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特開2022-112363蒸解促進剤、及び蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112363
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】蒸解促進剤、及び蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/00 20060101AFI20220726BHJP
【FI】
D21C3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008177
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】田中 多加志
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA03
4L055AB02
4L055AB04
4L055AB05
4L055AB19
4L055AG35
4L055AG42
4L055AG44
4L055AG45
4L055AG47
4L055AG52
4L055BA18
4L055BA19
4L055BA20
4L055BA21
4L055EA32
4L055FA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】蒸解の効率をさらに高めた蒸解促進剤、及び該蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法を提供する。
【解決手段】蒸解促進剤は、第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む。パルプの製造方法は、リグノセルロースを含む材料に、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び前記蒸解促進剤を加えて、前記材料を蒸解する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表される第四級アンモニウム化合物と、
糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む蒸解促進剤。
【化1】
ここで、Rは炭素数5~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のアルケニル基、又は炭素数5~22のヒドロキシアルケニル基である。
は炭素数1~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。
は炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。
は炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。
p-は、無機アニオン、又は有機アニオンである。
Nは窒素原子を示す。Xp-は対イオンを示す。pはイオンの価数を示す。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子又はアシル基である。e、f、及びgはアルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~40の数である。R、R、及びRに炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、(AO)Y基、(AO)Y基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数と、eと、fと、gとの総和が1~40である。
【請求項2】
前記第四級アンモニウム化合物と、前記糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、の比率が1:99~99:1である、請求項1に記載の蒸解促進剤。
【請求項3】
前記糖類が、単糖類、多糖類、及び前記多糖類の変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の蒸解促進剤。
【請求項4】
前記単糖類が、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、及びアラビノースからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項3に記載の蒸解促進剤。
【請求項5】
前記多糖類が、澱粉、寒天、グリコーゲン、グアガム、セルロース、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、プルラン、ローカストビーンガム、及びデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項3に記載の蒸解促進剤。
【請求項6】
前記タンニン類が、加水分解型タンニン、縮合型タンニン、前記加水分解型タンニンが加水分解されて得られるポリフェノール化合物、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の蒸解促進剤。
【請求項7】
リグノセルロースを含む材料に、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、前記材料を蒸解する工程を含む、パルプの製造方法であって、
前記蒸解促進剤が、請求項1から6のいずれか1項に記載の蒸解促進剤である、パルプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸解促進剤、及び蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプの製造方法の蒸解工程において、リグノセルロースを含む材料をパルプにするためにアルカリ性の薬剤(アルカリ系主剤)等が使用される。また、蒸解を効率的に行うために蒸解促進剤も使用される。この蒸解促進剤として従前から使用されてきた物質としてアントラキノンがある。この物質は発がん性の懸念がある。この物質を使用して蒸解されたパルプを人が使用した場合、がんを発症するリスクを完全に排除することはできない。
【0003】
このリスクを排除するために、アントラキノンに代わる蒸解促進剤が検討されている。例えば、特許文献1には、第四級アンモニウム化合物を使用した蒸解促進剤が開示されている。特許文献2には、グルコース及びフルクトースを使用した蒸解促進剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-65434号公報
【特許文献2】特開2020-2481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示されている蒸解促進剤を使用した場合は、上述のリスクも少なく、アルカリ性の薬剤(アルカリ系主剤)等を単独で使用した蒸解に比べて、効率的に蒸解することができる。しかし、天然資源である木材の枯渇、及び環境問題の観点から、更なる蒸解の効率化が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、リグノセルロースを含む材料をパルプにする蒸解工程において、より効率的に蒸解させることができる蒸解促進剤、及び蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む蒸解促進剤が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記目的を達成するために、[1]本発明に係る蒸解促進剤は、以下の式(1)で表される第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む。
【0009】
【化1】
ここで、Rは炭素数5~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のアルケニル基、又は炭素数5~22のヒドロキシアルケニル基である。Rは炭素数1~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。Rは炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。Rは炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有していてもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。Xp-は、無機アニオン、又は有機アニオンである。Nは窒素原子を示す。Xp-は対イオンを示す。pはイオンの価数を示す。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子又はアシル基である。e、f、及びgはアルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~40の数である。R、R、及びRに炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、(AO)Y基、(AO)Y基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数と、eと、fと、gとの総和が1~40である。
