床から第2距離離れた、前記車両の設置位置にセンサを設置する作業用の補助治具であって、前記床に対して自立可能なフレームと、前記車両の前記基準位置に合わせられる基準ピンと、前記基準ピンから前記第1距離離れた位置に設置されているマーカー部材と、前記車両に設置された前記センサの前記床からの距離を測定する測定具と、を備える。
【0007】
好ましくは、この補助治具は、前記フレームが、それぞれ前記床に対して自立可能な第1フレーム及び第2フレームと、前記第1フレームと前記第2フレームとの間を架け渡す第3フレームと、を備え、前記第1フレーム及び第2フレームそれぞれが、前記床に対して接地する脚部と、前記脚部から前記床に対して垂直となる方向に延びる柱部と、を有し、前記第3フレームが、前記柱部に対して垂直な方向に延びる桁部を有し、前記桁部の第1端部が前記第1フレームに支持されるとともに、当該桁部の第2端部が前記第2フレームに支持され、前記第3フレームが、前記第1フレーム及び前記第2フレームに対して着脱可能である。
【0008】
好ましくは、この補助治具は、前記フレームが、前記床に垂直な方向からみて、前記桁部を境界として対称な形状を有している。
【0009】
好ましくは、この補助治具は、前記第1フレームが、前記第3フレームの前記第2端部を支持可能に構成され、かつ、前記第2フレームが、前記第3フレームの前記第1端部を支持可能に構成されている。
【0010】
好ましくは、この補助治具は、前記第1フレーム及び前記第2フレームが、前記柱部の長さを調整するジャッキ部をそれぞれにおいて有している。
【0011】
好ましくは、この補助治具は、前記基準位置に前記フレームを位置決めする位置決め装置をさらに備える。
【0012】
好ましくは、この補助治具は、前記第1フレームと、前記第2フレームと、前記第3フレームとが、それぞれにおいて、水準器を有する。
【0013】
好ましくは、この補助治具は、前記第1フレームと、前記第2フレームと、前記第3フレームとが、それぞれにおいて、取手を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセンサの設置作業用の補助治具によれば、作業者のスキルによらず、車両における所定の設置位置に、センサをより短時間で取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る補助治具の車両に対する配置状態を示した斜視模式図。
図2】本発明の一実施形態に係る補助治具を示した右側面模式図。
図3】本発明の一実施形態に係る補助治具を示した平面模式図。
図4】本発明の一実施形態に係る補助治具を示した前面模式図。
図5A】センサの設置対象である車両を示す右側面図。
図5B】センサの設置対象である車両を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[補助治具の全体構成]
図1は、車両Cの右側に配置された補助治具1を示している。図1に示す補助治具1は、本開示のセンサの設置作業用の補助治具の一実施形態であり、フレーム10を備えている。図1に示すように、補助治具1は、センサSの設置対象である車両Cの側方に配置して使用する。
【0017】
[車両及びセンサの概要]
図5A及び図5Bには、センサSの設置対象である車両Cの概要を示している。本実施形態の補助治具1は、図5A及び図5Bに示す車両CにセンサSを設置する作業を行う際に、作業者の作業を補助する治具である。本説明では、車両Cに対して「前後方向」「左右方向」「上下方向」を規定しており、この各方向に基づいて以下の説明を行っている。本説明では、平坦な床G上に設置された車両Cの前進方向及び後進方向を基準として「前後方向」を規定している。「前後方向」は、床Gに対して平行な方向である。本説明では、「前後方向」に直交しかつ床Gに平行な方向として「左右方向」を規定している。本説明では、「前後方向」に直交しかつ床Gに垂直な方向として「上下方向」を規定している。
【0018】
車両Cは、平坦な床G上に配置された自動車であり、車体の前後左右に配置された4個のリムW及びタイヤTを有している。センサSは、車両Cの右側面C1及び左側面C2における所定の設置位置Zに設置(固定)して用いられる。センサSは、車両Cの前面及び後面に設置して用いてもよい。センサSは、走行する車両Cの前後方向及び左右方向の移動距離や速度を直接測定すると同時に、タイヤTのスリップ角度を測定することが可能なセンサである。なお、補助治具1の適用対象となるセンサSの用途及び機能は、本記載の用途及び機能に限定されない。
【0019】
