(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112312
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ボックスカルバート
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
E03F3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008091
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591067897
【氏名又は名称】千葉窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 正邦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】滝本 和志
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
(72)【発明者】
【氏名】新宮 康之
(72)【発明者】
【氏名】青木 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】前田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄也
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕大
(72)【発明者】
【氏名】濱田 育実
(72)【発明者】
【氏名】小松▲崎▼ 国夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 徹
(72)【発明者】
【氏名】野手 誠
(72)【発明者】
【氏名】江口 知也
(72)【発明者】
【氏名】迫田 邦章
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠一
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA06
2D063BA32
(57)【要約】
【課題】躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供する。
【解決手段】コーナー部1がアーチ形状に形成された略矩形断面の躯体からなるプレキャストコンクリート製のボックスカルバート100であって、左右両端がコーナー部1を形成する略U字状の底版部材12と、この底版部材12の左右両端の上に対向配置される側壁部材14と、側壁部材14の上部どうしを接続するとともに底版部材12に対して対向配置される頂版部材と、側壁部材14および頂版部材を架設する際の片持ち状態の底版部材12に生じる応力およびひずみを低減するために、底版部材12の左右両端のコーナー部1の下側に設けられるキャンバー材18とを備えるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーナー部がアーチ形状に形成された略矩形断面の躯体からなるプレキャストコンクリート製のボックスカルバートであって、
左右両端がコーナー部を形成する略U字状の底版部材と、この底版部材の左右両端の上に対向配置される側壁部材と、側壁部材の上部どうしを接続するとともに底版部材に対して対向配置される頂版部材と、側壁部材および頂版部材を架設する際の片持ち状態の底版部材に生じる応力およびひずみを低減するために、底版部材の左右両端のコーナー部の下側に設けられるキャンバー材とを備えることを特徴とするボックスカルバート。
【請求項2】
キャンバー材は、コーナー部の下側に形成されたコンクリート、鋼材またはこれらの複合材料からなることを特徴とする請求項1に記載のボックスカルバート。
【請求項3】
キャンバー材の側線が、側壁部材の中心軸線の延長上に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載のボックスカルバート。
【請求項4】
躯体の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される主筋と、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の主筋を取り囲んで配置される帯筋とを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のボックスカルバート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート製のボックスカルバートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下を通る水路や道路等を構築する際に、断面が中空の筒状体からなるボックスカルバートが広く使用されている(例えば、特許文献1、2を参照)。ボックスカルバートの構築は現場打ちで行われることが多いが、工程短縮等が必要な場合、プレキャスト製品を長手方向に連結させながら地中に埋設することで水路や道路等の地下構造物が構築されることがある。
【0003】
従来のボックスカルバートは、現場打ち、プレキャスト製品にかかわらず、エッジ形状の隅角部にハンチを有する矩形の断面で構成されているものが多い。プレキャスト製品のボックスカルバートは、工場製作品であるため現場打ちに比べて型枠形状の自由度が高いものであるが、現場打ちの形状に倣ってハンチに沿う鉄筋や隅角部補強筋等の交差配筋を有している。このため、製作時における隅角部の配筋作業に多大な手間を要するとともに、鉄筋量、鉄筋配置の合理化をすることが困難であった。
【0004】
このような問題を解決するため、本特許出願人は、既に特許文献3に記載のプレキャストコンクリート製ボックスカルバートを提案している。この特許文献3のボックスカルバートは、
