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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112218
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】燃料電池ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220726BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20220726BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220726BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/2475
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007945
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】本村 浩平
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC01
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB18
5H127BB37
5H127CC07
5H127EE02
5H127EE24
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】配電部に水がかかることを抑制できる燃料電池ユニットを提供すること。
【解決手段】燃料電池ユニットは、防水壁40を備える。防水壁40は、囲繞面34aの周方向に延びる板状であり、かつ排出口20bに向かって張り出す。燃料電池ユニットは、防水壁40の上端を囲繞面34aの周方向に離間させる連通部42を備える。燃料電池ユニットは、排水口41を備える。排水口41は、防水壁40の下端部に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池のアノードパージガスを前記燃料電池から排出させる排出口と、
ファン、及び前記ファンを当該ファンの径方向の外側で囲む囲繞面を有し、前記囲繞面で囲まれる領域と前記排出口とが水平方向に対向するように配置される拡散装置であって、前記ファンの回転により発生した気流によって前記排出口から排出された前記アノードパージガスを拡散させる前記拡散装置と、
前記ファンの回転によって発生した気流によって冷却され、かつ電気的な接続部を有する配電部と、
前記燃料電池、前記排出口、前記拡散装置、及び前記配電部を収容する筐体と、
前記囲繞面の周方向に延びる板状であり、かつ前記排出口に向かって張り出す防水壁と、
前記防水壁の上端を前記囲繞面の周方向に離間させる連通部と、
前記防水壁の下端部に配置される排水口と、を有することを特徴とする燃料電池ユニット。
【請求項2】
前記拡散装置から前記排出口に向かって張り出す仕切壁を有し、前記水平方向及び鉛直方向の両方に直交する方向を奥行方向とした場合、前記仕切壁は、前記奥行方向において前記排出口と前記配電部との間に配置されている請求項1に記載の燃料電池ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池では、カソードで生成した水や窒素の一部が、電解質膜をカソード側からアノード側へ逆拡散する。このため、燃料電池が稼動を続けると、アノードの水及び窒素の濃度が高くなる。アノードの水及び窒素の濃度がある程度以上になると、燃料電池の発電効率が低下する。これを防止あるいは抑制するため、一般に、アノードに溜まった水及び窒素を水素と共に排出するアノードパージが行われている。アノードパージを行うと、燃料電池からはアノードパージガスが排出される。排出されたアノードパージガス中の水素濃度は、基準値以下にする必要があるため、アノードパージガス中の水素は希釈される。
【0003】
例えば、特許文献1の燃料電池システムは、燃料電池、水素タンク、エアコンプレッサ、加湿器、希釈器、ラジエータ、及びファンを備え、これらはケース内に収容されている。また、燃料電池システムは、燃料電池のアノードパージガスを大気中に排気する排気管を備える。排気管の第1端部は希釈器に接続され、排気管の第2端部は、ケースの外部に突出し、大気に開放されている。なお、特許文献1には記載されていないが、燃料電池システムは、ヒューズ及びケーブルといった電気的な接続部を有する配電部を備え、配電部もケース内に収容されている。
