(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112239
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】水生生物飼育水用処理材、水生生物飼育水用処理材の製造方法、水生生物飼育用水槽、及び水生生物飼育用濾過装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/34 20060101AFI20220726BHJP
C02F 3/00 20060101ALI20220726BHJP
C02F 1/68 20060101ALI20220726BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20220726BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
C02F3/34 101D
C02F3/00 G
C02F1/68 520B
C02F1/68 530F
C02F1/68 540J
C02F1/68 510J
A01K63/04 F
C12N1/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021007982
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】594033846
【氏名又は名称】株式会社マルカン
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸彦
【テーマコード(参考)】
2B104
4B065
4D040
【Fターム(参考)】
2B104EF01
2B104EF09
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BB03
4B065BC42
4B065BD10
4B065CA56
4B065CA60
4D040BB02
4D040BB42
4D040BB52
4D040BB82
(57)【要約】
【課題】水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる水生生物飼育水用処理材及び水生生物飼育水用処理材の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多孔体と、前記多孔体に担持された硝化菌と、前記多孔体中に分散して存在する、金属マグネシウム及びマグネシウム化合物の少なくとも一方とを有する水生生物飼育水用処理材である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔体と、
前記多孔体に担持された硝化菌と、
前記多孔体中に分散して存在する、金属マグネシウム及びマグネシウム化合物の少なくとも一方とを有することを特徴とする水生生物飼育水用処理材。
【請求項2】
前記マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウムを含む請求項1に記載の水生生物飼育水用処理材。
【請求項3】
前記多孔体が、多孔質な無機質材である請求項1又は請求項2に記載の水生生物飼育水用処理材。
【請求項4】
前記無機質材が、珪藻土及びパーライトからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の水生生物飼育水用処理材。
【請求項5】
前記硝化菌が、ニトロバクター及びニトロソコッカスからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の水生生物飼育水用処理材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水生生物飼育水用処理材の製造方法であって、
粉砕させた火山岩と水酸化マグネシウムとを混合した粉体を1次焼成させることによって、粒子状の混合体が得られ、
前記混合体を所定の形状の金型に投入した状態で2次焼成させることによって、所定の形状の多孔体が得られ、
前記多孔体を、前記硝化菌を含む水に浸漬させた後、乾燥させることを特徴とする水生生物飼育水用処理材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水生生物飼育水用処理材を槽内に敷設した水生生物飼育用水槽。
【請求項8】
内部に水を流通させる筐体と、
前記筐体内に配置される濾過材とを備え、
前記濾過材が、請求項1~5のいずれか1項に記載の水生生物飼育水用処理材を含む水生生物飼育用濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物飼育水用処理材、水生生物飼育水用処理材の製造方法、水生生物飼育用水槽、及び水生生物飼育用濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鑑賞及び養殖等を目的として、魚、エビ、カニ、及びカメ等の水生生物を水槽で飼育する場合、水生生物から排泄される排泄物等に起因するアンモニアが発生する。また、アンモニア以外にも、残餌及び水生生物の排泄物等の、水生生物に起因して有機物も発生する。この水生生物に起因して発生する有機物は、水槽内に存在する細菌等によって分解されるが、その際にも、アンモニアが発生する。このような、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質によって、水槽内の飼育水の水質が低下する。
【0003】
