(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112138
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】樹脂材料およびねじ締結用成形部材
(51)【国際特許分類】
C08L 61/10 20060101AFI20220726BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220726BHJP
F16B 31/04 20060101ALI20220726BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C08L61/10
C08K3/013
F16B31/04 Z
F16B5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007818
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 享起
【テーマコード(参考)】
3J001
4J002
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GA06
3J001GC02
3J001HA02
3J001JA03
3J001KA21
4J002CC031
4J002CC051
4J002CC071
4J002DA030
4J002DE076
4J002DE106
4J002DE136
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4J002DF016
4J002DG046
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DK006
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4J002EG030
4J002EU017
4J002FD016
4J002FD090
4J002FD147
4J002FD160
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】 樹脂部材にボルトが直締めされたときのボルト緩みを低減できる樹脂材料を提供する。
【解決手段】本発明の樹脂材料は、フェノール樹脂を含み、ねじ穴を有する部材を形成するための樹脂材料であって、以下の条件により測定される軸力保持率(%)が70~100%である。(条件)前記樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得る。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得る。得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設け、当該孔に六角ボルト(M5)を挿入し、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結を行う。当該六角ボルトが締結された前記樹脂板を加熱し、120℃で1時間保持したときの軸力をF1[N]、120℃で1000時間経過したときの軸力をF2[N]とし、F1に対するF2の百分率を軸力保持率[%]とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂を含み、ねじ穴を有する部材を形成するための樹脂材料であって、
以下の条件により測定される軸力保持率(%)が70~100%である、樹脂材料。
(条件)
前記樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得る。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得る。得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設け、当該孔に六角ボルト(M5)を挿入し、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結を行う。当該六角ボルトが締結された前記樹脂板を加熱し、120℃で1時間保持したときの軸力をF1[N]、120℃で1000時間経過したときの軸力をF2[N]とし、F1に対するF2の百分率を軸力保持率[%]とする。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂材料であって、
前記樹脂材料が、無機フィラーを含む、樹脂材料。
【請求項3】
請求項1に記載の樹脂材料であって、
前記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂および/またはレゾール型フェノール樹脂である、樹脂材料。
【請求項4】
請求項2または3に記載の樹脂材料であって、
前記無機フィラーは、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素の中から選ばれる1種または2種以上である、樹脂材料。
【請求項5】
請求項2乃至4いずれか一項に記載の樹脂材料であって、
前記無機フィラーの含有量は、前記樹脂材料全量に対して、20~75質量%である、樹脂材料。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載の樹脂材料であって、
前記樹脂材料が、硬化剤を含む、樹脂材料。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれか一項に記載の樹脂材料の硬化物を備える、ねじ締結用成形部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料およびねじ締結用成形部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂部材と金属部材をボルトにより締結する場合、樹脂部材の強度向上のため、ボルト挿通部分に、金属製の筒状のインサートカラーを備えた樹脂部材が知られている。
