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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022011238
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】熱風発生用ヒータ及びその碍子
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20220101AFI20220107BHJP
【FI】
F24H3/04 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020112236
(22)【出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000210300
【氏名又は名称】竹綱 貞義
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】竹綱 貞義
【テーマコード(参考)】
3L028
【Fターム(参考)】
3L028BA03
3L028BB01
3L028BC00
3L028BD03
(57)【要約】
【課題】碍子の構造を改良し、同じ碍子を用いてヒータ容量を増大でき、連続高温熱風を吐出する際の諸問題をも解決すること。
【解決手段】碍子1の気体流通孔12の内壁面に複数の突条部13を設け、この突条部13によって電熱線20を平面的に支持できる。これら碍子1をエアー流通方向に所定間隔を維持して略平行に配列する。前記碍子1に設けた複数の気体流通孔12を縦及び横方向に整列させ、その整列された気体流通孔12の全体を上下方向に偏向して設ける。これらの碍子1を気体流通方向に間隔を置いて配列する際に、隣接した碍子1をそれぞれ180度回転させた状態に配列する。これにより電熱線20は各碍子1間で上下に偏向して配線される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に複数の碍子を配列し、これらの碍子に設けられた複数の気体流通孔に螺旋状に巻回した電熱線を挿通し、ハウジングの供給口からエアーを供給してその吐出口から高温熱風を吐出させることができる熱風発生用ヒータにおいて、
前記碍子のそれぞれの気体流通孔の内壁面にはそのエアー流通方向に複数の突条部を設け、この突条部によって前記発熱体を支持することができると共に、これらの突条部の間の溝条部にもエアーが流通することによって前記電熱線の外周部と内周部から熱を吸収することができ、
前記突条部の前記発熱体を支持する支持面を平面的に形成し、
これら碍子をエアー流通方向に所定間隔を維持して略平行に配列し、
更に、前記碍子に設けた複数の気体流通孔を縦及び横方向に整列させ、その整列された気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向の何れか一方に偏向して設け、
これらの碍子を気体流通方向に配列する際に、隣接した碍子をそれぞれ180度回転させた状態に配列したことを特徴とする熱風発生用ヒータ。
【請求項2】
前記碍子は、正面視略矩形形状の外形形状を有し、複数設けた気体流通孔の数は偶数として電熱線の端子を一方端側に配置でき、それぞれの碍子の間隔を約20mmから約80mmの範囲内とし、吐出口側の碍子間の距離を供給口側の碍子間の距離よりも小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の熱風発生用ヒータ。
【請求項3】
前記碍子に設けた複数の気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向に約8mm程度偏向させたことを特徴とする請求項2に記載の熱風発生用ヒータ。
【請求項4】
前記碍子の複数を正面視縦方向及び/又は横方向に複数重ね合わせて固定し、ヒータの容量を変更することができることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱風発生用ヒータ。
【請求項5】
前記気体流通孔の入口部と出口部の開口縁部を面取りしてアール状に形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱風発生用ヒータ。
【請求項6】
