(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112070
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】クラブヘッド計測用マークおよび画像処理装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20220726BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220726BHJP
G09F 3/00 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
A63B69/36 541W
H04N7/18 N
H04N7/18 K
H04N7/18 C
G09F3/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007703
(22)【出願日】2021-01-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年2月28日有限会社AMPLUSが、株式会社Y・G・C(東京都千代田区東神田3-4-4 RKビル1階)において、倉地 伸尚、カラサワ カズシゲおよび齋藤 大輔が発明したクラブヘッド計測用マークおよびそのクラブヘッド計測用マークを検出する画像処理装置を納品したことによる公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年9月14日有限会社AMPLUSが、宮澤 成毅(長野県岡谷市川岸東5-6-12)において、倉地 伸尚、カラサワ カズシゲおよび齋藤 大輔が発明したクラブヘッド計測用マークおよびそのクラブヘッド計測用マークを検出する画像処理装置を納品したことによる公開
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月23日有限会社AMPLUSが、株式会社ラックゴルフアカデミー五反田(東京都品川区東五反田2-7-14 五反田栗の木ビル4階)において、倉地 伸尚、カラサワ カズシゲおよび齋藤 大輔が発明したクラブヘッド計測用マークおよびそのクラブヘッド計測用マークを検出する画像処理装置を納品したことによる公開
(71)【出願人】
【識別番号】513005349
【氏名又は名称】有限会社AMPLUS
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】倉地 伸尚
(72)【発明者】
【氏名】カラサワ カズシゲ
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA05
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC04
5C054FC05
5C054FC12
5C054FC13
5C054FC14
5C054FC15
5C054FE05
5C054FE09
5C054GB01
5C054HA05
5C054HA16
(57)【要約】
【課題】クラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることができるクラブヘッド計測用マークを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブのクラブヘッドの状態に関する情報を計測するために用いられ、クラブヘッドに設けられるクラブヘッド計測用マークであって、周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部Cと、中央部Cの周囲を囲むように設けられ、中央部Cよりも明度が高いパターンから形成される周囲部Phとを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブのクラブヘッドの状態に関する情報を計測するために用いられ、前記クラブヘッドに設けられるクラブヘッド計測用マークであって、
周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部と、前記中央部の周囲を囲むように設けられ、前記中央部よりも明度が高いパターンから形成される周囲部とを備えたクラブヘッド計測用マーク。
【請求項2】
前記中央部が円形であり、前記周囲部がドーナツ形状であり、
前記周囲部の幅が、前記中央部の半径よりも小さい請求項1記載のクラブヘッド計測用マーク。
【請求項3】
前記中央部の最大輝度値が32以下であって、前記中央部の最大輝度値と最小輝度値の差が15以下である請求項1または2記載のクラブヘッド計測用マーク。