一方で、樹脂部材の改良が進み、かかるインサートカラーを用いずに直接ボルトを挿通し締結する、いわゆる直締め用の樹脂部材が開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-71322号公報
【特許文献2】特開2020-159516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の直締め用の樹脂部材においては、ボルト締結後、ボルトの緩みを低減する点で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件発明者は、直締め用の樹脂部材のボルトの緩みを低減する観点から鋭意検討を行った結果、同様の樹脂材料を用いても、十分に高い締め付けトルクが得られる場合とそうでない場合とがあることを知見した。そこで、十分に高いトルクが得られる樹脂材料とそうでない樹脂材料との違いについてさらに検討を行ったところ、新たに軸力保持率という指標を考案し、かかる指標を制御することによって、十分に高いトルクが得られる樹脂材料を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明によれば、
フェノール樹脂を含み、ねじ穴を有する部材を形成するための樹脂材料であって、
以下の条件により測定される軸力保持率(%)が70~100%である、樹脂材料が提供される。
(条件)
前記樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得る。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得る。得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設け、当該孔に六角ボルト(M5)を挿入し、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結を行う。当該六角ボルトが締結された前記樹脂板を加熱し、120℃で1時間保持したときの軸力をF1[N]、120℃で1000時間経過したときの軸力をF2[N]とし、F1に対するF2の百分率を軸力保持率[%]とする。
【0007】
本発明によれば、
上記樹脂材料の硬化物を備える、ねじ締結用成形部材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
樹脂部材にボルトが直締めされたときのボルト緩みを低減できる樹脂材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】軸力の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0011】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0012】
本実施形態の樹脂材料は、ねじ穴を有する部材を形成するために用いられる。ねじ穴とは、ボルト、ねじが挿通される貫通孔を意図する。ねじ穴の大きさ、形状等は特に限定されず、目的に応じて適宜設計される。
ねじ穴は、ねじ山を切っているものであっても、切っていないものであってもよい。本実施形態の樹脂材料は圧縮強度に優れるため、高荷重で圧着させて締結することができる。そのため、ねじ山を形成しなくても、十分なトルクが得られる。
ねじ穴の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
ねじ穴を有する部材とは、本実施形態の樹脂材料を硬化させて得られる部材を意図する。
【0013】
本実施形態の樹脂材料は、以下の条件により測定される軸力保持率(%)が70~100%である。
(条件)前記樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得る。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得る。得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設け、当該孔に六角ボルト(M5)を挿入し、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結を行う。当該六角ボルトが締結された前記樹脂板を加熱し、120℃で1時間保持したときの軸力をF1[N]、120℃で1000時間経過したときの軸力をF2[N]とし、F1に対するF2の百分率を軸力保持率[%]とする。
【0014】
本実施形態において軸力は、以下のようにして測定される。
図1に示すように、まず、金属部材1上に樹脂部材(樹脂板)2が接合された積層体を準備する。次に、六角ボルト(M5)3の軸部分に、樹脂部材(樹脂板)2と金属部材1との接合面を跨ぐように延在するセンサー(「軸力測定用ボルトセンサー」、株式会社東京測器研究所製)4を取り付け、六角ボルト3にかかる引張応力と歪を測定できるようにする。次いで、
図1(b)に示すように、樹脂部材(樹脂板)2の上面中央にΦ5.5mmの孔およびザグリ5を設け、当該孔に六角ボルト(M5)3を挿入し(
図1(a))、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結する(
図1(b))。センサー4から得られた係数を用いて、荷重へと変換し、軸力とする。
【0015】
本実施形態において、軸力保持率は70~100%であり、好ましくは80~100%である。
また、本実施形態において、軸力F1は、好ましくは2.0~10kNであり、より好ましくは2.5~8.0kNである。
本実施形態において、軸力F2は、好ましくは1.8~8.0Nであり、好ましくは2.0~7.5kNである。
なお、本実施形態の軸力F1は、六角ボルトを樹脂板に常温で締結後、速やかに加熱炉内に投入し、120℃に達した時点から1時間保持した時点での測定値である。すなわち、加熱炉内から、樹脂板を取り出すことなく120℃環境下で測定される。また、軸力F2は、六角ボルトを樹脂板に常温で締結後、速やかに加熱炉内に投入し、120℃に達した時点で1000時間保持した時点での測定値である。すなわち、加熱炉内から、樹脂板を取り出すことなく120℃環境下で測定される。
