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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112345
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】電波透過フィルム
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/16 20060101AFI20220726BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220726BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20220726BHJP
   C23C 18/20 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
C23C18/16 A
G02B5/26
C23C18/44
C23C18/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008150
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】397022911
【氏名又は名称】学校法人甲南学園
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保山 大貴
(72)【発明者】
【氏名】村井 盾哉
(72)【発明者】
【氏名】赤松 謙祐
【テーマコード(参考)】
2H148
4K022
【Fターム(参考)】
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA15
4K022AA11
4K022AA15
4K022BA01
4K022BA02
4K022BA03
4K022BA06
4K022BA07
4K022BA08
4K022BA09
4K022BA11
4K022BA12
4K022BA14
4K022BA20
4K022BA21
4K022BA22
4K022BA25
4K022BA26
4K022BA28
4K022CA04
4K022CA16
4K022DA01
4K022DB03
4K022EA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、金色外観を有する電波透過フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成した金属粒子の不連続膜とを有する電波透過フィルムであって、前記樹脂基材の色度が、L*a*b*表色系において、-5≦a*≦5及びb*≧2を満たし、前記金属粒子の不連続膜において、金属粒子間には隙間があり、金属粒子の平均粒径が10nm~200nmであり、前記金属粒子の不連続膜が前記樹脂基材上を覆う面積の割合が65%~95%である、電波透過フィルムに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成した金属粒子の不連続膜とを有する電波透過フィルムであって、
前記樹脂基材の色度が、L*a*b*表色系において、-5≦a*≦5及びb*≧2を満たし、
前記金属粒子の不連続膜において、金属粒子間には隙間があり、金属粒子の平均粒径が10nm~200nmであり、
前記金属粒子の不連続膜が前記樹脂基材上を覆う面積の割合が65%~95%である、
電波透過フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金色外観を有する電波透過フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金色外観を有する金属調フィルムは、製品の表面に高輝度の金属光沢を付与し、高級感を与えることができるため、様々な製品に使用されている。金色外観を有する金属調フィルムは、例えば、金めっきにより作製することができる。しかし、金めっきは高価なAuを用いるため、コストの面で不利である。
【0003】
一方、特許文献1には、Auを用いずにSnを用いて作製した金色外観を有するめっき皮膜が開示されている。しかし、特許文献1に開示されるようなSnを含むめっき皮膜や金めっき皮膜は導電性を有し、電波が遮蔽されるため、電波透過性が必要とされる用途には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-84857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の通り、従来のAuやSnを用いた金色外観を有するめっき皮膜は、電波透過性を示さないため、その用途が限定されることがあった。