(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112259
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ガイド器具及び当該ガイド器具を用いた引張試験用試料の作製方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/04 20060101AFI20220726BHJP
G01N 19/04 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
G01N3/04 P
G01N19/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008022
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】391003576
【氏名又は名称】株式会社トクヤマデンタル
(72)【発明者】
【氏名】岸 裕人
(72)【発明者】
【氏名】小川 道生
(72)【発明者】
【氏名】福留 啓志
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA01
2G061CA01
2G061CA11
2G061CB18
2G061CC11
2G061DA16
(57)【要約】
【課題】 被着体試験片(200)の接着面に対して柱状アタッチメント(300)が垂直になるように接着剤により接着された引張試験用試料を作製する際に、簡便な方法で、柱状アタッチメントの傾きを確実に防止しながら両者の接着を行えるようにする。
【解決手段】 両端が開口した空洞を有し、一方端の端面が高さ方向に対して垂直な平面である筒状体であって、前記一方端の端面を下にして水平面上に載置したときに自立可能な筒状体からなり、前記空洞は、柱状アタッチメントの長手方向が前記筒状体の高さ方向と一致するように規制しながら該空洞内を柱状アタッチメントの少なくとも一方端面を含む部分が進退自在に移動できる形状を有する、ガイド器具(100)を被着体試験片接着面上の所定の位置に載置し、前記空洞に柱状アタッチメントを挿入して前記接着を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体からなる部材を、その長手方向に沿って移動させながら所定の位置に誘導するためのガイド器具であって、
両端が開口した空洞を有し、一方端の端面が高さ方向に対して垂直な平面である筒状体であって、前記一方端の端面を下にして水平面上に載置したときに自立可能な筒状体からなり、
前記空洞は、該柱状体の長手方向が前記筒状体の高さ方向と一致するように規制しながら該空洞内を前記柱状体の少なくとも前記一方端の端面を含む部分が進退自在に移動できる形状を有する、
ことを特徴とするガイド器具。
【請求項2】
前記筒状体を、前記一方端の端面を下にして水平から少なくとも±2°の範囲内で傾斜した傾斜平面載置したときに前記筒状体の高さ方向が前記傾斜平面に対して垂直方向となるようにして自立可能である、請求項1に記載のガイド器具。
【請求項3】
前記空洞の形状が、前記柱状体の形状と相似で、且つ前記空洞内を前記柱状体が移動する際に、0.05~0.20mmの幅の空隙が生じるような相似比を有する形状である請求項1又は2に記載のガイド器具。
【請求項4】
被着体接着面となる平面を有する被着体試験片と、長手方向に対して垂直又は略垂直な平面を一方端の端面として有し、該端面をアタッチメント接着面とする柱状アタッチメントとが、前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面との間に形成された硬化性接着剤の硬化体からなる層を介して、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるように接合された接合体を作製する際に使用され、
前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるような状態を保ちながら、その長手方向に沿って移動させて、前記アタッチメント接着面を前記被着体接着面上の所定の位置に誘導にすると共に、該所定の位置において前記状態を保ったまま未硬化状態の前記硬化性接着剤からなる層を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着できるようにする、
請求項1~3の何れか1項に記載のガイド器具。
【請求項5】
前記空洞における、前記一方端の前記開口周縁近傍に、前記密着時において前記アタッチメント接着面からはみ出す余剰の未硬化状態の硬化性接着剤を収容する空間が設けられてなる、請求項4に記載のガイド器具。
【請求項6】
前記接合体が引張試験により硬化性を有する接着剤の被着体に対する接着性を評価するための引張試験用試料である、請求項4又は5に記載のガイド器具。
【請求項7】
被着体接着面となる平面を有する被着体試験片と、長手方向に対して垂直又は略垂直な平面を一方端の端面として有し、該端面をアタッチメント接着面とする柱状アタッチメントとが、前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面との間に形成された硬化性接着剤の硬化体からなる層を介して、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるように接合された接合体からなる、引張試験により前記硬化性接着剤の被着体に対する接着性を評価するための引張試験用試料を作製する方法であって、