【0004】
そして、ファンの回転により発生した風の出口は、排気管から排気されたアノードパージガスを拡散させる位置に設けられている。ファンの回転により発生した空気の流れは風となり、この風は排気管から排気されたアノードパージガスに向けて導かれる。すると、ケース外で大気中に排気されたアノードパージガスは、ファンの回転により発生した風によって強制的に拡散され、アノードパージガス中の水素が希釈される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-235205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アノードパージガス中の水素の濃度を基準値以下にするためには、アノードパージガスは、排気管から排気された直後にファンによって拡散されるのが好ましい。特許文献1の燃料電池システムでは、排気管の出口をケース内に配置し、排気管の出口をファンに対向させつつ近付けることが考えられる。しかし、排気管の出口をファンに対向させつつ近付けると、アノードパージガス中の水素は好適に拡散されるが、アノードパージガス中の水が、回転するファンによってケース内で飛散し、配電部に水がかかる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための燃料電池ユニットは、燃料電池と、前記燃料電池のアノードパージガスを前記燃料電池から排出させる排出口と、ファン、及び前記ファンを当該ファンの径方向の外側で囲む囲繞面を有し、前記囲繞面で囲まれる領域と前記排出口とが水平方向に対向するように配置される拡散装置であって、前記ファンの回転により発生した気流によって前記排出口から排出された前記アノードパージガスを拡散させる前記拡散装置と、前記ファンの回転によって発生した気流によって冷却され、かつ電気的な接続部を有する配電部と、前記燃料電池、前記排出口、前記拡散装置、及び前記配電部を収容する筐体と、前記囲繞面の周方向に延びる板状であり、かつ前記排出口に向かって張り出す防水壁と、前記防水壁の上端を前記囲繞面の周方向に離間させる連通部と、前記防水壁の下端部に配置される排水口と、を有することを要旨とする。
【0008】
これによれば、排出口から排出されたアノードパージガスはファンの回転によって強制的に拡散され、アノードパージガス中の水素が希釈される。その結果、燃料電池から排出された水素の濃度が基準値以下になる。また、アノードパージガス中に含まれる水は、回転するファンに衝突する。ファンに衝突した水の一部は、ファンの下部においてファンよりも径方向の外側に向けて飛散するが、防水壁よりも外側に水が飛散することが抑制される。また、ファンの表面にも水の一部が付着するが、この水は遠心力によってファンの表面に沿って、ファンの径方向の外側、かつ下側に向けて移動した後、ファンよりも径方向の外側、かつ下側に向けて飛散するが、防水壁により、ファンよりも径方向の外側、かつ下側に飛散することが抑制される。その結果として、ファンの回転によって発生した気流によって配電部が冷却され、かつ筐体内でアノードパージガス中の水素をファンによって希釈する燃料電池ユニットにおいて、ファンの回転によって水が飛散しても、筐体内の配電部に水がかかることを抑制できる。
【0009】
また、囲繞面の周方向全体に亘って防水壁を設けると、ファンの回転によって発生する気流の速度が速まり、水が速度を増した状態でファンに衝突して飛散が激しくなる。しかし、連通部を設けることで、ファンの回転によって発生する気流の速度を抑え、水の速度が増すことを抑制できるため、水がファンに衝突したときの飛散を抑制できる。さらに、防水壁の内面に付着した水は、防水壁の下端部に向けて流下し、排水口から防水壁の外へ排出できる。
【0010】
前記拡散装置から前記排出口に向かって張り出す仕切壁を有し、前記水平方向及び鉛直方向の両方に直交する方向を奥行方向とした場合、前記仕切壁は、前記奥行方向において前記排出口と前記配電部との間に配置されていることを要旨とする。
【0011】
これによれば、万一、ファンに衝突した水が防水壁を越えて飛散しても、仕切壁により、配電部に水がかかることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配電部に水がかかることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の燃料電池ユニットを模式的に示す部分破断斜視図。
図2】燃料電池ユニットの構成図。
図3】燃料電池ユニットの構成を説明する概略図。