【0016】
本実施形態の樹脂材料において、上記条件を満たすためには、樹脂材料の熱収縮を低くすることが重要となる。そのため、次のような公知の方法を適切に組み合わせることで、本願発明の樹脂材料を得ることができる。(i)フェノール樹脂、および無機フィラーの種類の選択、(ii)無機フィラーの添加によるフェノール樹脂の含有量の調整、(iii)任意の硬化剤の含有量の調整などが挙げられる。本実施形態において、これらの方法は、少なくともいずれか1つを採用すればよく、2つ以上を採用してもよい。
【0017】
[フェノール樹脂]
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂を含む。フェノール樹脂として具体的には、ノボラック型フェノール樹脂および/またはレゾール型フェノール樹脂を用いることができる。
【0018】
ノボラック型フェノール樹脂は、原料のフェノール類とアルデヒド類とを、無触媒、酸性触媒または遷移金属触媒の存在下で反応させて得られる樹脂であれば、特に限定されない。
ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、未変性フェノール系樹脂、クレゾール樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレノール樹脂、クレゾール・キシレノール樹脂、クレゾール変性フェノール系樹脂、レゾルシノール変性フェノール系樹脂、キシレノール変性フェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、アルキルフェノール変性フェノール系樹脂、ビスフェノール変性フェノール系樹脂、カシュー油変性フェノール系樹脂、トール油変性フェノール系樹脂、ロジン変性フェノール系樹脂、テルペン油変性フェノール系樹脂、ランダムノボラック型フェノール樹脂、ハイオルソノボラック型フェノール樹脂、または下記に示すフェノール類を1種または2種以上を原料として使用した樹脂を用いることができる。
これら樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ノボラック型フェノール樹脂は、例えば、無触媒または触媒(例えば酸性触媒または遷移金属触媒)存在下で、原料モノマーであるフェノール類とアルデヒド類とを、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)が0.5~1.0となるように制御した上で、反応させて得ることができる。
【0020】
原料のフェノール類は、フェノール性水酸基を備えるモノマーであれば特に限定されない。
具体的には、フェノール;o-ジヒドロキシベンゼン、m-ジヒドロキシベンゼン、p-ジヒドロキシベンゼンなどのジヒドロキシベンゼン;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾールなどのクレゾール;エチルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノールなどのアルキルフェノール;キシレノール;3-ペンタデシルフェノール、3-ペンタデシルフェノールモノエン、3-ペンタデシルフェノールジエン、3-ペンタデシルフェノールトリエンなどのカシューオイルの含有成分;1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったカルドールの含有成分;2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンモノエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼンジエン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシ-5-ペンタデシルベンゼントリエンといったメチルカルドールの含有成分;ウルシオール;ビスフェノールA;ビスフェノールF;ビスフェノールSなどが挙げられる。
フェノール類は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
原料のアルデヒド類としては、公知のものを適宜用いることができる。
例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアルデヒド、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物;ヘキサメチレンテトラミンなどのアルデヒド化合物の発生源となる物質などを用いることができる。
アルデヒド類は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
酸性触媒としては、例えば、酢酸、シュウ酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸などの鉱物酸;ジエチル硫酸;パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸などの有機スルホン酸;1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸などの有機ホスホン酸などを用いることができる。
酸性触媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
遷移金属触媒としては、例えば、コバルト、ニッケル、クロム、マンガン、亜鉛、銅、カルシウム、マグネシウム、バリウムなどの塩が挙げられる。塩としては、例えば、酢酸塩などの有機塩類、ハロゲン化物、酸化物などが挙げられる。塩として具体的には、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
遷移金属触媒は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
レゾール型フェノール樹脂は、特に限定されない。例えば、上述のフェノール類およびアルデヒド類を、アルカリ性触媒(アルカリ条件下)または亜鉛系触媒(弱酸性条件下)で反応することにより得られたものであることができる。