図4に示すように、隅角部1(コーナー部)が円弧状(アーチ形状)に形成された略矩形断面のコンクリートからなる躯体2と、躯体2の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される主筋3と、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の主筋3を取り囲んで配置される帯筋4とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-163760号公報
【特許文献2】特開2001-173368号公報
【特許文献3】特願2019-204843号(現時点で未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の従来の特許文献3のボックスカルバートは、
図5に示すように、略U字状の底版部材5の上に側壁部材6および頂版部材7を架設することによって据え付け施工する。側壁部材6および頂版部材7の架設時は、底版部材5の側部側8が円弧状のため片持ち状態となる。このとき、ボックスカルバートのリング完成時と異なる応力状態となることで底版部材5の支間部の鉄筋に設計外のひずみが発生するおそれがある。この片持ち状態への対策として、例えば、底版部材5の側部にサポートを設置したり、側部の下に埋戻しを行うことが考えられる。しかし、このような対策では、作業手間が増大し、施工工程が遅延するおそれがある。また、側部の下の埋戻しには、流動化処理土等の転圧を必要としない材料を選定する必要がある。このため、躯体の品質を確保するとともに施工工程を遅延させない技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るボックスカルバートは、コーナー部がアーチ形状に形成された略矩形断面の躯体からなるプレキャストコンクリート製のボックスカルバートであって、左右両端がコーナー部を形成する略U字状の底版部材と、この底版部材の左右両端の上に対向配置される側壁部材と、側壁部材の上部どうしを接続するとともに底版部材に対して対向配置される頂版部材と、側壁部材および頂版部材を架設する際の片持ち状態の底版部材に生じる応力およびひずみを低減するために、底版部材の左右両端のコーナー部の下側に設けられるキャンバー材とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るボックスカルバートは、上述した発明において、キャンバー材は、コーナー部の下側に形成されたコンクリート、鋼材またはこれらの複合材料からなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るボックスカルバートは、上述した発明において、キャンバー材の側線が、側壁部材の中心軸線の延長上に位置していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るボックスカルバートは、上述した発明において、躯体の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される主筋と、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の主筋を取り囲んで配置される帯筋とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るボックスカルバートによれば、コーナー部がアーチ形状に形成された略矩形断面の躯体からなるプレキャストコンクリート製のボックスカルバートであって、左右両端がコーナー部を形成する略U字状の底版部材と、この底版部材の左右両端の上に対向配置される側壁部材と、側壁部材の上部どうしを接続するとともに底版部材に対して対向配置される頂版部材と、側壁部材および頂版部材を架設する際の片持ち状態の底版部材に生じる応力およびひずみを低減するために、底版部材の左右両端のコーナー部の下側に設けられるキャンバー材とを備えるので、側壁部材と頂版部材の自重による荷重はキャンバー材によって軸力として設置面に伝えられ、施工過程において底版部材の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを低減させることができる。したがって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、キャンバー材は、コーナー部の下側に形成されたコンクリート、鋼材またはこれらの複合材料からなるので、キャンバー材を比較的容易かつ低コストに設けることができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、キャンバー材の側線が、側壁部材の中心軸線の延長上に位置しているので、施工過程において底版部材の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを効果的に低減させることができるとともに、キャンバー材の体積を最適化することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、躯体の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される主筋と、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の主筋を取り囲んで配置される帯筋とを備えるので、従来の矩形断面のボックスカルバートに存在していた隅角部補強筋等の交差配筋を不要とすることができる。このため、製作時における配筋作業の手間を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明に係るボックスカルバートの実施の形態1を示す要部の部分斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るボックスカルバートの実施の形態2を示す要部の写真図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るボックスカルバートの実施の形態3を示す要部の断面図である。
