(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112310
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】封止装置
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
B65D51/22 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008087
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】518172978
【氏名又は名称】メビウスパッケージング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 孝光
(72)【発明者】
【氏名】亀田 克巳
(72)【発明者】
【氏名】船島 諒
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA03
3E084AA05
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB02
3E084DC03
3E084EB01
3E084EB02
3E084EC03
3E084FB01
3E084GB01
3E084HA01
3E084HB01
3E084HC03
3E084HD04
3E084KB01
3E084LA17
3E084LB02
3E084LB07
3E084LD01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中栓の良好な成形が可能である封止装置を提供する。
【解決手段】封止装置100は、本体10とキャップ20とを備え、本体10とキャップ20との間に設けられた第1締結部50aによって、キャップ20の着脱を可能にするとともに、第1締結部50aよりも内側において本体10とキャップ20との間に設けられた第2締結部50bによって、開封に際して本体10から中栓12を分離してキャップ20に捕捉させる装置であって、中栓12は、中栓12の底部に配置された封止部41と、封止部41の外縁と中栓円筒部42の下端部とに連結され、かつ環状の薄肉部15によって本体10の外周部に連結される外周側境界部17と、外周側境界部17と封止部41又は中栓円筒部42との境界において成形時に樹脂の流れを中栓円筒部42の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部17aとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とキャップとを備え、前記本体と前記キャップとの間に設けられた第1締結部によって、前記キャップの着脱を可能にするとともに、前記第1締結部よりも内側において前記本体と前記キャップとの間に設けられた第2締結部によって、開封に際して前記本体から中栓を分離して前記キャップに捕捉させる封止装置であって、
前記中栓は、前記第2締結部によって前記キャップと締結する中栓円筒部と、前記中栓円筒部に連設して前記中栓の底部に配置された封止部と、前記封止部の外縁と前記中栓円筒部の下端部とに連結され、かつ環状の薄肉部によって前記本体の外周部に連結される外周側境界部と、前記外周側境界部と前記封止部又は前記中栓円筒部との境界において成形時に樹脂の流れを前記中栓円筒部の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部とを有する封止装置。
【請求項2】
前記外周側境界部の最小厚さは、前記封止部の厚さより薄い、請求項1に記載の封止装置。
【請求項3】
前記外周側境界部は、前記堰き止め部として前記封止部に対して前記中栓円筒部側に設けた環状の段差によって成形時に樹脂の流れを誘導する金型側の土手部の転写によって形成された環状の溝部を有する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項4】
前記溝部の内側壁面から延びる仮想線は、前記中栓円筒部の外側壁面に接する、請求項3に記載の封止装置。
【請求項5】
前記溝部の高さは、前記封止部の厚さの1/2以上である、請求項3及び4のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項6】
前記外周側境界部は、前記溝部から前記薄肉部に向かって下方に延びる流路部を有する、請求項3~5のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項7】