図4】拡散装置、防水壁及び仕切壁を示す斜視図。
図5】配電部、拡散装置、防水壁及び仕切壁を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、燃料電池ユニットを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、燃料電池ユニット10は、図示しない産業車両に搭載される。燃料電池ユニット10は、筐体11を備える。筐体11は、底板11aと、天板11bと、底板11aの周縁と天板11bの周縁とを繋ぐ筒状の周壁11cと、を有する。燃料電池ユニット10が水平面上に置かれているものとして重力の方向をZ軸で示し、水平面に沿う方向をX軸とY軸で示す。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。以下の説明では、Z軸と平行な方向を鉛直方向Zともいい、X軸と平行な方向を水平方向Xともいう。また、Y軸と平行な方向を奥行方向Yともいう。したがって、奥行方向Yは、水平方向X及び鉛直方向Zの両方に直交する方向である。筐体11において、底板11aと天板11bとは鉛直方向Zに対向する。周壁11cは、水平方向Xに対向する第1側壁11d及び第2側壁11eと、奥行方向Yに対向する第3側壁11f及び第4側壁11gと、を有する。
【0015】
図2に示すように、燃料電池ユニット10は、燃料電池12、水素タンク13、エアコンプレッサ14、気液分離器15a、希釈器15、及び排水タンク16を備える。燃料電池ユニット10は、燃料電池12の図示しないアノードと水素タンク13を接続する水素供給路17と、燃料電池12の図示しないカソードとエアコンプレッサ14を接続するエア供給路18と、を備える。
【0016】
燃料電池ユニット10は、燃料電池12と希釈器15を接続する排出路19aと、希釈器15と排水タンク16を接続する排水路19bと、希釈器15に接続されたパージガス排出路20と、燃料電池12と水素供給路17を接続する水素循環路21を備える。
【0017】
燃料電池ユニット10は、外気と熱交換媒体との間で熱交換を行う熱交換器22と、熱交換媒体を燃料電池12と熱交換器22との間で循環させる循環流路23と、アノードパージガスを拡散する拡散装置30と、を有する。熱交換媒体としては冷却水が用いられるが、その他の媒体を用いてもよい。
【0018】
図1に示すように、燃料電池ユニット10は、第1配電部25及び第2配電部26を有する。第1配電部25及び第2配電部26は、図示しないケーブル及びヒューズといった電気的な接続部を有する。
【0019】
燃料電池12、水素タンク13、エアコンプレッサ14、希釈器15、及び排水タンク16は筐体11内に収容されている。また、水素供給路17、エア供給路18、排出路19a、排水路19b、パージガス排出路20、水素循環路21、循環流路23、拡散装置30、第1配電部25、及び第2配電部26は、筐体11内に収容されている。熱交換器22は、筐体11の第2側壁11eに配置されている。熱交換器22の外面は筐体11の外部に露出し、熱交換器22の内面は筐体11の内部において拡散装置30に対向している。筐体11の第1側壁11dには、複数の通気口11hが配置されている。複数の通気口11hの各々は、第1側壁11dを板厚方向に貫通する。
【0020】
図1又は図3に示すように、燃料電池12は、水平方向Xに拡散装置30と対向している。燃料電池12と拡散装置30は、水平方向Xに離れて対向している。水素タンク13は、第4側壁11gに近接している。水素タンク13は、底板11aに支持されている。水素タンク13の長手軸は水平方向Xに延びる。
【0021】
エアコンプレッサ14は、水平方向Xの第1側壁11dと燃料電池12の間に配置されている。気液分離器15aを内蔵した希釈器15は、鉛直方向Zに燃料電池12の下方、かつ奥行方向Yにおける燃料電池12の側方に配置されている。排水タンク16は、鉛直方向Zにおいて、燃料電池12の下方に配置されている。なお、パージガス排出路20の排出口20bに対し拡散装置30が対向していれば、筐体11内での燃料電池12、水素タンク13、及びエアコンプレッサ14の配置は適宜変更してもよい。
【0022】
第1配電部25及び第2配電部26は、奥行方向Yの第3側壁11fと燃料電池12の間に配置されている。第1配電部25は、底板11aに支持され、第2配電部26は、第1配電部25の上端面に支持されている。第1配電部25と第2配電部26は上下に段積みされている。
【0023】
