(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112340
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】防食テープ、及び、防食構造体
(51)【国際特許分類】
C23F 11/00 20060101AFI20220726BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220726BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220726BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20220726BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20220726BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220726BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
C23F11/00 G
C09D5/00 D
C09D7/63
C09D183/04
C09D5/08
B32B27/12
B32B27/00 101
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008142
(22)【出願日】2021-01-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】桐山 招大
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 智行
(72)【発明者】
【氏名】木内 一之
(72)【発明者】
【氏名】笠松 丈一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
4K062
【Fターム(参考)】
4F100AA08
4F100AA19
4F100AH06B
4F100AH06C
4F100AH06D
4F100AH06E
4F100AK48
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AK52C
4F100AK52D
4F100AK52E
4F100AR00D
4F100AS00C
4F100AS00E
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA23
4F100DG01
4F100DG01A
4F100EH46
4F100EJ65D
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JB02
4F100JB02B
4F100JB02D
4F100JB02E
4F100JB12B
4F100JD15
4F100JD15B
4F100JJ03
4F100JK06
4F100JL01
4F100JL11
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00E
4J038DL031
4J038DL042
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA20
4J038NA03
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC02
4K062AA05
4K062BC16
4K062BC30
4K062FA04
4K062GA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させ得る防食テープ等を提供する。
【解決手段】本発明に係る防食テープは、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートと、
該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である
防食テープ。
【請求項2】
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下である
請求項1に記載の防食テープ。
【請求項3】
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下である
請求項1または2に記載の防食テープ。
【請求項4】
前記繊維シートは、坪量が30g/m2以上150g/m2以下である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防食テープ。
【請求項5】
防食テープによって形成された防食層を備え、
前記防食テープは、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドとを有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である
防食構造体。
【請求項6】
前記防食層に積層されるトップコート層をさらに備え、
前記トップコート層は、油分を含むトップコートによって形成されており、
前記油分は、シリコーン化合物を含む
請求項5に記載の防食構造体。
【請求項7】
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下である
請求項6に記載の防食構造体。
【請求項8】
前記トップコートは、錫系触媒をさらに含む
請求項6または7に記載の防食構造体。
【請求項9】
前記防食層と対象物との間に介装されて、前記対象物に塗布されるプライマーであって、前記対象物を防食するための防食ペーストとしてのプライマーによって形成されているプライマー層をさらに備え、
前記プライマー層が、シリコーン化合物を含んでいる
請求項5乃至8のいずれか1項に記載の防食構造体。
【請求項10】
前記プライマー層と前記防食層との間に配され、かつ、防食マスチックによって形成されている防食マスチック層をさらに備え、
前記防食マスチック層が、シリコーン化合物を含んでいる
請求項9に記載の防食構造体。
【請求項11】
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下である
請求項10に記載の防食構造体。
【請求項12】
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下である
請求項10または11に記載の防食構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食テープ、及び、該防食テープを備える防食構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のプラントなどにおいては、ガス管、水道管、及び、油などの液体原料を輸送するための配管などとして、金属管が用いられている。
海辺に建設されたプラントなどにおいては、前記金属管などのような金属製部材を腐食から保護すべく、前記金属製部材を覆うように、防食構造体を形成している。
【0003】
一般的な防食構造体の形成方法としては、帯状の基材シートに防食コンパウンドを担持させた防食テープを用いる方法が知られている。
前記防食テープを用いる方法では、前記金属製部材の表面を覆うように前記防食テープを巻き付けることにより、前記金属製部材の表面に前記防食テープによって防食層を形成することにより防食構造体を形成している(例えば、特許文献1)。
上記特許文献1には、上記のような防食層を形成するために用いられる防食テープとして、主成分(油分)を含有する防食コンパウンドを帯状の基材(不織布など)に担持させたものが記載されている。
【0004】
上記のような防食テープとして、主成分(油分)として、耐熱性に優れるシリコーン化合物を含む防食パウンドを帯状の基材に担持させたものも知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
特許文献2に記載されたような防食コンパウンドとしてシリコーン化合物を含む防食テープは、前記金属製部材の表面を覆うように巻き付けられた後、前記防食コンパウンドを硬化させることによって、前記金属製部材の表面と前記防食層との隙間を小さくしている。
これにより、防食テープを備える防食構造体に、十分な防食性及び耐熱性を発揮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-44320号公報
【特許文献2】特開2019-72856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記基材に担持されたコンパウンドのうち、前記基材の内部に担持されたコンパウンドよりも、前記基材の表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が速く進行して、前記基材の内部に担持されたコンパウンドの硬化が十分に進行しないことがある。
このような場合、防食テープと金属製部材との隙間を十分に小さくすることができなくなって、防食テープを備える防食構造体に、十分な防食性及び耐熱性を発揮させ得なくなる。
【0008】
しかしながら、防食テープのコンパウンドの硬化を適切に制御することにより、防食テープを備える防食構造体に、十分な防食性及び耐熱性を発揮させることについて、未だ十分な検討がなされているとは言い難い。
【0009】
そこで、本発明は、防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させ得る防食テープ、及び、該防食テープを備える防食構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが鋭意検討したところ、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有する防食テープにおいて、コンパウンドの含水率が前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進に寄与していることを見出した。
