(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112124
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】医療用酸素マスク
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007793
(22)【出願日】2021-01-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-19
(71)【出願人】
【識別番号】521031338
【氏名又は名称】本多 菊会
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】特許業務法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】本多 菊会
(57)【要約】
【課題】 マスクを取り外すことなく医療従事者が医療行為を行ったり使用者が飲食をしたりすることが可能であり、かつ、酸素供給及び呼気排出が容易な医療用酸素マスクを提供する。
【解決手段】 医療用酸素マスクは、全体として隆起した形状を有し、使用者の口部及び鼻部を覆うように装着される。医療用酸素マスクは、装着されたときに使用者の口部に対応する位置に形成された開口と、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された気体取入口とを有するマスク本体を有する。マスク本体の開口には扉が取り付けられており、この扉をスライド式に移動することによって開口を開閉することができる
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として隆起した形状を有し、使用者の口部及び鼻部を覆うように装着される医療用酸素マスク(1)であって、
装着されたときに使用者の口部に対応する位置に形成された開口(23)と、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された気体取入口(26)とを有するマスク本体(2)と、
スライド式に移動することによって前記開口(23)を開閉することができるように取り付けられた扉(3)と
を備える医療用酸素マスク。
【請求項2】
前記扉(3)は、前記開口(23)に対応する大きさの1つの扉部材(31)を有し、
この1つの扉部材(31)が横方向に移動することによって前記開口(23)を開閉する、
請求項1に記載の医療用酸素マスク。
【請求項3】
前記扉(3)は、並置されたときに前記開口(23)に対応する大きさとなる2つ以上の扉部材(31、32)を有し、
これらの2つ以上の扉部材(31、32)が横方向に移動することによって前記開口(23)を開閉する、
請求項1に記載の医療用酸素マスク。
【請求項4】
前記扉(3)は、同じ大きさに形成された2つの扉部材(31、32)を有し、
これらの2つの扉部材(31、32)がいずれも同じ方向に移動するか又は互いに逆方向に移動することによって、前記開口(23)を開閉する、
請求項3に記載の医療用酸素マスク。
【請求項5】
前記マスク本体(2)は、前記気体取入口(26)から流入した気体が使用者の鼻孔に向かうように流れの向きを変えるための方向転換部(27)を有する、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【請求項6】
前記扉(3)が閉じた状態で使用者に装着されたときに前記扉(3)の下縁部(31c、32c)と使用者のオトガイ部との間に隙間(28)が生じるように形成された、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【請求項7】
前記扉(3)の左右側方の各々に位置する側部(24)は、その下部に、前記扉(3)の下縁部(31c、32c)より下方に突出する突出部分(24d)を有しており、
前記突出部分(24d)の前縁部(24b)間に連結され、使用者のオトガイ部に密着させることができるゴムバンド(4)をさらに備える、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用酸素マスクに関し、より具体的には、使用者が装着したときに使用者の口に対応する部分に開口を有し、その開口に設けられた扉を開閉することによって口を露出させることができる医療用酸素マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、患者などの使用者の顔面に装着して酸素を投与する医療用酸素マスクが使用されている。このような医療用酸素マスクは、例えば特許文献1に開示される。医療用酸素マスクは、一般に、使用者の鼻梁から下あごまでと左右の頬部とを覆い、顔面にしっかり密着するように装着され、酸素を供給するチューブが接続される。そのため、例えば、使用者が飲食をしたり、医療従事者が痰の吸引などの医療行為を行ったりするためにその都度マスクを取り外すことは、極めて煩雑である。