【0010】
また、[2]前記第四級アンモニウム化合物と、前記糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、の比率が1:99~99:1である、ようにしてもよい。
【0011】
また、[3]前記糖類が、単糖類、多糖類、及び前記多糖類の変性物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、ようにしてもよい。
【0012】
また、[4]前記単糖類が、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、及びアラビノースからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、ようにしてもよい。
【0013】
また、[5]前記多糖類が、澱粉、寒天、グリコーゲン、グアガム、セルロース、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、プルラン、ローカストビーンガム、及びデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、ようにしてもよい。
【0014】
また、[6]前記タンニン類が、加水分解型タンニン、縮合型タンニン、前記加水分解型タンニンが加水分解されて得られるポリフェノール化合物、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、ようにしてもよい。
【0015】
また、上記目的を達成するために、[7]本発明に係るパルプの製造方法は、リグノセルロースを含む材料に、アルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えて、前記材料を蒸解する工程を含み、前記蒸解促進剤が、[1]から[6]のいずれかに記載の蒸解促進剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蒸解促進剤、及び蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法によれば、リグノセルロースを含む材料をより効率的に蒸解させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0018】
実施形態の蒸解促進剤は、特定の第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含むものである。まず、特定の第四級アンモニウム化合物と、その製造方法を説明する。次に、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物について説明する。そして、蒸解促進剤について説明する。
【0019】
(第四級アンモニウム化合物)
実施形態の第四級アンモニウム化合物は、以下の式(1)で表される化合物である。
【0020】
【化2】
【0021】
式(1)中のNは、窒素原子を示す。
【0022】
式(1)中のRは、炭素数5~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数5~22のアルケニル基、又は炭素数5~22のヒドロキシアルケニル基である。
【0023】
蒸解を促進する観点から、Rは、好ましくは、炭素数8~18のアルキル基、炭素数8~18のヒドロキシアルキル基、炭素数8~18のアルケニル基、又は炭素数8~18のヒドロキシアルケニル基である。
【0024】
より好ましくは、Rは、炭素数8~18の直鎖状のアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のアルケニル基、又は炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルケニル基である。
【0025】
式(1)中のRは、炭素数1~22のアルキル基、炭素数5~22のヒドロキシアルキル基、炭素数2~22のアルケニル基、炭素数2~22のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子又はアシル基である。eはアルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~40の数である。また、「アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数」とは、「アルキレンオキシ基の平均付加モル数」を意味する。以下、実施形態において同じである。
【0026】
蒸解を促進する観点から、Rは、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基、Yは水素原子である。eは、1~12の数である。
【0027】
より好ましくは、Rは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。eは、1~6の数である。
【0028】
式(1)中のRは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子又はアシル基である。fは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~40の数である。
【0029】
蒸解を促進する観点から、Rは、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。fは、1~12の数である。
【0030】
より好ましくは、Rは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。fは、1~6の数である。
【0031】
式(1)中のRは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、フェネチル基は2-フェニルエチル基ともいう。AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。gは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~40の数である。
【0032】
蒸解を促進する観点から、Rは、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。gは、1~12の数である。
【0033】
より好ましくは、Rは、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。gは、1~6の数である。
【0034】
式(1)中のR、R、及びRにおいて、R、R、及びRに炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、(AO)Y基、(AO)Y基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数と、eと、fと、gとの総和が、1~40の数である。蒸解を促進する観点から、好ましくは、1~12であり、より好ましくは、1~6である。
【0035】
上述したR、R、R、及びRの中でも、以下のR、R、R、及びRを有する第四級アンモニウム化合物が好ましい。
【0036】
が、炭素数8~18の直鎖状のアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のアルケニル基、又は炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルケニル基であり、R及びRが、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基であり、Rが、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基、Yは水素原子である。gは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~6の数である。また、R、R、及びRに炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とgとの総和が、1~6の数である。
【0037】
また、以下のR、R、R、及びRを有する第四級アンモニウム化合物も好ましい。
