(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112182
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】眼組織処理装置、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム、及び、コンピューターがアクセス可能な媒体
(51)【国際特許分類】
A61F 9/01 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
A61F9/01 100
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007885
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】520452552
【氏名又は名称】艾克夏醫療儀器股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 承好
(57)【要約】
【課題】眼組織処理装置、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム、及び、コンピューターがアクセス可能な媒体を提供する。
【解決手段】眼組織処理装置(100)は、コンピューターにプログラムされた後、レーザー光源(101)からフェムト秒レーザービームを産生し、フェムト秒レーザービームを眼の組織Eへ導引し、フェムト秒レーザービームにより眼の組織E中に目標処理エリアT1、T2を産生する。目標処理エリアT1、T2は除去待ち部分TR、除去待ち部分TRから延伸するシャープエッジ部分TEを有し、シャープエッジ部分TEは除去待ち部分TRに隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。シャープエッジ部分TEは目標処理エリアT1、T2の産生過程において、フェムト秒レーザービームを密集して加えることでアブレーションされ、眼の組織E中から目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRを除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の組織を処理する装置であって、
フェムト秒レーザービームを産生するレーザー光源と、
前記レーザー光源により産生される前記フェムト秒レーザービームを導引する光学システムと、
前記光学システムからの前記フェムト秒レーザービームを、コンデンサレンズを通して眼の組織に加える光学走査移動装置と、
前記レーザー光源、前記光学システム及び前記光学走査移動装置と接続され、前記レーザー光源を制御し、前記フェムト秒レーザービームを産生し、前記光学システムを制御し、前記フェムト秒レーザービームを前記光学走査移動装置へ導引するコントローラーと、
を備え、
前記コントローラーは、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び前記除去待ち部分から延伸するシャープエッジ部分を有する目標処理エリアを産生し、
前記シャープエッジ部分は、前記除去待ち部分に隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、
前記シャープエッジ部分は、前記目標処理エリアの産生過程において、前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、アブレーションされ、
使用者の操作下で、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する除去装置をさらに備えることを特徴とする、眼組織処理装置。
【請求項2】
前記除去装置が、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記コントローラーはさらに、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアへ接続する除去切り口を作り出し、
前記除去装置は、使用者の操作下で、眼の組織から、前記除去切り口を通して、前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去することを特徴とする、請求項1に記載の眼組織処理装置。
【請求項3】
前記コントローラーは、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に前記目標処理エリアを産生し、
眼の組織中で下カット面を産生し、
前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、前記シャープエッジ部分をアブレーションし、
眼の組織中で、前記下カット面と相互に接続する上カット面を産生し、前記シャープエッジ部分は、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、前記除去待ち部分を産生することを特徴とする、請求項1に記載の眼組織処理装置。
【請求項4】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁において相互に接続し、
前記目標処理エリアの前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所を有し、
前記除去待ち部分は、前記目標処理エリアの中央に位置し、
前記シャープエッジ部分は、前記除去待ち部分に隣接する部分から、前記下カット面の外周縁へ向かい、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備えることを特徴とする、請求項3に記載の眼組織処理装置。
【請求項5】
前記除去装置が、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記コントローラーはさらに、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアへ接続する除去切り口を作り出し、
前記除去装置は、使用者の操作下で、眼の組織から、前記除去切り口を通して、前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去することを特徴とする、請求項4に記載の眼組織処理装置。
【請求項6】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁、及び中心軸に近い部分において相互に接続し、