それ故、本発明は、金色外観を有する電波透過フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した結果、特定の色度を有する樹脂基材上に、金属粒子の平均粒径及び金属粒子の島面積の割合を特定の範囲に制御した金属粒子の不連続膜を形成することにより、電波透過性を確保しつつ、金色外観を有するフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)樹脂基材と、前記樹脂基材上に形成した金属粒子の不連続膜とを有する電波透過フィルムであって、前記樹脂基材の色度が、L*a*b*表色系において、-5≦a*≦5及びb*≧2を満たし、前記金属粒子の不連続膜において、金属粒子間には隙間があり、金属粒子の平均粒径が10nm~200nmであり、前記金属粒子の不連続膜が前記樹脂基材上を覆う面積の割合が65%~95%である、電波透過フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、金色外観を有する電波透過フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の電波透過フィルムの断面模式図を示す。
図2図2は、実施例3のフィルム表面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。
図3図3は、実施例における、Ag粒子の島面積の割合とa*値との関係を示すグラフである。
図4図4は、実施例における、Ag粒子の島面積の割合とb*値との関係を示すグラフである。
図5図5は、実施例における、Ag粒子の島面積の割合とL*値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、電波透過フィルムに関する。本発明の電波透過フィルムは、樹脂基材と、該樹脂基材上に形成した金属粒子の不連続膜とを有する。金属粒子の不連続膜において、金属粒子間には隙間がある。図1に本発明の電波透過フィルムの断面模式図を示す。図1に示されるように、電波透過フィルム10は、樹脂基材1と、樹脂基材1の表面に形成した金属粒子2の不連続膜を有する。各金属粒子2の間には隙間がある。電波透過フィルムは、樹脂基材の両面に金属粒子の不連続膜を有していてもよい。
【0012】
樹脂基材は、色度が、L*a*b*表色系において、-5≦a*≦5及びb*≧2を満たす。この範囲内のa*値及びb*値を有する樹脂基材上に金属粒子の不連続膜を有することで、フィルムが金色外観を示す。樹脂基材の色度は、例えば、分光測色計を用いてSCI方式(正反射光込み)にて測定を行い、分光反射率R(λ)を、物体から反射する波長λの分光放射束と完全拡散反射面から反射する波長λの分光放射束との比(JIS Z 8722)によって求め、分光反射率R(λ)を用いて、国際照明委員会(CIE)が規定するCIE1976(L*、a*、b*)表色系の各指標値L*、a*、b*を算出することにより決定することができる。
【0013】
樹脂基材としては、本発明の特定の範囲内のa*値及びb*値を有する樹脂を用いることができ、例えば、カルボキシル基及び/又はスルホ基に変換可能な基を有する樹脂を用いることができる。樹脂基材としては、特に限定されずに、例えば、ポリイミド、パーフルオロアルキルスルホン酸系ポリマー等を用いることができ、好ましくはポリイミドである。
【0014】
樹脂基材としては、特に限定されずに、樹脂フィルムを用いることができる。樹脂基材の厚さは、通常10μm~5mmであり、好ましくは20μm~800μmである。
【0015】
金属粒子の不連続膜は、樹脂基材上に形成している。金属粒子の不連続膜において、金属粒子間には隙間がある。金属粒子間に隙間があることにより、フィルムが電波透過性を示す。
【0016】
金属粒子を構成する金属は、特に限定されずに、例えば、Ag、Al、Au、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Co及びSnであり、高輝度を有するという観点から、好ましくはAg、Al及びCrであり、より好ましくはAgである。
【0017】
金属粒子の平均粒径は10nm~200nmであり、好ましくは15nm~100nmである。金属粒子の平均粒径が10nm~200nmであると、可視光は反射し、ミリ波等の電波は透過できるため、フィルムが電波透過性を示す。また、金属ナノ粒子の光学的特性は、金属ナノ粒子表面の電子と光の相互作用によって生じ、光の特定の波長(周波数)では、表面プラズモン共鳴(SPR:surface plasmon resonance)と呼ばれる金属ナノ粒子表面上の電子の集団振動現象が起こり、光の強い減光(extinction of light:吸収および散乱)を生じ、発生する光の波長や周波数は、金属ナノ粒子の粒径に強く依存する。本発明の電波透過フィルムにおいて、金属粒子の平均粒径が10nm以上であると、黄色~赤色の光と共鳴することができ、フィルムが金色外観を示す。本発明において、金属粒子の平均粒径は、フィルム表面の走査電子顕微鏡(10万倍)観察画像により測定した、粒子の長径(最大直径)の数平均粒径をいう。
【0018】
