(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112069
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】グラスウールボード及びグラスウールボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 13/40 20060101AFI20220726BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20220726BHJP
D04H 1/4218 20120101ALI20220726BHJP
D04H 1/4342 20120101ALI20220726BHJP
D21H 15/04 20060101ALI20220726BHJP
D21H 13/26 20060101ALI20220726BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
D21H13/40
F16L59/02
D04H1/4218
D04H1/4342
D21H15/04
D21H13/26
D21H27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007702
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重松 俊広
【テーマコード(参考)】
3H036
4L047
4L055
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
3H036AE01
3H036AE08
4L047AA05
4L047AA24
4L047AA28
4L047AB06
4L047BA09
4L047BA21
4L047CB03
4L047CB06
4L055AF04
4L055AF35
4L055AF46
4L055AF50
4L055AG16
4L055AG35
4L055AJ01
4L055BE20
4L055CA10
4L055CB14
4L055CD13
4L055EA04
4L055EA08
4L055FA19
4L055FA30
4L055GA38
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、軽量で、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性と不燃性に優れたグラスウールボードを提供することにある。
【解決手段】グラスウールとガラス繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、全繊維成分に対して、該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%以上15質量%以下であり、密度が0.30g/cm
3以上0.55g/cm
3以下であり、厚さが1mm以上25mm以下であることを特徴とするグラスウールボード。グラスウールボードは、湿式抄造法で湿紙を製造する工程、湿紙を複数枚積層する工程、積層した湿紙を熱プレス加工し、一体成型する工程で製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、全繊維成分に対して、該メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%以上15質量%以下であり、密度が0.30g/cm3以上0.55g/cm3以下であり、厚さが1mm以上25mm以下であることを特徴とするグラスウールボード。
【請求項2】
全繊維成分に対して、グラスウールの含有率が45質量%以上85質量%以下であり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下である請求項1記載のグラスウールボード。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか記載のグラスウールボードを製造するためのグラスウールボードの製造方法において、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を混合したスラリーから湿式抄造法で湿紙を製造する工程、積層した湿紙を複数枚積層する工程、積層した湿紙を熱プレス加工し、一体化させる工程を含むことを特徴とするグラスウールボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラスウールボード及びグラスウールボードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラスウール成形体は、軽量性、断熱性、遮音性、吸音性等の性能を有するため、建築用資材;自動車、船舶、航空機等の輸送手段;冷蔵庫、冷凍庫等の電化製品等の多分野で広く使用されている。グラスウール成形体は、バインダーを用いてグラスウールを成形して製造するのが一般的である。バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スターチなどの有機バインダー;水ガラス、ホウ酸、コロイダルシリカなどの無機バインダーが知られている。しかし、バインダーを用いた低密度なグラスウール成形体は、バーナーを照射した場合、穴が開いてしまい、耐火性に劣る問題があった。また、断熱性を高めるには、グラスウール成形体を厚くする必要があり、空間に制限のある部分では使用できない問題があった。
【0003】
そこで、空間に制限のある部分においては、グラスウール成形体を気密性のパック内に入れて、当該パック内を減圧状態として断熱性を高めた真空断熱材が広く用いられている。真空断熱材では、長期にわたって真空が維持できるように、複数の層をラミネートした外皮に、グラスウール成形体からなる芯材を入れ、内部を真空状態にしており、ここでもハンドリング性を向上させるために、バインダーを用いたグラスウール成形体が用いられている。
【0004】
しかし、有機バインダーを使用すると、バインダーからの揮発成分により真空断熱材の真空度が低下するという問題があり、また、有機バインダーの耐熱性の問題から、グラスウールを成形する際に高温を掛けられないという問題がある。また、無機バインダーを使用すると、特に、ホウ酸を使用した場合には、結合水の揮発により真空度が低下して断熱性を維持できないという問題がある。このため、バインダーを使用する場合には、真空断熱材の性能を長期安定化させるため、ガス成分吸着剤の増量や高性能吸着剤の充填を必要としていた。
【0005】
以上の理由から、バインダーを用いず、かつハンドリング性も良好な真空断熱材用の芯材を製造する方法が種々開発されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1には、グラスウールの熱変形温度以上の温度で加圧成形し、ガラス繊維の集合体を加圧時の状態に塑性変形させることでその形状を保持する方法が開示されている。特許文献2には、積層されたガラスホワイトウール(バインダーを含まないグラスウール)を、その変形点よりも20℃高い温度で成形する方法が開示されている。しかし、特許文献1及び2の方法では、グラスウールの熱変形温度以上の温度で加圧成形するため、莫大なエネルギーを必要とする他、繊維強度が低下し、グラスウールが粉末化しやすくなるという問題があった。
