(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112082
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】液状物質収容容器
(51)【国際特許分類】
B65D 33/24 20060101AFI20220726BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B65D33/24
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007723
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】505180313
【氏名又は名称】株式会社モリモト医薬
(72)【発明者】
【氏名】盛本 修司
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA26
3E064BA36
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC04
3E064BC18
3E064EA12
3E064EA16
3E064EA30
3E064HN06
3E064HN70
3E064HS05
(57)【要約】
【課題】重なったシートの間に密封された液状物質を排出する際の操作が容易でかつ不用意な流出を防止し、簡易な構造で再封止して残りの液状物質の保存と再開封による使用を可能にする。
【解決手段】液状物質2の周囲のシート1の一部に、小さい接合強度でシート1が接合された弱接合領域1dが形成され、液状物質2の存在領域2Aから弱接合領域1dを経由して排出口3aに至る排出路3が形成され、液状物質2の存在領域2Aから排出路3に向かう方向に交差する折り目1fが弱接合領域1dと液状物質2の存在領域2Aとの境界箇所を通り、折り目1fによって区分された2つのシート部分の一方に、折り目1fの方向と交差する方向に延伸した舌片1eが排出路3に連なるように形成され、区分された2つのシート部分の他方に、外縁より舌片1eの延伸方向と交差する向きのスリットs1が液状物質2の存在領域2Aに連なるように形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なったシートの間に液状物質が収容され、前記液状物質の周囲の前記シートが互いに接合されて前記液状物質を密封した液状物質収容容器において、
前記液状物質の周囲の前記シートの一部に、他の部分の前記シートの接合強度よりも小さい接合強度で前記シートが接合された弱接合領域が形成され、
前記液状物質の存在領域から前記弱接合領域を経由して外部に開口した排出口に至る排出路が形成され、
前記液状物質の存在領域から前記排出路に向かう方向と交差する折り目が前記弱接合領域又は前記弱接合領域と前記液状物質の存在領域との境界箇所を通るように前記シートに形成され、
前記折り目によって区分された前記シートの2つのシート部分の一方に、前記折り目の方向と交差する方向に延伸した舌片が前記排出路又は前記液状物質の存在領域の一方に連なるように形成され、前記折り目によって区分された前記シートの2つのシート部分の他方に、シート外縁より前記舌片の延伸方向と交差する向きに切り込まれたスリットが前記排出路又は前記液状物質の存在領域の他方に連なるように形成されている液状物質収容容器。
【請求項2】
前記折り目から前記排出口までの距離が、前記折り目から前記舌片の基端部又は前記スリットまでの距離よりも短い請求項1記載の液状物質収容容器。
【請求項3】
前記排出口が前記弱接合領域の前記液状物質の存在領域とは反対側の端部に形成されている請求項2記載の液状物質収容容器。
【請求項4】
前記舌片の基端部に、前記スリットの切り込み方向と同じ向きに突出した突起が形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の液状物質収容容器。
【請求項5】
