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特開2022-112187リキッド印刷インキ、印刷物及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112187
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】リキッド印刷インキ、印刷物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/104 20140101AFI20220726BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C09D11/104
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007896
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】張 琴姫
(72)【発明者】
【氏名】中根 浩平
(72)【発明者】
【氏名】茂呂居 直
【テーマコード(参考)】
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AB10D
4F100AK07B
4F100AK07D
4F100AK41A
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA04
4F100BA07
4F100CA13A
4F100CB00C
4F100CC01A
4F100DE01A
4F100DG15
4F100EH66D
4F100HB31A
4F100JA12A
4F100JD02C
4F100JD03A
4F100JK06
4F100YY00A
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE11
4J039BA21
4J039BD02
4J039FA02
4J039GA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】 本発明は、ガスバリア性に優れるリキッド印刷インキであり、特にリキッド印刷インキの印刷適性として要求される耐ブロッキング性に優れるリキッド印刷インキを提供する。
【解決手段】
オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分との重縮合体であるエステル骨格を有する非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と、着色剤と、有機溶剤と、シリカ又はシリコーン樹脂微粒子を含有し、前記シリカ又は前記シリコーン樹脂微粒子を、インキ固形分に対し0.001~5.0質量%含有するリキッド印刷インキ、及び積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分との重縮合体であるエステル骨格を有する非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と、着色剤と、有機溶剤と、シリカ又はシリコーン樹脂微粒子を含有し、
前記シリカ又は前記シリコーン樹脂微粒子を、インキ固形分に対し0.001~5.0質量%含有することを特徴とするリキッド印刷インキ。
【請求項2】
前記シリカ及び前記シリコーン樹脂微粒子を含有し、以下の関係を満たす請求項1に記載のリキッド印刷インキ。
(1)前記シリカをインキ固形分に対し0.001~5.0質量%含有する。
(2)前記シリコーン樹脂微粒子をインキ固形分に対し0.001~1.0質量%含有する。
(3)前記シリカ:前記シリコーン樹脂微粒子の質量比が0.1:0.1~5:1の範囲である。
【請求項3】
前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)の、前記オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の多価カルボン酸全成分に対する含有率が50~100%である、請求項2に記載のリキッド印刷インキ。
【請求項4】
前記シリコンビーズがメチルシルセスキオキサンビーズである請求項1~3のいずれかに記載のリキッド印刷インキ。
【請求項5】
前記シリカ又はシリコーン樹脂微粒子の平均粒子径が2.0~11.0μmの範囲である請求項1~4のいずれかに記載のリキッド印刷インキ。
【請求項6】
ポリイソシアネート(5)を含有する請求項1~5のいずれかに記載のリキッド印刷インキ。
【請求項7】
基材と、基材上に印刷された印刷層とを備える印刷物であって、前記印刷層が請求項1~6のいずれかに記載のインキ組成物であることを特徴とする印刷物。
【請求項8】
少なくとも第一の基材と、第一の基材上に印刷された印刷層と、ガスバリア性接着剤層と、第二の基材とをこの順に有する積層体であって、前記印刷層が請求項1~6のいずれかに記載のリキッド印刷インキであることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包装用ラミネートグラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッド印刷インキに関し、特にガスバリア性を有するリキッド印刷インキ、および印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品向けや産業資材向けに使用される包装材料において、内容物を保護するためのガスや水蒸気バリア性を満たす方法として最も一般的な方法は、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコール等のガスバリア性を有するフィルムを用いることであるが、これらの重合体からなる包装材料は、高湿度条件下において、その親水性に起因して酸素バリア性が大きく低下する問題や、湿度や熱水に対する耐性が劣る問題があった。
これら湿度条件等でも一定のバリア性を発揮させるために、包装材料用基材であるプラスチックフィルム、金属や金属酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、あるいは金属箔等をラミネートする際に使用する接着剤にガスバリア機能を持たせる方法や(例えば特許文献1参照)、被包装物の内容表示や装飾等の目的で使用する印刷インキそのものにガスバリア機能を持たせる方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
このうち、印刷インキは前述の通り、主目的が被包装物の内容表示や装飾等であり、ガスバリア性の他に諸々の印刷適性が求められる。特に包装材料(軟包装)用に広く用いられるグラビアインキやフレキソインキ(グラビアインキやフレキソインキを総称してリキッド印刷インキと称す)は、印刷適性の中でも特に印刷基材へのインキ密着性や耐ブロッキング性(インキが印刷されたフィルムが巻取りされた状態で保管されるとインキ被膜が非印刷面に移行してしまう現象)が求められ、その要求特性は年々厳しくなってきている。
しかしながら、特許文献2に記載の印刷インキは、時として耐ブロッキング性がリキッド印刷インキの要求特性に満たない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-57033号公報
【特許文献2】WO2018116903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ガスバリア性に優れるリキッド印刷インキであり、特にリキッド印刷インキの印刷適性として要求される耐ブロッキング性に優れるリキッド印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、印刷インキのバインダーとして、ポリエステル樹脂又はポリエステルウレタン樹等のガスバリア性を有する樹脂を使用し、且つシリカとシリコンビーズとを特定の割合で併用することで、前記課題を解決した。
【0007】
即ち本発明は、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分との重縮合体であるエステル骨格を有する非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と、着色剤と、有機溶剤と、シリカ又はシリコーン樹脂微粒子を含有し、前記シリカ又は前記シリコーン樹脂微粒子を、インキ固形分に対し0.001~5.0質量%含有するリキッド印刷インキを提供する。
【0008】
また本発明は、基材と、基材上に印刷された印刷層とを備える印刷物であって、前記印刷層が前記記載のインキ組成物である印刷物を提供する。
【0009】
また本発明は、少なくとも第一の基材と、第一の基材上に印刷された印刷層と、ガスバリア性接着剤層と、第二の基材とをこの順に有する積層体であって、前記印刷層が前記記載のリキッド印刷インキである積層体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリキッド印刷インキは特にリキッド印刷インキの印刷適性として要求されるブロッキング性を満たし、且つガスバリア性を有するので、特定のガスバリア性フィルムを使用せずに包装材料に汎用の基材フィルムを使用してガスバリア性を有する包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(言葉の定義)
本発明においてリキッド印刷インキとは、グラビア印刷インキまたはフレキソ印刷インキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキを指し、好ましくはグラビア印刷インキまたはフレキソ印刷インキである。また本発明のリキッド印刷インキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、即ち活性エネルギー線非反応性のリキッド印刷インキである。
また、本発明において「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示す。
【0012】
(ガスバリア性を有する樹脂)
本発明で使用するガスバリア性を有する樹脂(ガスバリア性樹脂と称する場合もある)は、具体的には、オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の少なくとも1種を含む多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコール成分との重縮合体であるエステル骨格(1)を有する非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)が好ましい。
【0013】
(非晶性ポリエステル樹脂(1-1))
本発明で使用する非晶性ポリエステル樹脂(1-1)は、オルト配向芳香族多価カルボン酸成分を含む多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を重縮合して得られる。
【0014】
(オルト配向芳香族多価カルボン酸成分)
