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  • 特開-害虫防除剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022112444
(43)【公開日】2022-08-02
(54)【発明の名称】害虫防除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/12 20090101AFI20220726BHJP
   A01N 25/06 20060101ALI20220726BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20220726BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220726BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220726BHJP
【FI】
A01N65/12
A01N25/06
A01N53/10 210
A01N25/02
A01P7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021008330
(22)【出願日】2021-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 教代
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB15
4H011BB22
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC08
4H011BC19
4H011DA13
4H011DA21
4H011DF03
4H011DG01
4H011DH03
(57)【要約】
【課題】保存安定性に富み、かつ使用場面においてベタツキや汚染の問題のない害虫防除剤を提供することを課題とする。
【解決手段】下記成分(A)~(D):
(A)ジョチュウギクエキス、
(B)ポリオキシエチレン硬化ひまし油、
(C)特定のエステル型界面活性剤、
(D)水、
を含有する害虫防除剤であって、成分(B)と成分(C)の配合比が、重量比で50:50~95:5であることを特徴とする害虫防除剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D):
(A)ジョチュウギクエキス、
(B)ポリオキシエチレン硬化ひまし油、
(C)一般式(I)
および/または
一般式(II)
[式(I)または式(II)中、R1はオレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸を表わし、R2はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸または水素原子を表わし、R3はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸または水素原子を表わす。
R2が水素原子を表わすとき、R3は水素原子を表わし、
R2がオレイン酸を表わすとき、R1もR3もオレイン酸を表わし、
R2がステアリン酸を表わすとき、R1もR3もステアリン酸を表わし、
R2がパルミチン酸を表わすとき、R1もR3もパルチミン酸を表わす。]
で示されるエステル型界面活性剤、
(D)水、
を含有する害虫防除剤であって、成分(B)と成分(C)の配合比が、重量比で50:50~95:5であることを特徴とする害虫防除剤。
【請求項2】
成分(B)および成分(C)の含有量が、害虫防除剤全体量に対し3.0~10.0重量%である請求項1に記載の害虫防除剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の害虫防除剤を充填してなる害虫防除用スプレー剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
引火性の問題を軽減するべく、水を配合した一液性の水性害虫防除剤や水性エアゾール剤の開発が試みられている。(例えば特許文献1)
【0003】
ジョチュウギクエキスは、種々の害虫への防除効果を有しており、エアゾール剤の有効成分として用いられる。ジョチュウギクエキスを水に溶解して水性殺虫剤または水性エアゾール剤とする場合、界面活性剤が用いられるが、界面活性剤の使用量を増やすと、処理面に界面活性剤が残り、ベタツキや汚染が発生する問題がある。そのため、界面活性剤の使用量はできる限り少ない方が好ましいものの、使用量を減らすとジョチュウギクエキスが十分に溶解しなかったり、保存中に分離や白濁が発生する等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-99606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、保存安定性に富み、かつ使用場面においてベタツキや汚染の問題のない害虫防除剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に至った。すなわち本発明は、
[1]下記成分(A)~(D):
(A)ジョチュウギクエキス、
(B)ポリオキシエチレン硬化ひまし油、
(C)一般式(I)
および/または
一般式(II)
[式(I)または式(II)中、R1はオレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸を表わし、R2はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸または水素原子を表わし、R3はオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸または水素原子を表わす。
