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特開2022-112135油圧式パワーステアリング用シリンダ装置
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  • 特開-油圧式パワーステアリング用シリンダ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112135
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】油圧式パワーステアリング用シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/12 20060101AFI20220726BHJP
   F15B 15/14 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
B62D5/12
F15B15/14 350
F15B15/14 355A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007813
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】貴志 友哉
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA04
3H081BB02
3H081EE27
3H081HH08
(57)【要約】
【課題】シール部材におけるピストンロッドとのシール性を確保しつつも、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制すること。
【解決手段】ピストンロッド14の外周面におけるピストン17との嵌合部30の表面粗さが、ピストンロッド14の外周面における第1シール部材21との摺動部である第1摺動部31の表面粗さ、及びピストンロッド14の外周面における第2シール部材22との摺動部である第2摺動部32の表面粗さよりも大きい。したがって、嵌合部30とピストン17との間の摩擦係数が大きくなる。また、ピストンロッド14の外周面全体の表面粗さを大きくせずに、嵌合部30の表面粗さを、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくしているため、第1シール部材21及び第2シール部材22におけるピストンロッド14とのシール性が確保される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブに対して出没可能なピストンロッドと、
前記シリンダチューブ内で前記ピストンロッドの外周面に嵌合されるピストンと、
前記ピストンによって前記シリンダチューブ内に区画される油圧室と、
前記ピストンロッドの外周面に摺接するとともに前記油圧室と前記シリンダチューブ外との間をシールするシール部材と、を備え、
前記油圧室に対する圧油の給排が行われることにより前記ピストンが前記シリンダチューブ内を前記ピストンロッドと一体的に前記シリンダチューブの軸方向に往復動し、前記ピストンロッドにおける前記シリンダチューブに対する往復直線運動が行われることにより、前記ピストンロッドの両端にタイロッドを介して連結された操舵輪の操舵を行う油圧式パワーステアリング用シリンダ装置であって、
前記ピストンロッドの外周面における前記ピストンとの嵌合部の表面粗さが、前記ピストンロッドの外周面における前記シール部材との摺動部の表面粗さよりも大きいことを特徴とする油圧式パワーステアリング用シリンダ装置。
【請求項2】
前記ピストンロッドの外周面における前記嵌合部と連続する部位であって、前記シール部材と摺動しない非摺動部の表面粗さが、前記嵌合部の表面粗さと同じであることを特徴とする請求項1に記載の油圧式パワーステアリング用シリンダ装置。
【請求項3】
前記嵌合部の外径は、前記摺動部の外径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油圧式パワーステアリング用シリンダ装置。
【請求項4】
前記嵌合部の外径は、前記摺動部の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油圧式パワーステアリング用シリンダ装置。
【請求項5】
前記嵌合部の表面粗さは、前記摺動部の表面粗さの2倍以上であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の油圧式パワーステアリング用シリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式パワーステアリング用シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フォークリフト等のような産業車両においては、操舵輪の操舵を行うために、例えば特許文献1のような油圧式パワーステアリング用シリンダ装置が搭載されている。油圧式パワーステアリング用シリンダ装置は、シリンダチューブと、シリンダチューブに対して出没可能なピストンロッドと、シリンダチューブ内でピストンロッドの外周面に固定されるピストンと、ピストンによってシリンダチューブ内に区画される油圧室と、を備えている。また、油圧式パワーステアリング用シリンダ装置は、ピストンロッドの外周面に摺接するとともに油圧室とシリンダチューブ外との間をシールするシール部材を備えている。そして、油圧室に対する圧油の給排が行われることによりピストンがシリンダチューブ内をピストンロッドと一体的にシリンダチューブの軸方向に往復動し、ピストンロッドにおけるシリンダチューブに対する往復直線運動が行われる。