オルト配向芳香族多価カルボン酸成分は具体的には、オルトフタル酸及びその酸無水物である。オルトフタル酸及びその無水物は、骨格が非対称構造である。従って、得られるポリエステルの分子鎖の回転抑制が生じると推定され、これによりガスバリア性に優れると推定している。また、この非対称構造に起因して非結晶性を示し、十分な基材密着性が付与され、接着力とガスバリア性に優れると推定される。さらにグラビアインキとして用いる場合には必須である溶媒溶解性も高いことで取扱い性にも優れる特徴を持つ。
【0015】
(芳香族多価カルボン酸)
前記オルト配向芳香族多価カルボン酸は、他の芳香族多価カルボン酸と併用しても良く好ましい。芳香族多価カルボン酸として具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の無水物或いはエステル形成性誘導体等が挙げられる。これらは単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でもテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
【0016】
また、前記芳香族多価カルボン酸と併用できるその他の多価カルボン酸として具体的には、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸や、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸が挙げられる。これらは単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。中でも、コハク酸、マレイン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、を併用することが好ましい。
【0017】
(多価アルコール成分)
本発明で使用する多価アルコールは、具体的には、脂肪族ジオールとしてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、芳香族多価フェノールとして、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
【0018】
中でも酸素原子間の炭素原子数が少ないほど、分子鎖が過剰に柔軟になりにくいと推定されることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。
【0019】
前記オルト配向芳香族多価カルボン酸成分を含む多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との重縮合反応は、公知の方法で行うことができる。
【0020】
(非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2))
本発明で使用する非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)は、前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)のうち末端に水酸基を有するポリエステルポリオール樹脂とイソシアネート化合物との反応物である。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;これらのポリイソシアネートに由来するアルファネート化合物;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、及びこのアルファネート化合物;これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらのポリイソシアネートに由来するアロファネート体;これらのポリイソシアネートに由来するビゥレット体;トリメチロールプロパン変性したアダクト体;前記した各種のポリイソシアネートとポリオール成分との反応生成物であるポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0021】
また、前記非晶性ポリエステルウレタン樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン化合物も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジーnーブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
前記ポリエステルポリオール樹脂と前記イソシアネート化合物、アミン化合物との反応は、公知の方法で行うことができる。
【0023】
前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)の、前記オルト配向芳香族ジカルボン酸又はその無水物の多価カルボン酸全成分に対する含有率は、50~100質量%であることが好ましい。この範囲であれば、好ましいガスバリア性を発揮できる。中でも70~100質量%がなお好ましい。
【0024】
前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)の数平均分子量は450~5000が好ましい。又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)の数平均分子量は3000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)の数平均分子量が450未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、50000を超える場合には、得られるリキッド印刷インキの粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
【0025】
(併用する樹脂)
前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)は本発明のリキッド印刷インキにおいてバインダーとして使用するが、本発明の効果を損なわない範囲において、公知のバインダー樹脂を併用してもよい。例えば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキ成分の不揮発分の総重量に対して1~25重量%が好ましく、更に好ましくは2~15重量%である。更にガスバリア性を向上または悪化させないバインダー樹脂として、有機溶剤系のリキッド印刷インキでは塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂が好ましく、水系のリキッド印刷インキではチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
特に、本発明のリキッド印刷インキを、プラスチックフィルム等のいわゆる軟包装材料用の印刷インキに適用する場合は、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂の併用が好ましい。
【0026】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂)
前記水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂としては、水酸基価が50~200mgKOH/gであり、かつ前記共重合体樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80~95重量%であるが好ましい。
【0027】
本発明に用いられる水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0028】
軟包装用材料用の印刷インキとして使用する場合、接着性、耐ブロッキング性、印刷適性等の性能が要求されることから、例えば、水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂100重量部に対し、原料である塩化ビニルは80~95重量部が好ましい。またビニルアルコールから得られる水酸基価は50~200mgKOH/gが好ましい。
【0029】
本発明のリキッド印刷インキで使用する前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)のインキにおける含有量は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキ成分の不揮発分の総重量に対して4重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から60重量%以下が好ましく、更には10~55重量%の範囲が好ましい。
【0030】
また、本発明のリキッド印刷インキで使用する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂のインキにおける含有量は、インキ成分の不揮発分の総重量に対して0.1~30重量%が好ましく、より好ましく1~15重量%の範囲が好ましい。
【0031】
また、本発明のリキッド印刷インキで使用する前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂との比率は、前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2):前記塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂=100:2~100:30の範囲となるように配合するのが好ましく、100:5~100:20の範囲がなお好ましく、100:6~100:15の範囲が最も好ましい。
【0032】
(着色剤)
本発明で使用する着色剤は、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている着色を目的とした有機、無機顔料や染料を挙げることができる。
有機顔料としては、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。また未酸性処理顔料、酸性処理顔料のいずれも使用することができる。
【0033】
無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
【0034】
白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。
【0035】
前記顔料は、リキッド印刷インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ総質量に対して1~60質量%、インキ中の固形分重量比では10~90質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