R2が水素原子を表わすとき、R3は水素原子を表わし、
R2がオレイン酸を表わすとき、R1もR3もオレイン酸を表わし、
R2がステアリン酸を表わすとき、R1もR3もステアリン酸を表わし、
R2がパルミチン酸を表わすとき、R1もR3もパルチミン酸を表わす。]
で示されるエステル型界面活性剤、
(D)水、
を含有する害虫防除剤であって、成分(B)と成分(C)の配合比が、重量比で50:50~95:5であることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除剤。
[2]成分(B)および成分(C)の含有量が、害虫防除剤全体量に対し3.0~10.0重量%であることを特徴とする害虫防除剤。
[3]上記の害虫防除剤を充填してなる害虫防除用スプレー剤。
を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保存安定性に優れた害虫防除剤を提供することができる。また、かかる害虫防除剤をスプレー剤として使用した場合に、処理面の汚染を著しく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、保存安定性試験後の実施例1の害虫防除剤の性状を示すための写真である。
図2図2は、保存安定性試験後の比較例1の害虫防除剤の性状を示すための写真である。
図3図3は、保存安定性試験後の比較例2の害虫防除剤の性状を示すための写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に使用される成分(A)ジョチュウギクエキスはピレトリンI、II、シネリンI、II、ジャスモリンI、IIの6種類の天然ピレトリン類 、植物由来の不純物および溶剤を含んでいる。天然ピレトリン類の濃度が10%~80%のジョチュウギクエキスを用いるのが好ましい。ジョチュウギクエキスの含有量は、通常、害虫防除剤全体量に対し0.01~5.0重量%である。
【0010】
本発明に使用される成分(B)ポリオキシエチレン硬化ひまし油としては、酸化エチレンの平均付加モル数が25~100モルのポリオキシエチレン硬化ひまし油を用いることが好ましい。前記ポリオキシエチレン硬化ひまし油としては、例えば、エマノーンCH-40(花王(株)製、POE(40)硬化ヒマシ油)、エマノーンCH-60(花王(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油)、エマノーンCH-80(花王(株)製、POE(80)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO40(日光ケミカルズ(株)製、POE(40)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO60(日光ケミカルズ(株)製、POE(60)硬化ヒマシ油)、ニッコールHCO100(日光ケミカルズ(株)製、POE(100)硬化ヒマシ油)などが市販されている。
【0011】
本発明に使用される成分(C)エステル化合物としては、ニューカルゲンD-935(竹本油脂(株)製、オレイン酸ソルビタン)、レオドールSP-030V(花王化学(製)、オレイン酸ソルビタン)、レオドールSP-S10V(花王化学(株)製、ステアリン酸ソルビタン)、レオドールSP-P10(花王化学(株)製、パルミチン酸ソルビタン)などが市販されている。
【0012】
前記成分(B)と前記成分(C)の配合比が、重量比で50:50~95:5となるように配合される。当該範囲となるように配合することにより一液性の水性の害虫防除剤が得られる。
【0013】
前記成分(B)および前記成分(C)の含有量は、害虫防除剤全体量に対し3.0~10.0重量%の範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明に使用される成分(D)水の含有量は、引火性の軽減の観点から害虫防除剤全体量に対し、85.0重量%以上とすることが好ましい。
【0015】
本発明の害虫防除剤には、さらに他の成分を含有させてもよく、例えば、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤、pH調整剤、キレート剤及び香料などが挙げられる。前記防腐剤としては、例えば、ユーカリオイル、フェノキシエタノール、メチルパラベンなどのパラベン類が挙げられる。前記香料としては、合成香料、植物製油が挙げられるが特に植物精油が望ましい。植物精油は具体的には、ヒノキオイル、ヒバオイル、シダーウッドオイル、アニスオイル、ビャクダンオイル、クローブオイル、ピメンタオイル、パインオイル、パインニードルオイル、マヌカオイル、パチョリオイル、スターアニスオイル、ヒソップオイル、パルマローザオイル、レモングラスオイル、タイムオイル、ディルオイル、セロリーオイル、ペパーミントオイル、レモンユーカリオイル、シトロネラオイル、レモンセントティーツリーオイル、ラベンダーオイル、ゼラニウムオイル、ローズマリーオイル、ティーツリーオイル、ベルガモットオイル、オレンジオイル、マージョラムオイル、ジュニパーベリーオイル、イランイランオイル、クラリセージオイル、ローズオイルなどが挙げられる。これらは単独、または2種以上使用することができる。
【0016】
本発明の害虫防除剤は、例えば、手動式ポンプを備えたスプレー容器に充填し、非エアゾールタイプのスプレー剤として使用される。また、耐圧容器にLPGやジメチルエーテルなどの噴射剤とともに害虫防除剤を充填し、エアゾールタイプのスプレー剤として使用してもよい。
【0017】
前記スプレー剤は、例えば、台所やリビングルーム、玄関などの居室空間において、直接害虫に噴霧して使用される。また、カーテンや網戸、床下等の害虫の潜み場所や害虫の通り道など予め噴霧することにより害虫を防除することもできる。
【0018】