【請求項4】
前記中央部と前記周囲部とから構成されるドーナツ形状マークが2つ並べられて一体的に構成されている請求項1から3いずれか1項記載のクラブヘッド計測用マーク。
【請求項5】
前記クラブヘッドに貼付可能なように糊が塗布されたシールである請求項1から4いずれか1項記載のクラブヘッド計測用マーク。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項記載のクラブヘッド計測用マークが設けられたクラブヘッドを有するゴルフクラブをスイングした際に、前記クラブヘッドを時系列に撮影した撮影画像を取得し、該各撮影画像から前記クラブヘッド計測用マークを検出するマーク検出部と、
前記マーク検出部によって検出された前記クラブヘッド計測用マークに基づいて、前記クラブヘッドの状態に関する情報を生成するヘッド情報生成部とを備えた画像処理装置。
【請求項7】
前記マーク検出部が、所定の前記撮影画像から前記クラブヘッド計測用マークが予め設定された個数よりも多く検出された場合には、前記クラブヘッド計測用マークが予め設定された個数だけ検出されたその他の撮影画像の前記クラブヘッド計測用マークの情報に基づいて、前記所定の撮影画像に含まれる前記クラブヘッド計測用マークを特定する請求項6記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブのクラブヘッドの状態に関する情報を計測するために用いられるクラブヘッド計測用マークおよびそのクラブヘッド計測用マークをその撮影画像から検出する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルファーのスイングを撮影して、その撮影情報を提供する装置が種々提案されている。スイングの撮影情報をゴルファーに提供することによって、ゴルフの上達を促したり、そのゴルファーに適したゴルフクラブの選択を促すことができる。
【0003】
上述した装置として、たとえば特許文献1には、ゴルフクラブをスイングしたときのゴルフクラブとゴルフボールとを上から撮影し、その撮影されたクラブヘッドとゴルフボールの画像を、実物大で床面に投影表示させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ゴルファーのスイングで重要な要素として、クラブヘッドのフェイス面の動きやスイング中におけるクラブヘッドの速度などがある。スイング中のクラブヘッドのフェイス面の動きやクラブヘッドの速度を認識することによって、ゴルファーのスイングの特徴を把握することができ、また、その特徴に合わせたゴルフクラブを選択することができる。
【0006】
しかしながら、たとえば特許文献1のように移動中のクラブヘッドを上方から撮影しただけでは、その撮影画像からクラブヘッドの位置やフェイス面を高精度に検出することは難しく、クラブヘッドの速度やフェイス面の動きなどといったクラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることは難しい。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、クラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることができるクラブヘッド計測用マークおよび画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のクラブヘッド計測用マークは、ゴルフクラブのクラブヘッドの状態に関する情報を計測するために用いられ、クラブヘッドに設けられるクラブヘッド計測用マークであって、周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部と、中央部の周囲を囲むように設けられ、中央部よりも明度が高いパターンから形成される周囲部とを備える。
【0009】
また、上記本発明のクラブヘッド計測用マークは、中央部を円形とし、周囲部をドーナツ形状とすることができ、周囲部の幅を、中央部の半径よりも小さくすることが好ましい。
【0010】
また、上記本発明のクラブヘッド計測用マークは、中央部の最大輝度値を32以下とし、中央部の最大輝度値と最小輝度値の差を15以下とすることが好ましい。
【0011】
また、上記本発明のクラブヘッド計測用マークは、中央部と周囲部とから構成されるドーナツ形状マークを2つ並べて一体的に構成することができる。
【0012】
また、上記本発明のクラブヘッド計測用マークは、クラブヘッドに貼付可能なように糊が塗布されたシールとすることが好ましい。