前記舌片の基端部に、前記スリットの切り込み方向とは反対の向きに前記舌片の外縁より切り込まれたスリットが形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の液状物質収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重なったシートの間に液状物質が収容され、液状物質の周囲のシートが互いに接合されて液状物質を密封した液状物質収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料、調味料、その他の液状物質を重なったシートの間に密封した液状物質収容容器について、液状物質の周囲の接合されたシートを開封して内部の液状物質を一部取り出した後、容器内部に残った液状物質を再度封止して保存する技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、平面視で略長方形の液状物質収容領域の角部にシートを斜めにカットして排出口を形成し、内部の液状物質を押して一部を排出口から取り出して使用した後、液状物質の通過を遮断するように排出口の基端側のシートを内側に折り曲げ、折り曲げたシート先端の排出口をシート表面に取り付けた袋状の収納具に差し込んで折り曲げ姿勢を維持することにより、残りの液状物質の外部への流出を防止する構造が記載されている。
【0004】
上記特許文献1では、排出口を形成するためのシートの切断操作が面倒であるとともに、排出口形成箇所に存在していた液状物質がシート切断時の衝撃により排出口から飛び出す可能性がある。また、再封止のために折り曲げたシートの先端を差し込んで保持する収納具が液状物質を収容するシートとは別に作製され、シートの表面に融着しているので構造が複雑になる。
【0005】
なお、液状物質収容容器を構成するシートの材料として、一般に各種の合成樹脂フィルムを積層したシートが使用される。合成樹脂の例は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE),高密度ポリエチレン樹脂(HDPE),直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などのポリエステル系樹脂や、ナイロン(長鎖状ポリアミド樹脂)などのポリアミド系樹脂である。また、密封された液状物質の品質劣化を防止するために、必要に応じて、バリア性を有するアルミ蒸着フィルムなども使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題を解決するため、重なったシートの間に液状物質が密封された液状物質収容容器において、内部の液状物質を排出する際の操作が容易でかつ不用意な液状物質の流出を防止し、簡易な構造で確実に再封止して残りの液状物質の保存と再開封による使用を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液状物質収容容器は、重なったシートの間に液状物質が収容され、前記液状物質の周囲の前記シートが互いに接合されて前記液状物質を密封した液状物質収容容器において、前記液状物質の周囲の前記シートの一部に、他の部分の前記シートの接合強度よりも小さい接合強度で前記シートが接合された弱接合領域が形成され、前記液状物質の存在領域から前記弱接合領域を経由して外部に開口した排出口に至る排出路が形成され、前記液状物質の存在領域から前記排出路に向かう方向と交差する折り目が前記弱接合領域又は前記弱接合領域と前記液状物質の存在領域との境界箇所を通るように前記シートに形成され、前記折り目によって区分された前記シートの2つのシート部分の一方に、前記折り目の方向と交差する方向に延伸した舌片が前記排出路又は前記液状物質の存在領域の一方に連なるように形成され、前記折り目によって区分された前記シートの2つのシート部分の他方に、シート外縁より前記舌片の延伸方向と交差する向きに切り込まれたスリットが前記排出路又は前記液状物質の存在領域の他方に連なるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、重なったシートを折り曲げない状態でシートの間に収容された液状物質を押圧し、弱接合領域の接合された両シートに離間する向きの力を加えて弱接合領域の接合を破断し、接合が破断された弱接合領域を通過して排出路に移動した液状物質を排出口より外部に排出する。次に折り目によって区分されたシートの2つのシート部分の一方に、排出路又は液状物質の存在領域の一方に連なるように形成されて折り目の方向と交差する方向に延伸した舌片を掴んでシートを折り曲げ、折り目によって区分されたシートの2つのシート部分の他方に、排出路又は液状物質の存在領域の他方に連なるように形成されてシート外縁より舌片の延伸方向と交差する向きに切り込まれたスリットに対して差し込み、舌片をスリットに係合させる。このとき、舌片又はスリットから排出路に連なるシート部分の剛性により、排出路を備えたシート部分が折り目で折り曲げられた姿勢が保持されて液状物質の通過が折り目で遮断され、残りの液状物質の流出が防止される。
