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▶ 衛藤 武志の特許一覧

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  • 特開-繊維管アンカー部材 図1
  • 特開-繊維管アンカー部材 図2
  • 特開-繊維管アンカー部材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011209
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】繊維管アンカー部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/76 20060101AFI20220107BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20220107BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E02D5/76
E04B1/41 502Z
E02D5/80 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112198
(22)【出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】515179358
【氏名又は名称】衛藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【テーマコード(参考)】
2D041
2E125
【Fターム(参考)】
2D041GA00
2D041GC12
2D041GC14
2E125AF01
2E125BB08
2E125BE10
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】構造物を固定するアンカー部材であって、その構成部材の全部が金属以外で編成され、緊張部材と緊結部材を持たない繊維管アンカー部材を編成する。
【解決手段】本発明に係る繊維管アンカー部材は、高ヤング率の繊維で形成された繊維筒1と流動性硬化材7の漏出を防止して前記繊維筒の膨張形状を保持する鏡布2aと拡頭鏡布2bと前記流動性硬化材の搬送と型枠部材11を仮固定するセパレーターを備えたパイプ部材4で編成され、前記繊維筒は前記流動性硬化材の充填圧力で膨張して固定する定着部1aとコンクリート13内に定着する拡頭部1bを形成することができる。その構成部材の全部が金属以外で編成され、緊張部材および緊結部材を持たないことを特徴とした、繊維管アンカー部材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材から形成した繊維筒の中に充填材を注入して使用する繊維管アンカー部材であって、前記繊維筒の内部に鏡布と拡頭鏡布と前記拡頭鏡布を連通するパイプ部材を備える。繊維管アンカー部材。
【請求項2】
前記繊維筒は高ヤング率の繊維束織物から形成されている、請求項1に記載の繊維管アンカー部材。
【請求項3】
前記繊維筒の拡頭部には短冊が形成してある、請求項1又は2に記載の繊維管アンカー部材。
【請求項4】
前記鏡布は前記繊維筒の先端に配設してある、請求項1に記載の繊維管アンカー部材。
【請求項5】
前記拡頭鏡布は前記繊維筒の外径より円周方向に延伸するように配設してある、請求項1に記載の繊維管アンカー部材。
【請求項6】
前記パイプ部材が前記鏡布と当接する前記パイプ部材の先端はスリットが形成してある。請求項1に記載の繊維管アンカー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する発明は、内部に充填材を充填して使用する繊維管アンカー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物を固定するアンカーは構成部材の全て、あるいはその一部が金属の部材で編成され、その固定には金属の緊張部材と緊結部材を用いる方法が一般的である。
【0003】
コンクリート構造物の、ひび割れ部位からの水の侵入は不可避であるので、金属で編成されたアンカー部材は腐食が発生する。特許文献1に開示されているように、アンカーのグラウト層の外表面を覆う水膨潤性繊維を筒状に織成した止水の袋体を備えるもの、また、特許文献2にはグラウト材の流出防止を目的とし、且つ、定着部の接着性が向上する、筒状繊維織物を備えたグラウト材圧入用の袋体などがある。
【0004】
これら袋体は、アンカーの金属部材の防錆およびグラウトの流出の防止と定着性の向上を目的としており、これらの袋体はアンカーを構成する一部を成している。もし、緊張部材と前記緊結部材を兼ね備えた繊維によるアンカー部材であれば、一体に編成されるから防錆も不要になるので、メンテナンスや施工が簡便になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-227197
【特許文献2】特開2005-273219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の背景に鑑みて本発明は、構造物を固定するアンカー部材であって、その構成部材の全部が金属以外で編成されるから防錆の必要がない。また、緊張部材と緊結部材を持たない構造なので扱いが簡便である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
当課題に対して本発明は、それぞれが多数の化学繊維を束ねた繊維束からなる経糸と、この経糸を相互に連結する緯糸からなる繊維束織物を筒形とした繊維管アンカー部材を提案する。この繊維管アンカー部材において繊維筒は緊張部材となる。
【0008】
本発明に係る繊維管アンカー部材は、流動性硬化材の充填圧力で膨張して固定する定着部と拡頭部があり、前記定着部には前記流動性硬化材の漏出防止と前記繊維筒の形状を保持する鏡布がある。また、前記拡頭部には前記流動性硬化材の漏出防止と充填圧力で前記繊維筒の外径よりも円周方向に膨張して延伸する拡頭鏡布がある。
【0009】