そして、前記コンパウンドの含水率を1000ppm以下とすることにより、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進を抑制でき、これにより、防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御されて、前記防食テープを備える防食構造体が十分な防食性及び耐熱性を発揮し得るものとなることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る防食テープは、
繊維シートと、
該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である。
【0012】
斯かる構成によれば、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進を抑制でき、これにより、防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食テープは、防食構造体に備えられると、前記防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させることができる。
【0013】
前記防食テープにおいては、
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下である、ことが好ましい。
【0014】
斯かる構成によれば、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進をより一層抑制でき、これにより、防食テープのコンパウンドの硬化がより適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食テープは、防食構造体に備えられると、前記防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させることができる。
【0015】
前記防食テープにおいては、
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下である、ことが好ましい。
【0016】
斯かる構成によれば、300℃といった高温下に24時間という長時間曝された場合であっても、金属管などのような金属製部材の表面と前記防食テープとの密着性を維持することができる。
すなわち、上記のごとき構成を有する防食テープを備える防食構造体は、より一層耐熱性に優れるものとなり、その結果、防食性にも優れるものとなる。
【0017】
前記防食テープにおいては、
前記繊維シートは、坪量が30g/m2以上150g/m2以下である、ことが好ましい。
【0018】
斯かる構成によれば、前記繊維シートは、前記コンパウンドを比較的含浸させ易いものとなる。すなわち、前記防食テープは、前記コンパウンドがより十分に含浸されたものとなる。
そのため、金属管などのような金属製部材に巻き付けた状態において、前記防食テープをより十分に硬化させて、前記金属製部材と前記防食テープとの間に隙間が生じることをより一層抑制することができる。
これにより、上記のごとき構成を有する防食テープを備える防食構造体は、より一層防食性及び耐熱性に優れるものとなる。
【0019】
本発明に係る防食構造体は、
防食テープによって構成された防食層を備え、
前記防食テープは、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である。
【0020】
斯かる構成によれば、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進を抑制でき、これにより、防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させることができる。
【0021】
前記防食構造体においては、
前記防食層に積層されるトップコート層をさらに備え、
前記トップコート層は、油分を含むトップコートで形成されており、
前記油分は、シリコーン化合物を含む、ことが好ましい。
【0022】
斯かる構成によれば、前記シリコーン化合物を含む防食テープによって構成された前記防食層に積層された状態において、前記防食層との親和性が比較的高いものとなるとともに、前記防食層に前記油分を含浸させ易くなる。
これにより、前記防食構造体は、前記トップコート層と前記防食層との密着性が比較的高いものとなる。
【0023】
前記防食構造体においては、
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下である、ことが好ましい。
【0024】
斯かる構成によれば、前記トップコートは、前記防食層に塗布し易いものとなるので、前記防食構造体において、前記トップコート層を前記防食層上に比較的均一な厚さで形成することができる。
【0025】
前記防食構造体においては、
前記トップコートは、錫系触媒をさらに含む、ことが好ましい。
【0026】
斯かる構成によれば、前記トップコートによって形成されたトップコート層から、前記防食層内に前記錫系触媒を移動させることができるので、前記防食層における硬化反応がより一層進行し易くなる。
【0027】
前記防食構造体においては、
前記防食層と対象物との間に介装されて、前記対象物に塗布されるプライマーであって、前記対象物を防食するための防食ペーストとしてのプライマーによって形成されているプライマー層をさらに備え、
前記プライマー層が、シリコーン化合物を含んでいる、ことが好ましい。
【0028】
斯かる構成によれば、前記防食層を前記プライマー層に接触させた状態としたときに、前記防食と前記プライマー層との親和性が比較的高いものとなる。
これにより、前記防食構造体は、前記防食層と前記プライマー層との密着性が比較的高いものとなる。
【0029】
前記防食構造体においては、
前記プライマー層と前記防食層との間に配され、かつ、防食マスチックによって形成されている防食マスチック層をさらに備え、
前記防食マスチック層が、シリコーン化合物を含んでいる、ことが好ましい。
【0030】
斯かる構成によれば、前記防食マスチック層を前記プライマー層及び前記防食層に接触させた状態としたときに、前記防食マスチック層と前記プライマー層及び前記防食層との親和性が比較的高いものとなる。
これにより、前記防食構造体は、前記防食マスチック層と前記プライマー層及び前記防食層との密着性が比較的高いものとなる。
【0031】
前記防食構造体においては、
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下である、ことが好ましい。
【0032】
斯かる構成によれば、前記プライマー層と前記防食層との間に前記防食マスチックを充填して前記防食マスチック層を形成するに際して、比較的充填し易いことに加えて、充填後においては、前記防食マスチック層を比較的十分な保形性を有するものとすることができる。
【0033】
前記防食構造体においては、
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下である、ことが好ましい。
【0034】
斯かる構成によれば、前記プライマー層と前記防食層との間に前記防食マスチックを充填して前記防食マスチック層を形成した後に、前記防食マスチック層を比較的密度の高いものとすることができる。
これにより、前記防食構造体は、より一層耐熱性に優れるものとなる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させ得る防食テープ、及び、該防食テープを備える防食構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防食構造体の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0038】
[防食テープ]
本発明の一実施形態に係る防食テープ(以下、本実施形態に係る防食テープともいう)は、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物(主成分)を含むコンパウンドと、を有する。
【0039】
繊維シートは、一般に、多孔質であり、含浸性及び通水性に優れているので、前記コンパウンドを十分に含浸させることができ、その結果、前記コンパウンドを十分に担持することができる。
【0040】
前記繊維シートを構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維(PPS繊維)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリテトラフルオロエチレン繊維(PTFE繊維)、ナイロン繊維などが挙げられる。
前記PAN系炭素繊維は、ポリアクリロニトリルを酸化性雰囲気中で熱処理して得られる耐炎繊維であってもよい。
前記アラミド繊維としては、メタ系アラミド繊維(m-アラミド繊維)、パラ系アラミド繊維(p-アラミド繊維)を用いることが好ましい。
【0041】
前記繊維シートとしては、不織布を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不織布は、フェルトを含む概念である。
前記不織布としては、坪量(単位面積当たりの質量)が、30g/m2以上150g/m2以下のものを用いることが好ましい。
前記不織布は、太さが1.5デシテックス以上4デシテックス以下の繊維を用いて形成されていることが好ましい。
【0042】
前記不織布としては、スパンボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ、ステッチボンドなどといった各種公知の方法で作製されたものを用いることができる。
上記各種手法で作製された不織布の中でも、繊維シートの長手方向における強度を優れたものとし得る観点から、スパンレース不織布を用いることが好ましく、スパンレース不織布の中でもクロスレイヤー方式で製造されたスパンレース不織布を用いることがより好ましい。
【0043】
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下であることが好ましい。
前記繊維シートとして、上記の特性を有するものを用いることにより、前記防食テープをより耐熱性に優れるものとすることができ、延いては、防食構造体において、前記防食テープによって形成される防食層をより耐熱性に優れるものとすることができる。
