(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112375
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20220726BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220726BHJP
B60N 2/897 20180101ALI20220726BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/68
B60N2/897
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008195
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁明
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DB04
3B087DB06
3B087DC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ピラーの下端部を加工することなくヘッドレストを支持するシートバックフレームを備えた乗物用シートを提供する。
【解決手段】本発明は、シートバックと、シートバックの上に設けられるヘッドレストと、シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、シートバックフレームは、一対のバックサイドフレーム11と、一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、ヘッドレストのピラー31を保持するヘッドレストガイド17と、を有し、アッパフレームは、ヘッドレストガイドを保持するホルダ部15を有し、ホルダ部は、ホルダ部の下端において、ヘッドレストガイドに保持されたピラーの下端部を覆うカバー部15cを有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックと、該シートバックの上に設けられるヘッドレストと、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、
前記シートバックフレームは、
一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、前記ヘッドレストのピラーを保持するヘッドレストガイドと、を有し、
前記アッパフレームは、
前記ヘッドレストガイドを保持するホルダ部を有し、
前記ホルダ部は、該ホルダ部の下端において、前記ヘッドレストガイドに保持された前記ピラーの下端部を覆うカバー部を有することを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記カバー部の下端は、前記ヘッドレストガイドに保持された前記ピラーの下端部よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記アッパフレームは、板状の第1パンフレームと、板状の第2パンフレームとを有し、
前記ホルダ部として、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち少なくとも一方には、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる第1凹部が形成されていて、
前記ホルダ部は、前記第1凹部に前記ヘッドレストガイドを挿入して、前記第1パンフレームが前記シートバックの前方から、前記第2パンフレームが前記シートバックの後方から、前記ヘッドレストガイドを挟み込むことにより、前記ヘッドレストガイドを保持することを特徴とする請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記アッパフレームは、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうちの他方に、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる第2凹部が、前記第1凹部に対向する位置に形成されており、
前記ホルダ部は、前記第1凹部及び前記第2凹部に前記ヘッドレストガイドを挿入して、前記ヘッドレストガイドを保持することを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記第1パンフレームは、前記乗物用シートの前方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第1膨出部と、該第1膨出部の上側端部及び/又は下側端部から延びる第1鍔部と、を有し、
前記第1パンフレームは、前記第1膨出部と前記第1鍔部とにより、ハット形状の縦断面を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第2パンフレームは、前記乗物用シートの後方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第2膨出部と、該第2膨出部の上側端部及び/又は下側端部から延びる第2鍔部と、を有し、