次に舌片をスリットに係合した状態から解除し、シートを折り目で折り曲げない状態にした後、残りの液状物質を押圧し、弱接合領域を通過して排出路に移動した液状物質を排出口より外部に排出する。この段階で未だ容器内に液状物質が残っている場合は、再び舌片をスリットに差し込んで係合させ、シートを折り目で折り曲げた状態を維持して残りの液状物質が流出しない状態にする。
【0010】
本発明に係る液状物質収容容器は、前記折り目から前記排出口までの距離が、前記折り目から前記舌片の基端部又は前記スリットまでの距離よりも短いことを特徴とする。
本発明においては、シートを折り目で折り曲げ、折り目によって区分された2つのシート部分の一方に形成した舌片を他方のシート部分に形成したスリットに差し込んで、舌片がスリットに係合したとき、係合箇所は舌片の基端部又は基端部より先端側の位置、及びスリットの位置になるので、折り目から排出口までの距離が折り目から舌片の基端部又はスリットまでの距離よりも短く、液状物質の排出口が相手側のシート部分により接近した折り曲げ状態になり、排出路に残存した液状物質の排出口からの流出を確実に防止することができる。同時に、折り目から排出口までの距離が短いと、必要量の液状物質を外部に排出した後、排出路内に残存する液状物質の量自体も少なくすることができる。
【0011】
本発明に係る液状物質収容容器は、前記排出口が前記弱接合領域の前記液状物質の存在領域とは反対側の端部に形成されていることを特徴とする。
本発明においては、弱接合領域の液状物質の存在領域とは反対側の端部が排出口になり、弱接合領域を通過した液状物質が液状物質の存在領域とは反対側の端部から直接外部に排出されるので、必要量の液状物質を外部に排出した後、排出路内に残存する液状物質の量を最少にすることができる。
【0012】
本発明に係る液状物質収容容器は、前記舌片の基端部に、前記スリットの切り込み方向と同じ向きに突出した突起が形成されていることを特徴とする。
本発明においては、折り目によって区分された2つのシート部分の一方に形成した舌片を他方のシート部分に形成したスリットに差し込むとき、スリットの切り込み方向と同じ向きに突出した舌片の基端部の突起がスリットの奥側端よりも先方に位置するので、舌片が基端側に戻ろうとしても突起がスリットの奥側端よりも先方部分に引っ掛かって舌片の動きが阻止され、舌片のスリットによる係合状態がより確実に保持される。
【0013】
本発明に係る液状物質収容容器は、前記舌片の基端部に、前記スリットの切り込み方向とは反対の向きに前記舌片の外縁より切り込まれたスリットが形成されていることを特徴とする。
本発明においては、折り目によって区分された2つのシート部分の一方に形成した舌片を他方のシート部分に形成したスリットに差し込むとき、スリットの切り込み方向とは反対の向きに舌片の外縁より切り込まれた舌片側のスリットの開口が差し込む相手のスリットの開口に向かい合い、スリット同士が互いに入り込むので、舌片が基端側に戻ろうとしてもスリット同士の噛み合いによって舌片の動きが阻止され、舌片のスリットによる係合状態がより確実に保持される。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明によれば、重なったシートの間に液状物質を収容して密封した液状物質収容容器において、液状物質を押圧することで液状物質の周囲のシートの一部の弱接合領域の接合を破断して排出口に至る排出路への通過が可能になるので、シートを切断して排出口を形成する操作に比べて内部の液状物質を排出する際の操作が容易であり、かつ不用意な液体の流出を防止することができる。また、シートに形成した折り目でシートを折り曲げた状態での封止と、折り目で折り曲げない状態での開封とを実現する簡易な構造により、容器内の残りの液状物質の保存と再開封による使用とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態1に係る液状物質収容容器の構成を示す平面図と断面図である。
【
図2】
図2は
図1に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図と断面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態2に係る液状物質収容容器の構成を示す平面図と断面図である。