A.(1)前記被着体試験片、(2)前記柱状アタッチメント、(3)前記アタッチメント接着面の面積よりも小さい面積を有する穴であって、接着面積を規定する穴である接着面積規定用穴が形成された粘着フィルム、及び(4)請求項6に記載のガイド器具を準備する準備工程;
B.前記被着体接着面上に前記粘着フィルムを貼付するフィルム貼付工程;
C.前記接着面積規定用穴から露出した前記被着体接着面及び/又は前記アタッチメント接着面に未硬化状態の前記硬化性接着剤を施用する接着剤施用工程;並びに
D.前記工程で施用された未硬化状態の前記硬化性接着剤を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着させると共に、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直となるように位置決めしてから前記硬化性接着剤を硬化させて、前記被着体試験片と前記柱状アタッチメントとを接着する接着工程;を含み、
前記D.の接着工程では、前記ガイド器具の前記一方端の端面を、前記粘着フィルムが貼付された前記被着体試験片の前記粘着フィルム上又は前記被着体接着面上であって、当該一方端における開口部の内側に前記接着面積規定用穴が存在するような位置に配置すると共に、その高さ方向が前記被着体接着面に対して垂直となるように前記ガイド器具を保持し、次いで、前記ガイド器具の他方端の開口部より前記柱状アタッチメントを前記アタッチメント接着面側から挿入して前記密着及び位置決めを行う、
ことを特徴とする引張試験用試料の作製方法。
【請求項8】
前記粘着フィルムとして表裏両面に粘着層を有する粘着フィルムを用い、前記D.の接着工程において、前記ガイド器具の前記一方端の端面を、上記粘着フィルム上に配置する、請求項7に記載の引張試験用試料の作製方法。
【請求項9】
前記硬化性接着剤が歯科用レジンセメントであり、前記被着体が動物の歯牙である、請求項7又は8に記載の引張試験用試料の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤の引張強度を測定する引張試験用試料作製時に好適に使用されるガイド器具及び当該ガイド器具を用いた引張試験用試料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤の接着性評価方法の一つに、接着面に垂直な引張荷重を負荷して破断時の荷重を測定する引張接着強さ試験方法がある。この引張接着強さ試験方法では、夫々が平面からなる接着面を有する2つの被着体の接着面どうしを接着剤で接着した引張試験用試料を、その軸方向(接着面に対して垂直な方向)が引張の荷重方向と一致するよう引張試験機に取付け、上記したように荷重を負荷して破断に至るときの最大荷重を測定することにより評価を行っている。具体的には、最低5個の引張試験用試料について上記測定を行い、測定された最大荷重を実測した接着面積で除することにより引張接着強さを求め、その平均値で評価が行われる(非特許文献1参照)。
【0003】
接着剤の用途によっては、特定の材質からなる被着体に対する接着性が重要であることが多く、そのような場合には、接着性評価対象となる材料で構成された被着体試験片を上記引張試験用試料の一方の被着体とし、金属や合成樹脂などの所定の材質からなる柱状アタッチメント(成形棒と称されることもある。)を他方の被着体とすることが多い。この柱状アタッチメントは、引張試験機に引張試験用試料を固定するための固定部材としての機能を兼ねており、その一方端の端面が接着面とされ、他方端部は、引張試験機に固定できるような(例えば、試験片保持用孔を有する)構造とされている。そして、引張試験用試料における柱状アタッチメントの上記他方端部を引張試験機の下部(又は上部)に固定すると共に上記被着体試験片を引張試験機の上部(又は下部)に固定されるホルダ内に固定して、引張試験が行われる。
【0004】
たとえば、歯科用レジンセメント等の歯科用接着剤の歯牙に対する接着強度(引張接着強さ)を測定する場合の引張試験用試料の作製及び測定は、次のようにして行われている。すなわち、引張試験用試料の作製は、
図1に示すように、歯牙を研磨する等して平面状の接着面が露出した被着体試験片を準備して前記接着面に(接着面積を規定するための)“直径3~5mmの穴”を有する粘着フィルムを貼付し、その後、上記穴の内部及び/又は柱状アタッチメントの接着面に歯科用接着剤を施用して該歯科用接着剤介して、前記穴から露出する被着体試験片の接着面と柱状アタッチメントの接着面とを接着することにより行われる。そして、作製された引張試験用試料を引張試験機に固定し、被着体試験片の接着面に対しアタッチメントを垂直に引張るように荷重を負荷して接着強度の測定が行われている(非特許文献2及び特許文献1参照)。
【0005】
なお、JIS規格では、歯牙をホルダ内に埋没用材料を用いて固定してから研磨して研磨面が水平に露出するようにしたものを被着体試験片として用い、被着体試験片及び柱状アタッチメントを専用冶具にセットしてから、粘着フィルムを貼付及び接着剤の施用を行い、その後、この専用冶具を用いて柱状アタッチメントに所定の加重を所定時間かけて接着を行うことにより引張試験用試料を作製する、とされている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大坪悟、1989年、「接着力の表示法とその測定方法」、表面技術、vol.40、p1161-1169