着色剤、特に顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、前記樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。例えばポリエチレンイミンにポリエステル付加させた櫛型構造高分子化合物、あるいはα-オレフィンマレイン酸重合物のアルキルアミン誘導体などが挙げられる。具体的にはソルスパーズシリーズ(ZENECA)、アジスパーシリーズ(味の素)、ホモゲノールシリーズ(花王)などを挙げることができる。またBYKシリーズ(ビックケミー)、EFKAシリーズ(EFKA)なども適宜使用できる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキ成分の不揮発分の総重量に対して0.05重量%以上、ラミネート適性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましく、さらに好ましくは、0.1~2重量%の範囲である。
【0037】
(有機溶剤)
本発明で使用する有機溶剤としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。これらを単独または2種以上を混合しても用いることができる。
【0038】
尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロパノール、ノルマルプロパノールなどを使用し、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。
また、乾燥調整のためにインキ全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
【0039】
(シリカ又はシリコーン樹脂微粒子)
本発明においては、シリカ又はシリコーン樹脂微粒子をインキ固形分に対し0.001~5.0質量%含有することが特徴である。
【0040】
(シリカ)
シリカとしては特に限定なく、天然産、合成品、あるいは結晶性、非結晶性、あるいは疎水性、親水性のものなどが挙げられる。シリカは合成法により乾式法、湿式法に分けられ、乾式法では燃焼法、アーク法、湿式法では沈降法、ゲル法が知られている。本発明においてはいずれの方法で合成されたものでも良い。また、シリカは、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでも良いし、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでも良い。
【0041】
本発明で使用するシリカは、インキ層の表面に凹凸を作るため、平均粒子径は1~30μmであることが好ましい。なおシリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる。またシリカ粒子は、比表面積がBET法で50~600m2/gであることが好ましい。より好ましくは100m~450m2/gである。本発明のラミネート用グラビアインキで使用するシリカ粒子(C)は平均粒子径あるいはBET法比表面積の異なるものを組み合わせて使用することができる。
シリカは、中でも、インキ固形分に対し0.001~1.0質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.01~0.02質量%である。
【0042】
(シリコーン樹脂微粒子)
シリコーン樹脂微粒子としては、ポリメチルシルセスキオキサンが特に好ましい。
当該ポリメチルシルセスキオキサンとは、下記式(1)で表わされる基本構造を有する。
【0043】
CHSiO3/2 (1)
【0044】
即ち、ケイ素原子が有する4つの結合手のうち一つにはメチル基が結合しており、他の3つの結合手は、原則、酸素原子を介して他のケイ素原子と3次元架橋し網目構造を形成した球状のポリメチルシルセスキオキサンである。前記球状のポリメチルシルセスキオキサンの平均粒子径は1.0~10.0μmの範囲である事が必須である。平均粒子径は2.0~6.0μmの範囲であればより好ましい。平均粒子径が1.0μm以上であれば基材密着性やラミネート強度を始め、耐スクラッチ性、耐摩擦性、耐ブロキング性等が総合的に維持される傾向であり、10.0μm以下であれば基材密着性やラミネート強度が維持される傾向となる。
シリコーン樹脂微粒子は、中でも、インキ固形分に対し0.002~2.0質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.3~1.0質量%である。
【0045】
本発明のリキッド印刷インキで使用するポリメチルシルセスキオキサンの粒子は、その形状が球状である。球状の程度は、通常は電子顕微鏡観察でほぼ真球状と認識できる程度であれば問題ない。
本発明のリキッド印刷インキでは、平均粒子径1.0~10.0μmのシリコーン樹脂微粒子を使用することが好ましい。
【0046】
前記シリカと前記シリコーン樹脂微粒子は併用することも好ましい。併用する場合は、前記シリカ:前記シリコーン樹脂微粒子の質量比が0.1:0.1~5:1の範囲であるように併用することが好ましい。該範囲とすることで、ガスバリア性を維持しながら、耐ブロッキング性に優れたインキとすることができる。質量比は中でも0.1:0.1~3.0:1.0の範囲であることが好ましく、0.5:0.3~1.0:0.6の範囲であることが最も好ましい。
【0047】
(ポリイソシアネート)
本発明においては、硬化剤としてポリイソシアネートを使用してもよい。ポリイソシアネートは本発明のリキッド印刷インキで使用する前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)が有する水酸基と反応し、3次元架橋構造を与える。ポリイソシアネートは中でも芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)が好ましい。
【0048】
(芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1))
芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。例えばキシリレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチルフェニルエタンジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートや、該ジイソシアネートと一価のアルコールとの反応生成物や2個の水酸基を有するアルコールとの反応生成物、カルボジイミド変性物等があげられる。
また3価以上のポリイソシアネート化合物としては、前記ジイソシアネートの過剰量を、多官能のアルコール体、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、などの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとの反応生成物であるアダクト体が挙げられる。また、上記ジイソシアネートの多量体であるヌレート体等も好ましく使用することができる。
【0049】
中でも、メタキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、メタキシリレンジイソシアネートが最も好ましい。また、これらのイソシアネート化合物の前記反応生成物や変性物、多量体を用いても良い。
【0050】
(芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物)
本発明では、硬化剤として前記の芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物を併用するとなお好ましい。従来の芳香族環を有するポリイソシアネートでは硬化塗膜が硬くなり、良好な接着強度を得ることが困難であったが、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物、特にアロファネート体の様なジイソシアネートを併用することでバリア性を維持しつつ、塗膜に柔軟性が付与され、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム等の金属系基材に対する密着性が向上し、且つ、バリア性も向上する。
【0051】
本発明で用いられる芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート、水添メチルフェニルエタンジイソシアネート、水添ナフタレン-1,5-ジソシアナートから選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートや、該ジイソシアネートと一価のアルコールとの反応生成物や2個の水酸基を有するアルコールとの反応生成物、カルボジイミド変性物等があげられる。
また3価以上のポリイソシアネート化合物としては、前記ジイソシアネートの過剰量を、多官能のアルコール体、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、などの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などとの反応生成物であるアダクト体が挙げられる。また、上記ジイソシアネートの多量体であるヌレート体等も好ましく使用することができる。
【0052】
中でも、環状骨格を有し且つ芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(5-2)が好ましい。環状骨格とは、脂環式骨格あるいはヌレート骨格等が挙げられる。
前記脂環式骨格を有するポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水添メタキシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート、水添メチルフェニルエタンジイソシアネート、水添ナフタレン-1,5-ジソシアナートが好ましい。またこれらのイソシアネート化合物の前記反応生成物や変性物、多量体を用いても良い。
【0053】
(芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)と、環状骨格を有し芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(5-2)の混合比)
芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)と、環状骨格を有し芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(5-2)の混合比は、使用する各々の化合物の分子量あるいは価数に依存するため一概には言えない。従って、芳香族環を分子内に有する2価以上のポリイソシアネート化合物(5-1)と、芳香族環を分子内に有しないポリイソシアネート化合物(5-2)の混合比はイソシアネート含有率換算で、1:5~10:1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、1:3~5:1である。
【0054】
(非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)とポリイソシアネート(5)との配合比)