前記目標処理エリアの前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所を有し、
前記コントローラーは、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に前記目標処理エリアを産生し、さらに切断面をアブレーションし、
前記切断面は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁の相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面の前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所に接続し、前記目標処理エリアを貫通することを特徴とする、請求項3に記載の眼組織処理装置。
【請求項7】
前記除去装置が、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記コントローラーはさらに、前記光学走査移動装置を制御し、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアまで接続する除去切り口を作り出し、
前記除去装置は、使用者の操作下で、眼の組織から、前記除去切り口を通して、前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去することを特徴とする、請求項6に記載の眼組織処理装置。
【請求項8】
前記切断面は、前記目標処理エリアの中心軸に相対し、前記除去切り口の反対側に位置することを特徴とする、請求項7に記載の眼組織処理装置。
【請求項9】
処理される眼の組織は、角膜或いは水晶体であることを特徴とする、請求項1に記載の眼組織処理装置。
【請求項10】
眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムであって、
レーザー光源からフェムト秒レーザービームを産生し、前記フェムト秒レーザービームを眼の組織へ導引し、
前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び前記除去待ち部分から延伸するシャープエッジ部分を有する目標処理エリアを産生し、
前記シャープエッジ部分は、前記除去待ち部分に隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、
前記シャープエッジ部分は、前記目標処理エリアの産生過程において、前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、アブレーションされ、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分が除去されることを特徴とする、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項11】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアへ接続する除去切り口を作り出し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去されることを特徴とする、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項12】
フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、前記目標処理エリアを産生し、
眼の組織中で、下カット面を産生し、
前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、前記シャープエッジ部分をアブレーションし、
眼の組織中で、前記下カット面と相互に接続する上カット面を産生し、
前記シャープエッジ部分は、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、前記除去待ち部分を産生することを特徴とする、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項13】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁において相互に接続し、
前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所を有し、
前記除去待ち部分は、前記目標処理エリアの中央に位置し、
前記シャープエッジ部分は、前記除去待ち部分に隣接する部分から、前記下カット面の外周縁へ向かい、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備えることを特徴とする、請求項12に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項14】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に除去切り口を作り出し、
前記除去切り口は、眼の組織の外表面から、前記目標処理エリアに接続し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去されることを特徴とする、請求項13に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項15】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁、及び中心軸に近い部分において相互に接続し、
前記目標処理エリアの前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所を有し、
前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、前記目標処理エリアを産生し、さらに切断面をアブレーションし、
前記切断面は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所に接続し、前記目標処理エリアを貫通することを特徴とする、請求項12に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項16】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に除去切り口を作り出し、前記除去切り口は、眼の組織の外表面から、前記目標処理エリアに接続し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去されることを特徴とする、請求項15に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項17】