【
図4】
図4は
図3に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図と断面図である。
【
図5】
図5は
図3に示す液状物質収容容器の変形例を示す平面図と断面図である。
【
図6】
図6は本発明の実施の形態3に係る液状物質収容容器の構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は
図6に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図である。
【
図8】
図8は本発明の実施の形態4に係る液状物質収容容器の構成を示す平面図である。
【
図9】
図9は
図8に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図である。
【
図10】
図10は本発明の実施の形態5に係る液状物質収容容器の構成を示す平面図である。
【
図11】
図11は
図10に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図と断面図である。
【
図12】
図12は実施の形態1に係る液状物質収容容器の製造方法について説明するための平面図である。
【
図13】
図13は実施の形態1に係る液状物質収容容器の製造方法について説明するための平面図である。
【
図14】
図14は実施の形態1に係る液状物質収容容器の製造方法について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る液状物質収容容器の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係る液状物質収容容器10の構成を模式的に示す平面図(a)と断面図(b)である。断面図(b)は平面図(a)のY-Y線における断面を表す。
【0017】
重なった2枚のシート1,1の間に液状物質2が収容されている。2枚のシート1,1は平面視で同一形状、同一サイズであり、シート1,1の外形は、2つの長方形が台形を間にしてつながった形状をなす。具体的には、
図1に示すように、2つの長方形部分が台形部分を間にして上下に位置した配置で説明する。下側の長方形部分の一辺に、台形部分の底辺の一方が一致し、台形部分の底辺の他方に上側の長方形部分の一辺が一致している。なお、
図1の例では、台形部分の2つの底辺の長さは下底より上底が短く、台形は上底の中心と下底の中心とを上下に通る直線に対して左右対称の等脚台形である。
【0018】
シート1は、例えば、水蒸気及び酸素に対するバリア性のあるポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルムと、耐水性のあるナイロン樹脂フィルムと、ヒートシール性のあるポリエチレン樹脂フィルムとを順次重ねてラミネートした積層フィルムである。2枚のシート1,1はヒートシール性のポリエチレン樹脂フィルム層同士が向かい合う状態で重ねてある。
【0019】
液状物質2は下側の長方形部分の左上部に位置している。液状物質2の存在領域2Aは、平面視で左側の脚が上底及び下底に対して90度をなし、下底より上底の長さが短く、右側の脚が上底及び下底に対して斜めに傾斜した台形状である。液状物質2の周囲の2枚のシート1,1が加熱されて互いに接合(ヒートシール)され、液状物質2が外部から密封されている。液状物質2の周囲のシート1,1のうち、左右及び下側の縁部に高温の接合温度で接合された強接合領域1cが形成され、上側の縁部に強接合領域1cよりも低温の接合温度で接合された弱接合領域1dが形成されている。なお、熱接合(ヒートシール)されたシート1,1は、接合されていないシート単体のものに比べて、シートの機械的な剛性が大きくなり、一定程度の塑性変形特性も有する。
【0020】
液状物質2の存在領域2Aの左側の強接合領域1cは帯状であり、シート1,1の左側の外形に沿ってシート1,1の下端まで真っ直ぐに延長され、上側には途中で右に屈曲した(約20度程度)後、再度左に屈曲し、シート1,1の上端まで真っすぐに延長している。液状物質2の存在領域2Aの右側の強接合領域1cは、下側の長方形部分及び台形部分において、液状物質2の存在領域2Aの傾斜した右側縁部とその上方及び下方の延長線(上方は台形部分の上底付近まで、下方は下側の長方形部分の下端まで)からシート1,1の右端までの全範囲に亘って形成されている。さらに右側の強接合領域1cは上側の長方形部分で、左側の強接合領域1cの延長した帯状部分と平行にシート1,1の上端まで帯状に延長している。