前記外周側境界部は、前記薄肉部に向かって下方に延びる流路部を有し、前記流路部の前記封止部側端部が前記堰き止め部である、請求項2に記載の封止装置。
【請求項8】
前記流路部は、前記薄肉部側の端部に成形時に樹脂の流れを一時的に抑制する凸部を有する、請求項6及び7のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項9】
前記第2締結部に隣接し、前記キャップ側のキャップラチェットと前記本体側の本体ラチェットとで構成されるラチェット部を有し、
前記第1締結部は、前記キャップ側のキャップ外ネジと前記本体側の本体外ネジとで構成される正ネジタイプのネジ部であり、
前記第2締結部は、前記キャップ側のキャップ係合部と前記本体側の本体係合部とで構成される係合部である、請求項1~8のいずれか一項に記載の封止装置。
【請求項10】
前記第1締結部は、前記キャップ側のキャップ外ネジと前記本体側の本体外ネジとで構成される正ネジタイプのネジ部であり、
前記第2締結部は、前記キャップ側のキャップ内ネジと前記本体側の本体内ネジとで構成される逆ネジタイプのネジ部である、請求項1~8のいずれか一項に記載の封止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着される封止装置に関し、特に中栓の成形を良好にする封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の口部に用いられる公知の封止装置として、中栓とキャップとを備え、中栓に注出口を閉塞する閉塞体又は栓体が容易破断部又は薄肉弱化部を介して接続されているものがある(特許文献1及び2参照)。
【0003】
ここで、閉塞体の中心から樹脂を射出して成形する場合、特許文献1及び2の封止装置では、中栓のうち内側でキャップと係合する部分を形成する円筒成形空間の流路幅と、破断部に連結する部分を形成する境界成形空間の流路幅とにほとんど差がなく、樹脂が円筒成形空間と境界成形空間とに略同時に流入する。境界成形空間に流入した樹脂は、薄肉となる破断部で堰き止められ、ウェルドが生じやすくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-59531号公報
【特許文献2】特開2011-173631号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、中栓の良好な成形が可能である封止装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る封止装置は、本体とキャップとを備え、本体とキャップとの間に設けられた第1締結部によって、キャップの着脱を可能にするとともに、第1締結部よりも内側において本体とキャップとの間に設けられた第2締結部によって、開封に際して本体から中栓を分離してキャップに捕捉させる封止装置であって、中栓は、第2締結部によってキャップと締結する中栓円筒部と、中栓円筒部に連設して中栓の底部に配置された封止部と、封止部の外縁と中栓円筒部の下端部とに連結され、かつ環状の薄肉部によって本体の外周部に連結される外周側境界部と、外周側境界部と封止部又は中栓円筒部との境界において成形時に樹脂の流れを中栓円筒部の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部とを有する。ここで、堰き止め部は、成形時に封止部を形成する成形空間から流入した樹脂を中栓円筒部を形成する成形空間と薄肉部を形成する成形空間とに分岐させる部分によって形成されるものであり、堰き止め部を形成する成形空間は、中栓円筒部を形成する成形空間に対して成形中の樹脂を堰き止めず、中栓円筒部を形成する成形空間に樹脂を優先的に誘導するものである。
【0007】
上記封止装置によれば、外周側境界部が成形時に樹脂の流れを中栓円筒部の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部を有することにより、薄肉部を形成する成形空間よりも広い中栓円筒部を形成する成形空間に樹脂を優先的に充填し、中栓円筒部に樹脂がある程度充填した後に薄肉部を形成する成形空間側に樹脂を流入させることができる。これにより、薄肉部を形成する成形空間に当初から大きな樹脂圧が直接かかることを防ぎ、当該成形空間に安定して樹脂が供給され薄肉部で停滞することなく連続的に樹脂が流れるためウェルドが生じにくくなり、薄肉部ひいては本体を良好に成形することができる。また、中栓円筒部に樹脂を優先的に充填することで、薄肉部よりも厚い中栓円筒部の冷却不足によるヒケが生じにくくなり、薄肉部ひいては本体を良好に成形することができる。
