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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112382
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/06 20150101AFI20220726BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20220726BHJP
【FI】
A63B53/06 B
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008207
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】橘 康介
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH02
2C002LL01
(57)【要約】
【課題】 スイング時のフィーリングの変化を抑制しつつ、ヘッド重心の位置を変更することができるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】 ゴルフクラブ1であって、シャフト2、シャフト2の一端側に固定されたゴルフクラブヘッド3、及び、シャフト2の他端側に装着され、かつ、グリップ端を画定するグリップ4を含む。ゴルフクラブヘッド3は、ヘッド本体と、少なくとも1つのウエイト41とを含む。ヘッド本体は、ウエイト41を取り付けるための複数のポートP1、P2を備える。ウエイト41は、ヘッド重心の位置を変更できるように、ポートP1、P2それぞれに着脱可能かつポートP1、P2間で位置変更が可能である。グリップ端Eから各ポートP1、P2におけるウエイト41の重心までの直線距離L1、L2…の最大値と最小値との差が20mm以下とされる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブであって、
シャフト、
前記シャフトの一端側に固定されたゴルフクラブヘッド、及び、
前記シャフトの他端側に装着され、かつ、グリップ端を画定するグリップを含み、
前記ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、少なくとも1つのウエイトとを含み、
前記ヘッド本体は、前記ウエイトを取り付けるための複数のポートを備え、
前記ウエイトは、ヘッド重心の位置を変更できるように、前記ポートそれぞれに着脱可能かつ前記ポート間で位置変更が可能であり、
前記グリップ端から前記各ポートにおける前記ウエイトの重心までの直線距離の最大値と最小値との差が20mm以下である、
ゴルフクラブ。
【請求項2】
前記複数のポートは、各ポートにおける前記ウエイトの重心間の直線距離が50mm以上となる2つのポートを含む、請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記ヘッド本体は、フェース、クラウン及びソールを含み、
前記ポートの少なくとも1つは、前記ソールに設けられている、請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記複数のポートは、トウ・ヒール方向に離れている、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記複数のポートは、ヘッド上下方向に離れている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記複数のポートは、ヘッド前後方向に離れている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項7】
前記複数のポートは、それぞれ、前記ウエイトの少なくとも一部を収容するための凹部を備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項8】
前記少なくとも1つのウエイトが1つのウエイトからなる、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項9】
前記少なくとも1つのウエイトが、互いの重量が異なる複数のウエイトを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項10】
前記複数のウエイトは、同一形状を有する、請求項9に記載のゴルフクラブ。
【請求項11】
前記複数のウエイトの数と、前記複数のポートの数が同一である、請求項9又は10に記載のゴルフクラブ。