金属粒子の不連続膜が樹脂基材上を覆う面積(本明細書において、島面積とも記載する)の割合は、樹脂基材表面の面積を100%として65%~95%であり、好ましくは70%~95%である。金属粒子の不連続膜が樹脂基材上を覆う面積の割合が65%~95%であると、フィルムを上から見ると樹脂基材の色が透けて光学的に金色調となり、フィルムが金色外観を示す。
【0019】
金属粒子の不連続膜が樹脂基材上を覆う面積の割合は、例えば、フィルム表面を走査型電子顕微鏡にて観察し、10万倍の視野の中に存在する全ての金属粒子について、樹脂基材上を覆う面積を画像解析ソフトを用いて算出し、それぞれの金属粒子の島面積の和を10万倍の視野の面積で除して算出することができる。
【0020】
本発明の電波透過フィルムは、樹脂基材上に金属粒子を析出させることにより製造することができる。一実施形態において、金属粒子は、その表面の一部又は全部が樹脂基材に埋まっている。金属粒子の表面の一部又は全部が樹脂基材に埋まっていることにより、金属粒子が容易に剥離せず、金属粒子の密着性が高く、また、耐久性や耐摩耗性も高くなる。
【0021】
本発明の電波透過フィルムは、樹脂基材の表面をアルカリ溶液で処理して、加水分解により、金属イオンとイオン交換可能な官能基を有する改質層を形成するステップ1と、改質層が表面に形成した樹脂基材を金属イオン溶液で処理して、イオン交換により、改質層に金属イオンを導入するステップ2と、金属イオンが導入された層を表面に有する樹脂基材を還元剤で処理して、金属粒子を表面に析出させるステップ3と、樹脂基材を熱処理して、改質層を変換するステップ4を含む方法により製造することができる。
【0022】
ステップ1では、樹脂基材の表面をアルカリ溶液で処理する。この処理により、加水分解により、金属イオンとイオン交換可能な官能基を有する改質層が樹脂基材の表面に形成する。
【0023】
ステップ1において、アルカリ溶液としては、特に限定されずに、例えば、NaOH、KOH、LiOH、CaO及びCa(OH)等が挙げられ、KOHが好ましい。
【0024】
アルカリ溶液の濃度は、通常1M~100Mであり、好ましくは1M~10Mである。
【0025】
アルカリ溶液による処理条件は、処理温度は、通常15℃~60℃であり、好ましくは25℃~60℃であり、処理時間は、通常10秒~15分であり、好ましくは30秒~10分である。
【0026】
ステップ1において、形成した改質層中の金属イオンとイオン交換可能な官能基の密度は、好ましくは1mol/l~10mol/lであり、より好ましくは5mol/l~8mol/lである。
【0027】
ステップ1において、改質層の厚さは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.7μm~1.5μmである。
【0028】
ステップ2では、改質層が表面に形成した樹脂基材を金属イオン溶液で処理する。この処理により、イオン交換により、該官能基が金属イオンで置換され、金属イオンが改質層に導入される。
【0029】
ステップ2において、金属イオン溶液は、該金属イオンを含む溶液であればよい。金属イオン溶液としては、特に限定されずに、金属イオンの塩溶液を用いることができ、塩としては、例えば、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩、酢酸塩及びリン酸塩等が挙げられる。
【0030】
金属イオン溶液の濃度は、通常1mM(mmol/l)~500mMであり、好ましくは50mM~150mMである。
【0031】
金属イオン溶液による処理は、例えば、金属イオン溶液に樹脂基材を浸漬することによって行うことができる。金属イオン溶液による処理条件は、処理温度は、好ましくは10℃~50℃であり、より好ましくは20℃~30℃であり、処理時間は、好ましくは10秒~30分であり、より好ましくは1分~10分である。
【0032】
ステップ3では、金属イオンが導入された改質層を表面に有する樹脂基材を還元剤で処理する。この処理により、金属イオンが、還元剤が存在する改質層表面に拡散し、金属粒子へと還元され、金属粒子の不連続膜が改質層上に形成される。一実施形態において、析出した金属粒子は、各金属粒子の一部又は全部が改質層(樹脂基材の表面)に埋まった状態となり、容易に剥離しない。
【0033】
還元剤としては、特に限定されずに、リン酸系化合物、水素化ホウ素化合物及びヒドラジン誘導体等を挙げることができる。リン酸系化合物としては、次亜リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等が挙げられる。また、水素化ホウ素化合物としては、メチルヘキサボラン、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン、モルホリンボラン、ピリジンアミンボラン、ピペリジンボラン、エチレンジアミンボラン、エチレンジアミンビスボラン、t-ブチルアミンボラン、イミダゾールボラン、メトキシエチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。