【0007】
特許文献3には、無機繊維同士がSi-OH基に起因する分子間相互作用により密着された芯材が開示されているが、この発明においては、無機繊維同士の接着が不十分なため、圧縮後の一定時間後にグラスウール成形体の厚みが膨らみ、寸法変化によるハンドリング性の低下が問題となる。
【0008】
また、特許文献4及び5には、スピンナー法によってグラスウールを製造する際に、スピンナーの小孔から噴出して堆積する前の空中を舞っている状態のグラスウールに霧状の水を掛けることで、グラスウール表面に水分を付着させ、付着した水分でグラスウールを形成するガラス中に含まれる酸化ナトリウムを溶出させ、溶出した酸化ナトリウムは、周囲の付着水に溶けて水酸化ナトリウムを生成し、この水酸化ナトリウムがグラスウールの主成分である二酸化ケイ素と容易に反応してケイ酸ナトリウムを生成し、このケイ酸ナトリウムは無機バインダーとしてよく知られる水ガラスであるので、バインダーを添加することなく繊維同士を結合することができる製造方法が開示されている。しかしながら、水ガラスは高アルカリ性であり、グラスウールに含水率0.05~10.0質量%となるようにし、これを250~450℃の高温でプレス成形するため、莫大なエネルギーを必要とし、安全面、設備面、及びコスト面の問題があった。
【0009】
また、特許文献6には、グラスウールの中にバインダーを含浸する含浸工程、前記含浸工程で得られたバインダーを含むグラスウールを成形する成形工程、前記成形工程で成形したグラスウールから水分を除去する乾燥工程、を含み、前記バインダーが無機バインダーであり、前記乾燥工程で得られた成形体が、JIS A 1322の防炎1級相当の難燃性基準及び/又は建築基準法第2条第9号に規定される燃焼試験において不燃材料の基準を満たしている成形体とその製造方法が開示されている。しかしながら、この製造方法では、乾燥に時間が掛かり過ぎ、生産性とコスト面で問題があった。また、バーナー等の火炎を照射した場合、成形体が火炎により溶けて、厚みが減少してしまうため、断熱性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3580315号公報
【特許文献2】特表2003-532845号公報
【特許文献3】特許第3578172号公報
【特許文献4】特許第3712129号公報
【特許文献5】特開2007-84971号公報
【特許文献6】特開2016-160553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、軽量で、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性と不燃性に優れたグラスウールボードとグラスウールボードの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
【0013】
(1)グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、全繊維成分に対して、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%以上15質量%以下であり、密度が0.30g/cm3以上0.55g/cm3以下であり、厚さが1mm以上25mm以下であることを特徴とするグラスウールボード。
【0014】
(2)全繊維成分に対して、グラスウールの含有率が45質量%以上85質量%以下であり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下である上記(1)記載のグラスウールボード。
【0015】
(3)上記(1)~(2)のいずれか記載のグラスウールボードを製造するためのグラスウールボードの製造方法において、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を混合したスラリーから湿式抄造法で湿紙を製造する工程、湿紙を複数枚積層する工程、積層した湿紙を熱プレス加工し、一体化させる工程を含むことを特徴とするグラスウールボードの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のグラスウールボードは、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有している。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物がグラスウールとガラス繊維の繊維間に入り込み、乾燥により、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の結晶構造内に存在する水分が除去される際に、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするバインダー効果が発現するため、軽量でハンドリング性に優れたボード形状を達成することができる。
【0017】
また、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は、耐熱性が高いことから、グラスウールボードが、ボード形状を維持しつつ、優れた耐火性と不燃性を有するという効果を達成できる。さらに、ガラス繊維は、グラスウールよりも耐熱性が高く、単繊維強度が強く、剛直なため、グラスウールボードの厚みを確保しやすくなり、高密度化を防ぎ、ボードの硬さを向上させる効果があり、軽量で、ハンドリング性及び断熱性に優れたグラスウールボードが得られる。
【0018】
さらに、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を混合したスラリーから湿式抄造法で湿紙を製造する工程、積層した湿紙を複数枚積層する工程、積層した湿紙を熱プレス加工し、一体化させる工程で製造することで、軽量でありながら、断熱性と耐火性と不燃性に優れたグラスウールボードを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のグラスウールボードの表面観察画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のグラスウールボードは、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有し、全繊維成分に対して、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%以上15質量%以下であり、グラスウールボードの密度が0.30g/cm3以上0.55g/cm3以下であり、厚さが1mm以上25mm以下である。また、全繊維成分に対して、グラスウールの含有率が45質量%以上85質量%以下であり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0021】