【0003】
医療用酸素マスク以外の衛生マスクであれば、開閉可能な蓋やファスナーを設けたマスクが提案されている。特許文献2には、マスク本体の中央部(利用者の口に対応する部分)に設けられた開口と、マスク本体の表側から開閉可能に覆う蓋片とを備えるマスクが提案されている。また、特許文献3には、使用者の顔面の少なくとも一部を覆うためのマスク本体に開口部を有するマスクが提案されている。この開口部は、ファスナーによって開閉可能である。
【0004】
これらのマスクは、健常者が花粉防止、風邪の際に用いるものである。マスクを外さなくても息苦しさを改善することができ、小さな食べ物を食べたり、ストローを使用したりすることは可能であるが、身体を自由に動かしづらい入院患者にとっては、蓋片の開閉や、開いた蓋片をその状態で保持することが困難である。また、医療用酸素マスクではないため、例えば痰の吸引などの医療行為に対応できるように意図された構成のものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-148859号公報
【特許文献2】特開2017-2430号公報
【特許文献3】実用新案登録第3228247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、マスクを取り外すことなく医療従事者が医療行為を行ったり使用者が飲食をしたりすることが可能であり、かつ、酸素供給及び呼気排出が容易な医療用酸素マスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、全体として隆起した形状を有し、使用者の口部及び鼻部を覆うように装着される医療用酸素マスクを提供する。医療用酸素マスクは、装着されたときに使用者の口部に対応する位置に形成された開口と、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された気体取入口とを有するマスク本体を有する。マスク本体の開口には扉が取り付けられており、この扉をスライド式に移動することによって開口を開閉することができる。
【0008】
一実施形態において、扉は、マスク本体の開口に対応する大きさの1つの扉部材を有することが好ましい。医療用酸素マスクは、この1つの扉部材が横方向に移動することによって開口を開閉するように構成することができる。
【0009】
別の実施形態においては、扉は、並置されたときに開口に対応する大きさとなる2つ以上の扉部材を有することが好ましい。医療用酸素マスクは、これらの2つ以上の扉部材が横方向に移動することによって開口を開閉するように構成することができる。さらに別の実施形態においては、扉は、同じ大きさに形成された2つの扉部材を有することが好ましい。医療用酸素マスクは、これらの2つの扉部材がいずれも同じ方向に移動するか又は互いに逆方向に移動することによって、開口を開閉するように構成することができる。
【0010】
一実施形態においては、マスク本体は、気体取入口から流入した気体が使用者の鼻孔に向かうように流れの向きを変えるための方向転換部を有することが好ましい。方向転換部は、マスク本体の内側に向かって突出するように設けられ、使用者の鼻孔の方向に向くように設けられた内壁を有し、気体流入口から流入した空気が内壁に当たって鼻孔の方向に向かって流れるように構成することができる。
【0011】
一実施形態においては、扉が閉じた状態で医療用酸素マスクが使用者に装着されたときに、扉の下縁部と使用者のオトガイ部との間に隙間が生じるように形成されていることが好ましい。
【0012】
一実施形態においては、扉の左右側方の各々に位置する側部は、その下部に、扉の下縁部より下方に突出する突出部分を有することが好ましい。突出部分の前縁部には、前縁部間に連結され、使用者のオトガイ部に密着させることができるゴムバンドを備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による医療用酸素マスクの使用状態を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による医療用酸素マスクの使用状態を示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による医療用酸素マスクの扉の開閉を説明する図であり、(a)扉が一部開いた状態、(b)は扉が全開した状態を示し、(c)はマスク本体の側部の裏側に扉が収納された状態の縦断面を示す。
【
図4】本発明の別の実施形態による医療用酸素マスクの扉を示し、(a1)は扉が1枚の形態において扉が閉じた状態、(a2)は扉が1枚の形態において扉が開いた状態の図であり、(b1)は扉が2枚の形態において扉が閉じた状態、(b2)は扉が2枚の形態において扉が開いた状態の図である。
【
