(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112373
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20220726BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220726BHJP
B60N 2/897 20180101ALI20220726BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/68
B60N2/897
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008193
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB06
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構造で、ヘッドレストガイドをシートバックフレームに固定するシートバックを備えた乗物用シートを提供する。
【解決手段】本発明は、シートバック1と、シートバックの上に設けられるヘッドレスト3と、シートバックの骨格をなすシートバックフレーム10とを備える乗物用シートSであって、シートバックフレームは、一対のバックサイドフレーム11と、一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレーム12と、ヘッドレストのステー31を保持するヘッドレストガイド17と、を有し、アッパフレームは、板状の第1パンフレーム13と、板状の第2パンフレーム14とを有し、第1パンフレームがシートバックの前方から、第2パンフレームがシートバックの後方から、ヘッドレストガイドを挟み込んで前記ヘッドレストガイドを支持する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、該シートバックの上に設けられるヘッドレストと、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、
前記シートバックフレームは、
一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、前記ヘッドレストのステーを保持するヘッドレストガイドと、を有し、
前記アッパフレームは、板状の第1パンフレームと、板状の第2パンフレームとを有し、前記第1パンフレームが前記シートバックの前方から、前記第2パンフレームが前記シートバックの後方から、前記ヘッドレストガイドを挟み込むこんで前記ヘッドレストガイドを支持することを特徴とすることを乗物用シート。
【請求項2】
前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち少なくとも一方が、ハット形状の縦断面を有することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち前記ハット形状の縦断面を有する一方の前記ハット形状の鍔部が他方に接合して、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとにより前記ヘッドレストガイドを支持するホルダ部が形成されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのそれぞれに、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる凹部が、互いに対向する位置に形成されており、
前記アッパフレームの前記ホルダ部は、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームの対向配置された凹部により形成されることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームに形成された前記凹部のうち少なくとも一方において、前記ヘッドレストガイドを挿入する開口部の周囲にフランジ部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、溶接により接合されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、互いに異なる材料によって形成される請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、構造用接着剤により接合されることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第1パンフレームは高張力鋼材により形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第2パンフレームは樹脂又はアルミニウムにより形成されることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、ヘッドレストガイドを有するシートバックフレームを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、シートクッション、シートバック、ヘッドレストを備えており、シートバック及びシートクッションには骨格をなすフレーム部材が設けられる。フレーム部材は、アーチ状の枠体から構成されており、フレーム部材の上部には、ヘッドレストから垂下するステーが挿通されるヘッドレストガイドが設けられている。ヘッドレストガイドは、フレーム部材の上部にプレス加工等で形成された凹みに溶接で取り付けられる。特許文献1には、フレーム部材に形成された嵌込み部に取り付けられたヘッドレストガイド(特許文献1では支持ブラケットと称される)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のフレーム部材にヘッドレストガイドを溶接により固定する場合、凹みや嵌込み部があったとしても複雑な動作が必要であり、ヘッドレストガイドの取り付けを機械化することが困難であった。