前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と前記ポリイソシアネート(5)とは、前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)と前記ポリイソシアネート(5)との割合が、前記非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)が有する水酸基と前記ポリイソシアネート(5)が有するイソシアネート基とが1/0.01~1/10(当量比)となるように配合することが好ましく、より好ましくは1/0.1~1/5である。ポリイソシアネート(5)を配合する事でインキの基材への密着性、ボイルやレトルト処理時の耐熱性が向上する。該範囲を超えて前記ポリイソシアネート(B)が過剰な場合、余剰な前記ポリイソシアネート(5)が残留することで接着後に接着層からブリードアウトするおそれがある。
【0055】
(板状無機化合物)
本発明のリキッド印刷インキには、より高いガスバリア機能を付与する目的で板状無機化合物を含有させても良い。板状無機化合物を併用した場合には形状が板状であることによりラミネート強度とバリア性が向上する特徴がある。本発明で使用される板状無機化合物としては、例えば含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。
【0056】
層間の電荷はバリア性には直接大きく影響しないが、溶媒が有機溶剤の場合、樹脂に対する分散性が、イオン性無機化合物では大幅に劣り、添加量を増量すると印刷適性が課題となる(チキソ性となる)。これに対し、無電荷の場合は添加量を多くしても、印刷適性が確保できる。粒径に関しては1μm程度より大きい方がバリア性を発現しやすく、nmレベルでは良好なバリア性が得られない。粒径が大きすぎる場合はグラビア印刷等の場合、グラビア版へ板状無機化合物が入らない為、印刷適性が得られない。粒径は0.1~100μmが好ましい。更に好ましくは1~40μmである。本発明での平均粒径とは、ある板状無機化合物の粒度分布を光散乱式測定装置で測定した場合の出現頻度が最も高い粒径を意味する。
【0057】
本発明で使用される板状無機化合物のアスペクト比はガス成分分子の迷路効果によるバリア能の向上のためには高い方が好ましい。具体的には3以上が好ましく、更に好ましくは10以上、最も好ましくは40以上である。また板状無機化合物の含有率は任意であるが50質量%以下であることが好ましい。50質量%を超えると印刷適性や外観が不十分になる可能性がある。
【0058】
本発明のリキッド印刷インキは樹脂にバリア性を有する事が特徴である事より、着色剤を使用しない色濃度調整用のほぼ透明なメジウム、エキステンダーとしても使用できる。より高いブロッキング防止を目的として、無機顔料を使用することが好ましく、着色しない観点から、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、マイカ(雲母)が好ましい。また、バリア性を向上させる観点より前記、マイカ等の板状無機化合物がより好ましい。
無地が多い印刷物では前記メジウム、エキステンダーを基材全面に印刷することで包装材料にバリア性を付与する事ができる。
【0059】
(その他の成分)
本発明のリキッド印刷インキは、その他本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、芳香剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、カップリング剤等が例示できる。
【0060】
(インキの製造方法)
本発明のリキッド印刷インキは、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。具体的には、顔料等を非晶性ポリエステル樹脂(1-1)又は非晶性ポリエステルウレタン樹脂(1-2)により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0061】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0062】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0063】
本発明のインキの色相としては、使用する着色剤の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。ボイルレトルト用インキには顔料のマイグレーション性、耐熱性を考慮して適宜選定される。各色相のベースインキは、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0064】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材と、基材上に本発明のリキッド印刷インキの印刷層とを備える印刷物である。ここで基材は、積層体の説明において詳細に説明する。
【0065】
印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。グラビア印刷に用いられるシリンダーは、彫刻タイプ、腐食タイプ等公知のものが用いられる。
【0066】
上記の印刷方式を用いて基材に塗布し、オーブンによる乾燥によって乾燥あるいは硬化させて定着することで、印刷物を得ることができる。基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていても良く、さらにコロナ処理などの表面処理が施されていても良い。
【0067】
本発明のリキッド印刷インキは、表刷り用インキ、裏刷り用インキ、あるいはラミネート用インキとして好ましく使用することができる。表刷り用インキとして使用する場合は、別途オーバープリントワニス層を設けることもできる。一方裏刷り用インキとして使用する場合は、別途アンカーコートワニス層を設けることもできる。また、ガスバリア性を有するエチレン-ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコール等のプラスチックフィルムを積層させたフィルムや、金属や金属酸化物を蒸着させた蒸着フィルム、金属箔等を使用したフィルム、フィルムの接着剤にガスバリア機能を有する接着剤でフィルムを積層させたフィルム等の、ガスバリア性を有するフィルムに印刷することは、ガスバリア性の相乗効果を期待することができ好ましい。
【0068】
本発明のリキッド印刷インキは、グラビア印刷或いはフレキソ印刷に於いて、良好な酸素バリア性を有するので、包装用リキッド印刷インキとして食品包材、サニタリー、コスメ、電子材料用、建築材料用、工業材料用等、酸素バリア性を所望される用途であれば好適に使用できる。
【0069】
(積層体)
本発明の積層体は、少なくとも第一の基材と、第一の基材上に印刷された印刷層と、ガスバリア性接着剤層と、第二の基材とをこの順に有する積層体であって、前記印刷層が本発明のリキッド印刷インキであることを特徴とする。
【0070】
(基材)
第一の基材及び第二の基材は、特に限定なく、所望の用途に応じたフィルム状の基材を使用することができる。例えば本発明の積層体を包装材料として使用する際は、食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等を使用することができる。これらのフィルムは延伸処理を施されたものであってもよい。延伸処理方法としては、押出製膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一版的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的には、ロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0071】
勿論、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルム、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。このようなフィルムを用いることで、より、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対する高いバリア性を備えた積層体とすることができる。
【0072】
より具体的な積層体の構成としては、
(1)基材フィルム1/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
(2)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着未延伸フィルム
(3)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム
(4)透明蒸着延伸フィルム/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
(5)基材フィルム1/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/シーラントフィルム
(6)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
(7)基材フィルム1/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
(8)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/シーラントフィルム
(9)基材フィルム1/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/金属層/接着層3/シーラントフィルム
(10)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/基材フィルム2/接着層3/シーラントフィルム
等が挙げられるがこれに限定されない。なおここで「印刷層」は本発明のリキッド印刷インキの印刷層である。
【0073】
構成(1)に用いられる基材フィルム1としては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム(以後Nyフィルムともいう)等が挙げられる。また、基材フィルム1としてガスバリア性や、後述する印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。コーティングが施された基材フィルム1の市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。接着層1は、本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムとしては、CPPフィルム、LLDPEフィルム等が挙げられる。基材フィルム1の接着層1側の面(基材フィルム1としてコーティングが施されたものを用いる場合には、コーティング層の接着層1側の面)に、印刷層を設けてもよい。印刷層は、グラビアインキ、フレキソインキ、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムへの印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。