【非特許文献2】財団法人日本規格協会、「JIS T6611 歯科用レジンセメント」平成21年7月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したような歯科用レジンセメント等の歯科用接着剤の歯牙に対する引張接着強さ測定を行う場合には、引張試験用試料作製時に柱状アタッチメントを被着体試験片の接着面に対して垂直に接着することが重要である。すなわち、
図3に示すように、柱状アタッチメントが被着体試験片の接着面に対して傾いて接着された引張試験用試料を用いて傾いた柱状アタッチメントを被着体試験片の接着面に対して垂直な方向に引張った場合には、剥離力が加わるため、接着強度の値が低くなってしまう。このため、接着強度を正確に測定することができない。
【0009】
非特許文献2に開示されているような前記専用冶具を用いれば、柱状アタッチメントを被着体試験片の接着面に対して垂直に接着することができると思われる。非特許文献2には前記専用冶具が参考図として示されているだけであって、その詳細については記載がないものの、前記専用冶具は、
図2に示す様なものであると判断される。すなわち、
図2に示される冶具10は、支柱21を有するスタンド20;円柱状の比較的長い棒状部材31の一方端部に柱状アタッチメント300を両者の軸が一致するようにして着脱可能に保持できる保持機構32を有すると共に他方端部に荷重台33が接続されたピストン部材30;被着体試験片200を載置して所定の位置に保持できる底部41と天井42とを有し3面が解放された縦断面コの字状の試料台40であって、前記天井42には、底部41に保持される被着体試験片200の直上部分に、前記ピストン部材30の棒状部材31が貫通する孔43が設けられている試料台40;前記ピストン部材30を着脱可能に保持するストッパー機構(図示せず)を有し、前記スタンドの支柱に保持されるストッパーアーム50;及び前記試料台40を上下に移動される昇降装置(ジャッキ)50を有し、これらが
図2に示すように配置されたものであると解される。したがって、被着体試験片200及び柱状アタッチメント300をセットして粘着フィルムを貼付及び接着剤の施用を行い、前記昇降装置50により被着体試験片200の接着面と柱状アタッチメント300の接着面とを近接させてから荷重台に所定の重さの重りを載せてからストッパー機構を解除すれば、柱状アタッチメント300は垂下するので、柱状アタッチメント300を被着体試験片200の接着面に対して垂直に接着することができると思われる。
【0010】
しかしながら、上記専用冶具は、比較的大がかりな装置で作業場所が限られるばかりなく、接着の都度、柱状アタッチメント部材をピストン部材に着脱する必要があるなど、操作が煩雑である。
【0011】
また、異なる接着剤間の同一材料に対する接着性の相対比較や、同一の接着剤における異なる材質に対する接着性の相対比較を行う場合には、JIS規格で規定されるような厳密な条件で接着を行う必要は必ずしもなく、統一された接着条件でアタッチメントの傾きを防止して確実な接着ができれば、目的を達成することができる。このため、冶具を用いることなく手動で(マニュアル操作で)接着を行い、良好な試料を選択して測定を行うことが一般に行われているが、良好な試料を作製できる確率は必ずしも高くなく、無駄が生じる。特に、一度使用した柱状アタッチメントを再使用して試料作製を行う場合には、柱状アタッチメントの接着面に付着した接着剤の硬化体を研磨して除去する必要があり、その際に接着面が柱状アタッチメントの長手方向に対して垂直とならずに僅かに傾いて(略垂直な状態となって)しまうことがあり、その場合には、上記確率は一層低下してしまう。
【0012】
このような事情に鑑み、本発明は、上記したような専用冶具を用いることなく、より簡便方法で、柱状アタッチメントを再使用した場合であってもアタッチメントの傾きを確実に防止しながら被着体試験片と柱状アタッチメントとを接着できるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するものであり、本発明の第一の形態は、柱状体からなる部材を、その長手方向に沿って移動させながら所定の位置に誘導するためのガイド器具であって、両端が開口した空洞を有し、一方端の端面が高さ方向に対して垂直な平面である筒状体であって、前記一方端の端面を下にして水平面上に載置したときに自立可能な筒状体からなり、前記空洞は、該柱状体の長手方向が前記筒状体の高さ方向と一致するように規制しながら該空洞内を前記柱状体の少なくとも前記一方端の端面を含む部分が進退自在に移動できる形状を有する、ことを特徴とするガイド器具である。
【0014】
上記形態のガイド器具(以下、「本発明のガイド器具」ともいう。)においては、前記筒状体を、前記一方端の端面を下にして水平から少なくとも±2°の範囲内で傾斜した傾斜平面載置したときに前記筒状体の高さ方向が前記傾斜平面に対して垂直方向となるようにして自立可能である、ことが好ましい。
【0015】
また、前記空洞の形状が、前記柱状体の形状と相似で、且つ前記空洞内を前記柱状体が移動する際に、0.05~0.20mmの幅の空隙が生じるような相似比を有する形状であることが好ましい。
【0016】