【0008】
本発明の具体的な態様又は側面では、上記封止装置において、外周側境界部の最小厚さは、封止部の厚さより薄い。この場合、外周側境界部において、樹脂の冷却を早めることができる。これにより、中栓の密封性と開封性とを維持したまま、本体の成形サイクルを早くすることがきる。
【0009】
本発明の別の側面では、外周側境界部は、堰き止め部として封止部に対して中栓円筒部側に設けた環状の段差によって成形時に樹脂の流れを誘導する金型側の土手部の転写によって形成された環状の溝部を有する。この場合、成形時に土手部が防波堤の役割をなし、中栓円筒部を形成する成形空間に樹脂を優先的に充填させることができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、溝部の内側壁面から延びる仮想線は、中栓円筒部の外側壁面に接する。この場合、中栓円筒部の奥に向かう一様な通路が形成され、成形時に土手部に到達した樹脂を、薄肉部を形成する成形空間よりも中栓円筒部を形成する成形空間に誘導しやすくすることができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、溝部の高さは、封止部の厚さの1/2以上である。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、外周側境界部は、溝部から薄肉部に向かって下方に延びる流路部を有する。この場合、成形時に中栓円筒部を形成する成形空間への樹脂の流入を優先させ、中栓円筒部を形成する成形空間の樹脂充填後には、流路部を介して樹脂の充填を遅らせつつ薄肉部を形成する成形空間に樹脂を導きやすくすることができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、外周側境界部は、薄肉部に向かって下方に延びる流路部を有し、流路部の封止部側端部が堰き止め部である。この場合、成形時に流路部の封止部側端部が防波堤の役割をなし、中栓円筒部を形成する成形空間に樹脂を優先的に充填させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、流路部は、薄肉部側の端部に成形時に樹脂の流れを一時的に抑制する凸部を有する。この場合、成形時に薄肉部の手前で樹脂の流れを一時的に抑制して樹脂圧を適宜緩和し、薄肉部の成形をより良好にすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、第2締結部に隣接し、キャップ側のキャップラチェットと本体側の本体ラチェットとで構成されるラチェット部を有し、第1締結部は、キャップ側のキャップ外ネジと本体側の本体外ネジとで構成される正ネジタイプのネジ部であり、第2締結部は、キャップ側のキャップ係合部と本体側の本体係合部とで構成される係合部である。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、第1締結部は、キャップ側のキャップ外ネジと本体側の本体外ネジとで構成される正ネジタイプのネジ部であり、第2締結部は、キャップ側のキャップ内ネジと本体側の本体内ネジとで構成される逆ネジタイプのネジ部である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は、本発明に係る第1実施形態の封止装置の本体とラチェット部とを説明するための平面視の概念図であり、(B)は、封止装置を説明するための断面図である。
【
図2】(A)は、
図1(B)の封止装置のうち本体を説明するための部分拡大断面図であり、(B)は、成形時の樹脂の流れを説明するための概念図である。
【
図3】(A)及び(B)は、本発明に係る第2実施形態の封止装置のうち本体を説明するための部分拡大断面図である。
【
図4】本発明に係る第3実施形態の封止装置を説明するための部分断面図である。
【
図5】本発明に係る第4実施形態の封止装置のうち本体を説明するための部分拡大断面図である。
【
図6】
図1(B)の封止装置のうち本体の変形例を説明するための部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
図1を参照して、本発明に係る第1実施形態の封止装置について説明する。図示の封止装置100は、紙パック、パウチ容器等である容器2の開口部2aに取り付けられる本体10と、本体10を覆うようにして本体10に装着されるキャップ20とによって構成されている。