【0074】
構成(2)、(3)に用いられる基材フィルム1としては、OPPフィルムやPETフィルム等が挙げられる。接着層1は、本発明の接着剤の硬化塗膜である。金属蒸着未延伸フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルムを、金属蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0075】
構成(4)に用いられる透明蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。接着層1は、本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。透明蒸着延伸フィルムの接着層1側の面(無機蒸着層上にコーティングが施されたものを用いる場合には、コーティング層の接着層1側の面)に印刷層を設けてもよい。印刷層の形成方法は構成(1)と同様である。
【0076】
構成(5)に用いられる基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。基材フィルム2としては、ナイロンフィルム等が挙げられる。接着層1、接着層2の少なくとも一方は本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0077】
構成(6)の基材フィルム1としては、構成(2)、(3)と同様のものが挙げられる。金属蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルムやPETフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムやVM-PETフィルムが挙げられる。接着層1、接着層2の少なくとも一方は本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0078】
構成(7)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。透明蒸着延伸フィルムとしては、構成(4)と同様のものが挙げられる。接着層1、2の少なくとも一方は本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0079】
構成(8)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。金属層としては、アルミニウム箔等が挙げられる。接着層1、2の少なくとも一方は本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0080】
構成(9)、(10)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。基材フィルム2としては、ナイロンフィルム等が挙げられる。金属層としては、アルミニウム箔等が挙げられる。接着層1、2、3の少なくとも一層は本発明の接着剤の硬化塗膜である。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。構成(1)と同様にして、基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設けてもよい。
【0081】
(接着層)
接着層に使用する接着剤は、公知のフィルムラミネート用の接着剤を適宜使用することができるが、接着剤としてガスバリア性を有する接着剤を使用すると、特にバリア性に優れる積層体を得ることができる。
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m/day/atm以下、または水蒸気バリア性が120g/m/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0082】
あるいは、下記(A1)~(A5)の少なくとも1種のポリエステルポリオールを含むポリオール組成物(A)と、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物(以下単にイソシアネート化合物ともいう)を含むポリイソシアネート組成物(B)とからなる2液型接着剤も好ましく使用できる。
【0083】
(1)3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールにカルボン酸無水物又はポリカルボン酸を反応させることにより得られるポリエステルポリオール(A1)
(2)重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)
(3)グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)
(4)オルト配向性多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)
(5)イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)
【0084】
ポリエステルポリオール(A1)は、3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(a1)にカルボン酸無水物又は多価カルボン酸を反応させることにより得られ、少なくとも1個のカルボキシル基と2個以上の水酸基を有する。ポリエステルポリオール(a1)は多価カルボン酸または多価アルコールの一部を三価以上とすることで得られる。
【0085】
ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価カルボン酸は、オルトフタル酸、オルトフタル酸無水物の少なくとも1種を含むことが好ましい。多価カルボン酸としてこれらの化合物を用いて得られるポリエステルポリオールはガスバリア性と接着性とに優れる。三価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸およびその酸無水物、ピロメリット酸及びその酸無水物等が挙げられる。
【0086】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸及びその酸無水物が好ましい。
【0087】
ポリエステルポリオール(A1)の調整に用いられる多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。中でもエチレングリコールを使用することが特に好ましい。
【0088】
三価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等が挙げられる。
【0089】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0090】
ポリエステルポリオール(A1)は、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとの反応生成物である3個以上の水酸基を有するポリエステルポリオール(a1)に、多価カルボン酸またはその酸無水物を反応させることで得られる。多価カルボン酸と反応させる水酸基の割合は、ポリエステルポリオール(a1)が備える水酸基の1/3以下とすることが好ましい。ポリエステルポリオール(a1)と反応させる多価カルボン酸またはその酸無水物は、二価または三価であることが好ましい。無水コハク酸、無水マレイン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物等が挙げられるがこれに限定されない。
【0091】
重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)は、多価カルボン酸、多価アルコールとして重合性炭素-炭素二重結合をもつ成分を使用することにより得られる。
【0092】
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価カルボン酸として無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物等が挙げられる。中でも、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。
【0093】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;オルトフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。また、これらの酸無水物も使用することができる。中でも、ガスバリア性を得る為にはコハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸が好ましく、更にはオルトフタル酸及びその酸無水物がより好ましい。
【0094】
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価アルコールとしては、2-ブテン-1,4-ジオール等があげられる。
【0095】
本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。中でも、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールが好ましく、更にはエチレングクリコールがより好ましい。
【0096】
また、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A2)は、水酸基を有するポリエステルポリオール(a2)と重合性二重結合を有するカルボン酸、またはカルボン酸無水物との反応生成物であってもよい。重合性二重結合を有するカルボン酸またはその酸無水物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、又はフマル酸等の重合性二重結合を有するカルボン酸、オレイン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。ポリエステルポリオール(a2)は、3個以上の水酸基を有することが好ましい。
さらにポリエステルポリオール(A2)として、乾性油、又は半乾性油を挙げることができる。乾性油、又は半乾性油としては、炭素-炭素二重結合を有する公知慣用の乾性油、半乾性油等を挙げることができる。
【0097】
グリセロール骨格を有するポリエステルポリオール(A3)は、下記一般式(1)で表されるグリセロール骨格を有するものである。
【0098】
【化1】
(一般式(1)中、R~Rは各々独立に、水素原子、または下記一般式(2)である。但し、R~Rのうち少なくとも一つは、下記一般式(2)で表される基を表す。)
【0099】
【化2】
(一般式(2)中、nは1~5の整数を表し、Xは、置換基を有してもよい1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれるアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)
