IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンプラスの特許一覧 ▶ 株式会社 MONOPOSTの特許一覧

特開2022-112362中空翼構造の成形方法および中空翼構造
<>
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図1
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図2
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図3
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図4
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図5
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図6
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図7
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図8
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図9
  • 特開-中空翼構造の成形方法および中空翼構造 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112362
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】中空翼構造の成形方法および中空翼構造
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/12 20060101AFI20220726BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20220726BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220726BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20220726BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220726BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220726BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220726BHJP
   B29L 22/00 20060101ALN20220726BHJP
【FI】
B29C43/12
B29C43/32
B29C70/16
B29C70/44
B33Y10/00
B33Y80/00
B29K105:08
B29L22:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008176
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(71)【出願人】
【識別番号】516092913
【氏名又は名称】株式会社 MONOPOST
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 勝利
(72)【発明者】
【氏名】手塚 通彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 倫靖
【テーマコード(参考)】
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG07
4F204AH31
4F204AJ08
4F204AM28
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ15
4F204FQ37
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG07
4F205AH31
4F205AJ08
4F205HA09
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HC05
4F205HC17
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK31
4F205HM13
(57)【要約】
【課題】外観性に優れ、破損しにくい中空翼構造の成形方法、それによって得られる中空翼構造を提供する。