【0019】
図1(A)及び1(B)に示すように、本体10は、樹脂製の一体成形品であり、容器2の開口部2aの周縁部2bに沿って固定された外周部11と、開封時に外周部11から分離される中栓12とを備える。以下、開封とは、中栓12が外周部11から分離されることを意味し、開封後のキャップ20の開け閉めについては開栓又は閉栓と呼ぶことにする。
【0020】
本体10の外周部11は、中栓12の分離後に容器2の内容物のための注出口を形成する部分であり、本体10の軸心であるネジ軸AXに沿って容器2の外側又は上側に延びる円筒状の部材である本体外周壁31を有している。さらに、外周部11は、本体外周壁31の下端において半径方向外方に張り出す肉厚の本体台座32と、本体台座32の周面から半径方向外方に張り出す肉薄の溶着部33とを有している。溶着部33の上面は、容器2の周縁部2bの下面に対して超音波融着や接着剤による接着等によって固定されている。本体台座32の周面には、周方向2~8箇所に等間隔に係止部34が半径方向外方に張り出して形成されている。
図1(A)の例では、係止部34は、4箇所に形成されている。また、本体10の本体外周壁31には、外周面に、キャップ20に螺着するための正ネジである本体外ネジ51が形成されている。なお、ネジ軸AXとは、本体10及びキャップ20の中心を通る軸又はキャップ20の回転軸を意味する。
【0021】
本体10の中栓12は、底部に配置された円板状の封止部41と、この封止部41の外縁から上方に延びる円筒状の中栓円筒部42と、封止部41の外縁と中栓円筒部42の下端部とに連結されている外周側境界部17とを備えている。また、外周側境界部17は、環状の薄肉部15によって本体10の外周部11に連結されている。薄肉部15の下面には、環状でV溝状のスコアー16が形成されている。薄肉部15は、本体10から中栓12を分離する開封時に切断される。中栓円筒部42は、外側の本体外周壁31の内側に同芯で離間して配置されている。中栓円筒部42の内周面(内側面)の上端には、中栓径方向の内方へ突出するとともに、周方向に延びる第1中栓係合部52が形成されている。第1中栓係合部52は、後述するキャップ20に設けられた第1キャップ係合部55に下方からの移動によって係合して中栓12のキャップ20に対する脱落を防止する。また、中栓円筒部42の外周面(外側面)には、中栓径方向の外方へ突出するとともに、ラチェット機構の一方の第1歯部を構成する第2中栓係合部53(本体ラチェット)が周方向複数箇所に等間隔に形成されている。
図1(A)の例では、第2中栓係合部53は、4箇所に形成されている。第2中栓係合部53は、略径方向から急激に湾曲して形成され、かつ後述するキャップ20の第2歯部と係合する第1係合面53aと、第1係合面53aの反対側に第1係合面53aよりも緩やかに湾曲して形成された第1非係合面53bとを有している。
【0022】
キャップ20は、樹脂製の一体成形品であり、外側の部分として、円板状のキャップ天板21と、円筒状のキャップ外周壁22とを備える。キャップ外周壁22の周囲には、ローレットが形成されている。キャップ20は、キャップ外周壁22と同芯で内側に、最も内側に配置された内側支持部であるキャップ円筒部23と、キャップ円筒部23の外側に配置された外側サポート部24とを備える。また、キャップ外周壁22と外側サポート部24との間には、同様に同芯で円筒状であるがネジ軸AX方向に比較的短いインナーリング25が設けられている。このインナーリング25によって開封後の容器2の開口部2aのシールが図られている。キャップ円筒部23と、外側サポート部24と、インナーリング25とは、キャップ天板21によって連設されている。そして、キャップ外周壁22の内周側面には、本体10の本体外周壁31の外周側面に形成された本体外ネジ51に螺合するキャップ外ネジ54が形成されている。キャップ円筒部23の外周面(外側面)の下端には、キャップ径方向の外方へ突出するとともに、周方向に延びる第1キャップ係合部55が形成されている。第1キャップ係合部55は、中栓12に設けられた第1中栓係合部52に上方からの移動によって係合している。また、外側サポート部24は、ラチェット機構の他方の第2歯部を構成し、本体10に設けた中栓12の中栓円筒部42の外周側面に形成された第2中栓係合部53に係合する第2キャップ係合部56(キャップラチェット)が周方向複数箇所に等間隔に形成されている。第2キャップ係合部56は、第2中栓係合部53と対になっており、