【0013】
本発明の画像処理装置は、上記クラブヘッド計測用マークが設けられたクラブヘッドを有するゴルフクラブをスイングした際に、クラブヘッドを時系列に撮影した撮影画像を取得し、その各撮影画像からクラブヘッド計測用マークを検出するマーク検出部と、マーク検出部によって検出されたクラブヘッド計測用マークに基づいて、クラブヘッドの状態に関する情報を生成するヘッド情報生成部とを備える。
【0014】
また、上記本発明の画像処理装置において、マーク検出部は、所定の前記撮影画像からクラブヘッド計測用マークが予め設定された個数よりも多く検出された場合には、クラブヘッド計測用マークが予め設定された個数だけ検出されたその他の撮影画像のクラブヘッド計測用マークの情報に基づいて、所定の撮影画像に含まれるクラブヘッド計測用マークを特定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のクラブヘッド計測用マークおよび画像処理装置によれば、周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部と、中央部よりも明度が高いパターンから形成される周囲部とを備えるようにしたので、クラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の画像処理装置の一実施形態を用いたゴルフインパクト解析システムの概略構成を示す図
【
図2】クラブヘッドに設けられたドーナツ形状マークの一例を示す図
【
図3】ドーナツ形状マークの詳細を説明するための図
【
図4】撮影画像からドーナツ形状マークを検出する方法の一例を説明するためのフローチャート
【
図5】撮影画像からドーナツ形状マークを検出する方法の一例を説明するためのフローチャート
【
図6】ラプラシアンフィルタ処理前の撮影画像の一例を示す図
【
図7】ラプラシアンフィルタ処理済みの撮影画像の一例を示す図
【
図8】濃淡反転処理後の切り出し画像の一例を示す図
【
図9】2値化レベル(閾値)を±6の範囲で変化させた場合の2値化処理結果の一例を示す図
【
図10】1回のゴルフクラブのスイングによって生成されたフェイス面画像の群と軌道画像の投影表示例を示す図
【
図11】2回のゴルフクラブのスイングによって生成されたフェイス面画像の群および軌道画像TGの投影表示例を示す図
【
図12】クラブヘッド計測用マークのその他の例を示す図
【
図13】5種類の黒色シートを撮影した撮影画像の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のクラブヘッド計測用マークおよび画像処理装置の一実施形態を用いたゴルフインパクト解析システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のゴルフインパクト解析システムは、クラブヘッドの状態に関する情報を計測するためのクラブヘッド計測用マークに特徴を有するものであるが、まずは、ゴルフインパクト解析システム全体について説明する。
図1は、本実施形態のゴルフインパクト解析システム1の概略構成図である。
【0018】
本実施形態のゴルフインパクト解析システム1は、
図1に示すように、撮影装置10と、画像処理装置20と、投影装置30とを備えている。撮影装置10と画像処理装置20との間および画像処理装置20と投影装置30との間は、有線または無線によって通信可能に接続されており、種々の信号のやり取りが可能に構成されている。
【0019】
撮影装置10は、ゴルファー40がゴルフクラブ41をスイングした際のそのゴルフクラブ41のクラブヘッド41aを上方から撮影する。撮影装置10は、ゴルフクラブ41をスイングするゴルファー40よりも上方に設置され、クラブヘッド41aが床面の近傍を通過する範囲を撮影可能なように、上記範囲の真上に設置される。具体的には、撮影装置10は、たとえば床面上に予め設定されたゴルフボール42の設置位置Pを中心近傍に含む所定の撮影範囲Rの真上に設置される。撮影装置10は、たとえばスタンドなどの支持部材に設置してもよいし、天井に設置するようにしてもよい。
【0020】
撮影装置10は、照明部11と、カメラ部12とを備えている。本実施形態の照明部11は、赤外光源を有し、その赤外光源から発せられた赤外光を上記撮影範囲Rに照射する。また、カメラ部12は、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge-coupled devices)イメージセンサなどの撮像素子と、その撮像素子の前面に配置されたIRフィルタを有する。IRフィルタは、可視光を吸収し、赤外光を透過する光学フィルタである。