本明細書において、「グラスウールボード」を「ボード」と略記する場合がある。
【0022】
本発明において、グラスウールとは、繊維径が約1~7μmのガラス繊維が綿状になったものである。グラスウールは、周囲に1mm程度の小孔を多数設けたスピナーを高速回転させて、溶融したガラスを噴出することにより製造される。この製造プロセスは一般に遠心法と呼ばれ、溶融したガラスの粘度及び回転速度を調整することで、1~7μm程度の細いグラスウールを経済的に製造することができる。
【0023】
本発明において、ガラス繊維としては、例えば、チョップドストランド、グラスフレークが挙げられる。折れ難く、ボードの形成能があればいずれのガラス繊維でも良い。ガラス繊維の繊維径は、4~15μmであることが好ましく、6~14μmであることがより好ましく、8~13μmであることがさらに好ましい。繊維径が4μm未満の場合、細か過ぎて湿式抄造時にボードからガラス繊維が脱落する場合があり、ボードの強度、厚み及び硬さが不十分となる場合がある。繊維径が15μmを超えた場合、ガラス繊維が太くなり過ぎて、ボードの隙間が大きくなり、断熱性が悪化する場合がある。ガラス繊維の繊維径が4~15μmである場合、ボードの隙間が細かく、均一となるため、断熱性、耐火性及び不燃性が優れたボードになる。
【0024】
また、本発明において、グラスウールとガラス繊維の繊維長は、1~20mmであることが好ましく、4~15mmであることがより好ましく、6~13mmであることがさらに好ましい。繊維長が1mm未満では、ボードの強度が不足する場合やグラスウール又はガラス繊維がボード表面から脱落しやすくなる場合があり、繊維長が20mmを超えた場合、繊維の分散に時間が掛かり、生産性が悪化する場合や、繊維のもつれや塊が発生しやすく、地合が悪くなる場合がある。
【0025】
グラスウールの含有率は、グラスウールボードに含まれる全ての繊維成分に対して、45~85質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましく、55~75質量%であることがさらに好ましい。含有率が45質量%未満であると、ボードの空隙が大きくなり、断熱性が低下する場合があり、含有率が85質量%を超えると、ボードに熱を掛けた場合、ボードが変形する場合がある。
【0026】
また、ガラス繊維の含有率は、グラスウールボードに含まれる全ての繊維成分に対して、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましく、20~30質量%であることがさらに好ましい。含有率が10質量%未満であると、ボードが薄くなり過ぎる場合や、ボードが柔らかくなりやすいため、ハンドリング性が悪くなる場合があり、含有率が40質量%を超えると、ボードが硬くなり過ぎ、断裁性が悪化する場合や、空隙が大きくなり過ぎるため、断熱性が低下する場合がある。
【0027】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物としては、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m-フェニレンテレフタルアミド)樹脂等からなるパルプ状物が挙げられる。
【0028】
また、本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物とは、抄紙機を用いて紙に似た構造物を作ることができる多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状又は燐片状の小片であり、繊維の結晶構造が強固に形成されることなく、非結晶状態で水分子又は水分が結晶構造内に存在する微細な耐熱繊維を指す。
図1は、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含むグラスウールボードの電子顕微鏡写真であり、パルプ状物は薄葉状である。
【0029】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物としては、繊維形成性高分子重合体溶液を水系凝固浴に導入して得られた形成物を、乾燥することなく回収し、必要に応じて叩解等のフィブリル化をすることにより得られる。例えば、ポリマー重合体溶液をその沈殿剤とせん断力の存在する系において混合することにより製造されるフィブリッドや、光学的異方性を示す高分子重合体溶液から形成した分子配向性を有する非晶質含水形成物であり、例えば、特公昭35-11851号公報、特公昭37-5732号公報などに記載の製造方法により製造される。必要に応じて叩解処理を施すことができる。
【0030】
叩解処理としては、パルプ状物をリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて処理することによって得ることができる。
【0031】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は結晶構造内に存在する水分子又は水分が加熱・減圧などにより除去される際に大きく収縮し、繊維ネットワークを強固にするため、ボードの強度を向上させる効果がある。
【0032】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長は、0.10mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、パルプ状物の長さ加重平均繊維長は、0.10mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、ボードからパルプ状物が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合、パルプ状物のもつれや分散不良が発生する場合がある。
【0033】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が、上記の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長を持つ場合、ボードに含まれるパルプ状物の含有率が少ない場合でも、パルプ状物間やパルプ状物とグラスウール及びガラス繊維との間において、繊維による緻密なネットワーク構造が形成され、引張強度が強いボードが得られやすく、湿紙を複数枚積層し、一体化させた場合、層間剥離が発生し難くなる。
【0034】
メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の平均繊維幅は、5μm以上40μm以下が好ましく、8μm以上35μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が40μmを超えた場合、繊維同士のネットワークが低下し、ボードの引張強度が低下する場合や無機粒子が浸透しにくくなる場合がある。一方、平均繊維幅が5μm未満の場合、パルプ状物を叩解する処理時間が長くなり過ぎる場合があり、生産性が著しく低下する場合がある。