これにより、ピストンロッドの両端にタイロッドを介して連結された操舵輪の操舵が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-35977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ピストンが、シリンダチューブ内でピストンロッドの外周面に嵌合されている場合を考える。この場合に、例えば、ピストンロッドがシリンダチューブに対して突出する方向へ移動して、ピストンがシリンダチューブ内をストロークエンドまで移動した状態において、操舵輪に外力が加わって、ピストンロッドがシリンダチューブに対して突出する方向へさらに移動しようとしたとする。このとき、ピストンは、シリンダチューブ内をストロークエンドまで移動した状態であることから、ピストンがそれ以上シリンダチューブ内を移動することができないため、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまう虞がある。また、シール部材におけるピストンロッドとのシール性を確保することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する油圧式パワーステアリング用シリンダ装置は、シリンダチューブと、前記シリンダチューブに対して出没可能なピストンロッドと、前記シリンダチューブ内で前記ピストンロッドの外周面に嵌合されるピストンと、前記ピストンによって前記シリンダチューブ内に区画される油圧室と、前記ピストンロッドの外周面に摺接するとともに前記油圧室と前記シリンダチューブ外との間をシールするシール部材と、を備え、前記油圧室に対する圧油の給排が行われることにより前記ピストンが前記シリンダチューブ内を前記ピストンロッドと一体的に前記シリンダチューブの軸方向に往復動し、前記ピストンロッドにおける前記シリンダチューブに対する往復直線運動が行われることにより、前記ピストンロッドの両端にタイロッドを介して連結された操舵輪の操舵を行う油圧式パワーステアリング用シリンダ装置であって、前記ピストンロッドの外周面における前記ピストンとの嵌合部の表面粗さが、前記ピストンロッドの外周面における前記シール部材との摺動部の表面粗さよりも大きい。
【0006】
これによれば、例えば、嵌合部の表面粗さを、摺動部の表面粗さよりも大きくせずに、摺動部の表面粗さと同じとした場合に比べると、嵌合部とピストンとの間の摩擦係数を大きくすることができるため、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制することができる。また、ピストンロッドの外周面全体の表面粗さを大きくすると、摺動部がシール部材と摺動する際に、シール部材が摩耗してしまい、シール部材におけるピストンロッドとのシール性が悪化してしまう。そこで、ピストンロッドの外周面全体の表面粗さを大きくせずに、嵌合部の表面粗さを、摺動部の表面粗さよりも大きくしているため、シール部材におけるピストンロッドとのシール性を確保することができる。以上により、シール部材におけるピストンロッドとのシール性を確保しつつも、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制することができる。
【0007】
上記油圧式パワーステアリング用シリンダ装置において、前記ピストンロッドの外周面における前記嵌合部と連続する部位であって、前記シール部材と摺動しない非摺動部の表面粗さが、前記嵌合部の表面粗さと同じであるとよい。
【0008】
これによれば、嵌合部の表面に仕上げ加工を行う際に、嵌合部からある程度はみ出した部位である非摺動部まで同じ表面粗さに仕上げてもよいため、嵌合部の表面に対する仕上げ加工が容易となる。
【0009】
上記油圧式パワーステアリング用シリンダ装置において、前記嵌合部の外径は、前記摺動部の外径よりも小さいとよい。
これによれば、ピストンロッドがピストンに対して移動しても、ピストンロッドの外周面における嵌合部と摺動部との間に形成される段差がピストンに引っ掛かって、ピストンロッドがピストンに対して、それ以上移動してしまうことが規制される。したがって、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0010】
上記油圧式パワーステアリング用シリンダ装置において、前記嵌合部の外径は、前記摺動部の外径よりも大きいとよい。
これによれば、例えば、嵌合部の外径が、摺動部の外径よりも小さい場合に比べると、嵌合部とピストンとの接触面積を大きくすることができるため、ピストンにおける嵌合部に対する嵌合力を大きくすることができる。したがって、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0011】
上記油圧式パワーステアリング用シリンダ装置において、前記嵌合部の表面粗さは、前記摺動部の表面粗さの2倍以上であるとよい。
嵌合部の表面粗さが、摺動部の表面粗さの2倍以上である構成は、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制する構成として好適である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、シール部材におけるピストンロッドとのシール性を確保しつつも、ピストンロッドがピストンから引き抜かれてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における油圧式パワーステアリング用シリンダ装置を説明するための概略断面図。
図2】油圧式パワーステアリング用シリンダ装置の一部を拡大して示す断面図。
図3】ピストンロッドとピストンとの関係を示す断面図。