【0021】
撮影装置10は、画像処理装置20の後述する制御部22から出力された制御信号に基づいて、照明部11から赤外光を出射し、カメラ部12によって上記撮影範囲Rの撮影を行う。具体的には、撮影装置10は、所定のフレームレートで照明部11から赤外光を出射するとともに、上記撮影範囲Rを通過するクラブヘッド41aを撮影する。撮影装置10によって所定のフレームレートで撮影された撮影画像は、画像処理装置20に出力される。
【0022】
画像処理装置20は、コンピュータなどから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random access memory)などの半導体メモリ、ハードディスクなどのストレージ、並びに通信I/Fなどのハードウェアを備える。
【0023】
画像処理装置20は、画像生成部21と、制御部22と、表示部23と、入力部24とを備えている。
【0024】
画像処理装置20の半導体メモリまたはハードディスクには、ゴルフインパクト解析プログラムがインストールされている。そして、このプログラムがCPUによって実行されることによって、上述した画像生成部21および制御部22が機能する。なお、本実施形態においては、上述した各部の機能を全てゴルフインパクト解析プログラムによって実行するようにしたが、これに限らず、一部または全部の機能をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の電気回路などのハードウェアから構成するようにしてもよい。
【0025】
以下、画像処理装置20の各部について詳細に説明する。
【0026】
画像生成部21は、撮影装置10によって時系列に撮影された複数のクラブヘッド41aの撮影画像を取得し、その取得した複数の撮影画像に基づいて、各クラブヘッド41aのフェイス面を直線で表したフェイス面画像の群を生成する。なお、本明細書全体通してフェイス面という言葉を使用しているが、このフェイス面は、クラブヘッド41aにおいてゴルフボールがインパクトする面のことを意味するが、フェース面という言葉で表されることもある。すなわち本明細書で使用されているフェイス面とフェース面は同じ意味である。また、本実施形成の画像生成部21は、本発明のマーク検出部およびヘッド情報生成部に相当する。
【0027】
具体的には、ゴルファー40がスイングするゴルフクラブ41のクラブヘッド41aの上面には、
図2に示すように、フェイス面41bの指標となる2つのドーナツ形状(二重丸型)マークM1,M2が設けられる。ドーナツ形状マークM1,M2は、本発明のクラブヘッド計測用マークに相当するものである。
【0028】
ドーナツ形状マークM1,M2は、クラブヘッド41aに貼付可能なように糊が塗布されたシールである。そして、ドーナツ形状マークM1,M2は、クラブヘッド41aの上面に、フェイス面41bに沿って所定の間隔を空けて貼付される。
【0029】
ドーナツ形状マークM1,M2は、
図3に示すように、周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部Cと、中央部Cの周囲を囲むように設けられ、中央部Cよりも明度が高いパターンから形成される周囲部Phとを備える。
【0030】
本実施形態では、ドーナツ形状マークM1,M2の中央部Cは円形のパターンで形成され、周囲部Phはドーナツ形状で形成される。そして、中央部Cは黒色で塗りつぶされており、周囲部Phは白色である。
【0031】
そして、本実施形態のドーナツ形状マークM1,M2は、その周囲部Phの幅wが、中央部Cの半径rよりも小さくなるように形成されている。周囲部Phの幅wは、中央部Cの半径rの1/2以下であることが好ましく、より好ましくは1/3以下である。具体的には、たとえば周囲部Phの幅wを1.5mmとし、中央部Cの半径rを4.5mmとすることができる。
【0032】
このように周囲部Phの幅wを中央部Cの半径rよりも小さくなるようにする理由は、周囲部Phの幅wが大きい場合、撮影装置10によって撮影した際、その撮影画像において周囲部Phの画像が白飛びし、中央部Cの検出精度に影響を与える場合があるからである。
【0033】
本実施形態では、周囲部Phの幅wを中央部Cの半径rよりも小さくすることによって、上述した白飛びの影響を抑制することができ、中央部Cの検出精度を向上させることができる。
【0034】