【請求項12】
前記ポートの数が、前記ウエイトの数よりも多い、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項13】
前記ウエイトを前記ポート間で位置変更したときの、前記グリップ端での慣性モーメントの最大値と最小値との差が0.10以下である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のゴルフクラブ。
【請求項14】
ゴルフクラブであって、
シャフト、
前記シャフトの一端側に固定されたゴルフクラブヘッド、及び
前記シャフトの他端側に装着され、かつ、グリップ端を画定するグリップを含み、
前記ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、少なくとも1つのウエイトとを含み、
前記ヘッド本体は、前記少なくとも1つのウエイトを取り付けるための複数のポートを備え、
前記ウエイトは、ヘッド重心の位置を変更できるように、前記ポートそれぞれに着脱可能かつ前記ポート間で位置変更が可能であり、
前記ウエイトを前記ポート間で位置変更したときの、前記グリップ端でのゴルフクラブの慣性モーメントの最大値と最小値との差が0.10以下である、
ゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ヘッド重心の位置を変えることができるゴルフクラブが記載されている。前記ゴルフクラブは、第1孔部及び第2孔部を備えたゴルフクラブヘッドを備える。これらの第1孔部及び第2孔部には、互いに重量が異なる第1錘部材及び第2錘部材が着脱自在に取り付けられる。このようなゴルフクラブは、錘部材の取付位置を変更する(互いに入れ替える)ことにより、ゴルフクラブヘッドの総重量を変えることなくヘッド重心の位置を変更でき、ひいては重心深度や慣性モーメント等を変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6247464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなゴルフクラブは、錘部材の取付位置を変更すると、その変更の前後でスイングフィーリングが変わるおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上のような実情に鑑み案出なされたもので、スイング時のフィーリングの変化を抑制しつつ、ヘッド重心の位置を変更することができるゴルフクラブを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ゴルフクラブであって、シャフト、前記シャフトの一端側に固定されたゴルフクラブヘッド、及び前記シャフトの他端側に装着され、かつ、グリップ端を画定するグリップを含み、前記ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、少なくとも1つのウエイトとを含み、前記ヘッド本体は、前記ウエイトを取り付けるための複数のポートを備え、前記ウエイトは、ヘッド重心の位置を変更できるように、前記ポートそれぞれに着脱可能かつ前記ポート間で位置変更が可能であり、前記グリップ端から前記各ポートにおける前記ウエイトの重心までの直線距離の最大値と最小値との差が20mm以下である。
【0007】
本発明の他の態様では、前記複数のポートは、各ポートにおける前記ウエイトの重心間の直線距離が50mm以上となる2つのポートを含むことができる。
【0008】
本発明の他の態様では、前記ヘッド本体は、フェース、クラウン及びソールを含み、前記ポートの少なくとも1つは、前記ソールに設けられても良い。
【0009】
本発明の他の態様では、前記複数のポートは、トウ・ヒール方向に離れていても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記複数のポートは、ヘッド上下方向に離れていても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、前記複数のポートは、ヘッド前後方向に離れていても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記複数のポートは、それぞれ、前記ウエイトの少なくとも一部を収容するための凹部を備えることができる。
【0013】
本発明の他の態様では、前記少なくとも1つのウエイトが1つのウエイトからなる。
【0014】
本発明の他の態様では、前記少なくとも1つのウエイトが、互いの重量が異なる複数のウエイトを含むことができる。
【0015】