前記繊維シートの質量減少率は、300℃に曝す前の前記繊維シートの質量に対する300℃に曝した後の前記繊維シートの質量の減少比率を意味する。
【0044】
本実施形態に係る防食テープは、金属管などの金属製部材の表面にプライマーを塗布すすることによって形成されたプライマー層を覆うように巻き付けられた後、前記コンパウンドを硬化させて使用される。
そのため、前記コンパウンドは、反応硬化性を有している。前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含むことにより、反応硬化性を有するものとすることができる。
前記コンパウンドは、シリコーン化合物を15質量%以上含んでいることが好ましく、25質量%以上含んでいることがより好ましい。
すなわち、前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含んでいることが好ましい。
このようなシリコーン化合物としては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0045】
前記コンパウンドは、室温(23±1℃)においても良好に硬化反応を進行させる観点から、縮合反応によって硬化するものであることが好ましい。そのため、前記シリコーン化合物は、反応基としてシラノール基を備えているか、あるいは、加水分解によってシラノール基となるアルコキシシリル基を備えていることが好ましい。
前記シリコーン化合物は、具体的には、複数の水酸基を分子中に有する鎖状構造または分岐構造を有するシリコーンオイルであることが好ましく、ポリジメチルシロキサンジオールのような両末端に水酸基を有する鎖状シリコーンオイルであることが特に好ましい。
前記シリコーンオイルは、JIS K2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」によって測定される25℃における動粘度が1000mm2/s以上5000mm2/s以下であることが好ましい。
上記のような反応硬化性を有するシリコーン化合物の市販品としては、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)などが挙げられる。
【0046】
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物を架橋させるための架橋剤や、無機充填剤などを含んでいてもよい。
【0047】
前記架橋剤としては、上記したポリジメチルシロキサンジオールなどと脱アルコールによって縮合するシリコーン化合物が挙げられる。このようなシリコーン化合物としては、1以上のアルコキシ基を有するものが好適である。
上記した鎖状構造を有するシリコーンオイルを架橋させるための架橋剤としては、下記一般式(1)で表されるポリアルコキシポリシロキサンを用いることが好ましい。
下記一般式(1)で表されるポリアルコキシポリシロキサンの中でも、エチルシリケートを用いることが特に好ましい。
【0048】
【化1】
(なお、式(1)中のRは、同一の又は異なる炭素数のアルキル基であり、nは1以上100以下の整数である)
【0049】
前記架橋剤の具体名としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、テトラ(ブタノキシム)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、3-クロロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリ(プロパノキシム)シラン、メチルトリ(ペンタノキシム)シラン、メチルトリ(イソペンタノキシム)シラン、ビニルトリ(シクロペンタノキシム)シラン、メチルトリ(シクロヘキサノキシム)シランなどが挙げられる。
前記架橋剤は、メチルポリシロキサンやエチルポリシロキサンなどのアルキルポリシロキサンであってもよい。
【0050】
前記架橋剤として、シランカップリング剤が用いられてもよい。シランカップリング剤としては、アミノ基を有するものが好適に用いられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
前記架橋剤の市販品としては、多摩化学社製の商品名「シリケート45」などが挙げられる。
前記コンパウンドが前記架橋剤を含んでいる場合、その含有量は、前記シリコーン化合物の100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
【0052】
前記架橋剤のアルコキシ基(-OR)と前記シリコーンオイルの水酸基(-OH)などとのモル比(-OR:-OH)は、通常、1:100~100:10の範囲とされ、1:10~10:1の範囲とされることが好ましい。
【0053】
前記無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、雲母状酸化鉄、金属粉などが挙げられる。
前記コンパウンドは、前記無機充填剤として、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムを含んでいることが好ましい。
前記コンパウンドが前記無機充填剤を含んでいる場合、その含有量は、前記シリコーン化合物の100質量部に対して、50質量部以上400質量部以下であることが好ましい。
また、前記コンパウンドが、前記無機充填剤として、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含んでいる場合、水酸化アルミニウムの含有量に対する炭酸カルシウムの含有量の比(炭酸カルシウムの含有量/水酸化アルミニウムの含有量)は、1以上5以下であることが好ましい。
【0054】
また、前記シリコーンオイルと前記無機充填剤とは、質量比率(シリコーンオイル:無機フィラー)が20:80~40:60となるようにコンパウンドに含まれていることが好ましい。
前記シリコーンオイルと前記無機充填剤との合計質量比率は、前記コンパウンドの50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0055】
前記コンパウンドは、含水率が1000ppm以下であることが重要である。前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下であることにより、金属管などのような金属製部材の表面全体にプライマーを塗布することにより形成されるプライマー層に、前記防食テープを巻き付けて防食層を形成し、前記コンパウンドを硬化させるときに、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進を抑制でき、これにより、防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食テープは、防食構造体に備えられると、前記防食構造体に十分な防食性及び耐熱性を発揮させることができる。
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下であることにより、前記コンパウンドを硬化させるときに、防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御される理由について、本発明者らは以下のように考えている。
【0056】
本発明者らの鋭意検討の結果、シリコーン化合物を含むコンパウンドの含水率が比較的高いと(1000ppmを超えるような含水率であると)、前記繊維シートに担持されたコンパウンドのうち、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドよりも、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が速く進行して、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドの硬化が十分に進行し難くなる。
このような現象は、後述する防食構造体のように、防食層の一方側に、前記シリコーン化合物の硬化反応を促進させるための触媒が含まれるプライマー層が積層され、他方側に、前記シリコーン化合物の硬化反応を促進させるための触媒を含まれるトップコート層が積層されている場合には、これらの触媒が前記防食層に移動するときに、より顕著となる。具体的には、前記防食層の表層部において生じた硬化反応によって前記防食層の表層部分が硬化することにより、前記防食層の内部に前記触媒が十分に移動できなくなって、前記防食層の表層部分が選択的に硬化されるようになる。
しかしながら、本実施形態に係る防食テープでは、前記コンパウンドの含水率を1000ppm以下という比較的小さい値としているので、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が促進されることを抑制できていると考えられる。
また、上記のように、前記プライマー層及び前記トップコート層から、前記防食層に前記触媒が移動する場合にも、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が促進されることを抑制できており、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドまで前記触媒を十分に移動させることができていると考えられる。
上記により、本発明者らは、本実施形態に係る防食テープでは、繊維シートに担持された前記コンパウンドの硬化が適切に制御されるので、前記防食テープを備える防食構造体が十分な防食性及び耐熱性を発揮し得るものとなっていると考えている。
【0057】
なお、前記コンパウンドの含水率は、シリコーンオイルなどのようなシリコーン化合物と、前記架橋剤及び前記無機充填剤などとを混練することによって得られたコンパウンドに、熱をかけながら、前記コンパウンド中の水分を揮発させることにより調整することができる。
混練することにより得られたコンパウンドを加熱する温度及び時間は、該コンパウンドに含まれる水分量に応じて適宜選ぶことができる。
【0058】
前記コンパウンドの含水率の測定は、カールフィッシャー滴定法により行うことができる。測定装置および測定条件の詳細は、以下の通りである。