また、上述したように中央部Cは黒色で形成されるが、黒色で形成したとしてもその材料等によっては、撮影装置10によって撮影した際、中央部Cにおいて赤外光が反射し、中央部Cの検出精度に影響を及ぼす。したがって、中央部Cの材料としては、中央部Cの撮影画像の最大輝度値が32以下であり、かつ最大輝度値と最小輝度値との差が15以下であることが好ましい。なお、撮影画像の各画素は8ビット(256階調)であり、輝度値は0-255の値をとるものとする。また、輝度値の測定条件については、後の実施例および比較例において説明する。
【0035】
上述した輝度値の範囲となるように中央部Cの材料を選択することによって、中央部Cにおける赤外光の反射を抑制することができ、中央部Cの検出精度を向上させることができる。
【0036】
画像生成部21は、時系列に撮影された各撮影画像から、上述したドーナツ形状マークM1,M2を検出する。そして、画像生成部21は、ドーナツ形状マークM1の中央部Cの中心とドーナツ形状マークM2の中央部Cの中心とを直線で結ぶことによって、フェイス面41bを直線で表したフェイス面画像を生成する。
【0037】
ここで、撮影画像からドーナツ形状マークM1,M2を検出する方法について、
図4および
図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、撮影画像に対してラプラシアンフィルタ処理を施すことによってエッジ強調処理を施す(S10)。ラプラシアンフィルタとしては、たとえば3×3のフィルタが用いられる。
図6は、ラプラシアンフィルタ処理前の撮影画像の一例を示す図であり、
図7は、ラプラシアンフィルタ処理済みの撮影画像の一例を示す図である。
図6に示すように、撮影画像中には、ドーナツ形状マークM1,M2の他に、ゴルフボールの反射画像やクラブヘッド41aによる反射と思われる輝点も含まれているが、上述したラプラシアンフィルタ処理を行うことによって、これらを薄くすることができ、ドーナツ形状マークM1,M2の誤検知を減らすことができる。
【0039】
そして、ラプラシアンフィルタ処理が施された撮影画像に対して2値化処理が施される(S12)。2値化処理としては、たとえば判別分析法による2値化処理(大津の2値化処理)が施される。
【0040】
続いて、2値化処理が施された撮影画像に対してオープニング処理が施される(S14)。これにより、ドーナツ形状マークM1,M2以外の小さいパターンや細いパターンを除去したり、ドーナツ形状マークM1,M2をより明確にすることができる。
【0041】
次に、オープニング処理が施された撮影画像に対してラベリング処理が施される(S16)。
【0042】
そして、ラベリング処理によって生成されたラベル数が100以上である場合には(S18,NO)、ドーナツ形状マークM1,M2を適切に検出できていないものとして処理を終了する。
【0043】
一方、ラベル数が100未満である場合には(S18,YES)、ラベル毎の領域を3倍した範囲を決定し、その範囲に含まれる撮影画像(
図6に示す撮影画像の一部)を切り出す(S20)。
【0044】
そして、S20で切り出された各画像(以下、切り出し画像という)に対して、2×2の膨張フィルタ処理が施される(S22)。各切り出し画像内には、ドーナツ形状マークM1,M2の周囲部Phの白い部分が含まれるが、この白い部分が途中で途切れて検出される場合もある。上述した膨張フィルタ処理を切り出された各画像に施すことによって、上述した途切れを無くすことができ、周囲部Phの検出精度を上げることができる。
【0045】
そして、上述した各切り出し画像に対して膨張フィルタ処理を施した後、所定のラベルに対応する切り出し画像の最大輝度値が30以下の場合には(S22,NO)、次のラベルに対応する切り出し画像に移行し、最大輝度値が30を超える場合には(S22,YES)、そのラベルに対応する切り出し画像は、ドーナツ形状マークM1,M2である可能性があるので、ドーナツ形状マークM1,M2の候補として残す(S28)。なお、最大輝度値が30以下の切り出し画像については、ドーナツ形状マークM1,M2の候補とせず、以降の処理は行わない。
【0046】
次いで、S20で切り出した切り出し画像のうち、ドーナツ形状マークM1,M2の候補として残った切り出し画像に対して濃淡反転処理を施す(S30)。
図8は、濃淡反転処理が施された切り出し画像の一例を示す図である。
【0047】
そして、濃淡反転処理が施された切り出し画像に対して、2値化処理が施される(S32)。2値化処理としては、たとえば判別分析法による2値化処理(大津の2値化処理)が施される。
【0048】
次いで、S32の2値化処理で用いた2値化レベル(閾値)を中心とした±6の範囲において2ピッチ間隔で2値化レベルを変化させて再び2値化処理を施す(S34)。これにより、1つの切り出し画像に対して、