【
図4】
図4は、従来のボックスカルバートを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るボックスカルバートの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
(基本構成)
まず、本発明の実施の形態の基本構成について説明する。
本実施の形態に係るボックスカルバートは、
図4に示すようなボックスカルバートの左右下側部分に適用されるため、このボックスカルバートについて概略説明する。
図4のボックスカルバートは、コーナー部1がアーチ形状に形成された略矩形断面のプレキャストコンクリートからなる躯体2と、軸方向鉄筋3(主筋)と、帯鉄筋4(帯筋)とを備える。コーナー部1がアーチ形状であるとは、コーナー部1の躯体2の輪郭ラインが、ボックスカルバートの横断面視で所定の曲率を有する丸みを帯びた形状(R形状)であるという意味である。
【0019】
躯体2は、上下に対向配置されるとともに厚さが異なる頂版10(頂版部材)および底版12(底版部材)と、底版12の左右両端の上に対向配置される側壁14、14(側壁部材)とからなる。底版12は、
図5に示すように、左右両端がコーナー部1を形成する略U字状の部材である。頂版10は、側壁14の上部どうしを接続するように配置される。本実施の形態では、躯体2の内空断面の高さ6000mm程度、幅5700mm程度を想定し、頂版10の厚さ850mm程度、底版12の厚さ900mm程度、左右側壁14の厚さ650mm程度の不等厚形状を想定しているが、これに限るものではない。すなわち他の寸法の組み合わせの不等厚形状でもよいし、各部材厚が同じ等厚形状でもよい。
【0020】
コーナー部1の躯体ラインの曲率半径は、内面側(内空側)の曲率半径よりも外面側の曲率半径が大きく、内面側の曲率円R1と外面側の曲率円R2の中心は異なる位置である。こうすることで、頂版10、底版12と側壁14の部材厚が異なる不等厚形状のボックスカルバートを実現することができる。なお、本実施の形態では、コーナー部1の内面側の躯体ラインの曲率半径1000mmを想定しているが、これに限るものではない。
【0021】
軸方向鉄筋3は、躯体2の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される。帯鉄筋4は、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の軸方向鉄筋3を取り囲んで配置されるフープ筋である。軸方向鉄筋3は、縦断方向(ボックスカルバートの延在方向)に所定の間隔をあけて複数配置される。帯鉄筋4は、縦断方向に若干ずれて連なりに配置された環状の第1帯筋と第2帯筋を有する。第1帯筋と第2帯筋は、その間にある複数の軸方向鉄筋3を重複して取り囲む。このように中間帯鉄筋を使用せず、2連の帯鉄筋4を採用することで、製作時における配筋作業の効率が向上する。これにより短期間で製作することが可能となる。
【0022】
なお、コーナー部1においては、内側の軸方向鉄筋3の引張り応力が降伏応力に達したときそれを拘束する帯鉄筋4が降伏応力以下となるように設定することが好ましい。こうすることで、地震時など大変形が生じる場合にコーナー部1が開く方向に外力(軸力、モーメント)が作用したときに、コーナー部1の内側のコンクリートが押し剥がされるような作用(腹圧力)に対し、内側のかぶりコンクリートの剥落を防止することができる。
【0023】
また、下側のアーチ形状のコーナー部1とこれに連なる底版12との間の下面(外面)に、若干量(例えば高さ50mm程度)の突起16を設けてもよい。突起16を設けることで、設置面に設置される底版12のコーナー部1の下側における埋戻し材の充填性を確保することができる。
【0024】
図4のボックスカルバートによれば、従来の矩形断面のボックスカルバートに存在していた隅角部補強筋がないため、鉄筋を交差させることがない。交差鉄筋がなく鉄筋同士が干渉する問題がなくなるので、製作時における配筋作業の手間を軽減することができる。また、隅角部の照査を省略することができる。さらに、コーナー部1がR形状となるため、内空側から見たボックスカルバート内の美観が向上する。
【0025】
また、コーナー部1の外面側と内面側の曲率円R1、R2の中心位置をずらすことで、頂版20・底版22と側壁14の部材厚を変更した不等厚形状のボックスカルバートを実現することができる。また、不等厚形状であってもコーナー部1における軸方向鉄筋3の曲げ形状を、曲げ加工が容易な単心円の形状に設定することができる。
【0026】
(実施の形態1)
次に、上記の基本構成のボックスカルバートに適用される本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、本実施の形態1のボックスカルバート100の要部斜視図である。この図に示すように、ボックスカルバート100は、底版12の左右両端のコーナー部1の下側に設けられたキャンバー材18を備えている。キャンバー材18は、側壁14および頂版10を架設する際の片持ち状態の底版12に生じる応力およびひずみを低減するためのものである。
【0027】
このキャンバー材18は、略直角三角形板状のコンクリート部材20により構成される。このコンクリート部材20内の前面側と後面側には、格子状のひび割れ防止筋22(ワイヤーメッシュ)が設けられている。コンクリート部材20は、硬質のゴム板24を挟んでコーナー部1の下側に固定用部材26で固定される。固定用部材26は、コーナー部1の下側の表面とコンクリート部材20の前面および後面に跨いでそれぞれ配置された形鋼などのアングル材28と、アングル材28に設けた貫通孔に挿通されるボルト30により構成される。このキャンバー材18は、コーナー部1の下側に後付けで取り付けることも可能である。本実施の形態1では、底版12の奥行き方向の厚さT=1000mm程度、キャンバー材16の厚さt=300mm程度を想定しているが、これに限るものではない。