【0038】
が、炭素数8~18の直鎖状のアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のアルケニル基、又は炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルケニル基であり、Rが、炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基であり、Rが、(AO)Y基であり、Rが、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。f及びgは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~6の数である。また、R、R、及びRに炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基、(AO)Y基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、炭素数2~4のヒドロキシアルケニル基の数とgとの総和が、1~6の数である。
【0039】
また、以下のR、R、R、及びRを有する第四級アンモニウム化合物も好ましい。
【0040】
が、炭素数8~18の直鎖状のアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルキル基、炭素数8~18の直鎖状のアルケニル基、又は炭素数8~18の直鎖状のヒドロキシアルケニル基であり、Rが、(AO)Y基であり、Rが、(AO)Y基であり、Rが、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいベンジル基、炭素数1~4のアルキル基を有してもよいフェネチル基、グリシジル基、又は(AO)Y基である。ここで、AOはアルキレンオキシ基であり、Yは水素原子である。e、f及びgは、アルキレンオキシ基の繰り返し単位の数を示し、1~6の数である。また、R、R、及びRに、(AO)Y基、(AO)Y基、及び(AO)Y基からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む場合は、eと、fと、gとの総和が、1~6の数である。
【0041】
実施形態の第四級アンモニウム化合物のXp-は対イオンを示す。pはイオンの価数を示す。pは1~40である。製品化、工業化、及び価格の観点から、好ましくは、1~20、より好ましくは、1~3である。
【0042】
対イオンは、第四級アンモニウム化合物と塩を形成することができるアニオンであれば特に限定されるものではない。例えば、無機アニオン、有機アニオンが挙げられる。
【0043】
無機アニオンとしては、水酸基イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、塩化物イオン及び臭化物イオン等のハロゲンイオン等が挙げられる。
【0044】
有機アニオンとしては、有機カルボン酸イオン、リン酸エステルイオン、スルホン酸イオン、アルキルカーボネートイオン、硫酸エステルイオン、アニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0045】
有機カルボン酸イオンとしては、ギ酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、グルコン酸イオン、乳酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、アジピン酸イオン等が挙げられる。
【0046】
リン酸エステルイオンとしては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルイオン、アルキルリン酸エステルイオン、アリールリン酸エステルイオン等が挙げられる。
【0047】
スルホン酸イオンとしては、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0048】
アルキルカーボネートイオンとしては、メチルカーボネートイオン、エチルカーボネートイオン等が挙げられる。
【0049】
硫酸エステルイオンとしては、アルキル硫酸エステルイオン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステルイオン等が挙げられる。
【0050】
アニオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリリン酸、ポリ硫酸化合物等が挙げられる。
【0051】
対イオンの中でも、蒸解を促進する観点から、無機アニオンでは塩化物イオン及び臭化物イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン;有機アニオンではメチル硫酸イオン(CHSO )、エチル硫酸イオン(CSO )等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキル硫酸エステルイオン;ブチルリン酸エステルイオン等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキルリン酸モノエステルイオン;ジブチルリン酸エステルイオン等のアルキル基の炭素数が1~4のアルキルリン酸ジエステルイオン;p-トルエンスルホン酸等の炭素数が1~4のアルキルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0052】
次に、第四級アンモニウム化合物の製造方法について説明する。
【0053】
(第四級アンモニウム化合物の製造方法)
実施形態の第四級アンモニウム化合物は、種々の方法で合成することができる。例えば、R、R、及びRを有する第三級アミンに、Rを有する第四級化剤を加えて、70~150℃の温度で反応させることで得られる。
【0054】
が(AO)H基である第四級アンモニウム化合物の場合、R、R、及びRを有する第三級アミンを任意の酸で中和した後、当量のアルキレンオキシドを加えて、70~120℃の温度で四級化反応させることで得られる。ここで、AOはアルキレンオキシ基である。
【0055】
、R、及びRが(AO)H基、(AO)H基、及び(AO)H基で示される置換基である第四級アンモニウム化合物の場合、トリアルカノールアミンに所定量のアルキレンオキシドを加えて、100~150℃の温度で付加させる。次に、Rを有する第四級化剤を加えて、60~130℃の温度で反応させることで得られる。
【0056】
次に、実施形態の蒸解促進剤に含まれる糖類、及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物について説明する。
【0057】
実施形態の蒸解促進剤には、上述した第四級アンモニウム化合物の他に、糖類、及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。糖類を1種以上含んでもよいし、タンニン類を1種以上含んでもよい。糖類及びタンニン類をそれぞれ1種以上含んでもよい。
【0058】
(糖類)
糖類としては、単糖類、多糖類、多糖類の変性物が挙げられる。2種以上を混合して用いても良い。
【0059】
(単糖類)
単糖類としては、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース等が挙げられる。蒸解を促進する観点から、好ましくは、グルコース、フルクトースである。2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
(多糖類)
多糖類としては、澱粉、寒天、グリコーゲン、グアガム、セルロース、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、プルラン、ローカストビーンガム、デキストリン等が挙げられる。蒸解を促進する観点から、好ましくは、澱粉、グアガム、キサンタンガムである。2種以上を混合して使用してもよい。
【0061】
(多糖類の変性物)
多糖類の変性物も蒸解促進剤として使用することができる。多糖類の変性物としては、特に限定されるものではないが、上述した多糖類をアニオン化、カチオン化、エーテル化、エステル化、酸化、クラフト化されたものが挙げられる。2種以上を混合して使用してもよい。蒸解を促進する観点から、多糖類の変性物としては、好ましくは、カチオン化澱粉、カチオン化グアガム、カチオン化キサンタンガムが挙げられる。
【0062】
カチオン化された多糖類とは、カチオン変性反応によりカチオン基が導入された多糖類である。例えば、カチオン化澱粉、カチオン化セルロース、カチオン化グアガム、カチオン化キサンタンガム、カチオン化ガラクトマンナン、カチオン化プルラン等が挙げられる。
【0063】