第2配電部26の一部は、水平方向Xに拡散装置30と対向している。第1配電部25は、奥行方向Yの両端面のうち、第3側壁11fに近い端面に第1端面25aを有し、第1端面25aと反対に第2端面25bを有する。第1配電部25は、水平方向Xの両端面のうち、拡散装置30に近い端面に第3端面25cを有し、第3端面25cの反対に第4端面25dを有する。
【0024】
第2配電部26は、奥行方向Yの両端面のうち、第3側壁11fに近い端面に第1端面26aを有し、第1端面26aと反対に第2端面26bを有する。第2配電部26は、水平方向Xの両端面のうち、拡散装置30に近い端面に第3端面26cを有し、第3端面26cの反対に第4端面26dを有する。
【0025】
燃料電池12は、産業車両に搭載される負荷に供給する電力を発電する。燃料電池12は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池12は、水素タンク13から水素供給路17を介して供給される水素と、エアコンプレッサ14からエア供給路18を介して供給される空気中の酸素とを反応させて直流の電気エネルギー(直流電力)を発生する。燃料電池12では、水素を燃料ガス、空気中の酸素を酸化剤ガスとして発電が行われる。
【0026】
図2に示すように、水素供給路17にはバルブ17aが設けられている。バルブ17aは、水素供給路17を開閉させる。水素循環路21の第1端部は、燃料電池12のアノードオフガス排出口に接続され、水素循環路21の第2端部は、水素供給路17に接続されている。水素循環路21の第2端部は、水素供給路17での水素供給方向のバルブ17aよりも下流側に接続されている。燃料電池12のアノードオフガス排出口からは、アノードオフガスが排出される。アノードオフガスは、燃料電池12で未反応の水素が含まれている排気である。
【0027】
燃料電池12では、カソードの水や窒素の一部が電解質膜をカソード側からアノード側へ逆拡散するため、アノードの水や窒素の濃度が高くなり、発電効率が低下する。これを防止あるいは抑制するため、アノードに溜まった水及び窒素は、水素と共に燃料電池12の外へ排出される。このようにアノードに溜まった水及び窒素を水素と共に燃料電池12の外へ排出することをアノードパージという。アノードパージにより燃料電池12から排出されたアノードパージガスは、排出路19aを介して希釈器15に送られる。
【0028】
希釈器15は、ケース15bの内部に気液分離器15aを備える。ケース15b内でのガスの流通方向において、気液分離器15aより下流に希釈器15として機能する部分が配置されている。
【0029】
排出路19aは、ケース15bを貫通して気液分離器15aに接続されている。気液分離器15aは、アノードパージガスから水素と水を分離する機能を有している。希釈器15は、気液分離器15aによって分離された水素を希釈する機能を有している。また、気液分離器15aは、燃料電池12から排出された水及び酸素を含む排気であるカソードオフガスから酸素と水を分離する機能を有している。さらに、気液分離器15aは、燃料電池12から排出された水素を含む排気であるアノードオフガスから水素を分離させる機能を有している。希釈器15は、気液分離器15aによって分離された水素を希釈する機能を有している。カソードオフガス及びアノードオフガスは、排出路19aを介して燃料電池12から希釈器15へ排出される。
【0030】
気液分離器15aによって分離された水は、排水路19bを介して排水タンク16に排出される。気液分離器15aによって気液分離され、希釈器15によって希釈された水素を含むアノードパージガスは、パージガス排出路20から筐体11の内部に排出される。パージガス排出路20の導入口20aは希釈器15に接続されている。
【0031】
パージガス排出路20は、希釈器15のケース15bから拡散装置30に向けて延びる。パージガス排出路20は、水平方向Xにおいて、ケース15bと拡散装置30の間に配置されている。パージガス排出路20の排出口20bは、拡散装置30に向けて開口している。このパージガス排出路20の排出口20bは、水平方向Xに拡散装置30と対向している。したがって、燃料電池ユニット10は、燃料電池12のアノードパージガスを燃料電池12から排出させる排出口20bを有する。
【0032】
循環流路23は、燃料電池12と熱交換器22との間で冷却水を循環させる。循環流路23は、往路23aと、復路23bと、図示しないポンプと、燃料電池12内及び熱交換器22内に取り回された図示しない熱交換流路と、を有する。往路23aは、熱交換器22から燃料電池12に向けて冷却水を流すための流路である。復路23bは、燃料電池12から熱交換器22に向けて冷却水を流すための流路である。ポンプは、循環流路23で冷却水を循環させる。