図1(A)の例では、第2キャップ係合部56は、第2中栓係合部53と同数の4箇所に形成されている。第2キャップ係合部56は、周方向に対して傾斜して形成され中栓12の第1歯部である第2中栓係合部53と係合する第2係合面56aと、第2係合面56aの反対側に第2キャップ係合部56が平面視で先細りになるように第2係合面56aと同一方向に傾斜して形成された第2非係合面56bとを有している。
【0023】
以上において、本体10の本体外周壁31の本体外ネジ51と、キャップ20のキャップ外周壁22のキャップ外ネジ54とは、キャップ20の本体10に対する着脱を可能にする第1締結部50aを構成している。第1締結部50aは、例えば、反時計方向の回転で緩む正ネジタイプの螺合部である。また、本体10の中栓円筒部42の第1中栓係合部52と、キャップ20のキャップ円筒部23の第1キャップ係合部55とは、本体10のうち中栓12をキャップ20のキャップ円筒部23に係合して固定するための第2締結部50bを構成している。キャップ20のキャップ円筒部23は、係合部である第2締結部50bによって中栓12を捕捉して当該中栓12を本体10又は外周部11から分離するための支持部として機能している。
【0024】
既述のように、本体10の中栓円筒部42の第2中栓係合部53と、キャップ20の外側サポート部24の第2キャップ係合部56とは、一方向において互いに係合するラチェット部50cを構成している。具体的には、キャップ20を容器2の開口部2aに対してキャップ20が緩む方向、すなわちキャップ20の上側から見て反時計方向に回転させたとき、第2中栓係合部53の第1係合面53aと第2キャップ係合部56の第2係合面56aとが互いに係合する。一方、キャップ20を容器2の開口部2aに対してキャップ20を締め込む方向、すなわちキャップ20の上側から見て時計方向に回転させたとき、第2キャップ係合部56の第2非係合面56bは、第2中栓係合部53の第1非係合面53b上を弾性変形しつつ滑るように通過し、第2中栓係合部53を乗り越える。封止装置100が開封前の場合、キャップ20を緩める方向に回転させると、第2中栓係合部53と第2キャップ係合部56とが係合し、中栓12の薄肉部15を本体10の外周部11から切り離す力が回転方向に生じ、結果的に薄肉部15が破断する。
【0025】
以下、
図2(A)及び2(B)を参照しつつ、中栓12のうち主に外周側境界部17周辺について説明する。外周側境界部17の最小厚さT1は、封止部41の厚さT2より薄くなっている。ここで、外周側境界部17の厚さは、外周側境界部17を形成する成形空間の流路幅に相当し、封止部41の厚さは、封止部41を形成する成形空間の流路幅に相当する。外周側境界部17を封止部41よりも薄くすることにより、外周側境界部17において、樹脂の冷却を比較的早めることができる。結果的に、中栓12の密封性・開封性を維持したまま、本体10の成形サイクルを早くすることがきる。また、中栓12は、外周側境界部17と封止部41又は中栓円筒部42との境界に成形時に樹脂の流れを中栓円筒部42の上部に誘導するために形成される堰き止め部17aを有している。ここで、堰き止め部17aは、成形時に封止部41を形成する成形空間から流入した樹脂を、中栓円筒部42を形成する成形空間と薄肉部15を形成する成形空間とに分岐させる部分によって形成されるものであり、堰き止め部17aを形成する成形空間は、中栓円筒部42を形成する成形空間に対して成形中の樹脂を堰き止めず、中栓円筒部42を形成する成形空間に樹脂を優先的に誘導するものである。本実施形態において、外周側境界部17は、堰き止め部17aとして、封止部41に対して中栓円筒部42側に設けた環状の段差17bによって樹脂の流れを誘導する金型側の土手部60の転写によって形成された環状の溝部18を有している。
図2(A)に示すように、溝部18は、破線で示す金型側の土手部60を反転した形状となっている。土手部60又は溝部18は、成形時に封止部41を形成する成形空間の端部側に位置している。土手部60又は溝部18は、封止部41を形成する成形空間の中央下部から流入した樹脂が土手部60又は溝部18に到達した際に外周側境界部17に流れにくくするための防波堤の役割を有している。土手部60又は溝部18によって、樹脂が土手部60又は溝部18の上側に位置する中栓円筒部42を形成する成形空間に優先的に流れやすくなり、樹脂の流れを意図的に制御することができる。溝部18の高さは、例えば封止部41の厚さの1/2以上となっている。
【0026】