多糖類をカチオン化する方法は、種々の方法がある。例えば、澱粉、グアガム、セルロース、キサンタンガム等を、ジエチルアミノエチルクロライド塩、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等でカチオン化する方法が挙げられる。
【0064】
(タンニン類)
タンニン類としては、加水分解型タンニン、縮合型タンニン、加水分解型タンニンが加水分解されて得られるポリフェノール化合物、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。2種以上を混合して使用してもよい。
【0065】
ここで、加水分解型タンニンとは、酸、アルカリ、又は酵素により加水分解することができるタンニンをいう。加水分解されたタンニンは、ポリフェノール化合物と、糖等の多価アルコールと、に分解される。縮合型タンニンとは、d-カテキン、L-エピカテキン、L-エピガロカテキン等のカテキンが炭素-炭素結合により縮合したものである。縮合型タンニンとは、酸、アルカリ、又は酵素により加水分解することができないタンニンをいう。
【0066】
加水分解型タンニンは、特に限定されるものではないが、チェストナット、オーク、ミラボラム、タラ、茶、五倍子、没食子等から得られるタンニン、タンニン酸等が挙げられる。蒸解促進の観点から、好ましくは、チェストナット、タラから得られるタンニン、タンニン酸である。2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
加水分解型タンニンが加水分解されて得られるポリフェノール化合物もタンニン類に含まれ、タンニン類の蒸解促進剤として使用することができる。ポリフェノール化合物としては、没食子酸、ピロガロール、エラグ酸等が挙げられる。ポリフェノール化合物の塩とは、ポリフェノール化合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)やアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)等が挙げられる。蒸解促進の観点から、好ましくはピロガロールである。
【0068】
縮合型タンニンは、特に限定されるものではないが、ケブラチョ、ミモザ、ガンビア、柿等から得られるタンニンが挙げられる。蒸解促進の観点から、好ましくは、ケブラチョ、ミモザから得られるタンニンである。2種以上を混合して使用してもよい。
【0069】
上述したタンニン類の中でも、蒸解促進の観点から、より好ましくは、ケブラチョ、ミモザから得られるタンニンである。
【0070】
上述した第四級アンモニウム化合物、糖類、及びタンニン類は、水又は有機溶剤を加えて溶解状態、乳化状態又は分散状態にして使用してもよい。このときに使用する有機溶剤は、特に限定されるものではない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1~6の低級アルコール;低級アルコールをエチレンオキシド化したアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素鎖の数が1~6のアルキレングリコール;3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0071】
次に、蒸解促進剤について説明する。
【0072】
(蒸解促進剤)
実施形態の蒸解促進剤は、上述した第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む。
【0073】
第四級アンモニウム化合物と糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物との比率は、蒸解促進の観点から、1:99~99:1であり、好ましくは、10:90~90:10であり、より好ましくは、40:60~60:40である。
【0074】
蒸解促進及びコストの観点から、蒸解促進剤の全体の質量に対する第四級アンモニウム化合物と糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物との合計質量の割合は、1質量%以上100質量%以下であり、好ましくは、20質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは、40質量%以上100質量%以下である。
【0075】
第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を添加する合計量は、リグノセルロースを含む材料100gに対して、0.5~1000mgである。蒸解促進の観点から、好ましくは、10~800mg。より好ましくは、30~600mgである。
【0076】
実施形態の蒸解促進剤は、特に限定されるものではないが、構造が異なる2種以上の第四級アンモニウム化合物と、糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含む構成であってもよい。
【0077】
パルプの製造方法における蒸解工程の蒸解法の種類、リグノセルロースを含む材料の種類、形状、及び大きさ等により、第四級アンモニウム化合物と糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とを組み合わせて、使用することができる。
【0078】
第四級アンモニウム化合物と糖類及びタンニン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物は、蒸解工程において、同時に添加しても、別々に添加しても良い。
【0079】
(蒸解促進剤に加える他の添加剤)
リグノセルロースを含む材料に蒸解促進剤を効率よく浸透させる観点から、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、鉱物油、オレンジオイル等の天然油、アルカリ剤、酸、有機溶剤等を添加剤として使用してもよい。
【0080】
パルプの洗浄性を高める観点から、消泡剤、洗浄剤も添加剤として使用してもよい。
【0081】
アルカリ剤としては、無機アルカリ、アミン化合物が挙げられる。無機アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。アミン化合物としては、アルカノールアミン類、アルキルアミン類が挙げられる。アルカノールアミン類としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。アルキルアミン類としては、イソプロピルアミン、ラウリルアミン等が挙げられる。
【0082】
酸としては、塩酸、硝酸、リン酸等の無機酸、及び酢酸、蟻酸、乳酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。
【0083】
有機溶剤としては、特に限定されるものではない。メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素鎖の数が1~6の低級アルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の炭素鎖の数が1~6のアルキレングリコール;3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0084】
添加剤は、蒸解促進剤の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0085】
実施形態の蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法について説明する。
【0086】
(パルプの製造方法)
パルプは、リグノセルロースを含む材料にアルカリ系主剤及び亜硫酸塩系主剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の主剤、及び蒸解促進剤を加えてリグノセルロースを含む材料を蒸解する工程、蒸解により得られたパルプを洗浄する工程、洗浄後のパルプから除塵する工程(スクリーン工程)、パルプを漂白する工程、を含む方法により製造される。
【0087】
実施形態の蒸解促進剤は、蒸解する工程で使用する。例えば、リグノセルロースを含む材料にアルカリ系主剤と実施形態の蒸解促進剤とを混ぜ合わせたものを加えて、高温及び高圧の条件下で煮ることで繊維分(パルプ)を取り出すことができる。
【0088】
(蒸解法)
蒸解する工程で採用される蒸解法は、特に限定されるものではないが、アルカリ蒸解法、亜硫酸塩蒸解法等が挙げられる。
【0089】
アルカリ蒸解法は、クラフト法、ソーダ法、炭酸ソーダ法、ポリサルファイド法等が挙げられる。亜硫酸蒸解法は、アルカリ性亜硫酸塩法、中性亜硫酸塩法、重亜硫酸塩法等が挙げられる。蒸解促進の観点から、好ましくはアルカリ蒸解法であり、より好ましくは、クラフト法及びポリサルファイド法である。
【0090】