・測定装置:電量滴定式水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、CA-200型)、加熱気化装置(三菱ケミカルアナリテック社製、VA-200型)
・測定条件:加熱気化法(150℃加熱)
・陽極液:アクアミクロンAKX(三菱化学社製)
・陰極液:アクアミクロンCXU(三菱化学社製)
【0059】
前記コンパウンドは、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下であることが好ましい。
【0060】
23℃における粘度の測定は、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて行うことができる。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定する。
・Vが100Pa・s以下(V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
・Vが100Pa・sを上回り、250Pa・s以下(100<V≦150)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:4rpm
・Vが250Pa・sを上回り、1000Pa・s以下(250<V≦1000)の場合
使用するロータの番号:No.7、ロータの回転数:4rpm
【0061】
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物、前記架橋剤、及び、前記無機充填剤以外に、防錆剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、着色剤、及び、防カビ剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0062】
[防食構造体]
次に、本発明の一実施形態に係る防食構造体(以下、本実施形態に係る防食構造体ともいう)について説明する。
本実施形態に係る防食構造体は、2以上の層を有する。
また、
図1に示すように、本実施形態に係る防食構造体100は、金属製部材10の表面に接し、対象物を防食するための防食ペーストとしてのプライマーによって形成されたプライマー層1と、本実施形態に係る防食テープによって形成されている防食層2と、を備える。
さらに、本実施形態に係る防食構造体100は、防食層2よりも外側(プライマー層1側とは反対側)に、トップコートで形成されているトップコート層3をさらに備える。
また、本実施形態に係る防食構造体100は、プライマー層1と防食層2との間に配され、かつ、防食マスチックによって形成されている防食マスチック層4をさらに備える。
【0063】
金属製部材10は、流体物を輸送するパイプラインとして用いられる。金属製部材10は、フランジ部11を有する円筒状の管を複数備えており、管どうしがフランジ部11で接続されて構成されている。隣接する管のフランジ部11どうしは、ボルト12及びナット13で固定されている。すなわち、金属製部材10は、円筒状となっており、また、フランジ部11、ボルト12、ナット13などによって外表面に凹凸が形成されている。
【0064】
本実施形態に係る防食構造体100は、プライマー層1を有することにより、防食層2と金属製部材10との間の隙間を埋めることができ、金属製部材10の腐食を抑制することができる。
プライマー層1は、円筒状の金属製部材10の外表面の全体に、プライマーを薄く塗布することにより形成される。そのため、プライマー層1の外表面には、金属製部材10に形成された凹凸によって、凹凸が形成されている。
【0065】
プライマー層1を形成するためのプライマーは、主剤と硬化剤とを備える。
【0066】
前記主剤は、シリコーン化合物を含む。前記主剤がシリコーン化合物を含むことによって、前記プライマーは耐熱性に優れるものとなる。
前記シリコーン化合物は、主成分(油分)として、前記プライマーに含まれていることが好ましい。主成分(油分)としての前記シリコーン化合物としては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0067】
前記主剤は、23℃における粘度が16Pa・s以上150Pa・s以下であることが重要である。
主剤の粘度が上記数値範囲内であることにより、前記主剤を含むプライマーは、金属製部材10の表面に塗布した後に、金属製部材10の表面からの垂れが比較的生じ難くなることに加えて、金属製部材10の表面に比較的塗り広げ易いものとなる。
これにより、金属製部材10の表面に前記プライマーを比較的均一な厚さを有するように塗布できるので、金属製部材10の表面に比較的均一な厚さのプライマー層1を形成することができる。
その結果、プライマー層1に、防食テープを巻き付けて防食層2を形成することにより、防食構造体100を得たときに、防食構造体100において、プライマー層1を介した金属製部材10への防食層2の密着性を十分に確保することができ、防食層2と金属製部材10との隙間を十分に小さくすることができる。
これにより、防食構造体100に十分な耐熱性を発揮させ得る。
【0068】
前記硬化剤としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート等の有機チタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニル(2-エチルヘキサノエート)、ジルコニウム(2-エチルヘキソエート)等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2-エチルヘキサノエート)等の有機錫化合物;ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、及び、その塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機珪素化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの硬化剤の中でも、前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合や前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合をより進行させ易くなる観点から、有機錫化合物、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫などの錫系触媒を用いることが特に好ましい。
前記錫系触媒の市販品としては、CE621(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE611(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE601(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、ネオスタン U-303(日東化成社製)、ネオスタン U-810(日東化成社製)などが挙げられる。
【0069】
本実施形態に係る防食構造体100において、防食層2は、上記した、本実施形態に係る防食テープによって形成されている。
すなわち、防食層2は、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドとを有し、前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である防食テープによって形成されている。
【0070】
トップコート層3は、トップコートを防食層2の表面に塗布することにより形成することができる。
前記トップコートは、主成分(油分)を含み、前記主成分(油分)はシリコーン化合物を含んでいる。前記主成分(油分)としては、シリコーンオイルを用いることが好ましい。
前記シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルや非反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられ、非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖や片末端、あるいは両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪族アミドなどが付加されたシリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルの市販品としては、信越化学工業社製の商品名「KF96-50cp」や、商品名「KF96-1000cp」などを用いることができる。
【0071】
前記トップコートは、触媒を含んでいることが好ましい。前記触媒としては、シリコーン化合物どうしの脱水縮合を促進させるものが好ましい。
前記トップコートが上記のような触媒を含んでいることにより、前記トップコートによって形成されたトップコート層3から防食層2に前記触媒を移動させて、前記防食層2において、前記コンパウンドに含まれる前記シリコーン化合物の架橋反応の進行を促進させることができる。
【0072】
前記触媒としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート等の有機チタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニル(2-エチルヘキサノエート)、ジルコニウム(2-エチルヘキソエート)等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2-エチルヘキサノエート)等の有機錫化合物;ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、及び、その塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機珪素化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの触媒の中でも、前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合や前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合をより進行させ易くなる観点から、有機錫化合物、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫などの錫系触媒を用いることが特に好ましい。