【0100】
ポリエステルポリオール(A3)は、R、R及びRのいずれか1つが一般式(2)で表される基である化合物と、R、R及びRのいずれか2つが一般式(2)で表される基である化合物と、R、R及びRの全てが一般式(2)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。R~Rの全てが一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
【0101】
一般式(2)において、Xが置換基によって置換されている場合、1又は複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0102】
一般式(2)におけるYの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2~6のアルキレン基である。プロピレン基、エチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0103】
ポリエステルポリオール(A3)は、グリセロールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物と、多価アルコールとを必須成分として反応させて得られる。
【0104】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸又はその酸無水物としては、オルトフタル酸又はその酸無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0105】
多価カルボンとして、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸及びその酸無水物、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタル酸、ジフェン酸が好ましい。
【0106】
多価アルコールとしては炭素原子数2~6のアルキレンジオールが挙げられる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0107】
また、グリセロール、炭素原子数が2~6のアルキレンジオール以外の多価アルコールを、本発明の効果を損なわない範囲において共重合させてもよい。具体的には、エリスリトール、ペンタエリトール、ジペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族多価アルコール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族多価アルコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノール等の芳香族多価フェノール、或いはこれらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族を例示することができる。
【0108】
オルト配向性多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A4)は、オルトフタル酸及びその酸無水物を少なくとも1種以上含む多価カルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多価アルコールからなる。特に、前記オルトフタル酸及びその酸無水物の、多価カルボン酸全量に対する使用率が70~100質量%であるポリエステルポリオールが好ましい。
【0109】
多価カルボン酸はオルトフタル酸及びその酸無水物のいずれかを必須とするが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価カルボン酸を共重合させてもよい。具体的には、脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を、不飽和結合含有多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等を、脂環族多価カルボン酸としては1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等を、芳香族多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フランジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体;p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の多塩基酸を単独で或いは二種以上の混合物で使用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましい。
【0110】
多価アルコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むが、本発明の効果を損なわない範囲において、他の多価アルコールを共重合させてもよい。具体的には、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらの、エチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0111】
イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)は、下記一般式(3)で表されるものである。
【0112】
【化3】
(一般式(3)中、R~Rは各々独立して、-(CHn1-OH(但しn1は2~4の整数を表す)、又は下記一般式(4)で表される基を表す。但しR、R及びRの少なくとも1つは一般式(4)で表される基である。)
【0113】
【化4】
(一般式(4)中、n2は2~4の整数を表し、n3は1~5の整数を表し、Xは1,2-フェニレン基、1,2-ナフチレン基、2,3-ナフチレン基、2,3-アントラキノンジイル基、及び2,3-アントラセンジイル基から成る群から選ばれ、置換基を有していてもよいアリーレン基を表し、Yは炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)
【0114】
ポリエステルポリオール(A5)は、R、R及びRのいずれか1つが一般式(4)で表される基である化合物と、R、R及びRのいずれか2つが一般式(4)で表される基である化合物と、R、R及びRの全てが一般式(4)で表される基である化合物の、いずれか2つ以上の化合物が混合物となっていてもよい。R~Rの全てが一般式(4)で表される基であることがより好ましい。
【0115】
一般式(3)において、-(CH2)n1-で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状でもよい。n1は、中でも2又は3が好ましく、2が最も好ましい。
【0116】
一般式(4)において、Xが置換基によって置換されている場合、1又は複数の置換基で置換されていてもよく、該置換基は、X上の、遊離基とは異なる任意の炭素原子に結合している。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0117】
Xの置換基は、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基が好ましく、ヒドロキシル基、フェノキシ基、シアノ基、ニトロ基、フタルイミド基、フェニル基がより好ましい。
【0118】
一般式(4)におけるYの具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、1,5-ペンチレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、メチルペンチレン基、ジメチルブチレン基等の、炭素原子数2~6のアルキレン基である。プロピレン基、エチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0119】
ポリエステルポリオール(A5)は、イソシアヌル環を有するトリオールと、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物と、多価アルコールとを必須成分として反応させて得る。
【0120】
イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0121】
カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物としては、オルトフタル酸またはその酸無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸またはその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸またはその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸またはその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸またはその酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基またはナフチル基等が挙げられる。
【0122】
多価アルコールとしては炭素原子数2~6のアルキレンジオール、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール等のジオールを例示することができる。
【0123】
中でも、イソシアヌル環を有するトリオール化合物として1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、または1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸を使用し、カルボン酸がオルト位に置換された芳香族多価カルボン酸またはその酸無水物としてオルトフタル酸無水物を使用し、多価アルコールとしてエチレングリコールを使用したイソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A5)が、ガスバリア性や接着性に優れ好ましい。
【0124】
前記ポリエステルポリオールの水酸基価は、20mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましい。また前記ポリエステルポリオールが酸基を有する場合、酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましい。またポリエステルポリオールの酸価の下限は特に制限されないが、一例として20mgKOH/g以上である。ポリエステルポリオールの水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS-K0070に記載の酸価測定法にて測定することができる。
