(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112374
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20220726BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220726BHJP
B60N 2/897 20180101ALI20220726BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/68
B60N2/897
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008194
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB06
3B087DC05
(57)【要約】
【課題】剛性を維持しつつ軽量化されたシートバックフレームを備える乗物用シートを提供する。
【解決手段】本発明は、シートバック1と、シートバックの骨格をなすシートバックフレーム10とを備える乗物用シートSであって、シートバックフレームは、一対のバックサイドフレーム11と、一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレーム12と、を有し、アッパフレームは、一対のバックサイドフレームのうち一方に連結される第1部材13と、他方に連結される第2部材14と、第1部材と第2部材との間に位置し、第1部材と第2部材とに連結される第3部材15とを備え、第1部材及び第2部材は金属製であり、第3部材は、第1部材及び第2部材の材料より軽量な材料で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、該シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、
前記シートバックフレームは、
一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、を有し、
前記アッパフレームは、前記一対のバックサイドフレームのうち一方に連結される第1部材と、他方に連結される第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に位置し、前記第1部材と前記第2部材とに連結される第3部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材は金属製であり、前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材の材料より軽量な材料で形成されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記第3部材は、樹脂製であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第3部材は、アルミニウム又はマグネシウムの軽合金製であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材は、高張力鋼材により形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材と、構造用接着剤により接合されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第3部材は、前記第1部材又は前記第2部材に向けて端部から延びる第1切片を有し、
前記第1部材及び前記第2部材は、前記第3部材に向けて端部から延びる第2切片を有し、
前記第3部材は、前記第1切片を前記第2切片に重ねて接着することにより、前記第1部材及び前記第2部材に連結されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第3部材は、前記乗物用シートの前方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第1膨出部と、該第1膨出部の上端及び/又は下端から延びる第1鍔部とを有し、前記第3部材は、前記第1膨出部と前記第1鍔部とによりハット形状の縦断面を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第3部材は、ヘッドレストガイドを保持するホルダ部を備え、
前記ホルダ部は、前記第3部材の前記膨出部の上面及び下面において、前記ヘッドレストガイドの外径に合わせて、上下方向に貫通する貫通孔により構成されることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記乗物用シートの前方に向けて膨出する第2膨出部と、前記第2膨出部の上端及び/又は下端から延びる第2鍔部とを有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1膨出部と前記第2鍔部とによりハット形状の縦断面を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第3部材と前記第1部材との間、及び/又は、前記第3部材と前記第2部材との間にスリットが形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、軽量化されたシートフレームを備える乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両用シートは、燃費等を向上させるために、シートフレームの一部に樹脂製の部材を用いて軽量化が図られているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシートフレームのように、一部に樹脂製の部材を用いれば軽量化を図ることができる。