前記錫系触媒の市販品としては、CE621(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE611(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE601(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、ネオスタン U-303(日東化成社製)、ネオスタン U-810(日東化成社製)などが挙げられる。
【0073】
前記トップコートが錫系触媒のような触媒を含んでいることにより、前記トップコートによって形成されたトップコート層3から、防食層2に錫系触媒のような触媒を移動させることができる。
これにより、防食層2における反応硬化性を有する化合物の硬化反応をより一層進行させ易くなる。
【0074】
前記トップコートは、着色剤、増粘剤などを含んでいてもよい。着色剤の市販品としては、東洋アルミ社製の商品名「アルペースト」を挙げることができ、増粘剤の市販品としては、日本アエロジル社製の商品名「アエロジル130」を挙げることができる。
【0075】
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。
前記トップコートの粘度が上記数値範囲内であることにより、前記トップコートは、防食層2に塗布し易いものとなるので、防食構造体100において、トップコート層3を防食層2上に比較的均一な厚さで形成することができる。
【0076】
23℃における粘度の測定は、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて行うことができる。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定する。
・Vが4Pa・s以下(V≦4)の場合
使用するロータの番号:No.2、ロータの回転数:10rpm
・Vが4Pa・sを上回り、10Pa・s以下(4<V≦10)の場合
使用するロータの番号:No.3、ロータの回転数:10rpm
・Vが10Pa・sを上回り、50Pa・s以下(10<V≦50)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:20rpm
・Vが50Pa・sを上回り、100Pa・s以下(50<V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
【0077】
防食マスチック層4は、プライマー層1の凹凸を小さくすべく、プライマー層1の凹部に防食マスチックを充填することにより形成されている。
本実施形態に係る防食構造体100では、防食マスチック層4は、プライマー層1と防食層2との間の隙間に、前記防食マスチックを充填することにより形成されている。これにより、本実施形態に係る防食構造体100では、金属製部材10の腐食がより一層抑制されている。
【0078】
前記防食マスチックは、主成分(油分)を含んでおり、前記主成分(油分)は、シリコーン化合物を含んでいる。前記主成分(油分)としては、シリコーンオイルを用いることが好ましい。
前記シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0079】
前記防食マスチックは、無機充填剤を含んでいてもよい。前記無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、雲母状酸化鉄、金属粉などが挙げられる。
前記防食マスチックは、軽量化剤や難燃剤を含んでいてもよい。前記軽量化剤としては、シリカバルーンが挙げられ、前記難燃剤としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0080】
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下であることが好ましい。
これにより、前記防食マスチックは、プライマー層1と防食層2との間に充填した防食マスチック層4を形成するに際して、比較的充填し易いことに加えて、充填後においては、防食マスチック層4を比較的十分な保形性を有するものとすることができる。
前記防食マスチックのちょう度は、JIS K2235-1991「石油ワックス 5.10ちょう度試験方法」に基づいて、23℃にて測定される値を意味する。
【0081】
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下であることが好ましい。
質量減少率が20質量%以下であることにより、プライマー層1と防食層2との間に前記防食マスチックを充填して防食マスチック層4を形成した後に、防食マスチック層4を比較的密度の高いものとすることができる。
前記防食マスチックの質量減少率は、300℃に曝す前の前記防食マスチックの質量に対する300℃に24時間曝した後の前記防食マスチックの質量の減少比率を意味する。
【0082】
なお、本発明に係る防食テープ及び防食構造体は、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る防食テープ及び防食構造体は、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る防食テープ及び防食構造体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例0083】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0084】
(防食テープ)
<コンパウンド>
シリコーン化合物A(主成分(油分))、架橋剤としての架橋剤A、並びに、無機充填剤としての炭酸カルシウム(無機充填剤1)及び水酸化アルミニウム(無機充填剤2)を、下記表1に示した質量比率で室温(23±1℃)にて混練して、コンパウンドA~Kを調製した。
コンパウンドA~Kの特性として、23℃における粘度を測定するとともに、表面乾燥性、塗工性、及び、レベリング性について評価した。
【0085】
コンパウンドA~Kの23℃における粘度は、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて測定した。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定した。
・Vが100Pa・s以下(V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
・Vが100Pa・sを上回り、250Pa・s以下(100<V≦150)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:4rpm
・Vが250Pa・sを上回り、1000Pa・s以下(250<V≦1000)の場合
使用するロータの番号:No.7、ロータの回転数:4rpm
【0086】
コンパウンドA~Kの表面乾燥性は、m-アラミド繊維基材(後述する基材B)の一表面にコンパウンドA~Kを塗布し、室温(23±1℃)で24時間放置した後、前記一表面を指で触れたときの指触乾燥性を調べることによって評価した。
なお、コンパウンドA~Kの表面乾燥性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:コンパウンドが指に付着しない(指触乾燥性に優れる)
×:コンパウンドが指に付着する(指触乾燥性に劣る。
【0087】
コンパウンドA~Kの塗工性は、プレス機を用いて防食テープを作製したときの防食テープの成形性の観点から評価した。すなわち、基材へのコンパウンドの塗布性が防食テープの成形性に及ぼす影響の観点から評価した。
具体的には、平面寸法15cm×15cmの各m-アラミド繊維基材(後述する基材B。厚さは、0.3mm~1.5mm)の一表面にコンパウンドA~Kをそれぞれ塗布した後、コンパウンドA~Kを塗布した側に離型紙を配するとともに、これと反対側に厚さ1.1mmのスペーサを配して得た積層体(コンパウンドA~Kが塗布された各積層体)を、テスター産業社製の30トンプレス機を用いて、温度40℃、圧力1・5MPaの条件で圧着させることにより、防食テープを成形したときの成形性に観点から評価した。
なお、コンパウンドA~Kの塗工性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:比較的短時間のプレスで、基材中にコンパウンドを十分に広がった状態で存在させることができ、かつ、プレス成形後に、基材中にコンパウンドを十分に保持できる。
△:プレス成形後に、コンパウンドの一部が基材から容易に流れ出すものの、比較的短時間のプレスで、基材中にコンパウンドを十分に広がった状態で存在させることができる。あるいは、基材中にコンパウンドを十分に広がった状態で存在させるのに比較的長時間を要するものの、プレス成形後に、基材中にコンパウンドを十分に保持できる。
×:プレス成形の圧力で基材が破れてしまう。
【0088】
コンパウンドA~Kのレベリング性は、コンパウンドA~Kをそれぞれ塗布して得た各防食テープを配管に巻き付けたときの基材表面の平滑性を、目視にて評価することにより行った。
具体的には、長さ方向が水平方向に沿うように配した6A鋼管と、他端側に0.5kgの錘を取り付けた防食テープ(コンパウンドA~Kをそれぞれ塗布して得た各防食テープ)とを準備し、前記6A鋼管の上側に前記防食テープの一端側を取り付け、錘による荷重がかかった状態で、重なり部分が生じるように(2重となる部分が生じるように)、前記防食テープを前記6A鋼管に巻き付けたときの、基材表面の平滑性を、目視にて評価することにより行った。
なお、コンパウンドA~Kのレベリング性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:基材中からコンパウンドが滲出することにより、目視上、基材表面が十分に平滑となっている。