【0125】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は300~5000であると接着性とガスバリア性とのバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。より好ましくは数平均分子量が350~3000である。数平均分子量は得られた水酸基価と設計上の水酸基の官能基数から計算により求める。また、前記ポリエステルポリオールのガラス転移温度は-30℃以上80℃以下であることが好ましく、0℃以上60℃以下であることがより好ましく、25℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。
【0126】
ポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール(A1)~(A5)をジイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長により数平均分子量1000~15000としたポリエステルポリウレタンポリオール、であってもよい。ウレタン伸長したポリエステルポリオールには一定以上の分子量成分とウレタン結合とが存在するため、優れたガスバリア性を持ち、初期凝集力に優れ、ラミネート用の接着剤として優れる。
【0127】
ガスバリア性を有する2液型接着剤の一成分であるポリイソシアネート組成物(B)は、イソシアネート化合物を含む。イソシアネート化合物としては、従来公知のものを特に制限なく用いることができ、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート或いはこれらのイソシアネート化合物の2量体、3量体、およびこれらのイソシアネート化合物の過剰量と、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、メタキシリレンアルコール、1,3-ビスヒドロキシエチルベンゼン、1,4-ビスヒドロキシエチルベンゼン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ソルビトール、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メタキシリレンジアミンなどの低分子活性水素化合物およびそのアルキレンオキシド付加物、各種ポリエステル樹脂類、ポリエーテルポリオール類、ポリアミド類の高分子活性水素化合物などと反応させて得られるアダクト体が挙げられる。ポリエステルポリオール(A1)~(A5)とジイソシアネート化合物とを、水酸基とイソシアネート基の比率をイソシアネート過剰で反応させて得られるポリエステルポリイソシアネートを用いてもよい。これらは1種または2種以上を併用することができる。
【0128】
また、イソシアネート化合物としてブロック化イソシアネートを用いてもよい。イソシアネートブロック化剤としては、例えばフェノール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ニトロフェノール、クロロフェノールなどのフェノール類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなそのオキシム類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、エチレンクロルヒドリン、1,3-ジクロロ-2-
プロパノールなどのハロゲン置換アルコール類、t-ブタノール、t-ペンタノール、などの第3級アルコール類、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピロラクタムなどのラクタム類が挙げられ、その他にも芳香族アミン類、イミド類、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、マロン酸エチルエステルなどの活性メチレン化合物、メルカプタン類、イミン類、尿素類、ジアリール化合物類重亜硫酸ソーダなども挙げられる。ブロック化イソシアネートは上記イソシアネート化合物とイソシアネートブロック化剤とを公知慣用の適宜の方法より付加反応させて得られる。
【0129】
中でも、良好なガスバリア性が得られることからキシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく、メタキシリレンジイソシアネート、メタ水素化キシリレンジイソシアネートのようなメタキシレン骨格を有するイソシアネート化合物を用いることがより好ましい。
【0130】
メタキシレン骨格を有するイソシアネート化合物としては、キシリレンジイソシアネートの3量体、アミンとの反応により合成されるビューレット体、アルコールと反応してなるアダクト体が挙げられる。3量体、ビューレット体と比べ、溶剤型接着剤に用いられる有機溶剤への溶解性が良好なことから、接着剤が溶剤型の場合はアダクト体を用いることが好ましい。アダクト体としては、上記の低分子活性水素化合物の中から適宜選択されるアルコールと反応してなるアダクト体が使用できるが、中でも、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリエタノールアミン、メタキシレンジアミンのエチレンオキシド付加物とのアダクト体が好ましい。
【0131】
また、ポリオール組成物(A)として、ポリエステルポリオール(A1)のようにカルボン酸基が残存しているポリエステルポリオールを含む組成物を用いる場合には、ポリイソシアネート組成物(B)が公知のエポキシ化合物を含んでいてもよい。またポリエステルポリオール(A2)のように重合性炭素-炭素二重結合を有するポリオールを含む組成物を用いる場合には、炭素-炭素二重結合の重合を促進するために公知の重合触媒を併用することができ、例えば公知の遷移金属錯体や光重合開始剤を併用してもよい。
【0132】
ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)とは、ポリオール組成物(A)に含まれる水酸基と、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれるイソシアネート基との当量比が1/0.5~1/10となるよう配合することが好ましく、1/1~1/5となるよう配合することがより好ましい。イソシアネート化合物が過剰の場合、接着剤の硬化塗膜に残留した余剰のイソシアネート化合物が接着剤層からブリードアウトするおそれがある。一方、ポリイソシアネート組成物(B)に含まれる反応性の官能基が不足すると、接着強度が不足するおそれがある。
【0133】
ガスバリア性接着剤には、接着性およびガスバリア性を損なわない範囲で各種添加剤を配合してもよい。例えば無機充填剤を用いてもよい。無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられる。特に無機充填剤として板状無機化合物を用いると、接着強度、ガスバリア性、遮光性等が向上するため好ましい。板状無機化合物としては、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。板状無機化合物は1種または2種以上を併用することができる。
【0134】
その他、接着促進剤、酸無水物、酸素捕捉機能を有する化合物、粘着付与剤、ガスバリア性接着剤が安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。これらの各種添加剤は予めポリオール組成物(A)およびポリイソシアネート組成物(B)のいずれか一方、または両方に添加しておいてもよいし、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)とを混合する際に添加してもよい。
【0135】
また使用するガスバリア性接着剤は、溶剤型、無溶剤型いずれの形態であってもよい。溶剤型に使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0136】
使用するガスバリア性接着剤が溶剤型である場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に本発明の接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~80℃、エージング時間は12~240時間が好ましい。
【0137】
使用するガスバリア性接着剤が無溶剤型である場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に予め40℃~100℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布した後、直ちに他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~70℃、エージング時間は6~240時間が好ましい。
【0138】
使用するガスバリア性接着剤を接着補助剤として用いる場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に本発明の接着補助剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることにより本発明の積層体を得る。
【0139】
使用するガスバリア性接着剤の塗布量は、適宜調整する。溶剤型接着剤の場合、一例として固形分量が1g/m以上10g/m以下、好ましくは2g/m以上5g/m以下となるよう調整する。無溶剤型接着剤の場合、接着剤の塗布量が一例として1g/m以上5g/m以下、好ましくは1g/m以上3g/m以下である。
【0140】
本発明の接着剤を接着補助剤として用いる場合、塗布量は一例として0.1g/m以上2g/m以下(固形分)である。
【0141】
(積層体 他の層)
本発明の積層体は、上述した構成(1)~(10)に加えて、更に他のフィルムや基材を含んでいてもよい。他の基材としては、上述した延伸フィルム、未延伸フィルム、透明蒸着フィルムに加え、後述の紙、木材、皮革等の多孔質の基材を使用することもできる。他の基材を貼り合せる際に用いる接着剤は、本発明の接着剤であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0142】
紙としては、特に限定なく公知の紙基材を使用することができる。具体的には、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
【0143】
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。また紙層の外表面または内面側には、必要に応じて印刷層を設けてもよい。
【0144】
「他の層」は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。また「他の層」は、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、前処理としてフィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしたものであってもよい。
【0145】