車両Cにおける設置位置Zは、後輪側のリムWの軸心位置を基準位置Xとして、基準位置Xから前方に第1距離P1離間した位置で、かつ、床Gから第2距離P2離間した位置である。具体的には、本実施形態で使用するセンサSは、第1距離P1を1000mmとし、第2距離P2を350mmとした設置位置Zに設置される。なお、本実施形態では、基準位置Xが後輪側のリムWの軸心位置である場合を例示して説明するが、基準位置Xは前輪側のリムWの軸心位置であってもよく、リムWの軸心位置以外を基準位置Xとしてもよい。基準位置Xは、車両Cの前面及び後面における所定位置としてもよい。第1距離P1及び第2距離P2の具体的な距離は、使用するセンサSの仕様に応じて決まるものであり、補助治具1の構成は本記載の各距離によって限定されない。
【0020】
図5A図5Bに示すように、センサSには基準点Yが設定されている。基準点Yは、車両Cに設置されたセンサSを左右方向から見た場合に、前後方向についてのセンサSの光軸の位置と、上下方向についての当該センサSの下端の位置とが交わる点である。センサSは、左右方向から見た場合に、基準点Yと車両Cにおける所定の設置位置Zとが一致するように配置される。本実施形態の補助治具1は、作業者が、車両Cの設置位置ZにセンサSを設置する作業を行う際に使用することができる。
【0021】
[フレームの詳細構成]
図2は、右側方から見た補助治具1を示している。図3は、上方から見た補助治具1を示している。図4は、前方から見た補助治具1を示している。図1図4に示すように、フレーム10は、床Gに対して自立することができる三方枠状の部材であり、第1フレーム11と、第2フレーム12と、第3フレーム13と、を有している。第1フレーム11及び第2フレーム12は、床Gに対して垂直な方向に延びており、第3フレーム13は、第1フレーム11及び第2フレーム12の各最上部の間に掛け渡されて、床Gに対して平行な方向に延びている。
【0022】
第1フレーム11は、金属製の角鋼で構成されており、脚部11aと柱部11bとを有している。脚部11aは、床Gに対して接地する部位である。柱部11bは、脚部11aによって支持されており、脚部11aが床Gに接地している状態で、床Gに対して垂直となる方向に延びている。言い換えると、第1フレーム11は、床Gに自立している状態で、柱部11bが床Gに対して垂直となる。第1フレーム11は、柱部11bの長さ方向の中途部にジャッキ部11cを有している。ジャッキ部11cは、柱部11bの長さを変更可能とする機構(ジャッキ機構)により構成されている。第1フレーム11は、ジャッキ部11cで柱部11bの長さを変更することによって、当該第1フレーム11の床Gからの高さが変更可能となっている。
【0023】
第2フレーム12は、金属製の角鋼で構成されており、脚部12aと柱部12bとを有している。脚部12aは、床Gに対して接地する部位である。柱部12bは、脚部12aによって支持されており、脚部12aが床Gに接地している状態で、床Gに対して垂直となる方向に延びている。言い換えると、第2フレーム12は、床Gに自立している状態で、柱部12bが床Gに対して垂直となる。第2フレーム12は、柱部12bの長さ方向の中途部にジャッキ部12cを有している。ジャッキ部12cは、柱部12bの長さを変更可能とする機構(ジャッキ機構)により構成されている。第2フレーム12は、ジャッキ部12cで柱部12bの長さを変更することによって、当該第2フレーム12の床Gからの高さが変更可能となっている。
【0024】
第3フレーム13は、桁部13aと接続部13d,13eとを有している。桁部13aは、金属製の角鋼で構成されている。第3フレーム13は、桁部13aの長さ方向の一端部である第1端部13bにおいて、接続部13dを有し、長さ方向の他端部である第2端部13cにおいて、接続部13eを有している。各接続部13d,13eは、桁部13aの長さ方向に対して垂直となる同方向に突出された棒状の部位である。接続部13dと接続部13eとは、互いに平行となっている。
【0025】
接続部13dは、角鋼である柱部11bの内側に挿入可能な形状を有している。第3フレーム13は、接続部13dが柱部11bに挿入されることで、第1フレーム11と接続される。接続部13dは、柱部11bから引き抜くことが可能である。つまり、第3フレーム13は、第1フレーム11に対して着脱可能に構成されている(図2参照)。桁部13aは、接続部13dが柱部11bの内側に挿入されている状態で、柱部11bに対して垂直となる方向に延びている。
【0026】