図2(A)に示すように、溝部18の内側壁面18aから延びる仮想線L1は、中栓円筒部42の外側壁面42aに接する。これにより、中栓円筒部42の奥に向かう一様な通路が形成され、成形時に土手部60又は溝部18に到達した樹脂を薄肉部15を形成する成形空間よりも中栓円筒部42を形成する成形空間に誘導しやすくすることができる。
【0027】
また、外周側境界部17は、溝部18から薄肉部15に向かって下方に延びる流路部19を有する。これにより、成形時に中栓円筒部42を形成する成形空間への樹脂の流入を優先させ、中栓円筒部42を形成する成形空間の樹脂充填後には、流路部19を介して樹脂の充填を遅らせつつ、かつ過度の圧力がかからないようにして薄肉部15を形成する成形空間に樹脂を導きやすくすることができる。流路部19は、薄肉部15側の端部に成形時に樹脂の流れを一時的に抑制する凸部19aを有する。これにより、成形時に薄肉部15の手前で樹脂の流れを一時的に抑制して樹脂を滞留させ、樹脂の流れを遅延させることで樹脂圧を適宜緩和し、薄肉部15の成形をより良好にすることができる。
【0028】
図2(B)に例示するように、封止部41を形成する成形空間の中央下部から流入した樹脂(
図2(B)の矢印A1)は、外周側境界部17の土手部60又は溝部18に到達し(
図2(B)の矢印A2)、堰き止め部17aによって上方の中栓円筒部42を形成する成形空間に向けて誘導される。その後、樹脂は中栓円筒部42を形成する成形空間に優先的に流れ(
図2(B)の矢印A3)、当該成形空間に樹脂が充填される。中栓円筒部42を形成する成形空間に樹脂が充填された後、樹脂は外周側境界部17の流路部19に流れ(
図2(B)の矢印A4)、薄肉部15を形成する成形空間、ひいては本体10の外周部11を形成する成形空間を充填する。
図2(B)のように、流路部19の薄肉部15側の端部に凸部19aが設けられている場合、薄肉部15を形成する成形空間に樹脂が流入する前に、樹脂の流れが一時的に抑制され樹脂圧が緩和される。なお、樹脂が中栓円筒部42を形成する成形空間に優先的に流れている際に、樹脂圧が緩和された樹脂の一部が薄肉部15を形成する成形空間に流入してもよい。
【0029】
以下、封止装置100の組み立て方法の一例について説明する。まず、
図1(B)に示す本体10とキャップ20とを準備する。次に、第1締結部50aを構成する本体外ネジ51とキャップ外ネジ54とを時計回りに回転させつつ、キャップ20に本体10を収納するように第2締結部50bを構成するキャップ20の第1キャップ係合部55と本体10の第1中栓係合部52とを係合させる。その際、ラチェット部50cでは、キャップ20の第2キャップ係合部56と本体10の第2中栓係合部53とはかみ合わない状態であり、薄肉部15に影響を及ぼさないようになっている。
【0030】
上述のようにして組立てられた封止装置100(本体10及びキャップ20)は、紙パック等の容器2の開口部2aに裏側から挿入され、その開口部2aの内周面に本体10の本体台座32の外周面が嵌合され、超音波接着や接着剤による接着等によって容器2に接合される。
【0031】
以下、上記実施形態の封止装置100の開封動作について説明する。まず、キャップ20が第1締結部50aの回転動作前の基準位置又は初期位置(奥までねじ込んだ状態)にあり、中栓12と本体外周壁31とが結合状態にあって、容器2の開口部2a又は本体10の開口部11aが封止された状態にある。キャップ20を緩める方向、即ち反時計回りに回転させると、ラチェット部50cにおいて、第2キャップ係合部56と第2中栓係合部53とがかみ合い、中栓12に回転する力が働き薄肉部15に捻じれる力が加わり薄肉部15がせん断力を受けて破断され、中栓12は本体外周壁31から離脱され、開封される。この状態においては、第2締結部50bによる係止状態が維持され、中栓12は、キャップ20に保持される。
【0032】
さらに、キャップ20を緩める方向に回転させると、キャップ20は本体外周壁31から離れ、それによって容器2内の内容物を注ぐことができるようになる。その際、中栓12は、キャップ20に確保された状態となっているので、離脱するおそれはない。つまり、一旦開封が行われた後は、本体10側に固定されていた中栓12がキャップ20側に固定されることになる。
【0033】
開封後について説明すると、キャップ20のキャップ外ネジ54を本体10の本体外ネジ51に螺合させ、キャップ20を時計方向に回転させると、本体外周壁31の上端に形成されているリップ部31aがキャップ20のキャップ天板21の下面21tに当接する。中栓12は第2締結部50bによってキャップ20に保持された状態となっている。
【0034】