【解決手段】中空翼構造の成形方法は、中空で翼形状の中子に対して複数のプリプレグを巻き付けて積層することでプリプレグ成形体を得る積層工程S1と、プリプレグ成形体を軟質気密容器の内部に存在させて軟質気密容器を封止する封止工程S2と、封止した軟質気密容器を排気することでプリプレグ成形体と軟質気密容器を密着させ、さらに加熱することで中空翼構造を成形する成形工程S3と、を含み、積層工程S1において、各層のプリプレグは両端が接するように巻き付けられ、プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空で翼形状の中子に対して複数のプリプレグを巻き付けて積層することでプリプレグ成形体を得る積層工程と、
前記プリプレグ成形体を軟質気密容器の内部に存在させて前記軟質気密容器を封止する封止工程と、
封止した前記軟質気密容器を排気することで前記プリプレグ成形体と前記軟質気密容器を密着させ、さらに加熱することで中空翼構造を成形する成形工程と、を含み、
前記積層工程において、各層の前記プリプレグは両端が接するように巻き付けられ、
前記プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置される、中空翼構造の成形方法。
【請求項2】
前記プリプレグは、強化用繊維として炭素繊維を含有する、請求項1に記載の中空翼構造の成形方法。
【請求項3】
前記中子は、3Dプリンタで造形した立体造形物である、請求項1または2に記載の中空翼構造の成形方法。
【請求項4】
中空で翼形状の中子と、
前記中子に結着した複数のプリプレグの層と、
を含み、
各層の前記プリプレグは両端が接するように巻き付けられ、
前記プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置されている、中空翼構造。
【請求項5】
前記中子は、3Dプリンタで造形した立体造形物である、請求項4に記載の中空翼構造。
【請求項6】
前記プリプレグは、強化用繊維として炭素繊維を含有する、請求項4または5に記載の中空翼構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空翼構造の成形方法および中空翼構造に関する。
【背景技術】
【0002】
小型回転翼無人航空機のロータのブレードに用いられる回転翼などの翼は、繊維強化樹脂の成形によって製造されている。
【0003】
繊維強化樹脂の成型品は、樹脂原料に炭素繊維やグラスファイバーなどの繊維を混合することで、樹脂成型品の強度が強化される。繊維強化樹脂成形品の製造方法としては、プレス成型法、オートクレーブ法、それを改良したものが知られている。
【0004】
プレス成型法(RTM法)においては、シート状繊維品を、製造する樹脂成形品の形状に対応する雌雄一対の金型の間に配置し、キャビティに樹脂成分を注入して硬化することで繊維強化樹脂成形品を得る。
【0005】
例えば、特許文献1には、翼形状の内面を有する型の内部に網状繊維シートを押し付けて略翼形状に粗成形し、その後、粗成形した網状繊維シートの内部に繊維材より小さなチョップ材を注入し、その後、樹脂材料を型内に注入する翼の製造方法が記載されている。
【0006】
この方法で製造された翼は、外側に網状繊維シートを樹脂材料でくるんだ繊維強化樹脂製の外皮部材を有し、内側にチョップ材を樹脂材料でくるんだチョップ強化樹脂製の芯部材を有し、網状繊維シートとチョップ材が同じ樹脂材料で同時にくるまれている。
【0007】
オートクレーブ法においては、プリプレグを、製造する成形品に対応する金型の上に配置し、金型とプリプレグを気密性の袋に入れ、その袋ごとオートクレーブに入れて加圧しかつ袋内を減圧することで金型とプリプレグを密着させながら加熱し、プリプレグ中の熱硬化性樹脂を硬化させて繊維強化樹脂成形品を得る。
【0008】
例えば、特許文献2には、複数の中空部と、これらの各中空部を区画する中間桁とを含む航空機翼構造の成形方法であって、下型に下側外皮用プリプレグを積層し、その上に複数の中空構造物用プリプレグ成形体を並列に隣接させて載置し、その上に上側外皮用プリプレグを積層し、この後に、これらを真空バッグで覆い、この真空バッグ内を真空引きするとともに加圧・加熱することで前記翼構造を一体成形する航空機翼構造の成形方法が記載されている。
【0009】
この成形方法では、中空構造物用プリプレグ成形体は、それぞれに対応する成形型にプリプレグを両端部が重なる形で巻き付けるように形成され、その重なり部が前記中間桁の領域に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-161703号公報
【特許文献2】特開2011-152753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
小型回転翼無人航空機のロータのブレードに用いられる回転翼などの翼には、空力的な観点から平滑な表面が要求される。外表面に凹凸段差があると空気抵抗が増大するとともに外観性が低下するためである。
【0012】
特許文献1に記載の翼の製造方法では、型が、腹側の型と背側の型に、分割されており、網状繊維シート粗成形ステップは腹側の型と背側の型で別個に行われ、チョップ材注入ステップと、樹脂注入ステップは腹側の型と背側の型を合わせてから行われている。
【0013】