さらに、被着体接着面となる平面を有する被着体試験片と、長手方向に対して垂直又は略垂直な平面を一方端の端面として有し、該端面をアタッチメント接着面とする柱状アタッチメントとが、前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面との間に形成された硬化性接着剤の硬化体からなる層を介して、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるように接合された接合体を作製する際に使用され、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるような状態を保ちながら、その長手方向に沿って移動させて、前記アタッチメント接着面を前記被着体接着面上の所定の位置に誘導にすると共に、該所定の位置において前記状態を保ったまま未硬化状態の前記硬化性接着剤からなる層を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着できるようにする、ガイド器具であることが好ましい。
【0017】
さらにまた、上記好ましい態様においては、前記空洞における、前記一方端の前記開口周縁近傍に、前記密着時において前記アタッチメント接着面からはみ出す余剰の未硬化状態の硬化性接着剤を収容する空間が設けられてなる、ことが好ましく、また、前記接合体が引張試験により硬化性を有する接着剤の被着体に対する接着性を評価するための引張試験用試料である、ことが好ましい。
【0018】
本発明の第二の形態は、被着体接着面となる平面を有する被着体試験片と、長手方向に対して垂直又は略垂直な平面を一方端の端面として有し、該端面をアタッチメント接着面とする柱状アタッチメントとが、前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面との間に形成された硬化性接着剤の硬化体からなる層を介して、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるように接合された接合体からなる、引張試験により前記硬化性接着剤の被着体に対する接着性を評価するための引張試験用試料を作製する方法であって、
A.(1)前記被着体試験片、(2)前記柱状アタッチメント、(3)前記アタッチメント接着面の面積よりも小さい面積を有する穴であって、接着面積を規定する穴である接着面積規定用穴が形成された粘着フィルム、及び(4)前記好ましい態様の本発明のガイド器具を準備する準備工程;
B.前記被着体接着面上に前記粘着フィルムを貼付するフィルム貼付工程;
C.前記接着面積規定用穴から露出した前記被着体接着面及び/又は前記アタッチメント接着面に未硬化状態の前記硬化性接着剤を施用する接着剤施用工程;並びに
D.前記工程で施用された未硬化状態の前記硬化性接着剤を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着させると共に、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直となるように位置決めしてから前記硬化性接着剤を硬化させて、前記被着体試験片と前記柱状アタッチメントとを接着する接着工程;を含み、
前記D.の接着工程では、前記ガイド器具の前記一方端の端面を、前記粘着フィルムが貼付された前記前記被着体試験片の前記粘着フィルム上又は前記被着体接着面上であって、当該一方端における開口部の内側に前記接着面積規定用穴が存在するような位置に配置すると共に、その高さ方向が前記被着体接着面に対して垂直となるように前記ガイド器具を保持し、次いで、前記ガイド器具の他方端の開口部より前記柱状アタッチメントを前記アタッチメント接着面側から挿入して前記密着及び位置決めを行う、ことを特徴とする引張試験用試料の作製方法である。
【0019】
上記態様の作製方法(以下、「本発明の引張試験用試料の作製方法」又は「本発明の作製方法」とも言う。)においては、前記粘着フィルムとして表裏両面に粘着層を有する粘着フィルムを用い、前記D.の接着工程において、前記ガイド器具の前記一方端の端面を、上記粘着フィルム上に配置する、ことが好ましい。また、前記硬化性接着剤が歯科用レジンセメントであり、前記被着体が動物の歯牙である、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガイド器具によれば、
図2に示されるような専用冶具を用いることなく、より簡便方法で、柱状アタッチメントを再使用した場合であっても、アタッチメントの傾きを確実に防止しながら被着体試験片と柱状アタッチメントとを接着することが可能となる。また、本発明のガイド器具を用いた本発明の引張試験用試料の作製方法によれば、引張接着試験において、試料由来の接着強度の低下を抑制し、接着強度を正確に測定することが可能な引張試験用試料を効率的に作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】引張接着強さ試験方法で使用する引張試験用試料の作製工程及び前処理工程を模式的に示した模式図である。
【
図2】引張接着強さ試験方法で使用する引張試験用試料作製時において、被着体試験片と柱状アタッチメントとを接着するために使用される従来の冶具の模式図である。
【
図3】引張試験用試料における、被着体試験片と柱状アタッチメントとの接着状態と引張試験時の荷重の掛かり方を模式的に表した図である。
【
図4】代表的な本発明のガイド器具の正面図(I)及び一方端の端面側の平面図(II)である。
【
図5】
図4に示される本発明のガイド器具を用いて被着体試験片と柱状アタッチメントとの接着を行った状態の斜視図である。
【