前記切断面は、前記目標処理エリアの中心軸に相対し、前記除去切り口の反対側に位置することを特徴とする、請求項16に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項18】
処理される眼の組織は、角膜或いは水晶体であることを特徴とする、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【請求項19】
眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体であって、
請求項10~18の任意の一項に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムに保存されることを特徴とする、眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼組織処理装置、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム、及び、コンピューターがアクセス可能な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
視力矯正の目的を達成するため、エキシマレーザーを使用して角膜のカーブを変える方法が既に行われており、レーザー視力矯正(Laser Vision Correction、LVC)と呼ばれる。レーザー視力矯正方法において、最も広く行われているのがエキシマレーザー角膜屈折矯正手術(LASIK)で、レーザー視力矯正方法のおよそ85%を占める。
【0003】
当初LASIK手術を行う際には、医師は通常、眼球用カンナ(マイクロケラトームと別称)で角膜の表面をスライスし角膜フラップを作り、続いて角膜フラップをめくり、次にレーザーで表出した角膜組織を削り、角膜のカーブを変える。
近年、角膜上に角膜フラップを削り出す方法には、フェムト秒レーザーを利用する方法が開発されている。それは、おびただしい数のレーザーパルスにより、光分解効果を生じることで極めて微小な点状空泡を形成し組織を分離させ、角膜フラップを形成するものである。フェムト秒レーザーは、マイクロケラトームに比べ高い安全性、再現性、予測性、フレキシブル性を提供できるため、フェムト秒レーザーを利用する方法は、LASIK手術にますます広く利用され、角膜フラップ形成に用いられている。
この他、フェムト秒レーザーを使用する方法は、マイクロケラトームと関連する医源性円錐角膜(急勾配な角膜)、角膜フラップ移動(平坦な角膜)及び不規則角膜フラップ等の副作用、合併症発生の確率を低下させることができる。
【0004】
しかし、LASIK手術においては、角膜フラップの切り口が比較的大きいため、手術後に角膜フラップが角膜を支えられず、眼圧の強度に対抗できないため、手術後の角膜の強度を大きく落としてしまっている。
【0005】
LASIK手術の他に、近年、フェムト秒レーザーによる別種のレーザー視力矯正方法が開発されている。それは、フェムト秒レーザーにより、角膜組織中に角膜レンズを産生し、さらにフェムト秒レーザーが産生する低侵襲切り口を通して、角膜組織中から角膜レンズを除去(取り出し)、これにより角膜のカーブを変えるものである。
この種の方法では、切り口が比較的大きい角膜フラップを産生する必要がないため、手術後に発生する角膜フラップ移動の問題を回避でき、しかも角膜の強度を過度に低下させる恐れも低い。
【0006】
角膜レンズを除去(取り出し)する方法について、既に知られているのは、フェムト秒レーザーを利用し、完全な角膜組織中から、2個のカット面を切り出し、角膜レンズを形成するものである。この2個のカット面は、角膜外部形状に沿った上カット面(Capと呼称)、曲率が上カット面より高い下カット面(Curvatureと呼称)を含む。続いて、フェムト秒レーザーを使用し、角膜レンズのカット面外周に再度のカットを行い、角膜表面を切り開く低侵襲切り口を産生し、この低侵襲切り口を通して、角膜レンズを角膜組織内から取り出す。
こうすることで、角膜レンズを取り出した後、角膜の外曲率は変化し、その差が、眼の屈折不正を矯正(視力矯正)に必要な屈折率である。
【0007】
特許文献1は、角膜レンズ取り出し方法に関する技術を開示する。
角膜組織から取り出される過程において、角膜レンズ(特に角膜レンズの辺縁部分)に破裂が発生しないよう、角膜レンズの上カット面と下カット面の間に、最小制限厚さDHを設置し、角膜レンズの辺縁部分の強度を高める必要がある。
しかし、
図5A及び5Bに示す通り、上カット面と下カット面の間に最小制限厚さDHを設置する方法は、除去(取り出し)される角膜レンズの厚さを拡大してしまい、手術後に残った角膜全体の厚さが比較的薄くなってしまい、角膜が眼圧の強度に対抗するには不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第US10682256号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記先行技術では、上カット面と下カット面の間に最小制限厚さDHを設置するが、その方法では手術後に残る角膜全体の厚さが比較的薄くなり、角膜が眼圧の強度に対抗するには不利であるという欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述した従来技術中の問題を効果的に克服でき、同時に眼の組織の強度維持を達成し、しかも除去(取り出し)された眼の組織の部分破裂を回避できる眼組織処理装置、及び、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムに関する。
【0011】
本発明による眼組織処理装置は、
フェムト秒レーザービームを産生するレーザー光源と、
レーザー光源により産生されるフェムト秒レーザービームを導引する光学システムと、
光学システムからのフェムト秒レーザービームを、コンデンサレンズを通して眼の組織に加える光学走査移動装置と、
レーザー光源、光学システム及び光学走査移動装置と接続され、レーザー光源を制御し、フェムト秒レーザービームを産生し、光学システムを制御し、フェムト秒レーザービームを光学走査移動装置へ導引するコントローラーと、