飼育水の水質を維持する方法としては、例えば、バクテリア等の微生物を担持させた濾過材等の水処理材を用いて処理する方法等が挙げられる。このような方法としては、例えば、特許文献1に記載の流水濾材を用いる方法等が挙げられる。特許文献1には、焼結した土の粒子に有機物分解バクテリアを生息させていることに基づく流水濾材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、観賞魚育成水槽において、単に流水濾材を敷設することによって、汚濁の原因となる有害な有機物を分解することが可能となり、観賞魚による排泄物におけるアンモニアなどの窒素性有機物を分解することによる水の浄化が可能となる旨が開示されている。
【0006】
水生生物飼育水を処理する処理材としては、上述したような水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制できることが求められるだけではなく、水生生物の飼育に好適な水になるように処理できることも求められる。
【0007】
そこで、本発明者等は、本発明に到る際、健康に良い飲料水として注目されている、水素を溶解させた水、いわゆる水素水を、水生生物飼育水で用いると、水生生物の健康維持にも寄与すると考え、水素水に着目した。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされた発明であって、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる水生生物飼育水用処理材及び水生生物飼育水用処理材の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記水生生物飼育水用処理材を備える、水生生物飼育用水槽及び水生生物飼育用濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0010】
本発明の一態様に係る水生生物飼育水用処理材は、多孔体と、前記多孔体に担持された硝化菌と、前記多孔体中に分散して存在する、金属マグネシウム及びマグネシウム化合物の少なくとも一方(マグネシウム成分)とを有する水生生物飼育水用処理材である。
【0011】
このような構成によれば、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる水生生物飼育水用処理材を提供することができる。
【0012】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0013】
水生生物飼育水中で水生生物を飼育すると、前記水生生物飼育水に、水生生物に起因して有機物やアンモニア等の汚染物質が発生する。この水生生物に起因して発生する汚染物質によって、前記水生生物飼育水の水質が低下する。前記水生生物飼育水用処理材が前記多孔体で構成されているため、前記水生生物飼育水用処理材を前記水生生物飼育水に接触させておくと、その水生生物飼育水に発生する汚染物質を前記水生生物飼育水用処理材が吸着すると考えられる。
【0014】
また、前記水生生物飼育水用処理材に備えられる多孔体には、硝化菌が担持されている。この硝化菌は、前記多孔体に担持されていることから、前記水生生物飼育水用処理材を水生生物飼育水に接触させておくと、前記水生生物飼育水中で生息できると考えられる。そして、前記水生生物飼育水用処理材は、前記多孔体に担持されている硝化菌によって、水生生物に起因して発生するアンモニアを浄化することができると考えられる。具体的には、アンモニア(アンモニアが前記水生生物飼育水に溶解されることによって発生したアンモニウムイオン)を、前記水生生物飼育水用処理材に備えられる多孔体に担持されている硝化菌によって、アンモニアより毒性の低い亜硝酸塩(亜硝酸イオン)に分解でき、さらに、亜硝酸塩を、亜硝酸塩より毒性の低い硝酸塩(硝酸イオン)に分解することができると考えられる。さらに、残餌及び水生生物の排泄物等の、水生生物に起因して発生した有機物も、水生生物飼育水に存在する細菌等によって分解されると考えられる。この分解の際に、アンモニアが発生する。このアンモニアも前記硝化菌によって、分解することができると考えられる。水生生物に起因して発生した有機物が分解されることによって発生するアンモニアも、前記硝化菌によって分解されることから、前記硝化菌は、水生生物に起因して発生した有機物の分解にも寄与すると考えられる。よって、前記硝化菌は、アンモニアを分解するだけではなく、水生生物に起因して発生した有機物の分解にも寄与すると考えられる。
【0015】
これらのことから、前記水生生物飼育水用処理材は、水生生物飼育水に接触させることによって、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制することができると考えられる。
【0016】
また、前記多孔体には、前記マグネシウム成分が分散して存在する。このことから、前記水生生物飼育水用処理材を前記水生生物飼育水に接触させて処理すると、まず、前記マグネシウム成分のうちの、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在するマグネシウム成分に前記水生生物飼育水が接触して水素を発生させることができると考えられる。
【0017】
前記多孔体は、内部に前記水生生物飼育水を浸入させることができる。この多孔体内部に浸入した水生生物飼育水が、前記マグネシウム成分のうちの、前記多孔体の内部(前記多孔体の表面及び表面近傍以外)に存在するマグネシウム成分に接触することによっても水素を発生させることができると考えられる。このような多孔体の内部に浸入することによる水素発生の場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在するマグネシウム成分に前記水生生物飼育水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。