図7】本発明のガイド器具を用いて被着体試験片と柱状アタッチメントとの接着を行う際において、本発明のガイド器具を被着体試験片の接着剤施用面に配置した(柱状アタッチメント挿入前の)状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のガイド器具は、柱状体からなる部材を、その長手方向に沿って移動させながら所定の位置に誘導するためのガイド器具である。ここで、前記部材としては、縦断面のアスペクト比(柱状体の横断面の最大幅に対する柱状体の高さの比)が1を越え、高さ方向が長手方向となる柱状体からなるものであれば特に限定されず、円錐台状や多角錐台状のものであっても良いが、少なくとも一方端の端面を含む要部は母線が底面に対して垂直な円柱や多角柱のような直柱体からなるものが好ましい。
【0023】
本発明のガイド器具は、両端が開口した空洞を有し、一方端の端面が高さ方向に対して垂直な平面である筒状体であって、前記一方端の端面を下にして水平面上に載置したときに自立可能な筒状体からなり、前記空洞は、該柱状体の長手方向が前記筒状体の高さ方向と一致するように規制しながら該空洞内を前記柱状体の少なくとも前記一方端の端面を含む部分が進退自在に移動できる形状を有する。
【0024】
ここで、本発明のガイド器具を構成する前記筒状体が、その一方端の端面を下にして水平面上に載置したときに自立可能であるとは、水平面に対して筒状体の高さ方向(軸方向)が垂直となるような状態で自立できることを意味する。このように自立できるようにするためには、載置時に僅かの刺激で傾いたり倒れたり傾いたりしないように、筒状体の一方端の端面における壁厚(外表面と内表面と距離)の高さに対する比を大きくすればよい。このとき、筒状体の壁厚を全体的に厚くしてもよいが、一方端の端面及びその近傍の壁厚のみが厚くなるようにしてもよい。前記筒状体は、その一方端の端面を下にして水平から少なくとも±2°、特に±5°の範囲内で傾斜した傾斜平面上に載置したときに前記筒状体の高さ方向が前記傾斜平面に対して垂直方向となるようにして自立可能である、ことが好ましい。
【0025】
また、前記空洞内を前記柱状体の少なくとも前記一方端の端面を含む部分が進退自在に移動できるとは、前記筒状体の他方端側開口に前記柱状体をその一方端側から挿入したときに、少なくとも、柱状体をその一方端の端面が前記筒状体の一方端の端面と一致するような深さまで進退自在に移動できることを意味する。したがって、前記柱状体の長さが前記筒状体の高さよりも長い場合には、前記柱状体の他方端側の領域において空洞内に挿入されない部分があってもよく、他方端の端面及びその近傍は、前記筒状体の他方端側開口よりも広がっていてもよい。本発明のガイド器具においては、加工のし易さや取扱い易さ等の観点から、前記柱状体は直柱体からなり、その全体が前記空洞を貫通して進退自在に通過して移動できることが好ましい。
【0026】
本発明のガイド器具では、前記空洞内の形状を制御することにより、上記移動時において該柱状体の長手方向が前記筒状体の高さ方向と一致するように規制している。すなわち、前記柱状体の形状との相対関係において、所定の関係を満足するようにして前記規制を行うようにしている。このような相対関係における所定の関係を満足させる方法を具体的に示せば、前記空洞内に前記柱状体が挿入された状態における両者間の空隙(クリアランス)幅を極めて小さくする方法、前記柱状体として、その側面に長手方向に延在するレール部材が取り付けられた構造のものを使用するとともに、前記空洞を、その内側面に前記レール部材と篏合する溝を設け、当該溝に前記レール部材が篏合しながら摺動できるような構造とする方法などを挙げることができる。なお、前者の方法においては、全領域において前記空隙(クリアランス)幅を狭くしてもよく、部分的に狭くしてもよい。
【0027】
本発明のガイド器具は、被着体接着面となる平面を有する被着体試験片と、長手方向に対して垂直又は略垂直な平面を一方端の端面として有し、該端面をアタッチメント接着面とする柱状アタッチメントとが、前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面との間に形成された硬化性接着剤の硬化体からなる層を介して、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるように接合された接合体を作製する際に使用され、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直になるような状態を保ちながら、その長手方向に沿って移動させて、前記アタッチメント接着面を前記被着体接着面上の所定の位置に誘導にすると共に、該所定の位置において前記状態を保ったまま未硬化状態の前記硬化性接着剤からなる層を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着できるようにする、ガイド器具であることが好ましい。このようなガイド器具は、歯科用レジンセメント等の歯科用接着剤の歯牙に対する引張接着強さ測定を行う場合において使用される引張試験用試料を作製する際に、柱状アタッチメントを被着体試験片の接着面に対して垂直に接着するための冶具として好適に使用することができる。
【0028】
前記柱状アタッチメントとしては直径が5~10mm程度で前記アスペクト比が1.2~6.0程度である円柱状のものを用いることが多い。そこで、以下に、このような円柱状アタッチメントを用いて、引張試験用試料を作製する場合を例に、本発明の本発明のガイド器具及び本発明の引張試験用試料の作製方法について、図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0029】