そのため、この方法で製造された翼は、外皮部材が上型と下型に分割されており、接続部が前端と後端に生じる。そして、翼では後端部分に乱流による外力が発生するため、この方法で製造された翼は、この外皮部材の接続部から破損する恐れがあるという問題がある。
【0014】
また、特許文献2に記載の翼構造の成形方法では、プリプレグの重なり部が翼外表面に配置されている。
【0015】
そのため、段差によって空気抵抗が増加する、飛行性能が低下する、外観性が低下するという問題がある。
【0016】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、外観性に優れ、破損しにくい中空翼構造の成形方法、それによって得られる中空翼構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明の第一の観点に係る中空翼構造の成形方法は、
中空で翼形状の中子に対して複数のプリプレグを巻き付けて積層することでプリプレグ成形体を得る積層工程と、
前記プリプレグ成形体を軟質気密容器の内部に存在させて前記軟質気密容器を封止する封止工程と、
封止した前記軟質気密容器を排気することで前記プリプレグ成形体と前記軟質気密容器を密着させ、さらに加熱することで中空翼構造を成形する成形工程と、を含み、
前記積層工程において、各層の前記プリプレグは両端が接するように巻き付けられ、
前記プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置される。
【0018】
前記プリプレグは、強化用繊維として炭素繊維を含有する、と好ましい。
【0019】
前記中子は、3Dプリンタで造形した立体造形物である、と好ましい。
【0020】
本発明の第二の観点に係る中空翼構造は、
中空で翼形状の中子と、
前記中子に結着した複数のプリプレグの層と、
を含み、
各層の前記プリプレグは両端が接するように巻き付けられ、
前記プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置されている。
【0021】
前記中子は、3Dプリンタで造形した立体造形物である、と好ましい。
【0022】
前記プリプレグは、強化用繊維として炭素繊維を含有する、と好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、外観性に優れ、破損しにくい中空翼構造の成形方法、それによって得られる中空翼構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一の実施形態に係る中空翼構造の成形方法の流れ図。
図2】第一の実施形態に係る中空で翼形状の中子の概略図。
図3】第一の実施形態に係るプリプレグの概略図。
図4】第一の実施形態に係るプリプレグ成形体の概略図。
図5】第一の実施形態に係る積層工程の一層目を示す概略図。
図6】他の実施形態に係るプリプレグ成形体の概略図。
図7】第一の実施形態に係る封止工程を示す概略図。
図8】第一の実施形態に係る成形工程の排気を示す概略図。
図9】第一の実施形態に係る成形工程の加熱を示す概略図。
図10】第一の実施形態に係る取出操作を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る中空翼構造の成形方法について、図を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
成形方法は、図1に示すように、積層工程S1と、封止工程S2と、成形工程S3とを少なくとも含む。以下各工程について詳細に説明する。
【0027】
(積層工程S1)
積層工程S1では、図2に示す中空で翼形状の中子1に対して図3に示す複数のプリプレグ2を巻き付けて積層することで図4に示すプリプレグ成形体3を得る。
【0028】
中子1は、中空翼構造の形状の元になるものであり、中空で翼形状である。また、中子1は、積層工程S1、封止工程S2および成形工程S3で変形しない程度の強度があれば組成は特に限定されない。組成としては、樹脂、セラミック、紙、金属、木質材などが挙げられる。中子1の形状は、図2に示すような空洞部分が形成されているが、後述する、封止工程S2において空洞部分に粉体を充填する出入り口を有する形状であることが好ましい。中子1に空洞部分があると得られる中空翼構造が軽量化できる。
【0029】
中子1は、その製造方法によっては限定されないが、例えば、3Dプリンタで造形することが好ましい。3Dプリンタで造形することで、従来の金型では成形することが困難な複雑な形状の立体造形物を成形することができる。また、少量生産にも好適である。
【0030】
プリプレグ2は、図3に示すとおり、強化用繊維4とマトリクス樹脂5を含有するシート状の繊維強化樹脂基材である。
【0031】
強化用繊維4は、プリプレグ2中で一方向に並んでいても、平織、綾織、朱子織などの織物状で存在していても、無秩序に分散していてもよい。
【0032】