【0018】
さらに、前記多孔体は、前記水生生物飼育水に触れることにより、表面から徐々に溶解又は崩壊して、前記多孔体の表面及び表面近傍にマグネシウム成分が露出してくる場合もある。このような場合には、前記多孔体の表面及び表面近傍に露出してきたマグネシウム成分に前記水生生物飼育水が接触することによって、水素を発生させることができると考えられる。このような多孔体が徐々に溶解又は崩壊する場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在するマグネシウム成分に前記水生生物飼育水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。
【0019】
また、このような多孔体が徐々に溶解又は崩壊する場合であっても、前記多孔体の内部に浸入した水生生物飼育水が、前記多孔体の内部に存在するマグネシウム成分にも接触して水素を発生させることができると考えられる。また、前記多孔体が溶解又は崩壊する前であれば、前記多孔体の内部に浸入した水生生物飼育水が、前記多孔体の内部に存在するマグネシウム成分に接触できない場合も考えられるが、このような、水生生物飼育水が触れることによる前記多孔体の溶解又は崩壊は、前記多孔体内部でも起こると考えられる。よって、前記多孔体の内部に存在して、初期には水素発生に利用されていなかったマグネシウム成分に、前記水生生物飼育水が触れることによって、水素が発生する場合も考えられる。このような場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在するマグネシウム成分に前記水生生物飼育水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。さらに、前記多孔体の内部に浸入することによって水素が発生する場合よりも遅延して、水素が発生することになる場合も考えられる。
【0020】
上記のように、水素が発生する時期が異なることから、水素を長期間にわたって発生させることができ、好適な水素水が得られると考えられる。
【0021】
以上のことから、前記水生生物飼育水用処理材は、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができると考えられる。
【0022】
また、前記水生生物飼育水用処理材において、前記マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素をより発生させることができ、水素をより含む水生生物飼育水を得ることができる。
【0024】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0025】
まず、前記水生生物飼育水の存在下で水生生物を飼育すると、アンモニアが発生する。このアンモニアは、前記水生生物飼育水に溶解されると、pH等によって異なるが、その少なくとも一部は、アンモニウムイオンになる。このアンモニウムイオンを含む水に水酸化マグネシウムを接触させると、後述するように、水素が発生すると考えられる。よって、前記マグネシウム化合物として水酸化マグネシウムを含む水生生物飼育水用処理材を、水生生物を飼育した水生生物飼育水に接触させることによって、水生生物を飼育した場合に水素をより発生できると考えられる。
【0026】
これらのことから、前記水生生物飼育水用処理材は、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素をより発生させることができ、水素をより含む水生生物飼育水を得ることができると考えられる。また、水生生物を飼育した場合に水素をより発生できると考えられる。
【0027】
また、前記水生生物飼育水用処理材において、前記多孔体が、多孔質な無機質材であることが好ましい。前記無機質材が、珪藻土の焼結体及びパーライトからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0028】
このような構成によれば、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素をより発生させることができ、水素をより含む水生生物飼育水を得ることができる。
【0029】
このことは、上述したような、前記多孔体の内部に浸入した水生生物飼育水による水素発生、及び前記表面の崩壊又は溶解による水素発生をより起こすことができることによると考えられる。
【0030】
また、前記水生生物飼育水用処理材において、前記硝化菌が、ニトロバクター及びニトロソコッカスからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0031】
このような構成によれば、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下をより抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる。
【0032】
また、本発明の他の一態様に係る水生生物飼育水用処理材の製造方法は、前記水生生物飼育水用処理材の製造方法であって、粉砕させた火山岩と水酸化マグネシウムとを混合した粉体を1次焼成させることによって、粒子状の混合体が得られ、前記混合体を所定の形状の金型に投入した状態で2次焼成させることによって、所定の形状の多孔体が得られ、前記多孔体を、前記硝化菌を含む水に浸漬させた後、乾燥させることを特徴とする水生生物飼育水用処理材の製造方法である。
【0033】
このような構成によれば、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる水生生物飼育水用処理材の製造方法を提供することができる。
【0034】