△:基材中からコンパウンドが滲出しているものの、目視上、基材表面が十分に平滑とはなっていない。
×:基材から滲出したコンパウンドが滴り落ちており、目視上、基材表面が平滑となっていない。あるいは、基材からコンパウンドが滲出してこず、目視上、基材表面が平滑となっていない。
【0089】
下記表1に、コンパウンドA~Kについての、23℃における粘度の測定結果、並びに、表面乾燥性、塗工性、及び、レベリング性の評価結果を示した。
なお、下記表1において、シリコーン化合物Aは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の商品名「YF3057」であり、架橋剤Aは、多摩化学社製の商品名「シリケート45」である。
【0090】
【0091】
<基材>
コンパウンドA~Hを担持させる基材として、下記表2に示す基材A~Hを準備した。
次に、基材A~Hについて、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率を求めた。その結果について、以下の表2に示した。
300℃で24時間熱処理した後の質量減少比率は、以下のようにして求めた。
(1)基材A~Hの初期重量を測定する。
(2)内温を300℃に調整したオーブン内に基材A~Hを24時間曝した後に、基材A~Hの質量を測定する。
(3)基材A~Hについて、初期質量に対する300℃で24時間曝した後の質量の減少比率を算出する。
【0092】
【0093】
[実施例1]
プラネタリーミキサーを用いて上記表1に示したコンパウンドAを120℃で混練することにより、コンパウンドAの含水率を320ppmの調整した上で、上記表2に示した基材Bに担持させることにより、実施例1に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率は、カールフィッシャー滴定法によって測定した。測定装置および測定条件の詳細は、以下の通りとした。
・測定装置:電量滴定式水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、CA-200型)、加熱気化装置(三菱ケミカルアナリテック社製、VA-200型)
・測定条件:加熱気化法(150℃加熱)
・陽極液:アクアミクロンAKX(三菱化学社製)
・陰極液:アクアミクロンCXU(三菱化学社製)
【0094】
また、実施例1に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性について評価した。
【0095】
テープ加工性は、上記した、コンパウンドの塗工性と同様にして評価した。
テープ加工性の評価結果を以下の表3に示した。
【0096】
200℃処理後のリワーク性は、以下のようにして評価した。
具体的には、まず、ブラスト板(平面寸法7cm×15cm、厚さ:3.2mm)の一表面の全域にプライマー(プライマー主剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「YF3807」を含み、硬化剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「CE611」(錫系触媒)とを含むプライマー)を300g/m2で塗布して、前記ブラスト板上にプライマー層を形成した後に、重なり部分が生じるように(2重となる部分が生じるように)、前記防食テープで前記プライマー層の全域を覆い、前記防食テープ上にトップコートを(主成分(油分)として信越化学工業社製の「KF96-50cp」を含み、触媒としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「CE611」(錫系触媒)とを含むトップコート)を200g/m2で塗布し、室温(23±1℃)にて24時間養生することにより、前記ブラスト板上に防食構造体を得た。
次に、前記ブラスト板上に前記防食構造体が形成された試験体を200℃の恒温器内に入れて、1月間加熱し続けた。
そして、1月後に、前記ブラスト板上における前記防食構造体の状態を目視で確認するとともに、防食テープをブラスト板から剥がせるか否かについて評価することにより、リワーク性を評価した。
なお、リワーク性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:防食構造体の表面は加熱前の状態を維持できており、防食テープをブラスト板から剥がすことができる。
△:防食構造体の表面は加熱前の状態を維持できているものの、防食テープをブラスト板から剥がすことができない(剥がすときにテープが千切れる)。
×:防食構造体の表面は焦げ茶色に変色しており(加熱前の状態を維持できておらず)、防食テープをブラスト板から剥がすことができない。
リワーク性の評価結果を以下の表3に示した。
【0097】
密着性は、前記ブラスト板上に前記防食構造体が形成された試験体を200℃の恒温器内に入れて、1月間加熱し続けた後に、前記ブラスト板に対する前記防食テープの剥離力の測定結果を参照して評価した。
前記ブラスト板に対する前記防食テープの剥離力は、以下のようにして測定した。
(1)前記ブラスト板上に前記防食構造体が形成された試験体を200℃の恒温器内に入れて、1月間加熱し続けた後のものから幅20mmの試験片を切り出す。
(2)前記試験片について、引張試験を行い、前記ブラスト板に対する前記防食テープの剥離力を測定する。
なお、前記引張試験は、引張試験機を用い、室温(23±1℃)下で、剥離速度300mm/minの条件で180°ピール試験にて行った。
密着性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:180℃ピール試験の測定値が5N/20mm以上
×:180℃ピール試験の測定値が3N/20mm以下
密着性の評価結果を以下の表3に示した。
【0098】
耐熱防食性は、前記ブラスト板上に前記防食構造体が形成された試験体を200℃の恒温器内に入れて、1月間加熱し続けた後に、前記試験体について、JIS K 2246:2018に準拠した1000時間の塩水噴霧試験を行い、塩水噴霧試験後の前記試験体(詳しくは、前記ブラスト板)についてのさび発生度を評価することにより行った。
さび発生度の評価は、JIS K 2246:2018の表11に示された等級(A~E)を基準に評価した。
耐熱防食性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:JIS K 2246:2018の表11に示された等級A
△:JIS K 2246:2018の表11に示された等級B~D
×:JIS K 2246:2018の表11に示された等級E
耐熱防食性の評価結果を以下の表3に示した。
【0099】
[実施例2]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を290ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、実施例2に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0100】
[実施例3]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を180ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、実施例3に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0101】
[実施例4]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を140ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、実施例4に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0102】
[実施例5]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を85ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、実施例5に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0103】
[実施例6]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を53ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、実施例6に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0104】
[比較例1]
コンパウンドとして、日東電工社製の商品名「ニトハルマックXG」のコンパウンドを用い、基材として上記表2に示した基材Bを用いた以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る防食テープを作製した。
比較例1に係る防食テープについて、テープ加工性を評価した。
その評価結果について、以下の表3に示した。
【0105】
[比較例2]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を1100ppmに調整した以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調整した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
コンパウンドAの含水率は、実施例1と同様にして測定した。
また、比較例2に係る防食テープについても、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
これらの評価結果について、以下の表3に示した。
【0106】
【0107】
表3より、各実施例に係る防食テープは、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性の項目が、いずれも〇であることが分かった。
これに対し、各比較例に係る防食テープは、上記項目の1つ以上の△があることが分かった。
【0108】