【0033】
往路23aを通って燃料電池12内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、燃料電池12で発生した熱を吸収して燃料電池12を冷却する。復路23bを通って熱交換器22内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、外気と熱交換されて冷却される。
【0034】
図4又は図5に示すように、拡散装置30は、ケーシング31と、ケーシング31に回転可能に支持されたファン32と、を有する、所謂ラジエータである。ケーシング31には、ファン収容部31aが円形状に開口している。ファン収容部31aは、ケーシング31を厚さ方向に貫通する。
【0035】
ファン収容部31aにはファン32が収容されている。拡散装置30は、ケーシング31から張り出す丸枠状の枠部34を有する。ファン収容部31aは、ケーシング31の内周縁の内側に画定されている。枠部34は、ケーシング31の内周縁に沿う。このため、枠部34は、ファン収容部31aを囲み、ファン収容部31aに収容されているファン32を囲んでいる。枠部34の内周面によって構成される囲繞面34aは、ファン32を当該ファン32の径方向の外側で囲む。枠部34は、ケーシング31の外面から張り出している。
【0036】
ファン32は、円柱状のハブ32aと、ハブ32aと一体回転する複数の回転翼32bと、を有する。ハブ32aには図示しないシャフトが連結され、シャフトはケーシング31に収容された図示しないモータによって回転する。したがって、ファン32は、シャフトの中心軸線を回転軸線Lとして回転する。ハブ32aの径方向をファン32の径方向とし、ハブ32aの周方向をファン32の周方向とする。
【0037】
複数の回転翼32bは、ファン32の周方向へ等間隔を空けて配置されている。複数の回転翼32bの各々は、ハブ32aの軸線方向に厚さを有する。複数の回転翼32bの各々は、ファン32の径方向に沿ってハブ32aから離れるに従い、周方向への寸法が大きくなる。回転軸線Lの延びる方向に沿ってファン32を見た正面視では、回転翼32bの外周端面32cは円弧状である。
【0038】
枠部34の囲繞面34aは、各回転翼32bの外周端面32cに対向している。ケーシング31のファン収容部31aは、枠部34の囲繞面34aで囲まれる領域である。そして、拡散装置30は、ファン収容部31aと排出口20bとが水平方向Xに対向するように筐体11内に配置されている。パージガス排出路20の排出口20bは、水平方向Xにファン32と近く、かつファン収容部31aの下部となる位置で開口している。排出口20bは、当該排出口20bから排出されたアノードパージガスをファン32の回転で拡散できる位置に配置されている。
【0039】
第1配電部25と第2配電部26は、奥行方向Yにおける排出口20bよりも第3側壁11fに近づいた位置に配置されている。第1配電部25及び第2配電部26をファン32の回転軸線Lの延びる方向に沿って見た正面視において、第1配電部25と第2配電部26は、枠部34における囲繞面34aの外側及び下側に集約して配置されている。
【0040】
ここで、上記構成の燃料電池ユニット10において、燃料電池12の発電時の動作を説明する。
燃料電池12の発電時、往路23aを通って燃料電池12内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、燃料電池12で発生した熱を吸収して燃料電池12を冷却する。復路23bを通って熱交換器22内の熱交換流路に流れ込んだ冷却水は、外気と熱交換されて冷却される。拡散装置30のファン32が駆動されることにより、筐体11の外部から通気口11hを介して筐体11の内部に吸気される。筐体11の内部には、通気口11hからファン収容部31aに向かう気流が発生する。また、ファン32の径方向の外側からもファン収容部31aに向かう気流が発生する。これらの気流は、ファン収容部31aを通過して熱交換器22を通過する。すると、熱交換器22内の熱交換流路での冷却水の冷却効率が高められる。つまり、ファン32の駆動に伴い、筐体11内には強制対流が発生し、燃料電池12、第1配電部25及び第2配電部26が強制冷却される。
【0041】
アノードパージが行われた場合、パージガス排出路20の排出口20bから排出されたアノードパージガスは、ファン32の回転によってファン収容部31aに吸い込まれ、筐体11の外部に排気されるとともに強制的に拡散され、アノードパージガス中の水素が希釈される。その結果、燃料電池12から排出された水素の濃度が基準値以下になる。したがって、拡散装置30は、ファン32の回転により発生した気流によって排出口20bから排出されたアノードパージガスを拡散させる。