【0021】
液状物質2の存在領域2Aの下側の強接合領域1cは、左右両側の強接合領域1cを繋ぐように横向きの帯状に形成されている。なお下側の強接合領域1cより下方の左右両側の強接合領域1cで挟まれた範囲のシート1,1は接合されていない。液状物質2の存在領域2Aの上側の弱接合領域1dは、左右両側の強接合領域1cを繋ぐように横向きの帯状に形成されている。弱接合領域1dは上下に間隔を隔てた平行な2本の帯体に形成されている。液状物質2の存在領域2Aの上端から弱接合領域1dを経由し、左右両側を強接合領域1cで挟まれたシート1,1の上端までの範囲が液状物質用の排出路3に対応する。排出路3では、弱接合領域1dを除いてシート1,1は接合されていない。排出路3の上端に排出口3aが形成されている。
【0022】
シート1,1の上側の長方形部分の右部には、シート1,1の右側の外形に沿って帯状の強接合領域1cが形成され、下側は台形部分の強接合領域1cに繋がっている。なお、排出路3の右側の帯状の強接合領域1cとシート1,1の右上部の強接合領域1cとの間では、シート1,1は接合されていない。シート1,1の右上部の帯状の強接合領域1cの左側縁に沿ってシート上端からスリットs2が切り込まれ、スリットs2より右側の強接合領域1cが帯状に分離され、縦に細長い形状の舌片1eが形成されている。
【0023】
シート1,1の下側の長方形部分には、シート右端から横向きにスリットs1が切り込まれている。スリットs1の左側(奥側)先端位置は、スリットs2の横位置と略同一位置に設定される。また、シート1,1の上下中央(液状物質2の存在範囲2A側の弱接合領域1dの下端位置)には、シート1,1を上下に折り曲げるための横向きの折り目1fが形成されている。折り目1fの谷部が紙面上方に向いている。折り目1fは、例えば、断面が直角の角部を有し、長さが折り目1fより長い四角柱状の治具を使用し、直角の角部をシート1,1に押し当てた状態でシート1,1を90度程度折る曲げることで形成される。そして、折り目1fから上側の舌片1eの基端部(下端部)までの距離kと、折り目1fから下側のスリットs1までの距離kとは、略同一の距離に設定される。
【0024】
次に、液状物質収容容器10の使用について説明する。
図2は、
図1に示す液状物質収容容器10のシート1,1を折り曲げた状態の平面図と断面図である。断面図(b)は平面図(a)のY-Y線における断面を表し、断面図(c)は平面図(a)のZ-Z線における断面を表す。なお、平面図(a)では、折り曲げたシートの状態を見やすくするため、液状物質2が収容されている側のシート1,1について、強接合領域1c及び液状物質2の表記を省略している(以下、
図4、
図7、
図9、
図11において同様である)。
【0025】
先ず、シート1,1を折り曲げない状態(
図1)で液状物質2に外部から押圧力を加え、弱接合領域1dに押し出した液状物質2の力によって弱接合領域1dの接合を破断する。続けて液状物質2に押圧力を加えて必要量の液状物質2が弱接合領域1dを通過して排出路3の排出口3aから外部に排出されるようにする。必要量の液状物質2を外部に排出した後、折り目1fを境にして上下のシート1,1のうち、排出路3を有する上側のシート1,1に備えた舌片1eを指で摘まみ、下側のシート1,1の側(手前側)へ引っ張り、舌片1eを下側のシート1,1に備えたスリットs1に対して外縁から差し込むと、舌片1eがスリットs1に係合してシート1,1の折り曲げ状態が維持される(断面図(c))。このとき、排出路3を有するシート1,1は剛性により舌片1eの動きに連動して折り目1fで折り曲げられるため、内部に残った液状物質2の通過が折り目1fにおいて阻止され(断面図(b))、外部への流出が防止される。
【0026】
残りの液状物質2を使う場合は、舌片1eをスリットs1に係合した状態から解除させ、シート1,1が折り目1fで折り曲げられていない状態にすると、液状物質2の通過が折り目1fで阻止されない。そこで、残りの液状物質2に外部から押圧力を加えて折り目1f及び弱接合領域1dを通過させ、排出路3の排出口3aから外部に取り出す。以後、内部の液状物質2を使い切るまで、舌片1eをスリットs1に係合させて封止した状態で液状物質2を保存し、また舌片1eをスリットs1に係合させない開封状態で液状物質2を排出することを繰り返す。