を備える。
コントローラーは、光学走査移動装置を制御し、フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び除去待ち部分から延伸するシャープエッジ部分を有する目標処理エリアを産生する。
シャープエッジ部分は、除去待ち部分に隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。
シャープエッジ部分は、目標処理エリアの産生過程において、フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、アブレーションされる。
この眼の組織を処理する装置は、使用者の操作下で、眼の組織から目標処理エリアの除去待ち部分を除去する除去装置をさらに備える。
【0012】
目標処理エリアの除去待ち部分を除去する前に、先にフェムト秒レーザービームにより、目標処理エリアのシャープエッジ部分をアブレーションするため、目標処理エリアには眼の組織中から除去する必要がある除去待ち部分のみが残されており、しかもこの除去待ち部分は、眼の組織中から除去される過程において破裂しない。
よって、眼の組織中の除去(取り出し)される部分の破裂の発生を回避できる。
【0013】
この他、本発明が提供するコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、従来の技術のように、別に最小制限厚さを設置して眼の組織中の除去(取り出し)される部分の破裂の発生を回避する必要がなく、眼の組織処理の実際の必要に基づき、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、産生される目標処理エリアは、相応の厚さを備え、しかもこの厚さの最小値は、ゼロの可能性がある。
言い換えれば、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法は、眼の組織処理(例えば矯正)に必要な目標処理エリアの厚さ以外の厚さの拡大を回避でき、こうして眼の組織の強度維持の目的を最大程度に達成する。
【0014】
さらに、眼の組織から該目標処理エリアの該除去待ち部分を除去する前に、該フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に除去切り口を作り出す。該除去切り口は、眼の組織の外表面から、該目標処理エリアに接続し、しかも該目標処理エリアの該除去待ち部分は、該除去切り口を通して、眼の組織中から除去される。
【0015】
さらに、該フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、該目標処理エリアを産生し、眼の組織中で、下カット面を産生する。また、該フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、該シャープエッジ部分をアブレーションし、眼の組織中で、該下カット面と相互に接続する上カット面を産生する。これにより該シャープエッジ部分は、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、該除去待ち部分を産生する。
【0016】
さらに、該上カット面及び該下カット面は、該下カット面の外周縁において相互に接続し、該シャープエッジ部分は、該上カット面と該下カット面との、該下カット面の外周縁における相互接続箇所を有する。これにより、該除去待ち部分は、該目標処理エリアの中央に位置し、該シャープエッジ部分は、該除去待ち部分に隣接する部分から、該下カット面の外周縁へ向かい、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。
【0017】
さらに、該上カット面及び該下カット面は、該下カット面の外周縁、及び中心軸に近い部分が相互に接続する。該目標処理エリアの該シャープエッジ部分は、該上カット面と該下カット面との、該下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び該上カット面と該下カット面との、該下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所を有する。該フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、該目標処理エリアを産生し、さらに切断面をアブレーションする。該切断面は、該上カット面と該下カット面との、該下カット面の外周縁の相互接続箇所、及び該上カット面と該下カット面との、該下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所に接続し、該目標処理エリアを貫通する。
【0018】
さらに、該切断面は、該目標処理エリアの中心軸に相対し、該除去切り口の反対側に位置する。
【0019】
さらに、処理される眼の組織は、角膜或いは水晶体である。
【0020】
本発明が提供する眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムは
レーザー光源からフェムト秒レーザービームを産生し、
フェムト秒レーザービームを眼の組織へと導引する。
該フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び該除去待ち部分から延伸するシャープエッジ部分を有する目標処理エリアを産生する。
該シャープエッジ部分は、該除去待ち部分に隣接する部分から、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。該シャープエッジ部分は、該目標処理エリアの産生過程において、該フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、アブレーションされ、眼の組織から該目標処理エリアの該除去待ち部分が除去される。
【0021】
本発明が提供する眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体は、前述の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムに保存される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に基づく眼組織処理装置による眼の組織除去のフローチャートである。
【
図2A】本発明の実施形態に基づく眼の組織中で目標処理エリアを産生する正面模式図である。
【