しかしながら、シートフレームを構成するサイドフレームとアッパフレームとの接続に樹脂製の部材を用いた場合、事故等で加わる強い衝撃に対して十分な剛性を確保することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、剛性を維持しつつ軽量化されたシートバックフレームを備える乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、シートバックと、該シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、前記シートバックフレームは、一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、を有し、前記アッパフレームは、前記一対のバックサイドフレームのうち一方に連結される第1部材と、他方に連結される第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に位置し、前記第1部材と前記第2部材とに連結される第3部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材は金属製であり、前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材の材料より軽量な材料で形成されていることにより解決される。
【0007】
上記構成によれば、一対のサイドフレームと接続する第1部材及び第2部材を金属製とすることで剛性を維持しつつ、第3部材を第1部材及び第2部材の材料より軽量な材料で形成することで、シートフレームの軽量化を図ることができる。
【0008】
また、上記の乗物用シートにおいて、第3部材は、樹脂製であるとよい。
第3部材を樹脂製とすることで、シートフレームの軽量化を図ることができる。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、第3部材は、アルミニウム又はマグネシウムの軽合金製であるとよい。
第3部材をアルミニウム又はマグネシウムの軽合金製とすることで、シートフレームの軽量化をはかることができる。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1部材及び前記第2部材は、高張力鋼材により形成されるとよい。
第1部材及び第2部材を高張力鋼材により形成することで、第1部材及び第2部材を鉄で形成する場合と比較して、より軽量で高強度なアッパフレームを形成することができる。
【0011】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第3部材は、前記第1部材及び前記第2部材と、構造用接着剤により接合されているとよい。
接合に構造用接着剤を用いることで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にシートフレームを組み立てることができる。
【0012】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第3部材は、前記第1部材又は前記第2部材に向けて端部から延びる第1切片を有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記第3部材に向けて端部から延びる第2切片を有し、前記第3部材は、前記第1切片を前記第2切片に重ねて接着することにより、前記第1部材及び前記第2部材に連結されるとよい。
第3部材の第1切片を第2切片に重ねて接着することでより強固に接合することができる。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第3部材は、前記乗物用シートの前方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第1膨出部と、該第1膨出部の上端及び/又は下端から延びる第1鍔部とを有し、前記第3部材は、前記第1膨出部と前記第1鍔部とによりハット形状の縦断面を有するとよい。
第3部材がハット形状の縦断面を有することで、第3部材の剛性が向上する。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第3部材は、ヘッドレストガイドを保持するホルダ部を備え、前記ホルダ部は、前記第3部材の前記第1膨出部の上面及び下面において、前記ヘッドレストガイドの外径に合わせて、上下方向に貫通する貫通孔により構成されるとよい。
ヘッドレストガイドを簡単な構成で保持することができ、溶接作業を減らすことができる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1部材及び第2部材は、前記乗物用シートの前方に向けて膨出する第2膨出部と、前記第2膨出部の上端及び/又は下端から延びる第2鍔部とを有し、前記第1部材及び前記第2部材は、前記第2膨出部と前記第2鍔部とによりハット形状の縦断面を有するとよい。
第1部材及び第2部材がハット形状の縦断面を有することにより、第1部材及び第2部材の剛性が向上する。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第3部材と前記第1部材との間、及び/又は、前記第3部材と前記第2部材との間にスリットが形成されているとよい。
スリットが形成されることにより、アッパフレームの軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の乗物用シートによれば、剛性を維持しつつ軽量化されたシートバックフレームを備える乗物用シートを提供することができる。
すなわち、上記構成の乗物用シートによれば、一対のサイドフレームと接続する第1部材と第2部材とを金属製とすることで、剛性を維持しつつ、第3部材を異なるより軽量な材料で形成することで、軽量化を図ることができる。
また、第3部材を樹脂製とすることで、アッパフレームの軽量化を図ることができる。