図4】別の実施形態におけるピストンロッドとピストンとの関係を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、油圧式パワーステアリング用シリンダ装置を具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。本実施形態の油圧式パワーステアリング用シリンダ装置は、例えば、フォークリフト等の産業車両に搭載されている。油圧式パワーステアリング用シリンダ装置は、産業車両の操舵輪の操舵を行う。
【0015】
図1及び図2に示すように、油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、シリンダチューブ11を備えている。シリンダチューブ11は、円筒状である。シリンダチューブ11の第1端部には、第1ロッドカバー12が設けられている。そして、シリンダチューブ11の第1端部側の開口は、第1ロッドカバー12によって閉塞されている。第1ロッドカバー12には、円孔状の第1貫通孔12aが形成されている。シリンダチューブ11の第2端部には、第2ロッドカバー13が設けられている。そして、シリンダチューブ11の第2端部側の開口は、第2ロッドカバー13によって閉塞されている。第2ロッドカバー13には、円孔状の第2貫通孔13aが形成されている。
【0016】
油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、ピストンロッド14を備えている。ピストンロッド14は、円柱状である。ピストンロッド14は、シリンダチューブ11を貫通している。ピストンロッド14の軸線は、シリンダチューブ11の軸線に一致している。ピストンロッド14の第1端部は、第1ロッドカバー12の第1貫通孔12aを介してシリンダチューブ11外へ突出している。ピストンロッド14の第2端部は、第2ロッドカバー13の第2貫通孔13aを介してシリンダチューブ11外へ突出している。ピストンロッド14は、シリンダチューブ11に対して出没可能である。ピストンロッド14の両端には、タイロッド15を介して操舵輪16がそれぞれ連結されている。
【0017】
油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、ピストン17を備えている。ピストン17は、円環状である。ピストン17は、ピストンロッド14の軸方向の中央部の外周面に固定されている。ピストン17は、シリンダチューブ11内でピストンロッド14の外周面に嵌合されている。具体的には、ピストン17は、ピストンロッド14に対して焼き嵌めによって嵌合されている。したがって、ピストン17は、ピストンロッド14の外周面に嵌合される円孔状の嵌合孔17aを有している。ピストン17は、シリンダチューブ11内をピストンロッド14と一体的にシリンダチューブ11の軸方向に往復動可能である。
【0018】
油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、油圧室としての第1油圧室18及び第2油圧室19を備えている。第1油圧室18及び第2油圧室19は、ピストン17によってシリンダチューブ11内に区画されている。第1油圧室18は、シリンダチューブ11と、ピストンロッド14と、ピストン17と、第1ロッドカバー12と、によって区画されている。第2油圧室19は、シリンダチューブ11と、ピストンロッド14と、ピストン17と、第2ロッドカバー13と、によって区画されている。油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、第1油圧室18及び第2油圧室19に対して圧油の給排が行われるように構成されている。
【0019】
油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、シール部材としての第1シール部材21及び第2シール部材22を備えている。第1シール部材21及び第2シール部材22は、円環状である。第1シール部材21及び第2シール部材22は、ゴム製である。
【0020】
第1シール部材21は、第1ロッドカバー12の第1貫通孔12aの内周面に装着されている。なお、本実施形態では、第1貫通孔12aの内周面に第1シール部材21が2つ装着されている。第1シール部材21は、ピストンロッド14の外周面に摺接する。そして、第1シール部材21は、第1油圧室18とシリンダチューブ11外との間をシールしている。したがって、第1シール部材21は、第1貫通孔12aを介した第1油圧室18からの圧油の洩れを抑制する。
【0021】
第2シール部材22は、第2ロッドカバー13の第2貫通孔13aの内周面に装着されている。なお、本実施形態では、第2貫通孔13aの内周面に第2シール部材22が2つ装着されている。第2シール部材22は、ピストンロッド14の外周面に摺接する。そして、第2シール部材22は、第2油圧室19とシリンダチューブ11外との間をシールしている。したがって、第2シール部材22は、第2貫通孔13aを介した第2油圧室19からの圧油の洩れを抑制する。
【0022】
油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、第1油圧室18及び第2油圧室19に対する圧油の給排がそれぞれ行われることによりピストン17がシリンダチューブ11内をピストンロッド14と一体的にシリンダチューブ11の軸方向に往復動する。そして、ピストンロッド14におけるシリンダチューブ11に対する往復直線運動が行われることにより、各タイロッド15を介した各操舵輪16の操舵が行われる。
【0023】
図2及び図3に示すように、ピストンロッド14は、ピストン17の外周面におけるピストン17との嵌合部30を有している。嵌合部30は、ピストンロッド14の外周面におけるピストン17の嵌合孔17aの内周面に接触している部位である。
【0024】