本発明の他の態様では、前記複数のウエイトは、同一形状を有していても良い。
【0016】
本発明の他の態様では、前記複数のウエイトの数と、前記複数のポートの数が同一であっても良い。
【0017】
本発明の他の態様では、前記ポートの数が、前記ウエイトの数よりも多くても良い。
【0018】
本発明の他の態様では、前記ウエイトを前記ポート間で位置変更したときの、前記グリップ端での慣性モーメントの最大値と最小値との差が0.10%以下であっても良い。
【0019】
本発明の他の態様は、ゴルフクラブであって、シャフト、前記シャフトの一端側に固定されたゴルフクラブヘッド、及び前記シャフトの他端側に装着され、かつ、グリップ端を画定するグリップを含み、前記ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体と、少なくとも1つのウエイトとを含み、前記ヘッド本体は、前記少なくとも1つのウエイトを取り付けるための複数のポートを備え、前記ウエイトは、ヘッド重心の位置を変更できるように、前記ポートそれぞれに着脱可能かつ前記ポート間で位置変更が可能であり、前記ウエイトを前記ポート間で位置変更したときの、前記グリップ端での慣性モーメントの最大値と最小値との差が0.10%以下である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴルフクラブは、上記の構成を採用したことにより、スイング時のフィーリングの変化を抑制しつつ、ヘッド重心の位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態のゴルフクラブの全体斜視図である。
図2】本実施形態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
図3】本実施形態のゴルフクラブヘッドのトウ側から見た側面図である。
図4】本実施形態のゴルフクラブヘッドの底面図である。
図5】本実施形態のゴルフクラブのグリップ付近の断面図である。
図6】本実施形態のゴルフクラブヘッドのトウ側から見た斜視図である。
図7】本実施形態のゴルフクラブヘッドの下側から見た斜視図である。
図8図7の分解斜視図である。
図9】本実施形態のゴルフクラブの模式的な正面図である。
図10】他の実施形態のゴルフクラブヘッドの下側から見た斜視図である。
図11図10の分解斜視図である。
図12】他の実施形態のゴルフクラブヘッドの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれていることが理解されなければならない。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0023】
[全体構成]
図1は、本実施形態のゴルフクラブ1の全体斜視図である。図1に示されるように、本実施形態のゴルフクラブ1は、シャフト2、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)3及びグリップ4を含む。
【0024】
[基準状態等の定義]
図2~4は、それぞれ、本実施形態のゴルフクラブ1の正面図、トウ側から見た側面図、及び、底面図である。図2~4において、ゴルフクラブ1は基準状態に置かれている。本明細書において、ゴルフクラブ1の基準状態とは、ゴルフクラブ1が、該ゴルフクラブ1に設定されたライ角α(図2)及びロフト角β(図3)で水平面HPに置かれた状態である。詳細には、図3に示されるように、基準状態では、ゴルフクラブ1のシャフト軸中心線CLが、基準垂直面VP内に配された状態で、ゴルフクラブ1がライ角α及びロフト角βに保持される。本明細書において、特に言及されていない場合、ゴルフクラブ1は、基準状態にあるものとして説明されている。
【0025】
また、ゴルフクラブ1の基準状態において、基準垂直面VPに直交する方向がヘッド前後方向とされる。ヘッド前後方向に関して、フェース31の側が前側とされ、その反対側が後側とされる。また、基準垂直面VP及び水平面HPにともに平行な方向は、トウ・ヒール方向とされる。さらに、水平面HPに直交する方向が、ヘッド上下方向として定義される。
【0026】
[シャフト]
図1に示されるように、シャフト2は、例えば、真っ直ぐに延びるパイプ状に構成されている。シャフト2は、シャフト軸中心線CLを有する。このシャフト軸中心線CLの方向がシャフト軸方向である。シャフト2は、シャフト軸方向に、第1端2aと第2端2bとを有する。シャフト2は、慣例にしたがって、例えば、繊維強化樹脂又は金属材料で構成され得る。
【0027】
[グリップ]