本発明に係る繊維管アンカー部材の、前記拡頭部には短冊の加工が施されており、前記拡頭鏡布を介して前記繊維筒の外径よりも円周方向に延伸して短冊が展開することでコンクリートと定着する前記拡頭部がある。
【0010】
本発明に係る繊維管アンカー部材は、前記繊維筒の挿入と前記流動性硬化材の搬送と型枠部材を仮固定するセパレーターを備えたパイプ部材が配設されている。また、前記パイプ部材の先端には前記流動性硬化材を前記繊維筒の先端部から漏出させて先端部より膨張させるための、スリットが施されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る繊維管アンカー部材は、構造物を固定するアンカー部材であって、その構成部材の全部が金属以外で編成されるから防錆でのメンテナンスが削減されると共に、緊張部材と緊結部材が一体として機能する構造で、且つ、軽量なので、施工が容易である。また、コンクリート構造物以外の例えば、構造物を地盤に固定するグランドアンカーにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】繊維管アンカー部材100の平面と側面図(A)とその、充填後の平面と側面図(B)。
図2】繊維管アンカー部材100のコンクリート構造物の付設例で、繊維管アンカー部材で型枠部材を仮固定している図(C)と、付設後の図(D)。
図3】繊維管アンカー部材100のグラウンドアンカーでの付設例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る繊維管アンカー部材100の実施形態について、図1(A)で示している。本実施形態の繊維管アンカー部材は、高ヤング率の繊維(例えば炭素繊維)のそれぞれが多数の化学繊維を束ねた繊維束からなる経糸と、この経糸を相互に連結する緯糸からなる繊維束の平織物を筒状に形成した繊維筒1からなる。筒状にしたときの平織物の端部は重ね代を設け縫製または接着あるいはその両方で係合されている。また、前記繊維筒は実際の外経よりも小さい状態で、いわゆるマチ付きの形態で、円周方向に延伸するように折り畳んである。前記繊維筒を外径よりも小さい状態にする方法はこれらに限らず様々な方法があるので、ここでは詳しく言及しない。
【0014】
図1(A)からわかるように、前記繊維筒の筒内面の全周に、鏡布2aと拡頭鏡布2bが縫製あるいは接着あるいはその両方で係合されており、前記鏡布は前記繊維筒に使用される織物と同じかそれ以下の伸度の繊維織物またはプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。また、前記拡頭鏡布は前記繊維筒に使用される織物と同等かそれ以上の伸度の繊維織物またはプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。
【0015】
前記繊維筒の中にコンクリート、モルタルといった流動性硬化材7の充填材を注入して使用するので、その注入のための注入口6が、図1(A)のパイプ部材4の下端に設けられている。前記注入口はプラスチック(好ましくは軽量のプラスチック製)の前記パイプ部材で形成されており、前記パイプ部材は前記拡頭鏡布を連通して前記鏡布の内面まで延伸して当接して止めてある。前記パイプ部材の先端には前記流動性硬化材を前記繊維筒の先端部から漏出させて前記繊維筒の先端より膨張させるための、スリット5が施されている。その、前記スリットの本数は1本以上もうけており、前記スリットのタテ方向の長さは前記パイプ部材のヨコ方向の長さと同じか、好ましくは長くしてある。
【0016】
図1(B)は、コンクリート構造物9の穿孔8に前記繊維管アンカー部材を挿入して固定した図である。前記繊維筒の拡頭部1bには前記繊維筒の外径より円周方向に延伸できるように前記繊維筒の全周に渡り短冊の加工が形成してある。その、前記短冊の長さは前記拡頭鏡布の上端よりノリ代を避けた下方の位置より前記繊維筒の下端まで形成されており、前記短冊の幅は前記繊維筒の外周長に応じて、所定の間隔、好ましくは等間隔にして多数形成されている。また、前記拡頭部を前記短冊にすることでコンクリートの付着面積が広くなり、コンクリートの食いつきがよくなるという利点もある。
【0017】
前記繊維管アンカー部材の前記繊維筒の前記定着部の付設面と接合する面には、所定の塗布量の硬化性樹脂3を塗布して使用できる。また、前記硬化性樹脂は前記定着部に塗布してもよく、付設面に塗布してもよい。あるいは、その両面に塗布してもよい。
【0018】
前記繊維管アンカー部材の前記繊維筒の前記拡頭部には、所定の塗布量の前記硬化性樹脂を塗布して使用できる。また、前記硬化性樹脂は前記拡頭部の片面に塗布してもよく、あるいは、その両面に塗布してもよい。
【0019】
図2(C)は、前記コンクリート構造物に前記繊維管アンカー部材を固定して、型枠部材11を前記コンクリート構造物に仮固定した付設例である。前記パイプ部材は前記繊維管アンカー部材を前記穿孔に挿入するための押棒の機能と前記流動性硬化材を充填する前記注入口を備えている。また、前記パイプ部材は前記型枠部材と緊結部材10とを前記コンクリート構造物に仮固定するための反力となるセパレーターの機能を具備している。図2(D)は、コンクリート13を充填して、前記繊維管アンカー部材の前記拡頭部が前記コンクリートの中で固定して定着している図である。よって、前記拡頭部はアンカーの緊結部材の締め付けによる固定と同じ効果を発揮する。
【0020】
図3は、前記繊維管アンカー部材をグランドアンカーとして用いた付設例である。グランドアンカーとして使用する場合は前記繊維筒の前記定着部を所定の長さまで延長して使うことができる。前記拡頭部は前記コンクリートの中で固定して定着するから、前記拡頭部はアンカーの緊結部材の締め付け固定と同じ効果を発揮する。
【符号の説明】
【0021】
100 繊維管アンカー部材
1 繊維筒
1a 定着部
1b 拡頭部
2a 鏡布
2b 拡頭鏡布
3 硬化性樹脂
4 パイプ部材
5 スリット
6 注入口
7 流動性硬化材
8 穿孔
9 コンクリート構造物
10 緊結部材
11 型枠部材
12 地盤
13 コンクリート
図1
図2
図3