また、本発明の他の一態様に係る水生生物飼育用水槽は、前記水生生物飼育水用処理材を槽内に敷設した水生生物飼育用水槽である。
【0035】
このような構成によれば、前記水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用水槽を提供することができる。すなわち、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水で水生生物を飼育することができる水生生物飼育用水槽を提供することができる。
【0036】
また、本発明の他の一態様に係る水生生物飼育用濾過装置は、内部に水を流通させる筐体と、前記筐体内に配置される濾過材とを備え、前記濾過材が、前記水生生物飼育水用処理材を含む水生生物飼育用濾過装置である。
【0037】
このような構成によれば、前記水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用濾過装置を提供することができる。すなわち、前記水生生物飼育用濾過装置を流通させる水を、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水にすることができる水生生物飼育用濾過装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、水生生物に起因して発生する有機物による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水を得ることができる水生生物飼育水用処理材及び水生生物飼育水用処理材の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記水生生物飼育水用処理材を備える、水生生物飼育用水槽及び水生生物飼育用濾過装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用水槽の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用濾過装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0041】
本発明の一実施形態に係る水生生物飼育水用処理材は、多孔体と、前記多孔体に担持された硝化菌と、前記多孔体中に分散して存在する、金属マグネシウム及びマグネシウム化合物の少なくとも一方(マグネシウム成分)とを有する水生生物飼育水用処理材である。
【0042】
前記多孔体は、内部に水を浸入させることができる多孔質な材料からなるものであれば、特に限定されず、水中で、前記多孔体に担持させた硝化菌が好適に生息することができることが好ましい。前記多孔体としては、例えば、観賞魚用の水槽に用いられる濾過材等が挙げられる。前記多孔体としては、具体的に、多孔質な無機質材等が挙げられ、より具体的には、火山岩を焼成して得られた焼結体等が挙げられる。また、前記無機質材としては、珪藻土、パーライト、ゼオライト、バーミキュライト、焼結した火山灰土、粉砕した麦飯石、粉砕したウラストナイト、及び粉砕したアノーサイト等が挙げられる。この中でも、珪藻土、及びパーライトが好ましい。前記多孔体としては、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記多孔体としては、水生生物飼育水に発生する汚染物質等を吸着することができる多孔体であることが好ましい。そうすることによって、前記水生生物飼育水用処理材で、水生生物飼育水に発生する汚染物質を処理しやすくなる。また、前記多孔体としては、水に接触させることによって、表面から徐々に溶解又は崩壊される多孔体であることが好ましい。そうすることによって、前記水生生物飼育水用処理材を前記水生生物飼育水に接触させることによって、前記多孔体に含まれるマグネシウム成分が徐々に露出される。そうすることによって、前記多孔体に含まれるマグネシウム成分から、長期間にわたって水素が発生されることになると考えられる。
【0043】
前記硝化菌は、水に含まれるアンモニア(アンモニウムイオン)を、アンモニアより毒性の低い亜硝酸塩(亜硝酸イオン)に分解することができれば、特に限定されず、さらに、この亜硝酸塩を、亜硝酸塩より毒性の低い硝酸塩(硝酸イオン)に分解することができる硝化菌が好ましい。前記硝化菌は、以下のように、アンモニアを、亜硝酸塩(亜硝酸イオン)や硝酸塩(硝酸イオン)に分解すると考えられる。
【0044】
まず、アンモニアは、水(前記水生生物飼育水)中で、pH等によって異なるが、その少なくとも一部は、下記式(1)のように、アンモニウムイオンになる。
【0045】
NH3+H2O→NH4
++OH- (1)
前記硝化菌は、下記式(2)のように、このアンモニウムイオンを亜硝酸イオン(NO2
-)に分解すると考えられ、さらに、下記式(3)のように、この亜硝酸イオンを硝酸イオン(NO3
-)に分解すると考えられる。よって、前記アンモニウムイオンは、下記式(4)のように、前記硝化菌によって、硝酸イオンに分解されると考えられる。すなわち、下記式(4)は、下記式(2)及び下記式(3)から導かれる。
【0046】
2NH4
++3O2→2NO2
-+2H2O+4H+ (2)
2NO2
-+O2→2NO3
- (3)
NH4
++2O2→NO3
-+H2O+2H+ (4)
前記硝化菌としては、例えば、ニトロバクター及びニトロソコッカス等が挙げられる。前記硝化菌は、これらを1種で用いてもよいし、2種を組み合わせて用いてもよい。前記硝化菌の担持量は、特に限定されず、硝化菌によるアンモニアの分解を好適に行うことが可能な量であることが好ましい。前記硝化菌の担持量としては、例えば、前記硝化菌を含む水に前記多孔体を浸漬させ、乾燥させた後に、前記多孔体に担持される量等が挙げられる。実際には、前記硝化菌は、前記多孔体に少量でも担持されていれば、前記水生生物飼育水用処理材を前記水生生物飼育水に接触させて使用することにより、増殖可能であると考えられる。このことから、前記硝化菌は、前記多孔体に担持されていればよく、極少量であっても、硝化菌によるアンモニアの分解を好適に行うことができると考えられる。