また、ピストンロッド14は、ピストンロッド14の外周面における第1シール部材21との摺動部である第1摺動部31と、ピストンロッド14の外周面における第2シール部材22との摺動部である第2摺動部32と、を有している。第1摺動部31は、ピストンロッド14の外周面において、嵌合部30よりもピストンロッド14の第1端部側の部位である。第2摺動部32は、ピストンロッド14の外周面において、嵌合部30よりもピストンロッド14の第2端部側の部位である。なお、図2及び図3では、ピストンロッド14における第1摺動部31及び第2摺動部32の部分を白抜きで図示している。第1摺動部31は、ピストンロッド14がシリンダチューブ11に対して往復直線運動をする際に、第1シール部材21に摺動する。第2摺動部32は、ピストンロッド14がシリンダチューブ11に対して往復直線運動をする際に、第2シール部材22に摺動する。
【0025】
さらに、ピストンロッド14は、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と連続する部位であって、第1シール部材21及び第2シール部材22と摺動しない非摺動部である第1非摺動部33及び第2非摺動部34を有している。第1非摺動部33は、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第1摺動部31との間の部位である。第1非摺動部33は、嵌合部30と第1摺動部31とを接続している。なお、図2及び図3では、嵌合部30と第1非摺動部33との境界を二点鎖線L1で示している。第1非摺動部33は、ピストンロッド14がシリンダチューブ11に対して往復直線運動しても、第1シール部材21とは摺動しない。
【0026】
第2非摺動部34は、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第2摺動部32との間の部位である。第2非摺動部34は、嵌合部30と第2摺動部32とを接続している。なお、図2及び図3では、嵌合部30と第2非摺動部34との境界を二点鎖線L2で示している。第2非摺動部34は、ピストンロッド14がシリンダチューブ11に対して往復直線運動しても、第2シール部材22とは摺動しない。
【0027】
図3に示すように、嵌合部30の外径R1、第1非摺動部33の外径R11、及び第2非摺動部34の外径R12は、それぞれ同じである。したがって、嵌合部30の外周面、第1非摺動部33の外周面、及び第2非摺動部34の外周面は、同一面上に位置している。第1摺動部31の外径R21と第2摺動部32の外径R22とは同じである。
【0028】
嵌合部30の外径R1は、第1摺動部31の外径R21及び第2摺動部32の外径R22の外径よりも小さい。したがって、ピストンロッド14の外周面における第1非摺動部33と第1摺動部31との境界部分には第1段差35が形成され、ピストンロッド14の外周面における第2非摺動部34と第2摺動部32との境界部分には、第2段差36が形成されている。第1段差35及び第2段差36は、ピストンロッド14の軸方向でピストン17とそれぞれ対向している。第1段差35は、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第1摺動部31との間に形成されている。第2段差36は、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第2摺動部32との間に形成されている。なお、図3では、第1段差35及び第2段差36を誇張して図示している。
【0029】
嵌合部30の表面粗さは、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きい。第1摺動部31の表面粗さと第2摺動部32の表面粗さとは同じである。嵌合部30の表面粗さは、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さの2倍である。第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さは、嵌合部30の表面粗さと同じである。
【0030】
ピストンロッド14の外周面に仕上げ加工を行う際には、まず、ピストンロッド14の外周面全体が、嵌合部30と同じ表面粗さになるように、例えば、研磨機によって研磨される。続いて、ピストンロッド14の外周面全体が、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さになるように、研磨機によって研磨される。さらに、嵌合部30、第1非摺動部33、及び第2非摺動部34が、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくなるように、ピストンロッド14の外周面のうち、嵌合部30、第1非摺動部33、及び第2非摺動部34それぞれの外周面を研磨機によって研磨する。このようにして、ピストンロッド14の外周面の仕上げ加工を行う。
【0031】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図2に示すように、例えば、ピストンロッド14の第1端部が第1ロッドカバー12の第1貫通孔12aを介して、シリンダチューブ11に対して突出する方向へピストンロッド14が移動して、ピストン17がシリンダチューブ11内を第1ロッドカバー12に当接するストロークエンドまで移動した状態を考える。この状態において、操舵輪16に外力が加わって、ピストンロッド14が、ピストンロッド14の第1端部がシリンダチューブ11に対して突出する方向へさらに移動しようとしたとする。ここで、ピストン17は、シリンダチューブ11内をストロークエンドまで移動した状態であることから、ピストン17がそれ以上シリンダチューブ11内を移動することができない。
【0032】
このとき、例えば、嵌合部30の表面粗さを、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくせずに、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さと同じとした場合に比べると、嵌合部30とピストン17との間の摩擦係数が大きくなっている。このため、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことが抑制されている。