本発明の積層体は、様々な用途、例えば食品や医薬品、生活用品の包装材料や、蓋材、紙ストローや紙ナプキン、紙スプーン、紙皿、紙コップ等の紙製食器、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、電池用包装材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、ステッカー等の屋外産業用途、射出成形同時加飾方法等に使用する加飾用シート、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー等包装材料等として、好適に使用することができる。
【実施例0146】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0147】
(製造例1)ポリエステルポリオール樹脂(PE1)の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、エチレングリコール84.2部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900の水酸基価126.2mgKOH/g、酸価0.36mgKOH/gのポリエステルポリオール(PE1)を得た。更に酢酸エチルで希釈して、不揮発分70%のポリエステルポリオール樹脂(PE1)溶液を得た。
【0148】
(製造例2)ポリエステルポリオール樹脂 (PE2)の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、グリセロールを92.09部、無水フタル酸888.72部、エチレングリコール372部、及びチタニウムテトライソプロポキシド0.13部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、設計官能基数 N=3、水酸基価=135.2、水酸基価から計算される理論数平均分子量1245.10のポリエステル樹脂(PE2)を得た。更に酢酸エチルで希釈して、不揮発分70%のポリエステルポリオール樹脂(PE2)溶液を得た。
【0149】
(製造例3)ポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU31)の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸98.1部、エチレングリコール78.5部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.01部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオール(PE3)を得た。メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分70%のポリエステルポリオール樹脂溶液(PE3)とした。
ポリエステルポリオール樹脂溶液(PE1)100部に対し、メタキシリレンジイソシアネート12.0部を加え、80℃に加熱して遊離のイソシアナト基(以下NCO基と略す)が実質的に無くなるまでウレタン化反応を行い、更にメチルエチルケトンで希釈して、数平均分子量1500、不揮発分70%のポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU31)溶液を得た。
【0150】
(製造例4)ポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU32)の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、エチレングリコール84.2部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量900の水酸基価126.2mgKOH/g、酸価0.36mgKOH/gのポリエステルポリオール(PE1)を得た。更に酢酸エチルで希釈して、不揮発分70%のポリエステルポリオール樹脂(PE1)溶液を得た。
ポリエステルポリオール樹脂溶液(PE1)100部に対し、イソホロンジイソシアネート16.5部を加え、80℃に加熱して遊離のNCO基が実質的に無くなるまでウレタン化反応を行い、更にメチルエチルケトンで希釈して、数平均分子量5000、不揮発分70%のポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU32)溶液を得た。
【0151】
(製造例5)ポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU41)の製造方法
攪拌機、窒素ガス導入管、精留管、水分分離器等を備えたポリエステル反応容器に、無水フタル酸148.1部、ネオペンチルグリコール153.4部及びチタニウムテトライソプロポキシド0.03部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を205℃に保持した。酸価が1mgKOH/g以下になったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量600のポリエステルポリオール(PE4)を得た。メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分70%のポリエステルポリオール樹脂溶液(PE4)とした。
ポリエステルポリオール樹脂溶液(PE4)100部に対し、メタキシリレンジイソシアネート18.9部を加え、80℃に加熱して遊離のNCO基が実質的に無くなるまでウレタン化反応を行い、更にメチルエチルケトンで希釈して、数平均分子量5000、不揮発分70%のポリエステルウレタンポリオール樹脂(PEU41)溶液を得た。
【0152】
(リキッド印刷インキの実施例と比較例)
(リキッド印刷インキの製造方法)
表に記載の配合比率で混合した混合物をダイノーミル(ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて混練し、実施例1~14及び比較例1に記載のインキを調製した。
【0153】
(印刷物作成方法)
前記製造方法で得たリキッド印刷インキを、インキ作成に使用した同一比率の混合有機溶剤で希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、版深度35μmを有するグラビア版を取り付けたグラビア印刷機(DICエンジニアリング株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(PET、東洋紡績株式会社製 E-5100 厚さ12μm)および二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP、東洋紡績株式会社製 P2161 厚さ20μm)のコロナ処理面にベタ印刷を行った。硬化剤を使用した印刷物は40℃、1日のエージングを行った。
【0154】
(リキッド印刷インキ印刷物の評価方法)
(酸素バリア性)
印刷およびエージングが終了した印刷物について、23℃の雰囲気下における酸素バリア性を測定した。単位はcc/m・day・atmである。なおRHとは、湿度を表す。

23℃/0%RHの酸素バリア性(OTR)測定:MOCON社製 OX-TRAN 2/21 等圧法 (JIS K 7126に準拠)
【0155】
(耐ブロッキング性)
前記印刷物作成方法で得た印刷物の印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃の環境下に12時間経時させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を、次の5段階で目視評価した。
(評価基準)
5:非印刷面へのインキの転移量0%で転移が見られない
4:5%未満の転移が見られる。
3:5%以上10%未満の転移が見られる。
2:10%以上20%未満の転移が見られる。
1:転移量20%以上が転移している。
【0156】
リキッド印刷インキ組成、及びリキッド印刷インキ評価結果を表1、表2に示す。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
尚、表中の原料は以下の通りである。
・R-780:石原産業(株)製の酸化チタン顔料 平均粒子径0.24μm、吸油量33
・Fastogen Blue 5380:DIC(株)製のC.I.Pig. No.15:3
・ソルバインA:日信化学工業(株)製の樹脂構成「塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5(重量比)」である塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 数平均分子量30,000、ガラス転移点76℃、K値=48
・HM6025:HENGHAO社製のマイカ(KAL(ALSi10)(OH))、非膨潤性、板状、平均粒径10μm、アスペクト比100以上
・IPA:イソプロピルアルコール
・タケネートD110N:三井化学社製のXDI系ポリイソシアネート(芳香族環を有する)、不揮発分/75%
【0161】
この結果、本発明のインキは、良好な酸素バリア性を有し、且つ耐ブロッキング性は4以上と皆良好であった。一方比較例1のインキはシリカを有さない例であるが、ブロッキング性に劣った。
【0162】
(積層体の実施例と比較例)
(ガスバリア性接着剤(A)の製造方法)
DIC株式会社製のガスバリア性接着剤「PASLIM VM001/VM108CP」を使用した。
【0163】
(積層体の製造方法)
膜厚30μmのOPPフィルム(東洋紡製P2161)に、実施例1で得たリキッド印刷インキを用い、版深25μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたグラビア印刷機で印刷した後、ドライヤーで乾燥して印刷物を得た。次いで接着剤1を、バーコーターを用いて塗膜量2.0g/m(固形分)となるように印刷層上に塗布し、温度70℃に設定したドライヤーで希釈溶剤を揮発させ乾燥して接着層を形成した。接着層を介してOPPフィルムと膜厚25μmのアルミ蒸着CPPフィルム(東レフィルム加工2203)を貼り合せた後、40℃/2日間のエージングを行い、積層体を得た。
【0164】
(積層体の評価方法)
【0165】
(酸素バリア性)
エージングが終了した積層体について、23℃の雰囲気下における酸素バリア性を測定した。単位はcc/m・day・atmである。なおRHとは、湿度を表す。
23℃/0%RHの酸素バリア性(OTR)測定:MOCON社製 OX-TRAN 2/21 等圧法 (JIS K 7126に準拠)
【0166】
(ラミネート強度(180度剥離、T型剥離))
エージングが終了した積層体を、塗工方向と垂直に15mm幅に切断し、基材フィルムとシーラントフィルムとの間を、(株)オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を300mm/分に設定し、180度剥離方法およびT型剥離法で剥離した際の引っ張り強度を接着強度とした。
【0167】
積層体の評価結果を表4に示す。
【0168】
【表4】
【0169】
以上の結果より、本発明のインキを使用した積層体は、酸素バリア性に優れることが明らかである。