そのため、より簡便な構造によりヘッドレストガイドをフレーム部材(シートバックフレーム)に固定する構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構造で、ヘッドレストガイドをシートバックフレームに固定するシートバックを備えた乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、乗物用シートであって、シートバックと、該シートバックの上に設けられるヘッドレストと、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、前記シートバックフレームは、一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、前記ヘッドレストのステーを保持するヘッドレストガイドと、を有し、前記アッパフレームは、板状の第1パンフレームと、板状の第2パンフレームとを有し、前記第1パンフレームが前記シートバックの前方から、前記第2パンフレームが前記シートバックの後方から、前記ヘッドレストガイドを挟み込むんで前記ヘッドレストガイドを支持することにより解決される。
【0007】
上記の乗物用シートによれば、第1パンフレームと第2パンフレームとにより前後方向からヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドを支持している。ヘッドレストを前後方向から挟み込んだ状態で第1パンフレームと第2パンフレームとを接合すれば、ヘッドレストガイドもあわせて固定することができる。そのため、比較的簡単な構造でヘッドレストガイドをシートバックフレームに固定することができる。
【0008】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち少なくとも一方が、ハット形状の縦断面を有するとよい。
第1パンフレーム及び第2パンフレームのうち少なくとも一方がハット形状の縦断面を有することにより、第1パンフレーム及び第2パンフレームの剛性が向上する。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち前記ハット形状の縦断面を有する一方の前記ハット形状の鍔部が他方に接合して、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとにより前記ヘッドレストガイドを支持するホルダ部が形成されるとよい。
鍔部を用いて接着することにより、より強固に第1パンフレームと第2パンフレームとを接着することができる。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのそれぞれに、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる凹部が、互いに対向する位置に形成されており、前記アッパフレームの前記ホルダ部は、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームの対向配置された凹部により形成されるとよい。
対向配置された凹部にヘッドレストガイドを挿入することで、シート幅方向におけるヘッドレストガイドの位置ずれを抑制することができる。
【0011】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームに形成された前記凹部のうち少なくとも一方において、前記ヘッドレストガイドを挿入する開口部の周囲にフランジ部が形成されるとよい。
ヘッドレストガイドを挿入する開口部の周囲にフランジ部を形成することにより、開口部の周囲が補強される。
【0012】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、溶接により接合されるとよい。
溶接により前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとを接合することで、より強固に接着される。また、第1パンフレームと第2パンフレームとを溶接により接合することで、その間に挟まれるヘッドレストガイドが固定されるため、ヘッドレストガイドをフレームに固定する工程を無くすことができる。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、互いに異なる材料によって形成されると更によい。
異なる材料によって形成することで、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームのうちいずれか一方を軽量化したり、高強度にしたりすることができる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、構造用接着剤により接着されると益々よい。
接着剤で固定することで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にフレームを組み立てることができる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームは高張力鋼材により形成されると一層よい。
前方から挟み込む第1パンフレームが高張力鋼材で形成されることにより、鉄製の場合と比較して、より軽量で高強度なフレームを形成することができる。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第2パンフレームは樹脂又はアルミニウムにより形成されると一段とよい。
第2パンフレームを樹脂又はアルミニウムにより形成することで、鉄製の場合と比較して、安価又は軽量なフレームを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記の乗物用シートによれば、第1パンフレームと第2パンフレームとにより前後方向からヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドを支持している。ヘッドレストを前後方向から挟み込んだ状態で第1パンフレームと第2パンフレームとを固着すれば、ヘッドレストガイドもあわせて固定することができる。そのため、例えば容易にヘッドレストガイドの組み立てをすることが可能となる。