図9に示すような7つの2値化画像が生成される。そして、2値化画像の白い部分をマスクして再度ラベリングを行う(S36)。
【0049】
その後、各2値化画像の中心に最も近いラベルの輪郭を抽出する(S38)。そして、S38で抽出した輪郭を楕円フィッティングする(S40)。そして、7つの2値化画像についてそれぞれ抽出された楕円の面積の中央値を求め、その中央値の楕円と、中央値から大きい方に向かって2番目までの楕円と、中央値から小さい方に向かって2番目までの楕円とについて、すなわち7つの抽出された楕円のうち面積が最も大きい楕円と最も小さい楕円を除く5つの楕円について、その高さおよび幅の平均値を求める。なお、楕円の高さおよび幅とは、撮影画像の座標系をx,yの2次元座標とした場合、高さはy方向の長さ、幅はx方向の長さである。
【0050】
そして、楕円の平均値の高さおよび幅が予め設定された閾値の範囲内であり、かつその楕円に対応する切り出し画像内の部分の輝度値が100以上である場合には、その輪郭をドーナツ形状マークM1,M2として認識する(S42)。
【0051】
上述したS10~S42を各撮影画像に施し、各撮影画像に含まれるドーナツ形状マークM1,M2を検出する。
【0052】
ここで、本実施形態のようにドーナツ形状マークM1,M2ではなく、たとえば単純な丸、点または線などが一様の同一色のマークをクラブヘッド41aに添付した場合、機械的な画像処理を用いて白黒画像上のマーク位置認識を行う場合、2値化判定処理などで弊害がある。具体的には、真上から照射された近赤外線照明が、上記マーク以外の部分にあたって反射される反射光と、マークから反射された反射光とが白黒画像上において見分けが付かなくなり、マークの位置を誤認識しやすくなる。すなわち、クラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることは難しい。
【0053】
また、上述したようなマーク以外の部分からの反射を防止するため、クラブヘッド41aの撮影範囲の面全体に対して黒色のシールを貼り、その上に白色の丸のシールを貼って画像処理によって検出方法も考えられるが、比較的大きな黒色のシールをクラブヘッド41aに貼る必要があるため、クラブヘッド41aの表面に黒色のシールの糊が残ってしまう問題があり、使い勝手が良くない。
【0054】
これに対し、本実施形態のドーナツ形状マークM1,M2は、周囲よりも明度が低いパターンから形成される中央部Cと、中央部Cよりも明度が高いパターンから形成される周囲部Phとを備える。すなわち、たとえばクラブヘッド41aの撮影の際に均一照明を与えた場合、クラブヘッド41aからの光の反射の特性として、ドーナツ形状マークM1,M2以外の箇所の反射は、その反射部の中央の明度が最も明るくなるが、本実施形態のドーナツ形状マークM1,M2は、中央部Cの明度が低く、周囲部Phの明度が高いので、上記反射部と明確に区別することができる。したがって、上述したような誤認識を回避することができ、クラブヘッドの状態に関する情報を高精度に得ることができる。
【0055】
また、ドーナツ形状マークM1,M2は、クラブヘッド41aの大きさに対して小さいシールで形成することができるので、大きな黒色のシールをクラブヘッド41aに貼った場合のような糊残りを防止することができ、使い勝手も良い。
【0056】
なお、本来であれば、上述したドーナツ形状マークM1,M2の検出処理を行うことによって、1枚の撮影画像に対して2つのドーナツ形状マークM1,M2が検出されるはずである。しかしながら、たとえばクラブヘッド41aの反射などによって3つ以上のパターンが、ドーナツ形状マークとして検出される可能性がある。このような場合において、2つのドーナツ形状マークM1,M2を特定する処理について、以下に説明する。
【0057】
まず、画像生成部21は、クラブヘッド41aがゴルフボール42にインパクトする時点の直前の撮影画像と直後の撮影画像を特定し、これらの撮影画像から2つのドーナツ形状マークM1,M2のみが検出されているか否かを確認する。
【0058】
そして、画像生成部21は、これらの撮影画像から2つのドーナツ形状マークM1,M2のみが検出されている場合には、その検出されているドーナツ形状マークM1,M2の高さおよび幅と、ドーナツ形状マークM1とドーナツ形状マークM2との距離を算出する。
【0059】
そして、3つ以上のパターンがドーナツ形状マークとして検出された撮影画像については、その3つのパターンのうち、上述したドーナツ形状マークM1,M2の高さおよび幅と、ドーナツ形状マークM1とドーナツ形状マークM2との距離が最も近い2つのパターンを特定し、その2つのパターンをドーナツ形状マークM1,M2として検出する。