【0033】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)ピストンロッド14の外周面におけるピストン17との嵌合部30の表面粗さが、ピストンロッド14の外周面における第1シール部材21との摺動部である第1摺動部31の表面粗さ、及びピストンロッド14の外周面における第2シール部材22との摺動部である第2摺動部32の表面粗さよりも大きい。これによれば、例えば、嵌合部30の表面粗さを、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくせずに、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さと同じとした場合に比べると、嵌合部30とピストン17との間の摩擦係数を大きくすることができる。したがって、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことを抑制することができる。
【0034】
また、ピストンロッド14の外周面全体の表面粗さを大きくすると、第1摺動部31が第1シール部材21と摺動したり、第2摺動部32が第2シール部材22と摺動したりする際に、第1シール部材21及び第2シール部材22が摩耗してしまい、第1シール部材21及び第2シール部材22におけるピストンロッド14とのシール性が悪化してしまう。そこで、ピストンロッド14の外周面全体の表面粗さを大きくせずに、嵌合部30の表面粗さを、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくしているため、第1シール部材21及び第2シール部材22におけるピストンロッド14とのシール性を確保することができる。以上により、第1シール部材21及び第2シール部材22におけるピストンロッド14とのシール性を確保しつつも、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことを抑制することができる。
【0035】
(2)第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さが、嵌合部30の表面粗さと同じである。これによれば、嵌合部30の表面に仕上げ加工を行う際に、嵌合部30からある程度はみ出した部位である第1非摺動部33及び第2非摺動部34まで同じ表面粗さに仕上げてもよいため、嵌合部30の表面に対する仕上げ加工が容易となる。
【0036】
(3)嵌合部30の外径R1は、第1摺動部31の外径R21及び第2摺動部32の外径R22よりも小さい。これによれば、ピストンロッド14がピストン17に対して移動しても、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第1摺動部31との間に形成される第1段差35がピストン17に引っ掛かったり、ピストンロッド14の外周面における嵌合部30と第2摺動部32との間に形成される第2段差36がピストン17に引っ掛かったりする。これにより、ピストンロッド14がピストン17に対して、それ以上移動してしまうことが規制される。したがって、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0037】
(4)嵌合部30の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さの2倍である構成は、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことを抑制する構成として好適である。
【0038】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0039】
図4に示すように、嵌合部30の外径R1が、第1摺動部31の外径R21及び第2摺動部32の外径R22よりも大きくてもよい。なお、図4では、ピストンロッド14の外周面における第1非摺動部33と第1摺動部31との境界部分に形成される第1段差35A、及びピストンロッド14の外周面における第2非摺動部34と第2摺動部32との境界部分に形成される第2段差36Aを誇張して図示している。
【0040】
この場合、ピストンロッド14の外周面に仕上げ加工を行う際には、まず、ピストンロッド14の外周面全体が、嵌合部30と同じ表面粗さになるように、例えば、研磨機によって研磨される。続いて、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さが、嵌合部30の表面粗さよりも小さくなるように、ピストンロッド14の外周面のうち、第1摺動部31及び第2摺動部32それぞれの外周面を研磨機によって研磨する。
【0041】
このとき、例えば、ピストンロッド14の第1端部から第2端部に向かって研磨機によって第1摺動部31の外周面及び第2摺動部32の外周面を研磨していく。まず、第1摺動部31の外周面におけるピストンロッド14の第1端部側の部位から第2端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行う。研磨機によって、第1摺動部31の外周面の研磨を終えたら、第1非摺動部33、嵌合部30、及び第2非摺動部34に対する研磨機による研磨を行わずに、第2摺動部32の外周面におけるピストンロッド14の第1端部側の部位から第2端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行う。
【0042】