また、第1パンフレーム及び第2パンフレームのうちいずれか一方又は両方がハット形状の縦断面を有することにより、第1パンフレーム及び第2パンフレームの剛性が向上する。
また、鍔部を用いて接着することにより、より強固に第1パンフレームと第2パンフレームとを接着することができる。
対向配置された凹部にヘッドレストガイドを挿入することで、シート幅方向における位置ずれを抑制することができる。
ヘッドレストガイドを挿入する開口部の周囲にフランジ部を形成することにより、開口部の周囲が補強される。
溶接により前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとを接着することで、より強固に接着される。また、第1パンフレームと第2パンフレームとを溶接して接着することで、その間に挟まれるヘッドレストガイドが固定されるため、従来のようにヘッドレストガイドをフレームに固定する工程を無くすことができる。
異なる材料によって形成することで、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームのうちいずれか一方を軽量化したり、高強度にしたりすることができる。また、安価な材料を用いることでフレームの形成にかかるコストを下げることができる。
構造用接着剤で固定することで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にフレームを組み立てることができる。
前方から挟み込む第1パンフレームが高張力鋼材で形成されることことにより、鉄製の場合と比較して、より軽量で高強度なフレームを形成することができる。
後方から挟み込む第2パンフレームを樹脂又はアルミニウムにより形成することで、鉄性の場合と比較して、安価で軽量なフレームを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートのシートフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】シートバックフレームのアッパフレームを前方から見た図である。
【
図4】シートバックフレームのアッパフレームを後方から見た図である。
【
図5】アッパフレームを構成する第1パンフレームの内側を示す斜視図である。
【
図6】アッパフレームを構成する第2パンフレームの内側を示す斜視図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿った端面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0021】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0022】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図であり、
図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、クッショントリムカバーTやパッドPを外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
車両用シートSは、
図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構7(
図2参照)を挟み込むように連結されている。シートバック1は、シートクッション2に対して回動して、角度調整可能に連結されている。リクライニング機構7は、シートバック1の傾斜角度を調整する。
【0026】
<シートフレームF>
車両用シートSの中には、
図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20とから構成される。
以下では、まず、シートクッションフレーム20等、シートバックフレーム10以外の構成について説明し、シートバックフレーム10の詳細についてはそれらの後に説明する。
【0027】
<シートクッションフレーム20>
シートクッションフレーム20は方形枠状に形成され、その側部にはクッションサイドフレーム21が設けられている。また、クッションサイドフレーム21を前方で連結する前方連結フレーム22と、後方で連結する後方連結フレーム23とを有する。車両用シートSの前後にある前方連結フレーム22及び後方連結フレーム23は丸パイプにより構成されている。また、前方連結フレーム22の前方にはクッションパンフレーム24が設けられている。なお、図示しないが、クッションパンフレーム24と、後方連結フレーム23とを架け渡す受圧部材が取り付けられており、受圧部材が着座した乗員の臀部を下方から支持している。
【0028】
<ヘッドレスト3及びヘッドレストフレーム30>
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支えるよう、シートバック1の上部に取り付けられる。ヘッドレスト3の内部には、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストフレーム30が設けられており、ヘッドレストフレーム30の左右両端には、ヘッドレスト3の下部から垂下する2つのヘッドレストステー31(ヘッドレストピラーとも呼ばれる)が設けられる。ヘッドレストステー31が、後述するシートバックフレーム10のアッパフレーム12に取り付けられたヘッドレストガイド17に挿通されることにより、ヘッドレスト3がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0029】
<パッドP及びクッショントリムカバーT>