【0042】
燃料電池ユニット10は、拡散装置30から排出口20bに向かって張り出す防水壁40を有する。防水壁40は、囲繞面34aの周方向に延びる板状であり、囲繞面34aのほぼ下半分に沿って延びる。防水壁40は、二枚の壁形成部材44によって構成されている。
【0043】
ファン32の回転軸線Lの延びる方向に沿って拡散装置30を見ることを正面視とする。拡散装置30の正面視では、各壁形成部材44は、枠部34の外周面に沿って、囲繞面34aの周方向に延びる。拡散装置30の正面視において、ケーシング31の奥行方向Yの中央を通過し、鉛直方向Zに延びる仮想線を第1基準線M1とする。
【0044】
一方の壁形成部材44は、第1基準線M1よりも第3側壁11fに近い位置に配置され、他方の壁形成部材44は、第1基準線M1よりも第4側壁11gに近い位置に配置されている。二枚の壁形成部材44は、第1基準線M1を中心線とする線対称の位置関係にある。
【0045】
拡散装置30の正面視において、ケーシング31の鉛直方向Zの中央を通過し、水平方向Xに延びる仮想線を第2基準線M2とする。各壁形成部材44の上端は、第2基準線M2よりも上に位置している。各壁形成部材44の下端は、枠部34の下端の近くに位置している。二枚の壁形成部材44の各々は、上端から下端に至るまで円弧状に湾曲している。
【0046】
二つの壁形成部材44の下端は、囲繞面34aの周方向に離間している。二つの壁形成部材44の下端の間に排水口41が画定されている。燃料電池ユニット10は、二枚の壁形成部材44によって形成される防水壁40の下端に排水口41を有する。
【0047】
防水壁40は二つの上端を備える。防水壁40の一方の上端は一方の壁形成部材44の上端によって形成され、防水壁40の他方の上端は他方の壁形成部材44の上端によって形成されている。燃料電池ユニット10は、防水壁40の二つの上端を囲繞面34aの周方向に離間させる連通部42を備える。連通部42は、二つの壁形成部材44の上端の間に画定されている。したがって、連通部42は、囲繞面34aの上部に沿って防水壁40の存在しない箇所に設けられている。連通部42は、囲繞面34aで囲まれる領域であるファン収容部31aを、防水壁40を介さずにケーシング31の外部と連通させる。また、連通部42は、防水壁40の内面よりも内側を、ファン32の径方向の外側に開放する箇所である。例えば、防水壁40が囲繞面34aの周方向の全体に延びる円筒状の場合を比較例とする。連通部42は、比較例の防水壁40と異なり、ファン32を径方向の内側に閉じ込めない。
【0048】
図3に示すように、水平方向Xへの防水壁40の寸法を高さH1とする。防水壁40の高さH1は、囲繞面34aの周方向へ一定である。ファン32の回転翼32bに、アノードパージガスに含まれる水が衝突して当該水が飛散したとき、飛散した水が、防水壁40の外側に飛散することを抑制できるように防水壁40の高さH1が設定されている。
【0049】
ファン32の回転速度が遅くなるほど、水が回転翼32bに衝突しても、防水壁40の外側に向けた水の飛散は抑制される。しかし、ファン32の回転速度が早くなるほど、水が回転翼32bに衝突したときの水の飛散度合いは大きくなる。したがって、ファン32の取り得る回転速度のうち、上限値に近い回転速度での水の飛散具合を実験等で把握することで、防水壁40の外側へ水を飛散させないための高さH1が設定される。
【0050】
なお、水を回転翼32bに衝突させた実験では、第2基準線M2よりも下側では水の飛散が確認されたが、第2基準線M2を越えて枠部34の上端に近づくほど、水の飛散が減少していた。これは、回転翼32bに水が衝突したとき、水の一部は、ファン32の径方向の外側の中でも下側に向けて飛散するためである。また、回転翼32bの表面にも水の一部が付着するが、回転翼32bに付着した水は、遠心力によってファン32の径方向の外側に移動しながらも、自重によって下側に向けて移動するためである。
【0051】
したがって、防水壁40は、水が飛散する第2基準線M2より下側に少なくとも配置されている。一方で、燃料電池ユニット10は、水の飛散し難い箇所に、防水壁40の設けられていない連通部42を備える。つまり、囲繞面34aの上部に位置する連通部42付近には水が飛散しない。このため、連通部42から水が飛散することはほぼ無いといえる。
【0052】
燃料電池ユニット10は、拡散装置30から排出口20bに向かって水平方向Xへ張り出す仕切壁43を備える。