前記第2パンフレームは、前記第2膨出部と前記第2鍔部とにより、ハット形状の縦断面を有することを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、互いに異なる材料によって形成されることを特徴とする請求項3から6のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、構造用接着剤により接合されることを特徴とする請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記第1パンフレームは高張力鋼材により形成されることを特徴とする請求項7又は8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記第2パンフレームは樹脂又はアルミニウムにより形成されることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、ヘッドレストピラーを支持するシートバックフレームを備えた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、シートクッション、シートバック、ヘッドレストを備えており、シートバック及びシートクッションには骨格をなすフレーム部材が設けられる。フレーム部材は、アーチ状の枠体から構成されており、フレーム部材の上部には、ヘッドレストから垂下するピラー(ステーとも呼ばれる)が挿通されるヘッドレストガイドが設けられている。従来、ヘッドレストガイドは、フレーム部材の上部にはプレス加工等で凹みに溶接等により取り付けられる。特許文献1には、フレーム部材に形成された嵌込み部に取り付けられたヘッドレストガイド(特許文献1では支持ブラケットと称される)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用シートでは、ヘッドレストのピラーの方がヘッドレストガイドより長いため、ピラーをヘッドレストガイドに挿入した場合、ピラーの下端がヘッドレストガイドの下端よりも下方に位置するようになる。そのため、ピラーの下端は、乗員(着座者)の背中に当接したりシートバックから外出したりする場合に備えて半球状に加工されていた。しかしながら、この半球状の加工にはコストと手間がかかるため、ピラーの下端部を加工することなく、ヘッドレストを保持する構造が求められていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ピラーの下端部を加工することなくヘッドレストを保持するシートバックフレームを備えた乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、シートバックと、該シートバックの上に設けられるヘッドレストと、前記シートバックの骨格をなすシートバックフレームとを備える乗物用シートであって、前記シートバックフレームは、一対のバックサイドフレームと、前記一対のバックサイドフレームを連結するアッパフレームと、前記ヘッドレストのピラーを保持するヘッドレストガイドと、を有し、前記アッパフレームは、前記ヘッドレストガイドを保持するホルダ部を有し、前記ホルダ部は、該ホルダ部の下端において、前記ヘッドレストガイドに保持された前記ピラーの下端部を覆うカバー部を有することにより解決される。
【0007】
アッパフレームのホルダ部がピラーの下端部を覆うカバー部を有することにより、ピラーの下端部が乗員の背中が当接したり、シートバックから外出したりすることが抑制される。そのため、ピラーの下端部を半球状に加工する必要がなくなる。
【0008】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記カバー部の下端は、前記ヘッドレストガイドに保持された前記ピラーの下端部よりも下方に位置するとよい。
カバー部の下端が、ピラーの下端よりも下方に位置することで、より確実にピラーを保護することができる。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記アッパフレームは、板状の第1パンフレームと、板状の第2パンフレームとを有し、前記ホルダ部として、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうち少なくとも一方には、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる第1凹部が形成されていて、前記ホルダ部は、前記第1凹部に前記ヘッドレストガイドを挿入して、前記第1パンフレームが前記シートバックの前方から、前記第2パンフレームが前記シートバックの後方から、前記ヘッドレストガイドを挟み込むことにより、前記ヘッドレストガイドを保持するとよい。
ホルダ部を構成する第1凹部にヘッドレストガイドを挿入して、第1パンフレームと第2パンフレームとによりヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドの横ずれが防止され、より強固にヘッドレストガイドが保持されるようになる。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記アッパフレームは、前記第1パンフレーム及び前記第2パンフレームのうちの他方に、前記ヘッドレストガイドの外形に合わせて上下方向に延びる第2凹部が、前記第1凹部に対向する位置に形成されており、
前記ホルダ部は、前記第1凹部及び前記第2凹部に前記ヘッドレストガイドを挿入して、前記ヘッドレストガイドを保持するとよい。
ホルダ部を構成する第1凹部及び第2凹部にヘッドレストガイドを挿入して、第1パンフレームと第2パンフレームとによりヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドの横ずれが防止され、より強固にヘッドレストガイドが保持されるようになる。
【0011】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームは、前記乗物用シートの前方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第1膨出部と、該第1膨出部の上側端部及び/又は下側端部から延びる第1鍔部と、を有し、前記第1パンフレームは、前記第1膨出部と前記第1鍔部とにより、ハット形状の縦断面を有するとよい。