【0027】
次に、本発明に係る液状物質収容容器の別の実施の形態について説明する。
図3は、本発明の実施の形態2に係る液状物質収容容器の構成を模式的に示す平面図と断面図である。断面図(b)は平面図(a)のY-Y線における断面を表す。
図4は
図3に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図と断面図である。断面図(b)は平面図(a)のZ-Z線における断面を表す。
【0028】
実施の形態2では、実施の形態1に比べて排出路3の弱接合領域1dから排出口3aまでの長さを短くし、また排出路3より右側のシート1,1について、舌片1eの部分を残すようにカットして舌片1eを形成している点が異なる。排出路3の排出口3aと折り目1fとの距離k1は、舌片1eの基端部と折り目1fとの距離kより短い。その他の構成は実施の形態1と同一である。スリットs1の左側(奥側)先端位置は、舌片1eの左側面の横位置と略同一位置に設定される。
【0029】
上記構造のため、以下のような利点がある。第1に、排出路3の弱接合領域1dから排出口3aまでの長さが短いので、弱接合領域1dを通過した液状物質2のうち、排出路3にとどまる量が少なくなり、排出路3内に残った液状物質2を外部に排出する手間を減らすことができる。第2に、シート1,1の剛性により舌片1eの動きに合わせてシート1,1が折り目1fで折り曲げられるとき、排出路3の排出口3aが舌片1eの基端部よりも折り目1fに近いので、排出路3の排出口3aは相手側のシート1,1により接近した状態になり、排出口3aからの液状物質2の漏れ出しを抑制することができる。
【0030】
図5は、
図3に示す液状物質収容容器の変形例を模式的に示す平面図と断面図である。
この変形例では、排出路3の排出口3aの位置を弱接合領域1dの端部と同一位置にして、排出口3aまでの長さをさらに短くしている。その結果、弱接合領域1dを通過した液状物質2は全て外部に排出されるので、排出路3にとどまる液状物質2を外部に排出する手間が少なくなる。
【0031】
図6は、本発明の実施の形態3に係る液状物質収容容器の構成を模式的に示す平面図である。
図7は、
図6に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図である。
実施の形態3では、舌片1eの基端部の内側面に横向きに突出した突起1tを備えている点が実施の形態2と異なる。その他の構成は実施の形態2と同一である。その結果、舌片1eを引っ張ってスリットs1に外縁側から差し込んだ状態で、突起1tがスリットs1の左端位置よりも左側に突出しているので、伸びた舌片1eが基端部側に戻るときに突起1tがスリットs1の位置に引っ掛かって戻りが阻止され、舌片1eがスリットs1に係合した状態が安定に維持される。
【0032】
図8は、本発明の実施の形態4に係る液状物質収容容器の構成を模式的に示す平面図であり、
図9は
図8に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図である。
実施の形態4では、舌片1eの基端部に内側面から右向きに切り込まれたスリットs3を備え、スリットs1の左側先端位置がスリットs3の右側先端位置と略同一位置に設定されている点が実施の形態2と異なる。その他の構成は実施の形態2と同一である。その結果、舌片1eを引っ張ってスリットs1に外縁側から差し込んだ状態で、スリットs3とスリットs1とを互いに向かい合うようにすると、伸びた舌片1eが基端部側に引き戻されるときにスリットs3がスリットs1にかみ合った位置でロックされるので、舌片1eがスリットs1に係合した状態が安定に維持される。
【0033】
図10は本発明の実施の形態5に係る液状物質収容容器の構成を模式的に示す平面図であり、
図11は
図10に示す液状物質収容容器のシートを折り曲げた状態の平面図と断面図である。断面図(b)は平面図(a)のZ-Z線における断面を表す。
【0034】
実施の形態1~4では、折り目1fを境にした上下のシート1,1のうち、排出路3を備えた上側のシート1,1に舌片1eを設け、液状物質2が収容された下側のシート1,1に舌片1eと係合するスリットs1を設けたが、実施の形態5では、液状物質2が収容された下側のシート1,1に舌片1gを設け、排出路3を備えた上側のシート1,1に、舌片1gと係合するスリットs4を設けた点が異なる。