接続部13eは、角鋼である柱部12bの内側に挿入可能な形状を有している。第3フレーム13は、接続部13eが柱部12bに挿入されることで、第2フレーム12と接続される。接続部13eは、柱部12bから引き抜くことが可能である。つまり、第3フレーム13は、第2フレーム12に対して着脱可能に構成されている(図2参照)。桁部13aは、接続部13eが柱部12bの内側に挿入されている状態で、柱部12bに対して垂直となる方向に延びている。
【0027】
各接続部13d,13eの構成は、本実施形態で例示した構成でなくてもよく、例えば、各接続部13d,13eが各柱部11b、12bに比べて大径であって、接続部13d,13eの内側に各柱部11b、12bが挿入される構成であってもよい。各接続部13d,13eを構成する材料は、丸鋼であってもよい。さらに、本実施形態に示したフレーム10では、第3フレーム13と、第1フレーム11及び第2フレーム12とが、各接続部13d,13eと各柱部11b、12bとの嵌めあいによって接続される場合を例示しているが、本開示の補助治具では、各接続部をボルト及びナット等の締結部材で構成し、当該締結部材で第1~第3の各フレームを接続する構成としてもよい。
【0028】
フレーム10は、第3フレーム13の第1端部13bに設けられた接続部13dに、第1フレーム11の柱部11bを接続するとともに、第3フレーム13の第2端部13cに設けられた接続部13eに、第2フレーム12の柱部12bを接続することで、一体となる。フレーム10では、第3フレーム13に対して第1フレーム11が垂直となる姿勢で接続され、かつ、第3フレーム13に対して第2フレーム12が垂直となる姿勢で接続されている。
【0029】
このように、補助治具1は、フレーム10が、それぞれ床Gに対して自立可能な第1フレーム11及び第2フレーム12と、第1フレーム11と第2フレーム12との間を架け渡す第3フレーム13と、を備えている。第1フレーム11及び第2フレーム12それぞれが、床Gに対して接地する脚部11a,12aと、各脚部11a,11bから床Gに対して垂直となる方向に延びる柱部11b,12bと、を有している。第3フレーム13が、各柱部11b,12bに対して垂直な方向に延びる桁部13aを有している。桁部13aの第1端部13bが第1フレーム11に支持されるとともに、当該桁部13aの第2端部13cが第2フレーム12に支持されている。フレーム10は、第3フレーム13が、第1フレーム11及び第2フレーム12に対して着脱可能である。このように、補助治具1では、フレーム10が3つの部位に分解可能である。補助治具1では、フレーム10が3つの部位に分解可能であることによって、補助治具1の持ち運びに要する作業者の負担を軽減することができる。補助治具1は、フレーム10が3つの部位に分解可能であることによって、当該補助治具1の収納に必要なスペースがより小さくて済む。
【0030】
本実施形態では、フレーム10を、金属製の角鋼を用いて構成した場合を例示しているが、フレーム10を構成する材質及び材料の形状はこれに限定されず、例えば、丸鋼を用いて構成してもよいし、樹脂製としてもよい。
【0031】
第1フレーム11の柱部11bと、第2フレーム12の柱部12bとは、軸方向に直交する断面における形状が共通している。各接続部13d,13eの形状は共通している。このため、フレーム10は、第1フレーム11と第2フレーム12とを入れ替えて、第3フレーム13の第1端部13bに設けられた接続部13dに、第2フレーム12の柱部12bを接続するとともに、第3フレーム13の第2端部13cに設けられた接続部13eに、第1フレーム11の柱部11bを接続することが可能である。
【0032】
第1フレーム11は、当該第1フレーム11を柱部11bの軸心回りに180度回転させた姿勢で、第3フレーム13の各接続部13d,13eと柱部11bとを接続することができるように構成されている。これにより、フレーム10では、後で説明する基準ピン14及び位置決め装置15の向きを180度変更することができる。なお、第2フレーム12も、当該第2フレーム12を柱部12bの軸心回りに180度回転させた姿勢で、第3フレーム13の各接続部13d,13eと柱部12bとを接続することができるように構成している。
【0033】
このように、補助治具1は、第1フレーム11が、第3フレーム13の第2端部13cを支持可能に構成され、かつ、第2フレーム12が、第3フレーム13の第1端部13bを支持可能に構成されている。つまり、補助治具1は、第1フレーム11及び第2フレーム12の第3フレーム13に対する配置を入れ換えて使用することができる。このため、補助治具1は、車両Cにおける基準位置Xが、前輪側、後輪側のどちらのリムWの軸心位置である場合にも使用することができる。