【0025】
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂を1種のみ含んでもよいし、2種以上のフェノール樹脂を含んでもよい。
良好な成形性の観点からは、フェノール樹脂の全部または一部は、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、フェノール樹脂全体を基準(100質量%)としたとき、例えば10~100質量%、好ましくは20~100質量%、より好ましくは30~100質量%である。これにより、流動性をより良好とすることができる。
一方、ノボラック型フェノール樹脂とレゾール型フェノール樹脂を併用することで、流動性を良好としつつ、成形品の曲げ強度を高めることができる。
【0026】
[無機フィラー]
本実施形態の樹脂材料は、無機フィラーを含んでもよい。これにより、樹脂部材の機械的強度を高め、良好なトルクが得られやすくなる。
無機フィラーとしては、例えば、タルク、カオリンクレー、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、ケイ酸カルシウム水和物、マイカ、ガラスフレーク、ガラス粉、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、および窒化ケイ素の中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0027】
無機フィラーの含有量は、前記樹脂材料全量に対して、40~90質量%であることが好ましく、50~85質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることがさらに好ましい。
【0028】
また、無機フィラーの形状は特に限定されず、粒状、板状、繊維状等のいずれであってもよいが、均一な強度を得る観点から、粒状であることが好ましい。また、軸力を高める観点から、繊維状と粒状を混合しても用いてもよい。
【0029】
[硬化剤]
本実施形態の樹脂材料は、硬化剤を含んでもよい。これにより、樹脂材料を硬化しやすくし、樹脂部材の機械的強度を高め、良好なトルクが得られやすくなる。
硬化剤としては、例えば、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ジアミンジアミドなどのアミン系硬化剤、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物などの酸無水物硬化剤、イミダゾール化合物などが挙げられる。
【0030】
上記のアミン系硬化剤としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の炭素数2~20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルメタン、1,5-ジアミノナフタレン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、および1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン等の芳香族ポリアミン、ジシアノジアミド等を挙げることができる。
【0031】
上記のフェノール系硬化剤としては、アニリン変性レゾール樹脂やジメチルエーテルレゾール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂などを挙げることができる。
【0032】
その他の硬化剤として、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などを含む酸無水物等;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類等を挙げることができる。
これら硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
本実施形態の樹脂材料が硬化剤を含む場合、その量は、フェノール樹脂100質量部に対して、例えば10~50質量部、好ましくは15~30質量部である。硬化剤の量を適切に調整することにより、より良好な硬化性や成形性を得ることができる。
また、樹脂材料全量に対する硬化剤の含有量は、0~15質量%が好ましく、1~12質量%がより好ましく、2~9質量%がさらに好ましい。
【0034】
[その他成分]
本実施形態の樹脂材料は、発明の効果を過度に損なわない限り、上述した成分以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、エラストマー、硬化促進剤、フェノール樹脂以外の樹脂、離型剤、顔料、難燃剤、密着向上剤、カップリング剤等の添加剤が挙げられる。
本実施形態の樹脂材料がこれら他の成分を含む場合、1種のみを含んでもよいし、2種以上を含んでもよい。
【0035】
エラストマーとしては、アクリルニトリルブタジエンゴム、イソプレン、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。この中でもアクリルニトリルブタジエンゴムが好ましい。エラストマーを用いることで、特に成形品の靱性を高めることができる。
【0036】
フェノール樹脂以外の樹脂としては、ユリア(尿素)樹脂、メラミン樹脂等のトリアジン環を有する樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン環を有する樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。
【0037】
硬化促進剤としては、成形材料の分野で公知の硬化促進剤を挙げることができる。例えば、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物又は水酸化物、サリチル酸、安息香酸などの芳香属カルボン酸などを挙げることができる。
硬化促進剤を用いる場合、その量は、フェノール樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部である。