【0035】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の質量加重平均繊維長、長さ加重平均繊維長及び平均繊維幅は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して、投影繊維長(Proj)モードにおいて測定した質量加重平均繊維長(L(w))、長さ加重平均繊維長(L(l))及び繊維幅である。
【0036】
本発明において、グラスウールボードを構成する全繊維に対して、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率は5質量%以上15質量%以下であり、6質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が15質量%を超えた場合、ボードの耐火性又は不燃性が悪化する場合や、ボードの密度が高くなり過ぎる場合がある。一方、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%未満である場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物間やパルプ状物とグラスウール及びガラス繊維との緻密なネットワーク構造が形成されにくく、ボードの強度が低下しやすく、ハンドリング性の低下を招く場合や湿紙を複数枚積層し、熱プレス加工し、一体化させる工程で、層間剥離が発生する場合がある。
【0037】
本発明において、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の変法濾水度は0~300mlであることが好ましく、より好ましくは0~200mlであり、さらに好ましくは0~100mlである。変法濾水度が300mlを超えた場合、パルプ状物の繊維幅が太く、フィブリル化があまり進んでいないため、グラスウール又はガラス繊維との緻密なネットワークが少なくなるため、ボードの引張強度が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満の場合、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のファイン分が増え過ぎて、ボードから脱落する割合が増え、歩留まりが低下する場合がある。また、繊維のフィブリル化処理に時間が掛かり過ぎ、非常に高価なものになる。また、ボードが薄くなりやすく、高密度化しやすくなるため、断熱性が悪化する場合がある。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
【0038】
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値である。
【0039】
本発明において、グラスウール、ガラス繊維及びメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物に加えて、必要に応じて、性能を阻害しない範囲で、各種繊維を配合することができる。その結果、さらに細かい空隙部を増やすことができ、断熱性、耐火性及び不燃性を向上させることができる。このような繊維としては、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコーン、これらの誘導体等の合成樹脂繊維、金属繊維、炭素繊維、アルミナ、シリカ、セラミックス、岩石繊維等の無機繊維を加えることができる。必要に応じて配合することができる繊維の含有率は、グラスウールボードに含まれる全ての繊維成分に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であっても問題無い。
【0040】
合成樹脂繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。また、本発明のグラスウールボードに含むことができる上記各種繊維は、1種でも良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0041】
本発明において、ボードの厚さは、1mm以上であり、5mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることがさらに好ましい。また、25mm以下であり、23mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることがさらに好ましい。ボードの厚さを上記の範囲とした場合において、本発明におけるボードは、軽量でありながら、ハンドリング性に優れ、断熱性と耐火性と不燃性に優れたものになる。また、各工程の作業性が良好なものになる。ボードの厚さが25mmを超えると、ボードが重くなり過ぎ、取り扱い難くなる場合や湿紙の乾燥時間が長くなり過ぎて、生産性の悪化を招く場合がある。ボードの厚みが1mm未満であると、ボードの強度面が低下し、ハンドリング性が大きく低下する場合がある。また、断熱性や耐火性や不燃性が大きく損なわれる場合がある。
【0042】
本発明におけるボードの密度は、0.30g/cm3以上であり、0.35g/cm3以上であることがより好ましい。また、0.55g/cm3以下であり、0.50g/cm3以下であることがより好ましい。密度が0.30g/cm3未満である場合、ボードの強度面、例えば、引張強度や表面強度や層間強度が弱くなり、ボード同士を擦り合わせた場合、ボード表面から構成繊維が脱落する場合がある。また、ボードが薄い場合、ボードが撓み、層間剥離が発生する場合や折れる場合がある。一方、ボードの密度が0.55g/cm3を超えた場合、ボードが厚い場合に、ボードが重くなり、軽量感が低下する場合やコストが高くなり過ぎる場合がある。しかし、厚みが同じであれば、上記のボードの密度範囲においては、高密度の方が、空隙が小さくなるため、気体による熱伝導が低下するため、断熱性が良好になる。
【0043】
本発明におけるボードの製造方法では、湿式抄造法(抄紙法)によって湿紙を製造する。湿式抄造法は、繊維を水に分散して均一なスラリーとし、このスラリーから抄紙機を使用して湿紙を製造する。抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー、傾斜短網等の抄紙ワイヤーが単独で設置されている抄紙機、同一の抄紙ワイヤー上に2つ以上のヘッドを有した2層以上の多層抄紙可能な抄紙機、抄紙ワイヤーの同種又は異種の2種以上がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等が挙げられる。
【0044】
スラリーには、繊維の他に、必要に応じて、分散剤、紙力増強剤、増粘剤、無機填料、有機填料、消泡剤などを適宜添加することができる。スラリーの固形分濃度は、0.5~0.001質量%程度であることが好ましい。このスラリーを、さらに所定濃度に希釈してから湿式抄造し、湿紙を得る。
【0045】
ついで、湿紙を複数枚積層する。複数枚積層する方法としては、円筒ドラムに湿紙を複数周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、平判の積層した湿紙を得ることができる。また、平判の積層した湿紙をさらに複数枚積層することもできる。