図5】本発明の一実施形態による医療用酸素マスクに気体供給用ホースが接続される部分の詳細(a)、気体取入口とそこに設けられた方向転換部の斜視図(b)、及び気体供給ホースからの気体の流れ(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態による医療用酸素マスク1の側面図であり、
図2は、医療用酸素マスク1の正面図である。いずれの図においても、医療用酸素マスク1が使用者の顔面に装着されている使用状態を示す。なお、本明細書の以下の説明では、医療用酸素マスク1の使用者を基準として方向を定めており、「左」は
図1の右側に相当する方向を、「右」は
図1の左側に相当する方向を意味する。また、「前」「後」「上」「下」は、それぞれ、使用者の前方(
図1の左側に相当する方向)、使用者の後方(
図1の右側に相当する方向)、使用者の上方(
図1の上側に相当する方向)、使用者の下方(
図1の下側に相当する方向)を意味する。また、後方を裏側、前方を表側ということもある。
【0016】
医療用酸素マスク1は、全体として隆起した形状を有し、装着されたときに使用者の口部及び鼻部を覆うように形成されている。医療用酸素マスク1には、気体供給ホース6が接続され、この気体供給ホース6を通して、医療用酸素マスク1の内側に酸素又は高濃度酸素を含む空気が供給される。
【0017】
医療用酸素マスク1は、使用者の顔面に固定するためのストラップ5を有する。ストラップ5は、例えば、その端部51が医療用酸素マスク1の両方の側縁部21bに取り付けられており、全体を使用者の頭部にかけることができるようになっている。ストラップ5には、装着したときに頭部の蒸れを防止するための開口52が設けられることが好ましい。開口52の数及び大きさは、特に限定されるものではない。ストラップ5は、ポリウレタン樹脂を用いて作製されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、伸縮性があり、使用者が装着したときに耳や頭部の痛みなどを軽減することができる材料で作製されていればよい。ストラップ5は、例えば、側縁部21bに設けられた孔に端部51を結びつけることによって、長さを自由に調節できることが好ましい。
【0018】
医療用酸素マスク1は、全体として隆起した形状を有し、周縁部21の一部が使用者の顔面に密着するように形成されたマスク本体2を有する。マスク本体2は、鼻部及びその側方を覆う部分である隆起部22と、隆起部22の側方の部分から下方に延びるように設けられた、口部の側方(頬の部分)を覆う側部24とを有し、隆起部22の下方及び側部24の前方には開口23が配置される。
【0019】
マスク本体2は、上縁部21a及び側縁部21bが使用者の顔面に密着し、それ以外の部分が顔面に接触しないように内側に空間が設けられている。マスク本体2は、ポリ塩化ビニル樹脂を用いて作製されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、マスク本体2の形状を維持できる程度の硬さを持ち、使用者の負担にならないように軽量な材料を用いて作製されればよい。上縁部21a及び側縁部21bは、顔面に密着したときに痛みや圧迫感を軽減することができるように、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂などの柔軟な材料で被覆されていることが好ましい。側縁部21bの下端は、使用者の負担を軽減するために角を落として丸みを帯びた形状としてもよい。
【0020】
マスク本体2の開口23は、使用者の口部に対応する位置に形成されている。例えば、開口23は、隆起部22の下縁部22cと、側部24の前縁部24bとで囲まれた空間である。開口23の大きさは、限定されるものではないが、医療用酸素マスク1を取り外さなくても医療従事者が使用者の痰の除去を行ったり、使用者が飲食をしたりすることに支障のない程度の大きさであることが好ましい。
【0021】
マスク本体2の開口23は、扉3をスライド式に移動させることによって任意に開いたり閉じたりすることができる。
図3は、マスク本体2の扉3の開閉を説明する図である。
図3(a)は扉3が一部開いた状態、
図3(b)は扉3が全開した状態を示す。また、
図3(c)は、側部24の裏側に扉部材31が収納された状態のときの縦断面図であり、
図3(b)の矢視AAの位置の縦断面図である。なお、
図3(b)においては、側部24と扉部材31との連結部分の構造をわかりやすくするために、連結部分及び各部の厚みは、実際より厚くかつ大きく描かれている。
【0022】
この実施形態においては、扉3は、2枚の扉部材31、32で構成されており、2枚の扉部材31、32は、概ね同形状に形成されている。2枚の扉部材31、32が横に並んだときに開口23に対応する大きさとなるため開口23を閉じることができ、扉部材31と扉部材32とを互いに逆方向にスライド式に移動させることによって、開口23を開けることができる。例えば、扉部材31を左方向にスライド移動させてマスク本体2の左側の側部24と重ね、扉部材32を右方向にスライド移動させてマスク本体2の右側の側部24と重ねることによって、開口23を開くことができる。