シャフト2の第1端2aの側に、グリップ4が装着されている。図5は、グリップ4付近のシャフト軸中心線CLを含む断面図である。グリップ4は、例えば、ゴルファが握る部分である筒状の把持部4aと、把持部4aの一端側に設けられた閉塞部4bとを含む。把持部4aは、グリップ端Eを画定する。本明細書において、「グリップ端」Eとは、把持部4aの最も外径の大きい位置Mを通るシャフト軸方向と直交する平面Xとシャフト軸中心線CLとの交点を意味する。
【0028】
グリップ4の材料は特に限定されないが、例えば、ゴムが好ましい。前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM、イソプレンゴム及びこれらの混合物が好ましい。
【0029】
[ゴルフクラブヘッド]
図6~8は、それぞれ、本実施形態のヘッド3のトウ側から見た斜視図、下側から見た斜視図及び分解斜視図である。図2~4及び6~8に示されるように、本実施形態のヘッド3は、ウッド型として構成されている。したがって、本実施形態のゴルフクラブ1は、ウッド型である。
【0030】
本明細書において、「ウッド型」のヘッド3は、ドライバーのみならず、スプーンやバフィーといったフェアウエイウッドも含む概念である。他の実施形態では、ゴルフクラブ1は、アイアン型、ハイブリッド型、パター型等として構成されても良い。
【0031】
ヘッド3は、ヘッド本体30と、少なくとも1つのウエイト40とを含む。この実施形態では、少なくとも1つのウエイト40が、1つのウエイト(以下、「第1ウエイト41」という。)からなる場合が例示される。
【0032】
[ヘッド本体]
ヘッド本体30は、例えば、フェース31、クラウン32、ソール33及びホーゼル部34などを一体に含み、内部には中空部(図示せず)が形成されている。
【0033】
フェース31は、ボールを打撃する面を構成する。図示していないが、フェース31には、フェースラインと呼ばれるトウ・ヒール方向に延びる複数本の溝が設けられても良い。
【0034】
クラウン32は、フェース31の上縁からヘッド後方に延びており、ヘッド上面を形成している。したがって、クラウン32は、ヘッド本体30の平面図において、見える部分である。クラウン32のヒール側には、シャフト2を固定するためのホーゼル部34が形成されている。
【0035】
ソール33は、フェース31の下縁からヘッド後方に延びており、ヘッド底面を形成している。したがって、ソール33は、ヘッド本体30の底面図(図4)において、見える部分である。
【0036】
ヘッド本体30は、例えば、金属材料で構成されている。金属材料としては、例えば、ステンレス、マレージング鋼、チタン合金、マグネシウム合金、アルミニウム合金等が好適である。ヘッド本体30の一部(例えば、クラウン32)が、繊維強化樹脂等の非金属材料で作られても良い。
【0037】
[ポート]
ヘッド本体30は、第1ウエイト41を取り付けるための複数のポートを備える。この実施形態では、複数のポートは、第1ポートP1及び第2ポートP2の2つからなる。他の形態では、複数のポートは、3つ以上のポートを含むことができる。
【0038】
第1ポートP1及び第2ポートP2は、互いに異なる位置に形成されている。ヘッド重心の調整のためには、第1ポートP1及び第2ポートP2の位置は、特に限定されるものではなく、所望の位置にヘッド重心を提供しうるように適宜設定される。具体的には、第1ポートP1及び第2ポートP2は、ボールを打撃するフェース31を除き、ヘッド本体30のあらゆる位置に設けることが可能である。本明細書において、第1ポートP1及び第2ポートP2の「位置」は、便宜上、それらに第1ウエイト41が取り付けられたときの第1ウエイト41の重心の位置で特定するものとする。
【0039】
本実施形態では、第1ポートP1及び第2ポートP2は、ともにソール33に形成されてる。このような実施形態では、第1ウエイト41がソール33に配置されることから、ヘッド3の低重心化が可能である。他の実施形態では、第1ポートP1及び第2ポートP2の少なくとも一方が、クラウン32に形成されても良い(図示省略)。
【0040】
図2に示されるように、第1ポートP1と第2ポートP2とは、例えば、トウ・ヒール方向に離れて設けられても良い。例えば、第2ポートP2は、第1ポートP1よりもトウ側に位置している。この場合、第1ウエイト41が第2ポートP2に取り付けられた場合、ヘッド重心はトウ側に位置し、第1ウエイト41が第1ポートP1に取り付けられた場合、ヘッド重心はヒール側に位置する。
【0041】