【0060】
なお、クラブヘッド41aがゴルフボール42にインパクトする時点の直前の撮影画像と直後の撮影画像の両方において、3つ以上のパターンが検出されている場合には、さらにインパクトの時点を起点として、前後方向に1フレームずつ順次進めた撮影画像を特定し、2つのドーナツ形状マークM1,M2のみが検出されているか否かを確認するようにすればよい。
【0061】
以上、画像生成部21によるフェイス面画像の群を生成について説明したが、画像生成部21は、フェイス面画像の群の他に、クラブヘッド41aの軌道を線で表した軌道画像を生成する。
【0062】
具体的には、画像生成部21は、各撮影画像からクラブヘッド41aの画像部分を抽出し、その抽出したクラブヘッド41aの各画像部分の中心位置を算出し、算出した複数の中心位置を結んで曲線近似することによって軌道画像を生成する。
【0063】
次に、
図1に戻り、制御部22は、CPUを備え、ゴルフインパクト解析システム1全体を制御する。具体的には、制御部22は、通信I/Fを介して撮影装置10と通信し、撮影装置10に対して撮影開始タイミングや撮影のフレームレートなどを指示する制御信号を出力する。
【0064】
撮影開始タイミングについては、たとえばユーザが、マウスやキーボードなどを有する入力部24を用いて指示入力するようにしてもよいし、撮影範囲R内のゴルフボールの設置位置Pにゴルフボール42が設置されたことを検出し、その検出信号に応じて撮影開始するようにしてもよい。ゴルフボール42の設置検出については、接触センサや光学センサを用いてもよいし、撮影装置10によって撮影された撮影画像を利用するようにしてもよい。撮影画像を利用する方法としては、たとえばゴルフクラブ41のスイングが開始される前に、撮影装置10によって撮影範囲の前撮影を行う。前撮影によって撮影された撮影画像は制御部22に入力される。
【0065】
そして、制御部22は、撮影画像内の予め設定された位置にゴルフボール42の画像が現れたことを検出することによって、ゴルフボール42の設置を検出する。制御部22は、ゴルフボール42の設置に応じて本撮影を開始し、クラブヘッド41aの撮影を開始する。
【0066】
また、制御部22は、画像生成部21によって生成されたフェイス面画像の群と軌道画像を投影装置30に出力し、投影装置30によって床面に対してフェイス面画像の群と軌道画像を投影表示させる。
【0067】
図10は、1回のゴルフクラブ41のスイングによって生成されたフェイス面画像FGの群と軌道画像TGの投影表示例を示す図である。投影装置30は、床面に対して、たとえば
図10に示すようにフェイス面画像FGの群と軌道画像TGとを投影表示する。なお、
図10に示すCGは、クラブヘッドを表す3次元オブジェクト画像である。
【0068】
3次元オブジェクト画像CGとは、撮影装置10によって撮影された撮影画像とは異なり、クラブヘッドを模式的に3次元画像として表した画像である。このクラブヘッドを表す3次元オブジェクト画像CGも画像生成部21によって生成される。そして、制御部22が、その3次元オブジェクト画像CGを投影装置30に出力し、投影装置30によって床面に投影表示される。
【0069】
図10においては、軌道画像TG上の所定の位置のクラブヘッドの3次元オブジェクト画像CGを示しているが、投影装置30が、制御部22による制御により、軌道画像TGの線に沿って3次元オブジェクト画像CGを移動させてアニメーション表示するようにしてもよい。
【0070】
また、
図10においては、1回のスイングによるフェイス面画像FGの群と軌道画像TGを投影表示した例であるが、2回以上のスイングよるフェイス面画像の群と軌道画像とを重ねて投影表示するようにしてもよい。
図11は、1回目のスイングによるフェイス面画像FG1の群および軌道画像TG1の組と、2回目のスイングによるフェイス面画像FG2の群と軌道画像TG2の組を投影表示した例である。1回目のスイングによるフェイス面画像FG1の群および軌道画像TG1の組と、2回目のスイングによるフェイス面画像FG2の群と軌道画像TG2の組とは、異なる色で投影表示することが好ましい。
【0071】
また、制御部22は、画像生成部21によって生成されたフェイス面画像の群と軌道画像を、画像処理装置20の表示部23にも表示させる。
【0072】
表示部23は、たとえば液晶ディスプレイなどの表示デバイスを備える。また、入力部24は、たとえばマウスやキーボードなどの入力デバイスを備える。また、画像処理装置20をタブレット端末から構成し、表示部23および入力部24をタッチパネルから構成するようにしてもよい。
【0073】