【0023】
扉部材31、32は、例えば、扉部材31、32の上縁部31a、32a及び下縁部31c、32cに形成されたスライド部を、隆起部22の下縁部22c及び側部24の下方に形成されたスライドレールに走らせることによって、移動させることができる。一実施形態においては、扉部材31の上縁部31aには上スライド部31asが形成され、扉部材31の下縁部31cには下スライド部31csが形成されている。また、隆起部22の下縁部22cには 上スライドレール22csが形成されるとともに、側部24には、扉部材31の下スライド部31csに対応する位置に下スライドレール24msが設けられている。
【0024】
限定されるものではないが、例えば、
図3(c)に示されるように、上スライド部31as及び下スライド部31csは下向きコの字形状の断面を有し、上スライドレール22cs及び下スライドレール24msは上向きコの字形状の断面を有するように形成され、上スライド部31asと上スライドレール22csとが互いに咬みあうように対向し、下スライド部31csと下スライドレール24msとが互いに咬みあうように対向している。したがって、上スライド部31asが上スライドレール22cs上を移動し、下スライド部31csが下スライドレール24ms上を移動することによって、扉部材31が開閉するようになっている。扉部材31は、左側の側部24の裏側に収納されるようにスライドすることが好ましいが、これに限定されるものではなく、左側の側部24の表側に収納されるようにスライドしてもよい。
【0025】
扉部材32についても同様であり、上縁部32aの上スライド部32as及び下縁部32cの下スライド部32csが、それぞれ上スライドレール22cs及び下スライドレール24ms上を移動することによって、扉部材32が開閉し、扉部材32は、右側の側部24の裏側に収納されるようにスライドすることが好ましい。
【0026】
扉部材31、32の表側には、好ましくは閉じた状態のときに両者の境目となる位置の近くに、つまみ33が取り付けられていることが好ましい。このつまみ33をつまむことによって、使用者が扉部材31、32の位置を確実に把握するとともに、扉部材31、32の開閉を容易に行うことができる。また、扉部材31及び扉部材32の表側には、それらが閉じた状態のときの境目をまたぐように、面ファスナー34が取り付けられていることが好ましい。面ファスナー34を接着することによって、扉部材31、32が不用意に開かないようにすることができる。また、必要に応じて使用者が自分で容易に面ファスナー34を剥がして、扉部材31、32を開閉することができる。
【0027】
図4は、本発明の別の実施形態による扉3を示す。
図4(a1)及び
図4(a2)は、扉3が一枚の扉部材36によって構成される形態を示し、
図4(a1)は扉部材36が閉じた状態、
図4(a2)は扉部材36が開いた状態である。扉部材36は、それ1枚でマスク本体2の開口23を閉じることができる程度の大きさである。扉部材36は、表側右下に取り付けられたつまみ33をつまんで、左方向に移動させ、マスク本体2の左側の側部24の裏側に収納させることができる。
【0028】
なお、
図4においては、扉部材36が左方向に移動するように構成されているが、これに限定されるものではなく、扉部材36を右方向に移動させて、右側の側部24の裏側に収納することもできる。また、扉部材36は、左側の側部24の裏側ではなく、表側に重なるように収納することもできる。
【0029】
さらに、
図4(b1)及び
図4(b2)は、扉3が2枚の扉部材37、38によって構成される形態を示し、
図4(b1)は扉部材37、38が閉じた状態、
図4(b2)は扉部材37、38が開いた状態である。扉部材37、38は、2枚が横に並んだときにマスク本体2の開口23を閉じることができる程度の大きさであり、2枚の扉部材37、38をいずれも左方向に移動させることによって開口23を開けることができる。扉部材38は、マスク本体2の左側の側部24の裏側に収納するようにスライドし、扉部材37は、扉部材38の裏側に収納するようにスライドする。
【0030】
なお、
図4では、扉部材37、38が左方向に移動するように構成されているが、これに限定されるものではなく、右方向に移動させて、右側の側部24の裏側に収納することもできる。また、扉部材37、38は、左側の側部24の裏側ではなく、表側に重なるように収納することもできる。
【0031】
さらに、別の実施形態では、扉3を3枚以上の縦長の扉部材(図示せず)によって構成してもよい。この実施形態においては、3枚以上の扉部材がシャッター状に横方向に移動することによって、マスク本体2の開口23を開閉することができる。移動方向は、左方向でも右方向でもよく、いずれの場合においても、側部24の表側又は裏側に収納されるようにスライドさせることができる。なお、扉が2枚以上の扉部材によって構成される場合、それぞれの扉部材の大きさは同じである必要はなく、2枚以上の扉部材が並置されたときに、マスク本体2の開口23を閉じることができるように構成されていればよい、