【0046】
ついで、複数枚積層した湿紙を、熱プレス機を用いて、120~180℃のプレス温度で、1~20MPaのプレス圧力でプレス加工することにより、湿紙から水分を脱水し、乾燥させ、所定の厚みを持ったボードを成形することができる。プレス時間は乾燥するまでの時間で適宜調整すれば良い。所定の厚みを持ったグラスウールボードを得るには、湿紙坪量とプレス圧力を適宜調整すれば良い。
【0047】
図1は、本発明のボードにおける表面の電子顕微鏡(SEM)観察写真である。ボードに含有されるグラスウール、ガラス繊維、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物が確認できる。メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物は多数の微小なフィブリル部を有する薄葉状又は燐片状の小片であり、グラスウールやガラス繊維の間に入り込み、繊維の隙間を埋めている。
【0048】
本発明において、ボード表面及び内部に無機バインダーを含有しても良い。無機バインダーとしては、例えば、セピオライト、コロイダルシリカ、水ガラス、アルミナゾル、ベントナイトなどが挙げられる。上記無機バインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0049】
無機バインダーは、グラスウールボードに無機バインダー塗工液を塗工後乾燥させることによって、ボード表面及び内部に無機バインダーを含有させることができる。無機バインダー塗工液を調製するための媒体としては、無機バインダーを均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メチルエチルケトン等のケトン類、イソプロピルアルコール等のアルコール類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水等を必要に応じて用いることができる。また、使用する媒体は、ボードを膨張させない媒体、又は溶解しない媒体が好ましい。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りの無い限り全て質量基準である。
【0051】
実施例1
<メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の作製>
硫酸中の対数粘度1.5のポリメタフェニレンイソフタルアミド20部を、塩化リチウム5部を含むN,N-ジメチルアセトアミド90部に溶解し、この溶液を高速回転でかき混ぜているホモミキサー中のグリセリン水溶液に導入してパルプ状物を得て、このパルプ状物をシングルディスクリファイナーに通し、フィブリル化させて変法濾水度を調整し、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)を得た。
【0052】
<ボードの作製>
マグ・イゾベール社製グラスウールを60部、ガラス繊維(日東紡績社製、繊維径10.5μm×繊維長6mm)を30部、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物(変法濾水度65ml)10部を、パルパーにより水中で分散し、濃度0.5%の均一なスラリーを調成し、円網抄紙機を用いて、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。湿紙を円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0053】
実施例2
実施例1で使用したグラスウールを53部、実施例1で使用したガラス繊維を40部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を7部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量122g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1220g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1220g/m2の湿紙を3枚積層して、乾燥坪量3660g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3660g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0054】
実施例3
実施例1で使用したグラスウールを55部、実施例1で使用したガラス繊維を40部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を5部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量69g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量690g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量690g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量6900g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量6900g/m2、厚さ23mmのグラスウールボードを作製した。
【0055】
実施例4
実施例1で使用したグラスウールを45部、実施例1で使用したガラス繊維を40部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を15部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量55g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量550g/m2の湿紙を得た。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、5.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量550g/m2、厚さ1mmのグラスウールボードを作製した。
【0056】
実施例5
実施例1で使用したグラスウールを85部、実施例1で使用したガラス繊維を10部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を5部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量50g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量500g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量500g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量5000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、4.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量5000g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0057】