温度及び圧力の条件は、リグノセルロースを含む材料の種類、形状、及び大きさにより、適宜設定することができる。例えば、リグノセルロースを含む材料が木材チップの場合、温度は50~300℃であり、設備の負荷低減の観点から、好ましくは80~250℃である。圧力は、常圧~10MPaであり、設備の負荷低減の観点から、好ましくは常圧~5MPaである。
【0091】
時間は、リグノセルロースを含む材料の種類、形状、及び大きさ、温度及び圧力の条件により、適宜設定することができる。例えば、リグノセルロースを含む材料が木材チップの場合、設備の負荷低減の観点から、好ましくは1~5時間である。
【0092】
アルカリ蒸解法で使用する主剤(以下、「アルカリ系主剤」ともいう。)は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。アルカリ系主剤を使用する量は、リグノセルロースを含む材料の種類により異なるが、リグノセルロースを含む材料100質量部に対して、1~120質量部である。蒸解を効率的に行い、蒸解促進剤の効果を発揮させる観点から、好ましくは、3~60質量部であり、より好ましくは、5~60質量部である。
【0093】
クラフト法による蒸解は、アルカリ系主剤と、硫化ナトリウムとを加えて蒸解するアルカリ蒸解法である。例えば、アルカリ系主剤が水酸化ナトリウムである場合、加える硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは、10~100質量部である。
【0094】
ポリサルファイド法による蒸解は、アルカリ系主剤と、硫化ナトリウムと、多硫化ナトリウム(NaSx、x=2~5)とを加えて蒸解するアルカリ蒸解法である。例えば、アルカリ系主剤が水酸化ナトリウムである場合、加える硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは、10~100質量部である。加える多硫化ナトリウムの量は、水酸化ナトリウム100質量部に対して、1~200質量部、蒸解を効率的に行う観点から、好ましくは、10~100質量部である。
【0095】
亜硫酸蒸解法で使用する主剤(以下、「亜硫酸塩系主剤」ともいう。)は、例えば、NaSO等の亜硫酸塩、NaHSO等の重亜硫酸塩等が挙げられる。亜硫酸塩系主剤を使用する量は、リグノセルロースを含む材料の種類により異なるが、リグノセルロースを含む材料100質量部に対して、1~120質量部である。蒸解を効率的に行い、蒸解促進剤の効果を発揮させる観点から、好ましくは、3~60質量部であり、より好ましくは、5~60質量部である。
【0096】
リグノセルロースを含む材料は、特に限定されるものではないが、例えば、木材、草木等が挙げられる。木材は、広葉樹を原料とするL材の木材、針葉樹を原料とするN材の木材等が挙げられる。また、草木は、バカス、ヨシ、ケナフ、クワ、竹等が挙げられる。木材及び草木は、例えばチップ状にして使用される。
【実施例0097】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0098】
実施例及び比較例において、第四級アンモニウム化合物、糖類、タンニン類、及びリグノセルロースを含む材料は、以下のものを使用した。
【0099】
(第四級アンモニウム化合物)
実施例及び比較例で使用した第四級アンモニウム化合物(E1~E9)のR、R、R、R 及び対イオンは、表1に示した構造である。第四級アンモニウム化合物(E1~E9)は、以下のように合成した。
【0100】
【表1】
【0101】
(第四級アンモニウム化合物E1の合成)
還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、1モル当量のラウリルジメチルアミンを加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジエチル硫酸を滴下しながら撹拌し、四級化反応をさせ、第四級アンモニウム化合物E1を得た。
【0102】
(第四級アンモニウム化合物E2の合成)
還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、1モル当量のラウリルジメチルアミンと、ラウリルジメチルアミンの質量に対して2倍量の蒸留水とを加えて、85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量の塩化ベンジルを滴下しながら撹拌し、四級化反応をさせた。その後、エバポレータで70℃の条件下で、減圧脱水して、第四級アンモニウム化合物E2を得た。
【0103】
(第四級アンモニウム化合物E3の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、2モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに2モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物を1モル当量加えて85~95℃に加熱した。ここに1.1モル当量のジエチル硫酸を滴下しながら撹拌し、四級化反応をさせ、第四級アンモニウム化合物E3を得た。
【0104】
(第四級アンモニウム化合物E4の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のラウリルアミンを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、2モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ラウリルアミンに2モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、得られた付加物の質量に対して2倍量の蒸留水を加えて、0.97モル当量のパラトルエンスルホン酸を加えて中和させた。その後、85~95℃に加熱し、1.1モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、四級化反応をさせた。最後に、エバポレータで70℃の条件下で、減圧脱水して、第四級アンモニウム化合物E4を得た。
【0105】
(第四級アンモニウム化合物E5の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のステアリルアミンと、ステアリルアミンに対して0.5質量%の水酸化ナトリウム(触媒)とを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、8モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ステアリルアミンに8モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物を1モル当量加えて85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジメチル硫酸を滴下し、四級化反応をさせ、第四級アンモニウム化合物E5を得た。
【0106】
(第四級アンモニウム化合物E6の合成)
耐圧反応容器に、3モル当量の炭酸ジメチルと、1モル当量のN,N-ジメチルオクチルアミンと、適量のメタノールとを加えて、120~130℃で12時間撹拌しながら反応させた。次に60℃まで冷却した後、85質量%濃度のリン酸水溶液を1モル当量のリン酸に相当する量加えた。さらに60~80℃の条件下で脱炭酸しながら、塩交換反応させた。そして、窒素気流下、60~90℃の条件で、減圧しながら、メタノール及び未反応の炭酸ジメチルを除去し、第四級アンモニウム化合物E6を得た。
【0107】
(第四級アンモニウム化合物E7)
第四級アンモニウム化合物E7は、ライオンスペシャリティケミカルズ社製「リポカード2C-75」(固形分濃度75質量%)を使用した。また、実施例では、固形分濃度を100質量%に換算して使用した。
【0108】
(第四級アンモニウム化合物E8の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のトリエタノールアミンと、トリエタノールアミンに対して0.5質量%の水酸化ナトリウム(触媒)とを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、21モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、トリエタノールアミンに21モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物1モル当量、及び付加物の質量に対して2倍量の蒸留水を加えて85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のラウリルクロライドを滴下し、四級化反応をさせた。その後、エバポレータで70℃の条件下で、減圧脱水して、第四級アンモニウム化合物E8を得た。