また、第3部材をアルミニウム又はマグネシウムの軽合金製とすることで、アッパフレームの軽量化をはかることができる。
また、第1部材及び第2部材が、高張力鋼材により形成されることで、鉄製の場合と比較して、より軽量で高強度なアッパフレームを形成することができる。
また、接合に構造用接着剤を用いることで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にフレームを組み立てることができる。
また、端部から延びる切片を用いて接着することにより、直接端部を構造用接着剤で接合するよりも強固に接合することができる。
また、第3部材がハット形状の縦断面を有することで、第3部材の剛性が向上する。
また、ヘッドレストガイドを保持するガイドを、膨出部を貫通する貫通孔により構成することで、ヘッドレストガイドを簡単な構成で保持することができる。
また、第1部材及び第2部材がハット形状の縦断面を有することで、第3部材の剛性が向上する。
また、第3部材と第1部材との間、及び/又は、第3部材と第2部材との間にスリットを形成することにより、アッパフレームの軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートのシートフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】シートバックフレームのアッパフレームを前方から見た図である。
【
図4】シートバックフレームのアッパフレームを後方から見た図である。
【
図5】ヘッドレストガイドが取り外されたアッパフレームを前方から見た図である。
【
図6】
図3のVI-VI線に沿った第3部材の断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿った第3部材の断面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿った第1部材の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0021】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0022】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座可能な状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図であり、
図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、クッショントリムカバーTやパッドPを外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
車両用シートSは、
図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構7(
図2参照)を挟み込むように連結されている。シートバック1は、シートクッション2に対して回動して、角度調整可能に連結されている。リクライニング機構7は、シートバック1の傾斜角度を調整する。
【0026】
<シートフレームF>
車両用シートSの中には、
図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20とから構成される。
以下では、まず、シートクッションフレーム20等、シートバックフレーム10以外の構成について説明し、シートバックフレーム10の詳細についてはそれらの後に説明する。
【0027】
<シートクッションフレーム20>
シートクッションフレーム20は方形枠状に形成され、その側部にはクッションサイドフレーム21が設けられている。また、クッションサイドフレーム21を前方で連結する前方連結フレーム22と、後方で連結する後方連結フレーム23とを有する。車両用シートSの前後にある前方連結フレーム22及び後方連結フレーム23は丸パイプにより構成されている。また、前方連結フレーム22の前方にはクッションパンフレーム24が設けられている。なお、図示しないが、クッションパンフレーム24と、後方連結フレーム23とを架け渡す受圧部材が取り付けられており、受圧部材が着座した乗員の臀部を下方から支持している。
【0028】
<ヘッドレスト3及びヘッドレストフレーム30>
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支えるよう、シートバック1の上部に取り付けられる。ヘッドレスト3の内部には、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストフレーム30が設けられており、ヘッドレストフレーム30の左右両端には、ヘッドレスト3の下部から垂下する2つのヘッドレストピラー31(ヘッドレストステーとも呼ばれる)が設けられる。ヘッドレストピラー31が、後述するシートバックフレーム10のアッパフレーム12に取り付けられたヘッドレストガイド17に挿通されることにより、ヘッドレスト3がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0029】
<パッドP及びクッショントリムカバーT>
シートバックフレーム10、シートクッションフレーム20及びヘッドレストフレーム30の外側には、パッドP及びクッショントリムカバーT(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3が構成される。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーTは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0030】
<スライドレール4>
また、車両用シートSの下部には、
図2に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。