実施例6
実施例1で使用したグラスウールを73部、実施例1で使用したガラス繊維を20部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を7部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量67.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量675g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量675g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量6750g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、3.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量6750g/m2、厚さ14mmのグラスウールボードを作製した。
【0058】
実施例7
実施例1で使用したグラスウールを81部、実施例1で使用したガラス繊維を9部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部とし、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0059】
実施例8
実施例1で使用したグラスウールを48部、実施例1で使用したガラス繊維を45部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を7部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量74g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量740g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量740g/m2の湿紙を5枚積層して、乾燥坪量3700g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量3700g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0060】
実施例9
実施例1で使用したグラスウールを40部、実施例1で使用したガラス繊維を50部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量87.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量875g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量875g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量1750g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量1750g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0061】
実施例10
実施例1で使用したグラスウールを90部、実施例1で使用したガラス繊維を5部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を5部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量55g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量550g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量550g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量5500g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、5.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量5500g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0062】
比較例1
実施例1で使用したグラスウールを80部、実施例1で使用したガラス繊維を20部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量130g/m2の湿紙を得た。この湿紙の上から噴霧器を用いて、コロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックス(登録商標)C):セピオライト(昭和KDE社製、ミルコン(登録商標)SP-2)=80:20の20%水溶液を乾燥質量20g/m2となるように塗布した。この乾燥坪量150g/m2の湿紙を25枚積層し、乾燥坪量3750g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱風乾燥機を用いて乾燥し、坪量3750g/m2、厚さ14mmのグラスウールボードを作製した。
【0063】
比較例2
実施例1で使用したグラスウールを90部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量100g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量1000g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量1000g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量2000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量2000g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0064】
比較例3
実施例1で使用したガラス繊維を90部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を10部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量87.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量875g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量875g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量1750g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量1750g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0065】