前記碍子に設けた複数の気体流通孔に囲まれた部位に温度センサ挿通用の孔部を前記気体流通孔に略平行に設けたことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の熱風発生用ヒータ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の熱風発生用ヒータに使用される熱風発生用ヒータの碍子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機等に接続して約1100℃の高温熱風を連続的に吐出することのできる熱風発生用ヒータ及びこれに用いる碍子の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の熱風発生用ヒータ及びこのヒータ内で使用する碍子を添付の図6及び図7に図示している。図6は碍子の斜視説明図、図7は熱風発生用ヒータの概念説明図である。
図6に示した碍子50は、円柱形状を有するいわゆるレンコン碍子と呼ばれるものであって、その軸方向に多数の気体流通孔52、52、…が設けられ、該気体流通孔52のそれぞれに抵抗加熱合金から成る螺旋状に巻回された電熱線が配線されたものである。
【0003】
送風気体は軸方向(気体流通方向)Dに流れ、前記各気体流通孔52内を通過し、加熱される。それぞれの気体流通孔52の内壁面には電熱線を支持するための突条又は突起等は設けられていない。
この碍子50は、その適数個を軸方向に配列し、それぞれの気体流通孔52の位置を合致させて重ね合わせ、熱風発生用ヒータ内に配備される。
【0004】
図7は、上記碍子50が内部に配備された熱風発生用ヒータ60を示している。
図中右端側の気体の供給口61と、図中左端側の熱風の吐出口62を有するヒータ収納体65の内部には上記碍子50が4個軸方向(気体流通方向D)に直列に配列され、固定されている。
【0005】
碍子50の配列個数は、ヒータの容量に応じて適宜決定される。碍子50の配列に際しては、それぞれの気体流通孔52の位置を同一位置に配置する。そして、図中二点鎖線で示した通り、これらの気体流通孔52内に電熱線を供給口61の側から吐出口62に向けて配線し、次に吐出口62の側から供給口61の側に向けてジグザグ状に順次配線して行く。碍子50の気体流通孔52の数を偶数とすることにより電熱線の両端子を供給口側に配置させることができる。
【0006】
それぞれの碍子50は、長軸ボルト66とナット67により固定される。これらのボルト・ナットは、碍子50に設けられている何れかの気体流通孔52の2乃至4箇所を利用して固定される。
異常過熱防止用の熱伝対等の温度センサは、図示はしていないが、中央部分に位置する何れかの気体流通孔52に配設することができる。この場合には螺旋状に巻回された電熱線の中心部分に挿通させて配置することとなる。
吐出温度を感知する吐出温度感知センサTは、ヒータ収納体65内の最も吐出口側に位置する碍子の前方にヒータ収納体65の外部から配設される。
【0007】
上記従来例の問題点を列挙すると、次のようになる。
碍子に配線される電熱線が、送風気体の急激増加(気体流通孔を通過する風速の変化)、或は重力により、力の負荷される方向へ伸びてしまい(螺旋状に巻回された電熱線の隣接する線と線の間の距離(ピッチ)にムラが出る)、これによる異常過熱によって各気体流通孔内を通過する風量が変わってしまうため、高温熱風を安全に長期にわたり吐出することが出来ない。
【0008】
800℃以上の高温熱風を吐出させる場合、電熱線の表面温度は約900℃以上になるが、送風気体の風圧によって電熱線が碍子の吐出口側へ伸長する現象が発生する。
この電熱線の伸長の問題は、電熱線に電流を流すと磁界が発生し、この磁界による電熱線の振動によっても促進される可能性がある。
【0009】
電熱線の振動は、磁界ばかりでなく、機械的振動によっても発生するが、かかる振動の発生により、電熱線と気体流通孔とが摩擦接触し、電熱線の酸化皮膜が削られ(研磨され)或いは碍子の内壁面の方が研磨されてしまい、粉塵となって外部に飛び出して環境に悪影響を及ぼし、気体流通孔内にそれが溜まった場合には、電熱線の断線の原因にもなる。
碍子による電熱線の保持が不十分で、機械的振動又は磁界的振動に弱い。電熱線は碍子の気体流通孔に挿通されて配線されているだけなので、碍子によって電熱線は保持されていない。