図3A】本発明の実施形態に基づく眼の組織中で別種の目標処理エリアを産生する正面模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に基づく眼組織処理装置の模式図である。
【
図5A】従来技術に基づく角膜中で角膜レンズを産生する様子を示す断面模式図である。
【
図5B】従来技術に基づく角膜中で別種の形態の角膜レンズを産生する様子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(一実施形態)
以下では図示を参照としながら、本発明の実施形態について説明する。
以下の記述において、実質的に同一の機能と構成を備える構成部材は同一の符号で表示し、しかも必要時にのみ繰り返し記述を行う。
【0024】
先ず、本実施形態は眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムを利用し、眼組織処理装置100を制御する(
図4参照)。
これにより、眼組織処理装置100は、眼の組織E(
図2B、
図3B参照)に対して処理を行う。
コンピュータープログラムはコンピューターを通して、媒体にアクセス可能である。
以下の本発明の実施形態に関する説明中においては、角膜を眼の組織Eの例として説明を行うが、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法が適用可能な眼の組織は、これに限定されない。
例えば、本発明のコンピュータープログラムにより眼の組織Eを処理する方法は、水晶体などの他の眼の組織に適用することもできる。
【0025】
図1、
図2B及び
図3Bに示す通り、眼組織処理装置100(
図4参照)はコンピューターにプログラムされた後、以下のステップS101からS104に基づき、眼の組織Eを処理する。
先ず、ステップS101中では、レーザー光源101(
図4参照)からフェムト秒レーザービームを産生する。
次にステップS102中では、フェムト秒レーザービームを眼の組織Eへと導引する。
続いて、ステップS103中では、フェムト秒レーザービームにより、眼の組織E中に目標処理エリアT1、T2を産生する。
目標処理エリアT1、T2は、シャープエッジ部分TE及び除去待ち部分TRを有し、シャープエッジ部分TEは、除去待ち部分TRから延伸し、しかもシャープエッジ部分TEは、隣り合う除去待ち部分TRから、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。
目標処理エリアT1、T2の詳細に関しては、この後に、
図2A~3Bを用い、詳細な説明を行う。
最後に、ステップS104中で、眼の組織E中から目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRを除去する。
【0026】
以下では、
図2A~
図3Bにより、本発明の実施形態において、眼の組織E中に産生される2種の目標処理エリアT1、T2の例を示す。
【0027】
図2A及び
図2Bは、本発明の実施形態において、眼の組織E中に産生される目標処理エリアT1の例を示す。
【0028】
図2A及び
図2Bに示す通り、眼の組織E中に産生される目標処理エリアT1は、以下を含む。
先ず、フェムト秒レーザービームにより、眼の組織E中に下カット面1を産生し、次にフェムト秒レーザービームにより、目標処理エリアT1のシャープエッジ部分TEをアブレーションし、及び最後にフェムト秒レーザービームにより、眼の組織E中で、下カット面1と相互に接続する上カット面2を産生する。
目標処理エリアT1はこのような処理を経た後、シャープエッジ部分TEは既にフェムト秒レーザービームによりアブレーションされて気泡化し、除去待ち部分TRのみを残す。
レーザーは指向性が非常に高いため、シャープエッジ部分TEをアブレーションする方式は、シャープエッジ部分TE密集地にフェムト秒レーザービームを加えることで、フェムト秒レーザービームはシャープエッジ部分TEをアブレーションできる。
【0029】
図2A及び2Bに示す例中で、フェムト秒レーザービームにより産生される上カット面2及び下カット面1は、下カット面1の外周縁において相互に接続し、しかもそれにより、目標処理エリアT1のシャープエッジ部分TEは、上カット面2と下カット面1の下カット面1の外周縁における相互接続箇所を有する。
これにより、除去待ち部分TRは、目標処理エリアT1の中央に位置し、シャープエッジ部分TEは、除去待ち部分TRに隣接する部分から、下カット面1の外周縁へ向かい、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える。
【0030】
この他、眼の組織E中から、目標処理エリアT1の除去待ち部分TRを除去するため、本発明の実施形態はさらに、フェムト秒レーザービームにより、眼の組織E中に除去切り口4を作り出し、この除去切り口4は、上カット面2の外周縁箇所に位置し、しかも眼の組織Eの外表面から上カット面2へと接続し、しかもそれにより、除去切り口4はまた目標処理エリアT1と相互に接続する。
こうすることで、除去切り口4を通して、眼の組織E中から除去目標処理エリアT1の除去待ち部分TRを除去することができる。
【0031】
眼の組織E中から
図2A及び2Bに示す目標処理エリアT1の除去待ち部分TRを除去した後、眼の組織E(即ち、本実施形態中の角膜)の外曲率を変えられ(例えば、より緩やかになる)、これにより角膜のカーブを変え、視力を矯正する目的を達成する。
言い換えれば、
図2A及び
図2Bに示す目標処理エリアT1は近視を矯正するため、角膜中から除去する必要がある目標処理エリアの例である。
【0032】
図3A及び3Bは、本発明の実施形態に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法において、眼の組織E中で産生する別種の目標処理エリアT2の例を示す。
【0033】
図3A及び3Bに示す通り、目標処理エリアT2は、
図2A及び2Bに示す目標処理エリアT1と類似の方式を採用し、眼の組織E中において産生される。
両者の差異は、以下の通りである。
図3A及び3Bに示す例中において、先ず、フェムト秒レーザービームにより産生される下カット面1は、Wに類似の形状を備え、しかもそれにより、フェムト秒レーザービームにより産生される上カット面2と下カット面1とは、下カット面1の外周縁の他、眼の組織Eの中心軸Oに近い部分も相互に接続する(
図3B参照)。
それにより、目標処理エリアT2のシャープエッジ部分TEは、上カット面2と下カット面1との、下カット面1の外周縁における相互接続箇所、及び上カット面2と下カット面1との、下カット面1の中心軸Oに近い部分における相互接続箇所を有する。