【0109】
(第四級アンモニウム化合物E9の合成)
耐圧反応容器に、1モル当量のステアリルアミンと、ステアリルアミンに対して0.5質量%の水酸化ナトリウム(触媒)とを加えて、窒素置換した後、120~130℃に加熱した。ここに、45モル当量のエチレンオキシドを吹き込み、ステアリルアミンに45モル当量のエチレンオキシドが付加された付加物を得た。次に、還流コンデンサ付きの4つ口フラスコに、得られた付加物1モル当量を加えて85~95℃に加熱した。ここに、1.1モル当量のジメチル硫酸を滴下し、四級化反応をさせ、第四級アンモニウム化合物E9を得た。
【0110】
(糖類)
糖類は、単糖類としてグルコースを、多糖類として澱粉及びグアガムを、多糖類の変性物としてカチオン化澱粉及びカチオン化グアガムを使用した。
【0111】
(タンニン類)
タンニン類は、ケブラチョ、チェストナット、タラ、及びミモザから得られるタンニン、及びタンニン酸を使用した。タンニン加水分解物としてピロガロールを使用した。
【0112】
(リグノセルロースを含む材料)
リグノセルロースを含む材料として、木材チップを使用した。具体的には、広葉樹を原料とするL材(アカシア)の木材チップ、及び針葉樹を原料とするN材(アカマツ)の木材チップを使用した。
【0113】
上述した第四級アンモニウム化合物、糖類、タンニン類、及びリグノセルロースを含む材料を使用して、クラフト法による蒸解、ポリサルファイド法による蒸解、及び黒液を使用したクラフト法による蒸解を行い、各種評価を行った。
【0114】
(蒸解)
(クラフト法による蒸解)
クラフト法による蒸解は以下のように行った。ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残った木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩8.6g(硫化ナトリウム単体として4.0g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤を所定の量加え、150℃、50分、蒸解を行った。蒸解促進剤の添加量は、例えば、実施例1の場合、100.0gの木材チップに対して、第四級アンモニウム化合物を20mg、グルコースを20mg加えることから、50.0gの木材チップの場合、添加する蒸解促進剤は、第四級アンモニウム化合物が10mg、グルコースが10mgとなる。
【0115】
(ポリサルファイド法による蒸解)
ポリサルファイド法による蒸解は以下のように行った。ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残った木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩6.0g(硫化ナトリウム単体として2.8g)と、4硫化ナトリウム溶液(ナガオ社製)4.0g(4硫化ナトリウム単体として1.2g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤を所定の量加え、150℃、50分、蒸解を行った。蒸解促進剤の添加量は、例えば、実施例41の場合、100gの木材チップに対して、第四級アンモニウム化合物を20mg、カチオン化グアガムを20mg加えることから、50.0gの木材チップの場合、添加する蒸解促進剤は、第四級アンモニウム化合物が10mg、グルコースが10mgとなる。
【0116】
(黒液)
上述したクラフト法の蒸解により得られた混合物を、目開き710μmのステンレス製のふるい、及び目開き75μmのステンレス製のふるいを使用して、ろ液と固形物に分離した。このとき得られたろ液を黒液とした。この黒液を実施例及び比較例において使用した。
【0117】
(黒液を使用したクラフト法による蒸解)
ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残った木材チップを60℃で24時間乾燥させた木材チップ50gと、黒液75.0gと、硫化ナトリウム5水和塩4.3g(硫化ナトリウム単体として2.0g)と、水酸化ナトリウム7.0gと、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤を所定の量加え、150℃、50分、蒸解を行った。蒸解促進剤の添加量は、例えば、実施例48の場合、100gの木材チップに対して、第四級アンモニウム化合物を20mg、グルコースを20mg加えることから、50.0gの木材チップの場合、添加する蒸解促進剤は、第四級アンモニウム化合物が10mg、グルコースが10mgとなる。
【0118】
以下、各種の測定方法及び評価について説明する。
【0119】
各種の測定方法及び評価を行うにあたり、測定サンプルを以下のように作製した。
<測定サンプル>
(1)蒸解前のサンプル
木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残った木材チップを60℃で24時間乾燥させ冷却した。それを蒸解前のサンプルとした。
【0120】
(2)蒸解後のサンプル
(残渣物及びパルプのサンプル)
各種蒸解法により得られた混合物をふるいにかけた。目開き710μmのステンレス製のふるいに残った残渣を残渣物とし、目開き75μmのステンレス製のふるいに残った残渣をパルプとした。それぞれを洗浄水にて洗浄した。洗浄は洗浄に使用した後の洗浄水が無色になるまで繰り返した。洗浄後、105℃で10時間乾燥させた。これらを残渣物及びパルプのサンプルとした。
【0121】
残渣物は、木材片(木材チップ)残留率を求める際に使用した。
【0122】
パルプは、カッパー価及びフリーネスの測定で使用した。
【0123】
(試験紙)
油脂分の抽出率、夾雑物の面積率の測定を行うために、得られたパルプから試験紙を作製した。具体的には、JIS P 8222:2015「パルプ-試験用手すき紙の調整方法-標準手すき機による方法」に従い、スタンダードシートマシン抄紙装置(熊谷理機工業社製)を用いて抄紙した。次いで、エアシートプレス機(熊谷理機工業社製)を用いて700kPaで5分間、プレス処理した。その処理後、試験用のヤンキードライヤー(熊谷理機工業社製)を用いて105℃で5分間乾燥させ、試験紙を得た。
【0124】
<試験方法及び評価>
実施例及び比較例において、各種の測定方法及び評価は以下のように行った。
【0125】
<木材片(木材チップ)残留率>
木材片(木材チップ)残留率は、以下のように測定した。なお、木材片(木材チップ)残留率を調べることで、木材片(木材チップ)の蒸解がどの程度進んでいるかを判断することができる。
【0126】
(1)測定方法
上述した<測定サンプル>で得られた蒸解前のサンプル50gを蒸解し、蒸解後に得られた残渣物の質量を測定し、その値を下記式にそれぞれ代入して、木材片(木材チップ)残留率を算出した。
【0127】
木材片(木材チップ)残留率(%)=(蒸解後の残渣物の質量(g)/蒸解前のサンプルの質量(g))×100
【0128】
(2)評価基準
(2-1)評価基準は、以下の通りとした。ただし、木材がN材であり黒液を使用した蒸解の場合の評価基準は別に定めて評価した。
Excellent:残留率が1.0%未満、
Good:残留率が1.0%以上、2.0%未満、
Poor:残留率が2.0%以上、4.0%未満、
Bad:残留率が4.0%以上。
【0129】
(2-2)木材がN材であり黒液を使用した蒸解の場合の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:残留率が1.0%未満、
Good:残留率が1.0%以上、2.0%未満、
Poor:残留率が2.0%以上、6.0%未満、
Bad:残留率が6.0%以上。
【0130】
<カッパー価>
カッパー価は、以下のように測定した。ここで、カッパー価とは、残留リグニンの含有量を示す。例えば、蒸解後のパルプのカッパー価は、残留リグニンの含有量が少ないため、低い値となる。また、カッパー価を調べることで、木材片(木材チップ)の蒸解がどの程度進んでいるかを判断することができる。
【0131】
(1)測定サンプル
上述した<測定サンプル>で得られたパルプを使用した。
【0132】
(2)測定方法
JIS P 8211(2011)に記載の方法により、カッパー価を求めた。
【0133】
(3)評価基準
(3-1)L材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:カッパー価が17.5未満、
Good:カッパー価が17.5以上、18.0未満、
Poor:カッパー価が18.0以上、19.0未満、
Bad:カッパー価が19.0以上。
【0134】
(3-2)N材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:カッパー価が19.0未満、
Good:カッパー価が19.0以上、20.0未満、