シートバックフレーム10、シートクッションフレーム及びヘッドレストフレーム30の外側には、パッドP及びクッショントリムカバーT(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3が構成される。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーTは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0030】
<スライドレール4>
また、車両用シートSの下部には、
図2に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアBFに取り付けられる。
【0031】
スライドレール4は、前後方向に沿って車両用シートSをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロアBF上に固定されるロアレール、及びロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールを有する。車体に固定されたロアレールに対してアッパーレールが摺動可能となっている。
【0032】
<リクライニング機構7>
シートバック1の下端部とシートクッション2の後端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0033】
以下、本実施形態の車両用シートSが備えるシートバックフレーム10について、
図2~
図9を用いて説明する。
【0034】
<シートバックフレーム10>
図2に示すように、シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、両サイドに配置される一対のバックサイドフレーム11と、アッパフレーム12と、ロアフレーム16とを備える。アッパフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、バックサイドフレーム11の上端を連結する。ロアフレーム16は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11の下端を連結する。
【0035】
<ヘッドレストガイド17>
ヘッドレストガイド17は、ヘッドレストステー31が挿通される挿通口17aが設けられた管状体の部材である。ヘッドレストガイド17の上部には、後述するアッパフレーム12のホルダ部15の開口部(上側開口部15a)の径よりも大きな外径を有する頭部17bが設けられている。これにより、ヘッドレストガイド17が、アッパフレーム12のホルダ部15に挿入されても、アッパフレーム12の下側に抜け落ちることが抑制される。
なお、ヘッドレストガイド17は、ヘッドレスト3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するため、強度の高い金属製の部材により形成される。ヘッドレストガイド17は金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0036】
<アッパフレーム12>
アッパフレーム12は、板状の第1パンフレーム13と、板状の第2パンフレーム14とから構成される。第1パンフレーム13はシートバック1において前方側に位置しており、第2パンフレーム14はシートバック1において後方側、第1パンフレーム13の背面に位置している。
図7に示すように、第1パンフレーム13がシートバック1の前方から、第2パンフレーム14がシートバック1の後方から、ヘッドレストガイド17を挟み込み、ヘッドレストガイド17を支持している。第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とにより、ヘッドレストガイド17を保持する筒状のホルダ部15が形成される。ホルダ部15にヘッドレストガイド17を挿通することで、ヘッドレストガイド17が取り付けられる。
【0037】
第1パンフレーム13は、シートの前方向に向けて膨出する膨出部13aが形成されている。膨出部13aは車両用シートSの幅方向に延びるよう、第1パンフレーム13の長手方向に沿って形成されている。膨出部13aの上下方向にある端部には、第2パンフレーム14と接合する鍔部13bが形成されていて、
図7に示すように、第1パンフレーム13は、膨出部13aと鍔部13bとによりハット形状の縦断面を有するよう形成される。
なお、ハット形状にはキャップ形状も含まれる。言い換えれば、ハット形状には膨出部13aの上端及び下端のうち少なくとも一方から鍔部13bが形成される場合も含まれる。
また、本実施形態では、第1パンフレーム13のみがハット形状の縦断面を有しているが、第2パンフレーム14がハット形状の縦断面を有してもよい。第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14の両方がハット形状の縦断面を有してもよく、両方の鍔部を接合することで中空部分を有する閉断面構造(モナカ構造ともいう)を形成してもよい。
【0038】
第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14のそれぞれには、
図5及び
図6に示すように上下方向に延びる凹部13c、14cが二つずつ、互いに対向する位置に形成されている。凹部13c、14cはヘッドレストガイド17の外形にあわせて形成されている。凹部13cと凹部14cとを対向して配置し、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とを接合することにより、ヘッドレストガイド17を保持するホルダ部15が形成される。
【0039】
ホルダ部15は、凹部13cと凹部14cとにより筒状の空間を形成し、上下に開口部(上側開口部15a、下側開口部15b)を有する。言い換えれば、ホルダ部15の上側開口部15aは、
図5に示す凹部13cの開口部13d、凹部14cの開口部14dから構成される。ヘッドレストガイド17は、ホルダ部15の上側開口部15aから、挿入されることにより取り付けられる。
【0040】