【0034】
[基準ピン]
図1図3に示すように、第1フレーム11には、基準ピン14が設けられている。基準ピン14は、車両Cの基準位置Xに合わせられる部位である。基準ピン14は、柱部11bに対して垂直な向きに突出している。基準ピン14は、補助治具1の使用時において、車両Cの左右方向に延びる姿勢で配置される。基準ピン14の床Gからの高さは、ジャッキ部11cを調整することによって変更可能である。本実施形態では、基準ピン14が基準位置X(リムW)に接触するように構成されているが、基準ピン14は、リムWから離間した位置で、その先端が基準位置Xを指し示すように配置されていてもよい。
【0035】
[位置決め装置]
図1図3に示すように、第1フレーム11には、位置決め装置15が設けられている。位置決め装置15は、車両CのリムWの軸心位置(基準位置X)に対して、フレーム10(より詳しくは第1フレーム11)を位置決めするための装置である。位置決め装置15は、柱部11bに対して垂直な向きに延びるフレーム部15aを有している。補助治具1の使用時において、フレーム部15aは、車両Cの前後方向に延びる姿勢で配置される。
【0036】
フレーム部15aの長さ方向の中央には、前述した基準ピン14が配置されている。フレーム部15aには、基準ピン14の長さ方向に対して平行な貫通孔15bが複数形成されている。各貫通孔15bは、長さ方向に12.7mm(0.5インチ)のピッチで形成されている。各貫通孔15bは、基準ピン14からの距離が等しい2つの貫通孔15b,15bを一対として使用する。例えば、図1に示す位置決め装置15では、最も基準ピン14に近い位置に形成されている一対の貫通孔15b,15bが、15インチのリムWの外径位置に合わせて形成されている。フレーム部15aには、その他のサイズ(16インチ、17インチ等)のリムWの外径位置に合わせた一対の貫通孔15b,15bが、さらに形成されている。
【0037】
位置決め装置15は、貫通孔15bに挿入可能なピン15cをさらに有している。位置決め装置15では、例えば、15インチのリムWに対応する一対の貫通孔15b,15bにそれぞれピン15c,15cを挿入したときに、各ピン15c,15cの先端の間隔が15インチのリムWの外径に一致するように構成されている。
【0038】
位置決め装置15の使用時においては、まずリムWのサイズを確認し、そのサイズに対応した一対の貫通孔15b,15bに一対のピン15c,15cを挿入しておく。車両Cに対する第1フレーム11の配置を調整し、一対のピン15c,15cの両方の先端をリムWの前後の外周縁部にそれぞれ接触させる。このとき、基準ピン14は、当該リムWの軸心位置(基準位置X)と接触する位置へ自然に配置される。補助治具1では、位置決め装置15を用いることで、基準位置Xに基準ピン14を合わせることが容易であり、これにより、車両Cに対する第1フレーム11の位置決めが容易になる。補助治具1では、第1フレーム11の配置に基づいて第2フレーム12及び第3フレーム13を位置決めすることで、車両Cに対するフレーム10全体の位置決めが容易になる。
【0039】
このように、補助治具1は、基準位置Xにフレーム10を位置決めする位置決め装置15をさらに備えている。このため、補助治具1を用いることによって、車両Cに対するフレーム10の位置決めが容易になる。これにより、車両Cに対するセンサSの設置作業の所要時間が短縮される。
【0040】
[マーカー部材]
第3フレーム13には、マーカー部材16が設けられている。マーカー部材16は、車両Cにおける設置位置Zの前後方向の位置を明示するための部材である。本実施形態の補助治具1では、マーカー部材16が下げ振りによって構成されている。マーカー部材16は、糸16aと、錘16bと、固定具16cと、を有している。マーカー部材16は、糸16aが固定具16cによって第3フレーム13の所定位置に固定されている。ここでいう所定位置は、第1フレーム11の柱部11bの中心から第1距離P1離間した位置である。なお、本実施形態では、マーカー部材16として、糸16aと錘16b等を有する下げ振りが用いられているが、レーザー光で水平方向及び鉛直方向の目安を表示できる装置(レーザー式の下げ振り)をマーカー部材16として用いてもよい。マーカー部材16は、固定具16cが糸16aの巻き取り機構を備えていてもよい。
【0041】
[測定具]