図4又は図5に示すように、仕切壁43は、拡散装置30のケーシング31に接合されている。仕切壁43は、奥行方向Yにおいて、排出口20bと第1配電部25及び第2配電部26との間に配置される。仕切壁43は板厚方向に見てほぼ長四角な薄板状である。仕切壁43の板厚方向は、奥行方向Yと一致する。
【0053】
仕切壁43の板厚方向の片面は、排水口41を画定する一方の壁形成部材44の下端から離間している。仕切壁43は、第1基準線M1よりも第3側壁11fに近い位置に配置されている。また、仕切壁43は、第1配電部25及び第2配電部26より第1基準線M1に近い位置に配置されている。拡散装置30の正面視では、仕切壁43の上部はファン収容部31aの下部、枠部34の下部及びケーシング31の下部に重なり、仕切壁43のその他の部分は、ケーシング31の下端からはみ出している。
【0054】
図3に示すように、水平方向Xに沿った仕切壁43の寸法を仕切壁43の高さH2とする。また、仕切壁43の高さH2は、防水壁40の高さH1よりも高い。このため、仕切壁43は、防水壁40高さでの先端よりも排出口20bに向かって張り出している。
【0055】
仕切壁43の高さH2は、防水壁40の高さH1より高いため、ファン32の回転翼32bに水が衝突して水が飛散したときに、飛散した水が仕切壁43の外側に飛散することを抑制できる。
【0056】
仕切壁43の鉛直方向Zの上端は、第2配電部26の鉛直方向Zの上端よりも上に位置している。仕切壁43は、水平方向Xに沿って拡散装置30から延び、第1配電部25の第3端面25c、及び第2配電部26の第3端面26cを越える位置まで延びている。仕切壁43は、第1配電部25の第2端面25bの一部、及び第2配電部26の第2端面26bの一部を燃料電池12側から覆っている。
【0057】
次に、燃料電池ユニット10の作用を説明する。
燃料電池12のアノードパージが行われると、パージガス排出路20の排出口20bからアノードパージガスが排出される。アノードパージガス中に含まれる水は、回転するファン32の回転翼32bに衝突する。回転翼32bに衝突した水の一部は、ファン32の下部において、ファン32よりも径方向の外側に向けて飛散するが、防水壁40よりも外側に水が飛散することが抑制される。
【0058】
また、回転翼32bの表面にも水の一部が付着するが、この水は遠心力によって回転翼32bの表面に沿って、ファン32の径方向の外側、かつ下側に向けて移動した後、ファン32よりも径方向の外側、かつ下側に向けて飛散するが、防水壁40により、ファン32よりも径方向の外側、かつ下側に飛散することが抑制される。また、万一、回転翼32bに衝突した水が防水壁40を越えて飛散しても、仕切壁43よりも外側に水が飛散することが抑制される。
【0059】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)アノードパージガスを拡散させる拡散装置30に防水壁40を設けた。このため、アノードパージガス中に含まれる水がファン32よりも径方向の外側に飛散しても、防水壁40の外側に水が飛散することを抑制できる。その結果として、ファン32によってアノードパージガス中の水素を拡散させる燃料電池ユニット10において、ファン32の回転によって水が飛散しても、筐体11内の第1配電部25及び第2配電部26に水がかかることを抑制できる。
【0060】
(2)拡散装置30は連通部42を備える。例えば、囲繞面34aの周方向全体に亘って防水壁40を設けると、ファン32の回転によって発生する気流の速度が速まり、水が速度を増した状態で回転翼32bに衝突して飛散が激しくなる。しかし、連通部42を設けることで、気流の速度を抑え、水が回転翼32bに衝突したときの飛散を抑制できる。
【0061】
(3)拡散装置30は排水口41を備える。飛散した水の多くは防水壁40の内面に付着する。防水壁40の内面に付着した水は、枠部34の下端部に向けて流下する。そして、防水壁40の内面に付着した水を、排水口41から防水壁40の外へ排出できる。このため、防水壁40の内側に水が溜まり続けることをなくすことができる。なお、仕切壁43と片方の壁形成部材44の下端とは離間しているため、片方の壁形成部材44の内周面を流下した水を、壁形成部材44と仕切壁43との間から排出できる。
【0062】
(4)拡散装置30は仕切壁43を備える。このため、万一、水が防水壁40を越えても、仕切壁43の外側に水が飛散することを抑制できる。このため、仕切壁43によって第1配電部25及び第2配電部26に水がかかることを抑制できる。
【0063】