図5に示すように、第2パンフレーム14において、開口部14dの周辺にはフランジ部14eが形成されている。
図8に示すように、フランジ部14eの位置は、第1パンフレーム13の膨出部13aの上端と略同じ高さに形成されており、ヘッドレストガイド17の頭部17bに当接することで、ヘッドレストガイド17がアッパフレーム12の下側に抜け落ちることが抑制される。また、フランジ部14eを設けることにより、開口部14dの周囲が補強される。なお、このフランジ部は第1パンフレーム13側の開口部13dの周囲に形成されてもよい。
【0041】
第2パンフレーム14には、軽量化のために、二つの凹部14cの間に穴14hが形成されている。また、凹部14cの幅方向の外側おいて切欠き14iが形成されている。
【0042】
図5及び
図7に示すように、第1パンフレーム13の上端及び下端の一部には、第2パンフレームの上端及び下端に掛かる鉤状の引掛け部13gが形成されている。また、
図6に示すように、第2パンフレーム14の上端及び下端には、第1パンフレーム13の引掛け部13gを避けた位置において、鉤状の引掛け部14gが形成されている。第1パンフレーム13の引掛け部13gを第2パンフレームの端部に、第2パンフレーム14の引掛け部14gを第1パンフレームの端部に掛けることにより、第1パンフレーム13に対する第2パンフレーム14の上下方向の位置ずれを抑制することができる。
【0043】
第1パンフレーム13と第2パンフレーム14は溶接により接着されている。溶接は第2パンフレーム14に形成された複数の溶接孔14fを用いて行われる。
【0044】
第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とは、接着剤により接着・結合されてもよい。接着剤は、構造用接着剤であり、高靭性タイプ又は高粘度タイプであることが望ましい。高靭性タイプの構造用接着剤の場合は、フレームの捻じれ等による接着剤の割れが好適に抑制され、接着の耐久性を向上させることができる。高粘度タイプである場合、接着する際のたれを抑制することができる。構造用接着剤としては、例えばエポキシ系樹脂を主成分とするものがある。
【0045】
本実施形態において、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14は鉄製であり、鋼板をプレス加工することにより形成される。第1パンフレーム13と第2パンフレーム14は鉄製に限定されず、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14は互いに異なる材料によって形成されてもよい。
【0046】
例えば、第1パンフレーム13を高張力鋼材により形成されてもよい。高張力鋼材は薄くても張りがあることから、鋼板より板厚をより薄くできるため剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。第2パンフレーム14を高張力鋼材により形成してもよい。
【0047】
また、第2パンフレーム14の材料を樹脂製又はアルミニウム製にしてもよい。鉄製の場合と比較して安価又は軽量なアッパフレームを形成することができる。
【0048】
アッパフレーム12の別例について説明する。
図9に示すアッパフレーム12Aもシートバックフレーム10の上部に取り付けられる部材であり、バックサイドフレーム11の上端部を架け渡して設けられる。
図3~
図8に示すアッパフレーム12と同様、第1パンフレーム13Aと第2パンフレーム14Aとによりヘッドレストガイド17を挟み込むことでヘッドレストガイド17を保持している。第1パンフレーム13A及び第2パンフレーム14Aのそれぞれに上下方向に延びる凹部13Ac、14Acが形成されていて、それらを対向配置させることにより、ヘッドレストガイド17を保持するホルダ部15Aが形成される。
【0049】
第1パンフレーム13A及び第2パンフレーム14Aは、両方ともに膨出部13Aa、14Aaと鍔部13Ab、14Abとを有するハット形状の縦断面を有する。第1パンフレーム13A及び第2パンフレーム14Aを、それぞれの鍔部13Ab、14Abを合わせて溶接する、又は、構造用接着剤を用いて接合することにより、閉断面構造(モナカ構造)が形成される。このように、第1パンフレーム13Aと第2パンフレーム14Aを形成することで、アッパフレームとしての剛性を維持しつつ、ヘッドレストガイド17を保持するアッパフレーム12Aを容易に組み立てることができる。
【0050】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、本実施形態では第1パンフレーム13がハット形状の縦断面を有していたが、第2パンフレーム14がシートの後方に向けて膨出した膨出部を有し、縦断面がハット形状となるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
S 車両用シート(乗物用シート)
F シートフレーム
T クッショントリムカバー
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
7 リクライニング機構
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12、12A アッパフレーム
13、13A 第1パンフレーム
13a、13Aa 膨出部
13b、13Ab 鍔部
13c、13Ac 凹部
13d 開口部
14 第2パンフレーム
14Aa 膨出部
14Ab 鍔部
14c、14Ac 凹部
14d 開口部
14e フランジ部
14f 溶接孔
14g 引掛け部
14h 穴
14i 切欠き
15 ホルダ部
15a 上側開口部
15b 下側開口部
16 ロアフレーム
17 ヘッドレストガイド
17a 挿通口
17b 頭部
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 前方連結フレーム
23 後方連結フレーム
24 クッションパンフレーム
30 ヘッドレストフレーム
31 ヘッドレストステー