図5に、本発明のガイド器具100を用いて被着体試験片200と柱状アタッチメント300との接着を行った状態の斜視図を示し、その縦断面図を
図6に示す。先ず、接着対象物(被着体)の一つである被着体試験片200について説明すると、被着体試験片200は、被着体接着面210となる平面を有する。被着体試験片200は、歯科用レジンセメント等の歯科用接着剤の歯牙に対する引張接着強さ測定用の引張試験用試料を作製する場合には、接着性評価対象となる材料で構成される。このような材料としては、金属、セラミックス、樹脂、歯牙、骨等が挙げられ、特に限定されないが、動物の歯牙が好ましい。牛歯などの歯牙を用いる場合には、石膏やレジン材料からなる埋没用材料を用いてホルダ内に歯牙を固定してから研磨して研磨面が水平に露出するようにしたものを被着体試験片とすることが多いが、歯牙を直接研磨したものをそのまま用いることもできる。
【0030】
もう一方の被着体である柱状アタッチメント300は、中心軸320を有する円柱状の柱状体301からなる。その大きさは、通常、外径:OD300が5.0~10.0mm程度、好ましくは6.0~9.0mm程度であり、長さ:Lが12.0~30.0mm程度、好ましくは15.0~25.0mmmm程度である。また、その材質は、金属、アクリル樹脂、ハイブリッドレジン、歯科用セメントの硬化体等が使用されるが、ステンレススチール(SUS)等の金属材料が用いられることが多い。
【0031】
前記柱状体301の一方端301aの端面302aは、アタッチメント接着面310となるものであり平面である必要がある。また、その面積は、後述する接着面積規定用穴の面積より大きく、且つ接着面積規定用穴の形状がその平面部に含まれる必要がある。このような条件を満たせば、外周部近傍は面取りされていてもよい。また、前記端面302a(アタッチメント接着面310)は、柱状体301の長手方向(図においては中心軸320の方向)に対して垂直又は略垂直である必要がある。ここで、略垂直とは、垂直からのずれ(傾き)が極めて小さいことを意味し、具体的には全ての方向における垂直からの傾きが5°以内、特に1°以内であることを意味する。なお、前記端面302aは、通常、精密加工により端面302aは中心軸320の方向)に対して垂直な平面となるように仕上げられている。ところが、前記したように、再使用するために手作業による研磨で付着した接着剤硬化体の除去を行う場合には、端面302aが傾いてしまうことがある。このような場合でも、傾きが上記したような範囲内であれば、本発明のガイド器具を用いることにより柱状アタッチメント300を容易に被着体接着面210に対して垂直に接着することができる。柱状体301の他方端301b部は、引張試験機に固定できるような構造とされていることが多い、図に示す態様では、このような構造として試験片保持用孔303がアタッチメント接着面310に対して平行に形成されている。
【0032】
次に、
図4及び
図6を参照して本発明のガイド器具100について説明すると、該ガイド器具100は、中心軸120を有する円筒状の筒状体110からなり、その一方端111a及び他方端111bは、夫々円形の開口113a及び113bを有し、これら開口部において筒状体110の内部空洞130は外部に向かって開放されている。そして、上記一方端111aの端面112a、すなわち筒状体110の円筒壁の一方端111aにおけるリング状の端面112aは、筒状体110の高さ方向(円筒の中心軸120方向)に対して垂直な平面で構成されている。図に示す前記円筒壁の厚み:Tは、一方端111a及びその近傍を除いて中心軸方向に沿って一方端111aから他方端111bに亘って一定のT
0であり、一方端111a近傍において徐々に薄くなっている。具体的には、端面112aからの高さがhの地点から徐々に薄くなり端面112aにおける厚さはT
0-wとなっている。これは、後述する未硬化状態の硬化性接着剤を収容する空間(以下、「余剰接着剤収容空間」ともいう。)131を設けたことによるが、このような空間を設けずに厚みを全ての領域で一定としてもよい。
【0033】
端面112aの面積(載置面に対する接触面積となる)は、図に示す態様では、円筒の外径:OD100を直径とする面の面積から円筒の内径:ID100に2wを加えた長さを直径とする円の面積を差し引いた面積になり、空間を設けない態様では、OD100を直径とする面の面積からID100を直径とする円の面積を差し引いた面積になる。T0及び必要に応じて設定されるwの長さは、載置面に対する接触面積となる端面112aの面積が、前記端面112aを下にして水平面上に載置したときに自立可能なように適宜決定すれば良いが、水平から少なくとも±2°の範囲で傾斜した斜面上に載置したときに中心軸120が該傾斜平面に対して垂直方向となるようにして自立可能な面積であることが好ましく、±5°の範囲内で傾斜した傾斜平面載置したときに中心軸120が該記傾斜平面に対して垂直方向となるようにして自立可能な面積であることがより好ましい。具体的な厚さは、筒状体110の高さ:Hや外径:OD100にもよるが、高さ:Hが4.0~20.0mmで、外径:OD100が9.0~15.0mmであるときは、接触面における厚み:T(図においてはT0-w)は0.3~5.0mm、特に1.0~4.0mmであることが好ましい。
【0034】