本発明の害虫防除剤が防除対象とする害虫としては以下の害虫が挙げられる。
半翅目害虫:アオクサカメムシ、ホソヘリカメムシ、オオトゲシラホシカメムシ、トゲシラホシカメムシ、チャバネアオカメムシ、クサギカメムシ等のカメムシ類、トコジラミ等のトコジラミ類、キジラミ類等;
鱗翅目害虫:メイガ類、イガ、コイガ等のヒロズコガ類等;
双翅目害虫:アカイエカ、コガタアカイエカ、ネッタイイエカ等のイエカ類、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等のエーデス属、ユスリカ類、イエバエ、オオイエバエ等のイエバエ類、ショウジョウバエ類、オオキモンノミバエ等のノミバエ類、オオチョウバエ等のチョウバエ類、ブユ類、アブ類、サシバエ類、ハモグリバエ類等;
鞘翅目害虫:イネミズゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類、コクヌストモドキ等のゴミムシダマシ類、カツオブシムシ類、シバンムシ類等;
ゴキブリ目害虫:チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ、トウヨウゴキブリ等;
隠翅目害虫:ネコノミ、イヌノミ、ヒトノミ等
シラミ目害虫:コロモジラミ、ケジラミ、ウシジラミ、ヒツジジラミ等;
ダニ目害虫:フタトゲチマダニ、キチマダニ、ヤマトマダニ、シュルツマダニ等のマダニ類、ケナガコナダニ等のコナダニ類、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ホソツメダニ、クワガタツメダニ等のツメダニ類、イエダニ、トリサシダニ、ワクモ等のワクモ類、アオツツガムシ等のツツガムシ類等;
【実施例0019】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0020】
ジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.4重量部、POE(40)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH40)4.5重量部、オレイン酸ソルビタン(花王(株)製レオドール SP-O30V)0.5重量部を混合して混合液を得た。当該混合液と精製水94.6重量部を撹拌機を用いて充分にて混合して本発明の害虫防除剤を得た。
【実施例0021】
ジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.4重量部、POE(60)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH60)4.5重量部、オレイン酸ソルビタン(竹本油脂(株)製、ニューカルゲンD-935)3.0重量部を混合して混合液を得た。当該混合液と精製水92.1重量部を撹拌機を用いて充分にて混合して本発明の害虫防除剤を得た。
【比較例1】
【0022】
ジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.4重量部、POE(40)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH40)3.0重量部、混合して混合液を得た。当該混合液と精製水96.6重量部を撹拌機を用いて充分に混合して害虫防除剤を得た。
【比較例2】
【0023】
ジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)0.4重量部、POE(25)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH25)0.3重量部、POE(40)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH40)2.7重量部を混合して混合液を得た。かかる混合液と精製水96.6重量部を撹拌機を用いて充分に混合して害虫防除剤を得た。
【比較例3】
【0024】
ジョチュウギクエキス(Botanical Resources Australia Pty Ltd製 住友天然ピレトリン75、天然ピレトリン含量:75重量%)、POE(40)硬化ひまし油(花王(株)製エマノーンCH40)2.5重量部、POE(6)ソルビタンモノオレエート(花王(株)製レオドールTW-O106V)2.5重量部を混合して混合液を得た。かかる混合液と精製水94.6重量部を撹拌機を用いて充分に混合して害虫防除剤を得た。
【0025】
(保存安定性試験)
上記害虫防除剤25mlを夫々、30ml容量の透明スクリュー管((株)マルエム スクリュー管No.6)に注ぎ、-25℃の恒温器内で16時間保管した。恒温器内から当該スクリュー管を取出し、室温25℃の室内にて3時間静置した。
保存安定性試験前後の各種害虫防除剤の性状を目視にて観察したので以下表に結果を示す。また、保存安定性試験後の実施例1、比較例1および比較例2の害虫防除剤の性状を図1図3に示す。
【0026】
[表]
【0027】
表および図に示すとおり、比較例1~3の害虫防除剤は保存安定試験後、白濁ないし析出物が生じていることが判明した。
【0028】
[スプレー剤の作成]
実施例1および実施例2の本発明の害虫防除剤を市販のトリガースプレー用容器に充填しトリガー(キャニヨン製、型式T-95)を取り付け、スプレー剤を得た。
【0029】
[汚染試験]
イグサ(10cm角)、ポリエステル製カーテン(10cm角)、塩化ビニル製壁紙(10cm角)およびモルタル(5cm角)をベニヤ板に張り付け机の上に置いた。上記スプレー剤の噴射口がこれら対象物の中心域に対面するように調整し、該対象物から30cm離れた位置から害虫防除剤を2ml噴霧した。噴霧1時間後の処理面の汚染の有無を確認した。
【0030】
各対象物の処理面の汚染は確認されなかった。


図1
図2
図3