(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112385
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】アルミニウムの回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 21/00 20060101AFI20220726BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20220726BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220726BHJP
【FI】
C22B21/00 ZAB
C22B7/00 F
B09B3/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008214
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
4K001
【Fターム(参考)】
4D004AA07
4D004AA09
4D004AA12
4D004AA16
4D004BA03
4D004BA05
4D004BA06
4D004CA24
4D004CB32
4D004CB34
4D004CC01
4K001AA02
4K001BA22
4K001DA12
(57)【要約】
【課題】環境・資源上の問題を回避できるアルミニウムの回収方法を提供しようとするもの。
【解決手段】アルミニウムと炭素含有物との混合物を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにした。したがって、炭素含有物を熱分解して減容化しつつアルミニウムを回収することが出来る。そして、炭素含有物を熱分解して得た炭化物について、燃料、活性炭などの種々の二次利用を図ることが出来る。前記炭素含有物を低酸素雰囲気下で熱分解するようにしてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムと炭素含有物との混合物を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにしたことを特徴とするアルミニウムの回収方法。
【請求項2】
前記炭素含有物を低酸素雰囲気下で熱分解するようにした請求項1記載のアルミニウムの回収方法。
【請求項3】
前記アルミニウムの回収方法により回収したアルミニウム材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断熱材その他からのアルミニウムの回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属板に断熱材が設けられてなる断熱パネルに関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、鋼板等の金属板に、ウレタンフォーム等の断熱材が設けられてなる断熱パネルが知られている。このような断熱パネルは主に壁に用いられるもので、不燃性が求められる住宅等に施工されることが多い。
そして、前記断熱材は、金属板の裏面側に接しない表面が、バックシートとしてのアルミ箔により覆われている、というものである。
ここで、この断熱パネルに用いられる断熱材を廃棄処分する際、アルミ箔をどうしたらいいかなどの環境・資源上の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、環境・資源上の問題を回避できるアルミニウムの回収方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明のアルミニウムの回収方法は、アルミニウムと炭素含有物との混合物を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにしたことを特徴とする。
このアルミニウムの回収方法では、アルミニウムと炭素含有物との混合物を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにしたので、炭素含有物を熱分解して減容化しつつアルミニウムを回収することが出来る。そして、炭素含有物を熱分解して得た炭化物について、燃料、活性炭などの種々の二次利用を図ることが出来る。
【0006】
ここで、前記混合物として積層物(体)を例示することが出来る。前記アルミニウムと炭素含有物との混合物として、アルミニウム箔とウレタンフォームの積層物(体)や、煙草の包装紙の銀紙などを例示することが出来る。
具体的には、アルミニウムと炭素含有物との混合物として断熱材を例示することができ、前記断熱材としてアルミ箔により表面を覆われているウレタンフォーム(ボード)を例示することが出来る。
【0007】
前記炭素含有物として、合成樹脂(プラスチック)、有機化合物、紙材などを例示することが出来る。前記合成樹脂として、ウレタン、PET、ビニールなどを例示することが出来る。
好ましくは、前記炭素含有物を熱分解する温度としては、300~750℃の温度帯を例示することが出来る。この温度帯であれば、炭素含有物(例えばウレタンフォームや紙材)を熱分解して炭化物にすることが出来る。そして、炭素含有物を熱分解して炭化物にすることにより、当初の混合物の全体を減容化することが出来る。