【0010】
上記諸問題を解決すべく本願発明者は先に下記特許文献1に記載の発明を提案した。
下記特許文献1に記載の発明は、碍子と電熱線との組み合わせを工夫することにより、碍子自体が電熱線を保持せずとも、800℃から1000℃程度の高温熱風を連続吐出させることができる熱風発生用ヒータを提供することがその課題であり、更にその軽量化、省資源化、コンパクト化、及びコスト低減化をも図り、尚且つ従来のヒータよりも性能を向上させること、即ち、その送風気体への熱交換効率を向上させ、従来のもの以上の連続吐出気体温度を得ることができるようにすることがその課題であった。
【0011】
その構成は、一方端部分に気体の供給口を設け、他方端部分には吐出口を設けた略筒形状のヒータ収納体の内部に碍子を配備し、碍子に設けた多数の気体流通孔には電熱線を配設したものから成り、送風機等から供給口を介して供給された送風気体を前記碍子の気体流通孔に流通させて加熱し、吐出口から高温熱風を吐出する熱風発生用ヒータにおいて、碍子を所定厚の複数の円板形状のものから形成し、気体流通孔はその軸方向に設け、これら複数の碍子を1個ずつ略平行に間隔を置いて送風方向に1列に配置し、その間隔を碍子の厚みの約1/2から約2個分の距離としたことを特徴とする熱風発生用ヒータであった。
【0012】
ここで発熱体(電熱線)とその寿命に関して簡単に説明すると、空気を加熱する場合、一般にオーステナイト系抵抗合金が使用される。この発熱体としては各メーカにより色々な物が販売されているが、なかでも工業用として販売されている材料には、過酷な使用条件として、発熱体の最高連続使用温度が明記されている。
【0013】
ところが、温度に対して発熱体の寿命予想は難しい場合が多く、これにはいろいろな要素、例えば発熱体の支持方法、雰囲気温度の変動、電圧のオン・オフによる発熱体の温度変化と振動、碍子の電気的絶縁値及び良質の耐火碍子(アルミナ系40%以上含む)等々が影響を及ぼしており、これらを理解せずに選択し、設計すると、すべて発熱体の寿命を短くすることとなる。
【0014】
また、発熱体(抵抗加熱合金)は表面に酸化被膜を形成し、その被膜によって発熱体の寿命を延ばすのに役立っているのであるが、その被膜は薄く、碍子の気体流通孔に通過する送風エァーによる振動などで剥離しないようにすることも必要となる。
【0015】
碍子の気体流通孔に挿通する発熱体は、碍子と点接触しないように注意する必要もある。点接触をすると摩耗限界を超える擦れが発生して、その部分は酸化被膜が摩耗し又は消滅し、更には発熱体表面も擦り削られて、その部分の電気抵抗値も変わり寿命に大変な悪影響を与えることとなるのである。
【0016】
以上のように発熱体の寿命の観点からも、当該発熱体と碍子とは非常に密接な関係を有しており、これを考慮しつつ碍子及び熱風発生用ヒータの構成及び構造を考慮する必要があることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献2】特開2012-57892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本願発明においては、上記従来例にあるような比較的小型な高温熱風発生用ヒータばかりでなく、小さい容量のものからより大きな容量のものへと容易にグレードアップできる高温熱風(500℃から1100℃程度)を連続吐出できる熱風発生用ヒータ及びその碍子を提供すること、そして、上記従来の熱風発生用ヒータや碍子が有していた諸問題を解決することもその課題となる。
尚、実際には高温熱風は約1300℃程度吐出することができるのであるが、本願においては上記温度範囲の熱風の吐出を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第1のものは、ハウジング内に複数の碍子を配列し、これらの碍子に設けられた複数の気体流通孔に螺旋状に巻回した電熱線を挿通し、ハウジングの供給口からエアーを供給してその吐出口から高温熱風を吐出させることができる熱風発生用ヒータにおいて、前記碍子のそれぞれの気体流通孔の内壁面にはそのエアー流通方向に複数の突条部を設け、この突条部によって前記発熱体を支持することができると共に、これらの突条部の間の溝条部にもエアーが流通することによって前記電熱線の外周部と内周部から熱を吸収することができ、前記突条