Poor:カッパー価が20.0以上、22.0未満、
Bad:カッパー価が22.0以上。
【0135】
<フリーネス>
フリーネスは、以下のように測定した。ここで、フリーネスとは、パルプを叩解した程度をいい、叩解度ともいう。例えば、フリーネスが高い場合、パルプが叩解された程度が小さいことを意味する。また、フリーネスが高いパルプは、パルプの調整がし易くなる。
【0136】
(1)測定サンプル
上述した<測定サンプル>で得られたパルプを使用した。
【0137】
(2)測定方法
フリーネスは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法 第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定した。
【0138】
(3)評価基準
(3-1)L材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Good:フリーネスが640以上、
Bad:フリーネスが640未満。
【0139】
(3-2)N材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Good:フリーネスが700以上、
Bad:フリーネスが700未満。
【0140】
<パルプ油脂分の抽出率>
パルプの油脂分の抽出率は、以下のように測定した。なお、パルプの油脂分の抽出率を調べることで、パルプの品質を判断することができる。抽出率が低い場合、パルプ中に含まれる油脂分が少ないため、品質はよいものとなる。
【0141】
(1)測定サンプル
上述した<測定サンプル>で得られた試験紙を用いた。
【0142】
(2)測定方法
迅速抽出機(型式OC(手動型)、インテック社製)を用いて測定した。まず、迅速抽出機に備え付けられている試料管の中に、測定サンプル(試験紙)2gと、溶媒であるテトラヒドロフラン約50mlを入れ、テトラヒドロフラン中に測定サンプルを1分間浸漬させた。その後、押出し棒で、試料管内を上から押すことにより、試料管の下に設けられた滴下口から、テトラヒドロフランを滴下させた。その滴下したテトラヒドロフランは、試料管下に設置されたアルミトレイにたまり、アルミトレイに備え付けられている加熱機構によりテトラヒドロフランを蒸発させ、測定サンプル(試験紙)に含まれる油脂分を抽出した。
【0143】
本測定では、同様の抽出操作を2回繰り返した。このときの、抽出前のアルミトレイの質量と抽出後のアルミトレイの質量との差から油脂分の質量を算出し、さらに測定サンプルの質量を下式に代入して抽出率(%)を算出した。
【0144】
パルプ油脂分の抽出率(%)=(油脂分の質量(g)/測定サンプルの質量(g))×100
【0145】
(3)評価基準
(3-1)L材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:抽出率が0.60未満、
Good:抽出率が0.60以上、0.70未満、
Poor:抽出率が0.70以上、0.80未満、
Bad:抽出率が0.80以上。
【0146】
(3-2)N材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Excellent:抽出率が0.65未満、
Good:抽出率が0.65以上、0.75未満、
Poor:抽出率が0.75以上、0.85未満、
Bad:抽出率が0.85以上。
【0147】
<夾雑物の評価>
夾雑物の評価は、以下のように行った。なお、夾雑物の評価は、パルプ中にどの程度異物が含まれているかを評価するものである。夾雑物の面積率が小さいほど、パルプの品質はよいものとなる。
【0148】
(1)測定サンプル
上述した<測定サンプル>で得られた試験紙を使用した。
【0149】
(2)測定方法
試験紙の任意の4箇所をそれぞれ、スキャナで等倍画像に取り込んだ。この画像をMedia Cybernetics社製の解析ソフト「Image Pro Plus」を用いて、面積が0.000625mm(一辺の長さが0.025mm)以上の夾雑物を特定し、夾雑物面積率(%)を測定した。ここで、夾雑物面積率(%)とは、スキャナで取り込んだ領域(面積)に対して、夾雑物の占める面積の割合を百分率で表した値である。夾雑物面積率(%)は、4箇所の平均値とした。
【0150】
(3)評価基準
(3-1)L材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Good:夾雑物面積率(%)が0.0230%未満、
Bad:夾雑物面積率(%)が0.0230%以上。
【0151】
(3-2)N材を使用した場合の評価基準は、以下の通りとした。
Good:夾雑物面積率(%)が0.0200%未満、
Bad:夾雑物面積率(%)が0.0200%以上。
【0152】
<黒液の動粘度>
黒液の動粘度は、以下のように測定した。動粘度が低い方が、黒液の状態は良好となる。
【0153】
(1)測定サンプル
蒸解で得られた黒液を所定量取り、エバポレータで100℃にて減圧脱水し、不揮発分の濃度が80質量%になるまで濃縮した。
【0154】
(2)測定方法
得られた黒液(80質量%濃縮黒液)を1.0ml採取し、コーン・プレート型粘度計(TP-100H形粘度計、東機産業社製)を用いて、動粘度を測定した。条件は、90℃、コーンロータ(3゜×R17.65)、回転数1rpmで測定した。
【0155】
(3)評価基準
評価基準は、以下の通りとした。
Good:動粘度が110未満、
Bad:動粘度が110以上。
【0156】
表2~24について、説明する。
【0157】
(L材、糖類、クラフト法)
表2及び表3は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及び糖類を使用して、クラフト法による蒸解を行った結果を示したものである。また、表2及び表3に、使用した第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0158】
表2の実施例1は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩8.6g(硫化ナトリウム単体として4.0g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E1を10mgと、グルコースを10mgとをそれぞれ加えた。その後、150℃、50分、蒸解を行った。
【0159】
実施例2~17、及び比較例1~3は、表2及び表3に示すように、各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、実施例1と同じ方法により蒸解を行った。
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
(L材、タンニン類、クラフト法)
表4及び表5は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及びタンニン類を使用して、クラフト法による蒸解を行った結果を示したものである。また、表4及び表5に、使用した第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0163】
表4の実施例18は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、L材の木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩8.6g(硫化ナトリウム単体として4.0g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E1を10mgと、ケブラチョ1mgとをそれぞれ加えた。その後、150℃、50分、蒸解を行った。
【0164】
実施例19~35、及び比較例4は、表4及び表5に示すように、各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例18と同じ方法により蒸解を行った。
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
(N材、糖類、クラフト法)
表6及び表7に示す実施例36、実施例37、比較例5、及び比較例6は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを用い、表6及び表7に示す各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、実施例1と同じ方法により蒸解を行った。
【0168】
【表6】
【0169】
【表7】
【0170】
(N材、タンニン類、クラフト法)
表8及び表9に示す実施例38~40、比較例7~9は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを用い、表8及び表9に示す各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例18と同じ方法により蒸解を行った。