【0035】
下側のシート1,1の右側下部に上下方向に沿って形成した帯状の強接合領域1cの左側縁に沿ってシート下端から上向きにスリットs5が切り込まれ、上下方向に伸びた舌片1gが形成されている。一方、上側のシート1,1の右上部に強接合領域1cで構成された広幅の帯状の把持部1hが設けられ、把持部1hのシート右端縁から横向きにスリットs4が切り込まれている。スリットs4の左側(奥側)先端位置は、スリットs5の横位置と略同一位置に設定されている。また、折り目1fから舌片1gの基端部までの距離kと、折り目1fからスリットs4までの距離kとは、略同一の距離に設定される。
【0036】
次に、実施の形態5の液状物質収容容器10の使用について説明する。
先ず、シート1,1を折り曲げない状態(
図10)で液状物質2に外部から押圧力を加えて弱接合領域1dのシート接合を破壊し、続けて液状物質2に押圧力を加えて必要量の液状物質2が弱接合領域1dを通過して排出路3の排出口3aから外部に排出されるようにする。必要量の液状物質2を外部に排出した後、折り目1fより上側のシート1,1の把持部1hを掴んで上側のシート1,1を折り目1fにて下側に折り曲げた状態で、下側のシート1,1の舌片1gを摘まんで上方へ引っ張り、舌片1gを上側のシート1,1のスリットs4に対して外縁側から差し込み、舌片1gをスリットs4に係合させる(
図11(b))。その結果、シート1,1が折り目1fで折り曲げられた状態が維持されるので、下側のシート1,1に収容された液状物質2の通過が折り目1fによって阻止され、外部への流出が防止される。
【0037】
残りの液状物質2を使う場合は、舌片1gをスリットs4に係合した状態から解除させて、シート1,1が折り目1fで折り曲げられていない状態にし、内部の液状物質2に外部から押圧力を加えて弱接合領域1dを通過させ、排出路3の排出口3aから外部に排出する。以後、内部の液状物質2を使い切るまで、舌片1gをスリットs4に係合させて封止した状態での液状物質2の保存と、舌片1gをスリットs4に係合させない開封状態での液状物質2の排出とを繰り返す。
【0038】
次に、本発明に係る液状物質収容容器10の製造の概要について説明する。
図12~
図14は実施の形態1に係る液状物質収容容器の製造方法について説明するための平面図である。なお、説明は省略するが、実施の形態2-5に係る液状物質収容容器についても同様にして製造することができる。
【0039】
先ず、最初の工程(A)では、同一サイズの縦長の長方形の2枚のシート1,1を重ね合わせ、液状物質2の存在領域2Aとなる予定範囲の両側及びこれに連なる排出路3の両側と、液状物質2の存在領域2Aの底部側となる箇所を含む広い範囲に亘って2枚のシート1,を接合して強接合領域1cを形成する(
図12)。
【0040】
次の工程(B)では、排出路3の端部側の排出口3aを上側にして、排出口3aより存在領域2Aとなる予定範囲に液状物質2を注入し、液状物質2の注入が完了した後、液状物質2の上部辺に沿って2枚のシート1,1を接合して弱接合領域1dを形成する(
図13)。この段階で、存在領域2Aが確定し、液状物質2が外部に対して密封される。
【0041】
次の工程(C)では、2枚のシート1,1の上部側の横幅を下部側よりも細くするように、外形をカットする(
図13)。この後、カッター等にて2枚のシート1,1に対して右側縁及び上部縁に直線状の切り込みを入れて、スリットs1、s2を形成し、また弱接合領域1dと液状物質2の存在領域2Aの境界箇所に折り曲げ治具の断面が90度をなす直線状の角部を押し当てた状態で上側のシート部分を下側に折り曲げて折り目1fを形成する(
図1)。これにより、液状物質収容容器10が完成する。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によって、重なったシートの間に液状物質が収容され、内部の液状物質を排出する際の操作が容易でかつ不用意な液状物質の流出を防止し、簡易な構造で確実に再封止して残りの液状物質の保存と再開封による使用を可能にする液状物質収容容器が提供される。
【符号の説明】
【0044】
1 シート
1c 強接合領域
1d 弱接合領域
1e 舌片
1f 折り目
1g 舌片
1h 把持部
1t 突起
s1 スリット
s2 スリット
s3 スリット
s4 スリット
s5 スリット
2 液状物質
2A 存在領域
3 排出路
3a 排出口
10 液状物質収容容器
k 距離
k1 距離