部の前記発熱体を支持する支持面を平面的に形成し、これらの碍子をエアー流通方向に所定間隔を維持して略平行に配列し、更に、前記碍子に設けた複数の気体流通孔を縦及び横方向に整列させ、その整列された気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向の何れか一方に偏向して設け、これらの碍子を気体流通方向に配列する際に、隣接した碍子をそれぞれ180度回転させた状態に配列したことを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0020】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記碍子は、正面視略矩形形状の外形形状を有し、複数設けた気体流通孔の数は偶数として電熱線の端子を一方端側に配置でき、それぞれの碍子の間隔を約20mmから約80mmの範囲内としたことを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0021】
本発明の第3のものは、上記第2の発明において、前記碍子に設けた複数の気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向に約8mm程度偏向させたことを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0022】
本発明の第4のものは、上記第2又は第3の発明において、前記碍子の複数を正面視縦方向及び/又は横方向に複数重ね合わせて固定し、ヒータの容量を変更することができることを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0023】
本発明の第5のものは、上記第1乃至第4の発明において、前記気体流通孔の入口部と出口部の開口縁部を面取りしてアール状に形成したことを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0024】
本発明の第6のものは、上記それぞれの発明において、前記碍子に設けた複数の気体流通孔に囲まれた部位に温度センサ挿通用の孔部を前記気体流通孔に略平行に設けたことを特徴とする熱風発生用ヒータである。
【0025】
本願発明の第7のものは、上記第1の発明乃至第6の発明に記載の熱風発生用ヒータに使用される熱風発生用ヒータの碍子である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第1のものにおいては、電熱線を気体流通孔の内壁面に設けた突条部によって支持され、この突条部の支持面は平面的なものとしているために、点接触又は線接触による支持でなく、面による支持のために、電熱線表面の酸化被膜の摩耗等を防止できる。
また、突条部間の溝条部の存在により、供給気体は前記溝条部内にも流通し、電熱線の外周部と内周部から熱を吸収すると共に、碍子の突条部等に蓄積された熱をも吸収できることとなる。
【0027】
気体流通方向に配列された碍子同士の間に所定間隔を開けているために、それぞれの碍子の気体流通孔内で加熱された送風気体が、碍子と碍子の間で一度混合・混和される。
この碍子間での送風気体の混合・混和によって、送風気体のそれぞれの気体流通孔内での温度むら(温度相違)が解消され、一定の昇温が実現される。これが各碍子間の空間で繰り返し行われることとなり、その結果送風気体への熱交換効率がより向上する。
更に、この碍子間の間隔によって各気体流通孔内を通過する風量をほぼ同じ量にすることもでき、電熱線から送風気体への熱変換効率をより向上させることができる。
【0028】
そして、本発明においては、前記碍子に設けた複数の気体流通孔を縦及び横方向に整列させ、その整列された気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向の何れか一方に偏向して設け、これらの碍子を気体流通方向に配列する際に、隣接した碍子をそれぞれ180度回転させた状態に配列している。即ち、気体流通孔の全体を一方の方向に偏らせて設け、且つ、これらの碍子を上下又は左右逆様にして1個ずつ順次配列したのである。
【0029】
これにより、気体流通孔に挿通された電熱線は、その偏向された距離分下がったり、上がったりして(又は左右にジグザクに)装填されることとなる。