【0031】
スライドレール4は、前後方向に沿って車両用シートSをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレール、及びロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールを有する。車体に固定されたロアレールに対してアッパーレールが摺動可能となっている。
【0032】
<リクライニング機構7>
シートバック1の下端部とシートクッション2の後端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0033】
以下、本実施形態の車両用シートSが備えるシートバックフレーム10について、
図2~
図8を用いて説明する。
【0034】
<シートバックフレーム10>
図2に示すように、シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、両サイドに配置される一対のバックサイドフレーム11と、アッパフレーム12と、ロアフレーム16とを備える。アッパフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、バックサイドフレーム11の上端を連結する。ロアフレーム16は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11の下端を連結する。
【0035】
<アッパフレーム12>
アッパフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11のうち一方の右側のサイドフレーム11aに連結される第1部材13と、他方の左側のサイドフレーム11bに連結される第2部材14とを備える。また、アッパフレーム12は、第1部材13と第2部材14との間に位置し、第1部材13と第2部材14とに連結される第3部材15を備える。
【0036】
本実施形態において、第1部材13及び第2部材14は鉄製で、鋼板をプレス加工することにより形成される。第1部材13及び第2部材14が鉄製であることにより十分な強度を維持しつつアッパフレーム12をバックサイドフレーム11に取り付けることができる。なお、第1部材13及び第2部材14は鉄製に限らず、例えば、高張力鋼材により形成されてもよい。高張力鋼材は薄くても張りがあることから、鋼板よりも板厚を薄くすることができるため、剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、第3部材15は樹脂により形成されている。第3部材15が、鉄よりも軽量な樹脂で形成されているため、アッパフレーム全体を鉄製とした場合と比較して、アッパフレーム12が軽量化され、シートフレームFの軽量化を図ることができる。
なお、第3部材15は樹脂製に限定されず、第1部材13及び第2部材14を形成する材料よりも軽量なアルミニウム又はマグネシウムの軽合金製であってもよい。第3部材15を、軽い軽合金製とすることで、アッパフレーム12が軽量化され、シートフレームFの軽量化を図ることができる。
【0038】
第1部材13と第3部材15との接合、及び、第2部材14と第3部材15との接合は、構造用接着剤を用いられる。構造用接着剤として、例えばエポキシ系樹脂を主成分とする接着剤を使用することができ、この構造用接着剤を使用すると、接合部の高接着力及び高耐力を得ることができる。構造用接着剤として、エポキシ系の接着剤以外に、ウレタン系、アクリル系等の構造用接着剤を使用してもよい。
また、構造用接着剤の特性として接合面において電気絶縁層が形成されため、例えば第3部材15を鉄とは異なる金属、例えば上述したアルミニウム又はマグネシウムの軽合金で形成した場合でも電解腐食を抑制することができる。
【0039】
また、第3部材15は、第1部材13又は第2部材14に向けて端部から延びる第1切片15aを有する。また、第1部材13及び第2部材14のそれぞれは、第3部材15に向けて延びる第2切片13a、14aを有する。
第3部材15は、第1切片15aを第2切片13a、14aに重ねて接着することにより、第1部材13及び第2部材14に連結される。
第1切片15aは、第3部材15の左右方向の両端部にそれぞれ3つ設けられている。また、第2切片13a、14aは、第1部材13及び第2部材14のそれぞれの端部において、第1切片15aの位置に対応するよう3つ設けられている。なお、第1切片15a、第2切片13a、14aの数は3つに限らず、2つ又は4つ以上設けられてもよい。また、第1切片15a、第2切片13a、14aの数は1つでもよく、その場合、上下方向に長い形状とするのがよい。
【0040】
また、第3部材15と第1部材13との間、第3部材15と第2部材14との間には、
図3及び
図4に示すようにスリット19が形成されており、スリット19により軽量化が図られている。
【0041】
また、本実施形態において、第1切片15aと第2切片13a、14aと重ね、接着面に構造用接着剤を塗布することで接着される。
第3部材15がアルミニウム等の金属製の材料で形成される場合、第1切片15aと第2切片13a、14aとを溶接により接合してもよい。
第3部材15をより軽量な材料で形成することにより、アッパフレーム12を軽量化することができ、それによりシートフレームFを軽量化することができる。
【0042】
次に、第3部材15の形状について説明する。
図6に示すように、第3部材15は、上下方向における中央部付近に、車両用シートSの前方に向けて膨出する膨出部15b(第1膨出部)が形成されている。
膨出部15bは、第3部材15において車両用シートSの左右方向(幅方向)に延びるよう形成されている。膨出部15bの上下端部のそれぞれには、鍔部15c(第1鍔部)が形成されていて、膨出部15bと鍔部15cとにより、第3部材15がハット形状の縦断面を有するように形成されている。第3部材15の縦断面がハット形状になることで、第3部材15の剛性が向上する。