(5)アノードパージガス中の水素を拡散させるには、排出口20bは水平方向Xでファン32に近いほどよい。この背反としてアノードパージガス中に含まれる水が回転翼32bに衝突したときに飛散しやすくなる。燃料電池ユニット10では、防水壁40を新設することで、水の飛散を抑制するため、排出口20bをファン32から遠ざけたりすることなく水素を拡散し、希釈できる。
【0064】
(6)筐体11内では、第1配電部25及び第2配電部26は、囲繞面34aの外側及び下側の一箇所に集約して配置されている。例えば、第1配電部25と第2配電部26が、奥行方向Yに囲繞面34aを挟んだ両側に配置されていると、各配電部25,26に水がかかる可能性が高くなる。しかし、実施形態のように第1配電部25と第2配電部26を一箇所に集約して配置し、防水壁40及び仕切壁43を配置することで、それら第1配電部25及び第2配電部26に水がかかる可能性を低くできる。
【0065】
(7)筐体11内では、第1配電部25の上に第2配電部26が支持されているが、仕切壁43は、第2配電部26の第2端面26bの一部だけでなく、第1配電部25の第2端面25bの一部を覆う。このため、二つの配電部25,26を備える構成であっても第1配電部25及び第2配電部26のいずれにも水がかかりにくくなる。
【0066】
(8)仕切壁43の鉛直方向Zの上端は、第2配電部26の鉛直方向Zの上端より高い位置にある。このため、万一、水が防水壁40を越えても、第2配電部26に水がかかることを仕切壁43で抑制できる。
【0067】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ 仕切壁43の鉛直方向Zの上端は、第2配電部26の鉛直方向Zの上端より低い位置にあってもよい。
【0068】
○ 仕切壁43は、第1配電部25及び第2配電部26の両方を水平方向Xの全体に亘って覆っていてもよい。
○ 配電部は一つだけであってもよい。
【0069】
○ 仕切壁43はなくてもよい。
○ 防水壁40の上端は、第2基準線M2上に位置していてもよいし、第2基準線M2より若干下に位置していてもよい。
【0070】
○ 防水壁40は、一枚の薄板によって形成されていてもよい。この場合、排水口41は、防水壁40の下端に貫通孔を形成して設けられる。
○ 燃料電池ユニット10は、拡散装置30のファン32をラジエータファンとして備えていたが、拡散装置30のファン32を、ラジエータファンと別構成として備えていてもよい。
【0071】
○ カソードオフガスを排出路19aを介して希釈器15に排出させたが、排出路19aとは別にカソードオフガス用の排出路を設けてもよい。
○ ケーシング31から突出した枠部34の内周面を囲繞面34aとしたが、枠部34を備えない場合は、ケーシング31の内周面を囲繞面としてもよい。
【0072】
○ 気液分離器15aを内蔵した希釈器15の代わりに、気液分離器15aと希釈器15とを別々に燃料電池ユニット10に配置し、希釈器15にパージガス排出路20を接続して、排出口20bを設けてもよい。この場合、燃料電池12から排出されたアノードパージガスは、排出路19aを介して気液分離器15aに送られ、気液分離される。その後、水素は希釈器15に送られ、水素が希釈される。気液分離器15a及び希釈器15によって気液分離され、かつ希釈された水素を含むアノードパージガスは、希釈器15からパージガス排出路20を介して筐体11の内部に排出される。
【0073】
○ 燃料電池ユニット10は、気液分離器15aを備えていなくてもよい。この場合、排出路19aは希釈器15に接続される。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
【0074】
(イ)前記配電部を複数有し、前記複数の前記配電部は、前記囲繞面の外側及び下側の一箇所に集約して配置されている燃料電池ユニット。
(ロ)前記複数の前記配電部は上下に段積みされており、前記仕切壁は、複数の前記配電部の各々の少なくとも一部を覆う燃料電池ユニット。
【0075】
(ハ)前記ファンの回転軸線の延びる方向に沿って前記拡散装置を見た正面視において、前記拡散装置の鉛直方向の中央を通過し、水平方向に延びる仮想線を基準線とした場合、前記防水壁の上端は、前記基準線よりも上に位置している燃料電池ユニット。
【符号の説明】
【0076】
10…燃料電池ユニット、11…筐体、12…燃料電池、20b…排出口、25…第1配電部、26…第2配電部、30…拡散装置、31a…囲繞面で囲まれる領域としてのファン収容部、32…ファン、34a…囲繞面、40…防水壁、41…排水口、42…連通部、43…仕切壁。
図1
図2
図3
図4
図5