このような構成を採用したのは、高温になると電熱線の合金材料の機械的強度が落ち、それと交流電圧が加わることによるオン・オフの温度変化、微振動が起き、空気が発熱体と熱交換するために、そこに風速10~50m/秒(機種により相違)の空気を碍子の気体流通孔に強制的に吹き込むことによって、発熱体の熱が空気と密着して加熱できる。
【0030】
吐出口側の最終の碍子においては、吐出熱風温度が1000℃になるとき、電熱線の温度は1050℃前後であることが分かっている。
電熱線が偏向距離分、下がったり、上がったり(又は左右にジグザクに)の繰り返しを行うこと、さらに碍子間を所定距離分開けることで、この空間で起こる空気の混ざりの現象等が相まって、発熱体の寿命と連続高温熱風吐出性能が向上することとなった。
【0031】
送風機から送られた空気は、ダクトなどを使用して熱風発生用ヒータに接続される。その送風気体は、碍子の複数の気体流通孔を流通するが、各々の気体流通孔を通過する風速(風量・温度)は一定とは限らず、特にバランスが崩れると、ある気体流通孔を通過した熱風は700℃、他は660℃と温度差が生じる場合がある。この際に、碍子間の次の空間で送風気体は混ざり合って均一になる。これを2、3回又はそれ以上繰り返すことにより、ほぼ完全にすべての気体流通孔内の温度(風量・風速)がほぼ同一になるのである。
【0032】
電熱線は温度が上がれば、その金属は軟化する。また諸々の原因で振動し易くなる。
数個並べた碍子の気体流通孔に電熱線が直線的に挿通されれば、高温電熱線は、空気の流速で押された方向に徐々に飛び出してしまう。
また、発熱体を一直線に挿通すると、送風中少しのきっかけで上下振動(共振振動)が発生することとなる。特に高温の場合、碍子と碍子の間で、発熱体コイルの弛みも生じる。
【0033】
しかし、発熱体コイルから成る電熱線を上がったり・下がったりするように(又は左右にジグザグに)装填することで、発熱体が碍子の気体流通孔の中で、碍子の支持部分となる前記突条部で発熱体の滑り止め効果も期待でき、自然発生の上下振動(共振)も極めて少なくなる。
気体流通孔が、次の碍子の気体流通孔とその中心が偏向距離分ずれる(上下する又は左右する)ことによる効果で、そこに流れる送風気体に適度な風速の乱流空間ができ、複数の気体流通孔から出た不均等な流速を均一にする効果も生じるのである。
【0034】
本発明の第2のものにおいては、前記碍子が正面視略矩形形状の外形形状を有し、複数設けた気体流通孔の数を偶数として電熱線の端子を一方端側に配置でき、それぞれの碍子の間隔を約20mmから約80mmの範囲内とし、吐出口側の碍子間の距離を供給口側の碍子間の距離よりも小さくしたものである。
熱風発生用ヒータにおける碍子と電熱線との関係構造をより具体化したものである。
【0035】
本発明の第3のものにおいては、前記碍子に設けた複数の気体流通孔の全体を上下方向又は左右方向に約8mm程度偏向させたものであり、当該偏向距離を適切な範囲に限定したものである。
【0036】
本発明の第4のものにおいては、前記碍子の複数を正面視縦方向及び/又は横方向に複数重ね合わせて固定することによって、容易にヒータの容量を変更することができることを特定したものである。
【0037】
本発明の第5のものにおいては、前記気体流通孔の入口部と出口部の開口縁部を面取りしてアール状に形成したことを限定したものであり、これにより気体流通孔内の圧力損失が約6%減少し、通過風量をアップさせることができた。
【0038】
本発明の第6のものにおいては、前記碍子に設けた複数の気体流通孔に囲まれた部位に温度センサ挿通用の孔部を前記気体流通孔に略平行に設けたことを特定したものであり、熱電対等の温度センサの配設個所を気体挿通孔とは別に設けたことを特定したものである。
これにより、所望位置での温度測定が可能となる。
【0039】
本発明の第7のものは、上記それぞれの発明に係る熱風発生用ヒータに用いられる碍子について特定したものであり、当該碍子自体をも権利請求したものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る熱風発生用ヒータに用いられる碍子の一実施形態を示しており、その(A)が平面図、その(B)が正面図、その(C)が側面図である。
図2】上記実施形態に係る碍子の気体流通孔部分を拡大して示し、その(A)が正面説明図、その(B)が断面説明図である。