比較例4
実施例1で使用したグラスウールを85部、実施例1で使用したガラス繊維を11部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を4部とし、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量50g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量500g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量500g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量5000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、4.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量5000g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0066】
比較例5
実施例1で使用したグラスウールを53部、実施例1で使用したガラス繊維を30部、実施例1で使用したメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を17部とし、乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量40g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量400g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量400g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量4000g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、2.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量4000g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0067】
比較例6
乾燥坪量を変えた以外は、実施例4と同様な方法で、乾燥坪量38.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量385g/m2の湿紙を得た。この湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、5.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量385g/m2、厚さ0.7mmのグラスウールボードを作製した。
【0068】
比較例7
乾燥坪量を変えた以外は、実施例3と同様な方法で、乾燥坪量94.5g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量945g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量945g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量9450g/m2の湿紙とした。この積層した湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量9450g/m2、厚さ26mmのグラスウールボードを作製した。
【0069】
比較例8
乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量70.0g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量700g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量700g/m2の湿紙を2枚積層して、乾燥坪量1400g/m2の湿紙とした。この積層湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、1.0MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量1400g/m2、厚さ5mmのグラスウールボードを作製した。
【0070】
比較例9
乾燥坪量を変えた以外は、実施例1と同様な方法で、乾燥坪量57.0g/m2の湿紙を得た。これを円筒ドラムに10周巻き付けた後、円筒ドラムの幅方向に切断し、乾燥坪量570g/m2の湿紙を得た。この乾燥坪量570g/m2の湿紙を10枚積層して、乾燥坪量5700g/m2の湿紙とした。この積層湿紙を140℃の熱プレス機を用いて、5.5MPaの圧力で熱プレス加工し、湿紙を乾燥して、坪量5700g/m2、厚さ10mmのグラスウールボードを作製した。
【0071】
実施例及び比較例のグラスウールボードについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表1と表2に示した。
【0072】
<グラスウールボードの坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、グラスウールボードの坪量を測定した。
【0073】
<グラスウールボードの厚み>
グラスウールボードの厚みは、ミツトヨ製、M形標準ノギスを用いて、四隅の厚みを測定し、その平均値とした。
【0074】
<ハンドリング性>
グラスウールボードのハンドリング性の評価としては、幅方向910mm×流れ方向1820mmの三六判に4枚切り出し、次の評価基準で評価した。各項目において、一つでも当てはまる場合、その評価基準とした。
【0075】
○:軽量感があり、一人で持ち上げることができる。ボードを持ち上げた際にボードが折り曲がることがない。ボードの表面に毛羽立ちが無く、ボード表面を触った際にチクチク感が無い。エッジに損傷やカット不良が無い。
【0076】
△:軽量感があり、一人で持ち上げることができる。ボードを持ち上げた際にボードがしなることがある。ボードの表面に毛羽立ちが少し見られ、ボードの表面を触った際に少しチクチク感がある。エッジに損傷やカット不良が見られる場合がある。
【0077】
×:重量感があり、一人で持ち上げることが難しい。ボードを持ち上げた際にボードが折れ曲がることがある。ボードの表面に毛羽立ちがあり、ボードの表面を触った際にチクチク感がある。エッジに損傷やカット不良が見られる。
【0078】
<断熱性>