また、第1ポートP1と第2ポートP2とは、例えば、ヘッド上下方向に離れて設けられても良い。例えば、第2ポートP2は、第1ポートP1よりも上側に位置している。この場合、第1ウエイト41が第2ポートP2に取り付けられた場合、ヘッド重心は上側に位置し、第1ウエイト41が第1ポートP1に取り付けられた場合、ヘッド重心はソール側に位置する。
【0042】
さらに、図3に示されるように、第1ポートP1と第2ポートP2とは、例えば、ヘッド前後方向に離れて設けられても良い。例えば、第2ポートP2は、第1ポートP1よりも前側に位置している。この場合、第1ウエイト41が第2ポートP2に取り付けられた場合、ヘッド重心は後側に位置し、第1ウエイト41が第1ポートP1に取り付けられた場合、ヘッド重心は前側に位置する。
【0043】
ヘッド重心の位置を変更するために、第1ポートP1における第1ウエイト41の重心と、第2ポートP2における第1ウエイト41の重心との間の直線距離L3(図9に示す)は、十分に大きいことが望ましい。具体的には、直線距離L3は、好ましくは30mm以上、より好ましくは40mm以上、さらに好ましくは50mm以上とされる。
【0044】
[ポートの構成]
図8に示されるように、本実施形態の第1ポートP1及び第2ポートP2のそれぞれは、例えば、第1ウエイト41を取り付けるために利用される取付孔50と、取付孔50に第1ウエイトを固定するための固着具51とを備える。
【0045】
本実施形態において、取付孔50は、例えば、ヘッド本体30を貫通するネジ孔とされる。他の形態では、取付孔50は、有底の凹部として構成されても良い。
【0046】
本実施形態の固着具51は、例えば、ネジで構成されている。本明細書において、「ネジ」は、回転力が与えられることで、2つに部材を互いに締結することができる全てのデバイスを含む。したがって、本実施形態のネジは、図示されるような連続した螺旋ネジ溝を有するものの他、例えば、約90°程度の少ない回転量で2つの部材を締結することができるワンタッチタイプのネジも含む。
【0047】
また、本実施形態では、固着具51が第1ウエイト41とは別部材で設けられているが、固着具51は、例えば、第1ウエイト41に一体化されたものでも良い。この場合、各ポートP1、P2は、取付孔50のみで構成され得る。
【0048】
好ましい態様では、第1ポートP1及び第2ポートP2は、例えば、第1ウエイトの少なくとも一部、より好ましくは全部を収容可能なような凹部37を備える。このような凹部37は、第1ウエイト41の各ポートへの位置決めが容易になる。また、第1ウエイト41が第1ポートP1又は第2ポートP2に取り付けられた場合に、第1ウエイト41が、ヘッド本体30の外表面から突出する量を低減する。これは、スイング時のヘッド3の地面との接触抵抗や空気抵抗を低減するのに役立つ。
【0049】
[ウエイト]
第1ウエイト41は、第1ポートP1及び第2ポートP2のそれぞれに着脱可能に構成されている。また、第1ウエイト41は、第1ポートP1及び第2ポートP2の間で位置変更が可能である。図1~4及び6~8の実施形態では、第1ウエイト41は、第2ポートP2に取り付けられた状態が示されている。
【0050】
本実施形態において、第1ウエイト41は、例えば、略三角形状の板状材として形成されている。また、本実施形態の第1ウエイト41は、ネジである固着具51を通すための貫通孔60が形成されている。他の実施形態では、第1ウエイト41は、例えば、円盤状、角柱、円柱状など様々な形状で形成されても良い。
【0051】
本実施形態において、第1ウエイト41のヘッド本体30への取り付け手順は、次のとおりである。まず、第1ウエイト41の貫通孔60が、第1ポートP1又は第2ポートP2のいずれかの取付孔50に位置合わせさせ、次に、固着具51が、第1ウエイト41の貫通孔60を通過して取付孔50に固定される。これにより、第1ウエイト41は、ヘッド本体30の第1ポートP1又は第2ポートP2に容易に取り付けられる。
【0052】
また、第1ポートP1及び第2ポートP2のいずれか一方に固定された第1ウエイト41は、固着具51を取付孔50から取り去ることで、ヘッド本体30から容易に取り外すことができる。そして、取り外された第1ウエイト41は、上述の取り付け手順にしたがい、第1ポートP1及び第2ポートP2の他方に取り付けられる。
【0053】
したがって、本実施形態の第1ウエイト41は、それが取り付けられるポートP1又はP2に応じて、上述のとおり、ヘッド重心の位置を変更することができる。このようなヘッド重心の変更は、ゴルフクラブメーカのみならず、ゴルファ自らで容易に行うことができる。
【0054】
第1ウエイト41は、重量を有するものであれば特に限定されないが、好ましくは、ヘッド本体30よりも比重が大きい金属製の部材で構成される。また、第1ウエイト41の重量も特に限定されないが、ヘッド重心を効果的に調整するために、例えば、3g以上とされるのが望ましい。