【0008】
さらに好ましくは、前記炭素含有物を熱分解する温度としては、400~550℃の温度帯を例示することが出来る。温度帯でこの温度帯であればアルミニウムが溶融することなく、炭素含有物(例えばウレタンフォームや紙材)を熱分解して炭化物にすることが出来る。
前記加熱の手段として、電気ヒーター、LPG・LNGガスバーナーを例示することが出来る。
【0009】
(2)炭素含有物を低酸素雰囲気下で熱分解するようにしてもよい。
こうすると、アルミニウムの変容を抑制しつつ回収していくことが出来る。
ここで、低酸素雰囲気下とは、酸素濃度について20%未満が好ましく0%であってもよい。低酸素雰囲気にするため、不活性ガス(例えば窒素ガス)を注入してもよい。熱分解する際に、還元雰囲気(酸化雰囲気ではアルミニウムAlがアルミナAl2O3に変質する)としたらいい。
また、低酸素雰囲気にするためには、(LNG燃焼ガスのような未燃焼酸素を含まず)不活性ガスを注入して酸素を追い出せばよい電気ヒーターの使い勝手がよい。
【0010】
(3)前記混合物から分離し回収したアルミニウム材を収集して、これらを溶融し加工してインゴットを製造することが出来る。
【発明の効果】
【0011】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
炭素含有物を熱分解して減容化しつつアルミニウムを回収することができるので、環境・資源上の問題を回避できるアルミニウムの回収方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
この実施形態のアルミニウムの回収方法では、アルミニウムと炭素含有物との混合物を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにした。前記加熱の手段として、電気ヒーター(陶芸窯)を用いた。
前記アルミニウムと炭素含有物との積層体として、アルミニウム箔とウレタンフォームの積層物を処理した。アルミニウムと炭素含有物との混合物としての断熱材であって、具体的には前記断熱材は、アルミ箔により表面を覆われている四角にカット済みのウレタンフォーム・ボードとした。
【0013】
前記炭素含有物を熱分解する温度として、500℃(10分)で処理した。400~550℃の温度帯であればアルミニウムが溶融することなく、炭素含有物(ウレタンフォーム)を熱分解して炭化物にすることが出来た。そして、炭素含有物を熱分解して炭化物にすることにより、当初の混合物の全体を減容化することが出来た。
【0014】
また、炭素含有物を低酸素雰囲気下で熱分解しており、アルミニウムの変容を抑制しつつ回収していくことが出来た。具体的には、低酸素雰囲気にするため不活性ガス(窒素ガス)を注入した。低酸素雰囲気にするため、LNG燃焼ガスのような未燃焼酸素を含まず、不活性ガス(窒素ガス)を注入して酸素を追い出せばよい電気ヒーターの使い勝手がよかった。
以上により、加熱後のアルミニウム箔とウレタンフォームの炭化物(黒色)を得ることが出来た。ウレタンフォームは、加熱により炭化して大きく減容化(減量化)されていた。
【0015】
次に、この実施形態のアルミニウムの回収方法の使用状態を説明する。
このアルミニウムの回収方法では、アルミニウムと炭素含有物との混合物(アルミ箔により表面を覆われているカット済みのウレタンフォーム・ボード)を加熱し、前記炭素含有物を熱分解するようにしたので、炭素含有物を熱分解して減容化しつつアルミニウムを回収することができ、環境・資源上の問題を回避することが出来た。また、炭素含有物を熱分解して得た炭化物について、燃料、活性炭などの種々の二次利用を図ることが出来ることとなる。
以下に、他の実施例について説明する。
【0016】
〔実施例1〕
アルミ箔により表面を覆われている四角にカット済みのウレタンフォーム・ボード6.4g(アルミニウムと炭素含有物との混合物)を、窒素ガス注入雰囲気下 電気ヒーター(陶芸窯)で500℃(10分)加熱し熱分解すると、アルミニウム込みの炭化物5.9gが得られた。
【0017】
〔実施例2〕
アルミ箔により表面を覆われている四角にカット済みのウレタンフォーム・ボード6.4g(アルミニウムと炭素含有物との混合物)を、窒素ガス注入雰囲気下 電気ヒーター(陶芸窯)で600℃(30分)加熱し熱分解すると、アルミニウム込みの炭化物2.4gが得られた。
【0018】
〔実施例3〕
アルミ箔により表面を覆われている四角にカット済みのウレタンフォーム・ボード33.9g(アルミニウムと炭素含有物との混合物)を、窒素ガス注入雰囲気下 電気ヒーター(陶芸窯)で700℃(10分)加熱し熱分解すると、アルミニウム込みの炭化物5.0g(そのうちアルミニウム0.5g)が得られた。
〔実施例4〕
アルミ箔により表面を覆われているウレタンフォーム・ボードの粉砕物69.4g(アルミニウムと炭素含有物との混合物)を、窒素ガス注入雰囲気下 電気ヒーター(陶芸窯)で700℃(10分)加熱し熱分解すると、アルミニウム込みの炭化物11.9gが得られた。
なお、加熱温度が550℃より高いと、アルミニウムが粒々になったり丸まったりする傾向が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
環境・資源上の問題を回避できることによって、種々のアルミニウムの回収方法の用途に適用することができる。