図3】上記実施形態に係る碍子を熱風発生用ヒータ内に配列した状態を概念的に示しており、その(A)が吐出口側から見た正面説明図、その(B)が側面説明図、その(C)が供給口側から見た背面説明図である。
図4】上記実施形態に係る碍子と電熱線との配線状態を概念的に示しており、その(A)が吐出口側から見た正面説明図、その(B)が碍子と電熱線の挿通状態を示す平面説明図、その(C)が同じく側面説明図、その(D)が吐出口側から見た正面説明図、その(E)が挿通完了後の碍子と電熱線の挿通状態を示す側面説明図である。
図5】本発明の熱風発生用ヒータの他の実施形態を概念的に図示したものであり、その(A)が供給口側からの背面説明図、その(B)が側面説明図である。
図6】従来の碍子の斜視説明図である。
図7図6に図示した碍子を内部に配備した従来の熱風発生用ヒータを示す概念説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面と共に本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る熱風発生用ヒータに用いられる碍子の一実施形態を示しており、その(A)が平面図、その(B)が正面図、その(C)が側面図である。
図2は、上記実施形態に係る碍子の気体流通孔部分を拡大して示し、その(A)が正面説明図、その(B)が断面説明図である。
【0042】
本発明に係る碍子1は、正面視略矩形形状を有しており、その両側部の縦方向に固定用の凹所11、11を設け、その材質はコージライト等のセラミックス製のものからなる。
この碍子1の紙面表裏方向(気体流通方向)には送風気体が流通する気体流通孔12を縦に3個横に4個、合計12個、縦横に整列させて設けている。
【0043】
この気体流通孔12の数は、縦横自由に設定することができるが、偶数個設ける。当該気体流通孔12に挿通する電熱線の端子を一方端に配置させるためである。
図2から解る通り、この気体流通孔12の内壁面には、周方向に同じ間隔で突条部13を気体流通方向に8個設けており、これらの突条部13同士の間には、溝条部14が同じく8個、小孔のように形成されることとなる。
【0044】
これらの突条部13が電熱線20を支持する支持面は、ほぼ平面に形成しており、電熱線20と面接触としている。電熱線20の振動による悪影響を少なくするためである。
電熱線20としてはオーステナイト系抵抗加熱合金を利用している。
上記突条部13同士の間の上記小孔のような溝条部14の存在により、送風気体は、気体流通孔12内に強制的に送り込まれ、上記電熱線20の内周部及び外周部と強制的に接触して電熱線20から熱を奪い、同時に上記碍子1の突条部13からもより有効に熱を奪うことが可能となる。
【0045】
気体流通孔12の入口部及び出口部の両開口部縁部は面取りが成され、面取り部12rが形成されている(図2参照)。
図2(B)では直線状に面取りが成されているように表示されているが、現物は半径1.5mmのアール状に曲線的に面取りがなされている。
この面取り部12の存在により、気体流通孔12内の通過風量の圧力損失が6%程減少し、通過風量がアップした。
【0046】
電熱線20は、上記した通り、図1(B)において紙面裏側の気体の供給口側から紙面表側の吐出口側に配線して4ターンさせて供給口側に両端子を配置する。
このようにして横一列に4ターンさせて1本配線し、上下3列で3本の電熱線を配線することができ、これら3本の電熱線の端子を全て供給口側に配置することができる。
【0047】
図1(B)において、4個の気体流通孔12によって囲まれた部位には、それぞれ2個ずつの貫通する孔部15、15を設けて、全部で合計12個設けているが、これらの孔部15は、熱電対等の温度センサを配設するための孔であって、これらの孔部15の何れかを利用して最高温度や吐出エアーの温度等を検知するための温度センサを適宜配設することができる。
【0048】
ここで、本発明において最も重要な特徴点であるが、上記縦横に整列させて配設した12個の気体流通孔12の全体が碍子1の正面から見て下方に偏って、偏向して設けている点である。
即ち、最下段の3列目の気体流通孔12が設けられている位置は、碍子1の下側縁部1sから距離dだけ上方位置に配置されている。
【0049】