強化用繊維4としては、成形工程S3の加熱温度で劣化しない繊維であれば特に限定されず、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェンシート、セルロースナノファイバー、ガラス繊維、鉱物繊維などが挙げられる。中でも、得られる繊維強化樹脂成形品の強度の点で、炭素繊維が好ましい。強化用繊維4のサイズは特に限定されないが、例えば繊維長が数百nm以上数mm以下の繊維を用いることができる。
【0033】
強化用繊維4は、一種単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0034】
マトリクス樹脂5は、積層工程S1においては柔軟性を有し、成形工程S3で結着できる樹脂であれば特に限定されないが、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の半硬化樹脂や、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、アクリル系樹脂、AN系共重合体系樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0035】
マトリクス樹脂5は、プリプレグ2中において、繊維と繊維の間、繊維の周囲にマトリクス(母材)として存在する。
【0036】
プリプレグ2としては、強化用繊維4にマトリクス樹脂5を含浸させてシート状にした、市販品を用いることができる。より詳しくは、プリプレグ2は、強化用繊維4に熱硬化性樹脂を含浸させ、加熱又は乾燥して半硬化状態にした樹脂のシート、または、強化用繊維に溶融した熱可塑性樹脂を含浸させ、その熱可塑性樹脂を固化したシートである。例えば、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastic:CFRP)の熱硬化性樹脂プリプレグとして東レ株式会社のトレカ(登録商標)やCFRPの熱可塑性樹脂プリプレグとして日鉄ケミカル&マテリアル株式会社のTEPreg(登録商標)等の各種プリプレグを用いることができる。プリプレグ2の厚みは特に限定されないが、例えば0.07mm以上0.2mm以下である。
【0037】
積層工程S1において、プリプレグ2は両端6が接するように巻き付けられるので、プリプレグ2は、中子1の形状や凹凸に合わせて、予め超音波カッターなどで切断したものを用いることができる。プリプレグ2は、巻き付けた際に、両端6が接するように加工しておく。
【0038】
図5は、積層工程S1の一層目の積層を示す概略図である。中空で翼形状の中子1に対して一層目のプリプレグ2を巻き付けて積層している。翼の前側および後側でプリプレグ2の巻き込みを行い両端6が接するように巻き付けている。二層目以降も同様に、翼の前側および後側でプリプレグ2の巻き込みを行い両端6が接するように巻き付けるが、プリプレグ2の両端6の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置する。
【0039】
翼の前側および後側でプリプレグ2の巻き込みを行うことで、得られる中空翼構造の前端と後端が破損する可能性を下げることができる。
【0040】
また、図6に示す通り、プリプレグ2の最外層のみ、意匠性を考慮して、プリプレグ2の両端6を、翼の後側に配置することもできる。
【0041】
中子1とプリプレグ2とが直接接触した状態で積層を行うと、後述する成形工程S3で、中子1とプリプレグ2を結着することができる。
【0042】
中子1に対してプリプレグ2を巻き付けて積層する際には、必要とされる強度により、外側面と空筒部分の内側面のいずれか一方又は両面を被覆することができる。
【0043】
プリプレグ2の積層数は複層であれば適宜選択することができる。図3では、プリプレグ2の積層数は3である。
【0044】
(封止工程S2)
封止工程S2では、図7に示すように、プリプレグ成形体3を軟質気密容器7の内部に存在させて軟質気密容器7を封止する。
【0045】
図7では、排気口8を備える軟質気密容器7の内部に、プリプレグ成形体3と粉体9とを、軟質気密容器7の内側面とプリプレグ成形体3との間に粉体9が存在するように充填して封止する。
【0046】
軟質気密容器7は、プリプレグ成形体3と粉体9を収納できる大きさであり、軟質気密容器7の外側と内側で圧力を伝達できる柔軟性を備える材質であれば特に限定されない。例えば、図7に示すような耐熱性ビニール袋や、チューブの一端を閉じたチューブ容器などを用いることができる。袋の口は、プリプレグ成形体3と粉体9の出入り口になるとともに、管を挟んで閉じることで排気口8として機能する。このようにプリプレグ成形体3等の出入り口を排気口8として共用することができるが、プリプレグ成形体3等の出入り口と異なる部分に別途排気口8を設けることもできる。
【0047】
粉体9は、流動性と熱伝導性があれば、大きさ、形状、材質は特に限定されない。粉体9としては、例えば、平均粒径1~200μmの有機粉体又は無機粉体を用いることができる。粉体9は、一種単独で用いることができ、又、粒径、形状などの異なる複数種の粉体9を用いることできる。粉体9として粒径の異なる複数種の粉体からなる混合物を用いると、軟質気密容器7中での充填性に優れ、かつ脱気の際に同伴する粉体9を減らすことができるので好ましい。