【0032】
マスク本体2は、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された2つの気体取入口26を有する。
図5は、マスク本体2に気体供給ホース6が接続される部分の詳細(a)、気体取入口26とそこに設けられた方向転換部27の斜視図(b)、及び気体供給ホース6からの気体の流れ(c)を示す。
【0033】
気体取入口26には、
図5(a)に示されるように、例えば酸素又は高濃度酸素を含む空気などの気体をマスク本体2の内側に供給するための気体供給ホース6を、回転自在に接続することができる。気体供給ホース6は、途中から二股に分かれ、二股部分がそれぞれ気体取入口26に接続されるようになっていることが好ましい。なお、気体取入口26と気体供給ホース6との接続は、周知の技術を用いて行うことができるため、本明細書及び図面では詳細な説明は省略する。また、図面においては、気体供給ホース6は蛇腹状のホースとして描かれているが、これに限定されるものではない。
【0034】
気体取入口26には、方向転換部27が、マスク本体2の内側に向かって突出するように設けられることが好ましい。方向転換部27は、
図5(b)に示されるように、気体取入口26の裏側(マスク本体2の内側)において円周の半分程度に相当する領域に取り付けられており、凹形状の内壁27aが内側に形成されている。気体供給ホース6を通って、
図5(b)のD1の向きで気体取入口26に供給された気体は、方向転換部27の内側に形成された凹形状の内壁27aに当たって方向が転換され、気体取入口26の開口面から概ね90°の方向D2に向かって流れることになる。
【0035】
図5(c)に示されるように、2つの方向転換部27は、いずれも内壁27aが使用者の鼻孔の方向に向くように気体取入口26に設けられる。すなわち、左の方向転換部27は、内壁27aが
図5(c)の左方向に向くように気体取入口26に設けられ、右の方向転換部27は、内壁27aが
図5(c)の右方向に向くように気体取入口26に設けられる。したがって、
図5(c)に示されるように、気体供給ホース6を通って気体取入口26に入った気体GIは、左の方向転換部27では内壁27aによって方向が転換されて矢印GAの方向に向かって流れ、右の方向転換部27では内壁27aによって方向が転換されて矢印GBの方向に向かって流れることになる。このように、方向転換部27がマスク本体2の裏側に取り付けられることによって、使用者は気体を効率よく吸入することができる。
【0036】
方向転換部27の内壁27aの向きは、気体取入口26がマスク本体2に設けられる位置によって適宜変更すればよい。例えば、気体取入口26が
図5に示されている位置より上方に設けられたときには、例えば左の内壁27aが
図5(c)の左下方向を向き、右の内壁27aが
図5(c)の右下方向を向くように、方向転換部27を設ければよい。
【0037】
医療用酸素マスク1は、扉部材31、32が閉じた状態のときに、扉部材31、32の下縁部31c、32cと使用者のオトガイ部との間に隙間28が生じるように構成されている。この隙間28は、使用者の呼気が排出される排気口として機能する。隙間28が、医療用酸素マスク1の下方に設けられていることによって、空気より重たい二酸化炭素が医療用酸素マスク1の内部から排出されやすい。隙間28の大きさ及び扉部材31、32の下縁部31c、32cとオトガイ部との間の距離は、特に限定されるものではなく、呼気の排出に支障が生じない程度の大きさ及び距離であればよい。
【0038】
マスク本体2は、
図1に示されるように、左右の側部24の下部に、扉部材31、32の下縁部31c、32cより下方に突出する突出部分24dを有する。突出部分24dの下端24cは、マスク本体2の下縁を構成する。左右の突出部分24dの前縁部24b間は、例えばシリコン製のゴムバンド4によって連結されることが好ましい。ゴムバンド4は、長さを調節できるようにサイズ調節孔41が長さ方向に沿っていくつか設けられており、さらにサイズ調節孔41に通される突起42を有することが好ましい。ゴムバンド4の長さを、ゴムバンド4が使用者のオトガイ部に密着するように調節することによって、マスク本体2の下部を使用者の顔面にしっかり固定することができる。また、密着したゴムバンド4とオトガイ部との間に、飲食時などに使用者の衣服の汚れを防止するために使用するタオルやエプロン(図示せず)などを挟んでおくこともできる。
【符号の説明】
【0039】
1 医療用酸素マスク
2 マスク本体
21 周縁部
21a 上縁部
21b 側縁部
22 隆起部
22c 下縁部
22cs 上スライドレール
23 開口
24 側部
24a 上縁部
24b 前縁部
24c 下縁部
24d 突出部分
24ms 下スライドレール
26 気体取入口
27 方向転換部
27a 内壁
28 隙間(排気口)