本実施形態の封止装置100では、外周側境界部17が成形時に樹脂の流れを中栓円筒部42の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部17aを有することにより、薄肉部15を形成する成形空間よりも広い中栓円筒部42を形成する成形空間に樹脂を優先的に充填し、中栓円筒部42に樹脂がある程度充填した後に薄肉部15を形成する成形空間側に樹脂を流入させることができる。これにより、薄肉部15を形成する成形空間に当初から大きな樹脂圧が直接かかることを防ぎ、当該成形空間に安定して樹脂が供給され薄肉部15で停滞することなく連続的に樹脂が流れるためウェルドが生じにくくなり、薄肉部15ひいては本体10を良好に成形することができる。また、中栓円筒部42に樹脂を優先的に充填することで、薄肉部15よりも厚い中栓円筒部42の冷却不足によるヒケが生じにくくなり、薄肉部15ひいては本体10を良好に成形することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る封止装置について説明する。第2実施形態の封止装置は、第1実施形態の封止装置を変形したものであり、特に説明しない事項については、第1実施形態の封止装置と同様である。
【0036】
図3(A)及び3(B)に示すように、本実施形態において、外周側境界部17の溝部18の内側壁面18aから延びる仮想線L1は、中栓円筒部42の外側壁面42aに接しており、かつネジ軸AXに対して傾斜している。溝部18は、断面視において例えば
図3(A)に示すV字形状もよいし、
図3(B)に示す台形状やU字形状でもよい。
【0037】
なお、外周側境界部17の流路部19は、第1実施形態においてネジ軸AXに略平行に下方に延びていたが、
図3(A)及び3(B)に示すように、ネジ軸AXに対して傾斜して下方に延びていてもよい。
【0038】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る封止装置について説明する。第3実施形態の封止装置は、第1実施形態の封止装置を変形したものであり、特に説明しない事項については、第1実施形態の封止装置と同様である。
【0039】
図4に示すように、本実施形態において、第1締結部50aは、キャップ20側のキャップ外ネジ54と本体10側の本体外ネジ51とで構成される正ネジタイプのネジ部であり、第2締結部50bは、キャップ20側のキャップ内ネジ58と本体10側の本体内ネジ57とで構成される逆ネジタイプのネジ部となっている。本体内ネジ57は、中栓円筒部42の内周面(内側面)に形成されており、本体外ネジ51に対して螺旋方向が異なっている。キャップ内ネジ58は、本体内ネジ57に螺合するようにキャップ円筒部23の外周面(外側面)に形成されている。本体内ネジ57とキャップ内ネジ58とは、中栓12をキャップ円筒部23に押し込む乗り越えを中栓12をキャップ円筒部23から引き抜く乗り越えよりも容易にする偏ったネジ山形状又はかえり形状を有する。
【0040】
本実施形態でも第1実施形態と同様に、中栓12は、外周側境界部17と封止部41又は中栓円筒部42との境界において成形時に樹脂の流れを中栓円筒部42の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部17aを有している。
【0041】
封止装置100の組み立てにおいて、第1締結部50aを構成する本体外ネジ51とキャップ外ネジ54とを時計回りに回転させつつ、キャップ20に本体10を収納するように第2締結部50bを構成するキャップ20のキャップ内ネジ58と本体10の本体内ネジ57とを螺合させる。その際、第2締結部50bを構成する本体内ネジ57とキャップ内ネジ58とは、本来反時計方向の回転でねじ込まれるように形成されているが、図示の両内ネジ57,58は押し込みに際して変形し易い偏ったねじ山形状又はかえり形状に形成されているので、互いに変形しながら両内ネジ57,58のネジ山を乗り越えて互いに噛合される。
【0042】
上記実施形態の封止装置100の開封動作については、キャップ20を緩める方向、即ち反時計回りに回転させると、キャップ外ネジ54が本体外ネジ51に当接する。この時、中栓12は、キャップ20と逆ネジによって螺合されているので、第2締結部50bの締め付けが開始され、中栓12が上方に移動させられ、それに伴い薄肉部15が上方に伸ばされる。さらにキャップ20を反時計回りに回転させると、キャップ外ネジ54と本体外ネジ51の螺合によりキャップ20は回転しつつ上方に移動し、その間に本体10の薄肉部15がさらにせん断力を受けて破断され、中栓12は本体外周壁31から離脱され、開封される。