また、ヒドラジン誘導体としては、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン塩や、ピラゾール類、トリアゾール類、ヒドラジド類等のヒドラジン誘導体等を用いることができる。これらの中で、ピラゾール類としては、ピラゾールの他に、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-ピラゾロン等のピラゾール誘導体を用いることができる。また、トリアゾール類としては、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等を用いることができる。また、ヒドラジド類としては、アジピン酸ヒドラジド、マレイン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド等を用いることができる。還元剤は、好ましくはジメチルアミンボラン(DMAB)である。
【0034】
還元剤による処理は、例えば、樹脂基材を還元剤溶液に浸漬することによって行うことができる。還元剤溶液の濃度は、好ましくは0.01mM~1mMであり、より好ましくは0.1mM~0.8mMであり、特に好ましくは0.2mM~0.7mMである。還元剤による処理条件は、処理温度は、好ましくは10℃~60℃であり、より好ましくは20℃~50℃であり、特に好ましくは40℃~50℃であり、処理時間は、好ましくは10秒~30分であり、より好ましくは30秒~5分である。このような還元条件を適用することにより、金属粒子の平均粒径及び島面積の割合を本発明の特定の範囲内に制御することができる。
【0035】
ステップ4では、樹脂基材を熱処理して、改質層を変換する。一実施形態において、改質層がカルボキシル基及び/又はスルホ基を含む場合、熱処理により、これらの基が脱水されて樹脂基材に変換される。熱処理温度は、通常100℃~300℃である。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、樹脂基材はポリイミドであり、金属粒子はAg粒子である。この実施形態において、電波透過フィルムは、ポリイミド樹脂基材の表面をアルカリ溶液(例えば、KOH)で処理して、ポリイミドを加水分解して、カルボキシル基を有するポリアミック酸層を樹脂基材の表面に形成するステップ1と、ポリアミック酸層が表面に形成したポリイミド樹脂基材をAgイオン溶液(例えば、硝酸銀溶液)で処理して、イオン交換により、カルボキシル基のHをAgイオンで置換し、Agイオンをポリアミック酸層に導入するステップ2と、Agイオンが導入されたポリアミック酸層を表面に有するポリイミド樹脂基材を還元剤(例えば、ジメチルアミンボラン)で処理して、Ag粒子をポリアミック酸層の表面に析出させるステップ3と、熱処理により、ポリアミック酸層をポリイミドに変換するステップ4を含む方法により製造することができる。
【0037】
本発明の電波透過フィルムは、金色外観及び電波透過性を両立することができ、電波透過性が必要な製品用の金色外観を示すフィルムとして用いることができる。
【実施例0038】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1
樹脂基材として、表1に示すa*値及びb*値を有する厚さ50μmのポリイミドフィルム(東レデュポン製、カプトン200H)を使用した。ポリイミドフィルムのサイズは5cm×5cmとした。
【0040】
ポリイミドフィルムを5MのKOH溶液に50℃で1分間浸漬して、ポリイミドフィルムの表面を加水分解して、ポリアミック酸層を形成した。
【0041】
硝酸銀(AgNO)(ナカライテスク社製 31018-14)を純水に溶解して、100mMのAgNO溶液を調製した。フィルムを水洗した後、調製したAgNO溶液に室温(25℃)で5分間浸漬して、イオン交換により、ポリアミック酸層にAgイオンを導入した。
【0042】
還元剤としてジメチルアミンボラン(DMAB)(Wako製 028-08401)を純水に溶解して、0.2mMのDMAB溶液を調製した。フィルムを水洗した後、DMAB溶液に50℃で2分間浸漬して、Agイオンを還元して、Ag粒子をポリイミドフィルムの表面に析出させた。フィルムを水洗し、200℃で熱処理をして、ポリアミック酸をポリイミドに変換し、Ag粒子の不連続膜がポリイミドフィルムの表面に形成したフィルムを得た。
【0043】
実施例2
DMAB溶液による還元処理温度を40℃に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2のフィルムを得た。
【0044】
実施例3
DMAB溶液の濃度を0.6mMに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3のフィルムを得た。
【0045】
実施例4
DMAB溶液の濃度を0.5mMに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4のフィルムを得た。