本発明のガイド器具100においては、前記空洞130内に前記柱状アタッチメント300が挿入された状態における両者間の空隙(クリアランス)幅を極めて小さくする方法により、具体的には、筒状体110の内半径:r100=ID100/2と、柱状アタッチメント300の半径:r300=OD300/2との差であるΔrを0.05~0.20mm、好ましくは0.05~0.15mmとすることにより、空洞130内をアタッチメント300が移動する際に前記柱状アタッチメント300の中心軸320の方向と筒状体110の中心軸120方向とが常に一致するように規制している。なお、筒状体110の高さHは、柱状アタッチメント300を挿入し易く挿入時における移動方向の規制を確実に行えるという理由から、柱状アタッチメント300の長さ:Lの2/10~9/10であることが好ましく、4/10~8/10であることがより好ましい。
【0035】
なお、本発明のガイド器具の材質については、特に限定されないが、成形の容易さからPMMA等のアクリル樹脂製であることが好ましい。
【0036】
前記したように、図に示す本発明のガイド器具100は、前記一方端111aの前記開口113a周縁近傍に、余剰接着剤収容空間131設けられている。このことにより、本発明の作製方法において接着時にアタッチメント接着面310からはみ出す余剰の未硬化状態の硬化性接着剤による悪影響を低減することができる。この点を含めて、以下、本発明の作製方法について説明する。
【0037】
発明の作製方法は、下記A~Dに示す工程を含む。
A.(1)前記被着体試験片、(2)前記柱状アタッチメント、(3)前記アタッチメント接着面の面積よりも小さい面積を有する穴であって、接着面積を規定する穴である接着面積規定用穴が形成された粘着フィルム、及び(4)本発明のガイド器具を準備する準備工程;
B.前記被着体接着面上に前記粘着フィルムを貼付するフィルム貼付工程;
C.前記接着面積規定用穴から露出した前記被着体接着面及び/又は前記アタッチメント接着面に未硬化状態の前記硬化性接着剤を施用する接着剤施用工程;並びに
D.前記工程で施用された未硬化状態の前記硬化性接着剤を介して前記被着体接着面と前記アタッチメント接着面とを密着させると共に、前記柱状アタッチメントの長手方向が前記被着体接着面に対して垂直となるように位置決めしてから前記硬化性接着剤を硬化させて、前記被着体試験片と前記柱状アタッチメントとを接着する接着工程。
【0038】
工程Aで準備する(1)、(2)及び(4)については既に説明したので、(3)の粘着フィルム400について説明すると、該粘着フィルム400は、引張接着強さを求める際の接着面積(測定された最大荷重を除するための実測される接着面積)を規定するために使用されるものである。すなわち、工程B~Dに示されるように、前記被着体接着面210上に前記粘着フィルム400が貼付された後に未硬化状態の硬化性接着剤500が接着面積規定用穴410から露出した前記被着体接着面210及び/又は前記アタッチメント接着面310に施用されてから接着が行われるため、
図6に示されるように、(粘着フィルム400によってブロックされずに)被着体接着面210とアタッチメント接着面310とが直接接着剤を介して接着されるのは、接着面積規定用穴410内においてだけとなり、接着面積規定用穴410の(開口部)面積が上記接着面積となる。なお、粘着フィルムの粘着力は接着剤の接着力に比べて遥かに弱い(通常は2MPaを越えることはほとんどないし、必要であれば粘着力がより弱いものを選択して使用すればよい)ので、粘着フィルム上における接着剤の存在は測定される最大荷重には影響を与えない。当該粘着フィルム400としては、接着性を阻害しないものであれば特に限定されず、樹脂フィルム等を基材とし、片面または両面に粘着層が形成されている市販の粘着テープに所定の形状の接着面積規定用穴410を設けたものが特に限定されず使用できる。上記接着面積規定用穴410としては、直径が3~5mmの範囲内の所定の長さである円形の穴が一般的であり、本発明においてもこのような穴を有する粘着テープが採用される。
【0039】
また、評価対象となる硬化性接着剤は目的に応じて適宜決定すればよく、歯科用の硬化性接着剤としては、歯科用レジンセメント、歯科用レジンコア、歯科用コンポジットレジン、歯科用即時重合レジン、歯科用プライマー、歯科用ボンディング材などが挙げられる。中でも本発明の作製方法は、歯科用レジンセメントの引張試験用試料の作製方法として特に好適である。歯科用レジンセメントとしては、グラスアイオノマーセメント、セルフアドヒーシブ型接着性レジンセメント、前処理材併用型接着性レジンセメント等が挙げられる。なお、使用する硬化性接着剤のよっては、プライマーなどの前処理剤による前処理を行う必要があるものがあり、そのような接着剤を使用する場合には、接着剤を施用する前に被着体接着面210の前処理を適宜行えばよい。
【0040】
本発明の作製方法では、前記D.の接着工程で、ガイド器具100の一方端111aの端面112aを、前記粘着フィルム400が貼付された前記被着体試験片200の粘着フィルム上400又は被着体接着面210上であって、当該一方端111aにおける開口部113aの内側に接着面積規定用穴410が存在するような位置に配置すると共に、その高さ方向(中心軸120方向)が被着体接着面210に対して垂直となるようにガイド器具100を保持し、次いで、前記ガイド器具の他方端111bの開口部113bより前記柱状アタッチメント300を前記アタッチメント接着面310側から挿入して前記密着及び位置決めを行う。
【0041】
ガイド器具100の配置の際には、