【0038】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの脂肪酸塩、脂肪酸アミド、ポリエチレンなどが挙げられる。
離型剤を用いる場合、その量は、フェノール樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.1~5質量部である。
【0039】
顔料として、例えば、カーボンブラックが挙げられる。その他、所望の色の成形品を得るため、各種の着色顔料なども使用可能である。
顔料を用いる場合、その量は、フェノール樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.1~5質量部である。
【0040】
本実施形態の樹脂材料は、溶剤(有機溶剤等)を含んでいてもよい。ただし、成形材料としての流通や取扱いの容易性、作業環境におけるVOC発生抑制などの観点から、本実施形態の樹脂材料は、溶剤(有機溶剤等)を実質的に含まないことが好ましい。
【0041】
[樹脂材料の製造方法]
本実施形態の樹脂材料の製造方法は、例えば、まず、上述の各成分のうち一部をニーダー、ロール等で予め溶融混練し、その後、残りの成分と均一に混合し、そして造粒および/または粉砕して製造することができる。
あるいは、全原料を、ロール、コニーダ、二軸押出し機等の混練装置単独、または、ロールと他の混合装置との組み合わせにより溶融混練し、その後、造粒および/または粉砕して製造してもよい。
【0042】
本実施形態の樹脂材料の室温での形状は、特に限定されないが、例えば、顆粒状、粉粒状、タブレット状、シート状等とすることができる。射出成形やトランスファー成形等への適用可能性の点からは、顆粒状、粉粒状またはタブレット状が好ましい。樹脂材料を所望の性状とするために、打錠や粒度調整などを行ってもよい。
【0043】
<ねじ締結用成形部材>
上述の樹脂材料を硬化させることで、ねじ締結用成形部材を製造することができる。例えば、上述の樹脂材料および適当な金型を用い、トランスファー成形、コンプレッション成形、射出成形等の方法により、成形品(上述の樹脂材料の硬化物を備える成形品)を製造することができる。
【0044】
ねじ締結用成形部材の用途は特に限定されない。用途としては、例えば、自動車、航空機、鉄道車両、船舶、事務機器、汎用機械、家庭用電化製品、電機機器、各種筺体、構造・機構部品などを挙げることができる。もちろん、これら以外の用途も排除されない。
【0045】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0046】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0047】
<原料>
実施例および比較例の樹脂材料を、以下の材料を用いて作製した。
(フェノール樹脂)
・フェノール樹脂1;ノボラック型フェノール樹脂、住友ベークライト社製、PR-53194、重量平均分子量:700
・フェノール樹脂2;レゾール型フェノール樹脂「PR-51723」住友ベークライト製
(無機フィラー)
・無機フィラー1;ガラス繊維「CS3E479」(平均繊維径11μm、平均繊維長3mmの繊維状充填材)日東紡績社製
・無機フィラー2;ガラスビーズ「UB-SPL-30」(平均粒径30μm)ユニチカ社製
・無機フィラー3;シリカ「SIDISTAR」(平均粒径0.15μm)ELKEM社製
(硬化剤)
・硬化剤1;ヘキサメチレンテトラミン「ヘキサミンスーパーファイン」長春石油化学社製
(その他)
・離型剤;ステアリン酸カルシウム「Ca-St」日東化成工業社製
・着色剤;「カーボンブラック#750」三菱化学社製
・有機フィラー;木粉、「モップン100」カネキ燃料社製
【0048】
<樹脂材料の製造>
表1に示される配合比率で各成分を配合して混合物とし、この混合物を、加熱ロールを用いて、回転速度が高速側を90℃、低速側を20℃として、5分間混練した。5分間混練後、冷却した。その後、粉砕して、粉粒状の樹脂材料を得た。
【0049】
得られた樹脂材料について、以下の測定・評価を行った。
【0050】
[軸力保持率]
前記樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得た。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得た。
得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設け、当該孔に六角ボルト(M5)を挿入し、初期発生軸力7.2kNとなるようなトルク値にて締結を行う。当該六角ボルトが締結された前記樹脂板を加熱し、120℃で1時間保持したときの軸力をF1[N]、120℃で1000時間経過したときの軸力をF2[N]とし、F1に対するF2の百分率を軸力保持率[%]とした。
【0051】
<樹脂板の製造>
得られた樹脂材料を用い、成形温度常温、成形圧力15MPa、成形時間10秒の条件で、タブレット化し、Φ30の円柱形状のタブレットを得た。当該タブレットを、100℃に高周波予熱器で予熱し、試験片サイズ75mm×45mm×5mmtの試験片にて、金型温度175℃、成形圧力30MPa(成形品にかかる面圧値)、硬化時間5分で圧縮成形し、さらに180℃4時間で処理後、220℃3時間のアフターベーク処理を行い、樹脂板を得た。その後、得られた樹脂板の中心にΦ5.5mmの孔を設けた。
【0052】
得られた樹脂板について、以下の測定・評価を行った。
[長期寸法変化(減少)率]
樹脂板を、加熱炉内に投入し、120℃に達した時点で1000時間保持し、加熱処理を施した。当該加熱処理前の樹脂板の厚みをT1[mm]、当該加熱処理後の樹脂板の厚みをT2[mm]とし、以下の式に当てはめ、長期寸法変化率を求めた。
長期寸法変化[%]:{(T1-T2)/T1}×100
◎;0.2%未満
○;0.2%以上、0.5%未満
×;0.5%以上
なお、厚みはマイクロメーターを用い、樹脂板に設けられた孔の中心から樹脂板の長手方向に20mmの地点2箇所を測定し、その平均値とした。
【0053】