第3フレーム13には、測定具18が設けられている。測定具18は、車両Cに設置されたセンサSの床Gからの距離を測定するための工具である。本実施形態の補助治具1では、測定具18を鋼製巻尺(コンベックスルール)によって構成している。測定具18は、作業者がセンサSと測定具18の目盛りとを同時に確認できる位置に配置することが好ましい。このため、補助治具1では、測定具18を、前後方向における糸16aの近傍に配置している。
【0042】
[水準器]
各フレーム11,12,13には、それぞれ水準器19が設けられている。補助治具1では、作業者が、柱部11b,12bの傾き(鉛直かどうか)や、桁部13aの傾き(水平かどうか)を容易に確認することができる。作業者は、水準器19を確認しながら、各ジャッキ部11c,12cを調整することによって、各柱部11b,12b及び桁部13aの傾きを修正することができる。
【0043】
[取手]
各フレーム11,12,13には、それぞれに取手20が設けられている。取手20は、作業者がフレーム10を移動する際に把持することができる部位である。取手20は、分解した各フレーム11,12,13を作業者が個別に運ぶ際にも使用することができる。
【0044】
[フレームの詳細な構成]
図3に示すように、フレーム10は、床Gに垂直な方向(上下方向)からみて、桁部13aを境界として対称な形状を有している。このため、補助治具1は、車両Cの右側面C1にセンサSを設置する用途に使用することができるとともに、車両Cの左側面C2にセンサSを設置する用途にも使用することができる。言い換えると、補助治具1は、一つの補助治具1で、車両Cの左右におけるセンサSの設置作業に対応することができる。
【0045】
[補助治具を用いたセンサの設置手順]
ここでは、図1図5を参照しつつ、作業者が、補助治具1を用いて車両Cの右側面C1にセンサSを設置する手順を説明する。本実施形態では、センサSを設置する対象が車両C(図5A,B参照)であり、車両CにおけるセンサSの設置位置Zが、基準位置X(リムWの軸心位置)から前方に第1距離P1離間した位置であって、かつ、床Gから第2距離P2離間した位置である場合について説明する。ここで使用するセンサSには、固定具Kが付設されている。固定具Kは、センサSを車両Cに固定するための工具であり、マグネットベースにより構成されている。なお、本実施形態では、1個の固定具Kで車両CにセンサSを固定する場合を例示しているが、複数の固定具Kを用いて車両CにセンサSを固定してもよい。
【0046】
まず初めに、作業者は、車両Cの後側のタイヤTの近傍に第1フレーム11を配置する。このとき、作業者は、リムW(タイヤT)のサイズに合わせて、ジャッキ部11cによって柱部11bの高さを調整する。作業者は、位置決め装置15を用いて、基準ピン14が基準位置Xと接触する位置に第1フレーム11を配置する。
【0047】
次に、作業者は、第1フレーム11から前方側へ離れた大まかな位置に第2フレーム12を配置する。このとき作業者は、第1フレーム11の調整後の高さに基づいて、ジャッキ部12cによって柱部12bの高さを調整する。
【0048】
次に、作業者は、第1フレーム11及び第2フレーム12に第3フレーム13を接続し、フレーム10を一体に構成する。このとき作業者は、第3フレーム13が、車両Cの前後方向に対して平行になっているかどうかと、車両Cの左右方向に対して垂直になっているかどうかとを、目視で確認する。第3フレーム13が前後方向及び左右方向に対して傾いている場合には、作業者は、取手20を把持しつつ左右方向について第2フレーム12の配置を調整する。
【0049】
次に、作業者は、各フレーム11,12,13に配置された各水準器19を用いて、第3フレーム13の姿勢を確認する。第3フレーム13が水平でない場合には、作業者は、各ジャッキ部11c,12cを用いて、各柱部11b,12bの高さを調整する。
【0050】
以上で、車両Cに対してフレーム10を配置する作業が完了する。このとき、マーカー部材16は、車両Cの基準位置Xから第1距離P1(本実施形態では1000mm)前方側に離間した位置に配置されている。つまり、作業者は、車両Cに対する所定位置に補助治具1を配置するだけで、基準位置Xを基準とした第1距離P1を測定することができる。
【0051】
このように、補助治具1では、第1フレーム11及び第2フレーム12が、柱部11b,12bの長さを調整するジャッキ部11c,12cをそれぞれ有している。このため、補助治具1では、ジャッキ部11c,12cを調整することによって、第3フレーム13を床Gに対して平行に容易に調整することができる。これにより、車両Cに対するセンサSの設置作業の所要時間を短縮することができる。