次に、コンパウンド種を変えて作製した防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
【0109】
[実施例7]
上記表1に示したコンパウンドBの含水率を100ppmに調整した上で、上記表2に示した基材Bに担持させることにより、実施例7に係る防食テープを作製した。
コンパウンドBの含水率の調整は、上記のように調製した後のコンパウンドBを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例7に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0110】
[実施例8]
上記表1に示したコンパウンドCの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例8に係る防食テープを作製した。
コンパウンドCの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドCを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例8に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0111】
[実施例9]
上記表1に示したコンパウンドDの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例9に係る防食テープを作製した。
コンパウンドDの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドDを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例9に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0112】
[実施例10]
上記表1に示したコンパウンドEの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例10に係る防食テープを作製した。
コンパウンドEの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドEを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例10に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0113】
[実施例11]
上記表1に示したコンパウンドFの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例11に係る防食テープを作製した。
コンパウンドFの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドFを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例11に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0114】
[実施例12]
上記表1に示したコンパウンドGの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例12に係る防食テープを作製した。
コンパウンドGの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドGを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例12に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0115】
[実施例13]
上記表1に示したコンパウンドHの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例13に係る防食テープを作製した。
コンパウンドHの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドHを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例13に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0116】
[実施例14]
上記表1に示したコンパウンドIの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例14に係る防食テープを作製した。
コンパウンドIの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドIを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例14に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0117】
[実施例15]
上記表1に示したコンパウンドJの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例15に係る防食テープを作製した。
コンパウンドJの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドJを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例15に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0118】
[実施例16]
上記表1に示したコンパウンドKの含水率を100ppmに調整した以外は、実施例7と同様にして、実施例16に係る防食テープを作製した。
コンパウンドKの含水率の調整は、上記のように調整したコンパウンドKを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例16に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表4に示した。
【0119】
【0120】
表4より、各実施例に係る防食テープは、少なくとも、200℃処理後のリワーク性に優れるものであることが分かった。
【0121】
次に、基材種を変えて作製した防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した。
【0122】
[実施例17]
上記表1に示したコンパウンドAの含水率を100ppmに調整した上で、上記表2に示した基材Aに担持させることにより、実施例17に係る防食テープを作製した。
コンパウンドAの含水率の調整は、上記のように調製した後のコンパウンドAを、プラネタリーミキサーを用いて120℃で混練することにより行った。
実施例17に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0123】
[実施例18]
基材として、上記表2に示した基材Cを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例18に係る防食テープを作製した。
実施例18に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0124】
[実施例19]
基材として、上記表2に示した基材Dを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例19に係る防食テープを作製した。
実施例19に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0125】
[実施例20]
基材として、上記表2に示した基材Eを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例20に係る防食テープを作製した。
実施例20に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0126】
[実施例21]
基材として、上記表2に示した基材Fを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例21に係る防食テープを作製した。
実施例21に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0127】
[実施例22]
基材として、上記表2に示した基材Gを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例22に係る防食テープを作製した。
実施例22に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0128】
[実施例23]
基材として、上記表2に示した基材Hを用いた以外は、実施例17と同様にして、実施例23に係る防食テープを作製した。
実施例23に係る防食テープについて、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性を評価した結果を以下の表5に示した。
【0129】
【0130】
表5より、各実施例に係る防食テープは、テープ加工性、200℃処理後のリワーク性、密着性、及び、耐熱防食性の項目のすべてが、△以上の評価であることが分かった。
【0131】
(トップコート)
触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤を、下記表6に示した質量比率で室温にて混合して、実施例24~28に係るトップコート、及び、比較例3及び4に係るトップコートを作製した。
実施例24では、触媒として、錫系触媒である「CE611」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)を用い、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「KF96-50cp」(信越化学工業社製)を用い、着色剤として、「アルペースト」(東洋アルミ社製)を用いた。
実施例25では、触媒、主成分(油分)、及び、着色剤としては、実施例24と同じものを用い、増粘剤として、「アエロジル130」(日本アエロジル社製)を用いた。