【0043】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る封止装置について説明する。第4実施形態の封止装置は、第1実施形態の封止装置を変形したものであり、特に説明しない事項については、第1実施形態の封止装置と同様である。
【0044】
本実施形態では、第1実施形態とは異なり外周側境界部17は溝部18を有しない構造となっている。
図5に示すように、外周側境界部17の最小厚さT1は、封止部41の厚さT2より薄くなっている。さらに、外周側境界部17の最小厚さT1は、中栓円筒部42の厚さT3より薄くなっている。これにより、厚みが厚い方に優先的に樹脂が流れるため、中栓円筒部42側に樹脂が流れやすくなる。また、中栓12は、外周側境界部17と封止部41又は中栓円筒部42との境界において成形時に樹脂の流れを中栓円筒部42の上部に向かうように誘導するために形成される堰き止め部17aを有している。本実施形態において、外周側境界部17は、薄肉部15に向かって下方に延びる流路部119を有し、流路部119の封止部41側の端部が堰き止め部17aとなっている。これにより、成形時に流路部119の封止部41側の端部が防波堤の役割をなし、中栓円筒部42を形成する成形空間に樹脂を優先的に充填させることができる。流路部119は、薄肉部15側の端部に成形時に樹脂の流れを一時的に抑制する凸部19aを有する。
【0045】
以上、本実施形態に係る封止装置について説明したが、本発明に係る封止装置は上記のものには限られない。例えば、上記実施形態において、
図6に示すように、外周側境界部17が、溝部18から薄肉部15に向かって下方に延びる流路部19を有さず、封止部41に略平行に延びる流路部219を有する構造でもよい。この場合、堰き止め部17aを設けるために、外周側境界部17に溝部18を設けることが必須となっている。
【0046】
また、上記実施形態において、本体10の中栓円筒部42とキャップ20のキャップ円筒部23とは、内外を入れ替えることもできる。この場合、第2締結部50bやラチェット部50cの構造も適宜変更される。
【0047】
また、上記実施形態において、第1締結部50aを構成している本体外ネジ51及びキャップ外ネジ54のピッチ、巻き数、ネジ山高さ、形状等の仕様は、適宜用途に応じて変更することができる。また、第2締結部50bを構成しているキャップ内ネジ58及び本体内ネジ57のピッチ、巻き数、ネジ山高さ、形状等の仕様も、適宜用途に応じて変更することができる。
【0048】
上記実施形態において、第1締結部50aを構成する本体外ネジ51及びキャップ外ネジ54の形状は、
図1(B)等に例示するものに限らず、押し込みを容易にする偏ったネジ山形状又はかえり形状を有するネジ山とすることもきる。
【0049】
上記実施形態において、第2締結部50bを構成する本体内ネジ57及びキャップ内ネジ58の形状は、
図4に例示するものに限らず、様々な断面形状とできる。また、第2締結部50bを構成する内ネジ57,58は、連続的に螺旋状に形成されるものに限らず、分離した複数の部分からなるものとできる。
【0050】
上記実施形態において、本体10の溶着部33の上面を、容器2の周縁部2bの下面に対して固定したが、溶着部33の下面を、周縁部2bの上面に対して固定してもよい。この場合、本体10の本体台座32と溶着部33とを同じ厚みとし、係止部34を省略してもよい。
【符号の説明】
【0051】
2…容器、 2a…開口部、 2b…周縁部、 10…本体、 11…外周部、 11a…開口部、 12…中栓、 15…薄肉部、 16…スコアー、 17…外周側境界部、 17a…堰き止め部、 18…溝部、 18a…内側壁面、 19,119,219…流路部、 19a…凸部、 20…キャップ、 21…キャップ天板、 22…キャップ外周壁、 23…キャップ円筒部、 24…外側サポート部、 25…インナーリング、 31…本体外周壁、 31a…リップ部、 32…本体台座、 33…溶着部、 34…係止部、 41…封止部、 42…中栓円筒部、 42a…外側壁面、 50a…第1締結部、 50b…第2締結部、 50c…ラチェット部、 51…本体外ネジ、 52…第1中栓係合部、 53…第2中栓係合部、 53a…第1係合面、 53b…第1非係合面、 54…キャップ外ネジ、 55…第1キャップ係合部、 56…第2キャップ係合部、 56a…第2係合面、 56b…第2非係合面、 57…本体内ネジ、 58…キャップ内ネジ、 100…封止装置、 AX…ネジ軸、 L1…仮想線