【0171】
【表8】
【0172】
【表9】
【0173】
(L材、糖類、ポリサルファイド法)
表10及び表11は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及び糖類を使用して、ポリサルファイド法による蒸解を行った結果を示したものである。また、表10及び表11に、使用した第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0174】
表10の実施例41は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、L材の木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩6.0g(硫化ナトリウム単体として2.8g)と、4硫化ナトリウム(ナガオ社製)4.0g(4硫化ナトリウム単体として1.2g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E2を10mgと、カチオン化グアガムを10mgとをそれぞれ加えた。その後、150℃、50分、蒸解を行った。
【0175】
実施例42、比較例10、及び比較例11は、表10及び表11に示すように、各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、実施例41と同じ方法により蒸解を行った。
【0176】
【表10】
【0177】
【表11】
【0178】
(L材、タンニン類、ポリサルファイド法)
表12及び表13は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及びタンニン類を使用して、ポリサルファイド法による蒸解を行った結果を示したものである。また、表12及び表13に、使用した第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0179】
表12の実施例43は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、L材の木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、水酸化ナトリウム14.0gと、硫化ナトリウム5水和塩6.0g(硫化ナトリウム単体として2.8g)と、4硫化ナトリウム(ナガオ社製)4.0g(4硫化ナトリウム単体として1.2g)と、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E2を10mgと、ミモザを10mgとをそれぞれ加えた。その後、150℃、50分、蒸解を行った。
【0180】
実施例44、及び比較例12~14は、表12及び表13に示すように、各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例43と同じ方法により蒸解を行った。
【0181】
【表12】
【0182】
【表13】
【0183】
(N材、糖類、ポリサルファイド法)
表14及び表15に示す実施例45、実施例46、及び比較例15~18は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを用い、表14及び表15に示す各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、実施例41と同じ方法により蒸解を行った。
【0184】
【表14】
【0185】
【表15】
【0186】
(N材、タンニン類、ポリサルファイド法)
表16及び表17に示す実施例47及び比較例19は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを使用した。また、実施例47及び比較例19は、表16及び表17に示す各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例43と同じ方法により蒸解を行った。
【0187】
【表16】
【0188】
【表17】
【0189】
(L材、糖類、黒液を使用したクラフト法による蒸解)
表18及び表19は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及び糖類を使用して、黒液を使用した蒸解の結果を示したものである。また、表18及び表19に、使用した第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0190】
表18の実施例48は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、L材の木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、クラフト法による蒸解で得られた黒液75.0gと、硫化ナトリウム5水和塩4.3g(硫化ナトリウム単体として2.0g)と、水酸化ナトリウム7.0gと、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E8を10mgと、グルコースを10mgとを加え、150℃、50分、蒸解を行った。
【0191】
比較例20~22は、表19に示すように、各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、実施例48と同じ方法により蒸解を行った。
【0192】
【表18】
【0193】
【表19】
【0194】
(L材、タンニン類、黒液を使用したクラフト法による蒸解)
表20及び表21は、リグノセルロースを含む材料としてL材の木材チップ、第四級アンモニウム化合物及びタンニン類を使用して、黒液を使用した蒸解を行った結果を示したものである。また、表20及び表21に、使用した第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量、及び各測定の結果を示した。
【0195】
表20の実施例49は、ポット(MINI COLOR、テクサム技研社製)に、L材の木材チップを目開き710μmのステンレス製のふるいにかけ、ふるいに残ったL材の木材チップを60℃で24時間乾燥させたものを50.0gと、クラフト法による蒸解で得られた黒液75.0gと、硫化ナトリウム5水和塩4.3g(硫化ナトリウム単体として2.0g)と、水酸化ナトリウム7.0gと、合計質量が200.0gとなるように純水とを加えた。ここに蒸解促進剤として第四級アンモニウム化合物E1を10mgと、ケブラチョを10mgとを加え、150℃、50分、蒸解を行った。
【0196】
実施例50、及び比較例23は、表20及び表21に示すように、各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例49と同じ方法により蒸解を行った。
【0197】
【表20】
【0198】
【表21】
【0199】
(N材、糖類、黒液を使用したクラフト法による蒸解)
表22に示す比較例24~26は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを使用した。また、表22に示す各第四級アンモニウム化合物、糖類、使用量を変えた以外は、比較例20と同じ方法により蒸解を行った。
【0200】
【表22】
【0201】
(N材、タンニン類、黒液を使用したクラフト法による蒸解)
表23及び表24に示す実施例51、実施例52、及び比較例27は、リグノセルロースを含む材料としてN材の木材チップを使用した。また、表23及び表24に示す各第四級アンモニウム化合物、タンニン類、使用量を変えた以外は、実施例49と同じ方法により蒸解を行った。
【0202】
【表23】
【0203】
【表24】
【0204】
実施例1~52の蒸解促進剤は、クラフト法による蒸解、ポリサルファイド法による蒸解、及び黒液を使用したクラフト法による蒸解において、良好な、木片残留率、カッパー価、フリーネス、抽出率、及び夾雑物面積率であることがわかった。
【0205】
また、実施例1~52の蒸解促進剤を蒸解で使用し、その後排出された黒液は、動粘度が低いことがわかった。これにより、黒液の濃度を保ちつつ、動粘度を下げることが可能となる。このような黒液は、ボイラーへ容易に送り込むことができ、かつ、黒液の濃度が高い状態であるため、ボイラーで効率的に燃焼させることが可能となる。
【0206】
以上、本発明の蒸解促進剤は、リグノセルロースを含む材料をより効率的に蒸解させることができる蒸解促進剤であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0207】
本発明の蒸解促進剤、及び前記蒸解促進剤を使用したパルプの製造方法は産業上利用可能性を有する。