【0055】
[グリップ端から第1ウエイトまでの直線距離]
図9は、本実施形態のゴルフクラブ1の概略図を示す。図9に示されるように、本実施形態のゴルフクラブ1は、グリップ端Eから各第1ポートP1及び第2ポートP2における第1ウエイト41の重心g1、g2までの直線距離L1、L2の最大値と最小値との差(この例では、|L1-L2|)が20mm以下とされる。
【0056】
ゴルフクラブ1のスイング時のフィーリング(振り心地ともいい、スイングしたときの重さに関する感覚を含む)は、スイング時のヘッド3に作用する遠心力に大きな影響を受ける。換言すると、ヘッド重心を変更した場合でも、前記遠心力の変化が小さければ、スイング時のフィーリングはさほど変わらない。
【0057】
発明者らは、上記知見に基づき種々の実験を行った。そして、前記直線距離L1、L2の最大値と最小値との差を20mm以下にまで小さくすると、第1ウエイト41が第1ポートP1又は第2ポートP2のいずれに取り付けられた場合でも、スイング時のヘッド3に作用する遠心力がほぼ一定となり、ひいては、スイング時のフィーリングが殆ど変わらないことが分かった。したがって、本実施形態のゴルフクラブ1は、スイング時のフィーリング(振り心地)を変えることなく、ヘッド重心の位置を変更することができる。
【0058】
第1ウエイト41が第1ポートP1と第2ポートP2との間で位置交換されたときの前記遠心力の変化を小さくするために、前記直線距離L1、L2の差は、極力小さいことが望ましい。このような観点より、前記直線距離L1、L2の差は、好ましくは15mm以下とされ、より好ましくは10mm以下とされ、さらに好ましくは5mm以下とされ、特に好ましくは0mmとされる。
【0059】
[グリップ端での慣性モーメント]
上述のように、ゴルフクラブ1の直線距離L1、L2の最大値と最小値との差を規定することにより、ゴルフクラブ1は、第1ウエイト41の位置を複数のポート(第1ポートP1及び第2ポートP2)間で位置交換したときに、グリップ端Eでの慣性モーメントの最大値と最小値との差を小さくすることができる。したがって、本発明は、前記直線距離L1、L2の最大値と最小値との差を規定する態様に加え、又は、前記直線距離L1、L2の最大値と最小値との差を規定する態様に代えて、グリップ端Eでの慣性モーメントの最大値と最小値との差を規定することができる。
【0060】
例えば、ゴルフクラブ1は、第1ウエイト41の位置を複数のポート(第1ポートP1及び第2ポートP2)間で位置交換したときに、グリップ端Eでの慣性モーメントの最大値と最小値との差が0.10%以下とされるのが望ましい。より詳細には、第1ポートP1に第1ウエイト41を取り付けたときのグリップ端Eでの慣性モーメントMI1と、第2ポートP2に第1ウエイト41を取り付けたときのグリップ端Eでの慣性モーメントMI2とが同一であるか、又は、それらの差が0.09%以下とされ、さらに好ましくは0.08%以下とされる。
【0061】
本明細書において、上記慣性モーメントMI1、MI2の差は、例えば、MI2>MI1の場合、(MI2-MI1)/MI2の百分率で計算されるものとする。
【0062】
また、本明細書において、グリップ端Eでの慣性モーメントは、慣例にしたがって求めることができる。具体的には、慣性モーメント測定器を用いて測定されたゴルフクラブの重心回りの慣性モーメントの値から、平行軸定理を用いて求めることができる(測定方法は、本出願人の特許第5756732号公報に記載されているとおりである。)。
【0063】
第1ウエイト41の位置を第1ポートP1及び第2ポートP2間で位置交換したときの、グリップ端Eでの慣性モーメントの差をゼロ又は一定の範囲に抑えることで、スイング時のフィーリングの変化がさらに効果的に抑制される。
【0064】
[他の実施形態]
図10及び図11には、他の実施形態のゴルフクラブ1が示される。
この実施形態では、前記少なくとも1つのウエイト40が、互いに重量が異なる複数のウエイトを含む。具体的には、ウエイト40が、上述の第1ウエイト41に加えて、第2ウエイト42を含む。一方、複数のポートは、上述の第1ポートP1及び第2ポートP2からなる。
【0065】
第2ウエイト42は、第1ウエイト41と同様に、第1ポートP1及び第2ポートP2のそれぞれに着脱可能かつ第1ポートP1及び第2ポートP2間で位置変更が可能に構成されている。図10及び図11の例では、第1ウエイト41は第1ポートP1に取り付けられており、かつ、第2ウエイト42は第2ポートP2に取り付けられている。第1ウエイト41と第2ウエイト42とは、各々の位置が変更される(互いに入れ替えられる)ことで、ヘッド重心の位置が変更される。