3 扉
31、32 扉部材
31a、32a 上縁部
31as、32as 上スライド部
31c、32c 下縁部
31cs、32cs 下スライド部
33 つまみ
34 面ファスナー
36、37、38 扉部材
4 ゴムベルト
41 サイズ調節孔
42 突起
5 ストラップ
51 端部
52 開口
6 気体供給ホース
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として隆起した形状を有し、使用者の口部及び鼻部を覆うように装着される医療用酸素マスク(1)であって、
装着されたときに使用者の口部に対応する位置に形成された開口(23)と、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された気体取入口(26)とを有するマスク本体(2)と、
スライド式に移動することによって前記開口(23)を開閉することができるように取り付けられた扉(3)と
を備え、
前記扉(3)は、その形状のままで前記マスク本体(2)の裏側又は表側に重なるように収納される、
医療用酸素マスク。
【請求項2】
前記扉(3)は、前記開口(23)に対応する大きさの1つの扉部材(31)を有し、
この1つの扉部材(31)が横方向に移動することによって前記開口(23)を開閉する、
請求項1に記載の医療用酸素マスク。
【請求項3】
前記扉(3)は、並置されたときに前記開口(23)に対応する大きさとなる2つ以上の扉部材(31、32)を有し、
これらの2つ以上の扉部材(31、32)が横方向に移動することによって前記開口(23)を開閉する、
請求項1に記載の医療用酸素マスク。
【請求項4】
前記扉(3)は、同じ大きさに形成された2つの扉部材(31、32)を有し、
これらの2つの扉部材(31、32)がいずれも同じ方向に移動するか又は互いに逆方向に移動することによって、前記開口(23)を開閉する、
請求項3に記載の医療用酸素マスク。
【請求項5】
前記マスク本体(2)は、前記気体取入口(26)から流入した気体が使用者の鼻孔に向かうように流れの向きを変えるための方向転換部(27)を有し、
前記方向転換部(27)は、前記気体取入口(26)の各々において前記マスク本体(2)の内側に設けられている、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【請求項6】
前記扉(3)が閉じた状態で使用者に装着されたときに前記扉(3)の下縁部(31c、32c)と使用者のオトガイ部との間に隙間(28)が生じるように形成された、
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【請求項7】
前記扉(3)の左右側方の各々に位置する側部(24)は、その下部に、前記扉(3)の下縁部(31c、32c)より下方に突出する突出部分(24d)を有しており、
前記突出部分(24d)の前縁部(24b)間に連結され、使用者のオトガイ部に密着させることができるゴムバンド(4)をさらに備える、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の医療用酸素マスク。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として隆起した形状を有し、使用者の口部及び鼻部を覆うように装着される医療用酸素マスク(1)であって、
装着されたときに使用者の口部に対応する位置に形成された開口(23)と、装着されたときに使用者の鼻部の両側に対応する位置に形成された気体取入口(26)とを有するマスク本体(2)と、
スライド式に移動することによって前記開口(23)を開閉することができるように取り付けられた扉(3)と
を備え、
前記扉(3)は、その形状のままで前記マスク本体(2)の裏側又は表側に重なるように収納されており、
前記マスク本体(2)は、前記気体取入口(26)から流入した気体が使用者の鼻孔に向かうように流れの向きを変えるための方向転換部(27)を有し、
前記方向転換部(27)は、前記気体取入口(26)の各々において前記マスク本体(2)の内側に、使用者の鼻孔から離れた位置において前記気体取入口(26)の円周の一部に相当する領域に設けられ、
前記方向転換部(27)の各々は、いずれも鼻孔の方向に向けられた凹形状の内壁(27a)を有する、
医療用酸素マスク。
【請求項2】
前記扉(3)が閉じた状態で使用者に装着されたときに前記扉(3)の下縁部(31c、32c)と使用者のオトガイ部との間に隙間(28)が生じるように形成された、
請求項1に記載の医療用酸素マスク。
【請求項3】
前記扉(3)の左右側方の各々に位置する側部(24)は、その下部に、前記扉(3)の下縁部(31c、32c)より下方に突出する突出部分(24d)を有しており、
前記突出部分(24d)の前縁部(24b)間に連結され、使用者のオトガイ部に密着させることができるゴムバンド(4)をさらに備える、
請求項1又は請求項2に記載の医療用酸素マスク。