【0047】
前記水生生物飼育水用処理材には、前記硝化菌以外の、水生生物飼育水を浄化に寄与する菌(他の菌)も前記多孔体に担持されていてもよい。この他の菌としては、例えば、脱窒菌等が挙げられる。
【0048】
前記金属マグネシウム及びマグネシウム化合物の少なくとも一方(マグネシウム成分)は、前記多孔体中に分散して存在する。前記マグネシウム化合物は、水生生物飼育水(水生生物を飼育する水)と接触することによって、水素を発生するマグネシウム化合物であれば、特に限定されない。前記マグネシウム化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム等が挙げられる。前記水生生物飼育水用処理材には、前記マグネシウム成分として、前記金属マグネシウム及び前記マグネシウム化合物のいずれか一方を含んでいてもよいし、両者を含んでいてもよい。すなわち、前記マグネシウム成分は、これらを1種で用いてもよいし、2種を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
金属マグネシウムは、下記式(5)のように、水生生物飼育水に含まれる水との反応等によって、水素が発生すると考えられる。また、水生生物飼育水の存在下で水生生物を飼育すると、アンモニアが発生する。このアンモニアは、前記水生生物飼育水のpH等によって異なるが、その少なくとも一部は、上記式(1)のように、水に溶解されて、アンモニウムイオンになる。このように、水生生物飼育水には、水生生物からの排泄物等に由来するアンモニウムイオンが含まれる。前記マグネシウム化合物が、例えば、水酸化マグネシウムである場合、前記のようなアンモニウムイオンは、下記式(6)のように、水酸化マグネシウムによって、金属マグネシウムやアンモニウムになると考えらえる。そして、この金属マグネシウムによっても、上述したように(下記式(5)のように)、水生生物飼育水に含まれる水との反応等によって、水素が発生すると考えられる。このことから、水酸化マグネシウムは、水生生物飼育水に含まれるアンモニウムイオンや水等との反応等によって、水素を発生させることができると考えられる。よって、前記マグネシウム化合物として水酸化マグネシウムを含む水生生物飼育水用処理材を、水生生物を飼育した水生生物飼育水に接触させることによって、水生生物を飼育した場合に水素をより発生できると考えられる。前記マグネシウム化合物としては、これらの点から、水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。すなわち、前記マグネシウム成分としては、金属マグネシウム及び水酸化マグネシウムの少なくとも一方を含むことが好ましい。なお、ここで発生したアンモニウムは、上記式(1)のように、水に溶解されて、アンモニウムイオンになり、硝化菌によって、上記式(2)のように、亜硝酸イオンに分解され、この亜硝酸イオンが、上記(3)のように、硝酸イオンに分解される。また、前記マグネシウム成分としては、酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウム等が含んでいてもよい。また、金属マグネシウムは、下記式(5)のように、水生生物飼育水に含まれる水に接触されることによって、水素を発生させるとともに、水酸化マグネシウムになる。この水酸化マグネシウムも、上述したように、水生生物飼育水に含まれるアンモニウムイオンや水等との反応(下記式(6)のような反応)等によって、水素を発生させることができると考えられる。
【0050】
Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2 (5)
Mg(OH)2+2NH4
+→Mg+2NH3+2H2O (6)
前記マグネシウム成分の含有量は、特に限定されず、前記マグネシウム成分に水生生物飼育水に接触させることによって、水素を発生させることができる量であることが好ましい。前記マグネシウム成分の含有量としては、前記マグネシウム成分の種類等によっても異なるが、例えば、前記水生生物飼育水用処理材100質量部に対して、5~45質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましく、8~15質量部であることがさらに好ましい。また、前記マグネシウム成分の中でも水酸化マグネシウムの含有量は、例えば、前記水生生物飼育水用処理材100質量部に対して、0.3~3質量部であることが好ましく、0.5~1質量部であることが好ましい。前記マグネシウム成分の中でも金属マグネシウムの含有量は、例えば、前記水生生物飼育水用処理材100質量部に対して、30~38質量部であることが好ましい。前記マグネシウム成分の含有量が少なすぎると、前記マグネシウム成分による水素発生量が少なくなり、好適な水生生物飼育水用処理材にはなりにくい傾向がある。また、前記マグネシウム成分の含有量が多すぎても、前記マグネシウム成分による水素発生量が必要以上に発生することになる。また、前記マグネシウム成分の含有量が多すぎると、前記多孔体が相対的に少なくなり、前記水生生物飼育水用処理材の形状を維持しにくくなる傾向もある。これらのことから、前記マグネシウム成分の含有量が、それぞれ上記範囲内であると、前記マグネシウム成分による水素発生量が好適になり、好適な水生生物飼育水用処理材が得られる。
【0051】