【0028】
本実施の形態1によれば、側壁14と頂版10の自重による荷重はキャンバー材18によって軸力として設置面に伝えられ、施工過程において底版12の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを低減させることができる。したがって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することができる。また、キャンバー材18は、コンクリートと鋼材の複合材料からなるので、比較的容易かつ低コストに設けることが可能である。
【0029】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2に係るボックスカルバート200は、底版12の左右両端のコーナー部1の下側に設けられたキャンバー材32を備えている。キャンバー材32は、側壁14および頂版10を架設する際の片持ち状態の底版12に生じる応力およびひずみを低減するためのものである。このキャンバー材32は、底版12と一体でコンクリート打設して製作されたコンクリートにより構成される。キャンバー材32の内部の前面側と後面側には、図示しない格子状のひび割れ防止筋(ワイヤーメッシュ)が設けられている。
【0030】
本実施の形態2によれば、側壁14と頂版10の自重による荷重はキャンバー材32によって軸力として設置面に伝えられ、施工過程において底版12の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを低減させることができる。したがって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することができる。また、この一体型のキャンバー材32によれば、埋戻し材に現地発生土等の通常の材料を用いた施工が可能である。
【0031】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図3に示すように、本実施の形態3に係るボックスカルバート300は、底版12の左右両端のコーナー部1の下側に設けられたキャンバー材34を備えている。キャンバー材34は、側壁14および頂版10を架設する際の片持ち状態の底版12に生じる応力およびひずみを低減するためのものである。キャンバー材34の側線36は、断面視で側壁14の中心軸線Cの延長上に位置している。
【0032】
このように、キャンバー材34の側線36を側壁14の中心軸線Cに合わせると、施工過程において底版部材の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを効果的に低減させることができる。したがって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することができる。また、キャンバー材34の体積を小さくでき、最適な大きさに設定(最適化)することが可能である。
【0033】
以上説明したように、本発明に係るボックスカルバートによれば、コーナー部がアーチ形状に形成された略矩形断面の躯体からなるプレキャストコンクリート製のボックスカルバートであって、左右両端がコーナー部を形成する略U字状の底版部材と、この底版部材の左右両端の上に対向配置される側壁部材と、側壁部材の上部どうしを接続するとともに底版部材に対して対向配置される頂版部材と、側壁部材および頂版部材を架設する際の片持ち状態の底版部材に生じる応力およびひずみを低減するために、底版部材の左右両端のコーナー部の下側に設けられるキャンバー材とを備えるので、側壁部材と頂版部材の自重による荷重はキャンバー材によって軸力として設置面に伝えられ、施工過程において底版部材の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを低減させることができる。したがって、躯体の品質を確保することができるとともに、施工工程を遅延させないプレキャストコンクリート製のボックスカルバートを提供することができる。
【0034】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、キャンバー材は、コーナー部の下側に形成されたコンクリート、鋼材またはこれらの複合材料からなるので、キャンバー材を比較的容易かつ低コストに設けることができる。
【0035】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、キャンバー材の側線が、側壁部材の中心軸線の延長上に位置しているので、施工過程において底版部材の支間部に発生する曲げモーメントおよび鉄筋のひずみを効果的に低減させることができるとともに、キャンバー材の体積を最適化することができる。
【0036】
また、本発明に係るボックスカルバートによれば、躯体の内部の外側と内側においてそれぞれ断面視で周方向に配置される主筋と、周方向に所定の間隔をあけて複数配置されるとともに複数の主筋を取り囲んで配置される帯筋とを備えるので、従来の矩形断面のボックスカルバートに存在していた隅角部補強筋等の交差配筋を不要とすることができる。このため、製作時における配筋作業の手間を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係るボックスカルバートは、地下を通る水路や道路等の地下構造物として用いられるボックスカルバートに有用であり、特に、側壁部材および頂版部材の架設時に片持ち状態の底版部材の応力、ひずみを低減させるのに適している。
【符号の説明】
【0038】
1 コーナー部
2 躯体
3 軸方向鉄筋(主筋)
4 帯鉄筋(帯筋)
10 頂版(頂版部材)
12 底版(底版部材)
14 側壁(側壁部材)
16 突起
18,32,34 キャンバー材
20 コンクリート部材
22 ひび割れ防止筋
24 ゴム板
26 固定用部材
28 アングル材
30 ボルト
36 側線
100,200,300 ボックスカルバート