なお、第3部材15の鍔部15cは、膨出部15bの上下方向の端部両方から延びているが、鍔部15cは一方の端部からのみ延びていてもよい。また、第3部材15は、鍔部15cが無く膨出部15bのみで構成されてもよく、その場合、縦断面がC字状に形成される。
【0043】
第1部材13及び第2部材14も、第3部材15と同様に、上下方向の中央部において、車両用シートSの前方に向けて膨出する膨出部13b、14b(第2膨出部)が形成されている。また、鍔部13c、14c(第2鍔部)が膨出部13b、14bの上下端部から上方向又は下方向に延びるよう形成されていている。第1部材13及び第2部材14は、膨出部13b、14bと、鍔部13c、14cと、によりハット形状の縦断面を有するように形成されている。第1部材13及び第2部材14の断面をハット形状とすることにより、第1部材13及び第2部材14の剛性が向上する。なお、鍔部13c、14cは上下方向の端部両方から延びているが、鍔部13c、14cは一方の端部からのみ延びていてもよい。また、第1部材13及び第2部材14は、膨出部13b、14bのみで構成されてもよく、その場合、縦断面がC字状に形成される。
<ヘッドレストガイド17>
【0044】
次に、第3部材15を用いたヘッドレストガイド17を保持する構造について説明する。
車両用シートの製造工程において機械化が進められているが、従来のシートフレームFにおいて、ヘッドレストガイド17を取り付けに溶接をする必要があり、その溶接作業が複雑であるため機械化が困難であった。そのため、より簡便な方法で、ヘッドレストガイド17をシートフレームFに固定する構造が求められていた。
【0045】
ヘッドレストガイド17は、ヘッドレストピラー31が挿通される挿通口17aが設けられた管状体の部材である。ヘッドレストガイド17の上部には、後述するアッパフレーム12のホルダ部18の開口部(上側開口部18a)の径R1よりも大きな外径R2を有する頭部17bが設けられている。これにより、ヘッドレストガイド17が、アッパフレーム12のホルダ部18に挿入されても、アッパフレーム12の下側に抜け落ちることが抑制される。
なお、ヘッドレストガイド17は、ヘッドレスト3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するため、強度の高い金属製の部材により形成される。ヘッドレストガイド17は金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0046】
<ホルダ部18>
また、第3部材15には、
図3~
図5に示すように、ヘッドレストガイド17を保持するホルダ部18を備えている。ホルダ部18は、膨出部15bの上面15dにおいて上下方向に形成された貫通孔15fと、下面15eに形成された貫通孔15gとにより構成されている。すなわち、貫通孔15fはホルダ部18の上側開口部18aとなり、貫通孔15gは、ホルダ部18の下側開口部18bとなる。
【0047】
上面15dの貫通孔15f(上側開口部18a)と、下面15eの貫通孔15g(下側開口部18b)は、ヘッドレストガイド17本体の外径R0より若干大きい直径R1でもって形成されている。また、上側開口部18a及び下側開口部18bは、
図6に示すよう、それらの中心が上下方向の軸線C上に位置する配置されている。そのため、
図3、
図4、
図6に示すように、貫通孔15f及び貫通孔15gにヘッドレストガイド17の本体を挿通することにより、ヘッドレストガイド17が取り付けられる。
また、ヘッドレストガイド17の頭部17bの外径R2は、上面15dに形成された貫通孔15f(上側開口部18a)の直径R1より大きく形成されており、頭部17bが貫通孔15fの周囲にかかることで、下方に落ちることが抑制される。
【0048】
従来は、ヘッドレストガイドをパイプで形成されたアッパフレームに溶接して取り付けられていた。本実施形態のアッパフレームでは、膨出部15bに形成された貫通孔15f、15gに、ヘッドレストガイド17を通して取り付けるので、溶接により取り付ける必要がない。そのため、予めアッパフレームを工場で作製するようにすれば、組み立て工程において溶接する箇所を減らすことができる。簡便な方法でヘッドレストガイド17を固定する構造であるため、シートフレームFの組み立て作業を機械化することが可能となる。
【0049】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。なお、本実施形態では、車両用シートSの前方に向けて膨出部が膨出していたが、膨出部は後方に向けて膨出するよう形成されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
S 車両用シート(乗物用シート)
F シートフレーム
T クッショントリムカバー
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
7 リクライニング機構
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 アッパフレーム
13 第1部材
13a 第2切片
13b 膨出部(第2膨出部)
13c 鍔部(第2鍔部)
14 第2部材
14a 第2切片
14b 膨出部(第2膨出部)
14c 鍔部(第2鍔部)
15 第3部材
15a 第1切片
15b 膨出部(第1膨出部)
15c 鍔部(第1鍔部)
15d 上面
15e 下面
15f 貫通孔
15g 貫通孔
16 ロアフレーム
17 ヘッドレストガイド
17a 挿通口
17b 頭部
18 ホルダ部
18a 上側開口部
18b 下側開口部
19 スリット
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 前方連結フレーム
23 後方連結フレーム
24 クッションパンフレーム
30 ヘッドレストフレーム
31 ヘッドレストピラー