【0052】
補助治具1では、第1フレーム11と、第2フレーム12と、第3フレーム13とが、それぞれにおいて、水準器19を有している。このため、補助治具1では、車両Cに対するフレーム10の姿勢を適正な姿勢に調整することが容易である。これにより、車両Cに対するセンサSの設置作業の所要時間をより短縮することができる。
【0053】
補助治具1では、第1フレーム11と、第2フレーム12と、第3フレーム13とが、それぞれにおいて、取手20を有している。このため、補助治具1では、各取手20を把持することによって、一体のフレーム10を移動させることが容易である。このため、補助治具1は、車両Cに対する柱部11b,12bや桁部13aの配置を容易に調整することが可能であり、車両Cに対するセンサSの設置作業の所要時間をより短縮することができる。
【0054】
次に、作業者は、マーカー部材16の糸16aの位置を参考にしつつ、固定具Kを右側面C1に取り付けて、センサSを右側面C1の大まかな位置に仮配置する。作業者は、左右方向からみてマーカー部材16の糸16aの位置とセンサSの基準点Yの位置とが一致するように、センサSを配置する。このとき、作業者は、右側面C1に沿って固定具Kを移動させて、センサSの前後方向の位置を微調整する。このとき作業者は、糸16aの向きとセンサSの光軸の向きとを一致させる。
【0055】
次に、作業者は、床Gに接触する位置まで測定具18の目盛部分を引き出して、センサSの床Gからの距離を測定する。このとき作業者は、右側面C1に沿って固定具Kを移動させて、センサSの上下方向の位置を微調整する。作業者は、測定具18の目盛に基づいて、基準点Yが床Gから第2距離P2(本実施形態では350mm)離れた位置にセンサSを配置する。
【0056】
作業者は、左右方向から見て基準点Yが設置位置Zに一致していることを確認して、センサS(固定具K)の配置を決定する。これにより、センサSが、車両Cの右側面C1において、基準位置Xから前方に第1距離P1離間し、かつ、床Gから上方に第2距離P2離間した設置位置Zに固定される。以上で、右側面C1の設置位置Zに対するセンサSの設置作業が完了する。なお、作業者は、補助治具1を用いて、左側面C2側の設置位置Zに対しても、この手順と同様の手順で、センサSを設置することができる。
【0057】
以上に説明したセンサSの設置作業用の補助治具1は、床G上に配置された車両Cの基準位置Xから、床Gに対して平行な方向へ第1距離P1離れ、かつ、床Gに対して垂直な方向に当該床Gから第2距離P2離れた、車両Cの設置位置ZにセンサSを設置する作業用の補助治具である。補助治具1は、床Gに対して自立可能なフレーム10と、車両Cの基準位置Xに合わせられる基準ピン14と、基準ピン14から第1距離P1離れた位置に設置されているマーカー部材16と、車両Cに設置されたセンサSの床Gからの距離を測定する測定具18と、を備えている。
【0058】
このような補助治具1を用いれば、第1距離P1と第2距離P2を、短時間で容易に測定することができる。このため、補助治具1によれば、左右方向から見たセンサSの基準点Yの位置を、車両Cの設置位置Zと容易に一致させることが可能となり、センサSを設置する作業者のスキルによらず、車両Cの設置位置Zに対してセンサSをより短時間で設置することが可能となる。補助治具1によれば、センサSの設置位置のばらつきを抑制することが可能となる。
【0059】
以上のとおり開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。つまり、本発明の治具は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明されたセンサの設置作業用の補助治具は、タイヤの性能を確認するための計測機器を車両に設置する用途だけでなく、車両自体の性能を確認するための計測機器を車両に設置する用途にも広く適用されうる。
【符号の説明】
【0061】
1 補助治具
10 フレーム
11 第1フレーム
11a 脚部
11b 柱部
12 第2フレーム
12a 脚部
12b 柱部
13 第3フレーム
13a 桁部
13b 第1端部
13c 第2端部
13d,13e 接続部
14 基準ピン
15 位置決め装置
16 マーカー部材
18 測定具
19 水準器
20 取手
X (車両の)基準位置
Z (車両の所定の)設置位置
G 床
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B