第1パンフレームがハット形状の縦断面を有することにより、アッパフレームの剛性が向上する。
【0012】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第2パンフレームは、前記乗物用シートの後方に向けて膨出すると共に、前記乗物用シートの幅方向に延びる第2膨出部と、該第2膨出部の上側端部及び/又は下側端部から延びる第2鍔部と、を有し、前記第2パンフレームは、前記第2膨出部と前記第2鍔部とにより、ハット形状の縦断面を有するとよい。
第2パンフレームがハット形状の縦断面を有することにより、アッパフレームの剛性が向上する。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、互いに異なる材料によって形成されるとよい。
性質の違う材料を合わせて形成することにより、それぞれの特徴を生かしたアッパフレームを形成することができる。例えば第1パンフレームと第2パンフレームのうちいずれか一方を軽量化したり、高強度にしたりすることができる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームと前記第2パンフレームとは、構造用接着剤により接合されるとよい。
接着剤で接合することで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にフレームを組み立てることができる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第1パンフレームは高張力鋼材により形成されるとよい。
第1パンフレームが高張力鋼材で形成されることにより、鉄製の場合と比較して、より軽量で高強度なフレームを形成することができる。
【0016】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記第2パンフレームは樹脂又はアルミニウムにより形成されるとよい。
第2パンフレームを樹脂又はアルミニウムにより形成することで、鉄製の場合と比較して、安価又は軽量なフレームを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アッパフレームのホルダ部がピラーの下端部を覆うカバー部を有することにより、ピラーの下端部が乗員の背中が当接したり、シートバックから外出したりすることが抑制される。そのため、ピラーの下端部を半球状に加工する必要がなくなる。
また、カバー部の下端が、ピラーの下端よりも下方に位置することで、より確実にピラーを保護することができる。
また、ホルダ部を構成する第1凹部にヘッドレストガイドを挿入して、第1パンフレームと第2パンフレームとによりヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドの横ずれが防止され、より強固にヘッドレストガイドが保持されるようになる。
また、ホルダ部を構成する第1凹部及び第2凹部にヘッドレストガイドを挿入して、第1パンフレームと第2パンフレームとによりヘッドレストガイドを挟み込むことにより、ヘッドレストガイドの横ずれが防止され、より強固にヘッドレストガイドが保持されるようになる。
また、第1パンフレームがハット形状の縦断面を有することにより、アッパフレームの剛性が向上する。
また、第2パンフレームがハット形状の縦断面を有することにより、アッパフレームの剛性が向上する。
また、性質の違う材料を合わせて形成することにより、それぞれの特徴を生かしたアッパフレームを形成することができる。例えば第1パンフレームと第2パンフレームのうちいずれか一方を軽量化したり、高強度にしたりすることができる。
また、第1パンフレームと第2パンフレームとを接着剤で接合することで、組み立てる際の溶接作業を減らし、より簡便にフレームを組み立てることができる。
また、第1パンフレームが高張力鋼材で形成されることにより、鉄製の場合と比較して、より軽量で高強度なフレームを形成することができる。
また、第2パンフレームを樹脂又はアルミニウムにより形成することで、鉄製の場合と比較して、安価又は軽量なフレームを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図2】車両用シートのシートフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】シートバックフレームのアッパフレームを前方から見た図である。
【
図4】シートバックフレームのアッパフレームを後方から見た図である。
【
図7A】
図3のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図7B】アッパフレームの別例を示す断面図である。
【
図7C】アッパフレームの別例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0020】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載される車両用シートに限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるシートにも適用され得る。
【0021】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
【0022】
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが後述する着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0023】