さらに、目標処理エリアT2のシャープエッジ部分TEは、W形状に位置する下カット面1の両側のコーナー箇所をさらに有する。
目標処理エリアT2のこれらシャープエッジ部分TEはすべて、フェムト秒レーザービームにより、アブレーションされて気泡化する。
【0034】
この他、眼の組織E中から目標処理エリアT2の除去待ち部分TRを除去するため、上記説明に類似し、眼の組織E中から目標処理エリアT1の除去待ち部分TRを除去する。
本発明の実施形態は、フェムト秒レーザービームにより、眼の組織E中で除去切り口4を作り出す。この除去切り口4は、上カット面2の外周縁箇所に位置し、眼の組織Eの外表面から上カット面2へと接続し、それにより除去切り口4もまた目標処理エリアT2と相互に接続する。
こうすることで、目標処理エリアT2の除去待ち部分TRは、除去切り口4を通して、眼の組織E中から除去される。
【0035】
しかし、
図3A及び3Bに示す例中において、目標処理エリアT2の上カット面2と、下カット面1との、下カット面1の外周縁が相互に接続する他、中心軸Oに近い部分も相互に接続する(
図3B参照)。そのため、
図3Aの正視模式図の方向から見ると、この目標処理エリアT2は、ドーナツに類似の形状を呈する。
この種の状況下で、除去切り口4を通して目標処理エリアT2の除去待ち部分TRを除去しようとするなら、別にフェムト秒レーザービームにより眼の組織E中に切断面8をアブレーションする必要がある(
図3A参照)。
この切断面8は、目標処理エリアT2の上カット面2と下カット面1との、下カット面1の外周縁の相互接続箇所、及び上カット綿2と下カット面1の、下カット面1の中心軸Oに近い部分における相互接続箇所に接続し、目標処理エリアT2を貫通する。これにより目標処理エリアT2は切断面8により分けられる。
こうして、目標処理エリアT2の除去待ち部分TRは、除去切り口4から容易に除去される。
【0036】
より有利に、除去切り口4から目標処理エリアT2の除去待ち部分TRを除去するため、好ましくは除去切り口4と切断面8は、目標処理エリアT2の中心軸Oに相対し反対側上に位置する。
これにより、除去切り口4から均一に目標処理エリアT2の除去待ち部分TRを除去することができる。
【0037】
眼の組織E中から、
図3A及び3Bに示す目標処理エリアT2の除去待ち部分TRを除去した後、眼の組織E(即ち、本実施形態中の角膜)の外曲率は変えられ(例えば、より隆起する)。これにより角膜のカーブを変え、視力を矯正する目的を達成する。
言い換えれば、
図3A及び3Bに示す目標処理エリアT2は、遠視を矯正するため、角膜中から除去する必要がある目標処理エリアの例である。
【0038】
上記の
図2A~3Bを参照すると、本発明の実施形態に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法において、眼の組織E中で産生する目標処理エリアT1、T2の例の説明から、以下のことが明確に理解できる。
目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRを除去する前に、既に先にフェムト秒レーザービームにより目標処理エリアT1、T2のシャープエッジ部分TEをアブレーションし、目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRだけを残す。しかも眼の組織Eの目標処理エリアT1、T2を除去する過程中で、この除去待ち部分TRは破裂しにくい。
そのため、本発明に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、除去される眼の組織E(例えば角膜)の部分(即ち、目標処理エリアT1、T2)の、除去過程における破裂の問題発生を確実に効果的に回避できる。
【0039】
この他、本発明に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法中では、除去される眼の組織E(例えば角膜)の部分には、除去の過程で破裂の問題が発生しない。そのため、目標処理エリアに別に最小制限厚さを設置し、除去の過程における破裂発生の問題を回避する必要がある従来技術に比べ、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、目標処理エリアT1、T2に別に最小制限厚さを設置する必要がない。
よって、眼の組織E処理の実際の必要に基づき、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、産生される目標処理エリアT1、T2は、相応の厚さを備え、しかもこの厚さの最小値は、ゼロの可能性がある。
言い換えれば、本発明のコンピュータープログラムによる眼組織処理方法は、眼の組織E処理(例えば矯正)に必要な目標処理エリアT1、T2の厚さ以外の厚さ(例えば従来技術中の最小制限厚さ)の拡大を回避できる。
こうして眼の組織Eの強度維持の目的を最大程度に達成する。
【0040】
他方、本発明に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、産生される目標処理エリアT1、T2は、相応の厚さを備え、最小制限厚さを設置する必要がないため、眼の組織E処理(例えば矯正)に必要な目標処理エリアT1、T2の範囲をより正確に決定できる。これにより処理可能な範囲(例えば矯正可能な視力度数)をさらに広げることができる。
例えば、視力の矯正に対して、角膜が受けとめられる除去の目標処理エリアの最大厚さをDAとする。従来技術では、除去の目標処理エリアに対して別に最小制限厚さDHを設置する必要があるため、矯正可能な視力範囲、つまり最大厚さはDA-DH(角膜が受けとめられる除去の目標処理エリアの最大厚さから最小制限厚さを引いた)の範囲に相当する。
それに比べ、本発明に基づくコンピュータープログラムによる眼組織処理方法では、一切の最小制限厚さを設置する必要がないため、矯正可能な視力範囲、つまり最大厚さはDA(角膜が受けとめられる除去の目標処理エリアT1、T2の最大厚さ)の範囲に相当する。
【0041】
図4は、本発明の実施形態に基づく眼組織処理装置100の模式図である。
【0042】