次に、投影装置30は、プロジェクタから構成され、上述したように画像処理装置20の制御部22による制御によって、床面に対してフェイス面画像の群および軌道画像を投影表示する。投影装置30は、ゴルフクラブ41をスイングするゴルファーよりも上方又は、短焦点・近接レンズなどを用いて下方に設置され、撮影装置10に隣接させて設置される。また、投影装置30は、フェイス面画像の群および軌道画像を床面上に対して、十分な明るさかつ明瞭に表示可能な投射距離と輝度を有する。
【0074】
投影装置30は、床面上のゴルフボール42の設置位置Pを中心近傍に含む所定の投影範囲にフェイス面画像の群および軌道画像を投影表示可能なように設置される。投影装置30は、たとえば撮影装置10とともにスタンドなどの支持部材に設置してもよいし、天井に設置するようにしてもよい。
【0075】
また、投影装置30は、上述したように床面に対してクラブヘッドの3次元オブジェクト画像を投影表示する。
【0076】
なお、上記実施形態においては、ドーナツ形状マークM1,M2が設けられたクラブヘッド41aを撮影装置10によって真上から撮影するようにしたが、これに限らず、たとえば撮影装置10として、ステレオカメラを設け、ドーナツ形状マークM1,M2が設けられたクラブヘッド41aをステレオ撮影するようにしてもよい。
【0077】
これにより、ドーナツ形状マークM1,M2の3次元空間上の位置を検出することができ、クラブヘッド41aの動きをより詳細に解析することができる。
【0078】
また、上記実施形態においては、ドーナツ形状マークM1とドーナツ形状マークM2とを別々に構成するようにしたが、これに限らず、
図12に示すように、たとえばクラブヘッド41aのフェイス面の長さと同程度の長さの長方形のシールの両端部にドーナツ形状マークM1とドーナツ形状マークM2を2つ並べて配置することによって一体的に構成するようにしてもよい。このように構成することによって、ドーナツ形状マークM1,M2が設けられた長方形のシールの長さ方向とフェイス面とが平行となるように、長方形のシールをクラブヘッド41aに貼付することにより、フェイス面の方向をより正確に検出することができる。
【0079】
また、上記実施形態においては、ドーナツ形状マークとしたが、上述した中央部と周囲部を有する限り、クラブヘッド計測用マークの形状はこれに限らず、たとえば2重の四角形や三角形など2重の多角形としてもよい。
【0080】
さらに、たとえば複数のゴルフクラブ41のフェイス面画像の群や軌道画像を生成する場合、ゴルフクラブ41毎にクラブヘッド計測用マークの形状を変更するようにしてもよい。これにより、複数のゴルフクラブ41を自動的に識別することができ、ゴルフクラブ41毎にフェイス面画像の群や軌道画像を記憶および管理することができる。
【実施例0081】
次に、上記本実施形態のドーナツ形状マークM1,M2の実施例および比較例を下表1に示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。表1では、ドーナツ形状マークの中央部に使用される材料としての5種類の黒色シートBL1~BL5の最大輝度値、最小輝度値および最大輝度値と最小輝度値との差の計測結果と、各黒色シートBL1~BL5をドーナツ形状マークの中央部として使用した場合の検出精度を「高」および「低」で示している。また、
図13は、5種類の黒色シートBL1~BL5を撮影した撮影画像を示している。表2では、5種類の黒色シートBL1~BL5の撮影条件と照明条件を示している。
【0082】
表1および
図13に示すように、実施例1(BL4)および実施例2(BL5)については、最大輝度値が32以下であり、最大輝度値と最小輝度値との差が15以下であり、ドーナツ形状マークの中央部として使用した場合、高精度な検出が可能であった。
【0083】
実施例3(BL1)については、最大輝度値と最小輝度値との差は15以下であるが、最大輝度値が35であったので、ドーナツ形状マークの中央部として使用した場合、輝度値の高い部分がノイズとして検出され、検出精度は低かった。
【0084】
実施例4(BL2)については、反射率が高く、最大輝度値が255であり、最大輝度値と最小輝度値との差も238以下であった。ドーナツ形状マークの中央部として使用した場合、輝度値の高い部分や輝度値の差の大きい部分がノイズとして検出され、検出精度は最も低かった。
【0085】
実施例5(BL3)については、最大輝度値が32を超えており、最大輝度値と最小輝度値との差も15を超えていた。ドーナツ形状マークの中央部として使用した場合、輝度値の高い部分や輝度値の差の大きい部分がノイズとして検出され、検出精度は低かった。
【表1】
【表2】