<車両用シートS>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の基本構成について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、車両用シートSの斜視図であり、
図1中車両用シートSの一部については、図示の都合上、クッショントリムカバーTやパッドPを外した構成にて図示している。
【0024】
車両用シートSは、車体フロアの上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、後部座席のシートとしても利用可能であり、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0025】
車両用シートSは、
図1に示すように、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック1、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション2、及び、シートバック1の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト3を主な構成要素とする。シートバック1とシートクッション2とはリクライニング機構7(
図2参照)を挟み込むように連結されている。シートバック1は、シートクッション2に対して回動して、角度調整可能に連結されている。リクライニング機構7は、シートバック1の傾斜角度を調整する。
【0026】
<シートフレームF>
車両用シートSの中には、
図2に示すように、シートフレームFが設けられており、シートフレームFは、シートバック1の骨格を形成するシートバックフレーム10と、シートクッション2の骨格を形成するシートクッションフレーム20とから構成される。
以下では、まず、シートクッションフレーム20等、シートバックフレーム10以外の構成について説明し、シートバックフレーム10の詳細についてはそれらの後に説明する。
【0027】
<シートクッションフレーム20>
シートクッションフレーム20は方形枠状に形成され、その側部にはクッションサイドフレーム21が設けられている。また、クッションサイドフレーム21を前方で連結する前方連結フレーム22と、後方で連結する後方連結フレーム23とを有する。車両用シートSの前後にある前方連結フレーム22及び後方連結フレーム23は丸パイプにより構成されている。また、前方連結フレーム22の前方にはクッションパンフレーム24が設けられている。なお、図示しないが、クッションパンフレーム24と、後方連結フレーム23とを架け渡す受圧部材が取り付けられており、受圧部材によって着座した乗員の臀部が下方から支持されている。
【0028】
<ヘッドレスト3及びヘッドレストフレーム30>
ヘッドレスト3は、着座者の頭部を支えるよう、シートバック1の上部に取り付けられる。ヘッドレスト3の内部には、ヘッドレスト3の骨格を形成するヘッドレストフレーム30が設けられており、ヘッドレストフレーム30の左右両端には、ヘッドレスト3の下部から垂下する2つのヘッドレストピラー31(ヘッドレストステーとも呼ばれる)が設けられる。ヘッドレストピラー31が、後述するシートバックフレーム10のアッパフレーム12に取り付けられたヘッドレストガイド17に挿通されることにより、ヘッドレスト3がシートバックフレーム10に取り付けられる。
【0029】
<パッドP及びクッショントリムカバーT>
シートバックフレーム10、シートクッションフレーム及びヘッドレストフレーム30の外側には、パッドP及びクッショントリムカバーT(クッションカバー)が設けられることで、シートバック1、シートクッション2及びヘッドレスト3が構成される。パッドPは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、クッショントリムカバーTは、例えばクロス、合成皮革又は本革等の表皮材からなる。
【0030】
<スライドレール4>
また、車両用シートSの下部には、
図2に示すようにスライドレール4が設置されている。このスライドレール4により、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに取り付けられる。
【0031】
スライドレール4は、前後方向に沿って車両用シートSをスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライドレール機構の構造)となっている。スライドレール4は、車体フロア上に固定されるロアレールと、ロアレールに対してスライド移動可能なアッパーレールとを有する。アッパーレールが車体に固定されたロアレールに対して摺動可能となっている。
【0032】
<リクライニング機構7>
シートバック1の下端部とシートクッション2の後端部との間にはリクライニング機構7が設けられている。より詳細には、リクライニング機構7は、シートバック1のシートバックフレーム10と、シートクッション2のシートクッションフレーム20と、を連結している。リクライニング機構7は、シートクッション2(シートクッションフレーム20)に対するシートバック1(シートバックフレーム10)の角度を調節可能にしている。リクライニング機構7により、シートバック1を所定の角度でロックして傾斜した状態を維持することができる。また、そのロックを解除することによりシートバック1を前方又は後方に倒伏したりすることができる。
【0033】
以下、本実施形態の車両用シートSが備えるシートバックフレーム10について、
図2~
図7を用いて説明する。
【0034】
<シートバックフレーム10>