【0066】
そして、この実施形態においても、グリップ端Eから各ポートP1、P2におけるウエイト41、42の重心までの直線距離の最大値と最小値との差が20mm以下とされる。すなわち、グリップ端Eから第1ポートP1における第1ウエイト41の重心までの直線距離をL1a、グリップ端Eから第2ポートP2における第1ウエイト41の重心までの直線距離をL1b、グリップ端Eから第1ポートP1における第2ウエイト42の重心までの直線距離をL2a、及び、グリップ端Eから第2ポートP2における第2ウエイト42の重心までの直線距離をL2bとしたときに、それらの直線距離(L1a、L1b、L2a及びL2b)の最大値と最小値との差が20mm以下とされる。
【0067】
したがって、この実施形態においても、第1ウエイト41及び第2ウエイト42が第1ポートP1と第2ポートP2との間で入れ替えられた場合でも、スイング時のヘッド3に作用する遠心力がほぼ一定となり、ひいては、スイング時のフィーリングの変化を抑制することができる。よって、この実施形態のゴルフクラブ1も、スイング時のフィーリング(振りごこち)を変えることなく、ヘッド重心の位置を変更することができる。
【0068】
第1ウエイト41及び第2ウエイト42が第1ポートP1及び第2ポートP2の間で入れ替えられたときに、前記遠心力の変化を小さくするためには、前記直線距離(L1a、L1b、L2a及びL2b)の最大値と最小値との差は極力小さいことが望ましい。このような観点より、前記直線距離(L1a、L1b、L2a及びL2b)の最大値と最小値との差は、好ましくは15mm以下とされ、より好ましくは10mm以下とされ、さらに好ましくは5mm以下とされ、特に好ましくは0mmとされる。
【0069】
この実施形態では、第1ウエイト41と第2ウエイト42とは、同一形状を有する一方、互いに異なる比重を有する材料で構成されている。また、第1ウエイト41と第2ウエイト42は、互いに同じ位置にそれらの重心を有する。したがって、この実施形態では、第1ポートP1における前記直線距離L1a及びL2aは互いに等しく、かつ、第2ポートP2における前記直線距離L1b及びL2bも互いに等しくなる。他の実施形態では、第1ウエイト41と第2ウエイト42は、異なる形状であっても良い。
【0070】
この実施形態では、ウエイトの数と、ポートの数が、それぞれ2個ずつとされ、互いに同一である。他の形態では、図12に示されるように、前記少なくとも2つのポートとして、第3ポートP3がさらに追加されても良い。この形態では、ヘッド3のポートの数が、ウエイトの数よりも多くなる。また、少なくとも1つのウエイト40として、3つ以上のウエイトが含まれても良い。
【0071】
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
【実施例0072】
本発明の効果を確認するために、以下、より具体的な実施例が説明される。図1~8に基本構造を有するウッド型のゴルフクラブが表1の仕様に基づき、複数試作された。そして、第1ウエイト(8g)及び第2ウエイト(2g)の位置を第1ポート及び第2ポートで位置交換し、ヘッド重心の位置の変化やスイング時のフィーリングが評価された。表1において、CG-A、CG-B及びCG-Cは、ヘッド重心の位置の座標値であり、以下のとおりである。
CG-A:ヘッドをフェース面側から見た時に、ネック端を通りシャフト軸に垂直な直線と重心点の距離
CG-B:ヘッドをフェース面側から見た時に、シャフト軸方向の直線と重心点の距離
CG-C:ヘッドをクラウン側から見た時に、シャフト軸を通る面と重心点の距離
また、フィーリングの評価は、20名のアベレージゴルファ(ハンディキャップ10~20)が、各ゴルフクラブについて、ヘッド重心の変更前後それぞれでスイングし、そのときの感覚をアンケート形式で調査することにより行われた。
表1は、テスト結果などを示す。
【0073】
【表1】
【0074】
テストの結果、実施例のゴルフクラブは、スイング時のフィーリングの変化を抑制しつつ、ヘッド重心の位置を変更できることが確認できた。
【符号の説明】
【0075】
1 ゴルフクラブ
2 シャフト
3 ヘッド
4 グリップ
30 ヘッド本体
31 フェース
32 クラウン
33 ソール
40 ウエイト
41 第1ウエイト
42 第2ウエイト
P1 第1ポート
P2 第2ポート
P3 第3ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12