前記マグネシウム成分は、例えば、粒子状や粉末状であることが好ましい。前記マグネシウム成分の粒子径は、前記マグネシウム成分が前記多孔体中に分散して存在することができれば、特に限定されない。前記マグネシウム成分の粒子径としては、例えば、体積平均粒子径で、0.5~5μmであることが好ましく、0.8~2μmであることがより好ましい。前記マグネシウム成分が大きすぎると、前記水生生物飼育水に接触できる前記マグネシウム成分の面積が相対的に小さくなり、前記マグネシウム成分による水素発生量が少なくなる傾向がある。また、前記マグネシウム成分が小さくてもよいが、前記マグネシウム成分の粒子径を小さくすることには限界がある。また、前記マグネシウム成分が小さすぎると、前記多孔体から脱落しやすくなる傾向もある。これらのことから、前記マグネシウム成分の粒子径が、上記範囲内であると、前記マグネシウム成分による水素発生量が好適になり、好適な水生生物飼育水用処理材が得られる。
【0052】
前記水生生物飼育水用処理材の製造方法は、前記水生生物飼育水用処理材を製造することができれば、特に限定されず、具体的には、以下のような製造方法等が挙げられる。
【0053】
本発明の他の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材の製造方法は、前記水生生物飼育水用処理材の製造方法である。前記製造方法は、まず、粉砕させた火山岩と水酸化マグネシウムとを混合した粉体を焼成させる(1次焼成工程)。そうすることによって、粒子状の混合体が得られる。次に、この得られた混合体を所定の形状の金型に投入した状態で焼成させる(2次焼成工程)。そうすることによって、所定の形状の多孔体が得られる。その後、得られた多孔体を、前記硝化菌を含む水に浸漬させる(浸漬工程)。その後、乾燥させる(乾燥工程)。このような工程によって、前記水生生物飼育水用処理材を製造することができる。
【0054】
前記1次焼成工程は、粉砕させた火山岩と水酸化マグネシウムとを混合した粉体を焼成させる工程であれば、特に限定されない。
【0055】
具体的には、まず、原料である火山岩を粉砕機等で粉砕する。前記火山岩としては、特に限定されず、例えば、焼成(前記1次焼成工程及び前記2次焼成)後に、前記多孔体を構成する素材になる火山岩等が挙げられる。前記火山岩としては、具体的には、パーライト原石等が挙げられる。パーライト原石であれば、焼成(前記1次焼成工程及び前記2次焼成)後に、パーライト原石に含まれる水分等が気化し、さらに、パーライト原石に含まれるガラス質が発泡することで、パーライトが得られる。このため、前記火山岩としては、パーライト原石を含むことが好ましい。前記粉砕機としては、特に限定されず、例えば、一般的な粉砕機等を用いることができる。前記粉砕についても、特に限定されず、例えば、一般的な粉砕機等を用いた粉砕等が挙げられる。また、前記粉砕した火山岩は、粉砕後に乾燥させてもよい。前記乾燥としては、特に限定されず、例えば、室温で12~36時間、より具体的には1日間程度の放置等が挙げられる。
【0056】
そして、この得られた粉砕させた火山岩と水酸化マグネシウムとを混合する。前記混合としては、前記粉砕させた火山岩と前記水酸化マグネシウムとを好適に混合できれば、特に限定されず、例えば、一般的な混合機(ミキサ)を用いた混合等が挙げられる。この混合比としては、前記水生生物飼育水用処理材における前記マグネシウム成分が、上述した含有量範囲となるような混合比等が好ましく、具体的には、前記粉砕させた火山岩と前記水酸化マグネシウムとの合計質量100質量部に対して、5~20質量部であることが好ましく、8~15質量部であることがより好ましい。なお、前記粉砕させた火山岩と前記水酸化マグネシウムとを前記混合比で混合させると、最終的に得られる水生生物飼育水用処理材における水酸化マグネシウムの含有量が、上記好適な範囲(例えば、前記水生生物飼育水用処理材100質量部に対して、0.3~3質量部であることが好ましく、0.5~1質量部であることがより好ましいとの範囲)になる。また、前記水酸化マグネシウムの粒子径は、最終的に得られる水生生物飼育水用処理材における前記マグネシウム成分の粒子径が、上記好適な範囲(例えば、体積平均粒子径で、0.5~5μmであることが好ましく、0.8~2μmであることがより好ましいとの範囲)になる粒子径等が好ましい。具体的には、前記水酸化マグネシウムの粒子径としては、例えば、体積平均粒子径で、0.5~5μmであることが好ましく、0.8~2μmであることがより好ましい。また、前記混合は、加湿しながら行ってもよい。
【0057】
次に、前記混合により得られた粉体を焼成する。この1次焼成工程における焼成は、特に限定されず、例えば、火山岩からセラミックを得るための焼成と同様の焼成等が挙げられる。具体的には、前記1次焼成工程における焼成温度としては、例えば、900~1200℃であることが好ましく、1000~1100℃であることがより好ましい。また、前記1次焼成工程における焼成時間としては、20~30時間であることが好ましく、23~24時間であることがより好ましい。前記焼成温度が低すぎても高すぎても、また、前記焼成時間が短すぎても長すぎても、最終的に得られた水生生物飼育水用処理材における多孔体として、好適な多孔体になりにくい傾向がある。すなわち、前記焼成温度及び前記焼成時間がそれぞれ前記範囲内であると、好適な多孔体を備える水生生物飼育水用処理材が得られる。
【0058】
前記1次焼成工程によって、粒子状(細かい丸い粒状)の混合体が得られる。この粒子状の混合体の粒子径は、特に限定されないが、前記第2焼成工程において、金型に投入可能な粒子径等が挙げられる。
【0059】
前記2次焼成工程は、前記1次焼成工程で得られた混合体を所定の形状の金型に投入した状態で焼成させる工程であれば、特に限定されない。
【0060】