本発明の実施形態に基づく眼組織処理装置100は、レーザー光源101と、光学システム102と、光学走査移動装置103と、コントローラー105とを備える。レーザー光源101は、フェムト秒レーザービームを産生する。光学システム102は、レーザー光源101により産生されるフェムト秒レーザービームを導引する。光学走査移動装置103は、光学システム102からのフェムト秒レーザービームを、コンデンサレンズ104を通して、眼の組織Eに加える。コントローラー105は、レーザー光源101、光学システム102、及び光学走査移動装置103と接続され、レーザー光源101、光学システム102、及び光学走査移動装置103を制御し、眼の組織E中で目標処理エリアT1、T2を産生する(
図2A~3B参照)。
本発明の実施形態に基づく眼組織処理装置100は、除去装置(図示なし)をさらに備える。除去装置は、使用者の操作下で眼の組織E中から目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRを除去する(
図2A~3B参照)。
【0043】
具体的に言えば、コントローラー105は、レーザー光源101を制御しフェムト秒レーザービームを産生し、光学システム102を制御しフェムト秒レーザービームを光学走査移動装置103に導引し、光学走査移動装置103を制御しフェムト秒レーザービームによりコンデンサレンズ104を通して眼の組織E中に目標処理エリアT1、T2を産生する。
目標処理エリアT1、T2は、シャープエッジ部分TE及び除去待ち部分TRを有し、シャープエッジ部分TEは、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備え、しかもシャープエッジ部分TEは、目標処理エリアT1、T2の産生過程で、フェムト秒レーザービームにより密集してアブレーションされる。
【0044】
コントローラー105が、いかにして眼の組織E中に目標処理エリアT1、T2を産生するかの詳細に関して、ここでは再記述しない。前文中の
図2A~3Bに関する説明を参照されたい。
【0045】
同様に、本発明に基づく眼組織処理装置100では、除去装置(図示なし)が目標処理エリアT1、T2の除去待ち部分TRを除去する前に、コントローラー105は既に先に光学走査移動装置103を制御し、フェムト秒レーザービームにより目標処理エリアT1、T2のシャープエッジ部分TEをアブレーションする。そのため、目標処理エリアT1、T2中には除去待ち部分TRのみが残されている。しかもこの除去待ち部分TRは眼の組織Eの目標処理エリアT1、T2を除去する過程で、破裂が発生しにくい。
そのため、本発明に基づく眼組織処理装置100は、除去される眼の組織E(例えば角膜)の部分(即ち、目標処理エリアT1、T2)の、除去過程における破裂の問題発生を確実に効果的に回避できる。
【0046】
この他、本発明に基づく眼組織処理装置100では、除去される眼の組織E(例えば角膜)の部分は、除去装置により除去される過程で破裂の問題が発生しない。そのため、目標処理エリアに別に最小制限厚さを設置し、除去の過程における破裂発生の問題を回避する必要がある従来の技術に比べ、本発明に基づく眼組織処理装置100では、目標処理エリアT1、T2に別に最小制限厚さを設置する必要がない。
よって、眼の組織処理の実際の必要に基づき、本発明の眼組織処理装置100のコントローラー105は、光学走査移動装置103を制御できるため、産生される目標処理エリアT1、T2は相応の厚さを備え、しかもこの厚さの最小値は、ゼロの可能性がある。
言い換えれば、本発明の眼組織処理装置100は、眼の組織E処理(例えば矯正)に必要な目標処理エリアT1、T2の厚さ以外の厚さ(例えば従来技術中の最小制限厚さ)の拡大を回避できる。こうして眼の組織Eの強度維持の目的を最大程度に達成する。
【0047】
他方、同様に、本発明に基づく眼組織処理装置100では、産生される目標処理エリアT1、T2は、相応の厚さを備え、最小制限厚さを設置する必要がない。そのため、眼の組織Eの処理(例えば矯正)に必要な目標処理エリアT1、T2の範囲をより正確に決定できる。これにより処理可能な範囲(例えば矯正可能な視力度数)をさらに広げることができる。
この長所は既に前文中で詳細に説明したため、ここでは再記述しない。
【0048】
本説明に記述する実施形態の図は、本発明に対する理解を提供するためのものである。言い換えれば、図は代表的なものに過ぎず、しかも比率に基づいていない可能性がある。図中の、ある比率は拡大され、他の比率は縮小されている可能性がある。すなわち、図は概略であり、制限性を持つものではない。
【0049】
上述した実施形態中において図を参照し、本発明の各種実施形態を既に詳細に説明したが、上述した実施形態は本発明の一実施形態に過ぎず、上文中での記述及び図中に示す特徴及び構造に本発明を限定することを意図するものではない。
本発明の範疇を離れない状況下で、本技術分野に属する当業者が考え得る各種の他の省略、置換、変化、修正もまた本発明の範疇に含まれる。
【0050】
前述した本発明の実施形態は本発明を限定するものではなく、よって、本発明により保護される範囲は特許請求の範囲を基準とする。
【符号の説明】
【0051】
1 下カット面、
2 上カット面、
4 除去切り口、
8 切断面、
100 眼組織処理装置、
101 レーザー光源、
102 光学システム、
103 光学走査移動装置、
104 コンデンサレンズ、
105 コントローラー、
DH 最小制限厚さ、
E 眼の組織、
O 中心軸、
S101~S104 ステップ、
T1、T2 目標処理エリア、
TE シャープエッジ部分、
TR 除去待ち部分。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項10】
眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムであって、
レーザー光源からフェムト秒レーザービームを産生し、前記フェムト秒レーザービームを眼の組織へ導引し、
前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び、前記除去待ち部分から延伸し前記除去待ち部分に隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備えるシャープエッジ部分を有する目標処理エリアを産生し、
前記目標処理エリアの産生過程において、前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、前記シャープエッジ部分がアブレーションされ、眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分が除去される処理を行わせる、眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアへ接続する除去切り口を作り出し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去される処理を行わせる、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、前記目標処理エリアを産生し、