実施例26では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例25と同じものを用いた。
実施例27では、触媒、着色剤、及び、増粘剤として、実施例25と同じものを用い、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「KF96-1000cp」(信越化学工業社製)を用いた。
実施例28では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例27と同じものを用いた。
比較例3では、主成分(油分)として、水系樹脂(アクリルエマルション樹脂)を用い、着色剤として、カーボン(大日精化工業社製のBLACK FLTR CONC)及びチタン白(大日精化工業社製のTB807パール)を用いた。
比較例4では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例27と同じものを用いた。
【0132】
各例に係るトップコートについて、23℃における粘度を測定した。
各例に係るトップコートの23℃における粘度は、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件で測定した。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定した。
・Vが4Pa・s以下(V≦4)の場合
使用するロータの番号:No.2、ロータの回転数:10rpm
・Vが4Pa・sを上回り、10Pa・s以下(4<V≦10)の場合
使用するロータの番号:No.3、ロータの回転数:10rpm
・Vが10Pa・sを上回り、50Pa・s以下(10<V≦50)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:20rpm
・Vが50Pa・sを上回り、100Pa・s以下(50<V≦100)の場合
使用するローラの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
【0133】
また、各例に係るトップコートについて、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ性について評価した。
【0134】
テープの硬化性については、ブラスト板(平面寸法7cm×15cm、厚さ:3.2mm)の一表面の全域にプライマー(プライマー主剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「YF3807」を含み、硬化剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「CE611」(錫系触媒)とを含むプライマー)を300g/m2で塗布して前記ブラスト板上にプライマー層を形成した後、重なりが生じるように(2重となる部分が生じるように)、防食テープ(前述の実施例1に係る防食テープ)で前記プライマー層の全域を覆い、その後、前記防食テープ上に、各例に係るトップコートを200g/m2で塗布して、室温(23±1℃)にて24時間養生することによりトップコート層を形成した後、テープ間が密着しているか否かを目視にて観察することによって評価した。
なお、テープの硬化性は、以下の基準にしたがって評価した。
〇:テープ間が密着している。
×:テープ間が密着していない。
【0135】
レベリング性については、トップコートを基体に塗布することにより形成されたトップコート層の表面の凹凸状況を目視にて確認することにより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
〇:塗布後凹凸がなくなって表面が平滑化し、かつ、トップコート層の全体が十分に薄層化される。
△:塗布後凹凸がなくなって表面が平滑化されるものの、トップコート層の一部に薄層化されていない箇所がある。
×:塗布後凹凸がなくならず、表面が平滑にならない。
【0136】
走行性については、刷毛を用いてトップコートを基体に塗布しているときに、作業者がどの程度の抵抗を感じるかと、トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されているか否かを目視にて確認することにより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
〇:トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されておらず、作業者が感じる抵抗感は軽い(すなわち、塗布性が極めて良好である)
△:トップコート層の表面に刷毛によるスジは形成されていないものの、作業者が感じる抵抗感はやや重い(すなわち、塗布性がやや良好である)
×:トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されており、作業者が感じる抵抗感が極めて重い(すなわち、塗布性にかなり劣る)
【0137】
液だれ・液溜り性については、トップコートを基体に塗布した後に、液だれや液溜りが生じているか否かを目視にて観察することにより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
〇:塗布後に液だれや液溜りが発生しない。
△:塗布後に液だれは発生しないものの、局所的に液溜りが発生する。
×:塗布後に基体からトップコートが滴り落ちる。
【0138】
テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性について評価した結果を、以下の表6に示した。
【0139】
【0140】
表6より、各実施例に係るトップコートは、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性、及び、浸透性の項目において、×と評価されるものはなかった。
これに対し、各比較例に係るトップコートは、いずれも、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び液だれ・液溜り性のいずれかの項目において、×と評価されるものがあった。
【0141】
(マスチック)
主成分(油分)、無機充填剤、軽量化剤、及び、難燃剤を、下記表7に示した質量比率で室温にて混合して、実施例29~31に係るマスチック、並びに、比較例5~7に係るマスチックを作製した。
実施例29では、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「YF3057」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製。以下、シリコーン化合物Bともいう)を用い、無機充填剤として、焼成シリカ及び炭酸カルシウムを用い、軽量化剤として、シリカバルーンである「グラスバブルスK46」(スリーエム社製)を用い、難燃剤として、水酸化アルミニウムを用いた。
実施例30、実施例31、比較例6、及び、比較例7では、主成分(油分)、無機充填剤、軽量化剤、及び、難燃剤として、実施例25と同じものを用いた。
比較例5では、主成分(油分)として、イソプレン(出光興産社製のpoly ip)を用い、無機充填剤として、炭酸カルシムを用い、難燃剤として、水酸化アルミニウムを用いた。
【0142】
各例に係るマスチックについて、質量減少率及びちょう度を測定した。
また、各例に係るマスチックについて、スランプ試験を行うとともに、見掛け密度の変化を評価した。
【0143】
質量減少率の測定は、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率を求めることにより行った。
300℃で24時間熱処理した後の質量減少率は、以下のようにして求めた。
(1)各例に係るマスチックの初期質量を測定する。
(2)内温を300℃に調整したオーブン内に、各例に係るマスチックを入れて、24時間曝した後、各例に係るマスチックの質量を測定する。
(3)各例に係るマスチックについて、初期質量に対する300℃で24時間曝した後の質量の減少比率を算出する。
その結果について、以下の表7に示した。
【0144】
ちょう度の測定は、JIS K2235-1991「石油ワックス 5.10ちょう度試験方法」に基づいて、23℃にて行った。
その結果について、以下の表7に示した。
【0145】
スランプ試験は、以下手順にしたがって行った。
(1)マスチックを、直方体状(平面寸法2.5cm×10cm、厚さ2.5cm)に成形する。
(2)2個のL字鋼を、一面側どうしが対向するように50mm離間させた状態で配置し(一面が鉛直方向に立ち上がるほうに配置し)、直方体状に成形したマスチックを、2個のL字鋼の両方に跨るように載置する。
(3)80℃で24時間加熱した後に、マスチックがどの程度垂れているかを測定する。なお、マスチックの垂れは、L字鋼の一面の上端縁を基準として、どの程度垂れているかを測定する。
その結果について、以下の表7に示した。
【0146】
見掛け密度の変化の評価は、見掛け密度の有無があるか否かを判断することにより行った。
見掛け密度変化の有無は、試験治具に載置したマスチックについて、載置した直後の状態と、載置してから80℃で24時間加熱した後の状態とをそれぞれ写真に撮影し、撮影した写真を比較して、目視上、体積がどの程度変化しているか否かで判断した。
具体的には、載置した直後の体積V1に対して、載置してから80℃で24時間加熱した後の体積V2が2/3以下になっているものを体積変化ありとして「有」と評価し、V1に対してV2の体積が2/3を上回っているものと体積変化なしとして「無」と評価した。
その結果について、以下の表7に示した。
【0147】
【0148】
表7より、各実施例に係るマスチックでは、いずれも、見掛け密度の変化が認められず、スランプ試験の結果が、いずれも、10mm以下と良好であった。
これに対し、比較例5に係るマスチックは、スランプ試験の結果は10mm以下と良好であったものの、見掛け密度の変化が認められていた。
また、比較例6及び7に係るマスチックは、見掛け密度の変化は認められなかったものの、スランプ試験を行うための検体(平面寸法2.5cm×10cm、厚さ2.5cm)に成形できなかったため、スランプ試験を行うことすらできなかった。