グラスウールボードの断熱性の評価としては、各ボードから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片を600℃に設定したホットプレート(商品名:超高温ホットプレートPA8010-CC、MSAファクトリー社製、プレート面積:100mm×100mm)上に置き、ホットプレートに接していないボード上面の20分後の表面温度を測定した。
【0079】
<耐火性>
グラスウールボードの耐火性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を3枚切り出し、各試験片の中央部にバーナー(商品名:ラボバーナーAPTL、株式会社フェニックスデント製)の火炎を20分間照射した。その後、火炎を当てた側のボード表面を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。バーナーの火炎温度は、1000℃であった。
【0080】
○:ボードに穴や亀裂や溶融が無い。
△:火炎を当てたボードの表面に溶融や凹みがわずかに見られる。
×:ボードに穴や亀裂がある。
【0081】
<不燃性>
グラスウールボードの不燃性の評価としては、各シートから幅方向100mm×流れ方向100mmサイズの試験片を1枚切り出し、建築基準法第2条第9号及び建築基準法施行令第108条の2に基づく防耐火試験方法と性能評価規格に従うコーンカロリーメーター試験機による発熱性試験において、不燃材料の基準を満たしているのか確認を行った。なお、不燃材料の基準は、加熱開始後20分間の総発熱量が8MJ/m2以下であり、加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えず、開始後20分間、防火上有害な裏面まで貫通する亀裂や穴が生じないことである。表においては、いずれの試験片も加熱開始後20分間、最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えなかったため、総発熱量と損傷や変形の有無を示した。
【0082】
【0083】
【0084】
表1に示した通り、実施例1~6で作製したグラスウールボードは、グラスウールとガラス繊維とメタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有しており、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%以上15質量%以下である。また、グラスウールボードの密度は0.30g/cm3以上0.55g/cm3以下であり、厚さが1mm以上25mm以下である。さらに、グラスウールの含有率が45質量%以上85質量%以下であり、ガラス繊維の含有率が10質量%以上40質量%以下である。実施例1~6で作製したグラスウールボードは、ハンドリング性、断熱性、耐火性、不燃性のいずれの評価も優れていた。断熱性については、厚い程、断熱性に優れる傾向が確認された。
【0085】
実施例7で作製したグラスウールボードは、ガラス繊維の含有率が10質量%未満である。不燃性のコーンカロリーメーター試験において、裏面まで貫通する亀裂や穴や損傷は見られなかったが、熱による収縮変形が見られた。
【0086】
実施例8で作製したグラスウールボードは、ガラス繊維の含有率が40質量%を超えている。グラスウールボードのエッジや表面を触った際に少しチクチク感が感じられ、エッジのカット面がややぎざぎざになり、ハンドリング性がやや劣る結果となった。また、実施例2と比較した場合、実施例8の方が、断熱性がやや劣る結果であった。
【0087】
実施例9で作製したグラスウールボードは、グラスウールの含有率が45質量%であり、ガラス繊維の含有率が50質量%を超えている。グラスウールボードのエッジや表面を触った際に少しチクチク感が感じられ、エッジのカット面がややぎざぎざになり、ハンドリング性がやや劣る結果となった。また、実施例1と比較した場合、グラスウールの含有率が少ない実施例9の方が、断熱性がやや劣る結果となった。
【0088】
実施例10で作製したグラスウールボードは、グラスウールの含有率が85質量%を超え、ガラス繊維の含有率が10質量%未満である。不燃性のコーンカロリーメーター試験において、裏面まで貫通する亀裂や穴や損傷は見られなかったが、熱による収縮変形が見られ、グラスウールボード表面の毛羽立ちが見られ、グラスウールボードの表面やエッジを触った際に少しチクチク感が感じられ、ハンドリング性がやや劣る結果となった。
【0089】
比較例1で作製したグラスウールボードは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物を含有していない。軽量で不燃性に優れていた。しかし、バーナー炎を照射した場合、表面が溶融して徐々に穴が進行し、耐火性に劣ることが判った。また、実施例6と比較した場合、断熱性が劣る結果となった。
【0090】
比較例2で作製したグラスウールボードは、ガラス繊維を含有していない。熱プレス加工工程において、層間剥離が発生しやすく、ハンドリング性に劣る結果であった。また、バーナー試験において、ボード表面に溶融による凹みが見られ、不燃性のコーンカロリーメーター試験において、裏面まで貫通する亀裂や穴や損傷は見られなかったが、熱による変形が見られた。
【0091】
比較例3で作製したグラスウールボードは、グラスウールを含有していない。ボードのエッジや表面を触った際にチクチク感が感じられ、エッジのカット面がぎざぎざになり、ハンドリング性が劣る結果となった。また、実施例1と比較した場合、低密度となりやすく、断熱性と耐火性に劣る結果となった。
【0092】
比較例4で作製したグラスウールボードは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が5質量%未満である。層間強度が弱く、層間剥離が発生した。また、ボード表面からのグラスウールやガラス繊維の脱落も多く、ハンドリング性に著しく劣る結果となった。
【0093】
比較例5で作製したグラスウールボードは、メタ系芳香族ポリアミドからなるパルプ状物の含有率が15質量%を超えている。ハンドリング性、断熱性及び耐火性は問題無いものの、総発熱量が8MJ/m2を超え、不燃性が達成できないことが判った。
【0094】
比較例6で作製したグラスウールボードは、厚さが1mm未満である。ボードを持ち上げようとした際にボードが折れ曲がり、ボードの強度面も弱く、エッジに亀裂が入りやすく、ハンドリング性に劣る結果であった。
【0095】
比較例7で作製したグラスウールボードは、厚さが25mmを超えている。三六判の質量は15.7kgで重量感があり、運搬が2人作業となり、ハンドリング性に劣る結果であった。
【0096】
比較例8で作製したグラスウールボードは、密度が0.30g/cm3未満である。層間強度が弱く、層間剥離が発生した。また、ボード表面からのグラスウールやガラス繊維の脱落も多く、ハンドリング性に著しく劣る結果となった。
【0097】
比較例9で作製したグラスウールボードは、密度が0.55g/cm3を超えている。ハンドリング性、断熱性及び耐火性は問題無いものの、総発熱量が8MJ/m2を超え、不燃性が達成できないことが判った。