【0048】
封止工程S2において、粉体9に加えて他の部材を充填することができる。他の部材としては、チョップドファイバーや、熱膨脹材などが挙げられる。
【0049】
チョップドファイバーを用いる場合には、繊維径が1~20μm、長さ0.5~5mmにカットしたチョップドファイバーが好ましい。
【0050】
熱膨脹材としては、熱膨張性マイクロカプセルが挙げられる。熱膨脹材を用いると、成形工程S3の際に熱膨脹材が熱で膨脹し、軟質気密容器7の中の圧力を高めてプリプレグ2の中子1の形状への追随性を向上させることができる。熱膨脹材は、粉体9と均一に混合して用いることができる。また、粉体9を再利用する観点で、熱膨脹材を伸縮性のある包装フィルムなどで包装してスティック形状にして、粉体9と共に軟質気密容器7内に配置することが好ましい。
【0051】
プリプレグ成形体3と粉体9との間には、薄い紙などの離形材を配置することができる。離形材を配置することで取り出す際に粉体9の除去が容易になる。離形材としては、フッ素樹脂フィルムやシリコーンフィルムなどのフィルム類が用いられる。
【0052】
軟質気密容器7にプリプレグ成形体3と粉体9とを、軟質気密容器7の内側面と前記積層体との間に粉体9が存在するように充填して封止する方法としては、例えば、軟質気密容器7にプリプレグ成形体3を入れて、プリプレグ成形体3の空筒部分とプリプレグ成形体3の周囲に粉体9を充填し、プリプレグ成形体3と粉体9の出入り口(排気口8)に管を挟み込んで封止する(図7参照)。
【0053】
(成形工程S3)
成形工程S3では、図8に示すように、封止した軟質気密容器7を排気することで中子1とプリプレグ2とが密着した状態で軟質気密容器7内を加熱してプリプレグ2を中子1と結着させる。
【0054】
封止した軟質気密容器7の排気口8からガス10(空気)を排気すると、外気圧11で軟質気密容器7が収縮し、その外気圧11が軟質気密容器7及び粉体9を通して中子1とプリプレグ2とを密着させる。粉体9が存在することで、中子1の凸部分が軟質気密容器7に直接接触して軟質気密容器7が破壊されることを防ぐとともに、外気圧11をプリプレグ2の凹部分を含む全面に均等に伝えて中子1とプリプレグ2との間の隙間を埋めて密着させる。粉体9は、圧及び熱を伝えるとともに、排気の際にはガス流路として機能する。
【0055】
排気は、減圧ポンプ12などで排気口8から直接行うことができるが、図8に示すように減圧ポンプ12と排気口8の間に、同伴した粉体9を捕捉するトラップ13を設けることが好ましい。
【0056】
軟質気密容器7内の加熱は、図9に示すように、中子1とプリプレグ2とが密着した状態の軟質気密容器7をオーブン14に入れて行うことができる。また、軟質気密容器7の内部にヒータを配置して加熱することもできる。
【0057】
加熱温度は、プリプレグ2が結着する温度であれば特に限定されず、用いるマトリクス樹脂5の種類によって適宜選択できる。例えば、常温以上200℃以下とすることができる。
【0058】
前述の排気は、加熱中にも行うことが好ましい。プリプレグ2の結着の際にガスが発生することがあるが、そのガスを排気することで、中子1とプリプレグ2の密着を保つことができる。
【0059】
プリプレグ2が結着することで、プリプレグ成形体3の中子1とプリプレグ2とが一体となった中空翼構造15となる。
【0060】
図10に示すように、軟質気密容器7から中空翼構造15を取り出すとともに粉体9を取り除き、中空翼構造15を得る。
【0061】
取り除いた粉体9、軟質気密容器7は再利用することができる。
【0062】
中空翼構造15中のプリプレグ2は、中子1の表面凹凸のアンカー効果などにより、中子1と強固に結着している。従って、中空翼構造15中の中子1は取り除く必要はないが、研磨することなどで除去することも可能である。
【0063】
中空翼構造15は、中空で翼形状の中子と、前記中子に結着した複数のプリプレグ2の層と、を含み、各層のプリプレグ2は両端6が接するように巻き付けられ、前記プリプレグの両端の接合部分は各層ごとに異なる領域に配置されている。
【0064】
中空翼構造15は、中子1の形状で、用いる繊維強化樹脂の強度をそのまま備えるので、様々な形状、大きさのものを製造することができ、様々な用途に使用することができる。
【0065】
また、中空翼構造15は、段差による空気抵抗の増加が生じず、外観性に優れ、プリプレグ2の接続部が前端と後端に生じないので破損しにくい。
【0066】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0067】
1 中子
2 プリプレグ
3 プリプレグ成形体
4 強化用繊維
5 マトリクス樹脂
6 両端
7 軟質気密容器
8 排気口
9 粉体
10 ガス
11 外気圧
12 減圧ポンプ
13 トラップ
14 オーブン
15 中空翼構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10