図7に示すよう、目視において一方端111aの開口113aの中心が接着面積規定用穴410の中心と一致するよう配置することが好ましい。こうすることにより、より確実に正確な接着強度測定を行えるようになる。また、ガイド器具100は、平面上に自立するので被着体接着面210を水平に保って載置すれば中心軸120方向が被着体接着面210に対して垂直となるようにガイド器具100を保持することができる。このとき、ガイド器具100が水平から±2°、特に±5°の範囲内で傾斜した傾斜平面上に載置した場合でも中心軸120方向が被着体接着面210に対して垂直となるようにして自立するものである場合には、被着体接着面210はこの程度の範囲内で傾斜していてもよい。さらに、粘着フィルム400として両面(粘着)フィルム(テープ)を用い、その上に配置した場合には被着体接着面210が大きく傾いていても中心軸120方向が被着体接着面210に対して垂直となるように保持することができる。さらに、前記柱状アタッチメント300の挿入、密着及び位置決めは、手動で(マニュアル操作で)行うことができる。すなわち、アタッチメント接着面310をガイド器具の他方端111bの開口113bから押入させて押し込めば、柱状アタッチメント300は、その中心軸320の方向がガイド器具100その中心軸120方向と一致するように規制されて移動するので、自動的に挿入、密着及び位置決めを行うことができる。
【0042】
なお、上記密着の際には、施用された接着剤の量によってはアタッチメント接着面310から余剰の未硬化状態の硬化性接着剤がはみ出すことがあり、行き場を失った余剰接着剤が、稀にガイド器具100の端面112aと載置面との間に流れ込みガイド器具100が傾くことがある。このような現象の発生を防止するために一方端111aの開口部113aの周縁近傍に設けられるのが余剰接着剤収容空間131である。図では筒状体110の一方端111aにおける内面を所定の面取り角度で面取りすることにより余剰接着剤収容空間131を形成しているが、R面取りや段差を設ける等の方法により余剰接着剤収容空間131を形成してもよい。余剰接着剤収容空間は、余剰の接着剤を収容可能な大きさであれば良く、具体的な体積としては、10mm3~60mm3であることが好ましい。また、上記体積を満たす範囲において、適宜余剰接着剤収容空間の高さh、及び横幅wを決定すれば良いが、横幅wは接触面における厚み:T(T0-w)が0.3mm以上となるように設定することが好ましい。このような空間を設けることにより余剰接着剤はこの空間内に流れ込むことになり、前記したような現象の発生を防止することができる。
【実施例0043】
以下に本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものでは無い。
【0044】
実施例1~4
各寸法が表1に示す値である
図4に示す形状の本発明のガイド器具A~Cを用い、以下に示すようにして、本発明の引張試験用試料の作製方法により引張試験用試料を作製し、歯科用レジンセメントの牛歯前歯に対する接着性評価を行った。
【0045】
1.被着体試験片の作製及び前処理
抜去した牛前歯を、注水下、耐水研磨紙P600で研磨し、象質平面を削り出した被着体試験片を準備した。その後、接着剤施用面に、直径3mmの穴を開けた両面粘着テープを貼り付けた。続いて、接着剤施用面のうち両面テープの穴から露出している牛歯表面に前処理材(ボンドマーライトレス、トクヤマデンタル製)をマイクロブラシで塗布し、5秒間エアブローすることにより乾燥させることにより被着体試験片を作製した。
【0046】
2.引張試験用試料の作製
図6及び
図7に示されるように、上記した方法により前処理された被着体試験片の両面粘着テープ上に、ガイド器具をその中心が接着面積規定用穴の中心と一致するようにして配置して粘着固定することにより、ガイド器具の中心軸が被着体接着面に対して垂直になるように保持した。その後、両面テープの穴から露出している前処理済みの牛歯面上に歯科用硬化性接着剤としてのレジンセメントペースト(エステセムII、トクヤマデンタル製)を適量施用した。なお、上記レジンセメントペーストは、前処理材併用型接着性レジンセメントであり、光重合開始剤およびベンゾイルパーオキシド-アミン化合物系の化学重合開始剤を含むものであり、重合硬化に際しては、光重合および化学重合のいずれも可能なものである。
次いで、柱状アタッチメント(SUS304製、直径8.0mm、高さ18.0mm)を手動で、ガイド器具の開口から挿入して接着面どうしを
図6に示すように接着剤を介して密着させ、前記接着剤を化学重合により硬化させて接着を行った。なお、柱状アタッチメントとしては、その接着面が軸方向に対して垂直(90°)になるように精密に加工されたアタッチメント(垂直)と、その接着面を研磨して垂直から3°傾いた平面となるようにしたアタッチメント(傾斜)を準備して使用した。
上記のようにして接着を行った後、37℃の水中にて24時間浸漬することで引張試験用試料を得た。
【0047】
3.引張試験測定による接着性評価
得られた引張試験用試料を用い、島津製作所製オートグラフ(クロスヘッドスピード2mm/分)を用いて引張接着強度を測定した。各実施例につき5個の試料について測定を行い、その平均値を測定結果とした。結果を表2に示す。
なお、表2における参考例1は、アタッチメント(垂直)を用い
図2に示す冶具を用いて作製した引張試験用試料を用いたときの結果である。表2に示されるように、実施例1~4では何れも参考例と同等の結果が得られている。
【0048】
【0049】