図2に示すように、シートバックフレーム10は全体として方形枠状に形成されており、シートバックフレーム10は、両サイドに配置される一対のバックサイドフレーム11と、アッパフレーム12と、ロアフレーム16とを備える。アッパフレーム12は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、バックサイドフレーム11の上端を連結する。ロアフレーム16は、一対のバックサイドフレーム11の間に配置され、一対のバックサイドフレーム11の下端を連結する。
【0035】
<ヘッドレストガイド17>
ヘッドレストガイド17は、ヘッドレストピラー31が挿通される挿通口17aが設けられた管状体の部材である。ヘッドレストガイド17の上部には、後述するアッパフレーム12のホルダ部15の開口部(上側開口部15a)の径よりも大きな外径を有する頭部17bが設けられている。なお、ヘッドレストガイド17の頭部17bより下方の部分をヘッドレストガイド17の本体17cと呼ぶ場合がある。これにより、ヘッドレストガイド17が、アッパフレーム12のホルダ部15に挿入されても、アッパフレーム12の下側に抜け落ちることが抑制される。
なお、ヘッドレストガイド17は、ヘッドレスト3の保持強度を維持し、がたつきを抑制するため、強度の高い金属製の部材により形成される。ヘッドレストガイド17は金属製に限らず樹脂製であってもよい。
【0036】
<アッパフレーム12>
アッパフレーム12は、板状の第1パンフレーム13と、板状の第2パンフレーム14とから構成される。アッパフレーム12において、第1パンフレーム13はシートバック1の前方側に位置しており、第2パンフレーム14はシートバック1の後方側、第1パンフレーム13の背面側に位置している。
【0037】
図2~4及び
図7に示すように、第1パンフレーム13がシートバック1の前方から、第2パンフレーム14がシートバック1の後方から、ヘッドレストガイド17を挟み込み、ヘッドレストガイド17を支持している。
第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とにより、ヘッドレストガイド17を保持する筒状のホルダ部15が形成される。ホルダ部15にヘッドレストガイド17を挿通することで、ヘッドレストガイド17が取り付けられる。
【0038】
第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14のそれぞれには、
図5及び
図6に示すように上下方向に延びる第1凹部13c、第2凹部14cが二つずつ、互いに対向する位置に形成されている。第1凹部13c及び第2凹部14cはヘッドレストガイド17の本体17cの外形にあわせて形成されている。第1凹部13cと第2凹部14cとを対向して配置し、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とを接合することにより、ヘッドレストガイド17を保持するホルダ部15が形成される。
【0039】
ホルダ部15は、第1凹部13cと第2凹部14cとにより筒状の空間を形成し、上下に開口部(上側開口部15a、下側開口部15b)を有する。言い換えれば、ホルダ部15の上側開口部15aは、
図5に示す第1凹部13cの開口部13d、第2凹部14cの開口部14dから構成される。ヘッドレストガイド17は、ホルダ部15の上側開口部15aから、挿入されることにより取り付けられる。なお、
図6に示すように、上側開口部15aの直径は、ヘッドレストガイド17の頭部17bの直径よりも小さく形成されている。ヘッドレストガイド17を挿入したとき、頭部17bがホルダ部15の上側開口部15aの周囲と当接することから上側開口部15aより下側に抜け落ちることが抑制される。
【0040】
また、
図5に示すように、ホルダ部15は、その下端部において、ヘッドレストガイド17によって保持されたヘッドレストピラー31の下端を覆うカバー部15cを備えている。カバー部15cは、一対のヘッドレストピラー31のそれぞれの下端31aを覆うよう設けられている。カバー部15cは、第1凹部13cの下端部と第2凹部14cの下端部とによって構成される。
【0041】
図5に示すように、ホルダ部15の下端、より詳細にはカバー部15cの下端は、ヘッドレストガイド17により保持されたヘッドレストピラー31の下端31aの位置よりも下方に位置するよう形成されている。
【0042】
ヘッドレストピラー31の下端31aが、カバー部15cによって覆われるため、ヘッドレストピラー31の下端31aが着座者の背中に直接当たることがない。そのため、ヘッドレストピラー31の下端31aを半球状に加工しなくてよく、その加工に係るコスト又は手間を除くことができる。
【0043】
第1パンフレーム13には、
図5及び
図6に示すように、車両用シートSの前方向に向けて膨出する第1膨出部13aが形成されている。また、第1膨出部13aは車両用シートSの幅方向に延びるよう、第1パンフレーム13の長手方向に沿って形成されている。第1膨出部13aの上下方向にある端部には、上方向又は下方向に延びる第1鍔部13bが形成されている。
図6に示すように、第1鍔部13bは、後述する第2パンフレーム14の第2鍔部14bと接合する。第1パンフレーム13は、第1膨出部13aと上下に延びる第1鍔部13bとによりハット形状の縦断面を有するよう形成される。ハット形状の縦断面を有することで、第1パンフレーム13の剛性が向上する。
なお、ハット形状にはキャップ形状も含まれる。言い換えれば、ハット形状には第1膨出部13aの上端及び下端のうちいずれか一方から延びる第1鍔部13bが形成される場合も含まれる。
【0044】
第2パンフレーム14には、
図5及び
図6に示すように、車両用シートSの後方に向けて膨出する第2膨出部14aが形成されている。第2膨出部14aは、車両用シートSの幅方向に延びるよう、第2パンフレーム14の長手方向に沿って形成されている。