これに対して、最上段の気体流通孔12の1列目は、碍子1の上方縁部1jからd+αの距離だけ下方位置に配置されている。
即ち、気体流通孔12の全体が正面視下方に偏向距離αだけ偏向されて、換言すれば、ズレて設けられているのである。
この偏向距離αは、相応しくは8mm程度であれば、その効果が明白に認められる。
【0050】
このように、気体流通孔12の全体を下方に偏向させ、隣接するそれぞれの碍子を180度回転させて(つまり、逆様に配置させて)配列することにより、上記発明の効果の欄で説明した効果が発生するのである。
【0051】
ここで、上記碍子1の実際の寸法について記述すると、碍子1の縦が99.5mm、横が138mm、気体流通孔の突条部の内径が17.7mm、溝条部の最大内径が25mm、偏向距離αが8mmである。
従って、突条部の突出高さは約3.65mmとなる。このように本実地形態に係る突条部13の高さは非常に高く、その支持面は平面的に形成され、突条部13の間の溝条部14は極めて広い断面面積を有し、この溝条部14内にも送風気体が流通することとなるのである。
【0052】
図3は、上記実施形態に係る碍子を熱風発生用ヒータ内に配列した状態を概念的に示しており、その(A)が吐出口側から見た正面説明図、その(B)が側面説明図、その(C)が供給口側から見た背面説明図である。
【0053】
これらの図から解る通り、上記碍子1は、気体流通方向Dに5個、略平行に配列され、上カートリッジ2、2、下カートリッジ3,3、及び、左右の側面カートリッジ4、4によってその周囲が囲繞されて密閉空間(供給口と吐出口側を除く)として螺子等によって固定される。これらのカートリッジ2、3、4内には断熱材が充填され、断熱効果を有する。配列される碍子1の個数はその容量に応じて変更できる。
【0054】
上記カートリッジ2、3、4は、フレームFによってその全体が固定され、図示はしていないがハウジング内に固定される。
上記5個の碍子1のそれぞれの間隔k1からk4は、供給口5側の間隔が一番広く、吐出口側に向かって順次狭く配列し、一番吐出口側の間隔k4を一番狭く配列している。
勿論、この間隔を同一とすることもできる。
【0055】
上記のように碍子間の間隔距離は、空気を加熱する目的の温度によって間隔を変えることができる。
即ち、低温側(供給口側)は電熱線と空気の温度差が大きいため、碍子の間隔を広くすることができ、吐出口側に向って送風気体と電熱線との温度の差が少なくなるので、さらに熱交換効率を良くするために、碍子間の間隔距離を供給口側よりも狭くするのが理想となるのである。
【0056】
そして、隣接する碍子1同士は逆様に、つまり、180度回転させた状態に配列するのである。
碍子1に設けた気体流通孔12の全体は、図1にて説明した通り、下方に偏向距離αだけ偏らせている。
【0057】
従って、隣接する碍子1同士を180度回転して配列することにより、気体流通孔12の位置は隣り合う碍子1の間で上下に異なることとなるのである。
このようにして5個の碍子1を図3(B)のように配列することにより、図示していない電熱線が供給口5の側から上・下・上・下・上(一点鎖線の中心線で示している。)というように上下して配線されることとなる。この配線状態は次の図4で示す。
【0058】
尚、碍子1に関しては、図1に示したものと図3に示したものとは厳密にはその側面視形状が多少異なっているが、その基本的形状及び機能は全く同一である。
また、気体流通孔12を左右に偏向させた場合も、上記上下に偏向させた場合と同じこととなる。つまり、上下偏向の形態を90度回転させると左右偏向となるからである。
【0059】
以上の構成からなる熱風発生用ヒータにおいては、送風機等からの送風気体が配管やダクトを介して供給口5から供給され、碍子1に設けられた複数の気体流通孔12に強制的に送り込まれ、加熱され、図中左端側の吐出口(図示省略)から矢印Dの方向に吐出される。
【0060】
この際に各碍子1の間に設けられた空間内で送風気体が混合・混和され、送風気体の温度の一様化と昇温が図られ、且つまた各気体流通孔内を通過する風量の均一化にも寄与し、電熱線からの熱交換効率が向上し、それぞれの碍子1に挿通された電熱線20は、それぞれの碍子1間で上下に(又は左右に)偏向した状態で配線されることにより電熱線20の伸びによる問題も解消するのである。
【0061】