【0046】
実施例5
基材のポリイミドフィルムのa*値及びb*値を表1に示すように変更し、DMAB溶液の濃度を0.7mMに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5のフィルムを得た。
【0047】
比較例1
DMAB溶液による還元処理温度を30℃に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1のフィルムを得た。
【0048】
比較例2
DMAB溶液の濃度を1.0mMに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2のフィルムを得た。
【0049】
比較例3
DMAB溶液の濃度を0.15mMに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3のフィルムを得た。
【0050】
比較例4
基材のポリイミドフィルムのa*値及びb*値を表1に示すように変更し、DMAB溶液の濃度を0.55mMに変更した以外は実施例1と同様にして、比較例4のフィルムを得た。
【0051】
比較例5
比較例5として、ポリイミド上に金めっきをしたフィルムを用いた。
【0052】
図2に、実施例3のフィルム表面のSEM(走査型電子顕微鏡)画像を示す。図2に示されるように、ポリイミドフィルムの表面にはAg粒子が島状に析出しており、海島構造を形成し、Ag粒子間には隙間があった。
【0053】
実施例1~5及び比較例1~5のフィルムについて、Ag粒子の平均粒径、Ag粒子の不連続膜がポリイミドフィルム基材の表面を覆う面積(島面積)の割合、色差及びミリ波減衰量を以下の通りにして測定した。
【0054】
Ag粒子の平均粒径・島面積の割合
フィルム表面を日立ハイテク社製走査電子顕微鏡S-4800にて観察し、10万倍の視野の中に存在する全てのAg粒子の粒径と島面積を画像解析ソフトImageJを用いて算出し、粒径についてはその平均値を算出し、島面積の割合についてはそれぞれの粒子の島面積の和を10万倍の視野の面積で除して算出した。
【0055】
色差(L*値、a*値及びb*値)
分光測色計として、村上色彩技術研究所製CMS-35SPを用い、SCI方式(正反射光込み)にて測定を行い、分光反射率R(λ)を、物体から反射する波長λの分光放射束と完全拡散反射面から反射する波長λの分光放射束との比(JIS Z 8722)によって求めた。
【0056】
計算した分光反射率R(λ)を用いて、国際照明委員会(CIE)が規定するCIE1976(L*、a*、b*)表色系の各指標値L*、a*、b*を算出した。L*値は色の明度を示す指標であり、L*値が大きいほど色が明るいことを示す。a*値は色の赤と緑の色相に対する強度を示す指標であり、a*値が大きいほど(正の値)赤の色相を示し、a*値が小さいほど(負の値)緑の色相を示す。b*値は黄と青の色相に対する強度を示す指標であり、b*値が大きいほど(正の値)黄の色相を示し、b*値が小さいほど(負の値)青の色相を示す。L*≧57、-5≦a*≦5及びb*≧10を、フィルムが金色外観を示す合格基準とした。
【0057】
ミリ波減衰量
車載用のミリ波レーダの適用周波数である77GHzでの電波透過損失を測定した。
【0058】
実施例1~5及び比較例1~5のフィルムの詳細及び評価結果を表1に示す。また、図3に、Ag粒子の島面積の割合とa*値との関係を示す。また、図4に、Ag粒子の島面積の割合とb*値との関係を示す。また、図5に、Ag粒子の島面積の割合とL*値との関係を示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1及び図3~5に示されるように、ポリイミドフィルム基材のa*値及びb*値、並びにAg粒子の平均粒径及び島面積の割合が本発明の特定の範囲内である実施例1~5のフィルムは、金色外観を与えるL*値、a*値及びb*値を有し、目視で確認しても金色外観を示し、また、優れたミリ波透過性を示した。
【0061】
一方、Ag粒子の島面積の割合が本発明の特定の範囲未満である比較例1のフィルムでは、フィルムのL*値及びb*値が低くなり、金色外観を示さなかった。
【0062】
Ag粒子の島面積の割合が本発明の特定の範囲を超える比較例2のフィルムでは、Ag粒子の島の間からポリイミドフィルム基材の色を見ることが困難になり、フィルムのb*値が低くなり、金色外観を示さなかった。
【0063】
Ag粒子の平均粒径が10nm未満である比較例3のフィルムでは、表面プラズモン吸収により、吸収波長が長波長側にシフト(レッドシフト)し、赤色が吸収されるので色としては青に見え、すなわち、フィルムのb*値が低くなり、金色外観を示さなかった。
【0064】
ポリイミドフィルム基材のa*値及びb*値が本発明の特定の範囲外である比較例4のフィルムでは、フィルムのb*値が低くなり、金色外観を示さなかった。
【符号の説明】
【0065】
10:電波透過フィルム、1:樹脂基材、2:金属粒子
図1
図2
図3
図4
図5