眼の組織中で、下カット面を産生し、
前記フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、前記シャープエッジ部分をアブレーションし、
眼の組織中で、前記下カット面と相互に接続する上カット面を産生し、
前記除去待ち部分を産生する処理を行わせる、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項13
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項13】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁において相互に接続し、
前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所を有し、
前記除去待ち部分は、前記目標処理エリアの中央に位置し、
前記シャープエッジ部分は、前記除去待ち部分に隣接する部分から、前記下カット面の外周縁へ向かい、徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備える、請求項12に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項14
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項14】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアに接続する除去切り口を作り出し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去される処理を行わせる、請求項13に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項15
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項15】
前記上カット面及び前記下カット面は、前記下カット面の外周縁、及び中心軸に近い部分において相互に接続し、
前記目標処理エリアの前記シャープエッジ部分は、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所を有する眼組織処理装置に対し、
前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中で、前記目標処理エリアを産生し、さらに、前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の外周縁における相互接続箇所、及び前記上カット面と前記下カット面との、前記下カット面の中心軸に近い部分における相互接続箇所に接続し、前記目標処理エリアを貫通する切断面をアブレーションする処理を行わせる、請求項12に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項16
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項16】
眼の組織から前記目標処理エリアの前記除去待ち部分を除去する前に、前記フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、眼の組織の外表面から前記目標処理エリアに接続する除去切り口を作り出し、
前記目標処理エリアの前記除去待ち部分は、前記除去切り口を通して、眼の組織から除去される処理を行わせる、請求項15に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項17
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項17】
前記切断面は、前記目標処理エリアの中心軸に相対し、前記除去切り口の反対側に位置する、請求項16に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項18
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項18】
処理される眼の組織は、角膜或いは水晶体である、請求項10に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラム。
【手続補正10】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項19
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項19】
眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体であって、
請求項10~18の任意の一項に記載の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムが保存されることを特徴とする、眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明が提供する眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムは、眼組織処理装置に以下の処理を行わせる。
(1)レーザー光源からフェムト秒レーザービームを産生し、フェムト秒レーザービームを眼の組織へと導引する。
(2)該フェムト秒レーザービームにより、眼の組織中に、除去待ち部分、及び、「該除去待ち部分から延伸し除去待ち部分に隣接する部分から徐々に縮小して数値がゼロになる最小厚さを備えるシャープエッジ部分」を有する目標処理エリアを産生する。
(3)該目標処理エリアの産生過程において、該フェムト秒レーザービームを密集して加えることで、シャープエッジ部分がアブレーションされ、眼の組織から該目標処理エリアの該除去待ち部分が除去される。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明が提供する眼組織処理装置を制御するコンピューターがアクセス可能な媒体は、前述の眼組織処理装置を制御するコンピュータープログラムが保存される。