図4は、上記実施形態に係る碍子と電熱線との配線状態を概念的に示しており、その(A)が吐出口側から見た正面説明図、その(B)が碍子と電熱線の挿通状態を示す平面説明図、その(C)が同じく側面説明図、その(D)が吐出口側から見た正面説明図、その(E)が挿通完了後の碍子と電熱線の挿通状態を示す側面説明図である。
【0062】
これらの図においては、碍子1を同一間隔で7個、気体流通方向に平行に配列させたものである。
それぞれの碍子1には横縦4×3個の合計12個の気体流通孔12が整列されて設けられている点、また、気体流通孔12の全てが距離α分だけ下方に偏向されている点も上記実施形態に係る碍子1と同じである。
【0063】
これらの碍子は、図4(B)(C)のようにしてそれぞれの気体流通孔12を直線状に並べて配置し、その内部に電熱線を供給口側から挿通し、これを4ターン繰り返して供給口側にその両端子を配置させる。これを各段3回繰り返し、挿通配線を完了する。
図では、中段の一列のみの電熱線20を図示している。
【0064】
電熱線20の挿通・配線が完了した後、この図4(C)の状態から図4(E)の状態に、即ち、上記7個の碍子1をカートリッジ内に固定すると、図4(E)に示した通り、電熱線20は、供給口側から順次上・下・上・下・上・下・上にと偏向距離α分ずつ上下するように挿通・配線されるのである。
この点が本願発明の最大の特徴部分であり、その効果についても上記発明の効果の欄で説明した。
【0065】
図5は、本発明の熱風発生用ヒータの他の実施形態を概念的に図示したものであり、その(A)が供給口側からの背面説明図、その(B)が側面説明図である。
この実施形態においては、ハウジングH内にカートリッジ及びフレームFによって4個の碍子1を同一鉛直平面内に並列して並べ、この4個の碍子1を気体流通方向Dに7列並べたものから成る。
【0066】
従って、図4に配列した熱風発生用ヒータよりも4倍大きいヒータ容量となる。
この図5からも解る通り、挿通・配線された電熱線20は、各碍子1間で上下にズレた状態となり、電熱線20の気体流通孔12内からの飛び出しや、熱交換効率の向上に極めて大きな効果を発揮することとなるのである。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明においては以下の通り種々設計変更が可能である。
まず、碍子の寸法、気体流通孔の大きさ、突条部の高さ等々は適宜必要に応じて設計することができる。
碍子の外形形状についても、これを固定するカートリッジやフレーム等の固定手段の形態に応じて適宜設計変更することが可能である。
【0068】
また、気体流通孔の数についても適宜必要に応じて設定することができる。
上記実施形態では、碍子をハウジング内に固定するために、カートリッジやフレーム等を用いて固定したが、その固定方法も全く自由に設計変更することができる。
【0069】
碍子に設けた気体流通孔の全体を下方に偏向する偏向距離αは、約8mm程度であればよい。
それぞれの碍子の間に設けた間隔空間の距離(気体流通方向の距離)も20mmから80mmの範囲内であれば、その効果が認められる。
尚、この間隔距離は、エアー供給口側で広く、吐出口側で狭く設定することも可能であり、このようにすることによってより熱交換効率を適切に向上させることができる。
【0070】
本発明においては、一つの同じ碍子を並列的に且つ直列的に複数並べて配列固定することができ、同一構成要素である1個の碍子によりその使用個数を増やすことにより容量を簡単に大きく変更することができる。
【0071】
以上、本発明は、1個の碍子を用いてその容量を容易に偏向することができ、その気体流通孔の全体を一方向に偏向し、隣接する碍子を180度回転させ、且つ間隔を開けた状態に配列することにより気体流通孔内に挿通される電熱線を上下又は左右に偏向して配線することができ、これにより高温に加熱された電熱線の伸びによる問題を解決し、熱交換効率の極めて高い熱風発生用ヒータ及び碍子を提供することができた。
【符号の説明】
【0072】
1 碍子
2 上カートリッジ
3 下カートリッジ
4 側面カートリッジ
5 供給口
7 端子
11 凹所
12 気体流通孔
12r 面取り
13 突条部
14 溝条部
15 孔部
20 電熱線
α 偏向距離
d 距離
F フレーム
k1、k2、k3、k4 間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7