前記金型は、特に限定されず、例えば、最終的に得られる水生生物飼育水用処理材の形状に応じた金型等が挙げられる。この金型に、前記1次焼成工程で得られた混合体を投入し、金型に投入された状態で前記混合体を焼成する。前記2次焼成工程における焼成は、特に限定されず、例えば、粒状のセラミックからセラミック成形体を得るための焼成と同様の焼成等が挙げられ、具体的には、素焼き等と呼ばれる焼成等が挙げられる。より具体的には、前記2次焼成工程における焼成温度としては、例えば、900~1400℃であることが好ましく、1000~1300℃であることがより好ましい。また、前記2次焼成工程における焼成時間としては、2~5時間であることが好ましく、3~4時間であることがより好ましい。前記焼成温度が低すぎても高すぎても、また、前記焼成時間が短すぎても長すぎても、最終的に得られた水生生物飼育水用処理材における多孔体として、好適な多孔体になりにくい傾向がある。すなわち、前記焼成温度及び前記焼成時間がそれぞれ前記範囲内であると、好適な多孔体を備える水生生物飼育水用処理材が得られる。その後、金型から取り出すことによって、所定の形状の多孔体が得られる。
【0061】
前記浸漬工程は、前記2次焼成工程で得られた多孔体を、前記硝化菌を含む水に浸漬させる工程であれば、特に限定されない。
【0062】
前記硝化菌を含む水は、特に限定されず、前記硝化菌の濃度として、高いほうが好ましい。また、この浸漬させる際の、前記硝化菌を含む水の温度(水温)としては、前記硝化菌が失活しない温度であれば、特に限定されないが、例えば、10~30℃であることが好ましく、15~25℃であることがより好ましい。前記水温としては、より具体的には、常温等が挙げられる。また、前記硝化菌を含む水に前記多孔体を浸漬させる時間(浸漬時間)は、12~36時間であることが好ましく、20~28時間であることがより好ましい。前記浸漬時間としては、より具体的には、24時間等が挙げられる。前記水温及び前記浸漬時間が、それぞれ上記範囲内であると、前記多孔体に前記硝化菌を好適に担持させることができる。
【0063】
前記乾燥工程は、前記浸漬工程後の多孔体を乾燥させる工程であれば、特に限定されない。前記乾燥としては、例えば、前記浸漬工程で前記多孔体中に浸入した水分が容易に滲出しない程度にまでの乾燥等が挙げられる。前記乾燥工程における温度(乾燥温度)としては、例えば、100℃以上であることが好ましく、150~400℃であることがより好ましく、200~300℃であることがさらに好ましい。前記乾燥工程において乾燥させる時間(乾燥時間)としては、例えば、1~5時間であることが好ましく、2~4時間であることがより好ましい。前記乾燥時間としては、より具体的には、3時間等が挙げられる。前記乾燥温度及び前記乾燥時間が、それぞれ上記範囲内であると、前記浸漬工程後の多孔体を好適に乾燥させることができる。
【0064】
以上のような製造方法によって、本発明の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材を製造することができる。また、前記製造方法は、上記のようにして得られた水生生物飼育水用処理材から、不要な粉末や埃等を除去する工程(除去工程)を備えていてもよい。この除去工程としては、例えば、一般的な埃取り機等を用いて、不要な粉末や埃等を除去する工程等が挙げられる。また、このようにして得られた水生生物飼育水用処理材は、例えば、検品及び梱包して、出荷される。
【0065】
前記水生生物飼育水用処理材は、前記水生生物飼育水に接触させることによって、水生生物に起因して発生する有機物による水質の低下を抑制することができる。また、前記水生生物飼育水用処理材は、前記水生生物飼育水に接触させることによって、水素を発生させることができる。よって、前記水生生物飼育水用処理材は、前記水生生物飼育水に接触させるだけで、前記水生生物飼育水を、水生生物に起因して発生する有機物による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水にすることができる。
【0066】
前記水生生物飼育水は、水生生物を飼育するのに使用する水であって、例えば、水生生物を飼育するための水槽に入れる水等が挙げられる。また、前記水生生物は、水中又は水辺に生息する生物であって、例えば、魚類、両生類、水辺に生息する爬虫類、及び水中又は水辺に生息する甲殻類等が挙げられる。前記魚類としては、観賞魚や養殖魚等が挙げられ、より具体的には、金魚、メダカ、及びベタ等が挙げられる。すなわち、前記水生生物飼育水用処理材は、鑑賞を目的として飼育される魚類にも、養殖を目的として飼育される魚類にも用いられる。前記両生類としては、例えば、サンショウウオ、カエル、及びイモリ等が挙げられる。前記爬虫類としては、例えば、カメ、及びワニ等が挙げられる。前記甲殻類としては、例えば、エビ及びカニ等が挙げられる。前記水生生物飼育水用処理材は、前記水生生物の中でも、金魚、メダカ、ベタ、及びカメを飼育するための水に用いること等が好ましい。すなわち、前記水生生物飼育水用処理材としては、金魚用、メダカ用、ベタ用、及びカメ用であることが好ましい。
【0067】
前記水生生物飼育水用処理材は、前記水生生物飼育水に接触させて使用することができれば、その使用方法は特に限定されない。
【0068】
前記水生生物飼育水用処理材の使用方法の一例としては、
図1に示すように、水生生物飼育用水槽の槽内に敷設させて用いる方法が挙げられる。前記水生生物飼育用水槽10は、
図1に示すように、前記水生生物飼育水用処理材11を槽(容器)12内に敷設した水生生物飼育用水槽である。前記水生生物飼育用水槽10としては、例えば、前記容器12内の底部に、砂利13等を敷き詰め、水生生物飼育水14を入れる。この容器12に入れた水生生物飼育水14において、例えば、観賞魚等の水生生物15を飼育する。なお、