これによれば、例えば、嵌合部30の外径R1が、第1摺動部31の外径R21及び第2摺動部32の外径R22よりも小さい場合に比べると、嵌合部30とピストン17との接触面積を大きくすることができるため、ピストン17における嵌合部30に対する嵌合力を大きくすることができる。したがって、ピストンロッド14がピストン17から引き抜かれてしまうことを抑制し易くすることができる。
【0043】
図4に示す実施形態において、ピストンロッド14の外周面全体を、嵌合部30と同じ表面粗さになるように、研磨機によって研磨した後、以下のように、ピストンロッド14の外周面の仕上げ加工を行ってもよい。例えば、第1摺動部31の外周面におけるピストンロッド14の第1端部側の部位から第2端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行い、第2摺動部32の外周面におけるピストンロッド14の第2端部側の部位から第1端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行うようにしてもよい。
【0044】
図4に示す実施形態において、ピストンロッド14の外周面全体を、嵌合部30と同じ表面粗さになるように、研磨機によって研磨した後、以下のように、ピストンロッド14の外周面の仕上げ加工を行ってもよい。例えば、まず、第1摺動部31の外周面におけるピストンロッド14の第1端部側の部位から第2端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行う。次に、第1非摺動部33、嵌合部30、及び第2非摺動部34に対する研磨機による研磨がほぼ行われないように、第1摺動部31の外周面を研磨したときの研磨機の送り速度よりも速くした状態で、第1非摺動部33、嵌合部30、及び第2非摺動部34に対する研磨を行う。そして、第2摺動部32の外周面を研磨機によって研磨する際には、第1摺動部31の外周面を研磨したときと同じ研磨機の送り速度に戻してから、第2摺動部32の外周面におけるピストンロッド14の第1端部側の部位から第2端部側の部位に向けて研磨機による研磨を行うようにしてもよい。
【0045】
○ 実施形態において、ピストンロッド14の外周面に仕上げ加工を行う際に、まず、ピストンロッド14の外周面全体を、嵌合部30と同じ表面粗さになるように、研磨機によって研磨しなくてもよい。例えば、ピストンロッド14の外周面に仕上げ加工を行う際には、まず、ピストンロッド14の外周面全体を、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さになるように研磨してもよい。そして、嵌合部30、第1非摺動部33、及び第2非摺動部34が、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きくなるように、ピストンロッド14の外周面のうち、嵌合部30、第1非摺動部33、及び第2非摺動部34それぞれの外周面を研磨機によって研磨するようにしてもよい。
【0046】
○ 実施形態において、第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さが、嵌合部30の表面粗さよりも小さくてもよい。
○ 実施形態において、第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さが、嵌合部30の表面粗さよりも大きくてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さと同じであってもよい。
○ 実施形態において、第1非摺動部33の表面粗さ及び第2非摺動部34の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも小さくてもよい。
【0048】
○ 実施形態において、嵌合部30の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さの2倍よりも大きくてもよい。要は、嵌合部30の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さの2倍以上であるとよい。
【0049】
○ 実施形態において、嵌合部30の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さよりも大きければ、嵌合部30の表面粗さが、第1摺動部31の表面粗さ及び第2摺動部32の表面粗さの2倍よりも小さくてもよい。
【0050】
○ 実施形態において、例えば、シリンダチューブ11が、端壁と、端壁から筒状に延びる周壁と、を有する構成であり、シリンダチューブ11における端壁とは反対側の開口が、ロッドカバーによって閉塞されている構成であってもよい。この場合、端壁には、ピストンロッド14が貫通する貫通孔が形成されている。
【0051】
○ 実施形態において、第1貫通孔12aの内周面に装着される第1シール部材21の数は特に限定されるものではない。
○ 実施形態において、第2貫通孔13aの内周面に装着される第2シール部材22の数は特に限定されるものではない。
【0052】
○ 実施形態において、油圧式パワーステアリング用シリンダ装置10は、フォークリフト等の産業車両の操舵輪16の操舵を行うものに限らず、産業車両以外の車両の操舵輪16の操舵を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…油圧式パワーステアリング用シリンダ装置、11…シリンダチューブ、14…ピストンロッド、15…タイロッド、16…操舵輪、17…ピストン、18…油圧室としての第1油圧室、19…油圧室としての第2油圧室、21…シール部材としての第1シール部材、22…シール部材としての第2シール部材、30…嵌合部、31…摺動部である第1摺動部、32…摺動部である第2摺動部、33…非摺動部である第1非摺動部、34…非摺動部である第2非摺動部。
図1
図2
図3
図4