図6に示すように第2鍔部14bは、第1パンフレーム13の第1鍔部13bと接合する。また、第2パンフレーム14は、第2膨出部14aと上下に延びる第2鍔部14bとによりハット形状の縦断面を有するよう形成される。なお、第2鍔部14bは、第2膨出部14aの上端及び下端のうちいずれか一方から延びるよう形成されてもよい。
また、
図4に示すように、第2膨出部14aには、中央に窓部14fが形成されている。窓部14fが形成されることによりヘッドレストガイド17の状態を目視で確認することができると共に、軽量化を図ることができる。
【0045】
このように、本実施形態では、第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14の両方がハット形状の縦断面を有しており、両方の鍔部を接合することにより中空部分を有する閉断面構造(モナカ構造ともいう)が形成される。
【0046】
本実施形態において、第1パンフレーム13は鉄製であり、鋼板をプレス加工することにより形成される。また、第2パンフレーム14は樹脂製である。第2パンフレーム14を樹脂製とすることによりアッパフレーム12の軽量化を図ることができる。このように、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14は互いに異なる材料によって形成することで、それぞれの特徴を生かしたアッパフレーム12を形成することができる。
【0047】
例えば、第1パンフレーム13を高張力鋼材で形成してもよい。高張力鋼材は薄くても張りがあることから、鋼板より板厚をより薄くできるため剛性を確保しつつ軽量化を図ることができる。第2パンフレーム14を高張力鋼材により形成してもよい。
【0048】
また、第2パンフレーム14をアルミニウム又はアルミニウム合金により形成してもよい。鉄製の場合と比較して、安価又は軽量なフレームを形成することができる。
【0049】
第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とは、接着剤により接合されている。接着剤は、例えば構造用接着剤であり、高靭性タイプ又は高粘度タイプであることが望ましい。高靭性タイプの構造用接着剤の場合は、フレームの捻じれ等による接着剤の割れが好適に抑制され、接着の耐久性を向上させることができる。高粘度タイプである場合、接着する際のたれを抑制することができる。構造用接着剤としては、例えばエポキシ系樹脂を主成分とするものがある。第1パンフレーム13の第1鍔部13bと第2パンフレーム14の第2鍔部14bとが接着される。平面的に広がる鍔部を用いて接合するため接着剤による接合でも接着強度を維持することができる。
このように、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とを形成することで、アッパフレーム12としての剛性を維持しつつ、アッパフレーム12を容易に組み立てることができる。
なお、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14とが共に金属製である場合には、溶接により接合してもよい。
【0050】
アッパフレーム12の別例について説明する。
図7B及び
図7Cに示すアッパフレーム12A、12Bもシートバックフレーム10の上部に取り付けられる部材である。
図7Aに示すアッパフレーム12は、第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14の両方に、凹部(第1凹部13c、第2凹部14c)が設けられていた。
図7Bに示すように、第1パンフレーム13Aにのみ凹部(第1凹部13Ac)が形成されてもよい。この場合、第2パンフレーム14Aは凹部を閉じる蓋部となる。また、
図7Cに示すように第2パンフレーム14Bにのみ凹部(第2凹部14Bc)が形成されてもよく、第1パンフレーム13Bが第2凹部14cを閉じる蓋部となる。
【0051】
以上、図を用いて本実施形態の車両用シートSについて説明した。本実施形態では、第1パンフレーム13と第2パンフレーム14の両方に膨出部(第1膨出部13a、第2膨出部14a)が設けられていたが、膨出部はいずれか一方にのみ形成されてもよい。また、本実施形態において、膨出部の上側端部及び下側端部の両方から鍔部(第1鍔部13b、第2鍔部14b)が延びているが、上側端部及び下側端部のうちいずれか一方にのみ延びるよう形成されてもよい。
【0052】
なお、本実施形態では、第1パンフレーム13及び第2パンフレーム14の両方の凹部により、カバー部15cが形成されている。これは一例であり、例えば第1パンフレーム13の第1凹部13cのみが下方に延びて、ヘッドレストピラー31の前方側だけを覆うカバー部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
S 車両用シート(乗物用シート)
F シートフレーム
T クッショントリムカバー
P パッド
1 シートバック
2 シートクッション
3 ヘッドレスト
4 スライドレール
7 リクライニング機構
10 シートバックフレーム
11 バックサイドフレーム
12 アッパフレーム
13 第1パンフレーム
13a 第1膨出部
13b 第1鍔部
13c 第1凹部
13d 上側開口部
13e 下側開口部
14 第2パンフレーム
14a 第2膨出部
14b 第2鍔部
14c 第2凹部
14d 上側開口部
14e 下側開口部
14f 窓部
15 ホルダ部
15a 上側開口部
15b 下側開口部
15c カバー部
16 ロアフレーム
17 ヘッドレストガイド
17a 挿通口
17b 頭部
17c 本体
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 前方連結フレーム
23 後方連結フレーム
24 クッションパンフレーム
30 ヘッドレストフレーム
31 ヘッドレストピラー