図1は、本発明の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用水槽(本発明の他の実施形態に係る水生生物飼育用水槽)10の一例を示す概略断面図である。前記水生生物飼育水用処理材を、上記のような方法で用いると、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水で水生生物を飼育することができる水生生物飼育用水槽が得られる。
【0069】
前記水生生物飼育水用処理材の使用方法の他の一例としては、
図2に示すように、水生生物飼育用濾過装置における水生生物飼育水が流通する箇所に設けて用いる方法等が挙げられる。前記水生生物飼育用濾過装置20は、内部に水を流通させる筐体21と、前記筐体21内に配置される濾過材22とを備え、前記濾過材22が、前記水生生物飼育水用処理材11を含む。なお、
図2は、本発明の実施形態に係る水生生物飼育水用処理材を備える水生生物飼育用濾過装置(本発明の他の実施形態に係る水生生物飼育用濾過装置)20の一例を示す概略断面図である。
【0070】
前記水生生物飼育用濾過装置20は、水槽(容器)12内、例えば、前記容器12内の底部に敷き詰められた砂利13等の上に設置される。前記水生生物飼育用濾過装置20は、エアポンプPからの圧力エアをうけて前記水槽12内の水を吸引し、吸引した水が濾過材22を通過した後、前記水槽12に排出する濾過装置である。前記水生生物飼育用濾過装置20に備えられる濾過材22には、不織布等からなる筒状のフィルタ23と、前記水生生物飼育水用処理材11とが含まれる。なお、前記濾過材22における前記水生生物飼育水用処理材11には、活性炭やイオン交換樹脂等を混合してもよい。このような水生生物飼育用濾過装置20は、水槽12内の水を吸引し、その吸引した水を、前記フィルタ23だけではなく、前記水生生物飼育水用処理材11を通過させた後に、前記水槽12に戻すことができる。このことから、水生生物飼育用濾過装置20は、前記水生生物飼育用濾過装置20を流通させる水を、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制しつつ、水素を含む水生生物飼育水にすることができる。
【0071】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例0072】
まず、原料であるパーライト原石を含む火山岩を粉砕機(河南豫暉▲鉱▼山机械有限公司製のジョークラッシャ PE150)で粉砕した。この粉砕した火山岩を、室温で1日間程度放置することによって、乾燥させた。体積平均粒子径が1μmの水酸化マグネシウムを、前記粉砕させた火山岩と前記水酸化マグネシウムとの合計質量100質量部に対して、10質量部となるように、前記乾燥後の粉砕した火山岩に投入し、これらを加湿しながら、ミキサ(泰通重工有限公司製の撹拌機 XLH-4000)で混合した。この混合により得られた粉体を、1000~1100℃で23~24時間焼成した(1次焼成工程)。そうすることによって、粒子状(細かい丸い粒状)の混合体が得られた。そして、この得られた混合体を、最終的に得られる水生生物飼育水用処理材の形状に応じた金型に投入し、その状態で、前記混合体を、1000~1300℃で3~4時間焼成した(2次焼成工程)。その後、金型から取り出すことによって、最終的に得られる水生生物飼育水用処理材の形状に応じた多孔体が得られた。この得られた多孔体を、硝化菌(壹▲諾▼有限公司製の硝化菌)を含む水に、常温(その水温が常温)で1日間程度浸漬させた(浸漬工程)。この多孔体を、200~300℃で3時間乾燥させた(乾燥工程)。そうすることによって、前記多孔体に硝化菌が担持され、さらに、前記浸漬で前記多孔体中に浸入した水分が容易に滲出しない程度にまでの乾燥された多孔体が得られた。その後、埃取り機(山▲東▼雷蒙重工有限公司製のパルス式集塵機 3R4R5R)を用いて、不要な粉末や埃等を除去した。
【0073】
以上の方法によって、15gの水生生物飼育水用処理材が得られた。この水生生物飼育水用処理材を分析したところ、マグネシウム成分1.5gが含まれていることがわかった。また、この水生生物飼育水用処理材は、製造時に、上述したように、水酸化マグネシウムを混合するが、その後の焼成等によって、酸化マグネシウム等になり、水酸化マグネシウムとしては、0.06g残存したことがわかった。
【0074】
また、水10Lに対して、15gの水生生物飼育水用処理材を1個入れると、約1か月間にわたって水素濃度13ppbが得られた。水素濃度は、MiZ株式会社製の溶存水素濃度判定試薬を用いて行った。このことから、水生生物飼育水における水素濃度として好適と考えられる16ppbを得るためには、15gの水生生物飼育水用処理材1個の場合、その水量が約8.125Lであることがわかった。なお、0.016ppmの水素濃度は、その水素濃度の水中で飼育された魚に、自然免疫力が高まる見解があるためである。このことから、45cm規格水槽の場合、水量が約32Lであるから、水素濃度16ppbを得るためには、15gの水生生物飼育水用処理材が4個必要であることがわかった。また、60cm規格水槽の場合、水量が約65Lであるから、水素濃度16ppbを得るためには、15gの水生生物飼育水用処理材が8個必要であることがわかった。また、90cm規格水槽の場合、水量が約182Lであるから、水素濃度16ppbを得るためには、15gの水生生物飼育水用処理材が23個必要であることがわかった。
【0075】
また、前記水生生物飼育水用処理材は、前記多孔体に前記硝化菌が担持されていることから、水生生物に起因して発生するアンモニア等の汚染物質による水質の低下を抑制することができた。